Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

投稿者: cool-jupiter

『 ゴジラ−1.0 』 -初代とGMKへのオマージュ-

Posted on 2023年11月4日 by cool-jupiter

ゴジラ−1.0 75点
2023年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神木隆之介 浜辺美波
監督:山崎貴

 

『 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 』で多くの映画ファンを激怒させ、『 ルパン三世 THE FIRST 』でやや汚名返上した山崎貴監督。不安を抱きつつチケットを購入したが、本作は当たりだった。

あらすじ

終戦間際。特攻を命じられた操縦士の敷島(神木隆之介)は機体不調により大戸島に緊急着陸する。しかし、その夜、ゴジラが島に襲来し、遣隊は全滅。生き残りは敷島と整備長のみだった。その後、東京へ帰った敷島は両親の死を知る。しかし、そこで連れ子を伴った典子(浜辺美波)と共に奇妙な共同生活が始まり・・・

 

以下、本作およびゴジラ・シリーズのマイナーなネタバレあり

ポジティブ・サイド

大戸島というロケーションにニヤリ。そして開始5分で登場するゴジラにもニヤリ。『 シン・ゴジラ 』もゴジラ自体の登場は早かったが、本作はいきなりゴジラの全身を見せつけてくれる。

 

焦土と化した東京も、白黒だった初代ゴジラと違ってリアリティが抜群。登場するキャラクター全員(山根博士除く)に悲壮感いっぱいだった第一作と違い、本作は特攻隊であるにもかかわらず生き延びてしまった敷島や、兵隊が不甲斐ないせいで家族を失ってしまった未亡人など、より様々なキャラクターたちの感情が交錯する。それにより、歴史的に距離がある時代であるにもかかわらず、色々な人物に感情移入しやすくなっている。

 

ビキニ環礁の核実験でパワーアップ、サイズアップしたゴジラが再登場し、銀座を破壊していくシーンは、まさに初代へのオマージュ。戦車隊の登場にも思わずニヤリ。ゴジラの吐く放射熱線は、ある意味シン・ゴジラ以上の破壊力。モクモクと立ち上るキノコ雲はGMK(私的ゴジラ映画第1位!)を髣髴させる。この圧倒的な絶望感と喪失感!

 

『 シン・ゴジラ 』は国を挙げてのゴジラ対策だったが、本作は当時の世界情勢と武装解除された日本という状況から、民間人による対ゴジラ作戦を決行。終戦からわずか数年なので、軍の生き残りはそれなりにいる。そして明かされる作戦。ここでも初代のオキシジェン・デストロイヤーを髣髴させるオブジェにニヤリ。作戦としては、生物としてのゴジラの弱点を突くというもので、説得力はそれなりにあった。また『 ゴジラvsコング 』でメカゴジラがゴジラの口の中に攻撃をしようとして観る側を震え上がらせたが、本作はまさにそれを敢行。その直前に艦船が一斉にゴジラを包囲していく際に流れるゴジラのテーマは、まさに初代へのオマージュ。あの特徴的なテンポの曲は、もともと自衛隊登場時のBGMだった。それが本作にゴジラではなく民間戦力のテーマソングとして使用されたことにもニヤリ。最後には『 ゴジラ対モスラ 』での抗核バクテリア弾よろしくゴジラの口に突撃。ボロボロになって沈みゆくゴジラと、エンディングでの不穏なワンシーンは完全にGMKへのオマージュでさらにニヤリ。

古いゴジラ映画の様々なネタを再調理して、見事な一品に仕立て上げている。

ネガティブ・サイド

人間パートが弱い。というかドラマの焦点が見えにくい。敷島と典子とアキ子の疑似家族が真の家族になっていく過程に焦点を当てたいのか、それとも敷島やその他の生き残りたちの戦争トラウマの克服に焦点を当てたいのかが分かりにくかった。二軸ではなく、どちらかに注力すべきだったと思う。

 

役者の演技のアンバランスというか、主役のはずの敷島が吉岡秀隆や佐々木蔵之介に完全に食われている。演技というか演出も的外れなものが多かった。最終盤、敷島が羽織っていたコートをバサッと地面に落とすのだが、そのタイミングはちょっと違うのでは?と感じた。そういうシーンが多い。敷島の演技というか、監督の演出が主役にだけはハマらなかったように感じる。

総評

ゴジラを定義するのは難しいが、何がゴジラでないのかはすぐにわかる。その意味で、本作に登場するのは確かにゴジラであり、本作はゴジラ映画である。昭和ゴジラといえば日本を破壊しまくり、それでも復興する経済絶好調な日本の産物だった。令和ゴジラはすでに経済的にボロボロな日本が政治的に道を誤ったら復活してしまう存在として描かれている。『 シン・ゴジラ 』で描かれた有能な日本政府という像はフィクションだった。我々民間人がゴジラという虚像(災厄)を虚像(エンタメ)のままにしておかなければならない時代になってしまったようである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

detachment

文脈にもよるが、ここでは分遣隊の意味。本体から切り離されて活動することから、そのように呼称される。attachment に「添付」の意味があることはTOEIC500以上なら知っているはず。detachment とは attachment の反対語なのである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ゴジラ, 怪獣, 日本, 浜辺美波, 監督:山崎貴, 神木隆之介Leave a Comment on 『 ゴジラ−1.0 』 -初代とGMKへのオマージュ-

『 リゾートバイト 』 -宣伝文句は控えめに-

Posted on 2023年10月28日2023年10月28日 by cool-jupiter

リゾートバイト 60点
2023年10月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:井原六花 藤原大祐 秋田汐梨
監督:永江二朗

風邪で寝込んでいるため簡易レビュー。

あらすじ

大学生の内田桜(井原六花)と幼なじみの真中聡(藤原大祐)と華村希美(秋田汐梨)は、瀬戸内海のとある島の旅館に泊まり込みのバイトにやってきた。ある夜、桜は女将が深夜に密かに食事を運んでいる姿を目撃してしまう。その後、3人は旅館従業員の岩崎から旅館の中の秘密の扉を探る肝試しを提案されて・・・

ポジティブ・サイド

ロケに関しては『 忌怪島 きかいじま 』とよく似ているが、島という閉鎖環境の雰囲気は本作の方がはるかに上手く使えていた。同じく低予算ホラーながら一世を風靡した『 イット・フォローズ 』へのオマージュであるかのようなシーンもあり、個人的には楽しめた。

舞台が岡山というのも個人的には〇。岡山は最怖ホラー小説(というよりも怪談)である『 ぼっけえ、きょうてえ 』や津山30人殺し、『 八つ墓村 』などホラーと相性が良い土地なのだ。

主演の井原六花が見事な演技力を披露。梶原善とは老若男女の面で見事な対をなしていた。秋田汐里もどこかで見たことあるなあと思っていたら『 青夏 きみに恋した30日 』や『 惡の華 』に出演していたのか。本作を機にクソ映画の脇役キャラから脱出してほしい。

ネガティブ・サイド

正直なところ、ポスター類が盛大なネタバレになっていると思うのだが、どうだろうか。また『 きさらぎ駅 』のスタッフが再集結ということで同工異曲のホラーを予想していたが、その予想は半分当たった。宣伝文句=半分ネタバレというのは勘弁してほしい。また

冒頭から夏恒例の糞ホラーやんけ、と思いながらなんとなく雰囲気が『 ザ・スイッチ 』に似ているなと感じた。松浦祐也の絶妙なコミックリリーフっぷりが『 ゲット・アウト 』の面白黒人キャラを髣髴させた。すれっからしのJovianは坊主が真言を唱え始めたところで「なるほど」と一人ごちた。あんまり予測不可能とか銘打たんほうがええね。

総評

低予算ながら随所にアイデアが散りばめられた良作。コメディ要素も笑えたが、青春映画的な要素はもっと薄くて良かったかな。落ちのアイデアは秀逸だと思うが、だったら「絶対に先が読めない」などと謳わない方が良い。ホラーと言ってもスプラッターではないし、案外デートムービーに向いているかも。それよりファミリーで鑑賞するのもありかもしれない。世のお父さんお母さん、家族で本作についてあれこれ語り合うのも案外面白いかもしれないませんよ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

test of courage

これは確か大学一年生の時にダニエルに教えてもらったんだったか。Jovianは母校のICUの寮に住んでいたが、これが森の中なのである。9月の新入生やら留学生の受け入れで、キャンパス内で肝試しやろうぜみたいな流れになり、そこで肝試しは云々かんぬんと説明したら、So, it’s a kind of a test of courage. と言われたと記憶している。肝試しというお化けやら呪いに関係してそうだが、test of courage は度胸試しに近いか。

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, C Rank, ホラー, 井原六花, 日本, 監督:永江二朗, 秋田汐梨, 藤原大祐, 配給会社:イオンエンターテイメントLeave a Comment on 『 リゾートバイト 』 -宣伝文句は控えめに-

『 ザ・クリエイター/創造者 』 -イデオロギーではなくテクノロジーを見せろ-

Posted on 2023年10月23日 by cool-jupiter

ザ・クリエイター/創造者 40点
2023年10月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョン・デビッド・ワシントン マデリン・ユナ・ボイルズ ジェマ・チェン 渡辺謙
監督:ギャレス・エドワーズ

 

AIが現実の仕事や学問に巨大なインパクトを与え始めている中でタイムリーな作品が公開されたと思い、チケット購入。

あらすじ

2055年、LAでAIによる核爆発が勃発。以降、アメリカはAIを排除することを決定。ニューアジア共和国に潜伏する謎のAI開発者ニルマータを捉えるために、潜入捜査官のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は組織の女性マヤ(ジェマ・チャン)に近づき、夫婦となるが・・・

以下、軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

日本国内でもChatGPTを禁止する大学(上智など)が出てくるなど、大学レベルですらAIに対する対応が割れるのだから、国家となると尚更のはず。中国がGoogleを遮断したりするという実例もある。本作は冒頭からロボットの発達とそこにAIが搭載されて・・・という歴史の if をダイジェストで見せてくれるが、まさに近現代のテクノロジー史の一端を見せられているようで興味深かった。このイントロがあるからこそ、ある意味荒唐無稽もいいところのメインプロットに説得力が生まれている。

 

舞台がアメリカ国外というのも良い。これまでアメリカ映画におけるアメリカ=全世界的な価値観を、本作は踏襲していない。ゾンビ映画でもモンスター・パニックでもパンデミックものでも、アメリカ=世界という等式が成り立つことがほとんどだったが、AIを拒否するアメリカとAIと共存するニューアジア共和国という対比は新鮮だった。

 

こんな感想を抱いたのはごく少数だと思うが、Jovianは途中からジョシュアがモハメド・アリに見えてきた。本作を楽しむ鍵は、ジョシュアにどれだけ感情移入できるかにあると思う。まあ、マイノリティーの意見・感想です。

ネガティブ・サイド

全体的に意外性がない。死んだと思ったヒロインが実は生きていた、というのは開始10分で分かること。要はそこにたどり着くまでの過程を以下に予想外のものにするかにあるのだが、全体的な世界観が『 ターミネーター 』および『 ターミネーター2 』の裏返しだと感じたし、人間側(というかアメリカ人)の感性も『 アイ、ロボット 』そっくり。結局は技術革新の裏で常に進行するラダイト運動のSF版という感じ。ノマドの外観および内部のデザインやレイアウトも『 エリジウム 』や『 スター・ウォーズ ローグ・ワン 』のビジュアルに酷似している。後者の方は監督が同じだからある意味で当然か。最も意外であるべき、ジョシュアが何故ミッションである最終兵器の破壊ではなく保護を選んだのかという理由についても、『 ブレードランナー2049 』が先行している。

 

舞台のニューアジア共和国というのがハッキリしない。我らが渡辺謙が登場し、やたらと日本語も聞こえてくるから日本?景色からしてラオス、カンボジア、ベトナム?ノマドを見ていると、どうもベトナム戦争時の民間人へのナパーム攻撃を想起させる点からして、やっぱりベトナム?だとするとAIは共産主義?そして最終的に勝利を収めるのも共産主義?イデオロギー的な背景など無しに、純粋にテクノロジーを受容するのか、拒絶するのかというストーリーの方がシンプルで、よりエンターテインメント性を追求できたのではないかと思う。

 

ところで・・・21世紀も半分を大きく過ぎているにもかかわらず、ニューアジア共和国は20世紀半ばの東南アジアのように見えるのは何故なのか?AIやロボットと共存している国家の生活水準があんなに低いはずがないと思うのだが。ただギャレス・エドワーズ監督は『 GODZILLA ゴジラ 』でジャンジラなる珍妙な日本を描いた前科があるからなあ・・・ アジアに対して正しい知識やリスペクトを持っていないように感じられて仕方がなかった。

 

総評

面白いのは面白いのだが、全編どこかで見た構図のパッチワーク。渡辺謙のAIロボも、どこか浮いていた。家族や愛の物語で締め括るのは『 インターステラー 』と同じ。壮大な世代交代のストーリーが、えらく小ぢんまりとまとまってしまったという印象。テクノロジーの話ではなくイデオロギーの話なので、鑑賞するかどうかは自分の嗜好をよくよく確かめて検討すること。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

turn the tide 

「流れを変える」の意。劇中では turn the tide of the war = 戦争を逆転させるのように使われていたと記憶している。日常だと

 

He mentioned the critical evidence and turned the tide of the debate.
彼は決定的なエビデンスに言及して、ディベートの流れを変えた。

 

The sales rep turned the tide of the negotiation by offering the client a big discount.
営業担当は顧客に大幅値引きを提供することで交渉の流れを変えた。

 

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 リゾート・バイト 』
『 月 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SF, アメリカ, ジェマ・チェン, ジョン・デビッド・ワシントン, マデリン・ユナ・ボイルズ, 渡辺謙, 監督:ギャレス・エドワーズ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ザ・クリエイター/創造者 』 -イデオロギーではなくテクノロジーを見せろ-

聖地巡礼 ~『 リバー、流れないでよ 』~

Posted on 2023年10月22日 by cool-jupiter

2023年10月22日
京都府京都市左京区鞍馬貴船町

 

『 リバー、流れないでよ 』の撮影場所である貴船に妻と一緒に行ってきた。珍しくJovianの旅情を刺激する映画だったのと、京都という割と身近な地域だったのも要因。

 

JRと京阪と叡山電鉄で1時間半で貴船口駅に到着。ここからバスで貴船に向かう選択肢もあったが、1日に1万歩以上歩くJovianは当然、徒歩を選択。看板によるとたった2.2kmほど。多少の坂はあっても、それもまた良い運動。実際に歩いて貴船に向かう、あるいは貴船から返ってくる同輩をちらほらと見かける。

 

途中の店で遅い朝食として茶そばを頂く。宇治の抹茶を使用しているとのこと。これで1,000円はチト高いが、観光地価格だからしゃーない。

 

てくてくと歩くこと25分ほどでお目当ての貴船へ。腹ごなしのためにも、まず神社にお参りしてみる。

 

映画でも縁結びの神社であることが触れられていたが、この日も結婚式が行われていた。末永くお幸せに。

 

その他に貴船道に沿って40~50分ほど散策。

巨岩や大木がけっこうたくさんある。樹齢千年と推定される神木もちらほら。和泉式部が訪れ、禊ぎをしたことで、夫婦仲が戻ったと言われているが、その頃に生えたか生えていなかったかという木々を目にすると、京都はまさに古都であると感じる。同時に、貴船の澄み切った湧水が時の流れの反復性を如実に想起させる。時間が流れ、時間が繰り返していると確かにこの地では感じられる。

 

一通りロマンを感じたら、目的地のふじやへ。

店先に元気よく立つご主人に映画を観て貴船にやって来たことを伝えると破顔一笑。そういうお客さんが時々来てくれるとのこと。映画のあれがこうで、これがああだと色々と立ち話をさせてもらう。一番面白かったというか、目から鱗だったのは、風呂場の客のシーン。2月の寒の日、朝4:00に集合、6:00から撮影開始だったそうだが、風呂場で湯気が立っては上手く撮影できないということで、あの風呂は実は「すごくぬる~いお湯だった」とのこと。うーむ、気付いてしかるべきだったのに。『 パブリック 図書館の奇跡 』なんかで「吐く息が白くねーぞ」と文句を言っていた俺なのに。何度も何度も何度も何度も裸に近いシーンで撮影を繰り返した、そのプロフェッショナリズムに満腔の敬意を表したい。

 

あまり長く立ち話しているのも商売の邪魔なので、ふじやにて昼食を。肌寒い日だったので、妻と二人そろって湯豆腐セットを注文。

座敷の窓の外に流れる川のせせらぎをBGMにして食事を頂く。実際にはこれにご飯と香の物がついてくる。これにて一人前3,500円。やっぱりちょっと高いと思うが、色々と面白い話を聞かせてもらえたので、その料金も含まれているのだと納得した。

 

帰りに隣の店でお土産として子持ち鮎の甘露煮の真空パックを購入。これは近いうちに湯漬けにして食べてみようと思う。

 

20代の頃にLAを旅行して、ハリウッド大作のロケ地を巡ったことがあるが、それ以来の聖地巡礼だったかもしれいない。聖地巡礼というのは主にアニメファンがやるものだと思っていたが、自分で体験してみるとなかなか面白い。今が川床を楽しめる最後の最後のタイミングだが、映画同様に冬の貴船を体験してみるのも乙かもしれない。関西圏にお住いの諸賢も、時間があれば貴船にどうぞ。時の流れの雄大さと、変わることのない京都の奥座敷のたたずまいという、一見すると相反する二つを体験してみてはどうだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

pilgrimage

聖地巡礼の意。ただし必ずしも宗教的な聖地を訪れようとする営為を指すだけではない。自分なりの目的地だったりゴールを目指す旅路や、そうした行為に従事しようとする人を指すこともできる。英検準1級以上を目指すなら知っておきたい語彙。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 リゾート・バイト 』
『 ザ・クリエイター/創造者 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 未分類Leave a Comment on 聖地巡礼 ~『 リバー、流れないでよ 』~

今週は・・・

Posted on 2023年10月15日 by cool-jupiter

一本も映画を観られなかった。本業がなかなかハードになっていること、自宅のテレビが先月にひっそりと息を引き取ったことなども要因。10月14日はクライアント大学主催のシンポジウムに参加。10月15日は小旅行だったため、週末も映画未鑑賞。まあ、たまにはそういう週があってもいい。

 

シンポジウムはのお題は「 デジタルトランスフォーメーション(DX)と言語教育の行方 」だった。最後にスピーカーの一人であった宮川創先生に個人的に2つ質問もさせてもらえた。

 

1つは現代のデジタル技術によってマイナー言語の保全、あるいは滅んでしまった言語の復活は可能かどうかということ。かの地で血の雨が降りそうな状況だが、現代ヘブライ語は人工的に復活した言語である。ただ、それは数十万数百万という人間が意識的に、能動的に2世の教育に取り組んだから可能だった。たとえば『 天空のサマン 』でも取り上げられた満州語の保全及び復活は可能なのだろうかという問いは、同作鑑賞時から持っていた。先生の答えは「可能である。というか、ヨーロッパの機関や研究者はもうすでにいくつもの言語に対してアプローチしている」とのことだった。これは朗報だ。

 

もう1つの質問は、現代の映像編集技術(特にリップシンク)と翻訳技術を映画に適用することは可能かということ。Jovianは大学でラテン語を学んだが、古代ローマを舞台にしつつ、しかしキャラクターがすべてラテン語で話す映画というのは見たことがない。近いところではメル・ギブソン監督の『 パッション 』ぐらいだろうか。これも宮川先生によると「可能」とのこと。というか、ごく最近、日本国内でBlu-rayが発売された作品では、言語を変えると音声が切り替わるだけではなく、キャラの口元の動きも変わるものがあるとのこと。これは凄い。昨今のハリウッドの役者たちがAI技術が役者の仕事を奪う云々でストをしているように、色々とクリアしなければならない問題はあるのだろうが、古代ギリシャや古代ローマ、古代中国を舞台にした映画を、まさにその言語(あるいは極めて原語に近い状態)で鑑賞できるようになる時代は近い。覚えなければならない台詞が減るというのは、役者にとっても負担減となり、悪い話ではないように思う。

 

その他、リップシンクだけではなく、言語表現から感情を読み取り、それによって自動音声の抑揚や強弱のパラメータが自動で変わる(もちろん人間が調節することも可能)という技術や、スピーチに応じて表情や手の動きを自動で作ってくれる技術もある。大学の映画同好会が、思わぬクオリティの作品を数台のパソコンで作るような時代も近いかもしれない。

 

劇場に行くことはなかったが、そんなことを感じた週末だった。ちなみにシンポジウムの詳しい感想はこちらの note に少しずつアップしてく予定。

 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 英語Leave a Comment on 今週は・・・

『 まなみ100% 』 -単純一途な男の恋心-

Posted on 2023年10月10日2023年10月10日 by cool-jupiter

まなみ100% 65点
2023年10月8日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:青木柚 中村守里 
監督:川北ゆめき

 

世間は三連休でもJovianは仕事であった。ゆえに簡易レビュー。

あらすじ

バク転ができれば女の子にモテると思ったボク(青木柚)は、高校で器械体操部に入部する。そこで出会ったまなみ(中村守里)に恋をしたボクは、ことあるごとにまなみちゃんに求婚するのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

アホな高校生がアホな浪人生になりアホな大学生になりアホな社会人になる。その間、ボクは様々な女性遍歴を重ねていく。もうこの時点で凡百の邦画とは一線を画している。まなみちゃんがずっと心にありながら、他の女を平気で口説き、抱いていく。実にリアルだ。事実、どれだけの人間が中学高校の頃のような純粋な恋心に忠実なままでいられようか。本作はそういう意味では『 僕の好きな女の子 』や『 神回 』とは真逆に見えて、実は同じ系列に連なる作品なのである。

 

青木柚は『 終末の探偵 』の時と同じく、どこにでもいそうな少年~青年を好演。特徴のない顔立ちのおかげで、純粋に演技力でキャラを立たせることができている。Jovianも小学生の頃だけ器械体操をやっていたが、バク転はできなかったな。飛び込み前転とかはやっていたけど。

 

ヒロインのまなみも、クラスで2番目ぐらいに可愛いと感じられるところがリアル。『 アルプススタンドのはしの方 』のメガネっ子が、器械体操選手に化けるのだから、まさに女優という感じ。ルックスだけで同じような役ばかり演じて、それでいて全然上達しない女優も多い中、中村守里は本物の女優の卵という印象を受ける。

 

大好きな女の子との距離感に悩む男性、あるいはその逆でもいい。大好きな男との距離感に悩む女性が観ても楽しめるはず。夢見る少年でいられるのは幸せなこと。けれど青春の終わりを自覚できるのは、もっと幸せなことだと思う。

 

ネガティブ・サイド

ボクの高校の時のガールフレンド(菊地姫奈)と大学の時の彼女?セフレ?(宮崎優)と社会人になってからの彼女?セフレ?(新谷姫加)の顔の系統が似すぎている。全員を同系統の顔にするなら、まなみ系の顔にできなかったのだろうか。『 町田くんの世界 』の日比美思とか、『 交換ウソ日記 』の茅島みずきとか、色々候補はいたはずだ。もしくは、全員違う系統の顔にするとか。俺が年とって、若い子の顔の区別ができないだけ?いや、そんなはずはない(一応、教え子の大学生たちの顔の見分けはつく)。

 

ボクが作る映画の中身をもっと知りたかった。どう見ても監督自身の体験を映画にした本作をさらに映画にするという入れ子構造なのだから、それによってあまり見えてこないボクの内面を逆に一気にそこに吐き出すという作りにはできなかったのだろうか。夜の校舎でホラーっぽい絵面も悪くはないが、ボクの内面に迫る映像世界を見たかった。

 

総評

劇場の入りはまあまあ。客層も10代後半ぐらいから結構な中年層まで幅広くいた。映画監督は自分の中の語りたいという衝動や欲求を美意識をもって作品に反映させるものだと思うが、本作は衝動や欲求を映画に吐き出したい、この想いを昇華させたいという川北ゆめき監督の思いが画面に溢れている。私小説を読むつもりでチケットを購入するとよい。壮大なドラマを期待するとガッカリするかもしれないので、ちょっとユニークな小市民の青春物語だと思って鑑賞のこと。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Will you marry me?

『 ちょっと思い出しただけ 』と『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』でも紹介した表現。普通は falling tone で言うのだが、今作でのボクの求婚はどれも rising tone であるように感じた。本気度が感じられないのだ。英語話者に本気でプロポーズするなら、下がり調子で言うこと!!!

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 リゾート・バイト 』
『 沈黙の艦隊 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ラブロマンス, 中村守里, 日本, 監督:川北ゆめき, 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS, 青木柚Leave a Comment on 『 まなみ100% 』 -単純一途な男の恋心-

『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

Posted on 2023年10月5日 by cool-jupiter

ハント 75点
2023年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ジョンジェ チョン・ウソン
監督:イ・ジョンジェ

 

簡易レビュー。

あらすじ

1980年代。安全企画部の海外班長パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内班長キム・ジョンド(チョン・ウソン)は、機密情報が北朝鮮に漏洩していることを知る。そして組織内にスパイがいると告げられる。パクとキムは互いのチームを探り始めるが・・・

ポジティブ・サイド

1983年という、韓国民主化前夜の時代。その3年前に「光州事件」という、韓国版の天安門事件とも言うべき事態が引き起こされており、アメリカ系韓国人が韓国大統領の訪米に対して抗議のデモを起こすところから物語が始まる。

 

そこで勃発する要人暗殺未遂事件。パクとキムの二人は反目しあいながらも事件を解決。しかし謎のスパイ「トンニム」によって次々に機密情報が漏洩。一息つく暇もなく、二人はトンニムの追跡に乗り出すが成果なし。このあたりの展開の疾走感がたまらない。元々浅からぬ因縁のある二人だが、その過去の語られ方がめちゃくちゃ。まるで昭和の任侠映画のよう。というか時代背景的に昭和か。

 

二人のスペシャリストの対決は、それこそハリウッドでは撮り尽くされた印象があるが、そこに北朝鮮というファクターを混ぜるだけでサスペンスとミステリのレベルが一段上がる。トンニムとは誰か?パクとキムの捜査と虚々実々の駆け引きにぐいぐいと引き込まれる。本作が上手いのは、トンニム探しをゴールとするのではなく、そこから先に更なるクライマックスを持ってくるところ。冷酷非情な諜報員と情に厚い面を併せ持つ二人の男の極限の対決の結末には茫然自失。

 

韓国のみならずアメリカ、日本やタイをも破壊しつくす気か?と思わせる作品。と思いきや、撮影はすべて韓国内で完結したとのこと。国策で映画を作っている国は違いますなあ・・・

 

ネガティブ・サイド

全編を通じてまさにストーリーが疾走するが、説明不足の感も否めない。特に韓国近現代史の知識がある程度ないと、キム班長の苦悩の回想シーンの意味を理解できないだろう。当時の韓国の置かれていた政治的状況をもう少し上手く物語の展開の中で自然に説明できなかっただろうか(Jovian妻はここでつまずいていた)。

 

最終盤の怒涛の展開の中で、韓国の政府組織はどれだけ北朝鮮スパイに跳梁跋扈を許しているのか?というシーンがある。ここだけは、ちょっと北朝鮮の脅威を過大に描き過ぎだと感じた。

 

総評

こりゃまた血生臭い韓国映画。血の臭いだけではなく、男臭さもムンムンと漂ってくる。『 ビースト 』や『 ただ悪より救いたまえ 』といった、男二匹の対決をテーマにした作品が好きだという向きはチケット購入をためらってはならない。そうそう、中盤に思わぬ大スターが出演して、ケレンミたっぷりの演技を見せてくれる。これは嬉しい不意打ちである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

インミン

劇中で突如登場する大物俳優がこの言葉を何度も口にする。意味は「人民」である。「人民のため」などと為政者が口にする時は、だいたい嘘をついている時だと思っていい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ほつれる 』
『 まなみ100% 』
『 オクス駅お化け 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, イ・ジョンジェ, チョン・ウソン, 監督:イ・ジョンジェ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』 -世界観の構築が弱い-

Posted on 2023年10月3日 by cool-jupiter

アリスとテレスのまぼろし工場 45点
2023年9月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:榎木淳弥 上田麗奈 久野美咲
監督:岡田麿里

 

『 空の青さを知る人よ 』の脚本を務めた岡田麿里の監督作品ということでチケットを購入。

あらすじ

製鉄の町、見伏は製鉄所の爆発事故によって外部から遮断され、時間も経過しなくなってしまった。元の世界に戻った時に矛盾を生じさせないために、いつしか町では「変化してはならない」というルールが課されるようになった。そんな中で淡々と日々を過ごしていた正宗(榎木淳弥)は、同級生の睦実(上田麗奈)に製鉄所内に幽閉されている謎の少女(久野美咲)の世話を手伝うように頼まれ・・・

 

ポジティブ・サイド

アニメーションは恐ろしく美麗。実写をそのままCG化したかのように錯覚させられるシーンも多数。ここ10年でアニメーションの技術は恐ろしく進歩しているなと実感。

 

ストーリーも悪くない。中学生の男女があーだこーだするのは王道。本作はそこに外界から分離され、時間も経過しない(というか、人間も事物も経時変化しない)という見伏という共同体を設定した。その中心にあるのは製鉄所。日本のお家芸だったモノづくりの象徴だ。そこが爆発したのは1991年。バブル崩壊の前夜で、ゲーテの『 ファウスト 』ならずとも「時よ止まれ」と言いたくなる時代だ。

 

その止まってしまった世界を止めたままにしようとする勢力と、その止まった世界の中で唯一成長する五実の存在にインスパイアされる若者たちという本作の構図は、そのまま近代日本の世代間闘争のパロディあるいは痛烈な皮肉だろう。世界に入った亀裂を製鉄所が吐き出す煙、神機狼がふさいでいくのも、ひび割れたコンクリートを必死に補修するゼネコンに見えてくるから面白い。

 

そうした諸々の社会批判のメッセージを恋に煩悶する中学生男女という、ある意味でお約束なキャラクターに仮託したのが本作。非常に観やすいし、中高生あたりでも楽しめるはず。実際に劇場に来ていたのは(レイトショーだったこともあるだろうが)中年以上の層だったように、大人でも楽しめるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

空間的にも時間的にも外界から隔絶されていて、時間は経過するものの事物も生物も変化しないという特殊な設定を、もっと序盤で見せるべきだった。いつまでも妊娠し続けたままの妊婦だけではなく、毎日病院で苦しむ人や、あるいは認知症で毎日を毎日と認識できない人など、無常とは逆の苦悩を描くことで、セカイ系の延長あるいは亜種のような世界観をもっと深めることができたはず。

 

観ていて???となったのは、見伏の経済。人々はどうやってガソリンやら食料やらを調達しているのか。貨幣は流通しているのか。しているとすれば、誰がその価値を担保しているのか。電気や水道などのインフラは?通信は?疑問が次々に湧いてきてしまった。

 

また時間は経過しないものの、記憶は持続するという点を深掘りしない点も残念極まりない。五実の成長から見伏では10年以上が経過しているはずであり、中学生の主人公たちも中身は20代の半ばから後半。この肉体と精神のギャップ、つまりプエル・アエテルナス(永遠の少年)であることについての苦悩が正宗から感じられなかった。というか正宗の叔父が精神的に退行したとしか思えない言動をとったりと、掘り下げるべきところが掘り下げられず、妙なサブプロットを追求するというアンバランスさを生んでしまっている。

 

世界観の構築が貧弱であることに加えて、本作はシークエンスごとのつながりにもあまり説得力がない。ストーリーが先に構想されて、それに合わせてストーリーボードを描いたように感じられた。もちろん印象的なシーンを先に構想して、そこからストーリーを構築する作家もいるが、それは編集や脚本も兼ねているか、あるいはそうしたスタッフと緻密にコミュニケーションが取れている場合だろう。本作は先に撮りたいシーンや使いたい主題歌があり、それに合わせてシーンをつないでシークエンスにした、そのシークエンスをつないでストーリーにした、のような印象をぬぐえない。

 

クライマックスが露骨な演出に感じられた。胎内回帰ならぬ胎外排出か。もっとなにか、お約束ではないドラマチックなシーンが描けなかったのだろうか。

 

総評

個々のシーンは面白いが、全体を通して見るとイマイチという、やや残念な作品。主人公二人のキャラも特に立っていないので、感情移入するのも難しい。アリスとテレスは古代ギリシャのアリストテレス由来なのは間違いないが、まぼろし工場というのがよく分からない。「希望とは、目覚めている人間が見る夢である」というのは、見伏が夢なのか、それともひび割れの向こうの世界が夢なのか。アリストテレス的には前者なのだろうが、Jovianは胡蝶之夢という線もあるのではないか、などと邪推してしまう。ただ、アリストテレスの幸福論を追求していけば、恋する気持ちは幸福の構成要素であっても、恋する相手はそうではない。詳しくは『 二コマコス倫理学 』を読まれたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

steelworks factory

製鉄所の意。こんな語彙はTOEICでは100%出ない。英検1級ならまれに出るかも。TOEFLやIELTS(アカデミック・モジュール)なら時々出てくるかもしれない。まぼろし工場も英訳するなら illusion factory となるのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ハント 』
『 ほつれる 』
『 オクス駅お化け 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, アニメ, ファンタジー, ラブロマンス, 上田麗奈, 久野美咲, 日本, 榎木淳弥, 監督:岡田麿里, 配給会社:MAPPA, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 アリスとテレスのまぼろし工場 』 -世界観の構築が弱い-

『 BAD LANDS バッド・ランズ 』  -社会の底辺の連帯-

Posted on 2023年10月1日2023年10月1日 by cool-jupiter

BAD LANDS バッド・ランズ 55点
2023年9月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:安藤サクラ 山田涼介 生瀬勝久
監督:原田眞人

 

安藤サクラ主演ということでチケット購入。

あらすじ

大阪で特殊詐欺グループで三塁コーチ役を務めるネリ(安藤サクラ)は、大阪・西成で底辺の人々と暮らしていた。彼女は組織の番頭、高城(生瀬勝久)の元で警察の捜査をかいくぐって生きてきた。ある時、弟のジョー(山田涼介)と共にネリはある賭場に向かうことになり・・・

ポジティブ・サイド

個人的には冒頭のシーンが楽しめた。映画の中で職場近くの風景がたくさん観られるというのは面白い。Jovianはよく大川沿いを散歩していたりする。大阪都心部で働く人にはお馴染みの淀屋橋、難波、天王寺などの景色を観ると、架空のストーリーにもリアリティが付与される。

 

社会の下層民の描き方もいい。単なる怠惰な人間の集団ではなく、適度にインテリが混じっていたり、あるいはお上に対する反骨精神からの連帯感を発揮したりと、現代性と大阪らしさの両方が盛り込まれている。

 

安藤サクラはまさにインテリ下層民の代表。とある事情により東京から逃げてきた。そして番頭の高城の庇護のもとで詐欺の片棒を担いでいる。当然のように警察からマークされる。また東京の富豪からも常に監視をされている。そんなネリが、弟ジョーと共に起こした事件により、大金を得たものの警察とヤクザを相手に逃走する羽目になる。その過程が堪えられないサスペンスを生み出している。

 

『 さがす 』に続く、大阪社会のダークサイドと、ウェットな人間関係にあふれた作品。大阪人、関西人ならぜひ鑑賞を。

ネガティブ・サイド

生瀬勝久の大阪弁はパーフェクトだが、安藤サクラはやはりネイティブからは遠い。山田涼介は論外。大阪弁の要諦である小さい「ァ」、「ィ」、「ゥ」、「ェ」、「ォ」ができていない。「血」ではなく「血ィ」みたいに発音するのが大阪弁。誰か指導できるスタッフはおらんかったんかいな。

 

さらにこのジョーというキャラクターの設定がブレまくり。自分で自分をサイコパスと言いながら、中盤に友情出演している某キャラにあっさりと撃退される。かと思えば、最終盤にはガンガン人を殺しまくり。強いのか弱いのか、サイコなのかチキンなのか、よう分からん。山田涼介の出てくるシーン全般はノイズに感じられた。

 

後は特殊詐欺組織の脆さか。そこであっさりとそんなこと喋るか?高城の教育はどないなってんの?なんか番頭と聞くと漫画『 魔風が吹く 』の番頭を思い浮かべるのだが・・・ いくら高城が裏社会の大物でも、使っている手下がこんなアホでは、あっという間に警察に摘発されているはず。ここらあたりの警察捜査の過程はかなりご都合主義に感じられた。

 

総評

ストーリーは文句なしに良い。大阪を舞台にしたところや、大道具・小道具に衣装などのプロダクションデザインも素晴らしい。問題はジョーというキャラ、そして天童よしみや江口のりこといった、いくらでもサブプロットを生み出せそうなキャラを多数出しながら、特に彼ら彼女らが活かされなかったところ。それでも、このような社会の暗い一隅を照らそうとするエンタメ作品が日本でも作られ、公開されたということは歓迎したい。関西人はもちろんのこと、日本中の人に観てもらいたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

rotten edge

劇中で腐れ縁の訳語としてネリが挙げた表現。なのだが、これは腐れ縁というよりは悪縁や険悪な仲を指す言葉で、日本語の「腐れ縁」が持つ、切れそうで切れない縁というニュアンスはない。腐れ縁は on and off relationship または on/off relationship が最も当てはまりそう。ちなみに rotten edge は

Our love for each other became a rotten edge.
私たちの愛情は剣呑なものになってしまいました。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 オクス駅お化け 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, クライムドラマ, 安藤サクラ, 山田涼介, 日本, 生瀬勝久, 監督:原田眞人, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 BAD LANDS バッド・ランズ 』  -社会の底辺の連帯-

『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

Posted on 2023年9月25日2023年9月25日 by cool-jupiter

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 80点
2023年9月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フランキー・フェイソン
監督:デビッド・ミデル

 

妻が「面白そう」というので、チケットを購入。ハズレが少ないシネ・リーブル梅田の上映作品だが、本作は年間ベスト級の面白さだった。

あらすじ

心臓病を抱えるケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、誤って救命救急サービスのアラームを作動させてしまう。それによってケネスの自宅に警察官が急行し、ケネスの安否を確認しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

舞台はケネスの自宅室内とアパートのホールウェイ。主な登場人物は、ケネスと最初に現場に急行する警察官3名、ライフ・ガード社の女性オペレーター1名、そしてケネスの姪っ子一人と、非常に小規模な作品。しかし、そこに流れる空気の濃密さはそんじょそこらの映画の比ではない。

 

最初は職務に忠実にケネスの安否を確認しようとする警察官たち。しかしケネスが黒人、元海軍兵、さらに精神障害の既往歴ありという属性を知るにつれて、どんどんと過激化していく。黒人ということは犯罪者予備軍ではないか。海軍ということは武器を所有しているのではないか。まるで『 福田村事件 』のように、疑心暗鬼がいつの間にか確認に変わり、法執行官の代表たる警察官がいとも簡単に法を破っていく。そこに至るまでの過程が『 デトロイト 』そっくりだが、『 デトロイト 』では銃声というトリガーがあった。しかし、本作では警察官の暴力性を引き出す契機は何もなし。そのことが観る側に恐怖感を呼び起こす。単に暴力的になっていくから怖いのではない。職務に忠実であろうとする姿勢が、いつの間にか他者を傷つけることを厭わない姿勢に変わっていくことが恐ろしい。そういう意味では本作は『 ヒトラーのための虐殺会議 』に近いものがある。これは極端な例かもしれないが、哲学者ハンナ・アーレントが見抜いたように、人は凡庸な悪にこそ支配されてしまう。その過程をわずか数十分で臨場感たっぷりに描いた点が本作の一番の貢献と言えるかもしれない。

 

ケネスを演じたフランキー・フェイソンの迫真の演技には息を呑むばかり。双極性障害の持ち主にして、軽いPTSD持ちにも見えた。彼の脳裏に去来したであろう様々な体験を一切映像化することなく、観る側にそれをありありと想起させる演技力と監督の手腕は見事の一語に尽きる。ライフ・ガード社のオペレーターの女性の声だけの迫真の演技も印象的。中学校教師上がりの警察官ロッシの個人としての信条が、警察という階級組織の中で簡単に押しつぶされていく様もリアルだった。

 

タイトルの通りに最後にケネスは殺害されてしまうわけだが、その結末には慄然とさせられる。法とは何か。人命とは何か。何が我々を狂わせるのか。何が我々を思考停止に陥らせるのか。本作が示唆する問題はアメリカだけに限定されたものでは決してない。

 

ネガティブ・サイド

エンドロール時に本物のケネスや警察官たちの声が聞こえるが、警察官たちは暴力的というよりも、ケネスをおちょくるような口調だったと感じた。であるならば、そのような口調を再現し、それをケネスが威圧的、高圧的、威嚇的と受け取ってしまう、のような演出を模索できなかったか。あるいは、エンドロールの実在の人物たちの声はすべてカットしてしまうのも一つの選択肢だっただろう。

 

総評

間違いなく年間ベスト候補の一つ。非常に限定的な時間と空間、そして人間関係だけで圧倒的なドラマを生んでいる。大量破壊兵器を持っていないのに、あたかも持っているかのように振る舞ったイラクは空爆されてしかるべきだった。ウクライナ戦争以降、このような言論が耳目に入ってくるが、どう考えてもアメリカの方が悪い。疑わしきは罰せずというのが人類のたどり着いたひとつの結論であるはずだが、個人レベルでも国家レベルでも疑惑を確信に変えて行動してしまうアメリカには決して倣ってはならない。やることなすこと全てアメリカの猿真似の本邦も、本作や『 福田村事件 』を直視しなければならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make sure

しばしば S1 make sure that S2 + V のような形で使う。意味は、S2がVするとS1が確認する。まあ、これは例文で覚えたほうが早い。

 

She made sure that the door was locked and the windows were closed.
彼女はドアが施錠されていて、窓も閉じられているということを確認した。

I want to make sure that this assignment is due next month.
この課題は来月が締め切りであると確認したい。

 

のように使う。初級者から上級者まで日常でバンバン使う表現なので、ぜひ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 BAD LANDS バッド・ランズ 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, スリラー, フランキー・フェイソン, 伝記, 監督:デビッド・ミデル, 配給会社:AMGエンタテインメントLeave a Comment on 『 キリング・オブ・ケネス・チェンバレン 』 -サスペンスの極北-

投稿ナビゲーション

過去の投稿
新しい投稿

最近の投稿

  • 『 WEAPONS/ウェポンズ 』 -Where are the children?-
  • 『 シェルビー・オークス 』 -クリシェ満載の竜頭蛇尾-
  • 『 TOKYOタクシー 』 -見え見えの結末とそれなりの感動-
  • 『 桂米朝・米團治と行く大坂むかしまち巡り ~商家の賑わい篇~ 』 -大阪人なら一度は観るべし-
  • 『 ネタニヤフ調書 汚職と戦争 』 -他国のスキャンダルと思うことなかれ-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年12月
  • 2025年11月
  • 2025年10月
  • 2025年9月
  • 2025年8月
  • 2025年7月
  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme