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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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投稿者: cool-jupiter

『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』 -コメディではなくシリアスドラマ-

Posted on 2023年2月6日 by cool-jupiter

グッドバイ、バッドマガジンズ 70点
2023年2月4日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:杏花
監督:横山翔一

シネ・リーブル梅田で予告編を何度か観て、面白そうだと感じたのでチケット購入。コメディ要素はあるものの、結構シリアスな人間ドラマに仕上がっていた。

 

あらすじ

女性誌編集を希望しながらも、男性向け成人誌の編集で採用された詩織(杏花)。卑猥な画像や物品に囲まれたオフィスで仕方なく働くも、女性編集者の澤木やライターのハルに影響を受け、徐々に仕事に打ち込むようになっていく。そして女性向け成人誌の創刊というチャンスを掴むことになるが・・・

ポジティブ・サイド

東京オリンピックに関しては2023年の今でも超巨額の談合やら何やらが今も捜査されているが、その巨大スポーツ利権イベントの裏でコンビニの店頭から消えたエロ雑誌とそれらを作る人々のドラマに焦点を当てたのはかなり目の付け所が秀逸であると感じる。

 

まずは主演の杏花の演技が素晴らしい。就職難の中、コネで雑誌社に就職するも、配属先は男性向け成人誌の編集部門。うら若き乙女にとってかなりアウェイの職場だろう。死んだ魚の目で来る日も来る日も女性のヌードがプリントされた紙をシュレッダーにかけていく日々。新人は雑用が主な仕事とはいえ、これはなかなかキツイ。しかしわずか数か月でたくましく成長する詩織。後輩社員に変わってキャッチコピーを考える様は圧巻。電光石火の早業で、次々に刺激的なエロの見出し語を生み出していく詩織の成長に、オッサンであるJovianは目頭が熱くなった。

 

詩織が成長できたのも自己研鑽だけではなく、周囲の仕事人の助けもある。落ち目のエロ本業界にあっても、良いものを作ればユーザーはついてくるという信念を持った仕事人がいるからこそ。逆にそうした人々が独立を志向して会社を去っていくのがリアルだった。残された面々も、しばしば営業と対立。これはどこの業界のどこの会社でも見られる光景だろう。うちのような語学教育会社でも、営業がクライアントに「弊社なら可能です!」とか堂々と宣言して、レッスンプランを考えたり講師に研修を実施するJovianのような教務担当が頭を抱えるというのは、日常茶飯事とまで言わないが、年に2~3回はある(口八丁の営業、ホンマええ加減にせえよ・・・)。

 

本作がお仕事ムービーとして優れている点は、仕事で盛大にやらかしてしまう展開を見せてくれるところ。ここで某キャラがやらかすミスは、サラリーマン的には洒落にならない類のものである。ミスの発生機序やその結果がもたらす影響が非常にリアルだった。

 

衰退産業にあっても個として雄々しく生きていくことができる。題材こそエロ本だが、そこに込められたメッセージは万人向けである。

ネガティブ・サイド

「テープがなければ中身で戦えた」という台詞には共感できなかった。昔も今も書籍やレンタルビデオ、レンタルDVDは中身ではなく外側で勝負してきたはず。飲食店なんかもそう。世の中の製品というのは、まずは外側で勝負しないと始まらない。このあたりを描いた小説に『 装幀室のおしごと。 ~本の表情つくりませんか?~ 』がある。

 

物語の軸が終始定まらなかった。仕事を通じて詩織が成長していくビルドゥングスロマンなのか、斜陽産業で頑張る人々を活写するお仕事ムービーなのか。どちらも追求するのではなく、どちらかに振り切るべきだった。途中からエロ雑誌の存在意義ではなく、人は何故セックスするのかにテーマが変質していったのも気になる。最後の展開は不要に思えた。

 

次々と社員が退社していく中、クビになる人もいるのだが、「え?クビだけですむの?社会的に抹殺されへんの?」という展開には少々鼻白んだ。

 

総評

雑誌の栄枯盛衰を描く物語としては『 SCOOP! 』や『 騙し絵の牙 』を上回る面白さ。全体を通して観るとトーンが一定しないが、一瞬一瞬の面白さはなかなかのもの。主演の杏花の成長は、この職場、この業界だからこそ、万人が応援できるストーリーに仕上がっている(最後以外は)。PG12作品だが、間違っても高校生あたりがデートムービーにできるものではない。大学生でもどうだろうか。35歳以上なら男性でも女性でも、お仕事ムービーとしてもエロ本の歴史ものとしても楽しめるはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

dirty magazines

タイトルにあるバッドマガジンズというのは低品質な雑誌、あるいはコンテンツが邪悪な雑誌という意味。英語ではエロ雑誌、成人雑誌は概して dirty magazines と言う。別に知っておく必要はないだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 杏花, 監督:横山翔一, 配給会社:日活Leave a Comment on 『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』 -コメディではなくシリアスドラマ-

『 宇宙戦争(2005) 』 -人間ドラマが中途半端-

Posted on 2023年2月5日 by cool-jupiter

宇宙戦争(2005) 55点
2023年2月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ダコタ・ファニング ティム・ロビンス
監督:スティーブン・スピルバーグ

『 そばかす 』で言及されていた作品。当時、東京の劇場で観たのを覚えているが、結末以外の中身を完全に忘れていた。

 

あらすじ

レイ(トム・クルーズ)は離婚した妻との間の子どもであるロビーとレイチェル(ダコタ・ファニング)たちと面会していた。だが、街は突如謎の嵐と落雷に見舞われた。その直後、地面の下から巨大マシーンが現れ、人々を消し去っていく。レイは子どもたちを連れて必死に逃げようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

マーヴェリックでもなくイーサン・ハントでもなく、ジャック・リーチャーでもないトム・クルーズが、何かに向かっていくのではなく何かから逃げ惑う姿は新鮮だった。トム・クルーズは爽やか系だけではなく、『 レインマン 』や本作のように嫌な奴も演じられる。感情移入しづらいタイプの主人公に、どういうわけか徐々に共感させられてしまうのは、元の『 宇宙戦争(1953) 』になかった人間ドラマの要素のおかげ。ダメ親父がダメ親父なりに必死になるシーンの連続に、中年で胸を打たれずにいるのは難しい。

 

娘役のダコタ・ファニングも、栴檀は双葉より芳し。割とエキセントリックな役を演じることが多いが、子役の時からしっかりした演技派やったんやね。

 

訳が分からないままにひたすら蹂躙されていく展開はSFというよりもホラー。前作で家の中に侵入してきたチューブを切り落とすシーンを、ひたすら隠れて逃げるというシーンに改変したのもその流れに沿ったもので適切だったと感じた。9.11がアメリカ人の精神に生じさせた陰影は、当時はまだまだ濃かったということが思い出された。

 

唐突に(科学的にではなく政治的に)コロナ禍を終わらせようとする日本政府的な終わり方も、それなりに味わい深い。

 

ネガティブ・サイド

主人公レイの背景が物語にほとんど生きてこない。せいぜいクルマのコイルを交換しろというアドバイスくらい。港湾リフトを凄腕で操作する男という背景が、彼が逃げる、あるいは闘うシーンで活かされなかったのは残念。

 

原作は隕石の飛来から侵略が始まったが、本作ではマシーンは太古の昔から地中に埋まっていたという。だったらなぜ『 ”それ”がいる森 』と同じ失敗をしているのか。いや、正しくは『 ”それ”がいる森 』が失敗を繰り返したと言うべきか。いずれにしても火星人が過去に地球に来たことがあるという設定は蛇足である。

 

火星人のマシーンを内側から爆破するシーンは不要であるように感じた。日本でマシーンの撃退に成功したのが東京ではなく大阪だったのには笑わせてもらったが、アメリカ本土は徹頭徹尾逃げ惑う展開にした方がホラーやサスペンスの要素がさらに強まったように思う。

 

長男のロビーが父親に反発するのは良いとして、なぜに自ら死地に赴こうとするのか。そこがよく分からなかった。また、最後にはシレっと生存していて、このあたりは究極のご都合主義に感じられた。

 

総評

ホラーやサスペンスとして鑑賞すればそこそこ面白いが、SFやパニックものとして鑑賞すると凡庸に感じられる。原作通りに人間ドラマを極めて薄くするか、あるいは振り切って人間ドラマに全振りするかだったように思う。ただ、近年の天文学の発達で太陽系が実は豊かなオーシャン・ワールドだったと明らかになった。さらに地球外生命体が発見された時、本作はそれにどうコンタクトすべきかを考えるきっかけとして再評価されるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be careful with ~

be careful と来たら of を思い浮かべる人が多いだろう。be careful of ~ = ~に気を付ける、という意味だが、be careful with ~ は、~を大事に扱う、という意味。劇中では Be careful with the glove. = そのグローブ、大切に扱えよ、という感じで使われていた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, SF, アメリカ, ダコタ・ファニング, ティム・ロビンス, トム・クルーズ, ホラー, 監督:スティーブン・スピルバーグ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 宇宙戦争(2005) 』 -人間ドラマが中途半端-

『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

Posted on 2023年1月31日 by cool-jupiter

宇宙戦争(1953) 70点
2023年1月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジーン・バリー アン・ロビンソン
監督:バイロン・ハスキン

『 そばかす 』でトム・クルーズの『 宇宙戦争(2005) 』に言及されていたのを聞いて、再鑑賞しようとTSUTAYAを訪れる。そのDVDの隣に元ネタがあったので、そちらも併せてレンタルしてきた。

 

あらすじ

ロサンゼルス近郊に隕石が落下。天文物理学者のクレイトン・フォレスター(バリー・ジーン)は、調査に乗り出すも、隕石の正体は分からない。やがて、隕石の中から謎の浮遊マシーンが出現し、周囲の人間や建造物を焼き払っていく。隕石は世界各地に落ち、マシーンも続々と現れ、人類は絶体絶命の危機に落ちるが・・・

 

ポジティブ・サイド

古き良き、という表現は個人的にはあまり好まないのだが、本作に関してはまさに古き良き特撮映画の香りがプンプンする。何もかもがCGである現代映画に比べると、大道具や小道具が活き活きと仕事をしていた姿が目に浮かぶ。その後の東宝の『 ゴジラ 』、『 モスラ 』、『 ラドン 』などの大怪獣特撮映画は、本作から多大なインスピレーションを得ているのは間違いない。隕石状でやって来る侵略者というのはキングギドラだ。

 

浮遊マシーンの造形や、そこから伸びてくるチューブの造形もいい。このデザインはなんとなくだが、ディズニーの隠れた秀作『 ブラックホール 』のロボット、マクシミリアンに引き継がれているようにも思う。

 

火星人の侵攻に対するアメリカ人の反応にもリアリティーがある。当時、内戦以外でアメリカ国内が戦場になったことはないが、本作で描かれる逃げ惑う人々、暴徒と化す人々、教会で従容と死を待つ人々の姿には迫真性があった。

 

米軍が徹底抗戦し、浮遊マシーンがケロッとしている様も特撮の粋という感じがした。原爆まで持ち出すのは、まさに冷戦前夜という感じだが、全翼の爆撃機は実にかっこよかった。核攻撃を含む米軍の全火力が無意味だったというシークエンスは『 インデペンデンス・デイ 』に引き継がれたように思う。

 

もはや一巻の終わり・・・というところで、火星人が地球の微生物になすすべなく侵され、死んでいくという描写も、コロナ禍を経験した我々の目には新鮮かつ説得力あるものとして映る。

ネガティブ・サイド

冒頭で金星がスキップされたのは何故?

 

レイチェルが特に何か大きな役割を果たすわけではないのがビミョーなところ。まあ、フォレスター博士自体も役立たずで終わってしまうのだが。

 

前線が破られた際に、後方に新たな防衛網を築きに向かった軍人さんはその後どうなったのだろう?

 

総評

特撮ファンならぜひ鑑賞しよう。非常にオーガニックな映像を楽しめるだろう。SFファンも鑑賞すべきであると思う。人間ドラマを楽しみたい向きにはお勧めできない。ただ、コロナ禍によって、目に見えない微生物やウィルスの存在を否応なく意識させられるようになった現代、本作の価値が再び高まっているのは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Take my word for it.

私の言葉をそのまま受け取ってくれ、転じて「信じてくれ」、「本当なんだ」という意味になる。劇中では「早くワシントンに知らせて増援を呼んでくれ」というような台詞の前で使われていた。何か強調したいこと、強く主張したいことがある時に使いたい表現である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1950年代, B Rank, SF, アメリカ, アン・ロビンソン, ジーン・バリー, 監督:バイロン・ハスキンLeave a Comment on 『 宇宙戦争(1953) 』 -元祖・特撮映画-

『 ヒトラーのための虐殺会議 』 -淡々と進む超高速会話劇-

Posted on 2023年1月29日2023年1月29日 by cool-jupiter

ヒトラーのための虐殺会議 70点
2023年1月29日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フィリップ・ホフマイヤー ヨハネス・アルマイヤー
監督:マッティ・ゲショネック


トレイラーを観て、面白そうだと感じたのでチケット購入。

あらすじ

時は1942年、ベルリンのヴァンゼー湖畔の邸宅にナチス親衛隊と各省の事務次官が集められ、ユダヤ人の絶滅を効率的に進めていくための会議が持たれた。議長のラインハルト・ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)は、右腕のアドルフ・アイヒマン(ヨハネス・アルマイヤー)と共に、利害対立を調停していき・・・

ポジティブ・サイド

『 シン・ゴジラ 』も真っ青の超高速会話劇である。どのようにプロジェクトを進行させていくのかを各々が自分の立場から語っていくという意味では『 決算!忠臣蔵 』に近いとも感じた。ただし、怪獣対策や主君の仇討とは違い、ヴァンゼー会議で話し合われたのはジェノサイド計画。わずか十数名が90分でこの計画について話し合い、実務家レベルでの協議は続けていくとしたものの、大筋で合意してしまうのだから、戦時下という非常時とはいえ、当時のドイツがいかに狂っていたのかがよく分かる。

 

同時に、なぜ当時のドイツがヨーロッパをあっという間に蹂躙できたのかも見えてくる。恐ろしいまでに勤勉なのだ。わき道にそれるが、Jovianは大学時代にドイツ人留学生二人と寮で共に暮らした経験がある。そこで「『 今度、同盟組む時はイタリア抜きにしようぜ 』っていうジャーマン・ジョークがあるって聞いたけど、本当?」と尋ねたことがある。答えは「え、それはジャパニーズ・ジョークじゃないのか?」だった。一時期、日本人サッカー選手で海外で活躍するのは皆、ブンデスリーガ所属だったが、ドイツ人も日本人もとにかく勤勉なのだ。イタリア人と一緒に暮らしたことはないが、イタリア旅行に行ったことがある多くの知人友人から聞くところによると、勤勉な民族ではなさそうだ。

 

閑話休題。議長を務めるハイドリヒを会社の事業統括本部長とするなら、その最側近のアイヒマンは営業部長あたりか。この二人が実質的に取り仕切る会議に、各省や各方面軍の幹部が自らの権益を主張し、あるいは自らの負担減を主張する。丁々発止のやりとりで、ある時はハイドリヒが個別に話をし、またある時はアイスマンが冷静にデータとエビデンスを提示する。ビジネスプランを話し合っているのならお手本にしたくなるような映画だが、議題はあくまでもジェノサイド計画。

 

内務省次官のシュトゥッカートが強硬にユダヤ人疎開計画に反対するので、「あれ?」と感じたが、彼の出してきた対案に戦慄させられた。その直後、別室でハイドリヒとシュトゥッカートが二人だけで話すシーンでは、互いの家族について軽く談笑する。よくそんな話題を出して、しかも笑顔になれるなと背筋が寒くなった。もう一人、人道的な観点からの懸念を述べるクリツィンガーにも唖然とさせられる。人道的って、そっちの意味かよ・・・

 

本作はエンタメとしての要素を徹底的に削ぎ落している。BGMも音響も無し。凝ったカメラワークも一切なし。普通なら、書記役としてその場にいた若い女性の視点で会議を眺めるショットをいくつも入れそうなものだが、そんなものは一切なし。普通の人間の普通の視点からだけカメラを回すことで、作為性を一切排除した歴史ドキュメンタリー的な作品に仕上がった。無音のエンドクレジットを観て、虚無感が胸に去来した。

ネガティブ・サイド

おそらく議事録通りなのだろうが、会議出席者の自己紹介が欲しかった。一人だけというのはちょっと分かりにくい。まあ、本作はわざわざ鑑賞する向きは近代ドイツ史にまあまあ詳しい、あるいは関心があるという層のはずだが、ライトな鑑賞者もいるはずである。

 

『 RRR 』のように、エンドロールでヴァンゼー会議出席者たちの写真を映し出すぐらいしてもよかったのではないか。

 

総評

想像でしかないが、本作で描かれたのと同じような会議が2021年11月から2022年1月ぐらいにかけて、クレムリンのどこかで行われていたのではないか。自国の暗部を映画化することにかけては韓国が抜きん出ているが、その闇の濃さにかけては本作が突き抜けている。こんな主義および体制の国家と日本は同盟を結んでいたわけだが、ドイツにはヴァイツゼッカー大統領がその後に現れたが、本邦にはまだそのような為政者は現れていない。そのことをどう感じるべきかは、観る側の良識に委ねられている。

 

Jovian先生のワンポイント独語レッスン

interessant

発音はインテレサント、意味は「面白い」。英語の interesting にあたる。作中で Danke = ダンケと同じくらい聞こえてきたように思う。Jovianもたまにドイツ人と英語で話す時、アンドではなくウントと言うことがある。interessant も相槌か何かで使ってみようと思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 グッドバイ、バッドマガジンズ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ドイツ, フィリップ・ホフマイヤー, ヨハネス・アルマイヤー, 歴史, 監督:マッティ・ゲショネック, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 ヒトラーのための虐殺会議 』 -淡々と進む超高速会話劇-

『 そして僕は途方に暮れる 』 -逃げて、逃げて、逃げた先には-

Posted on 2023年1月29日 by cool-jupiter

そして僕は途方に暮れる 70点
2023年1月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤ヶ谷太輔 前田敦子 中尾明慶
監督:三浦大輔

『 娼年 』の三浦大輔監督が、とにかく目の前の現実から逃げる男の話を作ったと知り、面白そうだと思いチケットを購入。

 

あらすじ

フリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、鈴木里美(前田敦子)と同棲していた。しかし、里美に浮気を問い詰められた裕一は、発作的に家を出てしまう。そして親友の今井伸二(中尾明慶)の自宅に転がり込むが・・・

ポジティブ・サイド

元々舞台劇だったようだが、その臨場感は映画でも健在。主演と監督が舞台と同じだからだろう。冒頭から主人公が絵にかいたようなクソ野郎で、まったく共感できない。いや、クソ野郎ではなくダメ野郎か。日本のモラハラ夫の大部分ははこのようにして生まれているのだろうし、いわゆるニートの一部もこのようにして生まれていると推測される。このダメ男がなにかあるたびに次から次へと逃げていく。そして行きついた先に、自分を超えるダメ野郎と出会い、どう変わっていいのか分からないが、とにかく変わろうと決心する。ここは少し共感できた。特に藤ヶ谷太輔が見せる泣きの演技は『 志乃ちゃんは自分の名前が言えない 』の南沙良の泣きの演技に匹敵する。

 

『 そばかす 』に続き、ここでも前田敦子が絶妙な演技を披露している。Jovianはすっかり前田ファンである。この前田演じる里美も良妻賢母(今はこの言葉を使ってもいいのだろうか・・・)的なキャラと見せかけて、非常に人間味のある失敗をして、観る側を戦慄させる。いや、里美だけではなく、裕一の周囲の人間すべてがそうで、まさに共感と反感をジェットコースター的に感じられる一作に仕上がっている。

 

いくつか第四の壁を破るかのようなセリフがあるが、裕一が最後の最後に何度もこちら=観客席を振り返るのは、そういうこと。あとは世間様が何とか尻拭いしてくれるという甘い期待を抱いているのだ。実際、(Jovianの見た限りでは)劇場に訪れていた人の多くは、中年女性のおひとり様あるいは中年女性の二人組だった。嗅覚の鋭い観客たちである。

 

ネガティブ・サイド

 

映画としての絵のつなぎ方に問題多々あり。夜中のにわか雨のシーンから姉の家に転がり込むところで、小さなハンドタオルで濡れネズミの裕一の全身が拭けるはずがないし、ソファにも座るべきではないだろう。その後、姉の家を飛び出したシーンでも水たまり一つなし。さすがに不自然。

 

裕一のヒゲも変だった。鼻下だけに少し生やしているが、そんなデザインができるような生活をしていないだろう。

 

野村周平がゴジラ映画を撮っていた(?)っぽいが、映画の中に新作映画のCMは入れなくてよい。

 

総評

個人的には共感6割、反感4割の作品。自分でも学校や仕事から逃亡したことがあり、裕一のダメ野郎っぷりにイライラさせられながらも、自分を重ね合わせて見る瞬間も多かった。備わらんことを一人に求むる無かれ。人生とは詰まるところ、他人同士の尻拭いなのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Like father, like son.

「この父親にして、この息子あり」の意。母娘の場合は、Like mother, like daughter. となる。是枝裕和監督の『 そして父になる 』の英語タイトルも Like Father, Like Son だった。英検準1級以上を目指すなら知っておきたい表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 中尾明慶, 前田敦子, 日本, 監督:三浦大輔, 藤ヶ谷太輔, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 そして僕は途方に暮れる 』 -逃げて、逃げて、逃げた先には-

『 モービウス 』 -二番煎じのオンパレード-

Posted on 2023年1月28日 by cool-jupiter

モービウス 35点
2023年1月28日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:ジャレッド・レト マット・スミス アドリア・アルホナ
監督:ダニエル・エスピノーサ

 

劇場公開時にはスルーした作品。近所のTSUTAYAで準新作になったので、クーポン使用でレンタル。

あらすじ

天才医師マイケル・モービウス(ジャレッド・レト)は、自らが患っている血液難病の治療法を探していた。ある時、コウモリの血清を使った治療法を自分自身に試した結果、マイケルは異能の力を授かってしまう。同時に、抑えようのない血液への渇望に苛まされるようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

メインのキャラを演じた俳優たちは皆、ハマっていた。ジャレッド・レトは言うに及ばず、親友かつ宿敵となるマイロを演じたマット・スミスも『 ラストナイト・イン・ソーホー 』同様に、心に闇を抱えたキャラを好演した。

 

マイケルの同僚マルティーヌを演じた女優は美人だなと感じた。

 

ネガティブ・サイド

何もかもに既視感を覚えた。キャラもそうだし、ストーリーもそう。オリジナリティが決定的に欠如している。

 

ヴィランと見せかけてヒーローでした、は既に『 ヴェノム 』でやったこと。さらに主人公に立ちはだかるヴィランが主人公と同じパワーを持っているという筋立ても『 インクレディブル・ハルク 』以来、使い古されたプロット。幼い患者を救おうと結成を投与したらヴィランになってしまった。倒すためではなく止めるため、または元に戻して別の治療を施すために自らも結成を投与して患者であった少女と対峙する・・・のようなストーリーなら相当にドラマが盛り上がるはずなのだが。

 

マイケルとマイロのバトルも、まるでファンタビを観ているかのよう。コウモリがバトルをするのかどうかは知らないが、エコーロケーションによって死角からの攻撃も交わしてしまう、あるいは暗闇でも闘えるといった、コウモリらしさが感じられなかった。

 

血の臭いにすこぶる敏感になっていたマイケルだが、街中に出たら混乱するのでは?ちょっと下品かもしれないが、雑踏の中には「現在、生理中です」という女性などいくらでもいただろう。そうした臭いに反応してしまってもすぐに自制できる。しかし、マルティーヌの血の臭いには抗いがたい何かがある・・・といった描写をほんの少し入れてくれれば、それだけでマイケルが一気に人間臭くなり、感情移入しやすくなったと思う。

 

総評

近年のMCUの傾向を中耳になぞるかのように、一つの映画が一つの長大なインフォマーシャルになってしまっている。エンディングのカットシーンを観ても、もはや興奮できない。義理で鑑賞しているように感じ始めたMCUだが、あと1~2年で劇場鑑賞から離脱するのが吉かもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

work

上手く行く、の意。劇中では It worked. = 実験が成功したわ、のように使われていた。日本語でも「このプランは本当にワークするのか?」のように、一部の業界人は日常的に使っているのではないか。しばしば work like a charm = 魔法のように上手く行く = 実に上手く行く、見事に効く、という形で使われる。英会話中級者なら耳にしたことはある表現だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アクション, アドリア・アルホナ, アメリカ, ジャレッド・レト, マット・スミス, 監督:ダニエル・エスピノーサ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 モービウス 』 -二番煎じのオンパレード-

『 ウィロー 』 -王道ファンタジー-

Posted on 2023年1月28日 by cool-jupiter

ウィロー 75点
2023年1月27日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ワーウィック・デイビス ヴァル・キルマー
監督:ロン・ハワード

これは確か小4の夏休みに大阪の映画館で家族で観たのを覚えている。『 イウォーク・アドベンチャー 』と『 エンドア 魔空の妖精 』とともに、VHSでその後何度か鑑賞したのも覚えている。

 

あらすじ

悪の女王バヴモルダは魔術によって権力を欲しいままにしていたが、自身を滅ぼすと予言された特別な子の誕生を案じていた。国中の妊婦を探す女王だが、予言の子は助産婦によってその世界へと密かに解き放たれていた。農夫ウィロー(ワーウィック・デイビス)は偶然にも赤ん坊を見つけ、彼女を人間の世界に還そうと仲間と共に旅に出るが・・・

 

ポジティブ・サイド

非常にオーガニックな作りで、今の目には逆に新鮮に映るし、製作者の美学がよりクリアに繁栄されているように感じられる。ミジェットが100人以上で集落を作ることで、この物語世界の広さに説得力が生まれている。

 

剣と魔法の王道的な中世ファンタジーで、味方の剣士と敵側のプリンセスの禁断のロマンスもベタベタながら、ジョージ・ルーカスの思想の反映だろう。『 スター・ウォーズ 』っぽさがあり、個人的にこういった展開は好ましい。

 

あちこちにその後の作品をインスパイアした要素が散見される。印象に残ったのは「君の愛は一千の死に勝る」というマッドマーティがんのセリフ。萩原一至の漫画『 BASTARD!! -暗黒の破壊神- 』で「君の愛は十億の死に勝る」か何かに言い換えられていた。

 

ネガティブ・サイド

ウィローたちの冒険にもっと必然性があれば尚よかった。予言の赤子をダイキニの元に還すというだけではなく、自分たちで予言を成就させるべく冒険の旅に出るというプロットにすれば、もっとドラマが盛り上がったと思われる。

 

総評

本作が現代になってドラマ化されるというのは、映画公開当時に本作に大いにインスパイアされた少年少女が、コンテンツ制作業界の意思決定権者になりつつある、あるいはなった、ということだろう。なのでリアルタイムで本作を楽しんだ今の40代は、ぜひ子どもたちに本作を観せてあげよう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go bonkers

go crazy の意味。すなわち「頭がおかしくなる」と「大騒ぎして楽しむ」ということ。村の長老が旅のリーダーに任じられた時、腕の立つボンカーを呼び寄せる様は、まさに go bonkers という感じだった。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 1980年代, B Rank, アドベンチャー, アメリカ, ヴァル・キルマー, ファンタジー, ワーウィック・デイビス, 監督:ロン・ハワード, 配給会社:MGM映画会社Leave a Comment on 『 ウィロー 』 -王道ファンタジー-

『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』 -カーアクションは少なめ-

Posted on 2023年1月26日 by cool-jupiter

パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 70点
2023年1月22日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:パク・ソダム チョン・ヒョンジュン
監督:パク・デミン

 

仕事が繁忙期なので簡易レビュー。

 

あらすじ

クルマを運転させれば右に出る者がいないウナ(パク・ソダム)は、裏の世界の運び屋として生きている。ある日、プロ野球賭博のブローカーとその息子を運ぶという依頼が入る。しかし、アクシデントにより依頼人の幼い息子と300億ウォンの貸金庫の鍵だけを運ぶことになる・・・

ポジティブ・サイド

冒頭の数分間は『 ドライヴ 』、『 ベイビー・ドライバー 』、『 トランスポーター 』への韓国映画界なりのオマージュか。街中の路地の爆走や、静かに闇に紛れる様。クルマを駆る天才ドライバーというのは実に絵になる。パク・ソダムの無表情でのクールな演技は本作にマッチしていた。

 

子役のチョン・ヒョンジュンは『 パラサイト 半地下の家族 』ではあまり印象に残らなかったが、本作では守られるべき小さな子どもから、ヒロインを守らんとする男の子に成長する。よくこんな脚本を書いて、子どもに演じさせて、さらにそれを面白い筋立てに仕上げるものだと関心させられた。

 

韓国の警察は無能というのが定番だったが、今作の悪徳警察は特に悪辣。さっさと誰かこいつをぶっ殺せ、と心の底から思わせてくれた。

 

パク・ソダムはこれから役者としてのピークが来るだろう。続編も期待して良さそうだ。

 

ネガティブ・サイド

カーアクションが決定的に少ない。もちろん終盤の肉弾戦の迫力は否定しないが、本作の最大のアピールは華麗なるドライビング・テクニックであるべきだ。

 

国家情報院のおばちゃんに見せ場がなかった。悪徳刑事を吊し上げるのはこの人だと思ったが。

 

インドの青年にも、もう一つぐらい見せ場が欲しかった。

 

総評

『 非常宣言 』と同じく、日本ではとても作れそうにないダークな娯楽作品。ぜひ続編を作ってほしい。運び屋という裏稼業に興味のある人は、Jovianの先輩の書いた小説『 運び屋 』も読んでみよう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

サジャン

社長の意。社 = シャ ⇒ サ、長 = チョウ ⇒ チャン。昔、うちの親父も韓国旅行していた時に「社長、社長、社長にはこれが似合う」とか言われて、高いカバンを露天商に買わされていたな。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, チョン・ヒョンジュン, パク・ソダム, 監督:パク・デミン, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズ, 韓国Leave a Comment on 『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』 -カーアクションは少なめ-

『 そばかす 』 -アロマンティックという生き方-

Posted on 2023年1月23日 by cool-jupiter

そばかす 75点
2023年1月21日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:三浦透子 前田敦子 伊藤万理華
監督:玉田真也

簡易レビュー。

 

あらすじ

三十路になっても結婚せず、実家暮らしを続ける蘇畑佳純(三浦透子)に業を煮やした母親は、佳純に無断でお見合いをセッティングする。半ば騙されてお見合いをすることになったが、出会ったのはいきつけのラーメン屋の店主で、しかも彼は結婚を考えるよりも仕事に打ち込みたいと言う。佳純は彼と友達付き合いを始めるが・・・

ポジティブ・サイド

カメラワークではなく会話劇で魅せる。自宅の居間や職場の屋上など、何気ない日常のシーンをじっくりと切り取って、そこで交わされる言葉とその言外の意味でもってキャラクターの背景を語ってくれる。佳純と母親、佳純と父親、佳純と妹の会話の中身や、その声のトーンなどから、家族の人間関係が浮き彫りになってくる。非常に舞台演劇的で、Jovianは好きである。

 

三浦透子の自然体に見える演技がいい。アロマンティックやアセクシャルを公言する友人知人がいないので想像しかできなかったが、三浦の演技はその意味で非常にリアルだと感じた。村上春樹とは波長が合わないのだが『 ドライブ・マイ・カー 』にも少し興味が出てきた。

 

『 イニシエーション・ラブ 』あたりでは今一つだった前田敦子が、今や完全に女優になったなと感じる。『 食べる女 』や『 町田くんの世界 』あたりから進境著しい。Jovianは今作で前田のファンになってしまった。

 

シンデレラを書き換えるのは面白いし、実際には文学の世界では feminist theory の元、様々なおとぎ話がリライトされている。代表的なのはフィオナ・フレンチの『 スノー・ホワイト・イン・ニューヨーク 』だろうか。興味のある向きは大型図書館や大学の図書館などで借りてみよう。

 

ネガティブ・サイド

『 終末の探偵 』でも感じたが、BGMがうるさい。もっとシンプルにキャラクターのたたずないや風景だけで魅せてほしいと感じるシーンがいくつもあった。

 

最後のチェロの演奏シーンは正直ガッカリさせられた。音にではなく、演奏時の三浦の運指が音とあまり合っていなかった。『 セッション 』のマイルズ・テラーや『 ボヘミアン・ラプソディ 』のグウィリム・リーやベン・ハーディとまでは言わないが、玉田監督ならもっとリアリティにこだわって欲しかったし、三浦透子ならその期待にも十分に応えられると思うのである。

 

総評

『 僕の好きな女の子 』でも感じたが、Jovianは玉田真也監督と波長が合うらしい。男の普遍的な性質を活写する一方で、本作ではアロマンティックやアセクシャルという生き方を鮮やかにスクリーンに描き出した。本作はそうした生き方を素晴らしいと称揚しているわけではない。ただ、自分と同じ生き方を志向している人間はきっとどこかにいるのだ、ということを教えてくれる。実際にそうした人に出会えるかどうかは分からない。けれど、自分は独りではないと知ることは大きな empowerment になることは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

aromantic

ロマンティックに否定の接頭辞の a をつけたもの。意味は「恋愛感情を抱かない」。apathy = 感情がない、と構造的には同じ。sympathy = 気持ちが同じ = 共感、telepathy = 遠くの気持ち = テレパシー。asexual = 性的関心・欲求がないは生物学的にレアだと思うが、aromantic は割と普通だと思われる。romantic それ自体が元々が「ローマ的」という意味で、イクラ強力なミームであっても、一民族、一国家の性質を全人類に当てはめられるわけではないと考える。

 

ところで・・・外来語をカタカナで表記する際、元の語の成り立ちや読みやすさを考慮して、ア・ロマンティックのように書けないだろうか。最近、リスキリングという言葉が人口に膾炙するようになったが、これもリ・スキリングと書けば「スキルにイングがついて、死の前にリがついているのか」と感じられるようになる。ただ、そうするとリプレーをリ・プレーと書いたり、プレビューをプレ・ビューと書くことになるのか・・・ 外来語の翻訳と表記はかくも難しい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そして僕は途方に暮れる 』
『 パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 』
『 ヒトラーのための虐殺会議 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 三浦透子, 伊藤万理華, 前田敦子, 日本, 監督:玉田真也, 配給会社:ラビットハウスLeave a Comment on 『 そばかす 』 -アロマンティックという生き方-

『 終末の探偵 』 -裏社会と表社会のはざま-

Posted on 2023年1月20日 by cool-jupiter

終末の探偵 70点
2023年1月15日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:北村有起哉 武イリヤ
監督:井川広太郎

超絶繁忙期のため簡易レビュー。

 

あらすじ

しがない探偵の新次郎(北村有起哉)は、ヤクザと中国系マフィアのいざこざの元になった人物の捜索を依頼される。同じ頃、ミチコ(武イリヤ)という女性もクルド人の友人を探してほしいと依頼に訪れてきた。捜査を同時に進めていく中で、新次郎は別の巨悪の存在に近づいていき・・・

 

ポジティブ・サイド

北村有起哉の立ち居振る舞いが素晴らしい。正義の味方でもなく、ヤクザと友人関係にあるが、さりとて極悪人でもない。まさに表社会と裏社会のはざまに生きる探偵だと、ありありと感じられた。タバコをくゆらせながら旧知のヤクザと、おそらく最後となるであろう会話を交わすシーンは、

 

先日公開された『 ファミリア 』と同じく日本社会と移民の軋轢を描いているが、どうにも説教臭かった『 ファミリア 』よりも、本作の方がエンタメとしての純粋な面白さは上だと感じた。

 

『 マイスモールランド 』に続いてクルド人という、チベット人と同じく国を持たない民族出身の個人が失踪した。こうした寄る辺なき民に焦点を当てることには重要な意味があるように思う。ロシアによるウクライナ侵攻は、ある時突然自分が難民になりうるという可能性を世界に示した。そうした難民を受け入れるのか、拒絶するのか。それはそのまま自分の将来になっているのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

プロットがしょぼい。外国人を食い物にする者の正体は・・・って、これではテレビドラマではないか。昔の火曜サスペンス劇場を現代風に作り変えたら、こうなるのではないか。

 

ヤクザとマフィアが素手ゴロで決着というノリには個人的にはついていけなかった。『 初恋 』のような王道チャンバラでよかったのでは?

 

総評

テレビドラマの映画化と思うほどコンパクトな作品だが、逆にもう2~3本は同工異曲の作品を作ってみてもいいのではないか。劇場の入りもかなり良かった。映画館に足しげく通うようなファンなら、本作も是非チェックされたし。ニヒルで、それでいて熱い北村有起哉が堪能できる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

scavenger 

劇中で新次郎が自身を「俺は街のどぶさらいだ」と言うが、英語にすると I’m a scavenger. となるだろうか。scavenger と聞いて『 スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 』を思い浮かべた人はナイス。元々は腐肉食動物を指すが、転じて廃品回収業者も指すようになった。古い関西弁を知っている人なら「ああ、ガタロみたいなものか」と感じることだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 そばかす 』
『 そして僕は途方に暮れる 』
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