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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アマンダ・セイフライド

『 赤ずきん 』 -童話の再解釈に失敗-

Posted on 2024年9月7日 by cool-jupiter

赤ずきん 30点
2024年9月2日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:アマンダ・セイフライド ゲイリー・オールドマン
監督:キャサリン・ハードウィック

 

近所のTSUTAYAでパッと目についたんのでレンタル。

あらすじ

ヴァレリー(アマンダ・セイフライド)は、幼馴染のピーターと密かに愛をはぐくんでいた。しかし、母親はヴァレリーのあずかり知らぬところで婚約者を決めてしまう。ピーターを駆け落ちしようとしていた矢先に、ヴァレリーの姉が変死を遂げる。それは、20年間生け贄を捧げることでおとなしくしていた狼によるもので・・・

 

ポジティブ・サイド

てっきりフェミニスト・セオリーによって再解釈された赤ずきんちゃんだと思っていたが、さにあらず。そういう視点で鑑賞すると、狼の正体には決してたどり着けない作りになっている点は良いと思う。

 

ゲイリー・オールドマンはクソ映画に出演することはあっても、彼自身がクソであることはめったにない俳優だなと再確認できた。

 

ネガティブ・サイド

赤ずきん世界の20年後はちょっと離れすぎ。その設定だと赤ずきんは30代前半にならないだろうか。10年後の20代前半で良かっただろうに。

 

赤ずきんというよりも人狼ゲーム(観たことはないが)で、ファンタジー世界と調和したプロットとは感じられなかった。そもそも20年前に狼の腹を裂いたことがあるのなら、なぜに生け贄を捧げるようになったのか。

 

中盤に出てくる狼も、2010年代とはいえ、あまりにもCGのクオリティが低い。これなら『 ネバーエンディング・ストーリー 』のグモルクの方が実在感があったし、恐怖感もあった。

 

ミステリーとしての見せ方も稚拙。「瞳」が重要なヒントになるのだが、だったら観る側にはそれ以前に伏線となるショットをそれなり提供してくれないと。観終わってから、別バージョンのエンディングを観る前に序中盤をザーッと見直したが、そんな前振りは無し。

 

別バージョンのエンディングも正直なところ、うーむ・・・ おとぎ話を伝統的に解釈するか、それとも古典的に解釈するか、というものでしかなかった。 

 

総評

『 アクアマン 』の脚本家とは思えない、かなり暗い話。かといって、ダークファンタジーとして成立しているというわけでもない。アマンダ・セイフライドの超ファンでもない限り、鑑賞する必要はない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

werewolf

ゲームなどでウェアウルフという言葉に接したことのある人もいるはず。狼男と訳されるが、別に狼人間でも問題はない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ポライト・ソサエティ 』
『 エイリアン:ロムルス 』
『 愛に乱暴 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, E Rank, アマンダ・セイフライド, アメリカ, ゲイリー・オールドマン, ファンタジー, 監督:キャサリン・ハードウィック, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 赤ずきん 』 -童話の再解釈に失敗-

『 ヤング・アダルト・ニューヨーク 』 -Is being young crime?-

Posted on 2019年12月26日 by cool-jupiter

ヤング・アダルト・ニューヨーク 65点
2019年12月25日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ベン・スティラー ナオミ・ワッツ アダム・ドライバー アマンダ・セイフライド
監督:ノア・バームバック

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191226131848j:plain

 

『 マリッジ・ストーリー 』の脚本および監督も手掛けたノア・バームバックとアダム・ドライバーのタッグ作品。確か、嫁さん(当時はまだ結婚していなかったが)だけが劇場鑑賞して、Jovianは観る機会を逸した作品だった。『 スター・ウォーズ 』のシークエル三部作のアダム・ドライバーは一貫して素晴らしいパフォーマンスだった。今後も彼の出演作はマークして行こうと思う。

 

あらすじ

映画監督のジョシュ(ベン・スティラー)とコーネリア(ナオミ・ワッツ)は子どものいない夫婦。ジョシュは8年がかりでドキュメンタリーを制作中だったが、出口が見えない。そんな時、ジェイミー(アダム・ドライバー)とダービー(アマンダ・セイフライド)の20代夫婦と出会う。若いのにレトロな生活を送る二人に刺激を受け、ジョシュは生活にハリが出てきたと感じるが・・・

 

ポジティブ・サイド

悩める中年のベン・スティラーと怖いもの知らずの若者のアダム・ドライバーの対比が映える。40歳を過ぎたところで、自分がなにがしかの仕事を果たせていないことへの焦燥感、子どもを持てていないこと、妻の父が自分よりも遥かに業績を残した映画監督であること、ジョシュのカメラ・オペレータに給金すら出せないこと、そして自分の老いとなかなか向き合うことができず、新しいツールに飛びつくことで、若さにしがみつこうとする。なんともいたたまれない気持ちにさせられる。何故なら、Jovianはベン・スティラー演じるジョシュの行動(それらの多くは無意識にとられている)の多くを、そのまま理解できるからだ。時間と英語力のある方は【 This exactly what’s wrong with this generation 】という動画を13:18時点からご覧頂きたい。そして『 エニイ・ギブン・サンデー 』でアル・パチーノがジェイミー・フォックスらに語った言葉、“When you get old in life, things get taken from you. That’s part of life. But you only learn that when you start losing stuff.”についても考えてみて頂きたい。ジョシュは「膝が痛い」と言う。「自分はまだ44歳と若いのに、なぜ関節炎になるのだ?」と。Jovianも最近、老眼が始まったようである。だが、そうと分かるまでには時を要した。「なぜ自分の目の調子がおかしいと感じられるのだ?目が何かおかしいということ自体がおかしい」と。とにかく、この物語におけるベン・スティラーの仕事、夫婦および家族関係、友人関係(の痛々しさ)は、アラフォー男性に刺さる。特にナオミ・ワッツ演じる妻コーネリアとの夫婦喧嘩は『 マリッジ・ストーリー 』のスカジョとアダム・ドライバーのそれに迫る迫力である。

 

対になるアダム・ドライバーも味わい深い。若いに似合わず古風な生き方を好む好青年なのだが、その実態は情け容赦のない捕食者であり侵略者である。だが不思議なことに、このジェイミーというキャラクターの言動は常に一貫している。彼自身に善悪があるのではなく、周囲の人間、特にジョシュがジェイミーというキャラクターの邪悪さに気付いても、ジェイミーの言動に変化は見られない。『 もしも君に恋したら。 』では、嫌味なクソ野郎に見えて本当は良い奴だったが、その時もアダム・ドライバー演じるキャラクターの言動に変化はなかった。変化したのは、彼とガールフレンドの関係だった。映画ではキャラクターはしばしば変化する。それは成長するからもしれないし、あるいは堕落する、場合によってはダークサイドに堕ちることもあるだろう。『 パターソン 』でも顕著だったが、変化しないキャラを演じさせれば、アダム・ドライバーは当代で一番なのかもしれない。(だとすれば『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』は・・・)

 

老いと若さの単純な二項対立のドラマではない。若さの中に老獪さ、老練さが隠れていれば、老いゆく中にも若さへの自信がある。大切なことは、自分で自分をどう形作るのか。そして、他人に自分をどう形作ってもらうのかだ。ダメダメな邦題が多いが、本作の原題“While We’re Young”が『 ヤング・アダルト・ニューヨーク 』と訳されているのは、悪いセンスではないと思う。

 

ネガティブ・サイド

アマンダ・セイフライドの見せ場が少ない。というよりも、ナオミ・ワッツとの年齢的な対照があまり描かれていなかった。邪悪な夫に対して、小悪魔な妻・・・ではなく、倦怠期の妻になってしまっている。それも若さの対比かもしれないが、「子どもを持つ」ということに対する考え方を軸に、コーネリアとダービーのコントラストを描き出すことはできなかったのだろうか。

 

クライマックスのジョシュとジェイミーの対話劇が少々弱い。コーネリアの父の寵愛を巡る闘争の一環なのだが、これを舞台劇風に料理してしまうのは迫力に欠けた。もっと映画的なアプローチはなかったか。例えば、テーブルをはさんで延々と言葉を交わし合うのではなく、スマホで写真や動画を見せながらだとか、ホームページの記述を相手に読ませたりだとか、ジョシュがジェイミーを探ろうとしてきた努力を、もっと目や耳に訴える形で披露できなかったか。そして、それを60代の義父には理解されず、20代のジェイミーに一蹴されるというシークエンスの方が、絶望感はより深まったはずである。

 

エンディングは意味深である。というよりも、余りにも露骨に示唆的である。邦画の『 ミュージアム 』のエンディングにも同じくどさを感じたが、本作のラストの示すところは救いがない。もっとニュートラルな余韻を残してほしかったと切に思う。

 

総評

視点をどのキャラクターに置くかで観る側の印象は相当に異なるのではないか。Jovianは年齢的にどうしてもジョシュ視点で観てしまうが、劇場公開時に一人で鑑賞した嫁さんは、ジョシュの友人男性ひとりを除けば、男性キャラには誰にも好感を抱かなかったという。観る者の性別もきっと影響するだろう。もしかしたら20年後、Jovianが60歳を迎えた時に見直せば、新たな発見があるかもしれない。そんな予感を持たせてくれる作品であるが、まさに子育て中という世代は、エンディングに納得するかもしれないし、または毛嫌いする可能性も大いにある。映画ファンであれば、話のタネにどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

This is key.

ジョシュが投資家に自分のプロジェクトを説明する時に言う。「これが鍵だ」の意。話のカギになるポイントの前にこう言おう。keyの前にはaもtheも不要。あっても良いし、なくても良い。この“This is key”は【 How to gain control of your free time 】というTEDトークの動画でも聞くことができる。英語プレゼンなどで機会があれば使ってみよう、

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アダム・ドライバー, アマンダ・セイフライド, アメリカ, ナオミ・ワッツ, ヒューマンドラマ, ベン・スティラー, 監督:ノア・バームバック, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 ヤング・アダルト・ニューヨーク 』 -Is being young crime?-

『 ANON アノン 』 -近未来SFの凡作-

Posted on 2019年8月8日 by cool-jupiter

ANON アノン 50点
2019年8月5日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:クライブ・オーウェン アマンダ・セイフライド
監督:アンドリュー・ニコル

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190808215950j:plain

TSUTAYAでふと目にとまり、あらすじに興味をひかれた。野崎まどの小説『 know 』のや林譲治の小説『 記憶汚染 』の前駆的な世界、映画『 ザ・サークル 』のテクノロジーと思想が行き過ぎた世界であるように感じられた。暑過ぎて劇場に出向くのが億劫になるので、この時期は自宅での映画鑑賞率が高くなる。

 

あらすじ

あらゆる人間の記憶が記録される世界。第一級刑事サル・フリーランド(クライブ・オーウェン)は他者の記憶にアクセスし、単純作業のように事件を捜査・解決していた。しかし、ある日、街中で何の情報も読み取れない謎の女アノン(アマンダ・セイフライド)に遭遇する。ただの検知エラーだと思うサルだったが、その後、視覚をハッキングされて殺害される人間が次々に現れ・・・

 

ポジティブ・サイド

本作に描かれる社会はSFチックではあるが、充分に我々の予想の範囲内にあるものである。例えばビッグデータの管理と有効活用が叫ばれるようになって久しい。たいていの犯罪は、防犯カメラの映像が決め手になる。人がその目で見るものすべてを記録し、権限のある者だけがそれにアクセスできる社会は、犯罪抑止の観点からはむしろ望ましい。問題はプライバシーが守られるか否かである。Jovianは以前に大手信販会社で働いていたが、そこでは当然のように個人情報保護に腐心していた。だが、会社がもっと注力していたのはプライバシーの保護である。よく言われることであるが、個人情報、すなわち個人を識別できる情報(それは氏名であったり、電話番号であったり、住所であったりする)はある程度の数を集めなくては有用とはならない。プライバシーはそれ自体が貴重な、または危険な情報となる。例えば、貴方がたまたま上司のクレジットカードの明細書を見ることができたとしよう。そこに「○月×日 アデランス ¥43,200」という記載があったら?

 

本作は単なる情報とプライバシーの境目が曖昧になった世界の危うさを描いている。それはプライベートな情報をDFE(Delete Fuckin’ Everything)できるからで、さらに言えば、人間の記憶と記録の境目すらも曖昧になってしまうからだ。『 華氏451 』でも、物理的な実体あるものとしての書物は忌避された。なぜなら、アナログなもの全てを書き換えるのは実質的に不可能だからである。

 

本作でアマンダ・セイフライドが見せる記録操作の鮮やかさやサルの見る世界に、Augmented Reality(AR)やユビキタス社会に思いを馳せずにはいられなくなる。それがユートピアになるかディストピアになるかは誰にもわからない。しかし、セックスが重要なモチーフになっているところに本作の功績を認めたい。何もかもを情報空間で済ませる世界であっても、肉体と肉体をぶつけあう性行為に意味があるとアンドリュー・ニコルは言っているわけだ。エキサイティングなSF作品ではないが、ありうべき未来予想図の一つとして鑑賞する価値は認められる。

 

ネガティブ・サイド

視覚をハッキングすることだけでなく、プロット全体が『 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 』の焼き直しに近い。というか、パクリと呼ばれても仕方がないのではないか。士郎正宗はサイバーパンク分野の先駆者である。手塚治虫の『 ジャングル大帝 』がディズニーの『 ライオン・キング 』の元ネタであることは世界中の人間が長年にわたって疑っていることである。本作も士郎正宗のパクリなのではないかという疑惑に今後長く晒されるだろう。

 

サルの上司の無能っぷりが目立つ。なぜ視覚をハッキングする犯罪者がいると分かっていながら、視覚記録を信じようとするのか。殺人事件が起きておらず、サルだけが不可解な経験をしているというのなら話は分かるが、すでに人が何人も死んでいるのだ。もちろん、エンタメ作品やフィクションの警察というのは大体が権力と通じていたり、腐敗していたりするものだ。しかし、そこまでクリシェである必要はない。本作は既に東洋西洋の優れた先行作品にあまりに多くを負っている。

 

犯人の目星があっという間についてしまうのも弱点だ。普通は後から思い起こして、「ああ、あの時のクローズアップはこういうことだったのか」、「あのカット・アウェイはそういうことだったのか」と思わせるカメラワークではなく、「こいつが怪しいですよ」とこれ見よがしに見せつけるようなカメラワークというのは斬新ではあるが、陳腐でもある。極めて少ないキャラクターの中でこれをやられると、否が応でも犯人はこいつであると見当がついてしまう。ミステリ作品ではないとはいえ、これは興醒めである。

 

総評

起伏に乏しい作品である。派手なドンパチも、脳髄をひりつかせるようなミステリもサスペンスもない。だが、文明を見つめる視線がそこにはある。インターネットにどっぷりと漬かっている人ならば、そそられるシーンもいくつかある。梅雨時や猛暑日に室内で時間つぶしに鑑賞するのに適した作品である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アマンダ・セイフライド, クライブ・オーウェン, ドイツ, 監督:アンドリュー・ニコル, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 ANON アノン 』 -近未来SFの凡作-

『 ミーン・ガールズ 』 -高校という生態系の派閥権力闘争物語-

Posted on 2019年4月17日2020年2月2日 by cool-jupiter

ミーン・ガールズ 65点
2019年4月15日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:リンジー・ローハン レイチェル・マクアダムス アマンダ・セイフライド
監督:マーク・ウォーターズ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190417015354j:plain

高校に限らず、小学校の高学年くらいから女子は独特の群れを形成し、行動する習性が観察され始める。そしてそこには必然的に中心 vs 周辺、または頂点 vs 底辺といった序列が生まれる。本作は女子高生の闘争物語であり、アマンダ・セイフライドの映画デビュー作であり、その他の中堅キャストの若かりし頃を振り返ることもできる作品である。

 

あらすじ

ケイディ・ハーロン(リンジー・ローハン)はアフリカ育ちの16歳。動物学者の両親の仕事の関係でホームスクーリングを受けていたが、16歳にしてアメリカの高校に入学することに。そこには様々な種類の動物たち・・・ではなく、人間関係のグループが存在していた。当然のように底辺グループに属すようになったケイディは、ひょんなことからレジーナ(レイチェル・マクアダムス)とその取り巻きのカレン(アマンダ・セイフライド)のグループ、頂点グループの“プラスティックス”に属することになり・・・

 

ポジティブ・サイド

『 THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法 』でも描かれた学校という舞台、いや、本作風に言えば学校という生態系におけるカースト制度が、もっとどぎつく描写される。『 ステータス・アップデート 』ではカーストの頂点捕食者の交代劇が行われたが、本作のプロットも似たようなものである。ただし本作のユニークさは、主人公のケイディがダブル・エージェントであるところだ。底辺グループの仲間に頼まれ、頂点グループの情報を流しつつ、自身はしっかりと栄光の階段を上って行くところは『 アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング! 』のようである。2004年の作品ということで、これらすべての要素の始祖が本作であるはずはないのだが、本作が現代の視点で観ても充分に面白いと感じられる要因は、学校裏サイト的なガジェットを有しているところである。これは古くて新しいネタである。

 

中盤から終盤にかけて、このガジェットが原因で騒動が勃発する。それにより、アメリカの学校もアフリカのサバンナと同じく、弱肉強食の生態系であることが漫画的に露呈する。だが、この騒乱を収める大人たち=教師たちのやり方には感心した。日本でも最近、校則をすべて廃止するに至った高校がニュースになったが、そこの高校の校長先生は、きっと本作の校長先生と多くの共通点を持つに違いない。日本でもアメリカでも、良い教師は往々にしてプライベートな属性、例えば父親であったり母親であったり、あるいは夫であったり妻であったりという顔を見せることで、生徒から異なる認知を受けるようになることが多い。実際に『 スウィート17モンスター 』で使われた手法は、大体それであった。だが、本作の教師たちはどこまでも教師に徹する。教師が主人公でもない映画にしては珍しい。校長先生と数学教師にはJovian個人として最大限の敬意を表したい。

 

本作はまた、アマンダ・セイフライドの映画デビュー作でもある。その他、レイチェル・マクアダムスの若い頃にお目にかかることも可能だ。アン・ハサウェイのファンなら『 プリティ・プリンセス 』を見逃せないように、アマンダのファンは本作を見逃すべきではないだろう。

 

ネガティブ・サイド

主人公のケイディが学校に馴染むのが少し早すぎるように感じた。学校、なかんずくアメリカのそれには冷酷非情な生態系が存在することは『 ワンダー 君は太陽 』などで充分に活写されてきた。アフリカ帰りのweirdoであるケイディが“プラスチックス”のメンバーになるまでに、もう少しミニドラマが必要だったように思う。彼女の狡猾さは生まれ持ったもの、もしくはアフリカで身に付けたものではなく、生来の頭の良さを無邪気に、なおかつ意図的に悪い方向に使ったものであるという描写は、リアリティに欠けていたからだ。

 

後はケイディの父と母の存在感がもう一つ弱かった。ホームスクールをしていたということは、父と母が教師でもあったわけで、初めての学校でケイディの感じる戸惑いが、アフリカとの違いばかりというのもリアリティに欠ける。親に教わることと他人に教わること。その違いも学校という舞台のユニークさを際立たせる演出として必要だったように思う。

 

総評

普通に良作ではなかろうか。邦画が学校を舞台にすると、往々にして恋愛または部活ものになってしまう。ちょっと毛色が違うかなというものに『 虹色デイズ 』があった。野郎同士の友情にフォーカスするという点では本作の裏腹。女同士の人間関係に着目した作品では『 リンダ リンダ リンダ  』があった。これらの作品を楽しめたという人なら、本作も鑑賞して損をすることは無いだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, C Rank, アマンダ・セイフライド, アメリカ, コメディ, リンジー・ローハン, レイチェル・マクアダムス, 監督:マーク・ウォーターズ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 ミーン・ガールズ 』 -高校という生態系の派閥権力闘争物語-

『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』 -ミュージカル映画の王道-

Posted on 2018年9月3日2020年2月14日 by cool-jupiter

マンマ・ミーア! ヒア・ウィ―・ゴー 70点

2018年9月2日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:リリー・ジェームズ アマンダ・セイフライド ピアース・ブロスナン コリン・ファース ステラン・スカルスガルド ドミニク・クーパー ジュリー・ウォルターズ クリスティーン・バランスキー メリル・ストリープ シェール
監督:オル・パーカー

 

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180903012214j:plain

14:00の回を観賞したが、座席の埋まり具合は開演2分前の時点でおよそ9割。公開から1週間でもこの勢いを保っていられるのは、リピート・ビューイングをするお客さんが多いからだろうか。映画のキャラクターが現実と同じように年をとっていくのは、シリーズものではそれほど珍しくはない。『ミッション・インポッシブル』シリーズは言うに及ばず、『トレインスポッティング』や『ジュラシック・パーク』シリーズと『ジュラシック・ワールド』シリーズなど、オリジナル・キャストが年齢を重ねて再登場してくれることで、観る者が一気にその世界に帰っていくことができる。近年で最も衝撃的な形でそうした体験をさせてくれたのは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のトレイラーでハン・ソロ(ハリソン・フォード)が、”Chewie, we’re home.” と静かに、しかし力強く呟いたあの瞬間である。断言できる。

本作は冒頭から、サム(ピアース・ブロスナン)が呟くように歌ってくれる。前作でのあまりの音痴っぷりがトラウマになったのか、それとも編集で歌唱シーンがカットされてしまったのか、彼の歌声が聞けなかったのは、ホッとするような残念なような。ドナ(メリル・ストリープ)が亡くなったことで、ホテルを回想し、リ・オープニングすることを決めたソフィ(アマンダ・セイフライド)は、スカイ(ドミニク・クーパー)からニューヨークで一緒に暮らさないかという誘いに心が揺れる。島で母のホテルを継ぐのか、広い世界に飛び出していくのか。逡巡するソフィと島に迫り来る嵐と人々。過去と現在が、ABBAの音楽に乗って鮮やかに交錯し、若き日のドナ(リリー・ジェームス)の日記の...(dot dot dot)の部分を、我々は追体験する・・・

使用されているABBAの楽曲がややマイナーになっている点を除けば、非常に忠実に前作『マンマ・ミーア!』の世界観を継承している。こうした過去と現在をつなぐ映像作品の良し悪しは、身も蓋もない言い方をしてしまえば、キャスト同士がどれだけ似ているが第一義である。例えば『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』や『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』がどうしようもない駄作で、世界観を一気にぶち壊しかねない設定(ミディ=クロリアンなど)を盛り込んだにもかかわらず、スター・ウォーズ的であり得たのは、ヘイデン・クリステンセンやユアン・マクレガーが、マーク・ハミルやアレック・ギネスと親子関係あるいは同一人物であると納得できるルックスを持っていたからだ。そこでリリー・ジェームズである。確かに前作では、若かりしドナの顔が少しぼやけた写真がいくつかあった。そして、それらはあまりにもメリル・ストリープにしか見えない写真だった。しかし、どういうわけか、メリル・ストリープとリリー・ジェームズの写真を介さずに並べるなら、同一人物であるとは言えないまでも、納得できるレベルで充分に似ている。もちろん、メイクアップ・アーティストやヘアドレッサー、照明や撮影監督の技量もあるが、このキャスティングだけで半ば本作の成功は約束されていた。ターニャとロージーの若い頃を演じた2人などは、それこそスタッフの力もあるが、びっくりするほど仕上がっていた。そしてシェール演じるドナの母親、ソフィーの祖母。確かにメリル・ストリープの母を演じて良いのは、このような妖怪(褒め言葉と捉えて頂きたい)しかいないのかもしれない。

唯一の懸念はジェームズの歌声。『シンデレラ』では“夢はひそかに/A Dream Is a Wish Your Heart Makes”を歌いあげたが、『ベイビー・ドライバー』では、やや調子っぱずれに Carla Thomasの“B-A-B-Y”とBeckの“Debra”を歌っていた(そういう指示があったのかもしれないが)。だが、それは杞憂だった。オープニングの“When I Kissed The Teacher”で、傑出したとまでは言えないものの、前作のセイフライドに全く見劣りしないパフォーマーであることを証明した。また、メリル・ストリープのあの「アッハハハーハハー」という笑いを完コピしていたのはポイント高し。その他でも、ストリープのほんのちょっとした仕草や立ち振る舞いも取り入れており、パーカー監督との息もばっちり合っていたようだ。後は物語の流れに身を任せれば良い。劇場では『コーヒーが冷めないうちに』のポスターがでかでかと4回泣けますと謳っていたが、Jovianは本作観賞中に4回涙した。そのうちの二つは、コリン・ファースとステラン・スケルスガルドの抱擁シーンと”Dancing Queen”。後の二つは劇場でご自身で確認頂きたい。

そうそう、劇場が明るくなるまで席を立ってはいけない。また、ハリーが東京で大きな商談をするシーンがあるが、そこに描出される日本および日本人像に腹を立ててはいけない。『ロスト・イン・トランスレーション』から『ラスト・サムライ』まで、日本人というのは誤解されてナンボなのである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アマンダ・セイフライド, アメリカ, ミュージカル, メリル・ストリープ, リリー・ジェームズ, 監督:オル・パーカー, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』 -ミュージカル映画の王道-

『マンマ・ミーア!』 -世代を超える、世代をつなぐミュージカル映画-

Posted on 2018年8月30日2020年2月13日 by cool-jupiter

マンマ・ミーア 70点

2018年8月27日 WOWOW録画観賞
出演:メリル・ストリープ アマンダ・セイフライド ピアース・ブロスナン コリン・ファース ステラン・スカルスガルド ドミニク・クーパー ジュリー・ウォルターズ クリスティーン・バランスキー 
監督:フィリダ・ロイド

ABBAを知らない世代もいつの間にか増えてきた。当然と言えば当然である。今現在、20代の人間は、実は全員が平成生まれなのである。この事実に思い当った時、戦いた人は多いだろう。『シン・ゴジラ』がヒットするまでは、「ゴジラって何ですか?」という中学生や高校生もいたのである。ABBAを知らない中高生など、何をか況やである。それでもABBAの楽曲の数々は不滅である。その理由がここにある。

ギリシャの小島でソフィ(アマンダ・セイフライド)は結婚式を間近に控えていた。母ドナ(メリル・ストリープ)と二人でホテルを切り盛りしてきたが、ある時、偶然に母の日記を発見してしまった。そこには、21年前の一夏に、母が三人の男、サム(ピアース・ブロスナン)、ハリー(コリン・ファース)、ビル(ステラン・スカルスガルド)と情熱的な関係を持ったこと、すなわち自分の父親候補がこの世に三人いるということが書かれていた。ソフィは三人に結婚式への招待状を秘密裏に送る。結婚式での最大のサプライズを考えていたのだ。かくして往年のABBAのヒットソングに乗って、スラップスティックなドラマが描かれる。

アマンダ・セイフライドは高齢女優と相性が良いのだろうか。『あなたの旅立ち綴ります』でもシャーリー・マクレーンと絶妙のケミストリーを生みだしていた。今作ではメリル・ストリープ。キャリアの転換点になったことは疑いの余地は無い。

映画の一番の特徴はと言えば、暗いところで大画面、大音量で観る、というものだろう。もちろん、部屋を暗くしてテレビで観ても良いわけだが、良い映画というのは見た瞬間に分かることがある。光の使い方、取り込み方が絶妙なものは確かに存在する。古いものでは『2001年宇宙の旅』、近年では『ブレードランナー2049』など。今作はエーゲ海とその空だけを背景に、特に凝った構図が見られたわけではない。しかし逆に、これはモーション・ピクチャーとしての美しさを追求するものではありませんよ、という本作の宣誓とも受け取れる。もちろん、ドローン全盛ではなかった時にどうやって撮ったんだ?(ヘリボーンで撮影したのだろうけれど)と思わせるショットもいくつか存在していたが。

今作の最大の魅力はABBAの魅力的な楽曲が視覚化されたことだと断言してもよいだろう。”Money, Money, Money”や”Mamma Mia”、”SOS”などは忠実に歌われ、物語の各シーンに溶け込んでいるが、一方で”The Winner Takes It All”のように、新しく再解釈された歌もあった。何よりも永遠の名曲、”Dancing Queen”がビジュアライズされただけでも洋楽ファンは納得、そして感涙であろう。おそらくだが、ある一定の世代(1970年代に高校生以上だった世代)がABBAとThe Carpentersから受けたショックというか洗礼というか感動というかインスピレーションは、一言では言い表せないものがある。

今作のdemographicは明らかにABBAを現役で知っている世代であろう。だからこそ主人公はメリル・ストリープであり、お相手はコリン・ファースやステラン・スカルスガルドなのだ。しかし、ABBAが本格的な活動を休止してから幾星霜。今の若い世代にも、ABBAの音楽を再発見してもらっても良い頃だ。また、ABBAをリアルタイムで観賞した世代の子ども世代が、今のエンターテイメント界の意思決定者になりつつあるタイミングでもあろう。そういった意味で、正式な続編がリリースされるというのは喜ばしいと同時に誇らしくもある。優れた文化や芸術は、次世代に繋がねばならないからである。

ちなみに、Jovian個人が選ぶオールタイム・ベストのミュージカルは『オズの魔法使』と『ジーザス・クライスト・スーパースター』で、次点は『ウエスト・サイド物語』である。『グレイテスト・ショーマン』でも、まだ少し足りない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, アマンダ・セイフライド, アメリカ, コリン・ファース, ミュージカル, メリル・ストリープ, 監督:フィリダ・ロイド, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『マンマ・ミーア!』 -世代を超える、世代をつなぐミュージカル映画-

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  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

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