
プレデター バッドランド 75点
2025年11月7日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ エル・ファニング
監督:ダン・トラクテンバーグ
配信のプレデター作品は観ていないが、予習としては『 プレデター 』、『 プレデター2 』で十分か。余裕があれば『 エイリアンVSプレデター 』と『 AVP2 エイリアンズVS.プレデター 』も鑑賞しておけばよい。ちなみに『 ザ・プレデター 』は不要である。

あらすじ
ヤウージャの若き戦士デク(ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ)は、弱者として父に切り捨てられそうなところを兄クウェイに助けられる。デクは自らの強さを証明するために、父ですらも恐れるカリスクをハントするため、惑星ゲンナに降り立つ。原生の危険生物に襲われながらも生き抜いていくデクは、謎のアンドロイドのティア(エル・ファニング)と出会い・・・

ポジティブ・サイド
プレデターの強さと狩りへの執着と、武士道的な精神性を冒頭の10分で描き切り、そこからは『 プロメテウス 』あるいは『 エイリアン:コヴェナント 』のように未知の世界の冒険となる。
デクがプレデター的な武器と戦闘術で生き残りつつも、それが通じない植物や巨大生物もおり、絶体絶命という瞬間にアンドロイドのティア登場と、ストーリー展開のテンポもいい。
プレデターの伝統的な武器を使い単独で戦っていたデクが、ある話をきっかけにティアやバドと共闘していくようになるのも面白いと感じた。ヤウージャの伝統的な強さの定義に当てはまらない自分が、ヤウージャの伝統的な方法でもって強さを証明しようとすることの矛盾をデクが感じ取り変化していくのは、デクのビルドゥングスロマンであり、多様性と異文化共生のメッセージを包括していた。
『 ブレードランナー2049 』あたりで、人間とアンドロイドの関係にさらに踏み込んだ考察を行ったリドリー・スコットやドゥニ・ヴィルヌーヴの路線を本作も共有している。ミッションを指定されたアンドロイドと、狩ることしか自身の存在を証明できないヤウージャには、それ以外の生き方を知らないという共通点がある。その二者が交わった時のケミストリーには大きな爽快感があった。
終盤の『 エイリアン2 』へのオマージュとなるべきシーンにはニヤリとさせられた。デクがそれほどの脅威の存在になったと認識されたということか。本作はデクの文学的かつ文字通りの意味での父殺しの物語であると同時に、『 エイリアン 』ユニバースにおける母たる存在と『 プレデター 』ユニバースにおける母たる存在のクロスオーバーも予感させてくれる。続編が今から待ち遠しい。
ネガティブ・サイド
ティアはヤウージャ語を解するが、他のアンドロイドはヤウージャ語を解さないというのはご都合主義に感じた。
ティアの下半身アクションは真新しかったが、感覚器を持たないのになぜバトルができるのか。アンドロイドの感覚器も顔面にあるということは劇中でも描写されていた通りではないか。
You’re one ugly motherfucker. や Get away from her, you bitch! のような印象的な one liner が欲しかった。
総評
これは傑作。AVPが失敗した、本当の意味での人間vsプレデターvsエイリアンにつなげてもいいし、そこにアンドロイドを加えた四つ巴でもいいし、あるいは人間・プレデター連合軍vsエイリアン・アンドロイド連合軍のような二勢力の対決でもいい。あるいは、それらをデクのような第三極が潰していく展開も面白そう。文学、およびそれにつらなるフィクションの世界では父殺し=patricideが一大テーマだったが、今後はそこに母殺しが提起されるのか。
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prey
獲物、あるいは餌食の意味。I am prey to none! =俺は誰の獲物でもない!=俺は絶対的に駆る側だ!というヤウージャの信念が印象的だった。preyはもちろん、生態学などで被食者を表す語としても使われるが、プレデターのような戦闘種族が比ゆ的に使ってもOKである。
次に劇場鑑賞したい映画
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『 もののけ姫 』
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