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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2021年9月

『 サムジンカンパニー1995 』 -モデルはサムソンではない-

Posted on 2021年9月8日 by cool-jupiter

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サムジンカンパニー1995 80点
2021年9月4日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:コ・アソン イ・ソム パク・ヘス
監督:イ・ジョンピル

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Jovianは前職では英語・英会話講師、現職では企業・学校向け英語レッスンの教務担当である。今春に本作の紹介記事を読んで「TOEICのスコアアップに奮闘するOLたちの物語」と早合点していたが、どうしてなかなか骨太の社会はエンターテインメントであった。

 

あらすじ

サムジン電子に勤める生産管理のジャヨン(コ・アソン)、マーケティングのユナ(イ・ソム)、会計のボラム(パク・ヘス)は高卒というだけで制服を着せられ、小間使いばかりに従事させられていた。ある日、ジャヨンは近くの河川で魚が大量に死んでいるのを目撃、その後、自社工場から汚染水が排出されているのを目撃する。会社の不正行為に立ち向かおうとするジャヨン達であるが・・・

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ポジティブ・サイド

Jovian妻は大学新卒から東証一部上場企業の事務職であるが、旧態依然たる制服勤務、ファイリング、データ入力などに従事する毎日で、当然分厚いガラスの天井がある職場である。その妻が本作のオープニング映像に痛く感銘を受けていた。詳しくは見てもらえれば分かるのだが、とにかく男の仕事がいかにいい加減で、しかも縁の下の力持ちの存在に全く気が付いていないことが分かるだろう。1990年代の韓国企業を舞台にしたストーリーであるが、これが2021年の東証一部上場企業の中身にそっくりなところがいっぱいあるということに、我々はもっと衝撃を受けねばならない。

 

TOEICスコアが600点に達すれば「代理」になれるというお達しに色めき立つジャヨン達であるが、その一方で目撃してしまった自社工場からの汚染水の放出。これに目をつぶってTOEICスコアと共に栄達を目指すのか、それとも自身の正義感に忠実に行動するのか。このあたりの分かれ目がリアルに感じられた。当然彼女らは後者。持ち前の行動力と、長年の事務作業で培ってきた事務知識と事務処理能力を駆使して『 ミッション・インポッシブル 』的な潜入や調査を行っていく。FAXと電話番号の関係や、電話機の操作、オフィス用品の意外な用途など、知っている人であれば納得できる行動だろうし、知らない人が見れば「すごい!」と素直に感心できるだろう。

 

その過程で明るみになっていく数々の事実。それに関わるサムジン電子社内の複雑な権力構造と人間関係。ジャヨンたちが真実に迫り、それを社会に向けて告発しようと、まさに『 記者たち 畏怖と衝撃の真実 』や『 オフィシャル・シークレット 』のような展開が見えた瞬間に、韓国社会の無情な現実が立ちはだかる。『 トガニ 幼き瞳の告発 』のような胸糞バッドエンドなのか・・・と思わせてからの大逆転劇が愉快・痛快・爽快だ。韓国映画が近代史実を料理すると『 国家が破産する日 』のような展開かつエンディングを普通に作ったりするので油断できない。そうした自国映画の特徴までも伏線にした傑作である。

 

グローバル化、そして英語がキーワードの本作であるが、TOEIC対策のために会社で皆が勉強するという風景がどこか前時代的なのだが、これすらも伏線にしてしまうのだからイ・ジョンピル監督の手腕には恐れ入る。ジェットコースター的な展開の連続で「これはいける!」と思った瞬間からの転落劇や、どん底からの逆転劇が、行きつく間もなく繰り広げられる。社内の意外な人物が敵だったり、あるいは味方だったり、そうした人間たちを相手に虚々実々の駆け引きが行われ、観る側を決して飽きさせない。恋愛要素ゼロで突っ走るという、邦画では絶対に企画時点で却下されそうな脚本で最後まで全力疾走する。2020年代の韓国社会(日本社会も同様だ)の旧弊を公然と非難し、それを呵呵と笑い飛ばす会心の韓流コメディである。

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ネガティブ・サイド

出てくる男性キャラクターが一人を除いてアホ、鈍感、悪人のいずれかである。いや、根っからの悪人というのは少数なのだが、ある意味で自分の愚かしさや行動原理の醜悪さに気づかないアホや鈍感なので、同じ男としていたたまれない気持ちになってしまった。人の振り見て我が振り直せである。まあ、これは減点対象となるところではない。

 

英語クラスで自らに English name をつけるのだが、ジャヨンが自分につけたのはDorothy = ドロシー。「これは『 オズの魔法使 』へのオマージュか」と感じさせたが、特にそういった工夫はなし。Ma belleであるMichelleの過去が名前の意味と合っていただけに、SilviaやDorothyという名前にも、もっと意味を持たせて欲しかった。

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総評

痛快の一語に尽きる傑作である。シリアスでありながらコメディ、コメディでありながらシリアス。エンタメ性と社会性のバランス配分も素晴らしい。TVドラマの『 ショムニ 』のようだというレビューをちらほら見かけるが、全然違うだろう。片や、欲望のままに動いて結果的に会社の利益に。片や、正義感と信念に突き動かされて社会の利益に。本作は韓流『 エリン・ブロコビッチ 』であり『 女神の見えざる手 』であり『 ドリーム 』と評すべきだろう。遅くに上映してくれた塚口サンサン劇場に感謝。多くの方に劇場またはレンタルや配信でご覧いただきたい傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Even a worm will turn.

「一寸の虫にも五分の魂」・・・よりも「なめくじにも角」の方がニュアンス的には近いように思う。作中ではTOEICによく出る英語の格言・諺の一つとして扱われていたが、主人公たちが一貫して見せつける意地を表す言葉にもなっている。TOEICには英語の格言や慣用表現というのはあまり出ないはず。イディオムについては、どちらかと言うとTOEFL ITPを受験しなければならない大学生が知っておくべきか。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, イ・ソム, コ・アソン, コメディ, パク・ヘス, 監督:イ・ジョンピル, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 サムジンカンパニー1995 』 -モデルはサムソンではない-

『 フィールド・オブ・ドリームス 』 -He lives in you-

Posted on 2021年9月5日 by cool-jupiter

フィールド・オブ・ドリームス 80点
2021年8月30日 NHK BSプレミアムにて鑑賞
出演:ケビン・コスナー ジェームズ・アール・ジョーンズ レイ・リオッタ バート・ランカスター
監督:フィル・アルデン・ロビンソン

 

たしか中学生の時にVHSで父親と一緒に観た。世にスポーツは数多いが、特定の国々では野球に格別のドラマを見出すようである。

 

あらすじ

トウモロコシ農場を営むレイ(ケビン・コスナー)は、ある日「それを作れば、彼はやって来る」という謎の声を聴く。”それ”を野球場だと解釈したレイは、畑の一部をつぶして野球場を作る。するとそこに、スキャンダルでMLBを追放された往年の名選手、シューレス・ジョーが現われて・・・

 

ポジティブ・サイド

初めて観た頃に、ちょうど中学の授業で赤瀬川準の『 一塁手の生還 』を読んでいたと記憶している。同作を読んで、「時代と共に変わってしまうもの、時代を経ても変わらないものがあるのだな」と感じていたので、本作品でしばしば言及される60年代が何のことやら分からなくても、それが物語の理解の妨げにはならなかった。今の目で観返してみると色々と見えてくる。戦争とそれに続く反戦運動は『 シカゴ7裁判 』に描かれている通りだし、親世代と子世代の断絶は普遍的なテーマである。

 

ケビン・コスナーが作った野球場にシューレス・ジョー・ジャクソンが現われるのは、日本で言えば沢村栄治が復活するぐらいのインパクトだろうか。ちょっと違うか。いや、戦争への道を歩む前、牧歌的に野球をしていた頃の日本の野球人だという意味では合っているかもしれない。

 

ジェームズ・アール・ジョーンズの声を聴くと、どうしても『 スター・ウォーズ 』のダース・ベイダーを思い起こすし、『 ライオン・キング 』のムファサの声も印象に残っている。父親をテーマにする本作のベストキャスティングではないかと思う。

 

レイが60年代の象徴たるテレンス・マンと共に全米を奔走し、それどころか過去と現代を行き来して、悲運のメジャーリーガーとついに巡り合う。しかし、アイオワに連れてくることが叶わないシーンには胸が潰れそうになってしまった。そこへ現われる時を超えてきた青年に思わず息を飲んでしまった。そして、その青年の因果にも。

 

最後の最後に現われる「彼」との邂逅は、野球が普及していない地域や文化圏の人が見ても、その美しさと尊さは伝わることだろう。Jovianは自宅の居間で不覚にも涙してしまった。過去と現在は断絶しない。愛と絆があれば、再び人は寄り添い合うことができる。ベタにも程があるストーリーなのだが、中年になった今、あらためてその素晴らしさを堪能することができた。

 

ネガティブ・サイド

ケビン・コスナーが各地を奔走して、「彼」を探す旅路と、自宅でそれを待つ家族という構図にアンビバレントな気持ちを抱かされる。チューリップの『 虹とスニーカーの頃 』で「わがままは男の罪、それを許さないのは女の罪」と歌った時代で、2020年代にそんな菓子の歌をリリースすればバッシングの嵐だろう。時代が違うとはいえ、この部分だけは「おいおい、レイ、もうちょっと察してやれよ」と感じてしまった。

 

散々指摘されていることだが、シューレス・ジョーは左利きである。P・A・ロビンソン監督がレイ・リオッタを御しきれなかったのか。

 

総評

WOWOWで夜更かししながらNBAを観ていたJovian少年はマイケル・ジョーダンの突然の引退と野球への転向ニュースに大いに驚いた。今にして思えば、MJも野球を通じて父親ともう一度つながりたかったのかもしれない。『 ドリーム 』や『 モリーズ・ゲーム 』で厳しいながらも温かみのある父親的人物像を打ち出すケビン・コスナーの演技が光る本作を観れば、親孝行したくなってくる。コロナ禍が収まったら、親父と一緒に映画館に行きたいな。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take in something

スポーツ観戦は watch または see を使うのがほとんどだが、野球は take in a baseball game という表現がしばしば使われる。Cambridge Dictionaryでは take in = to go to see something of interest となっており、面白いと感じられるもの全般に使うことが分かる。実際に take in a beautiful sunset というのは travel blog などでよく使われる。映画ファンならば、take in a movie という表現も知っておきたい。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1980年代, A Rank, アメリカ, ケビン・コスナー, ジェームズ・アール・ジョーンズ, バート・ランカスター, ファンタジー, レイ・リオッタ, 監督:フィル・アルデン・ロビンソン, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 フィールド・オブ・ドリームス 』 -He lives in you-

『 鳩の撃退法 』 -端折り過ぎた故の失敗か-

Posted on 2021年9月4日 by cool-jupiter

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鳩の撃退法 50点
2021年8月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤原竜也 土屋太鳳 風間俊介 西野七瀬
監督:タカハタ秀太

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仕事が多忙を極めているため簡易レビューを。

 

あらすじ

売れない小説家・津田伸一(藤原竜也)の手元に、ひょんなことから3003万円もの札束が舞い込んできた。しかし、一部を使ってみたところ偽札だったことが判明。そして、津田の周囲では不可解な事件が起きていき・・・という原稿を読んだ編集者の鳥飼(土屋太鳳)は、津田に小説のプロットが事実なのかフィクションなのかを尋ねる。しかし、津田は答えをはぐらかすばかりで・・・

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ポジティブ・サイド

冒頭の深夜のカフェで繰り広げられる謎めいた人物同士の会話。これには引き込まれた。藤原竜也と風間俊介が、ある書籍の貸し借りに至るまでの言葉のやり取りは非常に舞台演劇的で、映画を見ていながらもリアルタイムかつリアルスペースで繰り広げられる芝居を観るようでもあった。

 

次々に繰り出される事件と謎のつるべ打ちは非常にテンポがよく、小説のプロットなのか、それとも作家自身の実体験なのかという境目が良い意味で分かりづらくなっていた。

 

後半に土屋太鳳が現地に飛んで色々と調査するシーンから、明らかに観る側の脳みそをもう一段階混乱させようとしてくる。謎解きの過程それ自体が別の謎を生み出している。より具体的に言えば、某男性登場人物2名の実在性および関係性。このあたりを敢えて曖昧模糊にしておくことで、ラストで明らかになる「〇〇〇〇は真実である」という箇所と「▲▲▲▲は虚構の可能性あり?」という点がより味わい深くなっている。

 

考察それ自体よりも、考察しがいのあるモヤモヤ感を楽しめる人向きか。逆説的に聞こえるかもしれないが、エヴァンゲリオンを楽しめるなら、本作も楽しめることだろう。

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ネガティブ・サイド

原作小説は未読であるが、映画の全体的な第一印象は「なんだかなあ・・・」だった。まず、「津田の書いた小説が現実になる?」という宣伝文句は公正取引委員会への通報を検討するほど酷いもの。おそらく「津田は秀吉のハッピーエンドの物語を構想して、それを書く」ということで、救いのない物語にも救いはあるのだと観る側に伝えたいのだろうが、いくらなんでも誇大広告に過ぎる。現実を小説にすることは可能でも、小説が現実と化すという筋立てには無理がありすぎる。それをやるならSFにしてしまうか、あるいは伊坂幸太郎的な世界を早めに構築・呈示しておくべきだろう。冒頭でナレーションを司る藤原竜也が、役者としての藤原竜也と並び立った時には「これがその仕組みなのかな」と感じたが、この見せ方は冒頭だけ。何じゃそりゃ・・・

 

偽札と一家失踪事件の思いもよらぬつながりに面白さを見出せるかどうかだが、映画はこの部分のサブプロットをかなり削ぎ落してしまっていると思われる。その考える根拠は二つ。一つには、特定の人物の実在性をかなりの程度まで説明してしまっている。これは特定の存在を虚実定かならぬものとして描くための虚の部分を削った閉まったことに起因すると思われる。『 ザ・ファブル 殺さない殺し屋 』の某ボスのような人物に、これ見よがしなキャスティングをすることで、考察の余地が返って狭まったように感じた。もう一つには、偽札そのもの。普通、小説家ともあろう者が偽札の可能性が高いものを不用意にATMに入れるか?一昔前にニコニコ動画で自宅のコピー機でお札を刷るところを実況中継していたアホが半日と経たずに逮捕されていたが、一部のコピー機や複合機には紙幣の偽造防止機能や警報機能がついているし、ATMも同様の機能を持ったものがある。この時点で「偽札の存在自体が偽物」と思えてしまい、せっかく入っていけた物語世界から早々に出てきてしまった(劇中の偽札が本物の紙幣だと言っているわけではない、念のため)。

 

全編を通じて『 ユージュアル・サスペクツ 』的な仕掛けが施されているものと感じていたが、鳩はどこにも見当たらず。津田の書く原稿に出てくる人名や地名が、実は高円寺のバー内、あるいは高円寺界隈、または地方新聞のあちらこちらにも見られるものだという伏線にも目を凝らしたが、そんなものはなかった。少なくともまあまあの鵜の目鷹の目を自認するJovianには見つけられなかった。一家失踪も、それ自体がニュースバリューを持っているものとは思えず、この点でも虚々実々の虚の部分に白けてしまった。

 

総評

宣伝文句は誇大広告(というか虚偽広告)だが、一応製作者側の解釈もラストに呈示されている。それはとある楽曲の歌詞と歌い手である。Jovianはこの部分からして本作で津田が描く物語は虚構であると(勝手に)断じる。何のことやら分からない、しかし物語の中身や結末が気になるという人は、チケット代と2時間を無駄にしてしまうかもしれないという覚悟をもって劇場鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fiction

フィクションの意。この物語はフィクションであり云々の決まり文句でもおなじみ。面白いもので、ラテン語の語源は facio = 作る、であり、この facio から生まれた別の英単語に faction = 派閥、というものがある。派閥を持たない島国の首相が退陣を表明したが、人間というのは虚構の物語や派閥を作らずにはおれない生き物なのかもしれない。英語上級者は fictional と fictitious の違いを調べてみよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 土屋太鳳, 日本, 監督:タカハタ秀太, 藤原竜也, 西野七瀬, 配給会社:松竹, 風間俊介Leave a Comment on 『 鳩の撃退法 』 -端折り過ぎた故の失敗か-

『 白頭山大噴火 』 -韓流ディザスタームービーの佳作-

Posted on 2021年9月3日 by cool-jupiter

白頭山大噴火 75点
2021年8月29日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ハ・ジョンウ イ・ビョンホン マ・ドンソク ペ・スジ
監督:イ・ヘジュン キム・ビョンソ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210903224429j:plain

仕事が多忙を極めているため簡易レビューを。

 

あらすじ

白頭山の巨大噴火を阻止しようと奮闘する者たちの物語。

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ポジティブ・サイド

邦画で火山がフィーチャーされた作品というと『 日本沈没 』ぐらいしか思いつかない。しかも火山がテーマではない。他には火山噴火が導入になっている『 ドラゴンヘッド 』か、あるいは火山噴火が味付けになっている『 火口のふたり 』ぐらいか。ハリウッドはこの分野で傑作から駄作まで一通り作ってきたが、火山大国である日本からではなく韓国から火山噴火映画が出てきた。喜ぶべきか、嘆くべきか。

 

白頭山の噴火というのは、それなりに現実的な設定。しかし、それを食い止める、あるいは噴火の規模を抑えるための策が、地下での核爆発、しかもその核を北朝鮮から奪おうというのだから、荒唐無稽もいいところである。まるで1970~1980年代にかけてブライアン・フリーマントルの謀略小説のようである。あるいは 『 鷲は舞い降りた 』のような不可能ミッションのようである。そんなプロットをとにもかくにも成立させてしまうのは、主演のハ・ジョンウとイ・ビョンホンの力によるところが大きい。

 

ハ・ジョンウの頼りなさげな指揮官と、イ・ビョンホンの不穏極まりないオーラを放つ工作員の対比が、物語に奇妙なユーモアとシリアスさを同居させ、それがいつの間にやら極上のバディ・ムービーへと変貌していく。特にイ・ビョンホンはその演技ボキャブラリーの多彩さを本作でも見せつけて、他を圧倒している。デビューの頃から自慰シーンを見せたり、『 王になった男 』では下品な腰使いに排便シーンも見せてくれたが、今作でも野糞と立小便を披露。同年代である竹野内豊や西島秀俊が同じことをやれるだろうか?まず無理だろう。

 

米中露の政治的な駆け引きと思惑あり、ファミリードラマあり、アクションありと、面白一本鎗志向の中にもリアルな要素と鉄板の感動要素を盛り込んでくるのが韓国映画で、本作もその点ではずれなし。核を本当にぶっ放す映画としては『 アメリカン・アサシン 』や『 PMC ザ・バンカー 』よりも面白い。今夏、劇場でカタルシスを求めるなら、本作で決まりだろう。

 

ネガティブ・サイド

序盤のカーアクションのシーンは不要。CGで注力すべきは、地震による建造物の倒壊であるべきだった。

 

マ・ドンソクのインテリ役には少々違和感があった。ハ・ジョンウの嫁を保護するシーンで、多少は腕力を披露してくれても良かったのではないだろうか。

 

ジェット機が飛べなくなるほど上空に火山灰が舞い散っているのに、北朝鮮国内の、しかも北方の白頭山に近いエリアにほとんど灰が降り積もっていなかったのは多大なる違和感。同日にNHKのサイエンスZEROで『 富士山 噴火の歴史を読み解け 』を観たので、なおさら不自然に感じた。

 

総評

韓国映画の勢いはまだまだ止まらない。北朝鮮が国家として存在している以上、ドラマは無限に生み出せる。羨ましいような羨ましくないような状況だが、それすらもエンタメのネタにしてしまうところは邦画も見習うべきなのだろう。火山の国としても、また核を持たない軍事的な小国という立場からも、日本の映画ファンに幅広く鑑賞してもらいたい佳作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

erupt

噴火する、噴出するの意。ex + rupt = 外に + 破れる というのが語源になったラテン語の意味である。rupt = 破れる だと理解すれば、interruptやbankrupt, disrupt, abruptなどの意味を把握するのは容易だろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アクション, イ・ビョンホン, ハ・ジョンウ, パニック, ペ・スジ, マ・ドンソク, 監督:イ・ヘジュン, 監督:キム・ビョンソ, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 白頭山大噴火 』 -韓流ディザスタームービーの佳作-

『 ミスミソウ 』 -いじめられっ子の壮絶なる復讐譚-

Posted on 2021年9月2日 by cool-jupiter

ミスミソウ 75点
2021年8月28日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:山田杏奈 清水尋也 中田青渚
監督:内藤瑛亮

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210902230658j:plain

『 ザ・ハント 』と一緒に借りてきた作品。これまたゲテモノ・グロ・バイオレンス映画。まるで韓国映画かと見紛うほどの復讐物語にして残虐流血描写の数々。邦画もこれぐらいやればできるのである。

 

あらすじ

東京から転校してきた春花(山田杏奈)は、学校で凄絶ないじめを受けていた。春花は唯一の味方であるクラスメイトの相場(清水尋也)を心の支えに耐えていたが、いじめはエスカレートするばかり。そして春花の家族にある事件が起こったことから、春花はいじめっ子たちへの復讐を開始する・・・

 

ポジティブ・サイド

残虐な暴力と流血の描写が素晴らしい。その暴力も発狂した結果の暴力ではなく、どこまでも冷静冷徹に相手を傷つけ痛めつける。Jovianの仕事の一部に「夏でも長袖を着ている子に『暑くないの?』と言わないようにしましょう。傷を隠していることもあるからです」みたいな注意?や研修?もあるが、この主人公は違う。相手にダメージを与えることに躊躇がない。好感度を高めてCMに出たい、といったあざとさを感じない。山田杏奈はまさに異色のヒロインである。これまでのフィルモグラフィーを見ても、普通の女子高生や女子大生役は少ないし、今後もそうした役柄での出演は少なそう。期待ができるし、多くの女優はそうあるべきだと芯から思う。

 

春花の復讐が始まるまでの、学校でのいじめの描写も壮絶である。大人が介入しなければならない場面で、この担任の先生の無能っぷりよ。観る側の絶望はさらに深まり、それゆえに春花の復讐を素直に応援したくなる。『 君が世界のはじまり 』で好演した中田青渚のいじめと、彼女が家で受ける父親からの虐待のコントラストも見事。この学校および生徒に関わる何もかもを一度全てをぶち壊してやるべきではないか、とさえ思わされてしまう。

 

数々の流血描写の中でも内臓ポロリのシーンと除雪車で文字どおりにぐっちゃぐっちゃのミンチにしてしまうシーン。『 デッドプール 』では製氷機で相手をひき殺そうとするシーンがあり、やや消化不良。『 デッドプール2 』ではゴミ収集車の回転板に巻き込こまれて死ぬシーンがあり個人的に満足できたが、この除雪車に巻き込まれて肉片や血がドバドバと飛び散る様は壮観の一言。「邦画もやればできるじゃないか」と言いたい。

 

登場人物が基本的にほとんど全員狂っている本作だからこそ浮き彫りになる世界観がある。表層では、もちろん「いじめは絶対にダメ」ということ。深層では、人間の奥深いところには常に暴力性が潜んでいて、何かのはずみでそれが一挙に立ち現われてくることがあるということ。本作はある意味で最も濃厚なヒューマンドラマを描いたとも言える。

 

清水尋也や大塚れななどの期待の若手も圧巻の演技を見せてくれるし、内藤監督は金太郎飴状態の邦画界でますます異彩を放っている。バイオレンスに耐性がある向きは是非とも鑑賞されたい。

 

ネガティブ・サイド

ほぼ全編通じてニヤニヤしながら鑑賞させてもらったが、「ん?」と眉をひそめざるを得なかったシーンもある。その最大のものはエピローグ。これはまさに蛇足というものだろう。『 トガニ 幼き瞳の告発 』並みに救いのないエンディングの方が個人的には満足できただろうし、その方が物語全体のトーンにも合っていたはず。

 

最後のボウガンはまだしも、春花の周りにちょっとあまりにも都合よく武器になるものが落ちていすぎではなかろうか。もっと咄嗟に身の回りにある物を使う、あるいは普段から身に着けている物、持ち歩いている物を使って、相手を痛めつけて殺すシーンというものを模索してほしかったと思う。

 

総評

間違いなく観る人を選ぶ作品である。刺さる人には刺さるだろうし、途中で観るのを断念する人もいるだろう。韓国映画や北野武映画の持つ血生臭さに抵抗がなければぜひウォッチ・リストに加えられたし。『 キャラクター 』や『 ホムンクルス 』にいまいち満足できなかったという人なら、本作でかなり満たされた気分を味わえるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

bully

「いじめる」という動詞でもあるし、「いじめっ子」という名詞でもある。ボクサーやプロレスラーが時折相手を挑発する際に、”You’re just a bully. Now, try to bully me.”=「お前はただの弱い者いじめだ。俺のことをいじめてみろや」というようなことを言うことがある。どこの国でもいつの時代でも、いじめがダメであることは言うまでもない。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2010年代, B Rank, スリラー, 中田青渚, 山田杏奈, 日本, 清水尋也, 監督:内藤瑛亮, 配給会社:ティ・ジョイLeave a Comment on 『 ミスミソウ 』 -いじめられっ子の壮絶なる復讐譚-

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