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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

Posted on 2023年7月2日 by cool-jupiter

告白、あるいは完璧な弁護 75点
2023年6月25日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ソ・ジソブ ナナ キム・ユンジン
監督:ユン・ジョンソク

簡易レビュー。

 

あらすじ

IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)の不倫相手キム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺害された。第一容疑者となったミンホは犯行を否認。弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自身の無実を証明しようとする。シネは弁護のために事実を知る必要があると主張し、ミンホに情報提供を迫る。その過程で、ミンホは殺人事件前日の交通事故について語り始め・・・

ポジティブ・サイド

これは快作。いや、怪作か。ほとんどすべてが室内の会話劇で、これほどミステリとサスペンスの両方を盛り上げるとは。無実を訴える殺人事件の容疑者と、その無罪判決を勝ち取るためには事実を知る必要があると主張する弁護士の会話劇がたまらなくリアルだ。Jovianの過去の受講生には弁護士の先生が数名おられたが、一様におっしゃっていたのは「黒の人を灰色にすることはできる。だが、自分は灰色だと主張する人を白にはできない」ということだった。シネがミンホに迫るのは、このようなプロフェッショナリズムから来るもので、だからこそあの手この手でミンホの口を割らせようとする。

 

そのミンホの語る事件および前日の交通事故についても、何が事実なのかが分からない。供述は二転三転し、それによって殺害されたセヒが哀れな被害者にも見えてくるし、その逆に稀代の悪女のようにも見えてくる。演じたナナは韓流アイドルらしいが、あちらのアイドルの演技力というのは高いのだなあと感心。めちゃくちゃ美人なのだが、その顔つきがミンホの回想シーンとシネの推理シーンで、別人かと見まがうほどに変わる。素晴らしい演技力である。

 

最後のドンデン返しの連発には鳥肌が立った。いや、最初のドンデン返しには割と早い段階で予想がついていたが、その後の展開には茫然自失。自分はいったい何を観ていたのか。脚本も務めたユン・ジュンソク監督自らがオリジナルのスペイン映画を大幅に改稿したそうだが、『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』のように、邦画界もリメイクに乗り出そうではないか。

 

ネガティブ・サイド

『 最後まで行く 』でも感じたが、韓国のクルマにはエアバッグがないのか?

一部の推測が荒唐無稽すぎで、まるで『 謎解きはディナーのあとで 』のようだった。理論的に可能なことと現実的に可能なことの間には、実際はとんでもない開きが存在する。ここのところにもっと説得力ある仮説が提示できていれば、さらに一段上の評価になったはず。

 

総評

韓国映画お得意の恨に基づくリベンジ・ストーリーで、大傑作『 オールド・ボーイ 』的な用意周到さ。観ている最中は「ははーん、これはアレだな」と割とすぐにピンとくるのだが、それすらも製作者の罠。久々に清々しく騙されたというか、作り手の意図にまんまと引っかかってしまった。悔しいが、爽快な悔しさである。ぜひ多くの人に鑑賞してもらい、見逃してしまった数々の伏線の鮮やかさに地団太を踏んでほしい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チンシル

真実の意。ちなみに事実はサシル。Jovianは大学の恩師の影響か、事実はひとつ、真実は複数あると思っている。なので本作による真実の描き方には感じいるものがあった。チンシルやサシルは韓国映画では割と頻繁に聞こえる語彙なので、耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ユンジン, サスペンス, スリラー, ソ・ジソブ, ナナ, ミステリ, 監督:ユン・ジュンソク, 配給会社:シンカ, 韓国Leave a Comment on 『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

『 M:i:III 』 -スパイの私生活-

Posted on 2023年6月29日 by cool-jupiter

M:i:III 70点
2023年6月21日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ フィリップ・シーモア・ホフマン
監督:J・J・エイブラムス

簡易レビュー。

 

あらすじ

エージェントだったイーサン・ハント(トム・クルーズ)は教官として新人育成に日々勤しんでいた。恋人ジュリアとの結婚も間近で、穏やかな日々を過ごしていた。ある日、教え子リンジーが敵に捕らえられたとの報に触れたイーサンは、自ら救出に乗り出す。そこには武器商人デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)のある思惑も絡んでいて・・・

 

ポジティブ・サイド

今回の悪役も魅力的。『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』の悪役少年が、アダルトな悪人になって帰ってきた。前作『 M:I-2 』で強調された、ヒーローを際立たせる存在としての悪が、本作でさらに極まった感がある。

 

現役バリバリから教官へ、そしてまたミッションに復帰と、まるで『 トップガン マーヴェリック 』のようなストーリー。というか、TGMがこっちを参照したのかな?

 

今回も裏切りに次ぐ裏切りで、ブライアン・フリーマントル的な世界を存分に堪能できる。また鼻からマイクロ爆弾を射ち込むというのもスパイもしくは武器商人的でよい。派手なドンパチではなく、隠密行動や目立たない武器こそスパイの華だ。

 

トム・クルーズはたいていの作品で走っているが、走る男のイメージを決定づけたのは本作なのではないかと思う。

 

ネガティブ・サイド

ラビット・フットとは結局何なのか。再鑑賞しても断片的なヒントからでは推測すらできない。『 世にも奇妙な物語 』のズンドコベロンチョかいな。

 

本作あたりからシリーズの方向性がスパイ大作戦というよりもアクション活劇になってきた。もっとゲームの『 メタルギアソリッド 』的な展開が見たいのだが。

 

総評

サイモン・ペッグが本格的に加わって、ミッション・インポッシブル的になってきた。アクションもサスペンスも盛り上がるが、謎解き的な要素が弱い。恋多きイーサン・ハントが、ここでいったん落ち着くのかなと思わせる終わらせ方は個人的には嫌いではない。悪役が強かな作品というのは、やっぱり面白い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

stand for ~

~を意味する、の意。The USA stands for the United States of America. のように使う。What does IMF stand for? への答えは、本作を鑑賞して確かめられたい。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・フラッシュ 』
『 告白、あるいは完璧な弁護 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, フィリップ・シーモア・ホフマン, 監督:J・J・エイブラムス, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 M:i:III 』 -スパイの私生活-

『 M:I-2 』 -バイオテロを防げ-

Posted on 2023年6月19日 by cool-jupiter

M:I-2 70点
2023年6月12日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ダンディ・ニュートン ダグレイ・スコット
監督:ジョン・ウー

最新作公開前に復習のため再鑑賞。簡易レビュー。

 

あらすじ

IMFのエージェントであるイーサン・ハント(トム・クルーズ)の次なる任務は、元IMF諜報員であるアンブローズ(ダグレイ・スコット)の持つ殺人ウィルスと解毒剤を奪取すること。魅力的な女泥棒ナイア(ダンディ・ニュートン)と共にミッションに挑むハントだが・・・

 

ポジティブ・サイド

殺人ウィルスによるバイオテロは映画や小説ではお馴染み過ぎるネタだが、コロナ禍を経験した今の目で見ることで、逆に新鮮味が増している。

 

真の英雄を求めんとするなら、その対極に位置に来る悪役が必要という考え方には説得力がある。最も強力な例は『 ダークナイト 』におけるジョーカーだろう。彼の言う You complete me. という台詞は、実はバットマンからジョーカーに向けて言っても成立してしまうセリフだ。

 

スパイvs元スパイというのは、漫画『 ゴルゴ13 』でお馴染みの構図だし、最近でも『 グレイマン 』の序盤がそうだった。本作はスパイ同士のスペシャリスト対決で、巧みに施設に侵入するハントと、ド派手なアクションで敵を倒していくハントの二つの面が味わえる。人間同士の飽くなき闘争の根源を追求するジョン・ウー監督とアクション俳優トム・クルーズの面目躍如たる快作。

 

ネガティブ・サイド

ナイアの立ち位置がころころ変わる(ように見える)のはややこしい。

 

ヴィランたるアンブローズがかなり間抜け。元IMFのエージェントなら、そこはもっと早く気付けよと言いたくなるシーンが終盤にある。

 

総評

The pharmaceutical industry does not create cures, they create customers. = 製薬業界は治療法を作り出すのではない。奴らは顧客を生み出しているのだ、という言説は定期的に取り上げられてきたし、実際にコロナ禍、特にワクチン開発の前後にこの言葉が再び注目を集めた。まさにそうした製薬業界の闇に娯楽要素をけれんみたっぷりに加えて出来上がったのが本作である。20年以上前の作品だが、再鑑賞するなら今だろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a walk in the park

公園内をひと歩き、転じて「極めて簡単なこと」の意。アンソニー・ホプキンスが劇中で言う “Well, this is not mission difficult, Mr. Hunt. It’s mission impossible. Difficult should be a walk in the park for you.” = これは困難なミッションではないのだよ、ハント君。これは不可能なミッションなのだ。困難は君にとっては簡単だろう、という台詞がイーサン・ハントのプライドをくすぐる。ちなみにこの a walk in the park は『 トップガン 』の冒頭でマーベリックがクーガーに対して言うセリフでもある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 水は海に向かって流れる 』
『 M3GAN/ミーガン 』
『 ザ・フラッシュ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, アクション, アメリカ, ダグレイ・スコット, ダンディ・ニュートン, トム・クルーズ, 監督:ジョン・ウー, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 M:I-2 』 -バイオテロを防げ-

『 渇水 』 -この流れは変わるのか-

Posted on 2023年6月17日 by cool-jupiter

渇水 75点
2023年6月11日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:生田斗真 磯村勇人 門脇麦 山崎七海 柚穂
監督:高橋正弥

 

簡易レビュー。

 

あらすじ

水道局員の岩切(生田斗真)は、水道料金未納者の自宅を訪れ、日々黙々と停水を執行していた。ある日、とある母子家庭で見かけた恵子(山崎七海)と久美子(柚穂)の姉妹に、別居して暮らしている我が子の姿を見出した岩切は、生き方の流れを変えたいと徐々に思い始め・・・

 

ポジティブ・サイド

生田斗真といえば『 土竜の唄 』シリーズのイメージが強いが、本作のような陰のある男の役も板についてきた。少し年の離れた相棒かつ友人の木田を演じる磯村勇人も等身大の公務員を好演した。

 

日照り続きで給水制限あり、断水も視野に入る中、一軒一軒を停水させていく。規則だからと言えばそれまでだが、手洗い所、風呂場、台所、トイレのすべてが使えなくなるわけで、健康で文化的な最低限度の生活を破壊する行為だろう。もちろんカネさえ払えばOKなのだが、借金の取り立ての方がまだ精神衛生を保てるのではないか。

 

そんな心を無にした公務員が、過酷な家庭環境・社会環境で生きることを余儀なくされる幼い姉妹に心動かされ、行動までも変えていく姿を感動的にではなく悲壮感たっぷりに描くところが独特にして秀逸。

 

門脇麦が出ている作品はだいたい面白いという個人的仮説がまた補強された一作。

 

ネガティブ・サイド

岩切の決定的な変わり目を描く滝のシーンで、ギターのBGMは必要だったか?うるさいだけに感じたが。

 

最後の最後がファンタジー展開。誰もが天気予報にかじりついているであろう状況で、あの展開は白けてしまった。

 

総評

着地に失敗した感は否めないが、そこまでの展開はほぼパーフェクト。姉妹二人で生きようとする姿は『 火垂るの墓 』の清太と節子を思い起こさずにはいられなかった。それを乾いた眼差しで見つめる男が、いつしか人間らしさを取り戻していく様は非常に見応えがある。生田斗真ファンならずともチケット購入を推奨したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

tap water

「水道水」の意。TOEICでもたまに出るかな?昔のTOEFL ITPだと、Listening の Part B で結構よく出ていた気がする。The tap is dripping / The faucet is leaking. = 蛇口から水道水がぽたぽた漏れている、という表現は知っておいていいだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 水は海に向かって流れる 』
『 M3GAN/ミーガン 』
『 ザ・フラッシュ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 山崎七海, 日本, 柚穂, 生田斗真, 監督:高橋正弥, 磯村勇人, 配給会社:KADOKAWA, 門脇麦Leave a Comment on 『 渇水 』 -この流れは変わるのか-

『 怪物 』 -視点によっては誰もが怪物-

Posted on 2023年6月7日 by cool-jupiter

怪物 75点
2023年6月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太
監督:是枝裕和

 

簡易レビュー。

 

あらすじ

シングルマザーの早織(安藤サクラ)は一人息子の湊(黒川想矢)が、学校の教師にいじめられていると感じ、学校に抗議に出向く。しかし、校長やその他の教師、当事者の保利(永山瑛太)は形式的な謝罪を繰り返すばかりで・・・

 

ポジティブ・サイド

モンスターペアレントという言葉があるが、小中校だけではなく大学でもたまに出てくるから始末に困る。普通、成績の疑義照会というのは学生本人が申請してくるものだが、そこに親が乗り込んできて「こっちは授業料を払ってるんだ!」と主張する。学校や授業を委託された弊社としては粛々とこれはこうであれはああで・・・と対応するしかないが、そもそも親が出てきている時点で納得するはずがない。普通なら親が我が子を叱り飛ばして終わりなのだが、そうならなかった時点でモンペ確定である。

 

夏でもかたくなに長袖を着続ける。教室内でもバンダナや帽子を取らない。講師と目を合わせられない。ペアワークもできない。要配慮学生というのは学校から通知があるからすぐに分かるが、それ以外の教室で授業をしてみて「ん?何だこの子は?」という学生もたまにいる。Jovianは本作を観ていて、自分の授業風景を思い出した。最初から保利先生側で本作を観てしまった。こういう鑑賞者はかなりマイノリティなのではないかと思う。

 

湊と依里の淡い友情、その関係の発展、そして結末。そうしたものすべてを明示しない。ある意味で、観る側に解釈を委ねる、あるいは突きつけると言ってもいいかもしれない。それを心地よいと感じるか、不快に感じるか。それはその人の持つ人間関係の濃さ(あるいは薄さ)によって決まるのかもしれない。



ネガティブ・サイド

一番最初のシーンはばっさりカットしても良かったのでは?冒頭のとある出来事とそれを見つめるキャラクターたちを意識することによって、誰が何に関わっていて、逆に誰が何に関わっていないのかを徐々に明らかにしていく構成だが、最初の部分をトイレに行って見逃したJovian妻と鑑賞後にあれこれ語り合ったところ、Jovian妻の方が明らかに物語の謎に引き込まれ、楽しんでいた。

 

校長も湊を相手に自白する必要はなかったように思う。スーパーでのさりげない行為だけで、キャラクターがどういったものかが十全に分かる。

 

総評

非常に複雑な映画。世の中は白と黒にきれいに分けられる訳ではない。わが師の並木浩一と奥泉光風に言えば「現実は多層である」になるだろうか。人間関係は傍目から見ても分からない。教師と生徒でも、親と子でも、分からない時には分からない。そうした現実の複雑さと、一種の美しさや清々しさを描いた非常に複雑で上質な作品。親子や夫婦で鑑賞すべし。人の見方とはかくも難しい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fix

依里の父親が依里に「俺がお前を治して(直して)やる」と言うが、これを英訳すれば I will fix you. となるだろうか。fix は色々なものを直す/治すのに使えるが、これには性格や性質も含まれる。英語の映画やドラマでは時々 “Fix your character!” =「その性格を直せよ!」という台詞が聞こえてくる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 アムリタの饗宴/アラーニェの虫籠 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, ヒューマンドラマ, 安藤サクラ, 日本, 柊陽太, 永山瑛太, 監督:是枝裕和, 配給会社:ギャガ, 配給会社:東宝, 黒川想矢Leave a Comment on 『 怪物 』 -視点によっては誰もが怪物-

『 最後まで行く(2023) 』 -リメイク成功-

Posted on 2023年5月28日2023年5月28日 by cool-jupiter

最後まで行く(2023) 70点
2023年5月21日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:岡田准一 綾野剛
監督:藤井道人

同名韓国映画のリメイク。かなり見応えがあった。

 

あらすじ

年末の夜、刑事の工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに駆けつける途中で、ひとりの男をはねてしまう。男の遺体をトランクに入れた工藤は、検問に引っかかってしまうが、偶然に居合わせた県警本部の監察官の矢崎(綾野剛)によって通過することができた。しかし、母の葬儀と死体の処理に頭を悩ます工藤のもとに、謎のメッセージが送られて・・・

 

ポジティブ・サイド

岡田准一は『 ヘルドッグス 』よりも、本作のようなちょっと間抜けな警察官がよく似合っていた。ヴィランたる綾野剛の演技は、その岡田を完全に喰ってしまうだけの迫力があった。スターが演じる悪役としては『 ミュージアム 』の妻夫木聡に次ぐものだと感じた。この二人のトップスターが、これでもかという泥臭く、そして血生臭いバトルを繰り広げる。

 

オリジナルの『 最後まで行く 』と異なり、優男風の綾野剛が突如として岡田准一をボコボコにするシーンから、一気にサスペンスとミステリが盛り上がっていく。同時に、監察官の矢崎のストーリーが展開され、オリジナルよりも遥かにダークな社会の裏面が現れてくる。日本の警察の腐敗っぷりは『 Winny 』がやや消化不良気味に描いてくれたが、本作の県警の腐りっぷりはいかにもザ・日本という感じ。クソ無能政治家のボンクラ息子が家系図をアピールして大炎上したが、日本の権力構造というのは、本作のような形でも維持・継承されているのか。こういうのは韓国ドラマでよく見る構図だが、藤井監督の抱く問題意識の表れとみる方が実情に近そう。

 

警官二人のバトルのスケールもオリジナルよりもアップしている。また原作ではほとんど存在感のない裏社会の勢力が、本作では地場のヤクザとして大きな役割を果たしている。『 デイアンドナイト 』や『 ヴィレッジ 』でも、地域に根差した闇が描かれていたように、これまた藤井監督の好物テーマなのだろう。

 

工藤と矢崎の息詰まる駆け引きとバトルが延々と続き、さすがにこれは決着がついただろうというところから、さらに粘り腰でバトルが続く。まるでナ・ホンジン監督の『 チェイサー 』や『 哀しき獣 』を観ているかのようだ。最後まで行く、というタイトル通りの展開、そしてその救いのないエンディングには逆説的な意味での爽快感がある。これはリメイク成功と言っていいだろう。こうした毒のある作品が邦画にはもっともっと必要だ。

 

ネガティブ・サイド

原作のゴンスが思いつく死体隠蔽工作は、本作ではまったく無効だろう。通夜の番を一人っきりでしたいというのは分からんでもないし、実際にそういう例もうちの親戚であった。ただ、日本は火葬してから土葬する国なので、原作で可能だったトリックが活かせない。ここを有耶無耶にするしかない展開にしたのはご都合主義的か。

 

最後の最後になんだかなあ、と思わされた。とあるキャラが仕込みだったということで、すべては壮大な茶番に。ヤクザは脇役で、チンピラ警察同士の救いのない対決がどうしようもなくエスカレートしてしまった、というプロットで最後まで行ってほしかった。

 

あと、これは映画そのものの出来とは関係ないことなのだが、トレーラーをもっと慎重に作れないのだろうか。観客をびっくりさせるはずのシーンのいくつかがトレーラーでバラされている。もっとさりげない、それでいてインパクトのあるトレーラーというのは作れるはずなのだが。

 

総評

『 ブラインド 』が『 見えない目撃者 』に良い感じでリメイクされたように、本作もリメイクとしては成功と言える。社会のダークな一隅を照らすことに手腕を発揮する藤井道人監督は、韓流ノワールや韓流サスペンスと相性が良さそうだ。ただし彼には彼で独自の路線を走ってもらわねば。本当は園子温みたいなテイスト(人格ではない)の監督が日本に3~4人いれば面白いのに。まあ、そんな愚痴を言いたくなるほど、本作は邦画がなかなか持てない物語の暗さとエンタメとしての面白さを両立させているのだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a safe house

「隠れ家」の意。house という語を含んでいるが、必ずしも家である必要はない。廃工場でも山小屋でも洞窟でも、隠れ家になりそうなものなら何でも a safe house と呼ぶことができる。この表現はあくまでも犯罪者が逃げ込んだり、あるいは犯罪者から追われている者が逃げ込むような場所を指す。一般人が隠れ家として使うカフェやレストランのことは、a hideaway cafe や hideaway restaurant のように言う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 クリード 過去の逆襲 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, あやの, サスペンス, 岡田准一, 日本, 監督:藤井道人, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 最後まで行く(2023) 』 -リメイク成功-

『 帰れない山 』 -悠久の山と永遠の友情-

Posted on 2023年5月18日 by cool-jupiter

帰れない山 70点
2023年5月14日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ルカ・マリネッリ アレッサンドロ・ボルギ
監督:フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン シャルロッテ・ファンデルメールシュ



山好きの嫁さんが観たいというのでチケット購入。なかなか見応えのある人間ドラマだった。

 

あらすじ

両親とともに山を訪れた少年ピエトロは、同い年の牛飼いの少年ブルーノと出会い、山を二人で巡るうちに無二の親友となる。しかし運命のいたずらで、二人の別れは唐突に訪れた。時は流れ、大人になった二人は、以前のように友情を育んでいくが・・・



ポジティブ・サイド

男二人の物語といっても『 エゴイスト 』のような関係性ではなく、純粋な友情物語。特に都会育ちで山という大自然に魅せられるピエトロと、山育ちで、それでいて都市への憧憬を秘めているブルーノという、非常に対照的な二人の描き方が秀逸だ。自分の親が自分よりも友人の方を褒めてしまう。そうした経験をしたことのある人は存外に多いはず。本作でも、ピエトロとブルーノは互いにリスペクトしながらも、そうした少し危うい友情を育んでいく様がこの上なくリアルだ。

 

二人が大人になって再会するシーンもリアルである。すぐさま再会を喜んで意気投合・・・しない。互いに一瞥をくれるだけ。これは二人が大人になったということ。小学校、中学校の親友と別々の高校に行くことになり、いつの間にやら疎遠になるのは非常にありふれたこと。それは世界が広がるから。しかし、そうした広い世界で、20代後半以降に友人関係に慣れれば、それは子どもの頃の友人とは全く違う意味での友人になれる。ブルーノとピエトロはまさにそれ。大人になった彼ら二人だが、それでも世界を見聞して教養もあるピエトロと、誰よりも山を知っているが俗世の垢にまみれていないブルーノの対比が際立っていく。奥さんに怒鳴りつけられるブルーノには、ひたすらに感情移入してしまった(Jovianもよく浮世離れしていると言われる)。

 

山小屋を立てるという行為は、一つには山に生きるというマニフェストだろう。もう一つは、その山には帰る場所がある、というメッセージでもあるはずだ。世界に山は数あれど、俺とお前にとっての山とは、ここなんだ。そういうことなのだと思う。

 

それにしても序盤の少年二人が遊ぶ山の美しさに、大人になった二人が対峙する山の厳しさよ。Jovianは新婚旅行で数年前にカナダのバンフに行ったが、ロッキー山脈の氷河は永久不変に見えて、実は年間数センチずつ動いている。同じように山脈も少しずつ削られながらも隆起することで、不変であるように映る。人間関係、就中、友情も様々な変化を経ながらも永続していくのだろう。人間の一生は山の命に比べればとてつもなく短いが、その友情の雄大さや悠久さは山に劣ることはない。

 

ネガティブ・サイド

アスペクト比が4:3だったのは何故だ?通常の2.35:1では不都合があったのだろうか。人間だけを映すなら前者でもいいのだろうが、アルプスの大自然を映し出すには不適切だった。監督あるいは撮影監督にはどのような意図があったのだろう。

 

2時間30分はかなり長く感じた。2時間ちょうどにまとめられなかったか。編集でカットできそうなシーンがいくつかあった。街でのメールチェックのシーンなどはもっと短くするか、あるいはバッサリとカットできただろうと思う。

 

総評

男同士の関係性を描く映画としては『 君の名前で僕を呼んで 』に次ぐかもしれない。大自然の美しさとある意味での残酷さ、その中に垣間見える崇高さを余すところなく映し出した、ヨーロッパらしい作品。デートムービーには向かないが、夫婦でじっくり鑑賞するのはありだろう。

 

Jovian先生のワンポイントイタリア語レッスン

Come stai

コメ・スタイと発音する。意味は How are you? である。おそらく Ciao = チャオと並んで最もポピュラーなイタリア語だろう。知っておいて損はない表現だ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 放課後アングラーライフ 』
『 高速道路家族 』
『 最後まで行く 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アレッサンドロ・ボルギ, イタリア, ヒューマンドラマ, フランス, ベルギー, ルカ・マリネッリ, 監督:シャルロッテ・ファンデルメールシュ, 監督:フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン, 配給会社:セテラ・インターナショナルLeave a Comment on 『 帰れない山 』 -悠久の山と永遠の友情-

『 不思議の国の数学者 』 -韓流ヒューマンドラマ-

Posted on 2023年5月14日2023年5月15日 by cool-jupiter

不思議の国の数学者 75点
2023年5月13日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ドンフィ チェ・ミンシク チョ・ユンソ
監督:パク・ドンフン

 

『 オールド・ボーイ 』のチェ・ミンシクが数学者に。嫁さんも是非観たいというのでチケット購入。

あらすじ

国内上位1%のみが集まる進学校に特例入学したハン・ジウは、寮の仲間の不祥事を黙秘したことで1か月間の大量処分を受けてしまう。その発端となった脱北者の警備員、通称”人民軍”がひとかどの数学者であることを知ったジウは、彼に数学を教えてほしいと頼み込んで・・・

 

ポジティブ・サイド

中国が『 少年の君 』で常軌を逸した学歴偏重主義の学校生活を描き出していたが、韓国も似たようなものらしい。学校に居場所のない劣等生が、同じく社会に居場所のない脱北者と交流をしていく・・・という単純なプロットではない。疑似的な家族関係の追求あり、南北の社会や思想の在り方の違いの描写ありと、ヒューマンドラマと社会派ドラマを高度に融合させたストーリーになっている。

 

まず主人公ジウの置かれた境遇が切ない。学校に馴染めず、寮にも馴染めず。寮のルームメイトをかばっても、友情ではなくカネが差し出される。経済力と成績はある程度比例するのは日本も韓国も同じなようで、経済力と人間性は必ずしも比例しないのも同じらしい。そんなジウが、ふとしたことから人民軍に数学を教えてほしいと頼み込む。その奇妙な師弟関係が、ジウにとってはある意味で初めての positive male figure、つまりは疑似的な父親を得ることにつながり、人民軍にとっても疑似的な息子を得ることにつながっていく。このあたりの見せ方に韓国と北朝鮮の情勢を絡めており、非常に巧みであると感じた。

 

ヒロイン的な位置に立つボラムも、この二人の関係にちょっとしたスパイスを与えている。割と唐突に告白してくるのだが、変にジウと恋愛関係に入っていかず、主役二人の静かで奇妙な関係を遠くで見守るというポジションだった。ボラム自身も家族に似たような問題を抱えており、韓国社会全体が抱える”父親像”という問題は『 息もできない 』の時から変わっていないのだなという印象を受けた。逆に、そうした問題を常に映画という媒体で世に問い続けるのが韓国映画の強みの一つか。

 

悪役が教師というのは、個人的には見ていてキツイ。が、こんな先生は確かにJovianの中学校の理科の先生にもいた。確か人工衛星は無重力空間を回っているみたいな説明に対して、「もっと遠い月は地球の重力で回っている。人工衛星も月も無重力ではなく無重量空間にいると雑誌のニュートンで読んだ」みたいなことを言ったら、えらく怒られた。そしてこれをテストに出すが、正解は無重力。だけどお前は無重量と書け、みたいに言われた。実際にテストに出て、無重量と書いて、✖をもらった記憶がある。ジウが数学教師に敢然と立ち向かったシーンでは30年越しにリベンジを果たしたようで気分がスカッとした。

 

天才であるがゆえの政治的な立ち位置の危うさ、そしてジウとの別離が、チェ・ミンシクの迫真の演技によってこれ以上ないリアリティを獲得している。チェ・ミンシク=強面の悪役のようなイメージがあるが、打ちひしがれる中年を演じても素晴らしい。ジウの窮地に現れて、その弁舌だけで状況をひっくり返したのは『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』のアル・パチーノを彷彿とさせた。

 

血生臭い韓国映画もいいが、ベタベタなヒューマンドラマもいいなあ。

 

ネガティブ・サイド

円周率が音楽になるというのはアイデアとしては悪くないが、厳密な数学としてはどうなのだろうか。奥泉光の『 鳥類学者のファンタジア 』に似たようなアイデアがあるが、こういうのはファンタジーというジャンルだけに留めておくべきでは?

 

人民軍の通院できないから薬をくれ、という冒頭のシーンは結局何だったのか。持病を抱えていて、それがいつか一気に増悪してしまうのか?と思ったが、そんなことは一切なし。この最初のシーンはカットすべきだった。

 

ボラムとジウは、結局どうなったのよ?

 

総評

『 グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 』と『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』を韓流で合成、再解釈したようなストーリー。真新しさこそないが、韓国の家族像、北朝鮮との関係、そして教育への眼差しが盛り込まれた良作。本作を観たらバッハを聞こう、同志諸君。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アジョシ

おじさんの意。傑作『 アジョシ 』は元々ソン・ガンホあるいはチェ・ミンシクのようなオッサンのキャスティングを予定していたそうだ。韓国映画やドラマではしょっちゅう聞こえてくる言葉なので、知っている人も多いだろう。ちなみにおばちゃんはアジュマである。

次に劇場鑑賞したい映画

『 帰れない山 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 高速道路家族 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, キム・ドンフィ, チェ・ミンシク, チョ・ユンソ, ヒューマンドラマ, 監督:パク・ドンフン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 不思議の国の数学者 』 -韓流ヒューマンドラマ-

『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』 -続編にも期待-

Posted on 2023年5月7日 by cool-jupiter

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 70点
2023年5月6日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:クリス・プラット アニャ・テイラー=ジョイ
監督:アーロン・ホーバス マイケル・ジェレニック

 

嫁さんが観たいというのでチケット購入。普通に面白かった。

あらすじ

ニューヨークで配管工として独立したマリオ(クリス・プラット)とルイージは、ブルックリンの地下で土管に吸い込まれたことで、謎の世界へワープしてしまう。その途中でルイージはダークランドへ、マリオはキノコ王国へ。世界征服をもくろむクッパを倒し、弟を救出すべく、マリオはピーチ姫(アニャ・テイラー=ジョイ)に会いに行くことになり・・・

ポジティブ・サイド

ニューヨークの下水道には100年近く前に発生した、とあるミームがある。リゾート地で買ってきた赤ちゃんクロコダイルを飼いきれなくなって、下水に放したら、繁殖してしまった・・・というもの。『 アメイジング・スパイダーマン 』の下敷きでもある。そうした不思議な空間、ニューヨークの地下水道から異世界にワープするという展開には説得力があった。

 

クッパの暴君っぷりも堂に入ったもの。よくよく考えれば毎回広大なエリアを支配下におさめ、膨大な数と種類の配下を従えるゲーム世界の大ボス。ドラクエシリーズの魔王と変わらない貫禄だ。それでもクッパが愛されるのは、ピーチ姫に恋焦がれるという側面があるからだろう。森見登美彦風に言えば「成就した恋ほど語るに値しないものはない」わけで、逆に言えばクッパの恋は決して成就しないからこそ、マリオの世界は拡大し続けてきたとも言える。今作のクッパはピアニストにして歌手でもあり、クッパの新たな側面を追求したという意味でも興味深い。

 

そのクッパの love interest たるピーチ姫が、今回はさらわれない。逆にクッパに敢然と立ち向かうお姫様像を打ち出してきた。アニャ・テイラー=ジョイの声もマッチしている。『 シュガー・ラッシュ 』前のディズニーには絶対に出てこないタイプのプリンセスだが、まったく違和感はなかった。ピーチ姫の出自に関しても一部が明らかにされていたのも良い。キノコ王国の姫がキノコではなく人間である、ということを全く疑問視しなかった自分が恥ずかしい。全然 critical thinking できていなかった。

 

マリオとルイージの関係性も過不足なく描写されていた。頼りになる兄と頼りない弟で、兄が弟を常にフォローしてやる。序盤のニューヨークの街中でゲームさながらの横スクロールで移動していくシーンには笑ってしまうと同時に唸らされた。その弟が終盤で兄のピンチを勇気を振り絞って体で食い止めるという展開には手に汗握ったし、二人でクッパを撃破する展開には思わず柏手を打った。

 

『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 』が意図的に politically correct な内容に作られているのに対して、本作はほとんどナチュラルに politically correct な作品に仕上がっているということにも驚かされるが、だからこそビデオゲーム分野でマリオは最も売れたフランチャイズになっているのだろう。

ネガティブ・サイド

音楽がほとんど全部オーケストラ化されていたのは少々やりすぎに感じた。ファミコンの最大4音とまではいかないが、冒頭のようなシンプルなBGMおよび効果音がもう少しあっても良かったと思う。

 

とあるキャラの誕生を匂わせるポスト・クレジットシーンがあるが、『 GODZILLA(1998) 』のように、続きはテレビで!とならないことを祈る。

 

総評

Jovian世代だと、マリオはだいたいファミコンで1~3、スーパーマリオワールド、マリオカート、スーパーマリオ64、あとはドクターマリオとか、ゴルフ、テニスあたりもプレーした記憶がある。ただ、プレーしたゲームが1作だけでも鑑賞に支障はない。極端な話、マリオのゲームを一切プレーしたことがなくても、マリオがどんなキャラでどんなゲームなのか、何となく知っているだけでも楽しめるはずだ。ファミリーで鑑賞するもよし、デートムービーとして鑑賞するもよし、もちろんお一人様での鑑賞でもOKである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Will you marry me?

説明不要。プロポーズの言葉の定番。ポイントは語尾を上げないこと。これは機能疑問文である。大人の恋愛映画では死ぬほど聞こえてくるし、現実でも頻繁に使われる。ちょっと古い話だが、1996年のウィンブルドンの伊達公子vsシュテフィ・グラフで、観客が “Steffi! Will you marry me?” と叫んだシーンを知っている人もいるはず。Jovianは当時高校生で、リアルタイムでテレビで観ていた。ちなみにグラフはすかさず “How much money do you have?” と応えた。映像がYouTubeにあったので興味がある向きはどうぞ。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 放課後アングラーライフ 』
『 不思議の国の数学者 』
『 高速道路家族 』

 

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Posted in 国内, 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アニメ, アニャ・テイラー=ジョイ, アメリカ, クリス・プラット, 監督:アーロン・ホーバス, 監督:マイケル・ジェレニック, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』 -続編にも期待-

『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』 -イラン社会特有の病理と思うなかれ-

Posted on 2023年4月30日 by cool-jupiter

聖地には蜘蛛が巣を張る 70点
2023年4月26日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:メフディ・バジェスタニ ザーラ・アミール・エブラヒミ
監督:アリ・アッバシ

 

監督の名前だけでチケット購入。

あらすじ

イランの聖地マシュハドで、娼婦だけを狙うスパイダー・キラーという連続殺人鬼が出現。住民は不安に慄くが、犯行を支持する者もいた。女性ジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)は独自に事件を追っていくが・・・

ポジティブ・サイド

娼婦ばかりを狙う殺人鬼では『 チェイサー 』が思い出されるが、本作は社会の底辺で繰り広げられる追跡劇ではなく、広く社会全般に蔓延する空気の淀みに息が詰まる。そしてその空気とは女性蔑視。

 

ただのオッサンが淡々と娼婦を買い、淡々と殺しては淡々と捨てていく。それを追うジャーナリストの女性が周囲から受ける奇異の眼差しが突き刺さる。

 

一見して普通の人が大量殺人犯だったという真相の裏に、戦争で死ねなかった、あるいは戦争がもっと続けば功成り名遂げるチャンスもあったという想いがあったのではないか、という仮説を提示しているところが、なんとなく『 殺人の追憶 』を彷彿させる。

 

サイードの宗教観と、彼の家族の事件の受け止め方に戦慄させられる。これをイスラム社会およびムスリムの特異性と受け取るか、それともあらゆる文化は相対的に特異であると受け取るかで、本作の評価はガラリと変わるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

サイードの家族だけが異様に映ってしまうが、サイードのかつての軍隊仲間の家族たちの様子や、治安の悪化を不安がっていた近所の人々のサイード逮捕後の反応なども描いていれば、イラン社会の不安定さと、それゆえの変化への希望と絶望の両方が表せたのではないだろうか。

 

裁判シーンか、それに関連するシーンをもう少し増やして、イスラム法がどのようなものなのかを観る側に知らせてくれても良かったと思う。あるいは傍聴人同士の会話や新聞、ニュース番組、SNSのやりとりなど、何故かくもサイードが支持されるのか非イスラム圏にも、もう少し伝わりやすくしてほしかった。

 

総評

『 ボーダー 二つの世界 』で描かれた、人間と人間とは異なる存在が交わることなく存在する世界同様に、本作では男と女という交わるのだが交わらない存在、その位相の非対称性が強く打ち出されている。殺害シーンはかなりショッキングなので注意のこと。本作を他山の石にできるかどうかが、その文化圏あるいは視聴する個人の一種のテストであるかのように感じられる。

 

Jovian先生のワンポイントペルシャ語レッスン

キー

誰、の意味。劇中に何度も何度も聞こえてくるので、さすがに分かる。ラテン語の qui が元になっているのかな、などとあらぬことを一瞬考えた。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ザーラ・アミール・エブラヒミ, サスペンス, スウェーデン, デンマーク, ドイツ, フランス, メフディ・バジェスタニ, 監督:アリ・アッバシ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 聖地には蜘蛛が巣を張る 』 -イラン社会特有の病理と思うなかれ-

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