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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 映画

『 聖闘士星矢 The Beginning 』 -原作を読み違えている-

Posted on 2023年5月4日 by cool-jupiter

聖闘士星矢 The Beginning 30点
2023年5月2日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:新田真剣佑 マディソン・アイズマン ショーン・ビーン ファムケ・ヤンセ
監督:トメック・バギンスキー

 

妻が観たいと言うのでチケット購入。駄作だろうと思っていたが、その予感は正しかった。

 

あらすじ

地下格闘技を生業にする星矢(新田真剣佑)は、ある時「小宇宙(コスモ)」を発揮する。そのことからアルマン(ショーン・ビーン)と出会い、自身がアテナの生まれ変わりであるシエナ(マディソン・アイズマン)を守る聖闘士だと知ることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

コスチュームデザインは許容範囲。何もかも漫画通りだと動くに動けない。そのなかでも魔鈴さんの聖衣のデザインは原作に忠実で良かった。

 

漫画では常に受け身で、冥王ハーデス編まで戦わなかったアテナだが、今作では神の力を出し惜しみしなかった。

 

一番の驚きは辰巳=マイロック。漫画の方では冷酷かつギャグキャラというポジションのおっさんだったが、本作ではブラック聖闘士を次々に撃退するという、超絶有能執事兼ボディーガードに生まれ変わった。この愛をほんの少しでも何故、星矢に注いでやらなかったのか・・・

ネガティブ・サイド

タイトルの The Beginning からして続編を作る気満々らしいが、これが導入では、とてもその機運は盛り上がらないだろう。製作者や脚本家、監督は漫画『 聖闘士星矢 』の魅力を読み違えているとしか思えない。

 

第一に、聖闘士星矢の面白さの源泉は小宇宙(コスモ)にある。そして、小宇宙の強さは見た目に関係ない。原作で瞬が秘密にしていた実力を披露して、師匠の聖衣をバラバラに砕いたところで、当時の読者も後の読者もびっくりしたのだ。今作では無駄に筋肉の鎧をまとった真剣佑にケンカ自慢のチンピラ(こいつがカシオスかよ・・・)のバトルがメインで、思わず「それは小宇宙の本質ちゃうがな・・・」と思いながら鑑賞していた。

 

第二に、聖闘士星矢の魅力は孤独と仲間の発見である。原作では紫龍や氷河たちは異母兄弟でありながら、数々の激闘を通じて本物の兄弟たちになっていく。友情・努力・勝利という少年ジャンプ的な黄金律のひとつ、友情を兄弟愛にまで昇華させた、その熱量が本作には決定的に欠けていた。

 

第三に、技名を大袈裟に叫びながら必殺技のポーズを決める、あの原作漫画の様式美が一切再現されていなかった。大画面でペガサス流星拳や鳳翼天翔を英語で絶叫しながら放つビジョンは監督の頭の中になかったのか。それがないのなら、そもそも監督したらアカンよ。

 

他にも戦闘ヘリがクルマをチェイスしたりといったアクション・シークエンスはそもそも馴染まない。せっかくギリシャ神話の世界観を現代に持ち込んでいるのに。

 

CGがしょぼい。製作費がウン十億円らしいが、キャストにそこまでカネはかかっていないはず。だとすれば裏方だが、この低クオリティCGは何なのか。幻魔拳とか、ほとんど何も見えなかったのだが。

 

総評

原作ファンを喜ばせようという気持ちではなく、真剣佑を売り出そうという思惑で製作されたようにしか見えない。次作があるとして、そこでギャラクシアン・ウォーズ?その後に二部作で聖域十二宮編?聖闘士星矢の魅力をしっかり引き出せる脚本家を探すのが急務だが、一作目からこれでは先が思いやられるとしか言いようがない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

swear allegiance to ~

~に忠誠を誓う、の意味。同じ意味で pledge allegiance to ~ も使われるが、使用頻度は swear の方が高い。Do you swear allegiance to the Emperor? という時代に回帰しないようにしてほしいかな。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 不思議の国の数学者 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, アクション, ショーン・ビーン, ファムケ・ヤンセン, マディソン・アイズマン, 新田真剣佑, 日本, 監督:トメック・バギンスキー, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 聖闘士星矢 The Beginning 』 -原作を読み違えている-

『 ザ・ホエール 』 -珠玉の人間ドラマ-

Posted on 2023年5月1日 by cool-jupiter

ザ・ホエール 80点
2023年4月29日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

出演:ブレンダン・フレイザー セイディー・シンク ホン・チャウ
監督:ダーレン・アロノフスキー

 

元同僚のカナダ人友人の強い勧めで鑑賞。今年の海外映画のベストの一作であることは間違いない。

あらすじ

チャーリー(ブレンダン・フレイザー)は過去のある出来事から、過食に走ってしまい、歩行器なしでは歩けないほどの肥満になってしまった。友人であり看護師のリズ(ホン・チャウ)に支えられながら生活していたが、うっ血性心不全の発作から自らの死期が近いことを悟る。チャーリーは、かつて自らが捨ててしまった娘のエリー(セイディー・シンク)と再会するが・・・

 

ポジティブ・サイド

クジラ=巨体、クジラ=脚がない、クジラ=鯨飲馬食(馬は違うか・・・)のようなイメージをそのまま演じきったブレンダン・フレイザーに拍手。男同士のまぐわうポルノ動画を観ながら、突如心臓発作を起こし、偶然に尋ねてきた宗教勧誘員にエッセイを音読してくれと頼む姿に、一気に物語世界に引き込まれてしまった。

 

チャーリーと親友リズの心地よい関係とその関係の反転、娘エリーとの縮まらない距離感、執拗に宗教に勧誘してくるトーマスとの距離感、そして元妻との間にある断絶と、しかしエリーという娘の存在によってつなぎとめられる絆。2時間の中でチャーリーと彼を取り巻く人間たちのドラマが大きなうねりとなって観る側を飲み込んでいく。

 

娘エリーがとんでもないクソガキなのだが、彼女の取る行動の一つが思いもかけない福音となる。人間、何が救いになるのか分からない。同時に、とあるキャラクターのとある行動がチャーリーを大いに苦しめる。まあ、そらそうなるわな。人間、何が攻撃になるかなんて分からない。

 

虎は死んで皮を残すと言われるように、クジラの死骸は海底で独自の生態系を形成する媒体となる。チャーリーの職業は大学の講師で、時々大学の正課・課外授業を担当するJovianとそっくり。人間が死後に残せるのは言葉。そしてその言葉の力は時に奇跡を起こす。リズの言う “I’ll wait downstairs.” という台詞が非常に寓意的だ。死を迎えんとするチャーリーが起こす奇跡に我あらず涙してしまった。

 

ネガティブ・サイド

宗教批判をするなら、ニューライフではなく、普通のキリスト教のセクトか、あるいはモルモン教(これは一瞬だけ言及されていたか)やエホバの証人の名前を使えばよかったのに。なにか不都合があったのだろうか。

 

総評

主な登場人物は5人。舞台はほとんどすべてチャーリーのアパート内。時間にしてわずか1週間足らず。それでこれだけ濃密な人間ドラマが描けるのだから、やっぱり脚本というのは大事だなと実感。同時にその脚本の文字を映像に昇華させる監督の演出力。そして監督のビジョンを体現する役者と裏方スタッフの努力。『 ザ・メニュー 』で強烈な印象を残したホン・チャウは本作でも素晴らしかった。間違いなく今年のベストの一作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

debt

借金の意。デットと発音する。序盤でリズがチャーリーに Being in debt is better than being dead. =死ぬより借金の方がましよ、と告げるシーンが印象的だった。debt と dead が韻を踏んでいることにも注目したい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 不思議の国の数学者 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, セイディー・シンク, ヒューマンドラマ, ブレンダン・フレイザー, ホン・チャウ, 監督:ダーレン・アロノフスキー, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 ザ・ホエール 』 -珠玉の人間ドラマ-

『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』 -イラン社会特有の病理と思うなかれ-

Posted on 2023年4月30日 by cool-jupiter

聖地には蜘蛛が巣を張る 70点
2023年4月26日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:メフディ・バジェスタニ ザーラ・アミール・エブラヒミ
監督:アリ・アッバシ

 

監督の名前だけでチケット購入。

あらすじ

イランの聖地マシュハドで、娼婦だけを狙うスパイダー・キラーという連続殺人鬼が出現。住民は不安に慄くが、犯行を支持する者もいた。女性ジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)は独自に事件を追っていくが・・・

ポジティブ・サイド

娼婦ばかりを狙う殺人鬼では『 チェイサー 』が思い出されるが、本作は社会の底辺で繰り広げられる追跡劇ではなく、広く社会全般に蔓延する空気の淀みに息が詰まる。そしてその空気とは女性蔑視。

 

ただのオッサンが淡々と娼婦を買い、淡々と殺しては淡々と捨てていく。それを追うジャーナリストの女性が周囲から受ける奇異の眼差しが突き刺さる。

 

一見して普通の人が大量殺人犯だったという真相の裏に、戦争で死ねなかった、あるいは戦争がもっと続けば功成り名遂げるチャンスもあったという想いがあったのではないか、という仮説を提示しているところが、なんとなく『 殺人の追憶 』を彷彿させる。

 

サイードの宗教観と、彼の家族の事件の受け止め方に戦慄させられる。これをイスラム社会およびムスリムの特異性と受け取るか、それともあらゆる文化は相対的に特異であると受け取るかで、本作の評価はガラリと変わるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

サイードの家族だけが異様に映ってしまうが、サイードのかつての軍隊仲間の家族たちの様子や、治安の悪化を不安がっていた近所の人々のサイード逮捕後の反応なども描いていれば、イラン社会の不安定さと、それゆえの変化への希望と絶望の両方が表せたのではないだろうか。

 

裁判シーンか、それに関連するシーンをもう少し増やして、イスラム法がどのようなものなのかを観る側に知らせてくれても良かったと思う。あるいは傍聴人同士の会話や新聞、ニュース番組、SNSのやりとりなど、何故かくもサイードが支持されるのか非イスラム圏にも、もう少し伝わりやすくしてほしかった。

 

総評

『 ボーダー 二つの世界 』で描かれた、人間と人間とは異なる存在が交わることなく存在する世界同様に、本作では男と女という交わるのだが交わらない存在、その位相の非対称性が強く打ち出されている。殺害シーンはかなりショッキングなので注意のこと。本作を他山の石にできるかどうかが、その文化圏あるいは視聴する個人の一種のテストであるかのように感じられる。

 

Jovian先生のワンポイントペルシャ語レッスン

キー

誰、の意味。劇中に何度も何度も聞こえてくるので、さすがに分かる。ラテン語の qui が元になっているのかな、などとあらぬことを一瞬考えた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ザーラ・アミール・エブラヒミ, サスペンス, スウェーデン, デンマーク, ドイツ, フランス, メフディ・バジェスタニ, 監督:アリ・アッバシ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』 -イラン社会特有の病理と思うなかれ-

『 ヴィレッジ 』 -ムラ社会のダークサイド-

Posted on 2023年4月23日 by cool-jupiter

ヴィレッジ 75点
2023年4月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:横浜流星 黒木華
監督:藤井道人

藤井道人監督ということでチケット購入。

 

あらすじ

片山優(横浜流星)は、死んだ父の犯した罪と母親の借金のために、故郷の霞門村で肩身を狭くして生きていた。ある日、ゴミ処理場で働く優は、東京から帰ってきた昔馴染みの美咲(黒木花)と再会することになり・・・

ポジティブ・サイド

能の場面、そして『 三度目の殺人 』を彷彿させる火から始まるオープニングに、剣呑な空気が充満している。

 

村で生きる優の能面のような表情と、その内に封じ込められた激情の対比が序盤と中盤の分かれ目。霞門村のシステムに取り込まれることで豊かな表情を取り戻していく優の姿に、観る側は非常にアンビバレントな気持ちにさせられる。

 

この「閉鎖社会から出ていこうにも出ていけない」あるいは「出ていったはいいものの、結局帰って来るしかなかった」というジレンマは、大都市の人間には分からないのではないか。過去数十年の日本の行政の地方創生戦略が機能したためしがないのは、都市の人間がムラに関する施策を決定するという構図が原因ではないか。地方に交付金やら補助金やらを恵んでやる一方で、ゴミ処理場や原子力発電所などを押し付けるのは大きな間違いだったということは、過去10年を見れば分かることだ。

 

Jovianは霞門村ほどのド田舎に住んだことはないが、それでも30年以上前に住んでいたO県B市ぐらいの田舎だと、同級生だった市長の孫が中学校でむちゃくちゃデカい面していて、教師も腫れ物に触れるような扱いをしていたものだった。その市長の苗字が、本作の村長と同じで笑ってしまった。こういう閉鎖社会の権力者とその一族あるいは取り巻きは、その依って立つ基盤が砂上の楼閣とはいえども、周囲に多大な影響力を行使することはある。その点を藤井道人はよくよく見抜いている、あるいは取材しているなと感じた。

 

横浜流星以外で目立った役者は一ノ瀬ワタル。『 宮本から君へ 』同様の暴力キャラが良く似合う。「この村にはハラスメントなんか存在しねえ」という台詞はリアルだった。仕事で奈良や滋賀のかなりの田舎の学校にまで教えに行くこともあるが、そうしたところはコロナ禍真っただ中でも隣近所の人間とノーマスクで話していることなどザラだった。中央や都市部があーだこーだ言っても、本当の田舎は大昔から何も変わらないものである。

 

環境センターという昼の顔と不法投棄現場という夜の顔が、そのまま村および村民たちの二面性になっているのが興味深い。エンドロール後のラストショットに仮託されているのは、希望なのか絶望なのか。それは是非、自身の目で確かめて頂きたい。

 

ネガティブ・サイド

中村獅童演じる刑事が無能すぎる。杉本哲太演じるヤクザも無能すぎる。ここら辺のキャラにはリアリティが欠けていた。

 

最大のツッコミどころは「そこにそれを捨てるか?」というものと、「なんでそれを破壊しないの?」というもの。後者はクラウドが云々かんぬんというのがあるかもしれないが、前者についてはお粗末すぎる。『 藁にもすがる獣たち 』を見習えと言いたい。

 

総評

『 デイアンドナイト 』と同工異曲の秀作。共同体の伝統を壊そうとする者は排除するか、あるいは共同体に取り込んでしまうのが日本社会のお家芸。つまりはダイバーシティなどというものはお題目に過ぎないのだ。自国の闇をエンタメに仕上げられるのは、問題意識とクリエイター意識の両方を併せ持った人。藤井道人は邦画界に置ける数少ないそのような作り手の一人、かつ第一人者だろう。ぜひ鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

History repeats itself.

歴史は繰り返す、の意。優の父の犯した罪や、村長の「そうやってこの村は続いてきたんだ」という発言が印象的。歴史はいつでもどこでも繰り返されるものだが、日本の地方は特にその傾向が強いようである。History has repeated itself. や Will history repeat itself? のようにも使うことがある。英語中級者なら既に知っている表現だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, 日本, 横浜流星, 監督:藤井道人, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:スターサンズ, 黒木華Leave a Comment on 『 ヴィレッジ 』 -ムラ社会のダークサイド-

『 search #サーチ2 』 -珠玉のスリラー-

Posted on 2023年4月21日 by cool-jupiter

search #サーチ2 75点
2023年4月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ストーム・リード
監督:ウィル・メリック ニック・ジョンソン

簡易レビュー。

 

あらすじ

ジューン(ストーム・リード)は、恋人とコロンビア旅行に出かけた母が予定日に帰国しないことから、犯罪に巻き込まれたことを危惧し、連邦警察に連絡する。一方でジューンはSNSや各種ネットの情報を使い独自に母を探そうとするが・・・

ポジティブ・サイド

『 search サーチ 』の続編的な作品。正直なところ、同じ手法でもう一度びっくりさせるのは無理だろうと思っていたが、こちら側のそうした予想を軽く超えてきた。

 

コロナ禍で一気に浸透したZoomやGoogle Meetのおかげで、PC画面上で様々な事象が展開されることに全く違和感を覚えなくなった。前作は今思えば、少々強引な自宅内のショットや音声もあったが、今作のPCカメラ映像や音声には不自然なところは一切ない。

 

人間、誰でも秘密を抱えているもの。本作はPCからあらゆるサービスやサイトに侵入していき、様々なキャラの秘密が次々に明かされていく。『 スマホを落としただけなのに 』とは比較にならないサスペンスだ。

 

そんな中でも現地コロンビアの協力者ハビエルがすごく良い人。ネットの先にこそリアルな人間関係がある。

 

ネガティブ・サイド

大活躍のGoogle様だが、普段使っていないデバイスからアクセスされると本人に通知が行くはずだが。ジューンがあそこまで好き勝手できたことに「Google、仕事しろ」と思ってしまった。

 

いくらコロンビアでも、あそこで発砲するか?ここも納得いかなかった。

 

総評

『 search サーチ 』に負けず劣らずの秀作。form は同じながら、content をガラリと変えてきた。あまり書くとネタバレになってしまうが、前作を見た人ほど製作者側の思惑に引っかかってしまうのではないだろうか。Jovianはかなり早い段階で「ああ、黒幕はこいつだろうな」と目星をつけて大失敗。いやはや、こういう感覚は何度味わっても楽しい。本作から鑑賞して、前作に行くのも可能。今春の見逃すべからざる逸品だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

itinerary

アイティネラリィと発音する。TOEICに頻出する語で、意味は「旅程表」や「旅行の行き先」のこと。普通に実生活でも使うので、ビジネスパーソンならずとも知っておきたい語彙である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴィレッジ 』
『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ストーム・リード, スリラー, ミステリ, 監督:ウィル・メリック, 監督:ニック・ジョンソン, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 search #サーチ2 』 -珠玉のスリラー-

『 オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景 』 -芸術に走りすぎ-

Posted on 2023年4月19日2023年4月19日 by cool-jupiter

オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景 50点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:福島拓哉 田中玲
監督:吉村元希

あらすじ

ある夫(福島拓哉)と妻(田中玲)の関係から、オトコのカタチとオンナのカタチについて考えていく・・・

 

ポジティブ・サイド

「見ないで」と女性たちが叫ぶシーンの男性の視線の映し方はリアルだったと思う。男性として白状するが、街中を歩く女性を見る際に何らかの品定め的な目になることは確かにある(毎回ではない)。まあ、イエス・キリストの時代から「情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである」と言われるぐらいなので、オトコの視線そのものに真新しいことはない。(一部の)女性はそうした男を顔ですらなく、目だけで認識するというのは何となく理解できる。男=視線と記号化されたわけだ。

 

最後に歩道で踊るバレリーナからは『 気狂いピエロ 』や『 ジョーカー 』を想起させられた。過剰ともいえる化粧は本心を隠す、あるいは他者からの理解を拒絶する姿勢の表れだろう。往来で無言で踊るバレリーナはシュールで、それゆえにシネマティックだった。

 

ネガティブ・サイド

全編にわたって開陳される吉村監督の思想は、正直なにも新しさがない。全部、栗本薫が『 タナトスの子供たち―過剰適応の生態学 』で喝破していたことである。見せ方はかなり斬新だと感じたが、見せられたものは陳腐だった。

 

オトコのカタチにかなり露骨な性的イメージを押し付けてくるが、これは必要だったか?オンナを記号として消費する視線は明確に拒絶しながら、男性=男性器というイメージを押し付けるのは politically correct なのだろうか。とてもそうは思えないが。

 

総評

物語性もエンタメ性も希薄。芸術に走りすぎだが、これなら映画ではなく舞台でやったらどうか?という出来映え。悪いとは思わないが、演出が映画ではなく舞台になっている。名もなき夫婦の生活の中に搾取され消費される女性像を読み取るのなら、(短編と長編を比較するのは愚だが)『 グレート・インディアン・キッチン 』の方が遥かに映画的かつ啓蒙的。4作の中で本作だけは波長が合わなかったようだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

shape

カタチの私訳。エド・シーランの代表的楽曲 “Shape of You” でも、男女それぞれに特徴的なカタチは shape が訳語にふさわしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 search #サーチ2 』
『 ヴィレッジ 』
『 ザ・ホエール 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 田中玲, 監督:吉村元希, 短編, 福島拓哉, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景 』 -芸術に走りすぎ-

『 怒れる人形 』 -構成に課題を残す-

Posted on 2023年4月19日 by cool-jupiter

怒れる人形 55点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:奥野みゆ
監督:海上ミサコ

あらすじ

玩具店でバイトする女子高生ナズナ(奥野みゆ)は、姉のサラサをハラスメントで苦しめる上司に鉄槌を下すために、憧れのカウボーイ・ケンジに扮して投げ縄の練習に取り組むが・・・

 

ポジティブ・サイド

まあ、姉の上司はクソ野郎だわ、ナズナの勤める店の店長は役立たずだわ、挙句の果てには国家権力の象徴たる警察官(当然のように男性)が偏見と先入観に凝り固まっているわで、本当に「男に生まれて申し訳ありませんでした」という気持ちにさせられてしまった。女性全員ではないにしろ、世の中をこのように見つめ、その世界観を映画という形で再構築して世に問うべしと思う女性が存在することの意味を考えなければならない。表現する女性というのは少数派であることは間違いない。だが、そもそも表現者自体が社会ではマイノリティだということを忘れてはいけない。企業にクレームを言ってくる人は顧客の中のごく一部。しかし、顧客のマジョリティが不満を持っていないという証拠にはならない。俗に “Silent cusotmer, silently gone” と言うではないか。

 

セクハラはダメ。無能もダメ。偏見・先入観もダメ。動詞たる男性諸賢よ、心して生きようではないか。

 

ネガティブ・サイド

人形の要素が非常に弱い。人形といえば着せ替え人形。たとえばスーツを着た男性も服を脱がせればただのオッサン。同様に警察官だって制服を脱げば一小市民。こうした構図を少しでも入れ込んでおけば、ナズナがカウボーイ姿に扮することにも多少の意味は見いだせたはず。

 

役者の演技が全員イマイチ。これは監督の演出以前に役者の力量かな。

 

総評

『 Bird Woman 』以外のオムニバス4作の中では本作が最もエンタメをしている。西部劇というジャンルは『 スター・ウォーズ 』などにも受け継がれており、それが現代にも様々な形で影響を及ぼしている。それを現代日本社会で feminist theory にしたがって再構築すると、ちょうどこんな作品になるのかもしれない。夫婦よりも親子(父と娘)で鑑賞してみると面白いかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

training

研修の意。Jovianの仕事の4分の1は非常勤講師の先生方の研修である。一応、肩書きもトレーナーである。通常は不可算名詞で provide training = 研修を実施する、といった形で使う。How many training sessions have you done? = 研修は何個やった?のように session をくっつけて可算で使うことも多い。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ブラック・コメディ, 奥野みゆ, 日本, 監督:海上ミサコ, 短編, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 怒れる人形 』 -構成に課題を残す-

『 Doll Woman 』 -ホームレスから目を背けるな-

Posted on 2023年4月17日 by cool-jupiter

Doll Woman 60点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:大原とき緒
監督:大原とき緒

あらすじ

人形と暮らすホームレス女性(大原とき緒)は、ある日、耳が聞こえず話すことができないホームレス男性と出会う。彼もまた、彼女と同じく、人形を愛でる人で・・・

 

ポジティブ・サイド

東京の割と都心で描かれるホームレス女性とホームレス男性の one night stand(one day stand と言うべきか?)というだけで、相当な希少価値がある。

 

ホームレスが捨てられた、しかしまだ食べられる食べ物よりも人形をゲットすることを喜ぶ、という姿はショッキングだ。人間が求めているのは人間関係で、社会から捨てられたホームレスはその関係を人形に求める。日本がダイバーシティだとかインクルーシブネスという言葉を自国後に上手く翻訳できないのも分かる気がする。

 

ネガティブ・サイド

ホームレス男女二人は徹底的に筆談でコミュニケーションした方がリアルだったと思う。画面に映し出される言葉の語彙レベルや筆跡などから、二人の教育や教養の程度が浮き彫りになってくるだろうし、普通の女性で普通の教育的な背景があっても、一度の不運(たとえばコロナ禍)で社会のセーフティネットを軽々と突き破って転落してしまう社会の現実を見る側に突き付けることもできたはずだ。

 

総評

間接的にセックスを描いているので中学、高校などでは教材にしにくいが、大学なら可能だろう。『 覚悟はいいかそこの女子。 』や『 82年生まれ、キム・ジヨン 』を学内で上映していた神戸〇〇大学や、夕方の課外授業で色んな映画を鑑賞している京都△△大学などで本作をぜひ上映してほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

one night stand

一夜限りの関係、の意味。日本語でも「ワンナイト」とか言ったりすることがある?ドラマや漫画だけか? have a one night stand with ~ = ~と一夜限りの関係を持つ、という形で使う。この表現を知っている人は多いだろうが、実際の会話でこれを使える人は少ないはず。こういう話をできる友人がいるということは、その時点で英会話上級者だろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 大原とき緒, 日本, 監督:大原とき緒, 短編, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 Doll Woman 』 -ホームレスから目を背けるな-

『 JOMON わたしのヴィーナス 』 -芸術性が光る-

Posted on 2023年4月17日 by cool-jupiter

JOMON 私のヴィーナス 70点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:華月 ブレイク・クロフォード
監督:西川文恵

あらすじ

11歳のちひろ(華月)は、縄文時代の土偶を見つける。それを手にしたちひろは、女神が踊るビジョンを見て・・・

 

ポジティブ・サイド

ブレイク・クロフォードのナレーションがいい。とても心地よく耳に馴染む。Chihiro と何度も何度も呼びかけ、語りかける。女神の声のはずなのに、男性をあてるというのもキャスティングの妙か。日本の土偶に宿った女神が英語を話すということに違和感も覚えない。これは凄い。

 

音楽も重低音が効いていて素晴らしい。

 

Jovianは土偶=植物の擬人化説を支持するが、本作にはその最新の知見を盛り込んだと思しきシーンも見られる。

 

豊饒のイメージの黄色から、闇の中で踊る女神のコントラストが映える。踊りそのものに女神の想いが直接的に表現されていた。『 女神の継承 』なテーマも(ホラー要素抜きで)反映されていて面白い。アジア的な価値観が全面に押し出されているが、海外マーケットでも本作は一定の評価を得られそうに思う。

 

ネガティブ・サイド

ちひろの母親が出てきても良かったのでは?西川監督がそれを演じるというアイデアはなかったか。

 

総評

映画は form と content の両面から評価されるべきだが、本作は form の良さが突出している。音楽も映像も、ダンスとナレーションによる物語進行もユニークだ。映画監督で西川と言えば西川美和だが、今後は西川文恵にも注目すべきだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

The Great Mother

心理学で言うところの「母親的なるもの」の意。太母とも呼ばれる、母なる海や母なる星と言うように、母=女=生産力の象徴である。我が職場には産休を取ってから続々復帰する女性従業員が多いが、男は生物学的に女に完全に負けている生き物であると認めざるを得ない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ブレイク・クロフォード, 日本, 監督:西川文恵, 短編, 華月, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 JOMON わたしのヴィーナス 』 -芸術性が光る-

『 Bird Woman 』 -異色のスーパーヒーロー- 

Posted on 2023年4月16日2023年4月16日 by cool-jupiter

Bird Woman 65点
2023年4月15日 シアターセブンにて観賞
出演:大原とき緒
監督:大原とき緒

大学時代の友人の勧めで鑑賞。なんと彼女は本作の一つ『 Bird Woman 』にエキストラとして出演している。劇中歌の終わり、車掌室(運転室)を背にしたマスクの女性がそうである。

 

あらすじ

コロナ禍の東京。マスクで顔を隠した男たちの痴漢行為に辟易していたトキ(大原とき緒)は、鳥のマスクを入手する。そしてその仮面を身に着けて電車内で痴漢を撃退していき・・・

 

ポジティブ・サイド

Bird Woman というのは一種のスーパーヒーローへのオマージュなのだろうが、それよりも個人的には中世の黒死病、いわゆるペスト患者の対応にあたった医者たちの防護服の方をより強く想起させる。痴漢は一種の病気やね。

 

この Bird Woman が一種のムーブメントとなっていくところが面白い。『 ワンダー・ウーマン 』の公開当時、世界中が湧きたっていたが、それと同じ熱量が小市民的に展開されるのが日本らしいと感じた。そしてそのムーブメントが公権力によって規制されていくところに日本社会の病根も見て取れた。

 

劇中歌の『 青空でなくてかまわない 』には不覚にも感動してしまった。英語字幕だと Who cares if the sky ain’t blue? だったか。女性かくあるべし、というのは思い込みなのだ。

 

ネガティブ・サイド

女の敵は女という面も映し出されてはいたが、現・東京都知事を悪の女帝として描いてしまえばよかったのに、それをしなかったのは何故なのか。

 

一つひとつのショットの意図があまりにも露骨であるとも感じた。ハイヒールのズームなどは特に。普通に見れば見逃してしまう、しかしよくよく見れば日常生活のあちこちに女性を抑圧するアイテムや構図が潜んでいるというカメラワークを追求できなかったか。

 

総評

映画にはエンタメ、芸術、物語の三領域があると(勝手に)思っているが、本作は物語性が非常に強い。なのである意味で観る人を選ぶ作品と言える。痴漢は犯罪だが、話の本質はそこではなく、個の女性に一度反撃されてしまえば、個の男性は太刀打ちできず、権力の行使に走るという滑稽さだろう。日本の個の男の弱さが見透かされてしまったか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

grope

手でまさぐる、の意。転じて groper = 手でまさぐる人 = 痴漢 という訳語に使われていた。grope はそうした意味で使われることもあるが、実際は grope about in the dark = 暗闇の中で手探りする、という形で使われることも多い。英語中級者以上なら知っておいていいだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ブラック・コメディ, 大原とき緒, 日本, 監督:大原とき緒, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 Bird Woman 』 -異色のスーパーヒーロー- 

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