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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 悪魔を見た 』 -悪魔を倒すには悪魔になるしかないのか-

Posted on 2021年1月26日 by cool-jupiter

悪魔を見た 80点
2021年1月23日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:イ・ビョンホン チェ・ミンシク
監督:キム・ジフン

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『 さんかく窓の外側は夜 』がイマイチだったので、だったら人間がとことん怖くなる作品を観たいと思い、本作をレンタル。はっきり言って後悔した。キム・ジフン監督の独自の哲学というのか美学というのか、とにかく恐るべき人間性を見せつけられてしまった。This film is not for the faint of heart.

 

あらすじ

国家情報院捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)は婚約者の誕生日も仕事に追われていた。その夜、婚約者は殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)にさらわれ、殺害される。スヒョンは恋人の受けた苦痛を倍にして返してやると誓い、犯人を捜し始めて・・・

 

ポジティブ・サイド

雪降る夜。人里離れた道路。車内には妙齢の美女。これで事件が起きない方がおかしいと思えるほどのオープニングである。携帯電話で語らう仲睦まじい二人の間に突如として割って入るチェ・ミンシク演じるギョンチョルは、登場してから豹変するまでわずか数分。普通、この手のサスペンスやスリラーというのは犯人の残虐性を強調するシーンは中盤まで取っておくものだ。それを序盤から惜し気もなくギョンチョルの異常な攻撃性をまざまざと見せつける。この立ち上がりだけで胸やけがしてくる。

 

復讐相手を突き止めるために警察から容疑者リストを手に入れたスヒョンが、相手を片っ端からぶちのめしていく様は爽快だ。『 デッドプール 』と『 アンダードッグ 二人の男 』ぐらいでしか見たことのなかった顔面へのサッカーボールキックが、実は本作でも放たれている。というか、本作の方が上記二作よりも古い。やはり21世紀のバイオレンス描写の本家本元は韓国なのか。

 

ギョンチョルがとあるキャラクターの頭をハンマーでガツンガツンやるシーンがあるが、これは『 オールド・ボーイ 』へのオマージュだろう。頭を鈍器や棒で殴るシーンのある映画は数多く存在するが、北野武の『 その男、凶暴につき 』で北野武が金属バットで男の頭をから竹割にするシーンと同じだけの痛みが伝わる描写が本作にはてんこ盛りである。観ているだけで痛い。

 

スヒョンがギョンチョルと初めて相まみえるシーンのアクションも見物。稀代の殺人鬼に真正面から立ち向かい、実力で半殺しにしてしまう。半殺しというのも誇張ではなく、気絶した相手の手を大きな石の上に乗せて思い切り踏みつぶしたり、片方のアキレス腱を切ったりと、殴って失神させましたというレベルの暴力ではなく、相手に障がいを残すようなレベルの暴力。

 

この他にもギョンチョルのやっている血みどろの解体作業もおぞましい。『 ミッドサマー 』や『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』のような人体破壊描写があるわけではないが、これらの作品にあった「リアルな作り物を壊している」感は本作にはない。その代わりに「その血のりは本当に血のりか。まさか本物ではあるまいな。そこに転がっている胴体は作りものだよな?襦袢だよな?」と確認したくなるような気味の悪さ。

 

スヒョンの同僚がポロっと漏らした一言から、追うスヒョンと逃げるギョンチョルの立場が逆転。安心できるハラハラドキドキが、不安と恐怖のハラハラドキドキに変わる。これによって人間性をなくしていたスヒョンの目に生気がよみがえる。ここまで、とにかく空虚な目、喜怒哀楽の喜と楽を失った目をしていたスヒョンに、人間として気遣いや配慮が見られるようになる。婚約者の家族までが逃亡するギョンチョルの魔の手にかかってしまうからだ。同時に、ギョンチョルを殺す最も残酷な方法についても、この時点で構想が浮かんだのは間違いない。人間を痛めつけるために必要なのは、非人間性なのか、それとも人間性なのか。

 

控えめに言って脚本家のパク・フンジョンと監督のキム・ジフンは頭がおかしい。CTが何かで断層撮影すれば、脳の一部が欠損している、あるいは異様に肥大しているのではないか。頭のおかしい人間が頭のおかしい犯罪を実行する、あるいは人間とは思えない残虐な殺し方をする。そういうのは分かる。ギョンチョルに限らず、映画の世界には頭がイってしまった犯罪者がいっぱいいる。しかし、頭がおかしくないはずの人間が頭のおかしい犯罪を次々に犯し、しかし最後には人間性=愛を思い起こし慟哭するというラストシーンを思い描ける人間というのは、やっぱり頭がおかしいのではないだろうか。スヒョンの凄惨な復讐劇を追体験して、まともな人間にできる所業ではないと思うと共に、自分はそこまで一人の女性を強く強く愛することができるだろうかとも自問してしまった。

 

ネガティブ・サイド

スリラーとしては完全無欠の逸品である。だが、リアリティの面で大きな演出ミスが二つ。

 

一つには、GPS入りカプセル経由で相手の声や周囲の音を聞く際に、コポポポという腸音やドクンドクンという心音がバックに流れておらず、非常にクリアな音が聞こえてきた。これは絶対にありえない。ギョンチョルの排せつ物まで描くほどのリアリズムを追求する本作であれば、そうした細かな部分にまで神経を行き届かせてほしかった。

 

もう一つには、ギョンチョルのムショ仲間のアジトでのセックスシーン。女性側が普通に犯されているだけ。もっと頭のイカれた女性像を打ち出せたはず。たとえば欲求不満のたまっているミンシクを逆に食ってしまうような豪の女性とか。全編に異様に張り詰めた雰囲気が充満する中、このシーンだけが普通に感じられてしまった。

 

総評

20歳ぐらいの時に観た『 タイタス 』でタイタス・アンドロニカスを演じたアンソニー・ホプキンスを観て、「ああ、『 羊たちの沈黙 』的なキャラをまた演じているなあ」と感じたが、本作のスヒョンを演じたイ・ビョンホンの復讐劇は、ある意味で『 タイタス 』を超えている。これほど一人の男の復讐劇に感情移入し、嫌悪感を催し、さらには畏敬の念すら持ってしまうという映画体験は初めてである。生きるとは何か。死ぬとは何か。とにかく、韓国人をパーソナルな意味で敵に回すのは避けた方が賢明である。そんなことを思わせてくれる韓流リベンジ・スリラーの秀作だ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イーセッキ

『 アンダードッグ 二人の男 』その他で紹介した「この野郎」という表現。本作でもギョンチョルが何度も何度も口にする。韓国映画で相手を口汚く罵る時には、必ず出てくる表現だと思って間違いない。

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, イ・ビョンホン, サスペンス, スリラー, チェ・ミンシク, 監督:キム・ジフン, 配給会社:ブロードメディア・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 悪魔を見た 』 -悪魔を倒すには悪魔になるしかないのか-

『 ミッドナイト・スカイ 』 -ディストピアSF風味の人間ドラマ-

Posted on 2021年1月20日 by cool-jupiter

ミッドナイト・スカイ 60点
2021年1月17日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:ジョージ・クルーニー フェリシティ・ジョーンズ デヴィッド・オイェロウォ カイル・チャンドラー ケイリン・スプリンゴール
監督:ジョージ・クルーニー

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Netflix作品の劇場公開。『 アイリッシュマン 』や『 シカゴ7裁判 』と同じく、目ざとい劇場が公開してくれたので、チケット購入とあいなった。

 

あらすじ

末期がんを患うオーガスティン・ロフタス(ジョージ・クルーニー)は、地球の滅亡が迫る中、北極の天文台に残ることを決断する。孤独の中で最後の日々を送る中、基地内に一人の物言わぬ少女、アイリスを発見する。ある時、宇宙船アイテルの乗組員サリー(フェリシティ・ジョーンズ)らが地球への帰途にあると知ったオーガスティンは、なんとかそれを阻止しようと交信を試みるが・・・

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ポジティブ・サイド

なんとも静謐な物語である。小説の映画化らしいが、日本なら誰が構想しそうな物語だろうか。『 インターステラー 』のように地球そのものが人類に牙をむいてきた結果として、人類が滅亡に追い込まれるという設定に、何をどうしてもコロナ禍について考えないわけにはいかない。変異種が出現して、それが日本に入ってきたことで、ぼんやりとではあるが、自らの死を意識したという人は少なからずいるのではないか。ウィルスと癌の違いはあれど、本作を通じて我々は最期の日々をどのように過ごすのかをシミュレートしているような気分になる。

 

映像というか、撮影もいい。オーガスティンが独りで基地に暮らす冒頭のシーンの数々は、常に引いた視線から。そして、アイリスとの邂逅を果たしたところからは、常にアイリスとのセットのショット。これはとある意図に基づいたカメラワークであることが後々に判明する。

 

それにしてもアイリスを演じたケイリン・スプリンゴールという少女の存在感よ。台詞を一度しか発さない(それもオーガスティンの想像)にもかかわらず、観る者の目をひきつけてやまない。静と動の切り替えが巧みというか、子どもらしさと子供らしからぬところが同居しているというか。特に目力を感じさせる表情が印象的で、あの顔で見つめられると、たとえジョージ・クルーニーでも心の奥底まで見透かされるような心地になるのではないか。マッケナ・グレイスやジェイコブ・トレンブレイの後継者が現れたと言える。

 

アイテル号のクルーでは、やはりフェリシティ・ジョーンズ演じるサリーの存在感が際立つ。実際に妊婦として撮影に臨んだというから驚きだ。元々、ヒロインというよりはヒーロータイプの役者だったが、本作ではさらに新境地を切り開いた。「女は弱し、されど母は強し」と言われるが、ならば妊婦とはいかなる存在か。命のゆりかごそのもので、まさに死につつある地球を「母なる大地」や「母なる星」とも呼ぶ。そう考えれば、サリーは新天地のイブになるのだろう。

 

地球が滅びゆく原因については明示されないが、“We failed to look after the place while you were away”や“Underground, only temporarily”というようなオーガスティンの台詞から色々と想像をめぐらすのも一興。そうして死に行く中、それでも希望に思いを馳せずにはいられないという人間の業は、それでも美しい。

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ネガティブ・サイド

SFのふりをした人間ドラマではあるが、SF部分をもう少し凝ってほしいもの。原作『 世界の終わりの天文台 』は1950年代または60年代の出版物なのかと思ったら、2010年代発行だった。以下、主に科学的な面からのツッコミ。

 

オーガスティンが極寒の海に放り出されるシーンがある。そこである程度泳ぐのは、まあ納得できないことはない。しかし、その後に氷上に辛くも脱した場面は納得できない。猛吹雪の中、濡れた衣服を着ていれば、あっという間に凍死するだろう。かといって服を脱いでも、すぐに凍死する。どうなっているのだ?まさかこれもhallucinationだとでも言うのか。

 

『 アド・アストラ 』では、海王星まで到達するのが早すぎると感じたが、本作では通信と通信の間隔が短すぎる。電波の速度は光の速度と等しいが、それでも地球とアイテル号の間を行きかうのに数秒、または1分ぐらいかかってもおかしくないはず。そもそも木星の衛星から地球に帰還するまでにクライオ・スリープ技術を使っているのだから、宇宙船の航行速度は光速の数百分の一のはず。なおかつ船員が目覚めたのは地球が目視できない位置(というか、普通の視力の人なら地球の地表からでも木星は目視できるのだが・・・)。ならば通信は、非常にストレスフルになるが、一方がしゃべって1分待つ、返事を1分待つ、などのイライラするような演出を少しでも取り入れるべきだった。途中で通信を途絶させてご都合主義的に復活、宇宙船がどんどん地球に近づいて、タイムラグがなくなったと説明すればよい。というか、天文台からアイテル号の位置を補足しながら、「交信可能になるまで11時間です」って、どういうこっちゃ・・・太陽系内にはミノフスキー粒子が充満しているのか。

 

アイテル号が『 パッセンジャー 』のアヴァロン号にそっくりなのは肯定的に捉えられるが、『 ゼロ・グラビティ 』さながらの浮遊小天体やデブリの爆撃を喰らう演出はもう食傷気味である。というか見飽きた。実際の宇宙は超を何回つけても足りないくらいにスッカスカな空間で、あのような事故など起きない。『 パッセンジャー 』の被弾に説得力があったのは、数十年も航行していたからで、アイテル号はせいぜい数か月だろう。

 

妊婦にEVAを任せるという船長の判断も良く分からない。というか、夫でしょ?父親でしょ?身重の嫁さんを銀河宇宙線が飛び交う宇宙空間に送り出すとは、いったいどういう了見なのだ?

 

ことほどさように科学的な見地(それも素人の)からはツッコミどころ満載であるが、SFのふりをした人間ドラマだと思って鑑賞するのが吉である。

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総評

静かに、しかし力強く愛の力を描いた秀作である。『 インターステラー 』とも共通する点として、愛の力は時に時空すらも易々と超えるという作り手の信念のようなものがある。それを陳腐と見るか、偉大と見るかは人によって意見が分かれるところだろう。そうそう、アイリスが一度だけ言葉を発するシーンがあるが、そこでは字幕ではなく英語の台詞の方に集中してほしい。字幕はネタバレに直結しているからだ。何故こういう訳をしてしまうのか、首をかしげてしまう。普通に「あの人を愛してたの?」で良かったのではないか・・・

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Polaris

SolarisではなくPolaris。意味は「北極星」である。『 ハリエット 』でも、自由の地である北を目指すための“The Guiding Star”として言及されていた。一般的な会話ではThe Pole StarまたはThe Polar Starという形で使われることが多い。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, アメリカ, カイル・チャンドラー, ケイリン・スプリンゴール, ジョージ・クルーニー, デヴィッド・オイェロウ, ヒューマンドラマ, フェリシティ・ジョーンズ, 監督:ジョージ・クルーニー, 配給会社:NetflixLeave a Comment on 『 ミッドナイト・スカイ 』 -ディストピアSF風味の人間ドラマ-

『 カリキュレーター 』 -平均的なロシアSF-

Posted on 2021年1月17日 by cool-jupiter

カリキュレーター 50点
2021年1月17日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:エフゲニー・ミローノフ アンナ・シポスカヤ
監督:ドミトリー・グラチョフ

 

友人の勧めでロシア映画を鑑賞。ロシアと言えば、面白そうなSFを定期的に作っているなという印象があったが、『 惑星ソラリス 』を高校生および大学生時に鑑賞して、いずれも睡魔によって撃沈されたJovianは、以来ソ連・ロシアの映画から遠のいてしまっていた。今年あたり、韓国映画、インド映画に加えてロシア映画も観始めていこうか。

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あらすじ

惑星XT-59は、すべてが「システム」および総統の統治下にあった。この星の犯罪者は、シールドの外の過酷な生態系の果てにある「幸福の島」へ向けて追放される。エルヴィン(エフゲニー・ミローノフ)はクリスティ(アンナ・シポスカヤ)と共に「幸福の島」を目指すが、危険な犯罪者ユスト達から追跡されて・・・

 

ポジティブ・サイド

ロシア的な美意識が様々なオブジェやガジェットから垣間見える。特に小キューブが立方格子上に連なったキューブ状の「システム」や、直方体の頂点から角が生えたような形状の飛行船(これも直方体に変化したりする)など、メカメカした感じではなくミステリアスな雰囲気をたたえるものが多い。

 

XT-59の大地も荒涼とした雰囲気を醸し出している。おそらく一部はCGなのだろうが、灰色の大地に巨岩が点在し、地平線の果てまで見渡せるような景色には、やはり広大なロシアの自然観や世界観が表れているように感じた。

 

クリスティ役の女優さんが眼福だ。フィギュアスケートで見るような妖精のような少女ではなく、成熟したロシアン・ビューティー。ニップレスなし風のタンクトップ姿はサービスか。いったいどんな犯罪をやらかしたのかと思ったが、なるほど、ロシア人女性は怒らせてはいけないらしい。

 

「幸福の島」を目指す旅路は貴志祐介の小説『 クリムゾンの迷宮 』とよく似ている。協力を持ちかける人間、敵対する人間、そして自分たち以外の人間など、サバイバル小説や映画によくある展開が待ち受けていて、良く言えば基本を押さえている。悪く言えば展開が読みやすい。本作はそこに、奇妙な生物を織り交ぜてくることで、別の緊張感を生み出している。特に殺人カビ(というより糸を出す粘菌に見えたが)は実際の宇宙に存在していそうな生命形態で説得力を感じた。

 

エルヴィンが「システム」に仕掛けた罠も『 インディペンデンス・デイ 』的で、これも良く言えば基本的、悪く言えばクリシェ。しかい、そこに同じ囚人のユストや総統の手先が追撃に現れ、「殺したいけど殺せない」というジレンマに陥るところはそれなりにユニークだ。

 

オチもなかなか考えさせられる。Jovianの世代だとソ連邦の崩壊をリアルタイムで体験しているので、抑圧的なシステム(社会主義)の元から解放された人々が屈折した人間心理を発達させてしまうことを知らされている。当然、現代ロシア人もソ連のことをよく覚えているだろう。そうした作り手がこのようなオチをつけるところに、自由の意味を考えずにはいられなくなってしまう。

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ネガティブ・サイド

低予算映画のためか、シーンとシーンのつなぎが貧弱だ。惑星XT-59がどのような自然環境の惑星で、人々はそこでどのような営みに従事し、どのような社会制度や文化を発達させてきたのかを徹頭徹尾映し出してくれない。このため、エルヴィンの置き土産によって「システム」がダウンしてしまうことが、惑星および社会にどのような影響を及ぼすのかが分からない。そこが分からないため、終盤の展開にカタルシスを感じにくい。

 

また、総統も何をしたいのかが意味不明だ。エルヴィンを殺す機会などいくらでもあっただろうに。回りくどく動きすぎて単なる狂言回しになっている。

 

ヒロインのクリスティも行動と感情に一貫性が感じられない。エルヴィンとの距離感の設定が色々とおかしい。最初は無関心、それが嫌悪になり、ある時から好意に変わる。または最初が嫌悪、それが無関心に変わり、いつしか好意に変わっていく。それなら理解できる。しかし、嫌悪と無関心の間をジェットコースター並みに行ったり来たりして、最後に「愛してる」とか言われても、説得力がない。まるで90年代のC級のハリウッド映画だ。

 

けれども一番キャラ設定がおかしいのはカリキュレーター=計算機であるエルヴィンだろう。自らをもって数学者を任じるなら、もっと思考や行動に数学という根拠を持たせるべきだ。確率や統計、力学の蘊蓄などをもう少しだけでも披露していれば、カリキュレーターというタイトルロールとしてもっと説得力が持てていたことだろう。口癖が「論理的だ」とか「非論理的だ」だけでは数学者とは言えない。

 

エルヴィンがもっとストレートに「クリスティを救いたいが、自分にはその権限がない。だから自分も囚人になって、過酷な流刑先で守護してやらねば」と奮い立ったという設定の方が、低予算映画として分かりやすい。無理やりロマンスの要素を入れたがために、ロシア的な要素が行きなかったように思われる。もしくは、最初からグローバルに売り出すつもりなら、ハリウッド的な文法で物語を作って、キャラクターや世界観にロシアっぽさを盛り込むべきだろう。全体的なトーンが一貫しないところが目についた。

 

総評

非常に鑑賞しやすい映画である。時間も90分足らずだし、登場人物の数も多くない。さらにストーリーも複雑ではなく、ほぼ一本道である。ロシアの人間ドラマや青春ドラマはどんなものなのかは分からないが、少なくとも『 コズミック フロント☆NEXT 』でコンスタンチン・ツィオルコフスキーに興味を持ったJovianは本作のSF部分をそれなりに楽しめた。もともとバレエなどの舞台芸術や文学の分野に強いロシアである。今後、韓国やインドのように力強い作風の映画を送り出してきてくれることを願いたい。

 

Jovian先生のワンポイントロシア語会話レッスン

スバシーバ

ロシア語で「ありがとう」の意。劇中で何度か聞こえてくる。「ありがとう」は何か国語で言えても損はない。大学時代の寮の仲間のロシア人に「ゼイビシ」なるスラングを教えてもらったことがある。意味は「Fucking good」だったと記憶しているが、ネットで調べてみてもヒットしない。ロシア語に詳しい方からご教授いただけると幸いです。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アンナ・シポスカヤ, エフゲニー・ミローノフ, ロシア, 監督:ドミトリー・グラチョフ, 配給会社:インターフィルムLeave a Comment on 『 カリキュレーター 』 -平均的なロシアSF-

『ズーム/見えない参加者 』 -Zoomらしさをもっと前面に出せ-

Posted on 2021年1月16日 by cool-jupiter

ズーム/見えない参加者 30点
2021年1月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ヘイリー・ビショップ
監督:ロブ・サベッジ

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Jovianは2017年の秋ごろから当時の仕事およびプライベートでZoomを使っていた。有料版を使い始めたのは2020年からだが、Zoomにはまあまあ詳しい方だと自負している。劇場予告を観て「遂に出るべくして出できたな」と感じた。が、甘かった。これは英国版『 真・鮫島事件 』であった。

 

あらすじ

コロナ禍でロックダウン中の英国で、ヘイリー(ヘイリー・ビショップ)は友人たちとZoom降霊会を開催する。だが、参加者のジェマが実在しない死者の話をしてしまったことで、本来呼び出されるべきではない霊が現れてしまい、ヘイリーたちは数々の怪異に見舞われてしまい・・・

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ポジティブ・サイド

無名に近い俳優たちだらけだが、そのおかげでリアリティが生まれている。『 ブレア・ウィッチ・プロジェクト 』でも顕著だったが、こうしたアイデア一発勝負のホラーには有名キャストはノイズとなる。どうしても作り物感が生まれてしまうからだ。彼ら彼女らの話し振りも、なかなかにダーティーで、それが逆に親密さを感じさせる。実際にZoom飲み会をやっている面々というのは、往々にしてこういう関係性なのだろうと思わせる。ヘイリーとジェマの迫真の演技は見ものである。

 

スマホの顔認証や、コンピュータ音声に特有のサーっというホワイトノイズやクリック音もなかなか効果的。下手に大きな効果音を使うよりも、静かな耳慣れた音の方が恐怖感を演出しやすい。これはZoomに慣れた人ほど感じやすいはずだ。

 

科学的な知識の普及と浸透により、超自然的な現象は一時期後退していった。それでも携帯の普及と共に『 着信アリ 』が出てきたように、Zoomに代表されるウェブ会議システムのような新しいテクノロジーが生まれれば、やはりホラー映画がそこから生まれる。凡作ではあるが、暇つぶしにはなる。

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ネガティブ・サイド

全編がZoom上で行われること以外は、凡百のホラー映画と何一つ変わらない。「ここで大きなが音がするぞ」とか「ここでこけおどしのオブジェが出てくるぞ」という予感がことごとく的中する。まるでホラー映画の作り方の教科書を読んだ高校生あたりが作ったかのようにすら感じられる。実際に、細部にこだわらなければ、類似の作品は高校生に手に入るリソースだけでも十分に制作可能だろう。低予算であるならば、それこそアイデアにこだわるべきで、ホラーとして新しい何かを提供しようという製作者側の気概は一切感じ取ることができなかった。

 

いわゆるZoomらしさが一切なかったのは残念で仕方がない。Zoomが他のウェブ会議システムに比べて優っている(優っていた)点は、主に

 

1.お手軽さ

2.画面共有

3・ブレイクアウトルーム

 

だった。もっとこれらの特徴を生かしたホラーを構想すべきだろう。たとえばZoomはその参加の「お手軽さ」ゆえにZoom爆撃と呼ばれる悪質な乱入事件が世界で相次いで行われていた。そうした愉快犯(高校生男女数人がいいだろう)が大学のオンライン授業に爆撃を仕掛けて楽しんでいたところ、ランダムに入力したミーティング・パスコードによって入ってはいけない領域に迷い込んでしまい・・・というようなストーリーである。

 

「画面共有」や、それに類するファイル交換にフィーチャーするなら、例えば画面共有をすると参加者を映すウィンドウが縮小する。そこで共有を解除してギャラリービューに戻してみると、参加者が増えている。それも他人が乱入してきたのではなく、参加者Aと参加者A’が生まれて、自分同士で通話できてしまう。他の参加者は呆然とそれを眺めて・・・というようなプロットも割と簡単に思いつく。

 

ブレイクアウトルームでも恐怖は生み出せる。Jovianは大学の英語の非常勤講師を自身で行っていたり、あるいは派遣元企業の担当者としてそうした講師の授業をオブザーブ(ビデオをマイクもOFF)してフィードバックすることもある。某大学のオンライン授業をオブザーブした際に、ブレイクアウトルームに割り振られたので、学生のペアワークの様子を見学させてもらおうと思ったが、スクリーンネームを適当な6桁の数字にしていたせいで「え、誰これ?なんで6桁なん?学生じゃない?やばいやばい、怖い怖い、誰?」と学生に言われてしまった苦い経験がある。なので舞台を大学にして、オンライン授業でブレイクアウトルームに参加者を割り振るごとに、一人また一人で学生がZoom上からも、そして自宅からも消えていく。あるいはブレイクアウトルームの中だけで起きる怪奇現象があり、ホストも他の参加者もそのことになかなか気づいてくれず・・・といった物語も作ろうと思えば作れるのではないか。

 

Zoomならではの恐怖要素をもっともっと追求した作品は、今後インディーズで、もしくは高校生や大学生の映研やら、サンデー・アート・スクールのプロジェクトなどから生まれてくると思われるが、それに先立って本作はZoomの魅力と魔力を世に発信すべきだった。

 

そうそう、Zoomのギャラリー・ビューでは喋っている人の表示枠が黄色の太線で囲われるが、本作にはそれが無かった。監督および編集者の完全なるミスだろう。

 

最後のメイキング映像は完全なる蛇足。観ずに劇場を後にしてもなんの問題もない。

 

総評

クソホラー映画である。『 search サーチ 』のようなクオリティを期待するとがっかりさせられること必定である。68分(本編後のボーナス映像を除けば、おそらく60分)という短さで、なおかつ1000円でチケットを購入できるので、暇つぶしと割り切れるホラー愛好家のみにお勧めしておく。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be on lockdown

ロックダウン中である、の意。London is on lockdown.のように使う。どこかのアホな知事が不用意に発話したことから、意味や解釈に誤りが生じた語。決して「都市封鎖」という意味ではない。字義どおりに解釈すれば、都市封鎖=都市へ入ること、そしてその都市から出ることを禁じる措置であって、都市内での人々の移動は自由である。「国境を封鎖する」と聞けば、入国や出国が禁じられるが、国内の移動が制限されるとは誰も受け取らないだろう。Lockdown = 外出制限または移動制限と訳すべきと思う。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, イギリス, ヘイリー・ビショップ, ホラー, 監督:ロブ・サベッジ, 配給会社:ツインLeave a Comment on 『ズーム/見えない参加者 』 -Zoomらしさをもっと前面に出せ-

『 スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち 』 -究極の裏方たち-

Posted on 2021年1月11日 by cool-jupiter

スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち 70点
2021年1月10日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ミシェル・ロドリゲス
監督:エイプリル・ライト

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CG全盛、モーション・キャプチャー全盛の時代とはいえ、誰かがそのアクションを行っているのは間違いない。そのアクション担当のスタントパフォーマー、特にスタントウーマンに着目するという、ありそうでなかったドキュメンタリー作品。なかなかの見ごたえであった。

 

あらすじ

20世紀初頭から現代に至るまでのハリウッド映画におけるスタントウーマンたちの知られざる活躍や苦労、犠牲、そして歴史を、加須多くのスタントウーマンたちのインタビューを通じて、明らかにしていく。

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ポジティブ・サイド

スカーレット・ジョハンソンが妊娠していたため『 キャプテン・アメリカ/ザ・ウィンター・ソルジャー 』のブラック・ウィドウのアクションは全てスタントウーマンによって行われたということが一時期話題になっていたが、ちょっと待て。妊娠していようと妊娠していまいと、アクションはやっぱりスタントウーマンが行っているのだ。今まで当たり前すぎて気が付かなかったことに、本作を通じてやっと思い至った。スタント・パフォーマーというのは究極の裏方で、『 スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 』で元々はスタント・ダブルだったレイ・パークがそのままダース・モールを演じたのは例外中の例外だったのだ。

 

蒙を啓かされたと感じたのは、1900年代や1910年代から、女性がかなり危険なアクションシーンを演じていたということ。当時は当然、フィルム撮影なわけで、テープに限りもあれば、編集作業も現代とは比較にならない大仕事。そんな中で男女を問わず役者本人が危険のあるアクションもこなしていたという歴史的事実は驚き以外の何物でもない。そして、そうした活躍がカネになると知った者たちが、女性からその仕事を奪っていった経緯、そして1970年代のウーマン・リブから今日に至るまで、女性スタント・パフォーマーたちはあらゆる意味で戦い続けているという描写には、畏敬の念を抱かずにはいられなかった。数多くのスタントウーマンたちの中でもジーニー・エッパー(『 ワンダーウーマン1984 』のラストで一瞬だけ出てきたリンダ・カーターのスタント・ダブル!)が、スタントウーマン組合を設立して、その長に就任したところ、5年も業界から干されたというのは余りにも生々しく、痛々しい。そうした声が30年あまり経って、ようやく聞かれるようになったところに、ハリウッドの闇を感じる。一方で、数々の映画の裏に絶対に存在していたと認識できているはずのスタント・パフォーマーたちの立ち位置について、やはり我々は意識が十分ではなかったのではないかとの思いも強くなる。自分はいったい、画面の向こうに誰を観ていたのか、と。

 

スタントウーマンたちのトレーニング風景は、ハードワークの一語に尽きる。柔道やボクシングなどの格闘技だけではなく、トランポリンや高所からの落下など、デカスロン選手もかくやというトレーニングメニューの数々。さらにはクルマのドライビング・テクニックや武器の扱いまで。これだけのトレーニングを普段から積み続けていることにも素直に驚かされた。『 ベイビー・ドライバー 』のアンセル・エルゴートがひたすら運転の練習をしているというボーナス映像があったが、逆に言うと役者がそれだけアクションを実際に行うのは稀なことだということだろう。

 

スタント時の悲劇についても触れているのは、辛いことではあるものの、この業界のこの仕事のリスクを赤裸々に公開しているという点で評価する。この職に就こうと思う人々の大半は、やはり映画を観てインスパイアされた人が最も多いだろうから。『 バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 』で時計台に突っ込むはずが柱に激突するシーンは、自宅のレーザーディスクの解説か何かに「事故だった」と書かれていたのを覚えている。そうした危険な仕事であるという負の部分を隠すことなく映し、そして語った本作は、スタント・パフォーマーを志す人々にとってのmust-watch な作品になったと言える。

 

単にスタントをこなすだけではない。その経験を活かして、業界内で更なる地位を得た者の活躍にも触れている。ハリウッドという特異な生態系で、しっかりとサバイバルする女性たちの姿からは多大な勇気を与えられることだろう。

 

ネガティブ・サイド

色々と権利関係がうるさいのかもしれないが、『 チャーリーズ・エンジェル 』や『 ワイルド・スピード 』の実際の劇中のクリップを見せてくれても良いのではないか。彼女たちの活躍がどれくらいカッコいいアクションシーンを作り上げているのかを見せないのであれば、劇場公開する意義は半減する。アクションは大画面、大音響で堪能するべきだからだ。

 

スタントウーマンたちの声を十分に聴くことはできたが、では女優さんたちの声は?たとえばスカーレット・ジョハンソンやハル・ベリー、ブリー・ラーソンなどの彼女らのスタントの直接の恩恵を受けた役者たちの声も聴いてみたいと思うのは当然だ。そうした声が聴けない点は大いに不満である。

 

ドキュメンタリーはインタビュー形式で進むのが常だが、あまりにも取り留めのない構成であると感じた。作品ごとに論じるのは不可能にしても、たとえば1980年代、1990年代、2000年代などと時代ごとに区切るか、あるいは車のスタントなのか、格闘のスタントなのかのように、何らかの形でスタントウーマンたちをカテゴライズした構成にすれば、より分かりやすかったと思われる。

 

総評 

良作である。『 ようこそ映画音響の世界へ 』のように、裏方さんの仕事に光が当たるのは喜ばしいことだ。映画の世界の奥行きがさらに増して見えるようになると思う。今度の対象は、ヘアスタイリストか、それともメイクアップアーティストか。カズ・ヒロのドキュメンタリー作品とか、誰か作ってくれないかな。または『 すばらしき映画音楽たち 』の第2弾。絶対に需要はあると思うのだが。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

wrap one’s head around ~

『 ゴーストランドの惨劇 』でも紹介した表現。「~を理解する」の意味。

I finally wrapped my head around the risk of being a stunt performer.
スタント俳優であることをリスクをようやく理解することが出来た。

のように使う。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, ドキュメンタリー, ミシェル・ロドリゲス, 歴史, 監督:エイプリル・ライト, 配給会社:イオンエンターテイメントLeave a Comment on 『 スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち 』 -究極の裏方たち-

『 ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 』 -Rise up against all odds-

Posted on 2021年1月11日 by cool-jupiter

ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 80点
2021年1月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アクシャイ・クマール ビディヤ・バラン シャルマン・ジョーシー
監督:ジャガン・シャクティ

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昨年2019年夏ごろにNHKの『 地球ドラマチック 』でインドの衛星打ち上げ特集を行っていたのを見て、数学の国がついに天文学にも本腰を入れ出してきたかと感じた。そして本作、インド版『 ドリーム 』がリリース。宇宙開発および映画製作の優等生への仲間入りをさせてもらうぞ、との宣言であるかのようだ。

 

あらすじ

タラ(ビディヤ・バラン)は過程を切り盛りする主婦であり母であり、そしてISRO(インド移駐研究機関)の職員でもある。ロケット発射の際のほんのわずかな確認ミスのために、打ち上げは失敗。それによりタラと責任者のラケーシュ(アクシャイ・クマール)は閑職の火星探査衛星打ち上げプロジェクトに左遷されてしまうのだが・・・

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ポジティブ・サイド

文句なく面白い。その最大の理由は、魅力的なキャラクターにある。実話ベースとはいえ、おそらく登場人物たちは相当にデフォルメされているだろう。けれど、その改変具合が絶妙で、キャラクターの性格や行動がストーリーを違和感なく推し進めていく。映画の冒頭でタラが主婦として母親として奮闘する場面がこれでもかと描写されるが、それがあるからこそ家政・・・ではなく火星到達のための一発逆転のアイデアがタラから出てきたことに納得できるし、そのアイデアの中身に我々はたと膝を打つのである。

 

敵役のNASA帰りのプロジェクトマネージャーによって指名され、三々五々やって来る経験の浅い女性スタッフたちも個性豊かだ。収納や節約、裁縫など、とても宇宙開発や宇宙探査に関係があるとは思えない分野の知恵がどんどんと現場で生まれ、応用されていく展開が子気味よい。そして、そのアイデアをしっかりと受け止め、吟味し、ゴーサインを出す責任者のアクシャイ・クマールの存在感よ。この役者は『 KESARI ケサリ 21人の勇者たち 』でも、威厳ある上官でありながら、部下が上げてくる声を丹念に聞き取る耳を持っていた。そうしたキャラを演じさせるとハマる。まさにキャリアの円熟期なのだろう。本作で共演する多くの若い女優たちとも過去に共演歴があることも、アクシャイ・クマールをして演技中でもカメラOFFでも、現場をリーダーたらしめていたのかもしれない。

 

独り者で趣味もないラケーシュが女性たちの献策を容れていくところに、家父長制の色濃いインド社会へのメッセージを感じた。対照的に、妻として母として科学者・技術者としても活躍するタラが、夫や子ども達との距離を模索する姿には複雑な思いを抱かされる。だが、そこに救いもある。これまでのインド映画は、例えば『 シークレット・スーパースター 』や『 あなたの名前を呼べたなら 』のような、女性の耐える姿に美徳を見出すようなものが多かった。しかし本作ではタラは保守的・因習的な夫やイスラム教(いわゆる異教)に改宗する息子、門限を守らない娘たちと理解し、和解し合っていく。「仕事と家庭とどっちが大事なんだ?」という、問うてはいけない質問に、「両方ともに大事だ」という答えを行動で呈示していく。さらに、タラ以外の女性キャラクターたちも呼応。耐えるだけではなく、とある電車内のシーンでは男性モブキャラたちをボコボコにしていく。これは衝撃的だ。『 猟奇的な彼女 』でも、彼女が男性乗客をひっぱたくシーンがあったが、本作はそれを超えている。インドの新時代の幕開けを目の当たりしたように感じる。

 

探査機の打ち上げ前、そして打ち上げ後も、ベタな手法ではあるが、観客のハラハラドキドキを持続させてくれる。もちろん、歴史的に成功したミッションであることは分かっているが、それでも手に汗握ってしまうのは、それだけ感情移入させられているからだ。『 ドリーム 』のクライマックスでも聞こえてきたが、レーダーコンタクトの瞬間、信号受信の瞬間の安堵のため息が、劇場の数か所から漏れ伝わってきた。

 

「ハリウッド映画よりも少ない予算で我々は火星までたどり着いた」という演説に思わずニヤリ。予算も大切だが、もっと大切なのは創意工夫である。今後のインドの宇宙開発にエールを送りたくなると共に、インド映画界からエールを送られたように感じた。

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ネガティブ・サイド

歌と踊りが少な目である。というか、2シーンしかないし、短い。『 きっと、またあえる 』や『 スラムドッグ$ミリオネア 』のように、エンドクレジットで爆発させてくれるのかと思いきや、それもなし。世界的なマーケットを視野に入れているのは分かるが、インド映画の特徴はやはり絢爛豪華な歌と踊りにあるのだから、そこは忘れてほしくなかった。オペレーション・ルームでサリーを着て踊りまくるMOMの面々を是非とも観たかった。

 

ラケーシュが歌うキャラクターという点にもう少し一貫性が欲しかった。最終盤に思わず歓喜の歌でも歌うのかと思ったら、それもなし。そこが少し残念だった。

 

敵役のNASA帰りの鼻持ちならない男が司るプロジェクトの進行状況なども描写されていれば良かった。ミッション・マンガルの面々がそれを知って、奮励したり、あるいは落胆したりといった様子が見られれば、より人間ドラマの要素が生々しくなっただろう。

 

最後に、映画の中身とは関係ないが、どうしても言いたい。タイトルは普通に『 ミッション・マンガル 』で良いではないか。一体どこの馬の骨が何の権限をもってどういう根拠に基づいて、このようなアホな副題をつけているのか。「崖っぷち」の部分が耳障りだし、「火星打上げ」に至っては完全なる日本語ミスだ。正しくは「火星探査機打ち上げ」または「火星探査機打上げ」だろう。火星という惑星そのものを打ち上げてどうする?誰もこの誤用に気付かなかったというのか?そんな馬鹿な・・・

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総評

『 パッドマン 5億人の女性を救った男 』の主演アクシャイ・クマールとその監督のR・バールキが脚本で参加した本作は、インド映画の娯楽性とインド人の問題意識、そして現代インド社会を如実に反映している。サイエンスに関する知識も必要ない。カップルで観ても良し、家族で観ても良しの秀作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Those were the days.

 

「あの頃が懐かしい」の意。

Those were the days. There was no such thing as consumption tax.

あの頃は良かったなあ。消費税なんか無かったし。

Those were the days. Hardly anybody wore a mask.

あの頃が懐かしい。マスクを着けている人なんかほとんどいなかった。

自分バージョンを色々と英作文してみよう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アクシャイ・クマール, インド, シャルマン・ジョーシー, ビディヤ・バラン, ヒューマンドラマ, 歴史, 監督:ジャガン・シャクティ, 配給会社:アットエンタテインメントLeave a Comment on 『 ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 』 -Rise up against all odds-

『 ソング・トゥ・ソング 』 -すべては監督と波長が合うかどうか-

Posted on 2021年1月4日 by cool-jupiter

ソング・トゥ・ソング 50点
2021年1月2日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ライアン・ゴズリング マイケル・ファスベンダー ナタリー・ポートマン ルーニー・マーラ
監督:テレンス・マリック

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『 ドント・ウォーリー 』や『 A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー 』など、通常とは趣が異なる関係の一方を演じさせれば天下一品の女優。ルーニー・マーラ目当てで鑑賞。ライアン・ゴズリングもカナダ人俳優の中ではJovianのfavorite actorだ。
 

あらすじ

シンガーソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)は、辣腕プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)と組んで、徐々に頭角を現していく。BVはギタリストのフェイ(ルーニー・マーラ)と恋仲になるが、フェイは以前から秘かにクックと関係を持っていて・・・

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ポジティブ・サイド

ルーニー・マーラとライアン・ゴズリングに加え、マイケル・ファスベンダーとナタリー・ポートマン、そして中盤以降にはケイト・ブランシェット、さらには名のあるスターもさらに数名登場。俳優陣がとにかく豪華だ。俳優たちに加えて、イギーポップらの本物のアーティストも多数登場。彼ら彼女らがコンサートやパーティー。アメリカ各地やメキシコのリゾート地などを巡る画は、どれもこれもが美しい。まるで自分もそのイベントに参加し、旅をしているかのような気分にさせてくれる。

 

彼ら彼女をカメラに収めるはエマニュエル・ルベツキ。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 』では全編ワンカットに見える絵を巧みの技で撮り切った。そのルベツキの手腕が今作でも遺憾なく発揮されている。各ショット内の人物と事物のサイズ比や色合いがシネマティックに計算されていて、まるで『 続・夕陽のガンマン 』のようにどのシーンも絵になる、というのは流石に褒めすぎか。それでも、各地の建築や街並み、自然の風景を捉えたショットの数々は目の保養にもってこいである。暗転した劇場の大画面にこそ映える絵だ。

 

アメリカでも日本と同じく、モラトリアムの期間が長くなっているのだろうか。Jovianと同世代であるBVやクックが仕事に精を出すのは当然として、確固とした恋愛観や人生観を持てていないことにどういうわけか安心させられる。ふとした出会いから恋愛面でもビジネス面でもシリアスな人間関係に発展するまでの経過描写が短く、確かに大人になると時間感覚が若い頃よりも格段に速くなるし、仕事も人間関係も深まるのも速ければ冷めるのも速い。そうした青年期以降、壮年期の観客は登場人物とシンクロしやすいだろう。事実、Jovianは最初から最後までライアン・ゴズリング演じるBVに己を重ね合わせていた。出会い、別れ、そして再会する。多くの関係を結んできた、そして多くの関係を壊してしまってきたからこそ、人間関係の本当の機微や価値が分かるようになる。人生の本当の意味や目的が見えるようになる。中年夫婦で観に行くことをお勧めしたい。

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ネガティブ・サイド 

ストーリーはあるにはあるが、とにかく薄い。まるで『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 』と『 アリー / スター誕生 』を足して5で割ったものから、エロ成分をマイナスしたような作品。いや、一応女性のトップレスが拝めるシーンはあるにはあるが、エロティックでは全然ない(別に脱いでくれた女優さんに他意があるわけではない、念のため)。各シーンの映像美は素晴らしいが、そのシーンに深い意味が認められない。まるで『 フィフティ・シェイズ・フリード 』を観ているようだった。つまり、眠気との勝負である。正直なところ、ルーニー・マーラが小悪魔~魔性の女風の視線や表情を定期的に見せてくれなければ、多分Jovianは2~3回は寝落ちしていたように思う。マーラの魅力に感謝である。

 

タイトルが“Song to song”であるにも関わらず、肝心かなめのキャラクターの心情はナレーションで語ってしまうのはどういう了見なのか。BVがピアノの弾き語りをしながら作曲するシーンが、かろうじて彼の心情を表しているぐらいで、全編これ会話、しかもドラマを盛り上げない雑談で進むとはこれ如何に。テレンス・マリック監督におかれては、映像美にこだわるのもよろしいが、『 はじまりのうた 』や『 カセットテープ・ダイアリーズ 』を観て、音楽で語るとはどういうことかを研究して頂きたいものである。

 

会話劇としても盛り上がりに欠ける。『 TENET テネット 』のような難解極まる会話ではなく、非常にカジュアルな会話、表面的な意味しか持たない言葉のやりとりには、いささか閉口させられた。絞り出すような言葉、丁々発止のやりとりなどはほとんど存在しないので、やはりどれだけキャラクターに自分を重ね合わせられるかが肝になる。老親の介護が現実の問題として迫ってきているというのは30代40代あたりなら我が事のように感じられるだろうが、いかんせんキャラクターの多くが音楽業界でセレブ然とした生活を送っているものだから、やはりシンクロするのは難しい。

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総評

鑑賞して評価するには、かなりの文学的素養が求められると思われる。キャラクターがどれもこれも浮世離れしていて、地に足がついていない。大人の人間関係を描いてはいるが、これを見たままに消化吸収して解釈するには、かなりの映画的ボキャブラリーが必要だ。Jovianはその任に堪えない。英語のレビューをこれから渉猟しようとは思うが、それらを読んで自分の感想が変わるとも思えない。チケット購入を検討中の向きは、娯楽作品ではなく映像芸術だと思われたし。劇場ではなく美術館に赴くようなものと心得られたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take ~ back

~を後ろに持っていく、の意。take back ~ という形でも使われる。テニスや野球をする人なら「テイクバック」という言葉を聞いたことがあるはず。ボールを打つ前にラケットやバットを後ろに引く動作のこと。物体以外にも、コメントや約束を撤回する時にも使われる。

 

The politician never took back her comment regarding LGBT people.

その政治家はLGBTに関する自身のコメントを撤回しなかった。

 

のように使う。take backという句動詞には他にも多様な意味があるが、まずは「後ろに持っていく」、転じて「撤回する」を覚えておこう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, ナタリー・ポートマン, マイケル・ファスベンダー, ライアン・ゴズリング, ルーニー・マーラ, 監督:テレンス・マリック, 配給会社:AMGエンタテインメント, 青春Leave a Comment on 『 ソング・トゥ・ソング 』 -すべては監督と波長が合うかどうか-

『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』 -前作よりも感動度はダウン-

Posted on 2021年1月2日2021年1月11日 by cool-jupiter
『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』 -前作よりも感動度はダウン-

新 感染半島 ファイナル・ステージ 60点
2021年1月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:カン・ドンウォン イ・ジョンヒョン
監督:ヨン・サンホ

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『 新 感染 ファイナル・エクスプレス 』の続編。韓国メディアの伝え方やYouTubeのレビューはあまり芳しいものではなかったが、これは前作のクオリティを期待してのことだろう。前作のファンは“Don’t get your hopes up.”を心がけて劇場に赴くべし。

 

あらすじ

KTXでのゾンビ発生から4年。韓国は国家機能が崩壊し、国民は海外へと避難を余儀なくされた。香港に退避した軍人ジョンソク(カン・ドンウォン)は、国外脱出の際に見捨てた民間人や。船で発生したアウトブレイクによって親族を失い、失意の日々を過ごしていた。ある時、彼は「半島に眠っている現金を回収したい」という地元のヤクザ者の依頼を受け、再び故郷の半島に向かうのだが・・・

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ポジティブ・サイド

主演のカン・ドンウォンおよび他キャストの奮闘が光る。軍人を主人公にすることでアクション方向に思いきり舵を切ることができたのだろう。ハリウッド映画並みのガン・アクションにカー・アクションを盛り込んできた。韓国俳優は多くが兵役経験者のためか、銃火器の扱いに非常に長けているように映る。もちろん監督の演出もあるのだろうが、銃を撃つ動作がリアルかつカッコいい。他にもカー・アクションでは生き残りの少女が『 ベイビー・ドライバー 』のベイビーに匹敵するドライビング・テクニックを披露。ゾンビを轢いては吹っ飛ばし、吹っ飛ばしは轢いてという痛快シーンを連続して見せてくれる。ゴア描写はほとんどないのも世界的なマーケットを視野に入れてのことだろうか。

 

首都ソウルの荒廃ぶりもリアル。人間がいなくなれば植物が繁茂してくる描写は『 GODZILLA ゴジラ 』でも使われていた定番の手法とはいえ、今という時代から見てみると、新型コロナウィルスの蔓延防止のために経済活動をストップしたところ、中国やインドで如実に見られたように、空気や水が一気に清浄化されたという事実を思い起こさずにはいられない。

 

ジョンソクが出会うことになる生き残りの家族との因果には胸が潰されそうになった。ひとつの家族の運命が韓国という国家の命運と重ね合わされているのだ。ソウルに侵入する直前の道路の落書き「神は我々を見捨てた」という言葉に、世界有数のキリスト教国の韓国の本音が透けて見える。そこには同時に、人間を救うのは人間なのだという意地のようなものも見え隠れする。

 

対決することになる631部隊の狂いっぷりも見事。チェ・ミンシクを意識したような顔つきと髪型の軍曹がヴィランなのだが、基地でやっていることがめちゃくちゃだ。特に『 マッドマックス/サンダードーム 』に着想を得たと思しき「かくれんぼ」(どこらへんがかくれんぼなのか意味不明だが)は、人間は環境によっていくらでも残虐になれることを物語る。またトラックとクルマによるカー・チェイスシーンはまんま『 マッドマックス 怒りのデスロード 』。そこに大量のゾンビをぶち込んでくるのだから、迫力もスリルも倍増である。

 

生き残り家族の母の奮闘も素晴らしい。「女は弱し、されど母は強し」の格言通りである。こちらも現実世界での兵役経験者なのだろうか。シガニー・ウィーバー演じるリプリーやリンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーを彷彿させる戦う女性。銃火器の扱いは手慣れたもので、大型トラックもぶん回す。適度にピンチも招くので、ハラハラドキドキも持続する。

 

最後には作ったような感動的シーンが待っている。Home is home. 住めば都とはよく言ったもの。故郷とは何か。人間とは何か。メッセージ性がそれほどある作品ではないが、観終わった後には多くの爽快感とほんの少しの問いが胸に残るはずだ。

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ネガティブ・サイド

CGがふんだんに使われている。それは良い。問題はCGがCGだと丸わかりしてしまうこと。プレイステーション5ぐらいの画質を実現できているのかもしれないが、長女が運転するクルマを外から見るシーンや終盤の631部隊からの追跡シーンはすべてゲーム画面のように見えてしまう。

 

そもそもの発端である、半島で手付かずのまま眠っている現金を集めて回収してくるというミッション自体が不可解だ。何故にわざわざデカいを音を立てるトラックを運転するのか。それこそ、ドル札が詰まったバッグが20個程度なら、成人4人で何とか運べるだろう。ゾンビが大量に眠っているであろう都市部から抜き足差し足忍び足で離れ、そこから移動の船とランデブーするべきではないだろうか。これなら金の延べ棒がトラックに満載されているという設定にすべきだったろう。

 

ゾンビが前作から何も変わっていないところも不満である。特に前作の冒頭では鹿がゾンビ化しているところが明確に描き出されていた。続編では人間以外の動物のゾンビ(たとえば犬や猫)が登場すると期待するではないか。まあ、それをやっても『 バイオハザード 』シリーズの二番煎じになるのだけれど。実質2日程度の物語だった前作と違い、本作はその4年後。ゾンビがどのように生命活動(?)を維持しているのか、そこは素朴な疑問である。ゾンビがゾンビを食う、あるいはゾンビが植物を食べるなどの描写がほんの数秒で良いのでほしかった。そうしたカットがあれば、半島が4年経ってもゾンビ天国だったことに説明がつく。

 

本作で最大の不満は、人間ドラマの薄さである。『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』のハン・ソロの台詞“Escape now. Hug later.”と言ってやりたい。「さあ、ここで感動してくださいよ」とばかりにスローモーションになってエピックなBGMが流れるが、そこに至るまでのドラマが薄っぺらいせいで、感動が深まらない。前作の何が素晴らしかったのか。主人公を演じたコン・ユが超絶嫌味なキャラから人間味のあるキャラに変化していくところである。マ・ドンソクが血縁関係のない少女に、まだ生まれてきていない我が子を重ね合わせて奮闘するところである。安全な車両にいるバス会社の重役のクソな人間性が極限状況で露わになったように、人間の心の奥底の本性が見える、そこが変化していくところが面白く、感動を呼んだのだ。本作の感動は、極めて教科書的な手法で生み出されていて、そこがどうにも気に入らない。前作ファンならばより一層そう感じることだろう。

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総評

感染、発症、隔離。ゾンビとウィルスには共通点が非常に多い。制作時にはコロナ禍がここまで世界を覆ってはいなかったはずだ。にもかかわらず、これほどの娯楽作品を届けてくるところに、韓国映画界の底力を見るように思う。一本の独立した作品として頭を空っぽにして鑑賞すれば、存外に楽しめるはずだ。事実、前作を未鑑賞のJovian嫁は最初は「なんで前作を観ていない自分の分までチケット買うんじゃゴルァ!!」だったが、観終わった後は満足していた様子だった。コロナ禍で悶々とした気分を一時的にでも吹っ飛ばしてくれるアクション作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

in 15 minutes

劇中では“We’ll arrive in Incheon Port in 15 minutes.”=「15分後に仁川港に着く」という具合に使われていた。In a few hoursも使われていたかな。in + 数字 + 時間の単位、という形で覚えよう。

 

in 10 minutes =10分後

in 5 days =5日後

in 4 years =4年後

 

である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, イ・ジョンヒョン, カン・ドンウォン, 監督:ヨン・サンホ, 配給会社:ギャガ, 韓国Leave a Comment on 『 新 感染半島 ファイナル・ステージ 』 -前作よりも感動度はダウン-

2020年総括と2021年展望

Posted on 2021年1月1日2021年1月1日 by cool-jupiter

2020年総括

やはりコロナ禍に触れないわけにはいかない。Jovianの実家はかつて焼肉屋であり、O-157と狂牛病によるダメージがいかに痛撃であったのかを身をもって知っている。あの2001年の悲劇と同規模、いやそれ以上の惨禍が、焼肉業界だけではなく飲食業界全体、さらには旅行や映画にも及んだ。新作映画がことごとく公開延期され、海外の有力とされた映画のいくつかは配信に流れた。「ニューノーマル」という言葉が新しい意味を帯びた2020年だったが、2021年についても予断を許さない。

しかし、「一生に一度は、映画館でジブリを。」とのキャッチフレーズで『 風の谷のナウシカ 』や『 もののけ姫 』がリバイバル上映されるなど、温故知新の一年でもあったと思う。9.11以降にハリウッドの作劇術がガラリと変わったように、2020年は映画産業(もちろん、ほとんどあらゆる産業もだが)がガラリと変わった一年として後世の歴史家に記されることだろう。

 

それでは個人的な各賞の発表を。

 

2020年最優秀海外映画

『 シカゴ7裁判 』

アーロン・ソーキンが(コロナとは異なる意味での)時代の節目をその炯眼でもって見通していたとしか思えない。それほど完璧なタイミングでのリリースだったと思う。民主運動とは何か。国家権力とは何か。コロナ以前の世界で最も問われていたテーマを、1960年代から見事に現代につなげてくれた。それもとびっきりのエンターテインメント性を備えて。Netflix映画だが、アカデミー賞を受賞してもまったくおかしくないクオリティの作品であろう。

 

次点

『 ウルフウォーカー 』

とびきりユニークな線画アニメーションで非常に土着的な物語を描きながら、そこに見えてくるのは気高く孤高に生きることを是とする哲学。『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』と次点を争ったが、共存共栄を敢えて志向しない本作の独自性の方を紙一重の差で評価したい。

 

次々点

『 シュヴァルの理想宮ある郵便配達員の夢 』

 フランス映画=男女のドロドロの情念とヌードと濡れ場、というJovianの蒙を啓いてくれた作品。

 

2020年最優秀国内映画

『 風の電話 』

コロナによって先行するあらゆる社会問題がかき消された感のある2020年であるが、本作の提示した原発事故の問題および日本社会の分断化、その結果として生じてきた子どもの孤食問題。商業性と芸術性、そして社会性の全てを高い次元で備えた邦画の傑作。

 

次点

『 私をくいとめて 』

能年玲奈の魅力と演技力が爆発した作品。ごくごく限られた人々にしか当てはまらないのかもしれないが、原作小説および映画は聖典として長く読まれ、鑑賞され続けていくことだろう。

 

次々点

『 37セカンズ 』

邦画の世界でタブーとされてきた事柄をこの一作だけで次々に打破した。

 

2020年最優秀海外俳優

オークワフィナ

『 フェアウェル 』で見せた高い演技力で選出に異論無し。アイデンティティを巡る物語の需要は今後高まることはあっても下がることはないだろう。そうした物語が良作と呼べるかどうか、主人公およびメインキャラクターの演技力が及第に達しているかどうかは、本作のオークワフィナが基準になることだろう。

 

次点

スシャント・シン・ラージプート

『 きっと、またあえる 』の大学生役の演技は最高だった。鑑賞後に死去を知って愕然とした。インド映画界のみならず、世界の映画界が一つの宝石を失ってしまった。

 

次々点

チョン・ユミ

『 82年生まれ、キム・ジヨン 』の、まさに憑依されたとしか思えない演技は圧巻だった。

 

2020年最優秀国内俳優

仲野太賀

助演の『 僕の好きな女の子 』と主演の『 泣く子はいねぇが 』の二作品で選出に文句なし。表現者として飛躍を見せた一年だったと言えよう。30歳まで今の成長ペースを保つことができれば、邦画の世界の欠くべからざるピースとなることは間違いない。

 

次点

渡辺真起子

『 風の電話 』の叔母さん、『 37セカンズ 』の母親役で残したインパクトは大きかった。登場時間の短さと観客に与える印象の大きさは必ずしも比例しないことの好例。

 

次々点

水川あさみ

『 喜劇 愛妻物語 』と『 滑走路 』、『 アンダードッグ 』の三作を評価する。『 ミッドナイトスワン 』は2021年にとっておきたい。

 

2020年最優秀海外監督 

キム・ボラ

『 はちどり 』の演出および映像の鮮烈さが強く印象に残っている。М・スコセッシ監督の“The most personal is the most creative”=「最も個人的な事柄が最も創造的な事柄である」という哲学を作劇術のすべてに応用したことから選出。

 

次点

ウッディ・アレン

『 レイニーデイ・イン・ニューヨーク 』の軽妙洒脱なテンポでのストーリーテリングは、ウッディ・アレン以外にはなしえない職人芸である。

 

次々点

ジョン・チェスター

『 ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方 』で証明したドキュメンタリー映画の撮影および編集は一級品。

 

2020年最優秀国内監督

河瀨直美

『 朝が来る 』で鮮やかに、リアルに映し出した夫婦像および家族観は、令和日本のひとつの規範となるに違いない。

 

次点

内山拓也

『 佐々木、イン、マイマイン 』のあまりにも直球過ぎる、そして変化球過ぎる青春ドラマは20代かつ長編デビュー作というタイミングでしか作りえなかったのではないか。

 

次々点

城定秀夫

『 アルプススタンドのはしの方 』で、異色のシチュエーション青春ドラマを作り上げた。

 

海外クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 ティーンスピリット 』

音楽うんぬんよりも、主人公のヴァイオレットの抱える問題がどのように解消されていくのかが全く不完全に消化されてしまった。エル・ファニングのキャリアの中でも最低レベルの作品だろう。

 

次点

『 キャッツ 』

 糞のようなCG演出と気持ちの悪い動きに、アレルギーを発症しそうになった。ミュージカルの『 キャッツ 』の持っていた感動を呼ぶポイントを全てスポイルした、完全なる映画化失敗作品の金字塔。

 

次々点

『 ディック・ロングはなぜ死んだのか 』

 

英語レビューでは賛7否3ぐらいだったが、個人的には本作とは全く波長が合わなかった。

 

国内クソ映画オブ・ザ・イヤー

『 事故物件 怖い間取り 』

これで決まりでしょ。観終わった瞬間から決まっていた。これを超えるクソ映画を作れる才能というのは、カンヌや米アカデミーで受賞できるぐらいの才能が必要なのではないか。

 

次点

『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』

 

命の重さをこれほど軽んじた作品は近年ちょっと思いつかない。のみならず警察が常識外れの無能であり、しかも物語のリアリティを担保すべき事物および人物の描写が荒唐無稽もいいところである。クソ映画の教材のような作品である。

 

次々点

『 ヲタクに恋は難しい 』

『 記憶屋 あなたを忘れない 』との壮絶なデッドヒートを制して次々点に選出。これもクソ映画として、大学や専門学校の映像学科で分析の対象になるぐらいしかないでしょ。

 

2021年展望

去年も楽しみにしていた『 ゴジラVSコング 』がまたまた延期。とにかくコロナ禍が収束してくれないことには身動きが取れない。ジブリ作品のリバイバル上映など思わぬ副産物も生まれたが、コロナが業界に与えた影響は計り知れない。

 

アメリカでは今後は映画館で公開とウェブ配信を同時に行っていく流れになりそうだという。映画を暗転した劇場で観賞するという営為に、音響や動く座席、匂い、水しぶきなどの効果も加わるか形で劇場は進化してきた。それが止まるのか、それとも別方向に進化していくのか。

 

何はともあれ、2021年の世界平和を祈りたい。

 

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『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』 - 新世紀の中国アニメ-

Posted on 2020年12月31日 by cool-jupiter

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羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~ 80点
2020年12月31日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:花澤香菜 宮野真守 櫻井孝宏
監督:MTJJ

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ずっと観に行こうと思いながら、タイミングが合わなかった作品。思いがけず2020年の締めくくりに劇場鑑賞することになった。本作を観て感じるのは、アニメーションは日本が中国に伝授したものであっても、日本的とされる自然観や世界観の源流は古代中国にあったのだろうなということ。そして、日本的とされるアニメーションは下手をすれば中国にぶち抜かれる恐れすらあるのだろう。

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あらすじ

森でのどかに暮らしていた猫の妖精・小黒(花澤香菜)は、人間の開発によって住処を追われる。放浪の旅の最中に同じく妖精のフーシー(櫻井孝宏)たちと出会った小黒は、彼らの住処で共に暮らすことになる。しかし、そこに最強の執行人、ムゲン(宮野真守)が現れ、フーシーらを撃退する。小黒はムゲンに連れ去られてしまい・・・

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ポジティブ・サイド

小黒の猫バージョンの狙ったかのような「あざとかわいさ」を見よ。これがロードトリップムービーの導入だと言われれば素直に理解できるが、サイキック・バトルアクション系の主人公だと言われれば、「またまたご冗談を」と言いたくなるだろう。だが、本作はそういう話なのだ。つまり、ジャンルミックス作品であり、それゆえ必然的にインターテクスチュアリティ(間テクスト性=intertextuality)に溢れる作品となっている。

 

冒頭から『 もののけ姫 』を思わせる森林の風景が美しい。こだまを彷彿させるキャラクターがその印象をますます強めてくれる。そして逃げ惑う動物。立ち向かわんとする小黒。切り拓かれる森。これを『 もののけ姫 』と言わずして何とする。

 

小黒がフーシーと出会い、仲間にしていく流れもスムーズだ。妖精同士の出会いと語らい、そして団らんに言葉はいらない。世界からある意味で疎外された者同士だけに通じる直感的なコミュニケーションには大いに考えさせられた。異形の者だから疎外されるのではなく、異能の者だから疎外される。妖精たちは必ずしも姿かたちのために疎外されているわけではないことがテンフーとロジュの造形を比較してみれば分かる。妖精の世界も妖精の世界で、なかなかに複雑だ。一枚岩と思わせてそうではないところが、本作を単なるおとぎ話やファンタジーにしていない。本作の目指すところは共生である。それが現実の中国の目指す「一帯一路」構想とどれくらい軌を一にするものなのかは分からないが、様々な異民族との共存共栄を志向するクリエイターが中国に存在し、その作品が中国国内のみならず国外のマーケットでも公開されることの意義は決して小さくない。

 

例えて言えば、これは『 X-MEN 』であり、『 妖怪人間ベム 』であり、『 AKIRA 』を中国風に味付けしなおした作品である。ムゲンなどはまさにマグニートーであるし、妖精社会の内ゲバと人間を守らんとする戦いはベム、ベラ、ベロの影が見え隠れする。そしてラストの領界はどうみても『 AKIRA 』だろう。観る人が観れば、より多くのオマージュやガジェット、あらゆる意味での間テクスト性のエビデンスを発見できそうだが、それは本作のオリジナリティの低さを証明するものではない。逆だ。中国は日本やアメリカの先行作品に貪欲に学んだのですよ、あなた方と肩を並べるところまで来ましたよ、もうすぐで追い抜きますよ、と宣言しているのだ。実際にバトルシーンのスピード感はアニメ映画の『 ドラゴンボール 』的でありながら、その背景や細かいキャラの動きの変化の書き込みは同作の比ではない。少なくとも『 あした世界が終わるとしても 』レベルのバトルシーンは遥かに超えている。様々なオマージュもクオリティを高めれば、立派なオリジナルになる。

 

原題の中国社会を下敷きに鑑賞すべきだろう。ストーリーもキャラクターも面白いし、深みがある。ムゲンはどことなく『 千と千尋の神隠し 』のハクのパワーアップ版以上のキャラだし、フーシーも単純な善悪二元論で割り切れるキャラではない。いつの間にやら移民大国になっている日本でも、異能・異端の者たちとどのように交流し、彼ら彼女らをどのように社会に包摂するか、あるいはしないのかを選択する時がきっと訪れる。もちろん、正解などない。必要なのは、答えを求め続けようとする姿勢を維持すること、つまりは旅を共にすることなのだろう。昨年の内に観ておきたかったと思う。

 

そうそう、Jovianは基本的には外国産映画は現地語を聞き、字幕を読むことを是としているが、本作は吹き替えで充分に楽しめる。見た目が日本のアニメ的であるし、中国人キャラクターが日本語をしゃべっても違和感を覚えなかった。

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ネガティブ・サイド

ムゲンと小黒がイカダで旅をするシークエンスが少々長かった。海上シーンをもう少し削るか、あるいはムゲンと小黒に何らかの対話をさせてほしかった。

 

戦闘シーンの疾走感と迫力は文句なしであるが、妖精たちの属性についてもう少し掘り下げて説明してほしかった。台詞は不要。ただ、陰陽五行説の木火土金水の相克関係を、バトルを通じて視覚的に分かりやすく見せてくれれば、中学生以下にもっと刺さるのではないか。

 

館の妖精たちが街の住人たちを救助していくシーンもスピーディーでスリリングだった。その一方で、館の館長と龍遊市の政治的指導者層との折衝の様子も一瞬でいいから見せてほしかった。妖精と人間の共存関係はナイーブなものではなく、高度に政治的な判断の元で維持されているものだと提示されれば、さらに大人向けのアニメとなったことだろう。

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総評

古今東西のあれやこれやのオマージュが詰め込まれた作品。かといって古いわけではなく新しい。様々なコンテンツを浴びるようにして育った個人がアメリカでは『 レディ・プレイヤー1 』を作り、『 封神演義 』や『 西遊記 』といった中国古典をベースにした教養人が本作を作ったと言えるのかもしれない。「中国映画で猫?『 空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 』みたいな地雷作品じゃねーだろうな?」と疑わしく感じてしまう向きにこそお勧めしたい傑作に仕上がっている。

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

The more S + V, the more S + V.

エンディング曲で“More we divide, more we collide”という歌詞がある。正しくは“The more we divide, the more we collide”=「私たちが分裂すればするほど、私たちはもっと衝突する」ということ。The 比較級 S + V, the 比較級 S + V. で「SがもっとVすれば、SはもっとVする」という意味になる。

 

The older you are, the weaker you become.

年をとればとるほど、弱くなっていく。

 

The more you sleep, the longer you live.

寝れば寝るほど、長生きする。

 

The more money I have, the less secure I feel.

より多くのお金を持つほどに、どんどん安心感がなくなっていく。

 

などのように使う。この構文がサラッと使えれば、英会話の中級(CEFRでB1手前)だろうか。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, 2020年代, A Rank, 中国, 宮野真守, 櫻井孝宏, 監督:MTJJ, 花澤香菜, 配給会社:アニプレックス, 配給会社:チームジョイLeave a Comment on 『 羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~ 』 - 新世紀の中国アニメ-

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