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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: D Rank

『 ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ 』 -IT要素は極めて薄め-

Posted on 2025年2月22日 by cool-jupiter

ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ 50点
2025年2月15日~2月19日にかけて読了
著者:瀧羽麻子
発行元:集英社

 

最寄り駅の本屋でたまたま目についたので購入した本。

あらすじ

高校生の誠のもとにはネット関連の依頼が寄せられる。しかし、実際に技術的なトラブルシューティングを担当するのは幼馴染の小夜子だった。ある時、学園のマドンナ的存在から秘密の掲示板での誹謗中傷に関して誠は相談を受けるが・・・

 

ポジティブ・サイド

高校に教えに行った経験は数えるほどしかないが、確かに今の世代はネットにどっぷり、というか現実の世界とネットの世界が地続きであると捉えているように感じられる。だからこそ秘密の掲示板での誹謗中傷やら、試験問題へのハッキングなどの各エピソードがリアルに感じられた。

 

恋愛模様も健全で、サブプロットではあるがメインプロットではない。あくまでも小夜子と誠は幼馴染みで、パートナーで、そして共犯関係なのだ。このあたり、読み手によっては恋愛よりも深い人間関係を見出せるはず。

 

具体的な章立てはされていないが、割と明確に毎回の事件とその解決の描写がされているので無理のないペースで読める。

 

ネガティブ・サイド

ハッキングに対するテクニカルな描写はゼロ。別にゴリゴリのIT的な描写を望んでいるわけではない。人間はパスワードをこんな風に設定しやすいだとか、こんな風に使いまわしているのだとか、そんな程度で良いのだがそれも無し。

 

中盤にアノニマスを想起させるハッカー集団の話があるが、連中はねずみ小僧的な義賊ではなく、離合集散型の愉快犯のグループ。ジュブナイル小説っぽい本書の描写は、一部読者を勘違いさせはしまいかと少し心配になった。

 

最後のエピソードはオチというか裏側があまりにもあからさま。『 エンダーのゲーム 』と言えば、ほとんど分かるだろう。この作品自体、多くの先行作品のパロディと言えばパロディなので、まさに古典的なオチだと言えなくもない。見え見えすぎたけど。

 

総評

米澤穂信の小市民シリーズ的なものかと思ったら、もっとライトだった。これをイージーリーディングと取るか、薄っぺらいと取るかで評価がかなり分かれそう。先行する女子、それについて行く男子という構図が好きなら、ちょっと古いが小川一水の『 第六大陸 』がお勧め。こちらは多少のフィクションを交えつつも、ガッツリ技術的なポイントの描写がなされていて読み応えは抜群である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

admire

作中に Hello Sayoko. We respect your skills. という英語が出てくるが、正直なところ respectには敬服するという意味は薄く、どちらかと言うと「大切に思う」という意味が強い。 Can you respect my privacy, please?というのは、Jovian自身が大学の寮で言ったこともあるし、言われたこともある。敬服するに最も近い英語はadmireで、これは驚異の念をもって見るの意。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 メイクアガール 』
『 幻魔大戦 』
『 マルホランド・ドライブ 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2010年代, D Rank, SF, 日本, 発行元:集英社, 著者:瀧羽麻子, 青春Leave a Comment on 『 ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ 』 -IT要素は極めて薄め-

『 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 』 -ドラマ視聴はなしでもOKかも?-

Posted on 2025年2月19日 by cool-jupiter

キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 50点
2025年2月15日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンソニー・マッキー ダニー・ラミレス ハリソン・フォード 平岳大
監督:ジュリアス・オナー

MCUは卒業したつもりだったが、ハリソン・フォードの最後の作品だということで急遽チケットを購入。

 

あらすじ

新たなキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)は、二代目ファルコンのホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)と共にアダマンチウムを奪取しようとするサーペントを撃退。米大統領のロス(ハリソン・フォード)は国際協調の下、アダマンチウムの精製と分配を呼びかける。しかし、その会議の最中、ロスに対する襲撃が行われ・・・

 

ポジティブ・サイド

ファルコンがシールドとキャプテン・アメリカの称号を引き継いだことは『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』で明示されていたが、その後のTVドラマはまったく追いかけていない。それでも何となくその世界に入っていけるのは、キャラがそれだけ立っているからだろう。

 

『 トップガン マーヴェリック 』のダニー・ラミレスが二代目ファルコンというのも興味深い。原作の漫画がどうなっているのかは知らないが、彼が3代目のキャプテン・アメリカを襲名する可能性もあると考えると、白人→黒人→ヒスパニックという米国のマジョリティの変遷と重なるようで面白い。

 

冒頭のサムの格闘シーンも、かなりスティーブ・ロジャーズ寄りで、闘い方までキャップに似せている。しかし強敵とのバトルを経て、一種の強化人間であるスティーブと生身のままのサムの違いに、サムは葛藤する。タイムスリッパ-のスティーブの苦悩とは違い、非常に人間的で、このあたりにも現代的なスーパーヒーローらしさを感じる。また、その懊悩に対して思わぬ人物からのアドバイスも。おそらくドラマを観ていないと背景が分からないが、Jovianの隣の席の若い男性がそのキャラの登場に度肝を抜かれた様子だった。

 

融和協調路線の大統領がレッド・ハルクと化すのも、民主党のバイデン政権から共和党のトランプ政権への移行を見ているようで面白かった。サディアス・ロスという人物も、気難しいことで知られるハリソン・フォードの素を見ているようで楽しかった。ハルクとファルコンでは勝負にならないはずだが、二代目キャプテン・アメリカとレッドハルクなのでそれなりの勝負になっていてもそこまで違和感はなかった。

 

ネガティブ・サイド

『 エターナルズ 』の続きものということで、生まれそうになっていたセレスティアルが石化してそのまま、という世界。そこでヴィブラニウムを超えるアダマンチウムを発見・・・と、ワカンダの超技術を否定するような導入には眉を顰めざるを得ない。キャップから受け継いだ盾よりも強い武器や防具が出てくる?世界観をぶち壊しではないか。

 

平岳大演じる尾崎首相があまりにもファンタジー。流ちょうに英語を操る政治家はちらほらいるが、アメリカ大統領に毅然と立ち向かえる政治家はいない。ロンヤス以降、小泉とブッシュ、安倍とトランプのような蜜月はあったが、決して対等な関係ではなかったし、強気に物申したこともない。加えて日本の自衛隊がアメリカの誤射(と言っていいのかどうか)に対して即座に反撃を決断。艦に防衛大臣が乗っていたとでもいうのか。日本の描かれ方が、いつもとは違う意味でリアリティに欠けていて、はっきり言ってつまらなかった。

 

アベンジャーズの再結成の機運を盛り上げたいのは分かるが、そこでは政治的な意思決定の下で動くべきなのか、それとも自らの正義を執行するために動くのかがテーマになる。それはそのまま『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』のテーマだった。経営者で現代人であるトニー・スタークとは対照的に、独ソ不可侵条約がドイツによって一方的に破られたり、あるいはポツダム宣言が時の日本の内閣によって無視されたりといったことをリアルタイムに目撃し、それらが更なる悲劇につながったこともリアルタイムで経験したスティーブの対立だった。サムにはそうした体験や正義感がないし、対立軸も存在しない。正直なところ、キャプテン・アメリカとしては力不足に感じられて仕方なかった。また、エターナルズという「サノスなんか俺らにかかれば余裕」という連中の後の世界を引き継いだというのも、そうした印象をより強めている。

 

総評

つまらないことはないが、面白くもない。そういう作品である。サム・ウィルソンに欠けている対立軸は、今後登場がほぼ確定のマルチバースの世界のヒーローたちになるのだろうが、マルチバースはもう十分。やるとすればヴィランとの対立ではなく自分との対立ということになるのだろうが、それは『 デッドプール&ウルヴァリン 』でデッドプールが先にやった。続編は見ない可能性の方が高いかな。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

pull the strings

「~について裏で糸を引く」ということ。日本語の慣用表現とそっくりなのは、どちらかがどちらかを訳して取り入れたからか、それとも共通の由来を持つのか。映画やドラマ、小説で ”It was her. She’s been pulling all the strings from the beginning.”  のような感じで普通に使われる表現だが、検定試験には出なさそう。英検準1級または1級の大問1にひょっとしたら出題されるかも?

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 メイクアガール 』
『 Welcome Back 』
『 大きな玉ねぎの下で 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, アンソニー・マッキー, ダニー・ラミレス, ハリソン・フォード, 平岳大, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 』 -ドラマ視聴はなしでもOKかも?-

『 怪獣ヤロウ! 』 -終わり悪ければ何とやら-

Posted on 2025年2月12日 by cool-jupiter

怪獣ヤロウ! 40点
2025年2月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ぐんぴぃ
監督:八木順一朗

 

好物の怪獣ものと思いきや、何やら一杯食わされたような気分に・・・

あらすじ

岐阜県関市の観光課は市長からご当地映画の製作を命じられる。かつて怪獣映画の監督を志していた山田(ぐんぴぃ)は監督に立候補。関市の魅力をアピールするための映画作りに邁進するが・・・

ポジティブ・サイド

特撮がロストテクノロジーになりつつある、というかなってしまった時代に怪獣映画を作ろうという心意気や善し。(本多猪四郎+円谷英二)÷2というキャラまで出してしまうのには笑った。地場産業の仕事場から映像やら音声やらを頂戴して、それらを映画作りに生かすのはご当地ムービーとしてもお仕事ムービーとしても見応えがあった。

 

また、近年では都道府県あるいは市町村の長のパワハラがニュースになっているが、本作での関市長はそうした自治体の長としての姿を非常にユーモラスに描き出している。また、手塚とおるを久々に見た気がするが、この男はどうしても『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』を思い起こさせる。そういった意味ではナイスなキャスティングだ。『 ハルカの陶 』で偏屈職人を演じた平山浩行が本作では刀鍛冶に。備前長船の物語を作ることがあれば、彼のキャスティングを見てみたい。B級の帝王・田中要次や、個人的に江田島平八のイメージの強い麿赤兒など、B級コメディ的なキャスティングは全体的に成功であったと思う。

 

伊福部ゴジラサウンドのオマージュもなかなか。無理やり感は否めないが、ご当地映画として様々なガジェットを盛り込んだ映画を最終的に作り出した点は賞賛に値する。

 

ネガティブ・サイド

 

実際に出来上がった映画の冒頭のスーパーインポーズで、伝統至上主義を掲げるの「掲げる」が「揚げる」になっていなかったか。同じ「かかげる」でも意味が違う。

 

雨の中、市長が映画製作基地に尋ねてくるが、落ちていたという本部の半紙がまったく濡れていなかったのは何故なのか。

 

誘雷針(避雷針)の働きがおかしい。普通に火薬の分量間違いで良かったのでは?

 

最後の最後、絵的にまったく美しくなかった。『 シン・ウルトラマン 』の長澤まさみですら批判されまくっていたのを、本作の作り手たちはまったく知らなかったのか、それとも意に介さなかったのか。そんなはずはないと思うが。そもそも怪獣のミニチュアで色々と撮影していたのは何だったのか。

 

本作の最大の問題は、劇中作がご当地映画の本質を外してしまっているところ。ご当地映画を契機に観光客を呼び込みたい、外部の人間に関市を知ってほしいというなら、映画の主人公は関市出身者であってはおかしい。Jovianが酷評した『 しあわせのマスカット 』も、佳作だと評した『 ハルカの陶 』も、主人公はご当地(岡山県)の外部からやって来た。それは当地の産物に惹かれたからだ。地方出身の若者が東京に行って帰ってくるのは、

 

1)本当に故郷が良い街だから

2)東京で夢破れたから

 

のどちらか。そして理由は往々にして2)である。商店街がシャッター街になるのは不景気と後継者不足が原因。後継者不足=若者の不在、あるいは若者の事業継承の拒否。それは地元愛、郷土愛の否定とは言わないまでも不足を意味している。そこを打破するような映画ではなかった。

 

もうひとつ、怪獣をある感情の謂いだと某キャラが述べていたが、これにも違和感を覚えた。映画に感情をぶつけ、映画で感情を表現するのは『 息もできない 』などの例があるが、怪獣は違うだろう。いや、子どもが「ぼくのかんがえたさいきょうのかいじゅう」をやるのはいいが、大人はそうあるべきではない。だからこそ本多猪四郎・・・じゃなかった某キャラは業界および世間から干されたのではなかったか。

 

総評

怪獣映画としてもご当地映画としても本筋を外している感は否めない。ただし、コメディとしてはそれなりにまとまっている。妙なロマンス要素などは一切排除されているので、案外『 県庁おもてなし課 』をつまらないと感じた向きは、本作を役所のお仕事ムービーとして楽しめるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Tourism Division

観光課の意。実際の関市のホームページで確認した。観光とだけ辞書で引くと sightseeing と出てくるが、これは読んで字のごとく、光景を見るということ。なので旅行者側のアクションを指す。Tourismは余暇や文化体験などを目的とした旅のこと。「市役所職員として地元の観光を盛り上げたい」というような場合は promote local tourism と言う。promote local sightseeing は文法的に問題はなくても変な英語である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 メイクアガール 』
『 Welcome Back 』
『 大きな玉ねぎの下で 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, D Rank, ぐんぴぃ, コメディ, 日本, 監督:八木順一朗, 配給会社:彩プロLeave a Comment on 『 怪獣ヤロウ! 』 -終わり悪ければ何とやら-

『 ペナルティループ 』 -タイムループものの珍品-

Posted on 2025年2月8日 by cool-jupiter

ペナルティループ 55点
2025年2月3日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:若葉竜也 伊勢谷友介 山下リオ
監督:荒木伸二

 

劇場公開時に見逃してしまったので、近所のTSUTAYAで借りてきて鑑賞。

あらすじ

岩森(若葉竜也)は恋人の唯(山下リオ)を謎の男、溝口(伊勢谷友介)に殺害されてしまう。復讐に燃える岩森は綿密な計画の元、首尾よく溝口を殺害し、死体を遺棄する。しかし、翌朝目が覚めるとなぜか日付が戻っていて溝口も生きている。岩森は謎のタイムループの中、溝口を殺し続けるが・・・

 

ポジティブ・サイド

ネタバレ防止のために白字にするが、

 

『 マトリックス 』

『 エンドレス 繰り返される悪夢 』

『 神回 』

『 レミニセンス 』

『 アーカイヴ 』

『 本心 』

 

のような映画を邦画でやってみました、という感じ。面白いのは『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』のように少しずつ先に進んでいくのではなく、とても奇妙な camaaderie が生まれるところ。これもネタバレ要素なので、敢えて英語で書く。また『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』ではトム・クルーズが殺されまくるが、本作では主人公の側が殺しまくる。これは結構斬新な設定であるように思う。ループの仕組みもタイムリーと言うか、数十年後には実現できそうとは感じる。

 

若葉竜也は『 市子 』や『 嗤う蟲 』と似たような設定ながら、狂気に囚われるそれらの作品とは異なり、ある意味でとてもユーモラスに達観する、諦念する人物を好演。また久しぶりに見る伊勢谷友介も、シリアスさとコミカルさを同居させた演技が光った。

 

ネガティブ・サイド

単純な疑問として、どうやって溝口が下手人だと分かったのか。というか、下手人だと設定できたのかと言うべきか。

 

さらに根本的な疑問として、唯の本心とされている願望が果たして本当なのかどうか。また溝口が主人公と同じようなステータスを与えられているのも疑問。まあ、設定だと言われればそれまでだが。

 

ゲーテの『 ファウスト 』よろしく、今この生を享受せよというメッセージがあるのだろうが、それを言いたいがための最終盤のシーンはかなり強引かつ絵的にも美しいものではなかった。こういう作品は社会性など求めず、『 CUBE 』のようなスパっとした切れ味で終わるべき。具体的には unplug するシーンでエンドロールになだれ込むべきだった。

 

総評

『 人数の町 』同様に、どこかにあるかもしれない世界という設定にはリアリティがあったし、その世界の中身もそれなりにしっかり構築されていた。ただ、その世界の中でキャラを巧みに動かせていたかというと疑問が残る。ただ、タイムループというジャンルに新しい視点を持ち込んだことは確か。伊勢谷友介のファンなら(ショッキングかもしれないが)鑑賞をされたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

keep sb in the loop

人をループの中に保つ、転じて「情報のやり取りの輪の中に誰それを入れる」の意。前の部署では頻繁に使っていたし、聞こえてもいた。まずは職場やクライアントに、”Keep me in the loop, please.” と伝えるところから始めてみようではないか。そういえば、Why am I not in the loop? と定期的に営業スタッフに激怒していた前の部署の中年ブリティッシュは元気にしているだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アット・ザ・ベンチ 』
『 怪獣ヤロウ! 』
『 Welcome Back 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, D Rank, SF, 伊勢谷友介, 山下リオ, 日本, 監督:荒木伸二, 若葉竜也, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 ペナルティループ 』 -タイムループものの珍品-

『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

Posted on 2024年12月30日 by cool-jupiter

ライオン・キング:ムファサ 50点
2024年12月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アーロン・ピエール ケルビン・ハリソン・Jr
監督:バリー・ジェンキンス

 

『 ライオンキング(2019) 』前日譚ということでチケット購入。

あらすじ

シンバは息子キアラの世話を旧知のラフィキ、ティロン、プンバァに託す。ラフィキはそこで、偉大な王ムファサの物語をキアラに語り掛けて・・・

ポジティブ・サイド

CGの美しさは言わずもがな。風景に至っては、最早一部は実写と見分けがつかない。水のシーンは『 ゴジラ-1.0 』の海のクオリティにも決して劣らない。

 

前日譚ではあるが、前作のキャラも大量に登場。やはりプンバァとティロンが出るだけで『 ライオンキング 』の世界という感じがする。ザズーとムファサの出会いが描かれていたのも個人的にはポイントが高い。

 

ライオンの習性というか、オスの旅立ちとはぐれライオンによるプライドの乗っ取り、まったく赤の他人のオス同士が広大なサバンナでたまたま出会い、パートナーになっていくなど、近年の調査で明らかになりつつあるライオンの実像を盛り込んだストーリー構成も悪くない。

 

随所に「おお、これがあれにつながるのか」というシーンが盛り込まれていて、前作ファンへのサービスも忘れていない。

 

命の輪のつながりを実感させるエンディングは予想通りではあるものの、非常にきれいにまとまった大団円だった。

ネガティブ・サイド

楽曲がどれも弱かった。”He lives in you.” や “Can you feel the love tonight?” は再利用不可能だとしても、せめて “Circle of Life” は聞きたかった。命の輪について劇中で何度も触れるのだから、なおさらそう感じた。

 

若き日のスカーであるタカが色々な意味で可哀そう。Like father, like son.という言葉があるが、父親のオバシのある意味で過保護と歪な愛情がタカを作ったわけで、タカそのものは悪戯好きな、よくいる子どもに過ぎない。また母のエシェもムファサに向ける愛情のいくらかを実子のタカに向けられなかったのか。子どもにとって親から信頼されることと親から愛されることは似て非なるもので、前者よりも後者の方が必要なはず。

 

ムファサもタカに命を救ってもらい、プライドにも(中途半端ながら)加入させてもらったことに一度もありがとうと言っていないところも気になった。タカの傷にしても、なにか辻褄合わせのように見えた。Let’s get in trouble もっと幼少期のムファサとの遊びの中で、ムファサの不注意で、あるいはムファサをかばったことで負った傷という設定にはできなかったか。

 

総評

鑑賞後のJovian妻の第一声は「タカが可哀そう」だった。Jovianもこれに同意する。詳しくは鑑賞してもらうしかないが、このストーリーは賛否の両方を呼ぶと思われる。ただし誰にとっても楽しい場面はあるし、楽曲のレベルも低いわけではない。家族で見に行くにはちょうどいい塩梅の物語とも言える。チケット代を損したという気分にはならないはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

steal one’s thunder

直訳すれば雷を盗むだが、実際は「お株を奪う」、「出し抜く」の意。

You’re closing deals with companies A, B, and even C? You’re stealing my thunder!
A社、B社、さらにC社とも契約を結べそうだって?俺の出番を奪わないでくれよ!

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』
『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーロン・ピエール, アメリカ, ケルビン・ハリソン・Jr., ミュージカル, 監督:バリー・ジェンキンス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

『 はたらく細胞 』 -安易なお涙ちょうだい物語-

Posted on 2024年12月24日 by cool-jupiter

はたらく細胞 45点
2024年12月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:阿部サダヲ 芦田愛菜 永野芽郁 佐藤健
監督:武内英樹

 

かつて医療従事者を志した者として興味本位でチケット購入。

あらすじ

漆崎日胡(芦田愛菜)は、父の茂(阿部サダヲ)と2人暮らし。日胡の献身的な料理などにも関わらず、茂は不摂生を繰り返す。そんな茂の体内の細胞たちは労働環境の悪さに不平不満を募らせており・・・

ポジティブ・サイド

『 テルマエ・ロマエ 』や『 翔んで埼玉 』で見られた武内監督のコメディとパロディの卓越した感覚は本作でもいかんなく発揮されている。USJやディズニーランド的なキラキラな日胡の体内世界と、大阪の新世界をとことん薄暗くしたような茂の体内世界のコントラストが映える。コレステロールで閉塞した血管が昔の大阪の新世界あたりの薄暗い、チープな飲み屋街に重なって見えたところは笑えた。

 

白血球が繰り広げる各種のバトルや、キラーT細胞やNK細胞との働きの違いの描写もエンタメ作品としては十分に合格。赤血球が道に迷ったり、クッパー細胞に食われるところも笑える。

 

ある意味、一番の見どころは肛門の括約筋と便のせめぎ合い。トレーラーでもガッツリ映っていたのでネタバレでもなんでもないだろう。このシークエンスを下品と思うことなかれ。便意との戦いを経験したことのない人間などいないのだから。ここは大いに笑わせてもらった。

 

終盤のとある治療のシーンの映像表現には唸った。たしかに見方によっては cosmic ray に見えないこともない。着想としては素晴らしいと思う。

 

佐藤健が終始るろうに剣心のセルフ・パロディをしているのも楽しめた。

ネガティブ・サイド

色々と誤解を生みかねない、危うい表現があった。茂が便潜血陽性に対して「ただの痔だ」と返すが、その血が痔のみに由来するのか、それとも消化管からの出血を含むのか、それは詳しく検査しないと分からない。医学部志望の日胡ならそれぐらいの反論はできそうだがそれもなし。中年サラリーマンが便潜血陽性=痔だと勘違いしなければいいのだが。

 

新米赤血球と先輩赤血球のやりとりはユーモラスだったが、痔からの出血(?)と共に大便と運命を共にした赤血球の台詞には???だった。便の色はビリルビンの色で、ビリルビンの材料は分解された赤血球だ。「脾臓送りにされちまう」みたいな台詞も聞こえたが、赤血球は何をどうやっても最後はほとんど便と一緒に流される運命なのだ。

 

白血球が赤血球から酸素を受け取るシーンも、それが実際に体内で起きている反応だと受け取る人間もいるかもしれない。事実を大袈裟にカリカチュアライズするのは構わないが、事実ではないことをカリカチュアライズするのには細心の注意が必要だ。後述するが、本作の製作者はそのあたりを特に意識せず、取材や考証を綿密には行っていない。

 

好中球やキラーT細胞にヘルパーT細胞、NK細胞まで出てくるのに、ある意味で免疫の主役とも言えるB細胞が一切出てこなかったのは何故?B細胞の産生する「抗体」こそ、ワクチン接種を経験した多くの人々に最もなじみ深い生体防御能力ではないか。それとも、抗体=一種のミサイルという比喩を、別の物に使ってしまったために、B細胞の出番をすべてカットしたとでも言うのか。

 

ある治療後に患者が帽子をかぶっている。それはいい。ただ、特徴的な眉毛が全部残っているのには頭を抱えた。剃れとは言わん。メイクで何とかできるし、そうすべき。問題は、監督その他のスタッフがこの病気の患者に取材も何もしていないと感じられるところ。

 

最後にあまり言いたくはないが、邦画のダメなところが出てしまった。病気で死にそうになるとか、そういう安易なプロットはいらない。最初は「お、特発性血小板減少性紫斑病か?」と思ったが、まさか leukimia とは・・・ いや、別にそれならそれでいい、リアリティさえしっかりしていれば。そのリアリティがお粗末だったのは大きな減点材料。

 

総評

コロナ以降、免疫に関する一般の知識は確実に向上している。法改正以降、どこか緩んでいた人々の意識も、最近のインフルやコロナの流行で少し引き締まっているのではないか。そんな時期に封切りとなったのは配給側の周到な読みが当たったと言えるのかもしれない。観終わって自分の体内の細胞たちに思いを馳せるきっかけにするには良い映画。ただし、本作で描かれている内容が科学的・生物学的に概ね正しいとは決して受け取ってはならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

neutrophil

ニュートロフィル、つまり好中球を指す。cinephile(発音はシネファイル)が映画好きを指すように中性を好むという意味である。白血球には他にも好酸球や好塩基球があるが、一般に感染症に対して働くのは好中球だと思っておいてよい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 レッド・ワン 』
『 ライオン・キング:ムファサ 』
『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, コメディ, 佐藤健, 日本, 永野芽郁, 監督:武内英樹, 芦田愛菜, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 阿部サダヲLeave a Comment on 『 はたらく細胞 』 -安易なお涙ちょうだい物語-

『 六人の嘘つきな大学生 』 -ミステリ部分があまりにも弱い-

Posted on 2024年11月25日2024年12月30日 by cool-jupiter

六人の嘘つきな大学生 30点
2024年11月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浜辺美波
監督:佐藤祐市

 

浜辺美波が主演ということでチケット購入。

あらすじ

人気企業スピラリンクスの新卒採用で最終選考に残った嶌衣織(浜辺美波)ら6人の大学生は最終課題であるグループディスカッションに向けて団結して協力していた。しかし課題は急遽変更となり、採用枠は1名に限定された。さらに、最終課題の当日、部屋では謎の封筒が見つかり・・・

ポジティブ・サイド

密室で次々に明かされる就活生のダークサイド。そして、崩れていく友情。その展開はサスペンスフルだった。

 

就活が一種の戦争であることはバブル崩壊以降、もはや常識。本作は『 何者 』同様に人間の裏側を描きながら、佐藤祐市監督の過去作『 キサラギ 』的な密室でのディスカッションの面白さもあった。

ネガティブ・サイド

まずスピラリンクスという会社が意味不明。新人でも年俸一千万円が可能って、どんな企業やねん。コンテンツクリエーション系の企業なら10,000千円/年は十分可能だが、一年目からは不可能やで。

 

10,000人から6人採用とすると、倍率1667倍となる。んなアホな。1,000人から6人なら166倍で、これなら超人気企業としてリアルな数字となる。

 

関東の錚々たる大学が実名で出てくるが、学生の描き方がステレオタイプすぎると感じた。これが『 あのこは貴族 』や『 愚行録 』のように、特定の大学だけにフォーカスするならまだしも、これだけたくさんの大学を色眼鏡を通じて描き出していいのか。特に早稲田と慶應はあまりに典型的過ぎて笑ってしまった(良い意味ではない)。

 

スピラリンクスも、採用の最終段階がトンデモな方向に行っているのに何の介入も行わないとはどういう料簡なのだ?警察や金融機関への就職ちゃうねんぞ・・・

 

一番の不満点としてミステリ部分の弱さが挙げられる。原作小説は未読だが、映画と同じトリック(?)なのか。JR中央線の武蔵境または東小金井を大学生時代に最寄り駅としていたJovianは劇中のとある矛盾に一発で気付いた。立教や明治の学生が気付かないわけがないだろう。

 

また複数の大学で実際に教えていた者として言わせてもらえば、学校から学校への移動というのは、校門から校門への移動を指すのではない。教室から教室への移動を指すのだ。劇中での学生たちが言う移動時間は、実質的には20分ぐらい足りない。

 

それにしてもこの犯人、行動力がありすぎて笑ってしまう。そこまで調べるとなると、全員とは言わないまでも一人、二人ぐらいの耳にはその活動が届くに違いない。特にとある重要書類には苦笑いするしかなかった。これを見せてもらえるぐらいに信頼を得るには、あまりにも時間が足りないはず。催眠術でも使ったのか。

 

終盤、パスワードロックされた媒体が出てくるが、これに対するヒントがアンフェアではなかったか。「犯人が好きなもの」ではなく「犯人が愛したもの」はmisleadingすぎる。そこで自分の好物を入力する衣織にも喝!それがお前の愛なんか・・・

総評

コロナ後(と言っていいかどうかは分からんが)の就活模様ということで、洋画『 エグザム 』が元ネタなのかも?原作小説の評価は高いので、映画化に際して色々と削ってしまったのだろう。浜辺美波ファン以外にお勧めするのは難しい。大学生がこれを観てリアルな就職活動だと思わないことを切に願う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

job-hunt

就職活動する、の意。I will start job-hunting as soon as I come back from France to Japan. =「フランスから日本に帰国次第、就活を始めるつもりだ」のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 正体 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 浜辺美波, 監督:佐藤祐市, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 六人の嘘つきな大学生 』 -ミステリ部分があまりにも弱い-

『 本心 』 -サブプロットを減らすべし-

Posted on 2024年11月16日 by cool-jupiter

本心 50点
2024年11月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:池松壮亮 田中裕子 三吉彩花 妻夫木聡
監督:石井裕也

 

AIとVRの組み合わせという、まさに今の仕事に近い領域のストーリーだと思い、チケット購入。

あらすじ

石川朔也(池松壮亮)は入水自殺しようとする母・秋子(田中裕子)を追って川に入ったことから昏睡状態に。一年後に目を覚ますも、母は自由死を選択していたことを知る。世界は様変わりしており、朔也はリアル・アバターとして働き始める。ある時、母のVirtual Figureを作れると知った朔也だが・・・



ポジティブ・サイド

人工知能やVR技術が徐々に一般に浸透してきている。企業がRAGを使って、顧客対応botを作ったり、あるいは自社マニュアル参照インターフェースをAIボットにすることも珍しくなくなった。すでに中国やアメリカでは、本作で描かれているようなサービスもあるという記事も目にした。原作小説は2021年に初版、ということは平野啓一郎は2018~2019年代にはかなり具体的な本作の構想を練っていたものと思われる。2018年はGPT元年と歴史家に認定されるだろうと予測されているが、平野の作家として炯眼を持っていると言わざるを得ない。

 

特にVF制作会社CEOの妻夫木の演技が際立って上手い。目線、ちょっとした表情、佇まいに底知れなさを感じさせ、まったく「本心」が見えない。『 ある男 』では抑制されていた内面が、本作では非常にうまく押し殺されているがゆえに、かえってそれに気づく。しかし、その中身までは見透かせないという絶妙なバランスの演技だったように感じた。

 

『 PLAN75 』と似たような世界観が構築されている点でも原作者の眼力が目立つ。先の衆議院選挙で国民民主党が大躍進したが、その当主の玉木雄一郎は増大する一方の医療費削減のために尊厳死を提唱していた。スキャンダルでどうなるのか分からないが、一定数の国民が自由死を望む未来はあってもおかしくない。

 

リアル・アバターという職業も、技術の過渡期には存在してもおかしくない。実際にUber Eats的なサービス供給網と、YouTubeやFacebookなどのリアル配信技術とVRさえあれば可能そう(セキュリティはひとまず考えないものとする)だし、Jovianもコロナ中に妻とZoomでタージ・マハルのツアーに参加したことがある。同時通訳の技術も上がってきた今、国内よりも海外に需要がありそうなサービスで、十分にリアリティを感じた。

ネガティブ・サイド

ストーリー周辺はリアルだったが、肝心のストーリーがリアルではなかった。というよりもリアルである必要はなかったのに、リアルにしようと詰め込んで失敗したという感じか。サブ・プロットが多すぎると感じた。

 

幼馴染みかつ工場でもリアルアバターでも同じ同僚の男はいらない。社会の格差が広がっていくにつれ、人間と人間の関係もギスギスしたものになることを訴えたいのだろうが、本物の人間以上に人間らしいVFを作る、そしてそのVFと交流することが話の本筋であるべきで、社会の変化、人間の変化はもっとさりげなく描写するだけでよかった。

 

イッフィーさんというキャラクターも不要というか蛇足だった。おそらくアバターを使って告白するという行為の不自然さを訴えたいのだろうが、それがいかに野暮であるかを朔也に直に語らせてどうするのか。そういうことは、それこそ観ている者の想像に訴えるべきだ。『 ゴジラ-1.0 』でも佐々木蔵之介が「これからの日本はお前らに任せたぜ」と言葉にしてしまっていたが、そういうことは表情で訴えるだけでいい。なんでもかんでも言葉で説明するのは文芸の手法。いくら原作が小説だからといって、映画にまで文芸の技法を持ち込む必要はない。

 

序盤の綾野剛役のVFや、それと交流する生身の人間をもう少し映し出してほしかった。特にVFが持つ死の意識は非常に示唆的で「受動意識仮説」を思わせるものだった。母が死を選んだ理由が知りたいのなら、VFが持つ死の観念を開陳してほしいと願うのは求めすぎではないだろう。

 

個人的に最も見たかったのは、VF同士が相手をVFだと認識しないままにコミュニケーションするシーンと、それを生身の人間が目撃した際に感じるだろうグロテスクさ、あるいはそれがVFだと気付けないことに対するグロテスクさを体験してみたかったが・・・

 

総評

結論、親の心子知らず。触れ合えない対象に答えを求めるのではなく、触れ合える相手を求めようという、ありきたりな教訓ドラマだった。ヒューマンドラマは畢竟、人間とは何か、人間とはどうあるべきかを追究する試みで、テーマ自体はどれも陳腐。すべては見せ方なのだ。本作はその意味で見せ方がとにかく稚拙だ。石井監督の「語りたい」欲求が強く出過ぎた作品と言える。まあ、それも結局は波長が合うかどうかだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

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今でこそアバターは普通の言葉になったが、映画『 アバター 』の頃は意味を知っている人はほとんどいなかったと記憶している。本来は「化身」という意味でヒンドゥー教や仏教の概念。劇中でVirtual Figure(架空人形)とされたものがAction Figure(可動人形)との対比になっていると思えば、リアル・アバターという用語にもリアリティが感じられる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 オアシス 』
『 シングル・イン・ソウル 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 三吉彩花, 妻夫木聡, 日本, 池松壮亮, 田中裕子, 監督:石井裕也, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 本心 』 -サブプロットを減らすべし-

『 つぎとまります 』 -新人バス運転手の成長物語-

Posted on 2024年11月10日 by cool-jupiter

つぎとまります 50点
2024年11月9日 シアターセブンにて鑑賞
出演:秋田汐梨
監督:片岡れいこ

 

『 惡の華 』、『 リゾートバイト 』で準主役だった秋田汐梨が、京都を舞台にした映画の主役を張るということでチケット購入。

あらすじ

保津川美南(秋田汐梨)は、日本一のバス運転士になるという夢を実現させるため、かつての地元、京都・亀岡のバス会社に就職する。教習と失敗を通じて徐々に成長していく美南は、ある時、自分が運転士を目指すきっかけになった運転士と再会するが・・・

 

ポジティブ・サイド

パイロットが呼気検査に引っかかってフライトが延期というニュースは数年に一回あるように思う。一方でバス運転手の呼気検査というのは新鮮だった。えらい大事になるようで、公共交通機関で働くということのプロフェッショナリズムが垣間見られた。

 

路線沿線の過疎化、それに伴う赤字化などの問題も、軽くではあるが触れられていたところも良かった。亀岡という京都市のすぐ隣でもそうした事態が進行中であるということは、地方の中核都市のすぐ近隣も同様ということ。バス運転士の給料カット、バス路線廃止、さらに万博用のバス運行のためだけに交野市のバス路線を廃止した維新の会を勝たせた大阪府民は、本作を観て何かを感じ取ってほしい。

 

それは半分冗談として、ビルドゥングスロマンとしては標準的な出来に仕上がっている。教習担当、同僚、上司、友人、常連客と登場人物も多士済々。大型車両をセンチメートル単位で操るシーンもあり、匠の技を見せてくれる。大昔、東京の三鷹市や小金井市に住んでいた頃は小田急バスに時々乗っていたが、今にして思えば、よくあんな図体の車両をあんな細い道路だらけの住宅地で右折左折を軽々行っていたバスドライバーたちはプロだったのだなあと思い起こされた。『 パターソン 』をもう一度観てみようかな。

 

『 しあわせのマスカット 』でも重要なモチーフになった西日本豪雨は本作でも取り上げられた。鉄道網が充実しているところに住んでいると気が付かないが、ちょっと田舎に行けば電車は基本的に一路線だけ。そこが寸断されてしまえば高校生やサラリーマンはお手上げ。バスの運転士もエッセンシャル・ワーカーなのだと気付きを与えてくれるストーリーには、日本中のバス運転士が喝采を送るのではないか。

 

オカルト的な展開も、割とまっとうに着地する。変に恋愛要素を入れずにビルドゥングスロマンに徹したのも好判断。

 

ネガティブ・サイド

バス運転手のプロフェッショナリズムは感じられたが、具体的な技術論がほとんどなかった。唯一あったのが、ある信号から次の信号までゆっくり走ればちょうど青のタイミングになるというものぐらい。これとて、道路事情や信号の時間調整次第ですぐに覆ってしまう。たとえばミラーの角度の調整だとか、西日があたる時間帯の姿勢の取り方だとか、そういったものが欲しかった。「周りをよく見てしっかり判断」とか、実際には何も言っていないに等しい。

 

新人というか、若い世代、あるいは女性という面で美南が役に立つという場面も必要だった。たとえば現金ではなくキャッシュレスで運賃を支払おうとして手間取る高齢者にてきぱきと対応するとか、あるいはバス利用する高校生たちのちょっとした変化に気づいてあげられるとか、そうした適性や成長過程を見せていれば、上司に直訴するシーンにもう少し説得力や迫真性が生まれていたかもしれない。

 

越境バスを描くのもいいが、もっと域内交通の足としての側面を強調してほしかった。バスは基本的には近距離移動の足なのだから。たとえば京都パープルサンガの試合前、試合後の観客の移動は大部分はJRおよびマイカーが担うだろうが、地域の小中学校生やサッカー少年少女を招待する場合にはバスが使われることが多いだろう。そうした地域密着型バスとしての側面をもっと強調すれば、亀岡のご当地ムービーとしての完成度を高められたと思う。

 

総評

明智光秀ファンのJovianにとって亀岡と福知山は、ある意味で非常になじみのある場所。そこを舞台に、バス運転手という誰もがなじみのある職業でありながら、その実態があまり知られていない存在に光を当てようという企画は買い。惜しむらくはストーリーにリアリティがない、演技が大袈裟、地元アピール不足だったことか。京都、大阪の人間なら応援の意味も込めて鑑賞するのもありだろう。本当は40点だが、秋田汐梨が可愛かった&亀岡が舞台ということで10点おまけしておく。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Does this bus go to … ?

劇中で一瞬英語も使われていた。「このバスは・・・に行きますか?」の意味だが、こういう場合は未来形ではなく現在形を使う。英語の現在形は、現在の状態だけではなく、性質や習慣性を表す時にも使われる。Will this bus go to … ? だと「このバスは・・・に行く予定(予定は未定であって決定ではない)ですか?」のようなニュアンスとなり不自然。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 オアシス 』
『 本心 』

 

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:片岡れいこ, 秋田汐梨, 配給会社:パンドラLeave a Comment on 『 つぎとまります 』 -新人バス運転手の成長物語-

『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

Posted on 2024年11月9日 by cool-jupiter

破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン

 

チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。

あらすじ

巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。

 

「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。

 

改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。

 

日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。

 

ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。

 

日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。

 

まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。

 

総評

土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

トッケビ

超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』
『 オアシス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イ・ドヒョン, キム・ゴウン, チェ・ミンシク, ホラー, ユ・ヘジン, 監督:チャン・ジェヒョン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

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