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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 映画

『 キングダム 大将軍の帰還 』 -大沢たかおの独擅場-

Posted on 2024年7月24日 by cool-jupiter

キングダム 大将軍の帰還 65点
2024年7月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山崎賢人 大沢たかお
監督:佐藤信介

 

『 キングダム 運命の炎 』の続編。ますますキャラ映画になってきたが、大沢たかおはついに代表作と言えるものを手にしたようである。

あらすじ

突如、自陣に現れた龐煖によって窮地に陥る飛信隊。退却するしかなくなった飛信隊だが、尾到と尾平は気絶した信(山崎賢人)を安全に逃がすために、他の部隊の面々とは異なる方向に逃げていくが・・・

ポジティブ・サイド

本作で賞賛すべきポイントはほぼ一点に絞られる。それは王騎将軍。

 

副題の「大将軍」とは大沢たかお演じる王騎将軍のこと。『 キングダム 』の初登場時からコスプレ&なりきり演技だったが、今作で大沢たかおは王騎将軍と完全にシンクロした。原作の数々の名場面と名台詞をこれでもかと繰り出してくるが、まるで第一作目や前作はあえて抑制した演技をしていたのだろうか。まるでリアルタイムで読んでいた連載漫画の王騎将軍の声がそのまま劇場内で聞こえた。こんな体験はめったにない。とにかく本作は大沢たかお=王騎将軍の大沢たかお=王騎将軍による大沢たかお=王騎将軍のための作品になっていると感じた。

 

原作に忠実ながらも「全軍、前進」を上手くアレンジするなど、ここで本シリーズが完結となってもいいようにきれいにまとめてもいる。興行成績次第だろうが、続編があっても驚きはない。

ネガティブ・サイド

BGMを使いすぎ。尾到と信の夜の語らいのシーンは原作でもかなり上位に来る名シーン。あそこはBGMなしで、ふたりの台詞だけを静謐な夜の山の中でじっくりと聞かせるべきだった。

 

あとは少し長すぎか。2時間10分に編集できなかっただろうか。

 

総評

コスプレ大会であることに変わりはないが、とにかく原作屈指の人気キャラ王騎将軍の完成度が高すぎて、それだけでチケット代の元は充分に取れていると感じる。できれば続編も観てみたいので、できるだけ多くの人に劇場鑑賞してほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

This is your turf.

劇中の「これが貴様の土俵だ」の私訳。turfはゴルファーにはお馴染みの言葉。芝、あるいは芝地の意。転じて、比喩的に「専門領域」や「有利な地形」のような意味で用いられることもある。英検1級を目指すのなら知っておいても良い。そうでなければ覚える必要は特にない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』
『 デッドプール&ウルヴァリン 』
『 大いなる不在 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, アクション, 大沢たかお, 山崎賢人, 日本, 歴史, 監督:佐藤信介, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 キングダム 大将軍の帰還 』 -大沢たかおの独擅場-

『 YOLO 百元の恋 』 -オリジナル越えの傑作-

Posted on 2024年7月17日 by cool-jupiter

YOLO 百元の恋 80点
2024年7月16日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:ジア・リン ライ・チァイン
監督:ジア・リン

 

『 百円の恋 』の中国リメイク。『 ソウルメイト 七月と安生 』が『 ソウルメイト 』としてリメイクされたのと同じくらいの、リメイク成功と言える。

あらすじ

ドゥ・ローイン(ジア・リン)は一度は就職したものの、すぐに離職。以来10年間、実家で親のすねかじりをしていたが、妹と大ゲンカしたことでローインは衝動的に家を出る。ある時、ひょんなことから知り合ったボクサーのハオ・クン(ライ・チァイン)への思慕から、ローインはボクシングジムに通い始め・・・

ポジティブ・サイド

『 百円の恋 』の安藤サクラも痛々しいキャラ設定だったが、本作のローインはそれに加えて100キロの巨体。恋人も親友もいるが、実はその二人が自分に隠れて付き合っているという、笑うに笑えない状況で物語は始まる。このあたりはオリジナルに上手く「肉付け」しているだけだが、中盤でローインが妹の提案に乗って、とある仕事を引き受けたあたりから「呆れるほどに痛く」なる。

 

そして突如として鳴り響く、あの楽曲!そして、春夏秋冬、トレーニングを通じてみるみる痩せてゆくローインをこれでもかと映し出す。これまでのボクシング映画が実はほとんどフォーカスしてこなかった、文字通りの意味での迫真の減量である。壮絶とはまさにこのこと。ロバート・デ・ニーロもこれは称賛するに違いない。

 

そしてローインの初の試合。ここでは『 クリード チャンプを継ぐ男 』にもあった、1ランドすべてをワンカットで見せる手法を採用。ジア・リンは監督としても相当に先行作品をリスペクトしているようである。

 

最後は『 プラダを着た悪魔 』のアン・ハサウェイよろしく、颯爽と去っていくローイン。このあたりもオリジナルと同じではあるが、カタルシスの度合いはこちらの方が上。奔放の駄作『 レッドシューズ 』も、せめてこのような絵作りが出来ていれば評価ももう少し上がっただろうにと思わされた。

 

エンドクレジットでは、ジア・リンがローインになっていくシーンが克明に映し出される。『 百円の恋 』の試合前の入場シーンは安藤サクラの悲壮感と決意が前面に出ていて印象的だったが、本作ではそこ「生まれ変わり」のシーンだったのだなということが、より鮮烈な印象を伴って想起された。

 

ネガティブ・サイド

あの彼氏と親友には最終盤にもう一度だけ出てきてほしかった。

 

総評

傑作。『 百円の恋 』を観ていなくても楽しめるし、鑑賞済みであればもっと楽しめる。「あの音楽」を聞いて自動的にアドレナリンが出るような人は、今すぐにでもチケットを購入して劇場鑑賞してほしい。中国映画界はハリウッドや邦画からも学ぶ姿勢が見られるが、それは「近いうちに追い抜いてやる」という意思表示に他ならない。韓国映画に抜かれて久しい日本の映画業界だが、中国映画界に本格的に

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

姐

ジエと発音する。「姉」の意。劇中で何度かローインがこう呼ばれる。日本語でも姉の「し」と読むので、なんとなく音も近く感じる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』
『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, ジア・リン, スポーツ, ヒューマンドラマ, ボクシング, ライ・チァイン, 中国, 監督:ジア・リン, 配給会社:東映ビデオLeave a Comment on 『 YOLO 百元の恋 』 -オリジナル越えの傑作-

『 密輸 1970 』 -虚々実々の密輸ドラマ-

Posted on 2024年7月15日 by cool-jupiter

密輸 1970 70点
2024年7月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ヨム・ジョンア キム・ヘス
監督:リュ・スンワン

 

『 モガディシュ 脱出までの14日間 』のリュ・スンワン監督作品ということでチケット購入。

 

あらすじ

港町クンチョンは工場排水により漁が成り立たなくなりつつあった。そんな中、海女のリーダーのジンスク(ヨム・ジョンア)は生活のために密輸に協力することを決断する。ある時、税関によってジンスクは現行犯逮捕され、親友チュンジャ(キム・ヘス)だけがその場から逃亡するが・・・

ポジティブ・サイド

1970年代の韓国と言えば民主化前=軍事政権下ということぐらいしか知らないが、工業化による公害が問題になるところは日本と同じか。海女たちが自発的にではなく、生活の糧を売るためにやむなく密輸に協力するというプロットには説得力があった。

 

その海女たちが一度は摘発され、刑務所で過ごし、娑婆に戻ってからも汚れた海で生きるしかないという描き方が痛切。腐った海藻でスープを作って幼い子どもに与えざるを得ないシーンには胸が痛んだ。こうした背景があるため、密輸という犯罪に従事する海女たちを一方的に断罪することができない。

 

その海女の中心人物ジンスクを演じたヨム・ジョンアと、裏切り疑惑のチュンジャの再会。そこから動き出すヒューマンドラマとクライムドラマの両方が、非常にテンポよく展開される。随所で挿入される韓国版懐メロも映像とストーリーにマッチしていて、それもストーリーテリングに一役買っている。

 

ソウルの密輸王、クォン軍曹と彼の片腕がアメリカのグリーンベレーかと思うほど強すぎるが、ベトナム戦争帰りだという設定によって、荒唐無稽なアクションシーンにもリアリティが感じられた。終盤の水中での大立ち回りは非常に新鮮に映った。水連達者の海女が男たちを一人また一人と始末していくのは痛快だった。

 

最後はすべての悪を華麗に打ち倒して、ハツラツとしている海女たち。密輸や殺人に関わっておきながらそれはないだろうとも思うが、「まあ、そんなことはええか」と思わせるだけのデタラメなパワーを持った作品でもある。韓国映画は邦画が絶対に作れない作品を時々軽々と作ってくれるが、本作は間違いなくそうした一品である。

 

ネガティブ・サイド

海女たちの集合写真がまんま『 セックス・アンド・ザ・シティ 』なのは時代が合わないし、オリジナリティにも欠けると感じた。

 

チュンジャがクォン軍曹の信用を得る過程の描き方が弱かった。軍人上がりでソウルの地下社会・密輸業の実力者たるクォン軍曹の片腕的なポジションに成り上がるまでに、クンチョン以外の舞台でのチュンジャの活躍を2~3分挿入しても良かったのではないかと思う。

 

韓国(映画)では警察=無能、役人=悪人という等式が成立するが、本作でもそれは例外ではない。そういう意味では本作の真相にはあまりサプライズを感じられなかった。

 

総評

50年前の韓国でこんなに生き生きと女性が活躍していたとは思えないが、それでも「ひょっとしたらこんな人たちがいたのかも・・・」と思わせるだけの妙なパワーが本作にはある。実話ベースということだが、おそらく海女さんが密輸に協力していたことがあっただけで、ヤクザや税関相手に大立ち回りをしていたはずはない。ただ、そうした荒唐無稽な想像を実際に映画に仕立て上げてしまうリュ・スンワン監督の手腕は見事。子供向けとは言えないが、40代以上なら男女を問わずに楽しめるはずの作品だ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

セグァン

税関の意。言わずと知れた輸出入に関わるレギュレーションを担当するお役所。本作で最も多く聞こえてくる語彙の一つ。今学期、Jovianは薬学部で英語を教えていたが、受講者の中には「将来は麻薬取締官になりたい」という者も毎年ちらほらいる。彼ら彼女らは将来、税関と連携して、水際で禁輸や密輸を食い止めてくれることだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』
『 YOLO 百元の恋 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, キム・ヘス, ヨム・ジョンア, 歴史, 監督:リュ・スンワン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 密輸 1970 』 -虚々実々の密輸ドラマ-

『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』 -少々ネタ切れ気味-

Posted on 2024年7月11日 by cool-jupiter

クワイエット・プレイス:DAY 1 50点
2024年7月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ルピタ・ニョンゴ ジョセフ・クィン
監督:マイケル・サルノスキ

 

『 クワイエット・プレイス 』、『 クワイエット・プレイス 破られた沈黙 』に続くシリーズ第三作。

あらすじ

末期癌のためホスピスで暮らすサミラ(ルピタ・ニョンゴ)は、マンハッタンでショーを観る。その後に思い出のピザを食べようと思っていたが、突如街に隕石が降り注ぎ、音を立てるものを何であれ襲う謎の攻撃者が現われる。介助猫のフロドと、偶然に知り合ったエリック(ジョセフ・クィン)と共に、サミラは死ぬ前に思い出のピザを食べたいとピザ屋を目指すが・・・

ポジティブ・サイド

前二作のエミリー・ブラントは「これ以上失うことができない」というキャラだったが、今回のルピタ・ニョンゴは「もはや失うものがない」というキャラ。甲斐甲斐しい男性ナースに対しても「友達ではない」と言い切ってしまう。そんな一種の厭世家が、介助猫のフロドにだけは気を許す。『 マトリックス レザレクションズ 』ではないが、我々は愚かなことに猫には弱い。そしてこの猫が『 落下の解剖学 』の犬のスヌープに優るとも劣らない存在感を放つ。

 

サミラの目的が「生き残る」、「生き延びる」ではなく、「生きたことを実感する」である点がユニーク。”I wanna get pizza” という彼女の欲求は、どこか『 パルプ・フィクション 』のユマ・サーマンの ”I wanna dance, I wanna win, I want that trophy” に通じるものがあった。続編の予感を漂わせた完結の仕方に、ハリウッドの商魂たくましさを垣間見た。

 

ネガティブ・サイド

「音を立てたら超即死」という設定の妙味も、さすがに三作目となると薄れてくる。というわけで、『 ロード・オブ・ザ・リング 』よろしくお供を連れての旅路というプロット自体は悪くないが、そのおかげで緊張感が薄れてしまった。

 

また全二作の主人公が白人女性だった反動か、サミラが道々で白人男子および白人男性を助けて行くという筋立ては、かなり不自然に感じられた。ストーリーを面白くするのに、そんなポリコレ要素は不要だと思うのだが。

 

あとは攻撃者の神秘性を剥ぎ取るような、とあるシーンは蛇足だった。生物なのか、それとも生物型の兵器なのか、という謎は謎のままにしておくべきだったのではないだろうか。

 

総評

話もコンパクトにまとまっていて、サクサク進む。攻撃者がなぜ音にこだわるのか、どこから来たのか、何を狙っているのかはどうでもいい。とにかくハラハラドキドキする設定の中で必死に生きる人々の姿を見守る作品だと思えばいい。続編が製作されればある程度の収益は見込めそう。同時に franchise fatigue =シリーズ疲れも見て取れる。続編の可能性は、結局は観客動員と売上だろう。 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

service cat

劇中では「介助猫」と訳されていた。そんな猫が存在するのかどうかは寡聞にして知らないが、介助犬は service dog と言う。その中でも最もポピュラーな盲導犬は seeing-eye dog と言う。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 密輸 1970 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, ジョセフ・クィン, スリラー, ルピタ・ニョンゴ, 監督:マイケル・サルノスキ, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』 -少々ネタ切れ気味-

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

『 ボーン・トゥ・フライ 』 -中国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月7日2024年7月7日 by cool-jupiter

ボーン・トゥ・フライ 55点
2024年7月6日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:ワン・イーボー ユー・シー フー・ジュン チョウ・ドンユイ
監督:リウ・リャオシー

 

ワン・イーボーというブレイク中の俳優の出演作らしく、妻のリクエストでチケット購入。

あらすじ

パイロットのレイ・ユー(ワン・イーボー)は、テストパイロットチーム隊長のチャン・ティン(フー・ジュン)からスカウトされる。次世代ステルス戦闘機に乗れるチャンスをつかめるかもしれないと、レイはチームに参加。そこでライバルとなるドン・ファン(ユー・シー)と出会い・・・

ポジティブ・サイド

CGによる冒頭の空中戦シーンはアメリカのB級レベルだが、それでも夜間戦闘にして不鮮明な機影だらけだった『 空母いぶき 』に比べれば、はるかに良かった。

 

内容的には中国版の『 トップガン 』とも言うべきもの。現場や大会で実績を積んだパイロットたちが、過酷な訓練を経て選抜されるというもの。トム・スケリット演じるジェスターは、今作ではフー・ジュン演じるチャン・ティン隊長。このオッサンが素晴らしいキャラだった。

 

Jovianは先月から部署が変わって、アプリ開発に携わっているが、仕事の一つにテストがある。すなわち、devやstaging環境のアプリを色々と触って、不具合などがないかどうかチェックしている。アプリを触っていて死ぬことはないが、テストパイロットの場合は死ぬことがある。そんな隊長が語る「命」と「使命」のシーンでは、不覚にも感動してしまった。他にも脱出用パラシュートを梱包する裏方スタッフにも光が当てられたりと、思いがけず細やかなシーンが見られたのも良かった。

 

アメリカを思いっきり仮想敵国にしているが、よくよく考えればかつてのソ連やロシア、それに中国を仮想敵国にしたハリウッド映画を我々は散々観てきた訳で、エンタメはエンタメと割り切る必要がありそう。戦争をゲームや漫画、映画などのコンテンツとして享受できる世界を作りたいものである。

 

ネガティブ・サイド

『 ソウルメイト 七月と安生 』と『 少年の君 』のチョウ・ドンユイが出演しているということでチケットを購入した面もあったが、果たしてこのキャラは必要だったのか?悪いが軍医系のキャラは全カットして、1時間50分ぐらいにコンパクト化してくれればなお良かった。

 

いくらアメリカが傍若無人な国家でも、海上基地の間近をあんな低空でフライバイするか?マーヴェリックは自分の基地や空母の管制塔にフライバイするが、よその土地でそんなことはするはずがない。もしも他国でそれをやったら香港の定期輸送便に就航させられる程度の処分ではすまないと思うが・・・ ここはさすがに非現実的すぎた。

 

中国の国産戦闘機がロシアのSu-27に瓜二つなのは何故?原爆と同じくイチから作ったことを誇るなら、架空でよいのでオリジナルのデザインにできなかったのだろうか。

 

レイ・ユーのライバルのはずのドン・ファンが、それほど空を飛ばない。というか、あんまり活躍しない。隊長のシーンを少し減らして、ドン・ファンに与えるべきではなかったか。ここは編集がうまく行っていないと感じた。

 

総評

こういう映画を作れてしまうこと自体に驚いてしまう。日本も『 トップガン 』に触発されて『 BEST GUY 』を製作したが、今の邦画界が『 BEST GUY GOKU 』とか『 BEST GUY 2 』とかを作れるのだろうか?両国の勢いの差がここに見て取れる。アメリカのプロパガンダをたっぷり浴びてきた身としては、一瞬のデトックスのようにも感じられた。同じように感じる人がいるかどうかは分からないが、それなりに爽快な時間を持てることは保証する。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

バ

語気助詞と呼ばれるもの。動詞の最後にくっついて語気を変化させる。劇中では開始バ=開始しよう、チーバ、チーバ=食べて、食べて、のように使われていた。語気助詞は日本語にもあるが、英語には存在しない。中国映画やドラマではこれでもかと聞こえてくるので、機会があれば耳を澄ましてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, チョウ・ドンユイ, フー・ジョン, ユー・シー, ワン・イーボー, 中国, 監督:リウ・リャオシー, 配給会社:ツインLeave a Comment on 『 ボーン・トゥ・フライ 』 -中国産の国威発揚映画-

『 トップガン マーヴェリック 』 -ScreenX + DolbyAtmos鑑賞-

Posted on 2024年6月30日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点 
2024年6月29日 T・ジョイ京都にて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

姫路のScreenXは吹き替えだったため見送っていたが、京都が字幕版を上映するということでチケット購入。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

 

ポジティブ・サイド

ScreenXは初めて体験したが、アクション映画と相性ばっちりだと感じた。すべての場面で270度のスクリーンが機能するわけではなく、飛行シーンのみで全方位を見渡せるようになるのは面白かった。まるでパイロット視点を体験しているように感じられた。もしくは疑似VR体験に近かったとでも言おうか。

 

DolbyAtmosも良かった。ライブ音響上映ほどではなかったが、冒頭の Top Gun Anthem や Danger Zone の音圧も肌で感じることができた。まさに “Revvin’ up your engine, listen to her howlin’ roar” だった。

 

劇場自体もかなりの入り。老若男女がまんべんなく来ているという印象で、同作の相変わらずの人気の高さを証明していた。

 

ネガティブ・サイド

見るたびに思うが、戸田奈津子大先生の字幕が・・・ F-14 = a museum piece を「ポンコツ」と訳してしまうと、それはそのままマーヴェリックにも当てはまってしまう。ここはやはり骨とう品や年代物= an old relic と訳すべきだった。他にも突っ込みどころ満載だったが、いつか英語字幕上映とかやってくれないだろうか。

 

総評

ScreenXは関西では京都か姫路にしかないので、行ける人は今のうちに行っておこう。スマホやテレビでコンテンツを楽しむのもいいが、大画面と大音量でこそ堪能できる作品もある。TGMは間違いなくそうした作品。ScreenXは4DXやMX4Dと並んで、(作品さえ正しければ)劇場に客を呼び込める舞台装置だと感じた。ぜひこの機にパイロット視点を体験しようではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

ahead of schedule

ハングマンが No harm in being ahead of schedule = 予定より早くても害はない、と劇中では言っていた。実際の軍事作戦では予定通り = on schedule が求められる。また、仕事はしばしば予定より遅れてしまうが、その場合は behind schedule と表現する。3点セットで覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 スリープ 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -ScreenX + DolbyAtmos鑑賞-

『 ザ・ウォッチャーズ 』 -シャマラン風味が少々強め-

Posted on 2024年6月26日 by cool-jupiter

ザ・ウォッチャーズ 60点
2024年6月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ダコタ・ファニング
監督:イシャナ・ナイト・シャマラン

 

予告編がまあまあ面白そうだったのと、M・ナイト・シャマランの娘が監督を務めたということでチケット購入。

あらすじ

ミナ(ダコタ・ファニング)は、スコットランドの動物園に鳥を届けに行く道中の森で車が故障してしまう。助けを求めるミナの前に突如老婆が現われ、ミナは奇妙な小屋に誘われる。そこは夜な夜な、正体不明の監視者がやって来て・・・

 

ポジティブ・サイド

アイルランドといえば『 ウルフウォーカー 』で描かれたような昼なお暗い森林が豊富にある地域(失われつつあるのは確かなようだが)。そこに潜むオオカミならぬ人外の化生が、夜な夜な文明人を看視する、あるいは観察する。ウォッチャーたちの正体が不明な序盤はそれなりに面白い。雰囲気も『 ノック 終末の訪問者 』や『 スプリット 』に似ていて、限定されたシチュエーションと限定されたキャラクターだけで不安や恐怖などの負の情感を巧みに産み出している。

 

ウォッチャーの正体が明らかになる中盤も悪くはない。これは結局一瞬の社会批判、というか社会風刺で、その裏にあるメッセージは某超大作インド映画のそれと同じである。あるいは日本の某古典アニメともよく似ている、と言えるかもしれない。

 

終盤には、シャマラン映画にありがちな一捻りが用意されている。「ん、まさかAという方向に行くのでは?」というありきたりな予想は見事に外されるので、そういう意味では予測できない結末になっているとは言える。

ネガティブ・サイド

どこかで観た作品のパッチワークのよう。プロットでいえば『 遊星からの物体X 』や、ビジュアルでいえば『 “それ”がいる森 』・・・は、さすがに言い過ぎか。全体的に父のM・ナイトの影響が色濃く出てしまっている。イシャナには精神的な意味での patricide が求められる。

 

終盤の脱出劇はかなりのご都合主義。「鳥を追え」というアドバイスに従って鳥かごからミナが元々運んでいたインコのダーウィンを解き放つが、もしもダーウィンがいなければどうしていたのか。罠でとらえたカラスを放つのか?というか、せっかくインコという人語を覚える鳥がいるというのに、Try not to die しか喋らないのでは意味がない。ダーウィンなどという仰々しい名前をつけたのなら、どんどんと言語を喋らせように進化させるべきだった。そうしてこそ「鳥かご」の暗喩が完成しただろうに。

 

総評

本作をどれくらい楽しめるかは、シャマラン的な作劇術に対してどれだけ寛容なのかによる。カジュアルな映画ファンほど本作を楽しめるように思う。もちろん、シャマランのファンであってもOK。『 オールド 』や『 ノック 終末の訪問者 』など、シャマラン基準で言えば少々落ちる作品と同等の面白さをデビュー作で達成しているのだから、娘イシャナの将来は明るいはず。応援の意味でも、是非チケットを購入して、劇場鑑賞されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Try not to V

Vしないように頑張ってね、の意。Don’t try to V. は「Vしようとするな」の意。英語初級者はたまにここを間違うことがある。意味の違いを峻別できるようになろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 チャレンジャーズ 』
『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 スリープ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, スリラー, ダコタ・ファニング, 監督:イシャナ・ナイト・シャマラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 ザ・ウォッチャーズ 』 -シャマラン風味が少々強め-

『 あんのこと 』 -社会の一隅の現実-

Posted on 2024年6月19日 by cool-jupiter

あんのこと 75点
2024年6月15日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:河合優実 佐藤二朗 稲垣吾郎
監督:入江悠

 

旧シネ・リーブル梅田の頃にパンフレットを見て興味を抱いたのでチケットを購入。

あらすじ

学校にも六に通えず、母親から虐待されて育った香川杏(河合優実)は、売春と薬物使用の疑いで警察に逮捕される。しかし、そこで人情味あふれる刑事、多々羅(佐藤二朗)やジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)と出会い、更生への道を歩み始めるが・・・

 

ポジティブ・サイド

よくもここまで暗い話を描けたものだと感心する。まるでよくできたた社会派の韓国映画を観ているようだった。それを可能にしたのは第一に脚本の力、次に役者の力だろう。

 

まず、2020年6月の朝日新聞の記事だが、これは無料登録すれば読めるので、ぜひ多くの人に(映画鑑賞後に)読んでほしい(読み終わったら、すぐに登録解除のこと)。コロナによって日本社会のセーフティネットの脆さが浮き彫りになったと言われるが、問題はそもそもセーフティネットにかからない人々が最初から一定数存在するということ。劇中でも小学校にすらまともに行けなかったという人が役所で体よく生活保護申請を却下されそうになるが、そもそも不登校の時点で登校を両親に促さない行政の怠慢があったはずなのだ。杏にしても同じこと。「自己責任」(小泉政権)やら「自助・共助・公助」(菅政権)という一種のスローガンで切って捨てるのではなく、言葉の本当の意味でのインクルージョンについて考えるべきではないのか。

 

ハナさんの人生の壮絶さは想像するしかないが、虐待、性被害、薬物使用など一人で現代社会の諸問題の総合商社をやっている杏というキャラクターの内面は想像すらできない。実際に、杏の心中がナレーションや字幕などで物語られることも一切ない。すべては杏の表情や立ち居振る舞いから推測するしかないが、河合優実は見事に演じきった。ネタバレになるので書けないが、親に愛されなかった自分を、自分自身で取り戻す機会などそうそうあるものではない。それを奪われた。絶望するには充分だ。この絶望感は観る側に間違いなく感染するだろう。

 

ネガティブ・サイド

ラストシーンが意味深。新たな家族の再生なのか。それとも新たな虐待親子関係の始まりなのか。どちらとも判断しかねるが、ここはどちらなのかを入江監督にはっきりと映し出してほしかった。『 MOTHER マザー 』のラストシーンもそうだったが、解釈を観る側にゆだねるのではなく、作家としてのメッセージを明確に示してほしかったと思う。

 

総評

鑑賞後、『 トガニ 幼き瞳の告発 』を観終わった時のような虚無感を覚えた。それだけ見る者の心に澱みを残す作品だと言える。『 ギャングース 』でも見られた入江監督の社会の底辺で生きる者たちへの眼差しは、本作でさらに透徹したものになったと評していいだろう。杏というキャラクター、そしてそのモデルとなった人物にどれだけ思いを馳せられるのか。想像力を試される作品だと言える。メンタルの調子を整えてから鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

abuse

アビューズと発音する。本作には三つの abuse が描かれている。一つは drug abuse = 薬物乱用、もう一つは child abuse = 児童虐待、最後に power abuse = 職権乱用である。いずれも全く良い意味ではないが、現代のニュースを英語で見聞きする際には、悲しいかな、必要な語彙である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 チャレンジャーズ 』
『 ザ・ウォッチャーズ 』

 

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『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

Posted on 2024年6月12日 by cool-jupiter

かくしごと 60点
2024年6月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:杏 中須翔真 奥田瑛二
監督:関根光才

 

テアトル梅田の『 あんのこと 』の上映時間が合わず、こちらのチケットを購入。

あらすじ

千紗子(杏)は絶縁していた父・孝蔵(奥田瑛二)が半裸で徘徊していたことから、施設入所までの間だけ介護をするため帰郷した。ある夜、旧友の運転する車が少年をはねてしまう。その少年の身体に虐待を思わせる傷跡を見つけた千紗子は、自分がその子の身柄を引き受けようと決意して・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

杏と奥田瑛二の父と娘の距離感が生々しい。警察や記者、さらに医者は結構な確率で過程を壊してしまうとされているが、教師もそうなのか。

 

記憶喪失の少年と認知症(これも一種の記憶喪失)の父親の対比も生々しい。忘れたままでいてほしい、しかし、忘れてはいけないことを忘れないでほしいという、一種の二律背反的な思考や感情が、どんどんとセルフケア能力を喪失していく父の介護の中でないまぜになっていく過程の描写は、正直かなり堪えた。

 

特に父親がとあるシーンで、認知症ゆえの悲しい告白をするが、「今さらそんなことを口にしてどうする」と憤慨させられた。が、これは多くの昭和世代のジジイ連中の多くに共通する隠された本音。それゆえにこのシーンでの杏の涙が光る。

 

『 ミッシング 』の狂乱の母親像は一味違った母親の狂気を堪能できる一作。

 

ネガティブ・サイド

原作の小説のタイトルは『 嘘 』なのに、それを敢えて『 かくしごと 』に変えたのは何故なのだろうか。このタイトル改変だけでオチがすべて露わになってしまっている。まさか絵本を描く/書く仕事とかけたのではあるまいな。

 

飲酒運転して交通事故というのは笑えない。しかもそれを隠蔽しようというのはもっと笑えない。さらに救急車も呼ばないというのにはドン引きした。原作もこうなのか?ご都合主義もここに極まる。

 

言葉は悪いが、あのレベルの家庭の母親が文芸雑誌などを読むのか?またその夫が東京の住所ならまだしも、実家まで突き止めるか?いくらなんでもご都合主義が過ぎる。

 

総評

東出と離婚して、遠くの土地で一人で子育てするという杏のイメージがそのまま投影された作品で杏がはまり役だと見る人もいれば、あざとすぎるキャスティングだと見る向きもあるだろう。Jovianは前者だった。選択的夫婦別姓など、家族の在り方に関する議論がようやく始まりつつある日本だが、選択的な親と子の在り方についても、そのうち考えなければならないのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

adopt 

色々な意味を持つ語だが、その一つに「養子にする」というものがある。たまに adapt と混同する初習者がいるが、adopt の opt は option = 選ぶもの、だと覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』
『 チャレンジャーズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 中須翔真, 奥田瑛二, 日本, 杏, 監督:関根光才, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

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