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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 』 -答えは風の中にある-

Posted on 2025年3月16日2025年3月16日 by cool-jupiter

名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 70点
2025年3月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ティモシー・シャラメ エドワード・ノートン エル・ファニング モニカ・バルバロ
監督:ジェームズ・マンゴールド

妻が見たいというのでチケット購入。ボブ・ディランに関する知識はあまりなかったが、それでも興味深く鑑賞できた。

あらすじ

ウディ・ガスリーに傾倒する青年のボブ(ティモシー・シャラメ)は、彼が入院している病院を尋ねる。そこでガスリーとその親友、ピート・シーガー(エドワード・ノートン)に一曲を披露したボブはその才能を見込まれ、ピートの自宅に誘われて・・・

ポジティブ・サイド

ティモシー・シャラメ、意外に歌が上手い。かつ、しゃべり方も田舎から出てきた朴訥な青年が無理して背伸びして喋っています感ありあり。おそらく実際のボブ・ディランがそうだったのだろう。他にもエドワード・ノートンやモニカ・バルバロなど、以外と言っては失礼かもしれないが、歌唱力の高さに驚かされた。

今でこそ才能が誰かに発見される、あるいは才能自身が自らを発信するのは難しくないが、1960年代は話が別。カフェやバーでのライブや、教会のイベントなどでコツコツと地道に活動していくしかない。そうした時代を見つめるのも興味深かった。

ディランが成功を掴んでいく中、シルヴィと付き合いながらもジョーンと二股関係になっていくのは見ていて気持ちのいいものではなかったが、これは史実なのだろう。また、割と高尚なメッセージを直截的な歌詞に乗せて歌い上げるディランだが、同じミュージシャンのジョーンを抱いた直後にも曲作りに精を出す様は、仕事人としてはリスペクトするが、男としてはまったくもってダメダメ。

ところが、もう一人のボブとの偶然の出会いの際に漏らしたディランの本音によって、そうしたハチャメチャなディランの像が一変して見えてくる。ディランの出現と活躍によってフォークが完全に復権を果たそうとすることに多大な期待をかけるピート・シーガーや、JFK暗殺やキューバ危機の中にあっても自らの信念に忠実に勉学と行動に邁進するシルヴィ。そうした人々の期待に応えようとしない、いや敢えて応えない男の美学を見たような気がした。鬱屈とした時代はもう終わったんだと歌って喝采を浴びた男が、前時代の音楽に回帰せよと言われても、それは素直に従えないだろう。太宰治や坂口安吾がフォークを歌えば、日本のボブ・ディランと呼ばれたように思う(この二人の方がディランよりも前だが)。

余談だが、フォークソング=社会批判という構図は現代にも受け継がれていると感じた。第一次トランプ政権の際にバズったサイモンとガーファンクルのThe Sounds of Silence のパロディ、 Confounds the Science や、『 僕らの世界が交わるまで 』のジギーが理知的で政治活動にも熱心な女子とのうまく行かない距離の取り方を、政治的メッセージと共にフォークソングに乗せるというシーンもあった。フォークもジャズと同じで、死にそうで死なない音楽ジャンルなのだろう。

ネガティブ・サイド

1960年代の街並みをCGで作って合成するのはいいが、もう少し丁寧な仕事が求められる。道に立っている女性の髪が風にそよいでいるのに、その真横を歩くシルヴィの髪がまったく動いていないというシーンにはギョッとさせられた。

ディランの作詞作曲のシーンは興味深かったが、その背景にもう少し踏み込んでほしかった。現実世界のどういった事象に心を動かされ、それをどう言葉やメロディにしていくのか。たとえば食事シーンで何かひらめく、街中の看板やポスター、フライヤーなどに一瞬目を奪われる、のようなシーンが欲しかった(本人にそういった逸話がないのかもしれないが)。

シルヴィやピート・シーガー、ジョーン・バエズとは異なり、ジョニー・キャッシュとディランのつながりの描写が弱いと感じた。当時としては手紙は重要なコミュニケーション・ツールだったはずで、その手紙の文言をもっと観る側に刺さる形で呈示する方法はなかったか。

総評

コロナ前にノーベル文学賞を受賞したことが話題になったボブ・ディラン。授賞式を欠席したというのも、彼をよく知るファンからすれば当然なのかもしれない。Jovianは中学生ぐらいだったか、B’zのBlowin’を聴いている時に、親父に「ボブ・ディランの真似か?」みたいに言われて、ビルボード年鑑のようなものを読んで、ボブ・ディランの名前を知ったんだったっけ。ハマることはなかったけれど。時代の変わり目を象徴するような歌い手だったことは如実に伝わってきた。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

turn down ~

いくつかの意味があるが、劇中では「~の音量を下げる」という意味で使われていた。ただし、実際は結構何にでも使える表現。たとえば照明を弱めるなら、turn down the lightと言えるし、コンロの火を弱めるならturn down the fireもしくはturn down the flameとも言える。逆の表現はもちろんturn up ~である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 プロジェクト・サイレンス 』
『 ロングレッグズ 』
『 ゆきてかへらぬ 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エドワード・ノートン, エル・ファニング, ティモシー・シャラメ, モニカ・バルバロ, 伝記, 監督:ジェームズ・マンゴールド, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 』 -答えは風の中にある-

2024年総括と2025年展望

Posted on 2025年1月1日 by cool-jupiter

2024年総括

今年は部署異動もあったり、副業(と呼べるほどのものでもないが)があったりで、例年ほどは映画を観ることができなかった。邦画はあいかわらず小説や漫画の映像化に血道を上げていたが、インドや韓国などの映画輸出大国にひと頃の勢いが感じられないのは、コロナの影響を今も引きずっていると見るべきか。ハリウッドに関して言えば、MCUのメインストリームから離脱できたのは幸なのか不幸なのか。

2024年は米大統領選挙と兵庫県知事選で、いわゆるオールドメディアとSNSの対照性が際立った年だったと感じる。映画レビューについては、かなり以前から同様の事象が起きていて、今では一部のインフルエンサーと呼ばれるようなお歴々の方が、下手なプロのレビュワーよりも影響力を行使できているように見える(同じことは英語学習界隈にも言えるが、あの世界は狭すぎ、かつ浅すぎて話にならない)。

大切なことは、意見は意見であって、事実でもなんでもないということ、そして真実とは事実を自分なりに解釈した先に見えてくるものであると自覚することだ。ある作品が面白い、あるいはつまらないと感じたのであれば、その理由は大いに発信してよい。ただし自分と意見を異にする相手を否定してはならない。同じことは政治的な信条に関しても当てはまる。分断はしてもいい。ただし共存はせねばならない。映画に関しても色んな見方があっていい。ただしレビュワーがレビュワーを否定することは望ましくない。気に入らなければ無視するだけでよい。一部の界隈の不毛な論争は何も生み出していないと思う。

2024年最優秀海外映画
『 ソウルメイト 』

リメイクながらオリジナルを超える大傑作に仕上がった。キム・ダミはチョウ・ドンユイに勝るとも劣らない演技を見せた。生きることは生かすことという『 ルックバック 』同様の哲学を、まさにその生き様で証明するという凄絶な友情の物語。日本でもリメイクしてほしいという願望と、そのリメイクが駄作になってしまったら・・・という不安の両方を感じている。いずれにせ大傑作。シスターフッド映画のひとつの到達点と評したい。

 

次点
『 ブルーバック あの海を見ていた 』

犬と人間の絆というのは割とありふれているが、魚と人間の絆は相当に珍しい。そこに無類の映像美と人間ドラマ、そして社会的・環境問題的なメッセージが込められつつも、全体のバランスが整っているという傑作。

次々点

『 YOLO 百元の恋 』

こちらもリメイクながらオリジナル超えの傑作。監督兼主演のジア・リンの、力石徹も真っ青のまさに骨身を削る減量の様子が “Gonna Fly Now” と完璧にマッチしていた。青は藍より出でて藍より青し。中国映画の今後の躍進を予感させる逸品。

2024年最優秀国内映画

『 夜明けのすべて 』

現代社会が失いつつある「連帯」を描いた貴重な作品。同病相憐れむのではなく、同病相攻撃する=自己憐憫の度合いを競うような言説がSNSでよく見かけるが、そうした人々にこそ観てほしい作品。Even after the darkest nights, morning always comes.

次点

『 侍タイムスリッパ- 』

時代劇への愛情、さらに social misfits に対する温かく柔らかな眼差しに満ちた作品。生きることの意味を見失いがちな現代において、高坂新左衛門の生き様はそれ自体が強烈なメッセージになっている。太秦のスタッフが手弁当で撮影をアシストしてくれたという逸話があるが、それほど強烈な脚本で、その脚本の内容を適切に演出した監督、確かな演技で描き出した役者陣、そして裏方スタッフたちが一体で世に送り出した逸品。円盤化を待ち望むファンは数多い。

次々点

『 マリの話 』

こちらも低予算映画ながら、ホン・サンスの影響が色濃く反映された作品。ステージで監督自身が語っていた通りに、監督の願望や恋愛観や恋愛(失恋)体験も盛り込まれていて、陳腐ながらも非常に面白い。ロングのワンカットが多用されていて、まるで自分もその空間にいるかのように感じられたり、あるいは引きの視点から人物が小さく映され、二人っきりであることが強調されたりと、カメラワークも巧みで良かった。

2024年最優秀海外俳優

バンジャマン・ラベルネ

『 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 』でのラ・ボルドを、まさに血肉の通った人間として描出した演技を評価する。宮廷という、ある意味で魑魅魍魎が跋扈する伏魔殿に放り込まれた市井の女が生き残れたのは、王の寵愛以上にラ・ボルドの献身と奇妙な友情があったればこそ。

次点

ワン・イーボー

日本でも確実にマダムのファンを増やしつつある俊英。『 ボーン・トゥ・フライ 』と『 熱烈 』の両作品で、超が付くほどアクの濃いおっさんキャラと共演しながらも、自らのキャラをクールに演じきった点を評価する。

次々点

ラビ・キシャン

『 花嫁はどこへ? 』で小悪党的な警部補を怪演。アメリカの警察=汚職、韓国の警察=無能だが、インドの警察=汚職×有能という新しいイメージを創出したところがユニーク。

 

2024年最優秀国内俳優

山口馬木也

『 侍タイムスリッパ- 』で演じた高坂新左衛門というキャラクターの血肉化は素晴らしかった。武田鉄矢=金八先生、織部金次郎、西田敏行=浜崎伝助のような、代名詞とも言えるキャラクターを生み出せたのは、ひとえにそのシンクロ率ゆえ。今後、邦画における character study の代表として教材化されるに違いない。

次点

河合優実

『 あんのこと 』、『 ナミビアの砂漠 』での演技を評価する。薄幸の佳人のイメージが強く、本人もそうした役を好んで演じている点に好感を抱く。『 水は海に向かって流れる 』も、広瀬すずではなく河合優実で作り直してみてほしい。

次々点

内野聖陽

『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』でキャリア最高ともいえる演技を披露した。抑圧された公務員の姿はサラリーマンにも通じる。2024年はオッサンのファンを増やした年になったのではないか。

2024年最優秀海外監督

キム・ソンス

韓国議会のねじれ、その延長線上にある(らしい)戒厳令の発令で再び注目を集めることになった『 ソウルの春 』の演出を高く評価したい。権謀術数オンパレードで全編息継ぎする間もなく進んでいく圧倒的なスピード感と、結末で訪れる言いようのない虚無感は演技、撮影、音楽・音響、編集などをすべて統括した監督の手腕に他ならない。

次点

竹内亮

濃密なドキュメンタリー『 劇場版 再会長江 』のクオリティを評価したい。中国という、ある意味でアメリカやインドにも劣らない他民族国家の源流に迫ろうという試みの雄大さには、残念ながら日本の映画界では比べられるものがない。

 

次々点

クリストファー・ノーラン

『 オッペンハイマー 』の映像美と、敢えて見せないことでオッペンハイマーの心情を物語る演出を評価する。



2024年最優秀国内監督

安田淳一

『 侍タイムスリッパ- 』のヒットと『 ごはん 』のロングランを評価。映画作りを一種の作業ではなく自己表現や自己実現と捉えている点も併せて評価したい。○○組などと称して、同じスタッフで流れ作業的に映画を作る監督たちとは一線を画したままでいてほしい。

次点

笠井千晶

元々世間では一定の耳目を集めていたが、『 拳と祈り -袴田巌の生涯- 』の製作と公開でもって袴田姉弟の苦闘と日本の警察・司法の問題点をあぶり出した功績は果てしなく大きい。自分の考えを極力画面に映し出さず、丹念に事実と関係者の証言を追っていくスタイルに徹したのも素晴らしい判断だった。

次々点

堀江貴

『 最後の乗客 』の切れ味を評価。プロットには陳腐な箇所が多いが、ストーリーは観る側の心を動かす力を確実に有していた。

2024年海外クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 ゴジラxコング 新たなる帝国 』

アメリカに里子に出した息子が文字通りの意味でヤンキーになってしまった。ドハティからはゴジラに対する深い愛着とリスペクトが感じられたが、アダム・ウィンガードはゴジラを条件付きのフリー素材ぐらいにしか感じていないのではないか。

次点

『 トラップ 』

シャマランの作品というだけで観る側は否が応にも期待する。そして予測する。そうした予想をことごとく下回る展開の連続に、さすがに落胆させられてしまった。Is it about time for me to give up on Shyamalan? 

 

次々点

『 破墓 パミョ 』

相対評価ということで本作を選出。嫌悪の根底に恐怖があるのは理解できたが、さすがに「日本的なるもの」を色々と詰め込んでみましたというパッケージングは、韓国国内では通用しても国際的(特に日本)には通用しない。

2024年国内クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 変な家 』

序盤はミステリ風ながら、推理がすべて的外れというか、どういう思考回路をしていればそんな論理展開ができるのかと慨嘆させられた。この脚本の出来栄えで企画にゴーサインが出るというのが一番のミステリーである。中盤以降の超展開は、もはや家の間取りが変だとかどうこうとは関係のない、あまりにシュールな狂騒曲。珍品としての価値は認められるが、それは言い換えれば反面教師的な作品にしかならないということである。

 

次点

『 みなに幸あれ 』

一位とデッドヒートを繰り広げたが、僅差でこの位置に。弱者を搾取して生きているという現代社会の構図を生々しく描きたかったのだろうが、横溝正史的な演出がことごとく空振りで、単なる笑えないギャグにしかなっていなかった。

次々点

『 六人の嘘つきな大学生 』

これまた原作小説を単なるフリー素材としてしか見ていないかのような皮相的な作品。ミステリ部分がミステリでも何でもないし、犯行の動機も幼児レベル。そしてリアルであるべき採用活動が茶番(なんでカメラがそのタイミングから回っているんですかねえ・・・)になっているなど、ツッコミどころ満載の珍品。大学の映画サークルが作ったと言われても納得できそうなクオリティだった。

2025年展望

2025年に関してはJovianのオールタイム・フェイバリットの『 オズの魔法使 』の正統的な前日譚『 ウィキッド ふたりの魔女 』が楽しみだ。劇団四季のミュージカルで鑑賞済みだが、映画がこれをどう料理してくるのか。邦画では『 フロントライン 』が、コロナの最前線で闘っていたのは男性がメインであるかのように描かれていることから大いに不安を煽ってくる。

 

生成系AIがますます進化して、物語、音響に音楽、画像に映像まで、個人でもある程度は作れてしまう時代になった。『 カランコエの花 』の中川駿監督の言う通りに「美意識」をしっかり持った人であれば誰でも映画監督になれる時代の到来である。実際、『 8番出口 』のパロディ動画や、各種の怪獣系の動画などが某プラットフォームに続々アップされている。ここから新しい才能が芽生えてくるのは間違いない。一方で『 JUNK HEAD 』の堀貴秀のような才能は出てこなくなるような懸念もある。

 

いずれにせよ2025年が良い年になることを願う。戦争はゲームや映画の中のコンテンツとしてだけ消費したい。

 

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Posted in 国内, 映画, 海外Leave a Comment on 2024年総括と2025年展望

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』 -ナードのビルドゥングスロマン-

Posted on 2024年12月31日2024年12月31日 by cool-jupiter

I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 70点
2024年12月31日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:アイザイア・レティネン
監督:チャンドラー・レヴァック

 

2024年の締めくくりにテアトル梅田へ。大晦日の夕方でも結構な客の入りだった。

あらすじ

トロント郊外で母親と暮らすローレンス(アイザイア・レティネン)は無類のシネフィルで、NYUで映画を学ぶための学費のため、地元のレンタルビデオ店でアルバイトを始めた。そのために唯一の親友マットとの時間が減り、また高校の卒業式に上映する記録映画の製作にも遅れが出て・・・

 

ポジティブ・サイド

これはおそらく『 ルックバック 』同様に、監督の自伝的な作品なのだろう。コミュニケーションが下手というか、あまりにも直球過ぎるところがナード気質満開で、顔、表情、体型、仕草などとも併せてオタクの典型とも言うべきキャラを生み出した。それが映画オタクで、自分でも学校のプロジェクトで映画を撮っているという導入はパーフェクト。

 

この年齢の若者が時々陥る肥大化した自我の罠に、ローレンスも見事にはまっているのはオッサン視点から面白くもあり、物悲しくもある。今すぐにでも思考を改めないと、そのまま大人になってしまうと矯正が難しいから。ここでバイト先のレンタルビデオ店のマネージャーと母親が中盤以降に大活躍。凡庸ではあるが、元SMAPメンバーのやらかしが報じられる今だからこそ刺さるエピソードも盛り込まれている。

 

ローレンスが家を離れてから見せる成長には、我あらず涙が。『 ライオン・キング

ムファサ 』でタカが犯した失敗を繰り返さなかった。これもやはり母とアラナのおかげか。実家や故郷を離れれば殻を破れるわけではない。自分というものを抑えることで破れる殻もある。10代の時に本作を観てみたかったなとしみじみ思う。

 

ネガティブ・サイド

ローレンスとマットの creative differences をほんの少しで良いので見せてほしかった。「女だけは自分が一番大事にしてきたものの隣にあっさり座る」と喝破したのは柴田ヨクサルだったか。マットにとってのローレン・Pがまさにそれで、そこには説得力があった。しかし、彼女の編集の腕が一切示されなかったので、マットが思い出動画の作成に取り組む姿勢がどう変わったのか分からず、ローレンスと疎遠になってしまう契機がやや不明瞭だった(まあ、決定的なのは jerk off ninety-eight times だろうが)。

 

総評

舞台が2003年ということで、まさにJovianの20代前半、TSUTAYAが日本を席巻していた頃で、デジカメも普及しつつある、まさに映画と普通の人間の距離が近くなっていった時代だった。一方でスマホやSNSなどはなく、人と人とが直接的につながっていた時代でもあった。AIによって文章や画像、音楽や映像ですら手軽に生み出せる時代になったが、そんな時に古き良き時代を思い起こさせてくれる一本だった。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

school night

翌日に学校がある夜、登校日の前夜の意味。映画などでしばしば親が夜更かしする子に 

It’s a school night!
明日は学校でしょ!

と言っている。学校に行った当日の夜ではない点に注意が必要である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』
『 港に灯がともる 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アイザイア・レティネン, カナダ, ビルドゥングスロマン, 監督:チャンドラー・レヴァック, 配給会社:イーニッド・フィルムLeave a Comment on 『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』 -ナードのビルドゥングスロマン-

『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

Posted on 2024年12月30日 by cool-jupiter

ライオン・キング:ムファサ 50点
2024年12月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アーロン・ピエール ケルビン・ハリソン・Jr
監督:バリー・ジェンキンス

 

『 ライオンキング(2019) 』前日譚ということでチケット購入。

あらすじ

シンバは息子キアラの世話を旧知のラフィキ、ティロン、プンバァに託す。ラフィキはそこで、偉大な王ムファサの物語をキアラに語り掛けて・・・

ポジティブ・サイド

CGの美しさは言わずもがな。風景に至っては、最早一部は実写と見分けがつかない。水のシーンは『 ゴジラ-1.0 』の海のクオリティにも決して劣らない。

 

前日譚ではあるが、前作のキャラも大量に登場。やはりプンバァとティロンが出るだけで『 ライオンキング 』の世界という感じがする。ザズーとムファサの出会いが描かれていたのも個人的にはポイントが高い。

 

ライオンの習性というか、オスの旅立ちとはぐれライオンによるプライドの乗っ取り、まったく赤の他人のオス同士が広大なサバンナでたまたま出会い、パートナーになっていくなど、近年の調査で明らかになりつつあるライオンの実像を盛り込んだストーリー構成も悪くない。

 

随所に「おお、これがあれにつながるのか」というシーンが盛り込まれていて、前作ファンへのサービスも忘れていない。

 

命の輪のつながりを実感させるエンディングは予想通りではあるものの、非常にきれいにまとまった大団円だった。

ネガティブ・サイド

楽曲がどれも弱かった。”He lives in you.” や “Can you feel the love tonight?” は再利用不可能だとしても、せめて “Circle of Life” は聞きたかった。命の輪について劇中で何度も触れるのだから、なおさらそう感じた。

 

若き日のスカーであるタカが色々な意味で可哀そう。Like father, like son.という言葉があるが、父親のオバシのある意味で過保護と歪な愛情がタカを作ったわけで、タカそのものは悪戯好きな、よくいる子どもに過ぎない。また母のエシェもムファサに向ける愛情のいくらかを実子のタカに向けられなかったのか。子どもにとって親から信頼されることと親から愛されることは似て非なるもので、前者よりも後者の方が必要なはず。

 

ムファサもタカに命を救ってもらい、プライドにも(中途半端ながら)加入させてもらったことに一度もありがとうと言っていないところも気になった。タカの傷にしても、なにか辻褄合わせのように見えた。Let’s get in trouble もっと幼少期のムファサとの遊びの中で、ムファサの不注意で、あるいはムファサをかばったことで負った傷という設定にはできなかったか。

 

総評

鑑賞後のJovian妻の第一声は「タカが可哀そう」だった。Jovianもこれに同意する。詳しくは鑑賞してもらうしかないが、このストーリーは賛否の両方を呼ぶと思われる。ただし誰にとっても楽しい場面はあるし、楽曲のレベルも低いわけではない。家族で見に行くにはちょうどいい塩梅の物語とも言える。チケット代を損したという気分にはならないはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

steal one’s thunder

直訳すれば雷を盗むだが、実際は「お株を奪う」、「出し抜く」の意。

You’re closing deals with companies A, B, and even C? You’re stealing my thunder!
A社、B社、さらにC社とも契約を結べそうだって?俺の出番を奪わないでくれよ!

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』
『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーロン・ピエール, アメリカ, ケルビン・ハリソン・Jr., ミュージカル, 監督:バリー・ジェンキンス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

Posted on 2024年12月17日 by cool-jupiter

地獄でも大丈夫 70点
2024年12月14日 第七藝術劇場にて鑑賞
出演:オ・ウリン パン・ヒョリン チョン・イジュ
監督:イム・オジョン

 

風邪でダウン中のため簡易レビュー。

あらすじ

いじめに苦しむナミ(オ・ウリン)とソヌ(パン・ヒョリン)は、修学旅行に参加せず、二人で心中をしようとするも断念。死ぬ前に、いじめグループのリーダーだった、現在はソウルにいるチェリン(チョン・イジュ)に復讐するため、2人だけの修学旅行へと旅立つが・・・

ポジティブ・サイド

韓国や中国、アメリカの映画はいじめを真正面から描くことが多いが、本作はいじめっ子に立ち向かう過程にロードムービーかつバディものの要素を取り入れたところが新鮮。

 

復讐しようとした対象が、思いがけない姿に変わってしまっていたというところも意外性があり、面白い。そして、そんな相手に対峙した自分の心境がどう変わったのか、あるいは変わらなかったのかを素直に吐露する場面の緊迫感も素晴らしかった。

 

ナミとソヌの女の友情の中にもとんでもない爆弾が仕込まれていたりと、どうしてなかなか練られた脚本。物語の行き着く先は韓国アニメ映画『 フェイク 我は神なり 』や、日本では『 星の子 』あたりと同じく宗教的な方面へ。信じる者は救われると言うが、救われるべきは信じる者とは限らない。日本でも宗教二世の問題がやっと認知されつつあるが、歴史上の宗教戦争の99%が経済的搾取が目的だったように、歴史上の不況の99%はビジネスなのである。

 

いじめとは異なる地獄を体験するナミとソヌだが、そんな二人が旅路の果てに見出した真理は陳腐ではあるが尊い。願わくば、二人が『 ソウルメイト 』のようにならないことを祈るばかりである。

ネガティブ・サイド

序盤の自殺失敗シーンだが、あれでは実は助けられないのでは?重力とは上から下向きに作用するので、本当に助けるためには真下から真上に力を与えなくてはいけない。

 

楽園とは何だったのだろうか。いや、想像はつくが、もう少し明示的にしてくれてもよかったのではなかろうか。

 

総評

イム・オジョン監督はこれが長編デビュー作だという。ビジュアル感覚や役者の表情の切り取り方などで、すでに自分のスタイルを確立しているように感じられた。インディー映画のように撮影して商業映画のように成立させる監督というのは、韓国にはちらほらいるが、日本ではほぼ見当たらない。そういう意味でもお国柄および国のバックアップ体制の違いが見て取れる作品。シスターフッドものが好みなら、ぜひ劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャムカンマン

「ちょっと待って」の意。ただし「待つ」という動詞はここにはなく、「ちょっと」という副詞だけがある。英語にすると Just a minute あたりだろうか。 日本語同じく、不可解な状況などに接した時にも発せられる。英語で言う “Wait a minute.” と同じ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 レッド・ワン 』
『 ライオン・キング:ムファサ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, オ・ウリン, チョン・イジュ, パン・ヒョリン, 監督:イム・オジョン, 配給会社:スモモ, 青春, 韓国Leave a Comment on 『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

『 対外秘 』 -毒を食らわば皿まで-

Posted on 2024年12月15日 by cool-jupiter

対外秘 65点
2024年12月13日 kino cinéma 心斎橋にて鑑賞
出演:チョ・ジヌン イ・ソンミン キム・ムヨル
監督:イ・ウォンテ

 

シネマート心斎橋が閉館、その後釜にやって来たkino cinéma 心斎橋の初日ということでチケット購入。座席の座り心地が向上し、なおかつ勾配がついて後ろの座席からの視認性がアップしていた。

あらすじ

釜山出身の政治家ヘウン(チョ・ジヌン)は党の公認を得て国政選挙に出馬しようとするものの、地元のフィクサーであるスンテ(イ・ソンミン)により公認を取り消されてしまう。怒りに燃えるヘウンは無所属で立候補する。そして対外秘である国家事業のプサン再開発プロジェクトの資料の中身を入手。それを使って地元で貸金業を営むヤクザのピルド(キム・ムヨル)を陣営に引き込み・・・

 

ポジティブ・サイド

軍事政権崩壊後、民主化の途上にある韓国、釜山から国会議員を志すヘウン。地元で生まれ、地元で育ち、地元を愛する青年政治家の希望に満ちた表情が、公認を外されたことで恨(はん)の表情に変わっていき、その顔もやがて修羅になっていく。主演のチョ・ジヌンの顔面の演技力には驚かされるばかり

 

『 犯罪都市 PUNISHMENT 』で寡黙ながら常に相手の隙とさらに上の地位を狙う悪訳を演じたキム・ムヨルが、本作でも同レベルの好演を見せる。ベンチャーキャピタルという名目で貸金業を営みながら、同時にモーテルで違法賭博を隠れ蓑にした贈賄も行うという知能犯。もちろん腕っぷしの強さも見せてくれる。ヘウンとスンテの間で揺れ動く心情を言葉ではなく表情だけで描き切ったのも見事。

 

釜山の実力者のスンテは土地開発だけではなく方法にまで介入。殺人すらもいとわぬフィクサーで、投票の操作もなんのその。私利私欲で動く政治と経済への寄生虫。一方でヘウンや自らの子飼いの候補者たちに「国に忠誠を誓え」、「国民に奉仕しろ」と伝える。うそぶいているのか、本気でそう言っているのかを測りかねるところが、このキャラに単なる巨悪に留まらない深みを与えている。

 

虚々実々の裏工作合戦で最後に生き延びるのは誰なのか。鑑賞後の妻の第一声が「ヤクザ、ええ人やん」だった。実際はいい人でもなんでもなく完全なる悪人なのだが、ヘウンやスンテがあまりにもどす黒くなっていくため、そのように錯覚してしまったのだろう。「選挙は広報の総合格闘技」とは某社長の言だが、これを韓国風に言えば「選挙は裏工作の総合格闘技」となるだろうか。韓国の政治系ノワールの新たな佳作である。

 

ネガティブ・サイド

暗黒面に支配されていくヘウンとは対照的に、ヘウンの妻や報道の使命遂行に燃える若き記者など、変わらない面々もいる。彼女たちのその後がどうなったのかを少しで良いので知りたかった。

 

ピルドのVCの事務所はおんぼろビルの3Fあたりではなかったか。そこに車で突っ込んでいくシーンがあるが、空飛ぶ車でも使っていたのだろうか。

 

ドンデン返しの一つがあまりにも荒唐無稽で、驚きはあったものの納得はできなかった。その人物のその後の結末が悲惨極まりなく、そのシーンを映すために復活させたのかと邪推してしまった。

 

総評

我が兵庫県の知事選挙が全国的なスキャンダルとなり、真相の究明も今なお遠い。本作の製作国の韓国でも、大統領による戒厳令は不正選挙の証拠応酬のためというニュースもあった。民主主義の主役は本来は一般大衆。しかし、その一般大衆は実は「収穫」されるだけの存在なのか。本邦が『 決戦は日曜日 』を作る一方で、韓国は本作を作る。自国の暗部をどのような形でさらけ出すのかで民度というものが見えてくるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。学校でも職場でも先輩は大事。しかし「こいつは敵だ」と認識すれば、潰しに行くのが韓国らしい。上司に苦情を寄せたことで部署異動させられたJovianは、この姿勢を他山の石とすべきなのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 地獄でも大丈夫 』
『 レッド・ワン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ソンミン, キム・ムヨル, クライムドラマ, チョ・ジヌン, 監督:イ・ウォンテ, 配給会社:キノフィルムズ, 韓国Leave a Comment on 『 対外秘 』 -毒を食らわば皿まで-

『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

Posted on 2024年11月18日 by cool-jupiter

シングル・イン・ソウル 65点
2024年11月15日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:イム・スジョン イ・ドンウク
監督:パク・ボムス

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

小さな出版社勤務のヒョンジン(イム・スジョン)は、大都市でのシングル・ライフに関するエッセイ本を手がけることになる。そこで予備校で小論文指導をして、SNSでもシングル・ライフについて発信するヨンホ(イ・ドンウク)に執筆を依頼するが・・・

ポジティブ・サイド

主人公ヒョンジンは年齢不詳ながら、おそらくアラサー(大学の先輩であるヨンホが飲酒可能な学生時代から数えて11年だったので)。それにしてはメルヘンチックな幻想を抱き続ける姿が面白い。一方でエッセイを執筆することになるヨンホも、独身貴族生活を満喫しつつも、過去の恋愛を引きずっている姿が物悲しくも面白おかしい。二人が距離を縮めていきながらも男女の仲を予感させないストーリーは、一昔前だと考えられない構成。しかし本作はそこにリアリティがある。出版社の同僚たちもキャラが立っていて、それぞれに見せ場がある。

 

本作の見どころの一つは非常にぎこちないキスシーン。『 ロッキー 』で、ロッキーとエイドリアンが玄関でキスするシーンとは一味違った、非常に不器用なキスが描き出される。これはこれでリアルだと感じた。

 

初恋を美化する男の悪癖が今作でも強調されていたのもリアルだった。記憶の美化は、たいてい『 青春18×2 君へと続く道 』のように、印象的な瞬間を忠実に脳裏に焼き付けておくことで起こる。本作は一味違うパターンだが、こうした記憶の仕方を知らず知らず実行してしまっている男性はかなり多いと思われる。

 

ネガティブ・サイド

100分ちょっとという上映時間にして、間延びしているように感じられた。フォーカスがヒョンジンのロマンスなのか、キャリアなのか、家族の関係なのか、色んなところに飛ぶので、それだけ展開のテンポが悪くなってしまっていた。

 

ヨンホ仕事=小論文指導をしているシーンが少なかった。講義の中で彼が「書く」という営為をどのように捉えているのかをもっと語ってくれていれば、エッセイの中身や彼自身のバックグラウンドにさらに深みが生まれたものと思う。

 

総評

韓国には負けるものの、日本もかなりの未婚社会になってきた。お一人様を満喫するのか、それとも伝統的な価値観に抗うことに疲れながら生きるのか。そのあたりのヒントが得られないこともない。さわやかなストーリーではあるが、デートムービーには適しない点には注意が必要。案外、DINKSで鑑賞するのが最も良いのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。ソンベニム=先輩様という形で使われることもあるが、本作ではソンベだった。先輩後輩を強く意識するのはアジアでは日本と韓国ぐらいだろうか。韓国からの留学生も増えているので。案外今どきの大学生は知っている語彙かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オアシス 』
『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ドンウク, イム・スジョン, ラブロマンス, 監督:パク・ボムス, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

Posted on 2024年11月9日 by cool-jupiter

破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン

 

チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。

あらすじ

巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。

 

「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。

 

改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。

 

日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。

 

ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。

 

日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。

 

まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。

 

総評

土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

トッケビ

超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』
『 オアシス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イ・ドヒョン, キム・ゴウン, チェ・ミンシク, ホラー, ユ・ヘジン, 監督:チャン・ジェヒョン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

Posted on 2024年11月4日 by cool-jupiter

トラップ 50点
2024年11月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョシュ・ハートネット
監督:M・ナイト・シャマラン

 

Jovianのカナダ人の友人は ”I gave up on him.” と語ったが、Jovian自身はまだ少しシャマランに期待しているためチケット購入。

あらすじ

クーパー(ジョシュ・ハートネット)は愛娘ライリーが学校で好成績を収めたご褒美に、人気の歌姫レディ・レイブンの追加コンサートに連れて行く。しかし、会場は異様なまでの厳重警備。実はコンサートそのものが連続殺人鬼ブッチャーを捉えるための仕掛けだったのだ・・・

以下、逆説的なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

あまりに色々と感想を書くと、それだけでネタバレに近づく。なのでJovianが鑑賞前に予想していたプロットをいくつか下に紹介してみたい。

 

1.実はサイコパスは父親ではなく娘の方。父親は何も知らない娘を必死で逃がそうとしているだけ。

2.実はトレイラーにある口の軽い従業員の話はジョーク。レディ・レイブンが用心深い人物なので本当に会場が厳重に警備されているだけで、クーパーは独り相撲を取っている。

3.実は『 デビル 』と同じ世界で、シリアル・キラーが悪魔に追い詰められていく。 

 

仮説1はたいていの人が思いつきそう。2はフレドリック・ブラウンのとある小説とそっくり。興味のある人は短編以外の中から探してみよう。3は『 アイム・ノット・シリアルキラー 』に着想を得た。

 

本作は視点操作がユニークで、スマホやカメラ、果ては銃のスコープなど、何かを通じて何かを見るという行為の危うさが示唆されている。また『 ザ・サークル 』のようなSNSの力がこれでもかと示されるのも現代的。

 

サスペンスとして観れば間違いなくアベレージ以上の作品。

 

ネガティブ・サイド

警察がかなり無能。というか、現場に入る心理学の博士が無能というべきか。もちろん、そうしないことには脱出は無理ゲーになるのだが、クーパーが機転を利かすというよりは博士の手腕に疑問符が付くという展開が多かったと感じた。

 

娘の同級生とその母親とのいざこざのくだりはバッサリとカットしてよかったのでは?

 

コンサート会場以外にも、車や家などからも脱出しまくる。ここまで来るとギャグの領域。

 

総評

映画や小説を楽しむ方法は、1)事前にストーリーを予測する、と2)事前情報一切なしで臨む、の二つに大別される。本作はどちらのアプローチも可能だが、できれば2)の方が望ましいのかな。理想は本作がシャマラン映画の初体験であること。まあ、そんな観客は圧倒的少数派だろうけれど。楽しむためにはシャマランらしさ=大どんでん返しを期待しないことが肝要である。できるだけ頭を空っぽにして、深く考えずライトに楽しもう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crispy

元々は食べ物がサクサク、パリパリのような意味で、Longman Dictionary では food that is crispy is pleasantly hard on the outside = クリスピーな食べ物は外側が心地よい硬さであると定義されている。一方、urban dictionary では if something or an act that someone does is good or looks cool (by BigSexyBuffalo April 3, 2017)となっている。Jovianは大学でも教えていたので、現代日本の若者言葉にはそれなりについていけていたが、英語の現代スラングとなると少々弱い。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 破墓 パミョ 』
『 スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 』
『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, サスペンス, ジョシュ・ハートネット, 監督:M・ナイト・シャマラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

『 マーズ・コンタクト 』 -アイデアの検証と追求が足りない-

Posted on 2024年10月26日 by cool-jupiter

マーズ・コンタクト 20点
2024年10月25日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:アレクサンデル・クリコフ アンドレイ・スモリャコフ
監督:アレクサンデル・クリコフ ミハイル・ラスドニコフ

 

近所のTSUTAYAでパッと見て借りてきた。Sometimes, I’m in the mood for garbage.

あらすじ

ロシアの火星探査船に事故が発生。司令官のチャパエフ(アレクサンデル・クリコフ)は脱出戦を切り離してクルーを救うも、自身は火星に取り残されてしまう。チャパエフの救出を試みる地球だが、いつしか彼との交信をテレビ番組にしてしまう。一方でチャパエフは謎の音が聞こえると主張し始め・・・

 

ポジティブ・サイド

設定は『 ミッション・トゥ・マーズ 』+『 レッド・プラネット 』+『 オデッセイ 』。そこにテレビ番組要素をつけ加えたのが、変化球的でユニークだと感じた。テレビは教育的でもある一方で、衆愚の元にもなりうるということが示されていた点は評価していい。

 

ネガティブ・サイド

『 レッド・プラネット 』のようにロボットが暴走するのではないなら、そもそもロボットは不要では?

 

ロボットが大暴れしないのなら、ジョニー・デップとシャーリーズ・セロンの『 ノイズ 』的な展開か?と思わせて、え、そっちかい???という方向へ。

 

最後も、あーこれはひょっとして『 アーカイブ 』なのか?と思わせて、やっぱりそっち方面だった。どうせなら小説『 地球最後の男 』的な方向に行った方がまだインパクトは強かったかもしれない。もしくは『 アド・アストラ 』のように、救助のためにひたすらに火星を目指したものの、チャパエフは・・・という展開は選択肢になかったのか。

 

『 マーズ・ミッション2042 』と同じく、火星と地球でほぼリアルタイムで通信してしまっているが、中国もロシアもいつの間に超光速通信技術を開発してしまったのか。火星と地球の最短距離でも数分のラグが発生するわけで、そこを無視して宇宙飛行士チャパエフ

子ども向けの科学教育番組のホストをさせるのは茶番以外の何物でもない。

 

じいさんが唐突に見せる格闘アクションも不要。元スペツナズか何かなのか?

 

作り手の見せたいもの、訴えたいものがバラバラで、ストーリーのテンポもすこぶる悪い。1時間30分が2時間30分に感じられた。C級SFだとは分かっていたが、E Rank とまで予想していなかった。そうそう、本作を鑑賞しようという好事家には原語のロシア語ではなく英語音声をお勧めしておく。

 

総評

古代ローマから現代まで、火星はおそらく太陽、月に次ぐインスピレーションだった。というわけで火星に関する映画も大量に生産されてきた。本作は残念ながら粗製乱造の粗悪品の一つ。ただ、余計なものを取り除いて、光る部分に特化すれば十分に面白くなれる下地はある。ある意味、本作を通じて映画作り、広くは製品やサービスの開発について学ぶことができるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

forsake

英語タイトルは Forsaken 。ナザレのイエスの最後の言葉とされるエリ・エリ・レマ・サバクタニは英語では My God, my God, why have you forsaken me? と訳される。日本語(新共同訳)では「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」となる。forsakeという語を知っていれば、それだけで英検準1級以上だろう。ちなみにこの動詞は take と同じように、forsake – forsook – forsaken と活用する。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 破墓 パミョ 』
『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, E Rank, SF, アレクサンデル・クリコフ, アンドレイ・スモリャコフ, ロシア, 監督:アレクサンデル・クリコフ, 監督:ミハイル・ラスドニコフLeave a Comment on 『 マーズ・コンタクト 』 -アイデアの検証と追求が足りない-

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