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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 孤狼の血 LEVEL2 』 -狼は滅びていない-

Posted on 2021年8月22日2022年5月7日 by cool-jupiter

孤狼の血 LEVEL2 75点
2021年8月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎 西野七瀬
監督:白石和彌

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『 孤狼の血 』の続編。松坂桃李がキャラクターとしても役者としても成長していることを証明したが、対する鈴木亮平がもっと恐ろしかった。

あらすじ

平成3年、広島。かつての仁正会と五十子会の抗争は、大上と日岡(松坂桃李)の奮闘によって手打ちに終わり、治安が取り戻されていた。しかし、超武闘派の上林(鈴木亮平)の出所により2代目五十子会に亀裂が入り、尾谷組との対立構造も先鋭化していく。日岡は騒乱を防ぐべく、チンタ(村上虹郎)をS=スパイとして上林組に送り込むが・・・

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ポジティブ・サイド

鈴木亮平演じる上林が言葉そのままの意味でヤバすぎる。まさに『 仁義なき戦い 』の世界観で、弱きを助け強きを挫くという任侠道などあったものではない。弱きを挫き、強きも挫くという、まさに悪い意味での極道。一般人が抱くヤクザへのイメージを極限まで肥大化させるとこんな奴になるのだろうという極悪人になっている。ただ悪いだけではなく頭も切れる。殺人事件の捜査でアジトに不意打ちをかけてきた日岡の尋問に対する切り返しは見事だったし、”ビジネス”を食らい、自身の叔父貴にあたる人物まで食らうという貪欲さとカリスマは、単なる暴力男に出せるオーラではなかった。白石監督の演出もあるのだろうが、鈴木亮平の役作りも大きい。デニーロ・アプローチが注目されがちだが、今作でも野生の肉食獣のような肉体美を披露してくれた。凶暴ヤクザを演じる力があるのが証明されたが、やりすぎである。これを超える演技は無理に思える。ヤクザ役のオファーはしばらく来ないだろう。Jovianのトラウマでもある目潰しをやりまくるのもポイントは高かった。『 ドント・ブリーズ2 』でも「勘弁してくれ」と感じたが、立て続けに見ること目潰しへのトラウマが少し減った気がする。

上林と対峙する日岡は前作から大きく成長した。オーソドックスな役よりも普通ではない役の方が成長できるのか。ヤクザをコントロールしようとしてヤクザそのままになってしまった大上の後継者に成長しつつあるように思えた。特に血まみれ、泥まみれになって戦うシーンが数多く出てくる。かなりきつめのアクションシーンが長めのワンカットで収められているが、事前の稽古は相当に大変だっただろう。正に体当たり。糞便を食わされた前作の大上の域には達していないが、それはまだまだ成長の余地があるということと解釈しておこう。

演技者として他にも印象に残ったのはチンタを演じた村上虹郎。在日のチンピラだが、ヤクザになりきれない半端者。普通のあんちゃんの顔とヤクザに取り込まれてしまった男の顔へ変貌する様はこの若い役者の確かな実力を感じさせる。チンタの魅せる実の親への盲目的な愛と上林が見せる盃ごとの親への盲目的な愛が奇妙な相似形になっていて、上林の上昇とチンタの転落のコントラストが大きく際立っている。

劇中でとあるキャラクターが共産党をユーモラスにディスるシーンは二重の意味で面白い。自分の行いを悪だと分かって悪行に手を染める者と、自分の行いを善だと信じて悪行に手を染める、いわゆる確信犯との違いを嗤うシーンだが、ここでは共産党員を嗤いながら、自分の信念に忠実な上林というヤクザと、これまた自分の信念に忠実な日岡という刑事が嗤われている。「お前らは根っこでは同じだよ」というわけだ。

物語は全編を通じて説教臭さとはほとんど無縁。重厚な人間ドラマだった前作の世界観を引き継ぎつつ、作風をガラリと変えてアクション方向に踏み切った判断は正解。最近の邦画がなかなか描けない人間が生きて人間が死んでいくという濃厚な物語に仕上がった。是非とも劇場でご覧いただきたい。

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ネガティブ・サイド

前作から引き続き登場する安芸新聞の記者が言う「表現の自由」は、「報道の自由」の間違いだろう。なぜこのようなミスがチェック段階で発見されず、なおかつ撮影まで行ってしまったのだろうか。

吉田鋼太郎のヤクザの親分役はさっぱりだった。元々のイメージも実際の演技もコミカルすぎて、物語世界から浮いていた。ミスキャストのように感じた。

西野七瀬の演技は悪いものではなかったが、平手打ちの力のなさや、声を張り上げるべき場面での声量の小ささは減点せざるをえない。

前作で大上が抱えていた秘密の大きさと深さから受けた衝撃があるので、今作のとある展開には驚きがなかった。「警察とはそういう組織である」ということを日岡は前作で学んだのではないか。

総評

どう考えても LEVEL3 に続くのだろう。日岡が狼の幻影を探し求めるのは、かつての大上、そして自身の中にある凶暴性の幻影を追っているように思えてならない。松坂桃李は『 不能犯 』、『 娼年 』あたりから演技の幅を如実に広げてきたが、本作でさらにその印象を強めた。さらに強烈なインパクトを残したのは鈴木亮平。小栗旬よりもハリウッドに近いのでは?ヤクザの没落と悲哀を描いた『 ヤクザと家族 The Family 』や『 すばらしき世界 』が目立つ2021年であるが、本作のような正統的なヤクザ映画もまだまだ面白さを保っている。日岡という刑事、松坂桃李という役者のビルドゥングスロマンとして必見である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

freedom of the press

「報道の自由」の意。どういうわけか the freedom of the press や the freedom of press、freedom of press のように微妙に間違った形が散見される(特に受験業界)。

報道の自由を行使する = use freedom of the press

報道の自由を抑圧する = suppress freedom of the press

のように使う。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, アクション, 日本, 村上虹郎, 松坂桃李, 監督:白石和彌, 西野七瀬, 配給会社:東映, 鈴木亮平

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