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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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『 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 』 -社会批判コメディの良作-

Posted on 2023年11月28日 by cool-jupiter

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 70点
2023年11月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:GACKT 二階堂ふみ 杏 片岡愛之助
監督:武内英樹

 

『 翔んで埼玉 』の続編。前作には劣るものの、コメディの中にも社会批判の精神が垣間見られる良作だった。

あらすじ

埼玉解放戦線の活躍により通行手形が廃止されて3か月。埼玉県人は東京を目指すばかりで、横のつながりを欠きつつあった。麻実麗(GACKT)は埼玉の心をひとつにすべく、海を作ることを画策。和歌山の白浜から良質な真砂を持ち帰るために出航するが・・・

ポジティブ・サイド

埼玉県民がラジオ放送の物語に耳を傾けるという前作のフォーマットを踏襲。しかし、今回は舞台が滋賀ということで今度は関西人をビジネスターゲットにした。そしてそれはかなり成功していると感じた。とにかくローカルネタのオンパレードで関西人の笑いのツボを的確に刺激してくる。尼崎にもなぜか平和堂があり、よく行くところなので、HOPカードには我あらずプッと吹き出してしまった。

 

前作でのネタも適度に引き継いでいるので、埼玉に海を作るという突拍子もないアイデアもすんなりと受け入れられた。また麗がマイアミ帰りという設定がまさかこのような形で説明されるとは思わなかった。左フックをあごに食らったような衝撃だが、これは滋賀県民ならゲラゲラ大笑いしてしまうのかもしれない。

 

そんな麗と仲間たちが、なんだかんだで関西上陸。そこで大阪の横暴と圧政に苦しむ滋賀その他の住民たちと解放戦線を組むというのはワンパターンではあるが面白い。そしてその面白さは、ヴィランがヴィランとして躍動しているからこそ際立つ。

 

本作では吉村大阪府知事の冷酷さや身勝手さが、嘉祥寺というキャラを通じてよくよく表現されていた。タイガースの優勝や大阪万博など、タイムリーなネタも満載。特に大阪府民以外が道頓堀に飛び込むのは許さない、という姿勢には唸った。コロナ爆発の前、かの知事が兵庫県民と京都府民に「大阪に来るな」と発言したことを覚えている関西人は多いだろう。この傲岸不遜な姿勢、心根をとことんパロディ化することに成功した武内監督および脚本家の徳永友一は透徹した人物眼の持ち主であると評したい。

 

この極悪大阪に対して、「琵琶湖の水を止める」という鉄板ネタで立ち向かう滋賀解放戦線には笑うしかない。そして前作でも繰り広げられたご当地出身の有名人合戦もユーモア抜群。特に西宮出身であるにもかかわらず神戸出身を公言していた女優が、実は別の土地と非常に深い関わりを持っていたというシーンには腹の底から笑わせてもらった。

 

最後は「白い粉」で全世界の大阪化を画策する府知事の目論みを、まさかの方法で文字通り粉砕するギャグ漫画かいなという超絶展開。というか元々はギャグ漫画だったな。大阪のシンボルを埼玉の自虐ネタが粉砕するという展開にイライラさせられた大阪人もいたことだろうが、最後に大阪人の面倒見の良さをアピールするという抜かりなさ。生粋の大阪人のJovian妻は「やっぱり大阪人は人情あるわ」と、すっかり製作者の掌の上で踊らされていた。散々大阪をディスりながら、最後にコロッと態度を変えさせる。作り手は大阪人をよくわかっている。大阪人だけではなく、神戸市民以外の兵庫県民、京都市民以外の京都府民、そして滋賀県民や和歌山県民にもお勧めしたい改作である。

ネガティブ・サイド

尼崎の劇中での描かれ方はなんだったのだろうか。大阪市尼崎区と揶揄されることもある我が街であるが、こんな意味不明な描写をされるのならカットしてほしかった。もしくは大阪最強軍団の補欠的扱いで姫路と一緒にむりやり動員される、というのなら笑えたのだが。

 

甲子園を脱出した麗がいきなり京都の祇園にワープしたのは何故なのか。梅田の地下ダンジョンは全カット?うーむ・・・

 

大阪府知事の怪しい儀式は不要だったかな。

総評

前作が東京のジャイアニズムをとことん皮肉ったように、今作では大阪のジャイアニズムをとことんコケにしている。その象徴が片岡愛之助演じる大阪府知事。大阪もしくは関西圏以外の方々には吉村大阪府知事がどのように受け止められているのかは分からないが、彼の本性が本作では非常にコミカルに、しかりリアルに描かれていると思って頂いて結構だ。思えばこうした大都市に搾取される地方という構図は日本の問題の縮図である。ぜひ本作を見て大いに笑ってもらい、最後に少しヒヤッとしてもらいたい(特に都会人)。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take someone away

誰かを連行する、の意味。『 スター・ウォーズ 』の冒頭でダースベイダーがトルーパーにレイア姫を連行するように言う時に “Take her away!” と言っていた。映画でしょっちゅう聞こえてくる表現なので、意識して聞いてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 花腐し 』
『 首 』
『 市子 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, GACKT, ブラック・コメディ, 二階堂ふみ, 日本, 杏, 片岡愛之助, 監督:武内英樹, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ 』 -社会批判コメディの良作-

『 カランコエの花 』 -あなたの心に澱みは残るか-

Posted on 2023年11月7日2023年11月7日 by cool-jupiter

カランコエの花 70点
2023年11月6日 神戸学院大学有瀬キャンパス951号室にて鑑賞
出演:今田美桜
監督:中川駿

 

非常勤講師を務めている大学でダイバーシティ映画上映会の案内が届いたので、会社で後半休を取って(まあ、同日の夜に働くのだが)上映会に行ってきた。その理由は監督が秀作『 少女は卒業しない 』の中川駿だったからである。

 

あらすじ

とある高校2年生のクラス。ある日唐突に『LGBTについて』の授業が行われた。しかし他のクラスではその授業は行われておらず、生徒たちに疑念が生じる。「うちのクラスにLGBTの人がいるんじゃないか?」生徒らの日常に波紋が広がっていき・・・

 

ポジティブ・サイド

構成が絶妙だ。主人公の月乃(今田美桜)が学校や家庭で過ごす一日一日の経過を映し出していく。幕間=日の移り変わりの暗転の間も絶妙で、一日ごとの月乃の心境の変化を観る側も考えてしまう。

 

本作がユニークなのは、LGBTではない人の目線で物語を追っていく点にある。たとえば『 彼女が好きなものは 』や後述する作品などではLGBTが主役あるいは準主役である。しかし、本作の月乃はいたって普通の女子高生で、その彼女の目から見る世界がいかに自分たちが知覚する社会と近いのかが再確認される。つまり、月乃の感じる精神的な動揺が観る側にダイレクトにつながる。

 

本作は固定カメラを使わず、ほとんどすべての画面に手振れがある。それによって、まるで自分がその場にいるかのような臨場感が感じられるという、思わぬ副産物的効果もある。同時に自分がLGBTとどう接するべきなのかという問題(issueであってproblemではない)に対して傍観者であるとも感じさせられる。

 

これから本作を鑑賞する方々は、ぜひ月乃の属する仲良し4人組の人間関係を観察されたい。そして、明かされるカランコエの花言葉の意味と、月乃がそのシュシュを身に着ける、そしてそのシュシュを取り外すことの意味を、よくよく考えてみてほしい。

 

以下、中川監督と神戸学院大学の中山文(なかやまふみ)教授との対談の中で触れられた内容とそれについての所感を挙げていく。

 

中川監督:

社会問題を扱う上で、高校生は子どもではないが、大学生や社会人は大人。大人は上手いこと嘘をつく。

 

これはその通りで、本作でもいけしゃあしゃあと嘘をつく日本史の教員が登場する。また、そもそもの問題の発端である授業を実施した保健のハナちゃん先生もそうだ。彼女の、まったく心のこもっていない授業をぜひ聞いてほしいと思う。一方で、嘘がつけない男子が印象的だった。どこかで見たことのある顔だと思ったら、『 リング・ワンダリング 』の主人公ではないか。この悪ガキの良い意味でも悪い意味でも嘘がつけない性質が本作の物語に深みを与えていることにも注目してほしい。

 

中川監督:

本作は2018年に公開されたが、撮影は2016年に行った。2018年の教育関係者の感想は「怖い、自分もこんなミスをやってしまいそう」というものが多かったが、2023年になるとそうした感想はかなり減ってきた。

 

これは邦画の世界にもしっかり反映されている。たとえば2016年の映画『 怒り 』と2023年の映画『 エゴイスト 』、この両作品におけるLGBTの描き方を比較すれば明らかである。中川監督は「7年で本当に世の中が変わった」と何度か言っていたが、それは本当にその通りだと感じる。

 

本作はカミングアウトをテーマにしているが、そこには以下の3種類の怖さがある。

1.同性愛だと思われるのが怖い
2.同性愛者の自分が否定されるのが怖い
3.自分自身が否定されるのが怖い

以下はJovianの私見だが、この3段階は別個の心的事象ではなく、1→2→3と連続するものであると思う。つまり、同性愛であることそのものがストレートに自己否定になりかねない。このことは社会全体で知っておくべきことであると思う。これは同性愛の部分を「障がい者」に置き換えてみればよく分かるであろう。

 

中川監督:

カミングアウトには条件がある。それは「カミングアウトしても帰っていける居場所を確保しておくこと」である。

 

これも非常に重要な指摘であると思う。これはLGBTや障がい者、あるいは在日外国人などに限ったことではない。誰もが何らかのコミュニティに属して生きていくのが人間だが、属すことができるコミュニティは別に一つとは限らない。会社に居場所がないサラリーマンは、居酒屋が居場所になるかもしれないし、英会話スクールやカルチャー教室が居場所になるかもしれない。

 

中川監督:

(どのシーンが一番好きですか?と問われ)どのシーンが好きかとは自分では言えないが、エンドロールが一番好きだと言われることが多い。

 

この言葉通り、本作のエンドロールはユニークである。『 おと・な・り 』のエンドロールそっくりだと言えば分かる人には分かるかもしれない。それよりもびっくりさせられたのは、あのエンドロールはほとんどあの役者のアドリブだということ。これこそ演出というもの。そういう意味では『 ゴジラ-1.0 』で佐々木蔵之介に「これからの日本はお前らに任せるぜ」などと安易に喋らせてしまう山崎貴監督は、やはり人間ドラマを描く力が弱いと言わざるを得ない。

 

中山教授: 

「私たちの大学、明石にあるんですよ」(正確には神戸市有瀬、明石までは数十メートルだが、れっきとした神戸市である。大学の名前も神戸学院ですよ!)とのことだが、その明石市には同性パートナーシップ条例がある。つまり、同性カップルの移住が促進され、それも人口増に寄与しているとのこと。

 

これも面白い指摘。泉房穂元市長が何かとお騒がせというか話題を提供しているが、人口減少社会において、同性カップルを許容することの意味はここにもある。余談だが、同性カップルは当然ながら子孫(養子除く)を残すことができない。しかし、人類の一定数は必ず同性愛者である。ということは、同性愛者には生物学的な意味での raison d’etreがあるはず。誰かを好きになるという感情を説明することは難しいが、同性を好きになるという人が存在することは、いつか説明できるようになると思われる。

 

中川監督:

(次回作の構想を問われ)子どもの車中置き去り事件に関心があり、色々とリサーチをしている。映画においては、観客の気づきに勝るものはない。こちらから押し付けるのではなく、気付いてもらえるような作品を作りたい。

 

うーむ、これもなかなか社会的なテーマ。車中置き去りで幼児あるいは子どもが死亡するというのは、うっかりで説明できない事件あるいは事故である。次回作のリリースを首を長くして待ちたい。なにもかもをキャラのセリフで説明してしまうのではなく、観客の気づきを促す。これは教育の在り方に通底するものがある。

 

中川監督:

(なぜ映画監督になったのかを問われ)最初はイベント企画会社に就職したが、リーマンショックによる大不況で毎月毎月社員が辞めていく。新入社員だった自分は、その送別会用のムービーを毎月毎月作っていた。そのうちに映像制作を面白いと思うようになり、映画の世界に足を踏み入れた。映画監督の売り物は何を美しいと思うかという感性。カメラマンなどは手振れなく撮影する技術が必要な専門職だが、映画監督の売り物である感性は誰でも何歳からでも磨くことができる。だから皆さんも今からでも映画監督になれる。自分は20代半ばから映像作家になったが、映画監督の中には小さな頃から映画があまりにも好きなあまり「映画は素晴らしい」という思いが強すぎて、「お客さん、感じ取ってくれよ」という押しつけになりがち。今後も映画を過信せず、しっかりとリサーチすることが大事だと思って活動していきたい。

 

以下、出席者(教員の方?)から中川監督に質問2点。

Q1.

どういうふうに対応すれば正解だったのか?

 

A1.

どうしてほしい、どうしてほしくないかは当事者によって異なる。本作では誰も〇〇〇〇に「どうしたい?どうしてほしい?」と尋ねていない。

 

Q2.

カミングアウトがなされた時にどのように行動すべきだったのか?

 

A2.

〇〇〇〇自身はLGBTであることを隠していない。なので「あ、そう」「だから、何?」でよかった。

 

これはあくまで本作の世界観での話であることに注意。現実は監督の言う通りに、当事者によって配慮の仕方や、あるいは配慮の必要性の有無そのものも異なってくる。ただひとつ言えることはLGBTの性的志向もストレートの性的志向も「対象は非常に限定的」という意味では同じである。この記事の読者の sexual orientation がなんであるかは知る由もないが、たとえば30代男性だとしよう。その人が道行く女性全員に欲情するのか?という話である。断言する。しない。LGBTも同じである。たとえばLが道行く女性すべてを好きになるはずなどない。

 

中川監督:

(ワークショップの最後にメッセージをとお願いされて)年月を経るごとに『 カランコエの花 』が扱うテーマがどんどん古いと捉えられ、レビューサイトの星の数がどんどんと減っていっています。それは主として若い世代の感想。それは世の中にとっての好ましい変化。今後、若い人たちがどんどん社会を変えていってほしい。

 

これはまさに哲学者ジャン・ポール・サルトルの言うところのアンガージュマン!英語で言うなら engagement だ。大学という一種の象牙の塔で得た知識や技能を使って、社会をより良い方向に変化させていく。非常勤講師兼サラリーマンのJovianもまったく同じことを学生諸君に期待している。

 

ネガティブ・サイド

月乃のお父さんが登場しないのは何故?お母さんだけではく、お父さんという世代も性別も違う大人が月乃からの相談にどう対処するのか、お父さん世代のJovianは非常に気になってしまった。

 

保健室の養護教諭が勝手に授業することなど現実にあるのだろうか。学校というのはかなりガチガチにカリキュラムが組み立てられている。そしてそのカリキュラム(この科目は授業〇時間、予習と復習が週に△時間etc)は文科省様によって厳密に定められていたりする。なので英語の自習ならまだしも、そこに唐突に道徳の授業的な時間を設けるというのは考えづらい。善意からの不注意で済ますにのは、説明としてはちょっと苦しい。

 

総評

パッと見たところ、200名近くの学生が参加していた。演劇とジェンダー・スタディーズの講座の一環らしいが、授業に映画鑑賞を取り入れるという試みは、高校や大学でもっと広まっていいと思う。Amazon Prime Video でも視聴可能で、時間も39分とコンパクトなので、通勤通学の時間や寝る前などに鑑賞することも可能だろう。もちろん親子での鑑賞にも十分に耐えうる作品だ。本作を観て「うーむ」と考えさせられたら、それは自分がそれだけ古い価値観の人間だということ。ちなみにJovianは古いと新しいの中間ぐらいだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント・レポート・レッスン

こんなブログを見ている神戸学院大学の学生がいるのかどうかは分からないが、dotCampusあるいは Moodle に提出しなければならないレポートの書き方のヒントとして以下を挙げておく。中山教授もこれぐらいは許してくださるだろう。

・登場人物の行動や、その背景にある心理を想像する
・それらを同じシチュエーションに置かれた自分の行動や心理と比較する
・その比較から自分とキャラクターの共通点を書く(反省的な内容)
・その比較から学べること、今後に実践できることを書く(思考変容・行動変容)
・上記を講座で学んだ理論、事例、ケース・スタディと比較対照して、自分の思考変容・行動変容の理論的な裏付けを書く
・監督と教授のやり取りで印象に残った点についても触れる

これをある程度しっかりしたプレゼンテーション(レポートの体裁=段落分けや引用文献の明記etc)と一定以上の語数(日本語なら800~1200字だろうか)で書ければ、悪い点数にはならないはずである(保証はしないけど)。幸運を祈る。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 今田美桜, 日本, 監督:中川駿, 配給会社:ニューシネマワークショップLeave a Comment on 『 カランコエの花 』 -あなたの心に澱みは残るか-

Godzilla Minus One -A great homage to the very first film and GMK-

Posted on 2023年11月5日 by cool-jupiter

Godzilla Minus One 75/100
November 3rd, 2023 Watched at Movix Amagasaki
Casts: Ryunosuke Kamiki   Minami Hamabe
Director: Takashi Yamazaki

 

Director Takashi Yamazaki, who angered many movie fans with ‘Dragon Quest: Your Story’ somewhat redeemed himself with ‘Lupin the 3rd: The First.’ I bought a ticket a little concerned, but I got my money’s worth/

Introduction

As the end of the war drew near, pilot Shikishima (Ryunosuke Kamiki), assighned the mission of launching a kamikaze attack on the enemy, had to make an emergency landing on Odo-shima Island due to aircraft trouble. However, that night, Godzilla attacked the island, and the detachment was wiped out. The only survivors were Shikishima and the chief mechanic. Later, when Shikishima returned to Tokyo, he learned of his parents’ death. However, he got into a strange relationship with Noriko (Minami Hamabe), and a child to whom she was not the biological mother …

Some major spoilers ahead. You’ve been warned.

 

Positives

The story began with Odo-shima Island, which put a smile on my face. And Godzilla’s appearance within the first 5 minutes also put a smile on my face. “Shin Godzilla”, the last Japanese Godilla film, had an early appearance of Godzilla, too, but this film immediately shows us the full body of Godzilla, which Shin Godzilla didn’t do.

 

Once Godzilla got his feet dry, Tokyo turned into a wasteland just like that. Unlike the first Godzilla that was in black and white, this one felt very realistic. In the first film, where all the characters (except Dr. Yamane) were full of sadness and despair. On the other hand, in this film, various characters’ emotions crisscrossed. Despite being a special kamikaze attack team member, Shikishima, the protagonist played by Ryunosuke Kamiki, refused to die and survived. A young girl who some other woman entrusted her baby to somehow got to know him. The next door widow, played by Sakura Andoh, intervened and helped this young strange couple. Even though the story was set in 1945, it was still very easy to sympathize with these characters because the emotions they were going through were universal.

 

Godzilla, powered up and enlarged by the Bikini Atoll nuclear tests, soon reappeared and destroyed the heck out of the Ginza district, which was a direct homage to the original. I couldn’t help but raising my fist into the air at the appearance of the tank unit because that was what happened in the original movie. Godzilla’s atomic breath was, in a sense, more destructive than Shin Godzilla’s. The rising mushroom cloud evoked memories of GMK (my favorite Godzilla movie!). What an overwhelming sense of despair and loss!

 

“Shin Godzilla” was about a national effort to stave off and terminate Godzilla, but this film was about a civilian operation against Godzilla, given the pre-Cold War situation at the time and the fact that Japan had been demilitarized by GHQ. It had only been a few years since the end of the war, so there were still quite a few military survivors. When they revealed the tactic, a gadget appeared and it immediately put a smile on your face because it reminded us of the Oxygen Destroyer from the original. The operation involved targeting Godzilla’s weakness as a living creature, and it was reasonably and logically convincing because that was basically what  Mechagodzilla from “Godzilla vs. Kong,” tried to do to Godzilla. The Godzilla theme that played as warships surrounded Godzilla just before this attack was truly an homage to the original because in the first movie, this music came on not when Godzilla destroyed Tokyo, but when the tank unit arrived and opened fire against Godzilla. That unique Akira Ifukube’s Godzilla theme song was originally the BGM when the Self-Defense Forces appeared. In this film, it was used as the theme song for civilian forces, not for Godzilla. Finally, there’s a kamikaze attack on Godzilla’s mouth, just like the anti-nuclear bacteria missile in “Godzilla vs. Mothra.” A heavily wounded Godzilla sinking to the bottom of the ocean was clearly an homage to GMK, which again did put a smile on my face.

 

Writer/director Takashi Yamazaki successfully made a name for himself for creating a new Godilla movie out of the traditional Godzilla movies.

Negatives

The human drama part was weak. To be more precise, it was hard to see the focus of the dramas. It wasn’t clear whether the film wanted to focus on the process of Shikishima, Noriko, and Akiko turning from a pseudo-family into an authentic one or if it wanted to focus on Shikishima and the other survivors overcoming their war traumas. It should have concentrated on on big subplot, not two.

 

A few of the actors’ performances stood out like a sore thumb. Shikishima, the main character, was completely overshadowed by Yoshioka Hidetaka and Kuranosuke Sasaki. The acting, or rather the directing, often missed the mark. In the final scene, Shikishima dropped the coat he was wearing onto the ground, but wasn’t the timing a bit off? That kind of scene happened throughout the film. It felt like Shikishima’s acting or the director’s direction didn’t quite fit in with the main character.

Overall Summary

Defining Godzilla is difficult, but it’s easy to recognize what is not Godzilla. In that sense, there is no room for doubt that the creature in this film is Godzilla, and this film is a Godzilla movie. Showa Godzilla was all about Godzilla destroying Japan, yet Japan always underwent a rehab in a booming economy. Reiwa Godzilla, on the other hand, is portrayed as an ominous force that could come back any time if Japan continues to economically dwindle and politically become right wing. The highly able and competent Japanese government depicted in ‘Shin Godzilla’ was fiction. It seems we’ve entered an era where we, as civilians, must make sure that Godzilla is not real and that he belongs in fiction and entertainment.

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ゴジラ, 怪獣, 日本, 浜辺美波, 監督:山崎貴, 神木隆之介, 配給会社:東宝Leave a Comment on Godzilla Minus One -A great homage to the very first film and GMK-

『 ゴジラ−1.0 』 -初代とGMKへのオマージュ-

Posted on 2023年11月4日 by cool-jupiter

ゴジラ−1.0 75点
2023年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神木隆之介 浜辺美波
監督:山崎貴

 

『 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 』で多くの映画ファンを激怒させ、『 ルパン三世 THE FIRST 』でやや汚名返上した山崎貴監督。不安を抱きつつチケットを購入したが、本作は当たりだった。

あらすじ

終戦間際。特攻を命じられた操縦士の敷島(神木隆之介)は機体不調により大戸島に緊急着陸する。しかし、その夜、ゴジラが島に襲来し、遣隊は全滅。生き残りは敷島と整備長のみだった。その後、東京へ帰った敷島は両親の死を知る。しかし、そこで連れ子を伴った典子(浜辺美波)と共に奇妙な共同生活が始まり・・・

 

以下、本作およびゴジラ・シリーズのマイナーなネタバレあり

ポジティブ・サイド

大戸島というロケーションにニヤリ。そして開始5分で登場するゴジラにもニヤリ。『 シン・ゴジラ 』もゴジラ自体の登場は早かったが、本作はいきなりゴジラの全身を見せつけてくれる。

 

焦土と化した東京も、白黒だった初代ゴジラと違ってリアリティが抜群。登場するキャラクター全員(山根博士除く)に悲壮感いっぱいだった第一作と違い、本作は特攻隊であるにもかかわらず生き延びてしまった敷島や、兵隊が不甲斐ないせいで家族を失ってしまった未亡人など、より様々なキャラクターたちの感情が交錯する。それにより、歴史的に距離がある時代であるにもかかわらず、色々な人物に感情移入しやすくなっている。

 

ビキニ環礁の核実験でパワーアップ、サイズアップしたゴジラが再登場し、銀座を破壊していくシーンは、まさに初代へのオマージュ。戦車隊の登場にも思わずニヤリ。ゴジラの吐く放射熱線は、ある意味シン・ゴジラ以上の破壊力。モクモクと立ち上るキノコ雲はGMK(私的ゴジラ映画第1位!)を髣髴させる。この圧倒的な絶望感と喪失感!

 

『 シン・ゴジラ 』は国を挙げてのゴジラ対策だったが、本作は当時の世界情勢と武装解除された日本という状況から、民間人による対ゴジラ作戦を決行。終戦からわずか数年なので、軍の生き残りはそれなりにいる。そして明かされる作戦。ここでも初代のオキシジェン・デストロイヤーを髣髴させるオブジェにニヤリ。作戦としては、生物としてのゴジラの弱点を突くというもので、説得力はそれなりにあった。また『 ゴジラvsコング 』でメカゴジラがゴジラの口の中に攻撃をしようとして観る側を震え上がらせたが、本作はまさにそれを敢行。その直前に艦船が一斉にゴジラを包囲していく際に流れるゴジラのテーマは、まさに初代へのオマージュ。あの特徴的なテンポの曲は、もともと自衛隊登場時のBGMだった。それが本作にゴジラではなく民間戦力のテーマソングとして使用されたことにもニヤリ。最後には『 ゴジラ対モスラ 』での抗核バクテリア弾よろしくゴジラの口に突撃。ボロボロになって沈みゆくゴジラと、エンディングでの不穏なワンシーンは完全にGMKへのオマージュでさらにニヤリ。

古いゴジラ映画の様々なネタを再調理して、見事な一品に仕立て上げている。

ネガティブ・サイド

人間パートが弱い。というかドラマの焦点が見えにくい。敷島と典子とアキ子の疑似家族が真の家族になっていく過程に焦点を当てたいのか、それとも敷島やその他の生き残りたちの戦争トラウマの克服に焦点を当てたいのかが分かりにくかった。二軸ではなく、どちらかに注力すべきだったと思う。

 

役者の演技のアンバランスというか、主役のはずの敷島が吉岡秀隆や佐々木蔵之介に完全に食われている。演技というか演出も的外れなものが多かった。最終盤、敷島が羽織っていたコートをバサッと地面に落とすのだが、そのタイミングはちょっと違うのでは?と感じた。そういうシーンが多い。敷島の演技というか、監督の演出が主役にだけはハマらなかったように感じる。

総評

ゴジラを定義するのは難しいが、何がゴジラでないのかはすぐにわかる。その意味で、本作に登場するのは確かにゴジラであり、本作はゴジラ映画である。昭和ゴジラといえば日本を破壊しまくり、それでも復興する経済絶好調な日本の産物だった。令和ゴジラはすでに経済的にボロボロな日本が政治的に道を誤ったら復活してしまう存在として描かれている。『 シン・ゴジラ 』で描かれた有能な日本政府という像はフィクションだった。我々民間人がゴジラという虚像(災厄)を虚像(エンタメ)のままにしておかなければならない時代になってしまったようである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

detachment

文脈にもよるが、ここでは分遣隊の意味。本体から切り離されて活動することから、そのように呼称される。attachment に「添付」の意味があることはTOEIC500以上なら知っているはず。detachment とは attachment の反対語なのである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 トンソン荘事件の記録 』
『 火の鳥 エデンの花 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ゴジラ, 怪獣, 日本, 浜辺美波, 監督:山崎貴, 神木隆之介Leave a Comment on 『 ゴジラ−1.0 』 -初代とGMKへのオマージュ-

『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

Posted on 2023年10月5日 by cool-jupiter

ハント 75点
2023年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ジョンジェ チョン・ウソン
監督:イ・ジョンジェ

 

簡易レビュー。

あらすじ

1980年代。安全企画部の海外班長パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内班長キム・ジョンド(チョン・ウソン)は、機密情報が北朝鮮に漏洩していることを知る。そして組織内にスパイがいると告げられる。パクとキムは互いのチームを探り始めるが・・・

ポジティブ・サイド

1983年という、韓国民主化前夜の時代。その3年前に「光州事件」という、韓国版の天安門事件とも言うべき事態が引き起こされており、アメリカ系韓国人が韓国大統領の訪米に対して抗議のデモを起こすところから物語が始まる。

 

そこで勃発する要人暗殺未遂事件。パクとキムの二人は反目しあいながらも事件を解決。しかし謎のスパイ「トンニム」によって次々に機密情報が漏洩。一息つく暇もなく、二人はトンニムの追跡に乗り出すが成果なし。このあたりの展開の疾走感がたまらない。元々浅からぬ因縁のある二人だが、その過去の語られ方がめちゃくちゃ。まるで昭和の任侠映画のよう。というか時代背景的に昭和か。

 

二人のスペシャリストの対決は、それこそハリウッドでは撮り尽くされた印象があるが、そこに北朝鮮というファクターを混ぜるだけでサスペンスとミステリのレベルが一段上がる。トンニムとは誰か?パクとキムの捜査と虚々実々の駆け引きにぐいぐいと引き込まれる。本作が上手いのは、トンニム探しをゴールとするのではなく、そこから先に更なるクライマックスを持ってくるところ。冷酷非情な諜報員と情に厚い面を併せ持つ二人の男の極限の対決の結末には茫然自失。

 

韓国のみならずアメリカ、日本やタイをも破壊しつくす気か?と思わせる作品。と思いきや、撮影はすべて韓国内で完結したとのこと。国策で映画を作っている国は違いますなあ・・・

 

ネガティブ・サイド

全編を通じてまさにストーリーが疾走するが、説明不足の感も否めない。特に韓国近現代史の知識がある程度ないと、キム班長の苦悩の回想シーンの意味を理解できないだろう。当時の韓国の置かれていた政治的状況をもう少し上手く物語の展開の中で自然に説明できなかっただろうか(Jovian妻はここでつまずいていた)。

 

最終盤の怒涛の展開の中で、韓国の政府組織はどれだけ北朝鮮スパイに跳梁跋扈を許しているのか?というシーンがある。ここだけは、ちょっと北朝鮮の脅威を過大に描き過ぎだと感じた。

 

総評

こりゃまた血生臭い韓国映画。血の臭いだけではなく、男臭さもムンムンと漂ってくる。『 ビースト 』や『 ただ悪より救いたまえ 』といった、男二匹の対決をテーマにした作品が好きだという向きはチケット購入をためらってはならない。そうそう、中盤に思わぬ大スターが出演して、ケレンミたっぷりの演技を見せてくれる。これは嬉しい不意打ちである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

インミン

劇中で突如登場する大物俳優がこの言葉を何度も口にする。意味は「人民」である。「人民のため」などと為政者が口にする時は、だいたい嘘をついている時だと思っていい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ほつれる 』
『 まなみ100% 』
『 オクス駅お化け 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, イ・ジョンジェ, チョン・ウソン, 監督:イ・ジョンジェ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

Posted on 2023年9月11日 by cool-jupiter

あしたの少女 70点
2023年9月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・シウン ペ・ドゥナ
監督:チョン・ジュリ

簡易レビュー。

 

あらすじ

高校生のソヒ(キム・シウン)は大手ISPの下請けコールセンターで実習生として働き始める。ソヒはオペレーターとしてストレスフルな仕事を何とかこなしていた。しかし、厳しくも優しかった男性上司が会社の駐車場で自殺したことを知ったソヒは、徐々に精神的に摩耗していき・・・

 

ポジティブ・サイド

キム・シウンがいかにも韓国女子高生という気の強い役を見事に演じている。好きなダンスに真摯に打ち込む姿勢、友達との友情とその友情に徐々に入っていく亀裂、そして徐々に自分を失っていく様など、どれもリアリズムたっぷりに演じていた。こういう役者を抜擢して、妥協のない演出を施すあたりが韓国映画界らしい。邦画はいつになったら追いつけるのか。

 

実習生と聞けば、日本でも技能実習制度を思い起こさずにはいられない。ほっこりするエピソードが報じられることもあるが、過労死が疑われるケースや雇用側の暴力、被用者の逃亡など、ネガティブなニュースの方が圧倒的に多い気がする。それは隣国でも同じらしい。

 

後半はソヒの死を捜査する刑事オ・ユジンが主役となる。もっとも観ている側はソヒがどのように追い詰められていったのかをつぶさに見ているわけで、捜査で何の真実が明らかになるのかと思う。そこが本作の味噌で、学校や企業、役所、果ては家庭に至るまで無責任の構造が浸透していたことが明らかになる。これはショッキングだ。しかも、ユジンとソヒの意外な接点も明らかになり、刑事としてのユジンではなく一個人としてユジンも、ソヒの死に激しく揺さぶられることになる。

 

前半と後半の実質的な二部構成と、それぞれの主役である二人の女優の演技に圧倒される。そして物語そのものがもたらす苦みを忘れることは難しい。

 

ネガティブ・サイド

全体的にやや冗長な印象。ソヒのパートを70分、ユジンのパートを50分の合計120分にできなかっただろうか。

 

ソヒの父ちゃんがなんとなく『 焼肉ドラゴン 』のキム・サンホ的で、なんだかなあ・・・ もう少しちゃんと子どものことを見ようぜ、と思わされた。

 

ソヒの親友、ボーイフレンド、別の男の先輩との関係をもう少し丹念に描いてくれていれば、ソヒが特殊な境遇の女の子ではなく、どこにでもいる普通の高校生であるという事実がもっと強調されたと思われる。

 

総評

重厚な映画。『 トガニ 幼き瞳の告発 』のような後味の悪さというか、社会全般への怒りと無力感の両方が強く感じられる。ヘル・コリアなどと揶揄されることが多い韓国だが、日本社会も似たようなもの。韓国映画界は社会の暗部をさらけ出す映画を製作することを恐れないが、日本はどうか。『 福田村事件 』のような気骨のある作品を今後生み出せるだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。韓国映画やドラマではよく聞こえてくる。ソンベニム=先輩様という使われ方もあるらしい。「先輩」という概念はあっても、それが実際に言葉として存在するのは日本と韓国ぐらいではないだろうか。中国映画もある程度渉猟して中国語ではどうなのか、いつか調べてみたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 兎たちの暴走 』
『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・シウン, サスペンス, ヒューマンドラマ, ペ・ドゥナ, 監督:チョン・ジュリ, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 あしたの少女 』 -社会を覆う無責任の構造-

『 神回 』 -男の習性を捉えた逸品-

Posted on 2023年9月1日 by cool-jupiter

神回 75点
2023年8月27日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:青木柚 坂ノ上茜
監督:中村貴一朗

 

『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』、『 リバー、流れないでよ 』に続く邦画のタイムループもの。本作もなかなかの秀作だった。

あらすじ

沖芝樹(青木柚)と加藤恵那(坂ノ上茜)は夏休みの教室で文化祭の出し物についての打ち合わせを始める。しかし樹は突如意識を失ってしまう。気が付くと目の前には恵那の姿。そして彼女は打ち合わせを始める前と寸分たがわぬ言動を見せる。樹はまたも意識を失い、気が付くと時が打ち合わせ直前に戻っていた。このタイムループを抜け出すために樹はあらゆる手段を講じるが・・・

以下、多少のネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

 

鑑賞直後、Jovian妻は「何これ、キモイ」という端的にも程がある感想を述べてくれた。その通り、本作はキモイ。グロ描写やゴア描写がドギツイわけではない(流血や暴力シーンはほんのちょっとある)。男の子側にも女の子側に性的な描写があるが、はっきり映ったり、あるいは思いっきり触っていたりするわけではないので、そこは安心してほしい。

ここでいうキモさとはずばり、男のとある習性のこと。

 

『 アンダー・ユア・ベッド 』

『 レミニセンス 』

 

このあたりの作品に

 

世にも奇妙な物語の『 バーチャル・リアリティ 』

 

のプロットを足して、それを青春映画っぽく仕立て上げたのが本作だ。というとずいぶんと安っぽく聞こえてしまうが、実際はさにあらず。まず本作は青春映画ではない。ジャンル分けするのは難しいが、敢えて言えばファンタジーだろうか。

 

主役の樹は『 よだかの片想い 』でアイコのゼミ仲間や『 終末の探偵 』のボランティア少年などで印象的だった青木柚。まったく特徴のない顔つきながら、出演作では必ず一定以上のインパクトを残している。故障したテレビを買い替えたら、彼のその他の出演作もチェックしてみたい。

 

ヒロインの恵那を演じた坂ノ上茜は『 きみの瞳が問いかけている 』の明香里の店のスタッフを演じていた。登場時間は多くなかったが、パッと見た瞬間に「あ、見たことある」と感じさせるぐらいには印象に残っていた。

 

この若い二人の織り成す無限にも思えるタイムループものが、何故に青春映画ではないのか。それは、女性が率直にキモイと感じてしまう男の習性によるものだ。ある程度年齢のいった男性(10代や20代はダメ、できれば不惑過ぎ)なら、分かるはず。『 僕の好きな女の子 』を楽しめた、あるいは某魔法使いシリーズの某キャラに激しく共感できるようならさらに良し。

ネガティブ・サイド

一番最初のショットは不要。学校の校門をくぐる描写すら不要だったかも。

 

最後、何故に教室は暗くなった?

 

謎解きパートというか、ネタ晴らしパートはもっと短くていい。全体を75分から80分でまとめられれば、それこそ神映画になれたかもしれない。

総評

男のアホな習性だけで一つの物語として成立させた力業はたいしたもの。男には忘れられない夜や忘れられない瞬間、忘れられない匂いや感触というものがある。Jovian妻を含め、女性全般はそれをキモイと感じるわけだが、それが男の性(さが)なのだからしゃーない。むしろ男の内面のダークサイドや鬱ルートを真っ向から描写し、ハッピーエンドを潔く否定した中村貴一朗監督の作劇術に満腔の敬意を表したいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You with me?

劇中で何度も何度も聞こえてくる「聞いてる?」の私訳。会話ではこうした時、Are you listening to me? とは普通は言わずに、Are you with me? または You with me? と言う。『 トップガン マーヴェリック 』でも、出撃前に一瞬上の空になっていたマーヴェリックに向かってホンドーが “Hey, you with me?” と言っていた。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 福田村事件 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』
『 MEG ザ・モンスターズ2 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ファンタジー, ラブロマンス, 坂ノ上茜, 日本, 監督:中村貴一朗, 配給:東映ビデオ, 青木柚Leave a Comment on 『 神回 』 -男の習性を捉えた逸品-

『 時間はどこで生まれるのか 』 -時間論の白眉-

Posted on 2023年8月16日 by cool-jupiter

時間はどこで生まれるのか 75点
2023年7月に読了
著者:橋元淳一郎
発行元:集英社

今春、大阪公立大学でアカデミック・ライティング講座を担当したが、受講生の一人が哲学の修士で、マクタガートの時間論専攻だった。彼に『 ヘーゲルの実践哲学構想: 精神の生成と自律の実現 』を勧めたところ、「先生も何か時間論を読んでください」と言われたので本作を購入。数か月、積ん読だったが、先月読了。

 

あらすじ

物理学者が古今東西の哲学者の時間論も交えて、時間が生まれるメカニズムを解き明かす。

ポジティブ・サイド

非常に読みやすい。もちろん、相対性理論や量子論についての初歩的な知識があるにこしたことはないが、それでも少しずつ読み進めるか、あるいは何度か通読すれば著者の言わんとすることは理解できるはず。

 

著者は、我々の日常感覚から議論を始め、マクタガートの時間論をしっかりと説明した後、相対論や量子論について、詳しすぎず、かと言って簡潔過ぎない説明をしてくれる。また、物理的な事象と生命現象を厳密に区別しつつ、両者を見事に融合させていく。付録も非常に充実しており、高校生以上の知識があればそれなりに理解できるはず。また大学などで西洋および東洋の哲学を学んだことがあれば、著者の碩学ぶりに舌を巻くはず。

 

Jovianは宗教学専攻で、哲学もそれなりに学んでいたが、哲学的な議論や論考が時代ごとの最先端の科学的な知見によって影響を受けていたという著者の指摘は非常に鋭いと感じた。特に本書の最終的な結論は、師の並木浩一とその弟子にして小説家・奥泉光の対談で目にした「主体性とは自由であることではなく、自由であろうとすること」という主張に非常に似通ったものになっていることに驚かされた。いくら古今東西の哲学書を渉猟しているとはいえ、まさか並木浩一まで読んでいるとは思えないからだ。

NHKの番組などでも「時間は存在しない」という科学者の主張が徐々に目につき始めている。ならば我々が生きるこの時空とは何なのか?なぜ我々は過去から未来へと生きて、その逆には生きられないのか?こうした疑問は誰もが抱くものと思う。本書はそうした問いに堂々と真正面から答えていく。非常に刺激的かつ野心的な論考である。

ネガティブ・サイド

著者は多くの哲学者の哲学と物理学の知見を比較対照しているが、なぜそこにアルトゥール・ショーペンハウアーの名前がないのだろうか。彼の主張する『 意志と表象としての世界 』は、C系列の時間に生きる我々の生命の在り方と非常に近しいものがあるはずだが。

同じく、アンリ・ベルクソンに触れていながらジャン・ポール・サルトルの哲学に触れていない点も気になる。本書の読者の大半(99%日本人のはず)は、なるほど、我々が生きていることの意義は分かったと感じつつ、「では、どのように生きればよいのか?」という疑問を抱くに違いない。付録でサルトルのアンガージュマンを軽く紹介しておけば良かったのではないだろうか。

これは編集や校正のミスだろうが、11ページと168ページで、仮説が「仮設」になってしまっている。次の版で修正されるだろうか。

総評

わずか660円+税でこれほどの知的興奮を味わえるとは。Jovianは小説ばかり読む人間だが、アカデミアに近い位置で仕事をするようになった今、もっと娯楽本以外の本を読まなければならないと感じるようになった。本書は、物理学の碩儒が市井の人々向けにものした時間論の入門書としては最適だろう。2006年初版とまあまあ古いが、本書の価値は物理学と哲学の対話にあるのである。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

thought experiment

思考実験の意。物理学に限らず、学問においては非常に重要。use a thought experiment や conduct thought experiments のような形で使うことが多い。理系の文献をよく読む人なら知っておいて損はない表現。

次に劇場鑑賞したい映画

『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』

 

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Posted in 国内, 書籍Tagged 2000年代, B Rank, 学術書, 日本, 発行元:集英社, 著者:橋元淳一郎Leave a Comment on 『 時間はどこで生まれるのか 』 -時間論の白眉-

『 イノセンツ 』 -超能力子どもジャンルの佳作-

Posted on 2023年8月6日 by cool-jupiter

イノセンツ 70点
2023年7月30日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム
監督:エスキル・フォクト

同僚の突然死やら自分自身のMRSA感染などもあり、簡易レビュー。

 

あらすじ

イーダ(ラーケル・レノーラ・フレットゥム)は両親の仕事の都合で、自閉症の姉アナと共に団地に引っ越しする。イーダはそこでベンジャミンという男の子と知り合う。彼は不思議な力の持ち主で、イーダはその能力に魅了されてしまう。一方、姉のアナはアイシャという女の子と不思議な形で心を通わせ始めていて・・・

ポジティブ・サイド

子どもの持つ純粋さと、それゆえの残酷さがよく描かれている。猫を殺すシーンは残酷極まりないが、大人だって堂々と尊厳死を議論している。子どもは大人の写し鏡で、逆もまた然り。子役たちの演技はどれも素晴らしい。子どもならではの無邪気さと、子どもならでは邪悪さが、表情にも仕草、行動にもさりげなく表されている。

 

友情と、その亀裂、そして最後の超能力対決までサスペンスが途切れることがない。特にラストの対決では、自閉症とコミュニケーションに対して大きな示唆を与えているように感じられてならなかった。

 

ネガティブ・サイド

団地というロケーションをもっと際立たせられなかったか。移民の子どもであることや顔の白斑など、差別・疎外される要素があり、実際に差別・疎外されるシーンがあれば、4人が奇妙な友情をはぐくんでいく展開にもっと説得力が出たものと思う。

 

総評

監督・脚本が『 テルマ 』の脚本を書いたエスキル・フォクト。同作と同じく人間の倫理観が大金テーマになっている。ハリウッドは超能力=国家の危機的な大味な展開に持っていってしまうが、子どもには子どもの世界があるのだということを本作は静かに、それでいて力強くアピールしている。大友克洋の『 童夢 』にインスパイアされているらしいが、そちらは未読。今度読んでみようかな。

 

Jovian先生のワンポイントノルウェー語レッスン

natt

ノルウェー語で night の意。劇中で子どもたちが夜寝る前に母親に Natto というシーンが複数回あるので、すぐに分かった。英語でも Good night と言わずに Night の一言だけで済ますことが多いが、ノルウェー語も同様のようである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 658km、陽子の旅 』
『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, スウェーデン, スリラー, デンマーク, ノルウェー, フィンランド, ラーケル・レノーラ・フレットゥム, 監督:エスキル・フォクト, 配給会社:ロングライドLeave a Comment on 『 イノセンツ 』 -超能力子どもジャンルの佳作-

『 ミッション:インポッシブル 』 -現代的スパイ活劇-

Posted on 2023年7月30日 by cool-jupiter

ミッション:インポッシブル 70点
2023年6月8日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:トム・クルーズ
監督:ブライアン・デ・パルマ

最新作公開前に予習。簡易レビュー。(アップし忘れていた・・・)

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あらすじ

諜報機関IMFのミッション遂行中に、仲間が次々に死亡。唯一生き残ったイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、真相を突き止めるために動き出すが・・・

 

ポジティブ・サイド

スパイ映画の王道。誰が敵で誰が味方か分からない。そんな緊張感が全編を覆っている。

 

トム・クルーズのアクションもデ・パルマ・タッチのスローモーションで映える・・・ではなくて冴える。

 

宙吊りによる潜入と精巧なマスクによる変装という、シリーズの特徴がはっきりと決定づけられた記念碑的な作品。Jovianの父親などは公開当時、「テレビと違う」とやや文句を言っていたが、テレビはテレビ。映画は映画。本作こそが新しいフォーマットなのだ。

 

ネガティブ・サイド

ルーサーは良いキャラなのに、ただのハッカー扱いだけでやや不憫。当時も今も腕っこきのハッカーは希少。チームメンバーを失ってしまったハントが新たな仲間を求める中で、唯一信用できるのがルーサー。このキャラをもう少し深掘りできなかったか。

 

総評

文句なしに面白いアクション作品。単なるドンパチと格闘だけではなく、スパイとしての潜入ミッションが否が応でも緊張感と緊迫感を盛り上げる。『 トップガン 』のマーベリックに勝るとも劣らない、トム・クルーズの当たり役の誕生作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

disavow

拒否する、の意味。有名な「当局は一切関知しない」は The Secretary will disavow all of knowledge of you. である。英検1級を目指すのでなければ、普通は触れることのない語だろう。The company disavowed any responsibility for the defective products. =その会社は欠陥商品に対する一切の責任を認めなかった、のような感じでたまに使われる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 渇水 』
『 水は海に向かって流れる 』

 

 

Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, 監督:ブライアン・デ・パルマ, 配給会社:UIPLeave a Comment on 『 ミッション:インポッシブル 』 -現代的スパイ活劇-

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