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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 2020年代

『 窓辺にて 』 -愛を巡っての珠玉の対話劇-

Posted on 2022年11月20日 by cool-jupiter

窓辺にて 75点
2022年11月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ 若葉竜也
監督:今泉力哉

 

『 愛がなんだ 』の今泉力哉がオリジナル脚本で映画化。本作でも愛の不条理さを独特の感性で描き出すことに成功した。

あらすじ

フリーで物書きをしている市川茂巳(稲垣吾郎)は、小説編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が担当作家と浮気していることを知るが、そのこと自体にショックを覚えなかった自分自身にショックを受ける。一方で、茂巳は新進気鋭の女子高生作家・久保留亜(玉城ティナ)へのインタビューをきっかけに、彼女の作品のキャラクターのモデルとなった人物と合うことになり・・・

ポジティブ・サイド

なんだかんだで稲垣吾郎あっての映画だなと感じた。と、ちょっと待て。よくよく思い返してみると、Jovianが稲垣吾郎をスクリーンで観るのは、なんと『 催眠 』以来ではないか。4中年の危機とは無縁そうに見えるが、その内面を大きくかき乱された、しかしそのことを決して表面には出さない大人を好演したと言える。

 

本作のテーマは愛の形。それは今泉力哉監督が一貫して追求しているテーマである。妻が浮気をしている。そのことに腹を立てない夫は、妻を愛していると言えるのか。茂巳がサッカー選手である友人・有坂とその妻にそのことを相談するが、その有坂自身も芸能人女性と実は浮気をしている。妻もそのことに気付いている。妻は夫に腹を立てつつも、最終的には許してしまう。なぜなら夫を愛しているから。観ている我々からすれば「なんだ、この茂巳というキャラは。変な奴だなあ」と感じるが、それがいつの間にやら「なんだ、有坂の妻は。変な奴だなあ」に変わっていく。そう。愛とは元々変なものなのだ。愛しているから許せないこともあるし、愛しているからこそ許してしまうこともある。本作はそのことをドラマチックな展開もなく、淡々と見せていく。

 

茂巳は茂巳で、女子高生作家の久保留亜に大いに振り回される。小説のキャラクターのモデルに会わせてもらう中で、ボーイフレンドを紹介され、なぜか二人で軽くバイクのツーリングに出ることに。そうなんだよなあ。人と人とが触れ合い、分かり合うのに、毎回毎回たいそうな理屈が必要なわけでもない。事実、二人は後に思わぬ形で触れ合うことになる。その光景がまたとても微笑ましい。

 

茂巳は誰かに何かを言われるたびに「え?」と素っ頓狂な返事をするばかりで、まったく主体性のある人物には見えない。にもかかわらず、物語は静かに、しかし確実に彼を軸にして進んでいく。茂巳が誰に対しても真摯に耳を傾け、真摯に受け答えする姿勢によって、相手は自分なりに答えを見つけていく。

 

本作は一つひとつの対話の場面が非常に長く、しかもその多くがロングのワンカット。まさに演出する監督と演じる役者のせめぎ合いという感じだが、そのどれもが実に自然に映る。留亜と茂巳がホテルのスイートの一室で語らう場面でぶどうの実がひとつ房から落ちてしまい、それを茂巳が自然に拾い上げる。これは演出なのか、それともアドリブなのか。色々なキャラクターと茂巳がカフェや公園などで語り合うばかりの2時間半の映画が長く感じないというのは、対話の一つひとつがそれだけ真に迫っているからだ。

 

本作は物語論についても非常に含蓄のある示唆を与えてくれる。Jovianの兄弟子(と勝手に思っている)奥泉光は「論文を書くと、自分の中で知識が体系化されていく。小説を書くと、自分の中が空っぽになる」と『 虚構まみれ 』で書いていた。本作でもこのことが強く示唆されていて、今泉力哉は小説家としても相当な書き手であることを窺わせる。書くということは、思いや考えを固定してしまうことであり、それが小説、就中、私小説であれば美しい思い出としてキープしておきたい自身の物語を失ってしまうことになる。このあたりの物書きの機微を茂巳から読み取れた。稲垣吾郎と今泉力哉、なかなかのケミストリーだ。

 

オープニングとエンディングで茂巳が見せる、ある光のアクセサリがまぶしい。愛はそこにあったが、今はない。けれど、愛は確かにそこに存在した。そして、その瞬間は光り輝いていたのだ。手放してこそ実感できる愛、それもまた一つの愛の形ではないか。

 

ネガティブ・サイド

城定秀夫監督の『 愛なのに 』ぐらいのベッドシーンがあっても良かったのでは?また、玉城ティナのシャワーシーンも曇りガラスの向こうにうっすら見える程度に撮影できなかったのかな?ドロドロの不倫と中年とは思えない純朴さの対比が、稲垣吾郎演じる茂巳というキャラをより引き立たせるように思うのだが。

 

DINKSにしても、えらい良い家に住んでいるなと感じた。ロケーション協力に狛江と見えたが、あのエリアでも家賃あるいは月々のローンはかなりのものだろう。二馬力とはいえ、茂巳が一切家で仕事をしているシーンがないのは、少々現実離れしているように見えた。

 

総評

観終わってすぐに思い浮かんだのは B’z の LOVE & CHAIN の歌詞を思い出した。初期からのB’zファンなら

 

愛するというのは信じるということであっても

相手のすべてに寛容であるということではない

束縛された時に感じる愛もある

 

という間奏中の語りを知っているはず。愛というのは難しい。束縛された時に感じる愛もあれば、手放したことで感じる愛もあるはず。シニアのカップルで鑑賞していただきたい逸品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

perfect

日本語にもなっている語。カナダではウェイターが頻繁に使っていた。

 

A:I’ll have this breakfast set.
B:Perfect!

 

A:Two glasses of beer, please.
B:Two glasses of beer? Perfect!

 

など。Good と相槌を打つ際に、時々 “Perfect!” と言ってみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ある男 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ラブロマンス, 中村ゆり, 日本, 玉城ティナ, 監督:今泉力哉, 稲垣吾郎, 若葉竜也, 配給会社:東京テアトルLeave a Comment on 『 窓辺にて 』 -愛を巡っての珠玉の対話劇-

『 すずめの戸締り 』 -もっと尖った作品を-

Posted on 2022年11月20日 by cool-jupiter

すずめの戸締り 45点
2022年11月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:原菜乃華 松村北斗
監督:新海誠

 

仕事帰りについつい行ってしまった。映像美には文字通りに息をのんだが、Jovianが抱く新海誠のイメージがどんどん薄まっていく気がした。

あらすじ

女子高生のすずめ(原菜乃華)は、廃墟を探す謎の青年・草太(松村北斗)と出会う。打ち捨てられた温泉街で、偶然にも扉を開けてしまったすずめは、常世からの災厄を呼び込んでしまう。草太と共になんとか鍵を閉めたすずめだが、今度は草太が謎の猫によって椅子に変えられてしまう。すずめと草太は、謎の猫を追いかけて・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

美麗な映像は日本アニメの中でも間違いなくトップ。トップクラスではなくトップ、それは間違いない。冒頭で映し出される光彩陸離な常世の情景には息を呑んだ。宮崎県の山や海の美しさも素晴らしかった。

 

本作の設定はかなりユニーク。日本列島の地震の発生源を常世に住む「ミミズ」に求めるというのは面白い。C・ダーウィン最後の研究対象であり、『 DUNE デューン 砂の惑星 』でもフィーチャーされたミミズが常世から現世に抜け出てきて倒れることで地震が発生するというメカニズムは、風水的でありながら日本的でもある。そのミミズが出てくる後ろ戸を閉じる「閉じ師」という存在も興味深い。風水師+陰陽師のようなイメージで捉えるとちょうど良いのだろう。

 

草太とすずめを普通に旅させてはつまらないと、草太を椅子に変えてしまうというのも衝撃的。逃げる猫とそれを追う椅子というのは、今後10年は出てこないシュールな画だったと思う。椅子であることに意味もあった。椅子だからこそ物も置けるし、誰かが座れる。その上に立つこともできる。椅子にされてしまった草太が、実は要石になってしまうことで、日本列島を支え、さらには日本に住まうもの全てを支えているというアナロジーの壮大さには唸ってしまった。トレイラーを見た時点で「新海誠は狂ったんかな?」と感じてしまったが、謹んで撤回させていただく。

 

日本を震災から救うということと、すずめ本人のトラウマからの解放が、草太と共に旅をすることとしっかりリンクしていて、これはこれで令和のセカイ系という印象を受けた。いなくなってしまった人々が残した想いを掬い取るというのは、ある意味で物語にしか成し得ないこと。そのように観る側の想像力を刺激しようと試みるところに本作の最大の価値があると言えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

なんというか、作品を重ねていくごとに新海誠の新海誠らしさが少しずつ失われていっているように感じる。ミュージックビデオであることは本作でも変わりがないが、その点でも退行しているかな。『 ルージュの伝言 』やら『 男と女のラブゲーム 』、『 けんかをやめて 』など、劇中の芹澤の言葉を使えば懐メロになるが、これも中年世代へのマーケティングに感じられてしまう。ひねくれすぎか?いや、前二作は映像と楽曲をがっつり戦わせていたが、今作ではストーリーが音楽に従属させられていると感じた。

 

新海誠の一番の特徴というか特質は『 秒速5センチメートル 』で見せた、まさに言葉そのままの意味の中二病的な執着だったはずではないか。『 君の名は。 』、『 天気の子 』ではオタクに媚びるセカイ系文学的な世界観は残しつつ、若年層への露骨なアピールのためか、よくできたミュージックビデオになっていた。それでも、そこには社会的なメッセージの類は非常に薄かったので、まだ新海誠という作家個人の色が出ていた。本作が東日本大震災や人口減少、それに伴う過疎化をテーマに盛り込んだことは否定しないが、明らかに作家性は薄まったと感じた。新海誠はヒットメーカーよりも、異端の作家でいてほしかった。

 

無能な大臣揃いで震災復興やコロナ対策ができずに右往左往したり朝令暮改したり、さらに公文書を黒塗りにして恥じることのない日本政府を様々に揶揄している作品とも受け取れるが、新海誠はセカイ系の系譜の作家であって、そういう社会批判からある意味で最も遠い人のはず。チケット購入特典についてくる冊子をザーッと読んだ限りでは、新海本人が社会に訴えたいことがある様子。この分だと次回作もヒットするのだろうが、どんどん普通のエンタメ作品に近づいていきそう。もっと尖った作品を見せてほしいのだが・・・

 

総評

映像や音楽の素晴らしさそのものにケチはつけられない。しかし、宮崎駿や庵野秀明の作品の影響が垣間見えるのはオマージュなのか、チャレンジなのか、それともマーケティングなのか。次回作に対しては、個人的には不安を覚えてしまう。本作を面白いと感じたアニメファンは『 風の電話 』という実写映画を観るべし。震災によって傷つけられた少女の癒やしと祈りのロードムービーという点では、本作よりもはるかに面白いはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

speak

劇中で2度ほど「猫がしゃべった!?」みたいなシーンがあるが、ここでの「しゃべる」は talk ではなく speak を使う。talk と speak の最大の違いの一つが、talk は話題について話す、 speak は言語を話すということ。a Germen speaker というのはドイツ語話者で、a German talker だとよくしゃべるドイツ人という感じ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ある男 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, アドベンチャー, アニメ, ファンタジー, 原菜乃華, 日本, 松村北斗, 監督:新海誠, 配給会社:東宝『 すずめの戸締り 』 -もっと尖った作品を- への2件のコメント

『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』 -アイデアの勝利-

Posted on 2022年11月15日 by cool-jupiter

MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 75点
2022年11月15日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:円井わん マキタスポーツ
監督:竹林亮

どこのラノベだと思わせるタイトルだが、これがべらぼうに面白かった。『 カメラを止めるな! 』に迫る低予算のアイデア一発勝負映画の秀作だ。

 

あらすじ

小さな広告代理店に勤める吉川(円井わん)は、大手広告代理店への転職を目指し、職場に泊まり込む毎日を過ごしていた。ある日、二人の後輩から、自分たちが同じ1週間を何度も繰り返していることを知らされる。吉川たちはこのタイムループを原因は永久部長が身に着けているブレスレットにあると睨み、なんとかそれを破壊するための算段を練ろうとするが・・・

ポジティブ・サイド

タイムループものは小説でも映画でも数多くの秀作が生産されてきた。実際に劇中でも『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』や、『 ハッピー・デス・デイ 』、『 恋はデジャ・ブ 』などが言及される。本作も秀作である。

 

まず、タイムループの現場を会社にしたのがユニーク。その会社もかなりハードな様子。ネタなのか事実なのか分からないが、ブラック企業勤務の人が「とうとう iPhone が会社を自宅だと認識し始めた」みたいなことを言うが、まさにそんな会社。これだけで同じサラリーマンとして吉川やその他の面々に大いに感情移入してしまう。

 

本作でもう一つユニークなのが、タイムループに巻き込まれた面々の大半がタイムループに巻き込まれていることに気づいていないこと。そして、気付いた者たちが気付いていない者たちに気付きを促す流れが笑えるのだ。特に本丸である永久部長にタイムループに気付いてもらうために上申制度をそのまま使うところに笑ってしまう。どこまでサラリーマンやねん。異常事態にあっても社畜根性が抜けない。そんな彼ら彼女らの姿を笑いながら、冷や汗をかいている人も多いのではないだろうか。日本人の多くは地震や台風でも出社したがるからなあ・・・

 

閑話休題。本作はコメディでありながら、上質なヒューマンドラマにもなっている。小さな広告代理店で仕事をさばきながら、大きな広告代理店への転職が内定している吉川は、同僚や恋人への接し方に少々問題あり。しかし、そんな彼女がタイムループ脱出のために、部長の抱える問題の解決のために、一致団結して協力していく中で人間として成長していく。

 

毎日が同じ仕事の繰り返しのように感じられる人は多いはず。Jovian自身もそうだった。しかし、そういった閉塞的な状況をどう捉え、どう行動するのか。本作はそこに大きな示唆を与えてくれるという意味で、単なるコメディ以上の作品に仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

開始10分で「ああ、この人が実はキーパーソンやね」とすぐに気づいてしまう。ここをもう少しうまくカバーするような仕組みがあれば、中盤の驚き展開をもっと強烈にできたはず。

 

ずっとほったらかしにしてしまっていた吉川のボーイフレンドは、結局どうなったのだろう。そこも少しで良いのでフォローしてほしかった。

 

総評

サラリーマン的な世界観を提示して、それを笑わせながら、いつの間にやらそのサラリーマン的な世界観に感動させられた。決して万人受けする作品ではないだろうが、刺さる人には刺さること間違いなし。低予算であっても脚本が良ければ勝負できる。有名俳優が出演していなくても、しっかりとした演出ができればキャラにもストーリーにも説得力が生まれる。こうした王道以外の作品が邦画の世界でもっと生み出されてほしい。すまじきものは宮仕えと言うが、サラリーマンは本作を観て、明日への勇気をもらおうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make it up to someone

誰かに対して埋め合わせをする、の意味。吉川は仕事に忙殺されて、ボーイフレンドを放置してしまい、それに対して電話で「埋め合わせするから」と言う。英語字幕なら、間違いなく I’ll make it up to you. である。この表現を使うということは何らかの穴を開けてしまっているわけで、積極的に使うべきフレーズではないだろう。ただ、人間関係の中でこう言わざるを得ない場面はきっとある。知っておいて損はないはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ドント・ウォーリー・ダーリン 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, コメディ, マキタスポーツ, 円井わん, 日本, 監督:竹林亮, 配給会社:パルコLeave a Comment on 『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』 -アイデアの勝利-

『 ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー 』 -C・ボーズマンの穴は大きかった-

Posted on 2022年11月15日 by cool-jupiter

ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー 50点
2022年11月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:レティーシャ・ライト ルピタ・ニョンゴ テノッチ・ウエルタ
監督:ライアン・クーグラー

チャドウィック・ボーズマンの病死により、ブラックパンサーという強キャラもMCUから強制退場。後を継ぐのが誰かは誰でもわかる。問題はその継承の必然性だが、そこの部分がやはり弱かった。

 

あらすじ

国王ティ・チャラの不慮の死により、ワカンダ王国は危機に立たされた。ティ・チャラの母ラモンダが玉座に就くも、アメリカやフランスなどの大国はワカンダにヴィブラニウムの供出を迫ってくる。拒否するラモンダだが、ある海域の海底でヴィブラニウムらしき鉱物が発見された。同時にワカンダは謎の海底人ネイモア(テノッチ・ウエルタ)に攻撃される。ワカンダはヴィブラニウム探知機の発明者の捜索とネイモア撃退の両方に取り組むが・・・

ポジティブ・サイド

MCU映画のお決まりのオープニングが無音。映像の全てがチャドウィック・ボーズマンだった。スタン・リーが亡くなった時にも、こんなことはなかったように記憶している。キャラクターと役者が切り離せない例はいくつかあるが、チャドウィック・ボーズマンはブラックパンサーのイメージにぴったりだったなとあらためて実感した。

 

ワカンダという国家が絶対的な王を失って、それでも国として存続していくために新たなリーダーシップが求められる。新王に君臨するラモンダの気迫は素晴らしい。その一方で、息子を失った母としての悲嘆、さらにその悲嘆を乗り越える術をシュリに授けようとする姿勢も見せるなど、キャラクターの描き方が上手い。王ではなく兄を失ったと認識しているシュリとは対照的で、このコントラストが中盤の大事件を大いに盛り上げ、シュリの、ある意味で非常に強制的な成長物語につながっていく。

 

タロカンおよびそれを率いるネイモアを単なる悪ではなく、自分たちなりの正義を信奉する集団として描くことで、思いがけず現実世界の戦争と重なるものがあった。資源があれば分捕りに行くというアメリカ的な発想(コロンブスの時代のヨーロッパ的と言うべきか?)が戦争を生み出すわけで、アメリカがアメリカ自身を悪と描き始めたところに、能天気なMCU世界も少しは陰影を帯びてきた感じがして、なかなかよろしい。タロカンとワカンダが次なるフェーズで同盟を組むのか、それとも再び敵対するのか。一応、続きに関心の持てる作りにはなっている。

ネガティブ・サイド

うーむ、ところどころは面白いが、観終わって感じるのはお涙頂戴の長大なCMになってしまっているということ。CMはいいから、全編を通じてブラックパンサーへの哀悼の意を表すこと、そしてシュリの成長を描くこと。これだけに注力して、1時間45分にまとめるべきだった。3時間弱は長すぎる。

 

それを言っちゃあお終いよだが、ネイモアもタロカン帝国も不要。アメリカ(別にフランスでもいい)がヴィブラニウムを狙って、カリスマ的な王の不在を狙ってワカンダを急襲。このプロットで良かったのでは?迫りくるUSモブ兵を迎え撃つワカンダ軍。その先頭を突っ走っていくという、『 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 』でのキャプテン・アメリカとブラックパンサーの一番の見せ場を再現すれば、個人的にはそれだけで新ブラックパンサーとして単純に認められたのだが。

 

タロカン帝国も、「それはもう『 アクアマン 』でやっただろ?」という感じ。これまではDCEUがMCUを追いかけていたのに、まさかここでMCUがDCEUの真似をするとは。

 

エンドクレジット中の映像はなあ・・・。これには絶対賛否両論があるはず。Jovianは否である。これだと新たなキルモンガーを生み出すだけでは?

 

総評

『 クリード チャンプを継ぐ男 』で見事に伝説の継承を成功裏に成し遂げたR・クーグラー監督だったが、今作にその切れ味はなし。結局のところサノスという絶対的なボスキャラ不在のMCUの現フェーズは、一作一作が次作への壮大なCMになっている。『 ブラック・ウィドウ 』然り、『 ソー ラブ&サンダー 』然り。早く次のフェーズの展望を見せてくれないと、ハードコアなMCUファンしかついてこなくなると思うよ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

blend in

ブレンドは日本語になっている語。それに in をつけることで「(周囲に)溶け込む」とうい意味になる。劇中では、大学キャンパスに入ろうとするナキアをシュリが制する。その時の台詞が ”I can blend in as a student.” =「私なら学生として溶け込める」である。英検準1級以上を目指すなら知っておきたい。確か『 アウトレイジ 』で加瀬亮も、黒人大使に向かって、”It’s dark. You’ll blend right in.” =「暗いから、誰もお前に気付かねえよ」と言うシーンがあったかな。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ドント・ウォーリー・ダーリン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アメリカ, テノッチ・ウエルタ, ルピタ・ニョンゴ, レティーシャ・ライト, 監督:ライアン・クーグラー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー 』 -C・ボーズマンの穴は大きかった-

『 トップガン マーヴェリック 』 -マサラ上映-

Posted on 2022年11月13日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点 
2022年11月12日 塚口サンサン劇場にて鑑賞 
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー ヴァル・キルマー 
監督:ジョセフ・コジンスキー

 

劇場鑑賞7回目。マサラ上映への参加は実は初めて。『 バーフバリ 王の凱旋 』のマサラ上映を神戸国際松竹で鑑賞しようとするもタイミングが合わなかった。ボリウッド映画以外でもマサラ上映はありだなと感じた。

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

ポジティブ・サイド

入り口で「マサラ上映ですけど、大丈夫ですか?」の問いに然りと回答。するとクラッカーを2つ渡される。なるほど、良きタイミングで鳴らせというわけか。劇場内はほぼ10割の入り。初対面のおじさんから「これ、使ってください」と紙吹雪の束を渡される。前後左右にサイリウム持ちもチラホラ。異様な熱気である。

 

マサラ上映前の劇場スタッフのコスプレとインストラクションが素晴らしかった。どこまで本当か分からないが、『 トップガン マーヴェリック 』のマサラ上映は世界でも塚口サンサン劇場だけとのことだった。スクリーン上の “Don’t think, just do. It’s today.” の文言にテンションが上がる。

 

オープニングの『 ミッション:インポッシブル 』の最新作のトレイラーの時点で、紙吹雪が舞い、クラッカーがパンパンと鳴らされる。特にあのテーマ曲に合わせてポン、ポン、ポンポン、ポン、ポン、ポンポンとクラッカー鳴らしていた集団はマサラ上映のプロ参加者たちか。

 

”トップガン・アンセム” からの “Danger Zone” で劇場のテンションは最高潮。紙吹雪も上がる上がる、クラッカーも発射されまくり。今回の参加者の大半は、おそらく劇場鑑賞5回以上、または配信もしくは円盤で本作を相当回数観ている人たちだろう。機関砲射撃やミサイル発射、その他の印象的なシーンでドンピシャでクラッカーが鳴らされる。いったい何発用意してきたのだろうか。

 

思いがけない副産物としてMX4D鑑賞の時以上に火薬の匂いが感じ取れた点が挙げられる。ジェットがアフターバーナーに点火した時、フレアをばらまく時、爆弾投下した時などに漏れなくクラッカーが鳴り響き、むせかえる程の火薬の匂いが臨場感をいや増すのを感じた。

 

最近、YouTubeでずっと「Fighter Pilots React to TOP GUN MAVERICK」という動画シリーズを視聴していて、映画のどこが現実に即していて、どこが現実離れしている、あるいは完全なフィクションなのか、かなり細部まで study していた。そのことで鑑賞時の楽しみが薄れるかと懸念していたが、それは杞憂だった。本作は何回観ても面白いし、軍人さんのツッコミ内容を知っても尚面白い。またインド映画以外でもマサラ上映と相性の良い作品があることを映画ファンに知らしらめたというのは素晴らしい。あらためて今年のベストであると確信した。

 

ネガティブ・サイド

あまりにもクラッカーがうるさいのが幸いして、台詞を聴くのではなく、字幕を読むことに集中できた。そのうえであらためて感じたのが、戸田奈津子御大の英訳のまずさ。Talk to me, dad. や He called you a man, Phoenix. などの字幕は酷い。これは作品の問題ではないので減点はしない。

 

本番ミッションで渓谷内に橋があるが、事前の調査で分かっておらず、現場でとっさに判断してかいくぐったようだった。これは海軍情報部の重大な落ち度、というよりも脚本上の重大な欠点だろう。

 

総評

マサラ上映は後片付けがなかなか大変だが、上映終了後は観客に一体感が生まれているので、一致団結して掃除も順調に進んだ。記念写真も良い思い出。SNSにアップ不可ということは、多分ブログにもアップ不可だろうと解釈した。もしも本上映の参加者がいたら、ほとんど全員が空軍式の敬礼をしている中、数少ない海軍式の敬礼をしている中の一人がJovianである。本作の劇場公開もさすがに全国的にも終わりつつあるが、劇場で映画を観るということの楽しさを思い出させてくれた功績は計り知れない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

joyride

乗り物に乗って楽しむことを指す。特に盗難車の場合が多い。マーヴェリックがペニーをF-18に乗せ、それがバレたせいでボスニア送りにされたエピソードが披露された。この場合、盗んだのは戦闘機。しかも一般人(といっても軍のお偉いさんの娘ではあったが)を乗せたというのだから、無手勝流のマーヴェリックらしい。Take me on your mighty wings ならぬ Take me on a joyride とペニーが頼んだのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 警官の血 』
『 窓辺にて 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, ヴァル・キルマー, トム・クルーズ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -マサラ上映-

『 天間荘の三姉妹 』 -スカイハイだと明示せよ-

Posted on 2022年11月6日 by cool-jupiter

天間荘の三姉妹 40点
2022年11月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:のん 大島優子 門脇麦 寺島しのぶ
監督:北村龍平

漫画『 スカイハイ 』は、絵柄は好きでも、ストーリーはそんなに好きではなかった。今作も予備知識ほぼゼロで臨んだが、柴咲コウがイズコだと分かってからは、この独特の世界観を楽しめなかった。

 

あらすじ

老舗の温泉宿「天間荘」を切り盛りする若女将の天間のぞみ(大島優子)は、イルカの調教師のかなえ(門脇麦)とともに腹違いの妹、たまえ(のん)を迎え入れる。たまえは行き先を決めるまでの間、天間荘で働くことになるが・・・

ポジティブ・サイド

『 女子高生に殺されたい 』でも感じたが、アイドルだった大島優子が女優になっている。和服の着こなしだけなく、所作も旅館の女将さんらしさが出ている。それを感じさせたのは歩き方。宿の廊下をしゃなりしゃなりと歩くことができていた。長女として、また若女将として、大女優・寺島しのぶに真っ向から挑むその姿勢や善し。脱アイドル完了まであと2作品ぐらいだろうか。

 

門脇麦も相変わらずの安定感。彼女の出演作はハズレが少なく、作品がハズレでも彼女の演技がハズレであることはほとんどない。日本のジェシカ・チャステインを目指してほしい。『 あのこは貴族 』と同じく高良健吾との共演がよく似合う。また、どことなく寺島しのぶと顔の作りが似ているように感じられ、母子の感じが強く出ていた。

 

ただ。今作では寺島しのぶすら食ってしまう三田佳子御大が出演。本作の色んな面に不満があるのだが、三田演じる財前からは偏屈さと、その根っこある他者を敢えて寄せ付けないという優しさ、そして気高さが感じられた。財前とたまえのサブプロットをメインのプロットに書き換えて、それを1時間30分のたまえのビルドゥングスロマン映画にしても良かった。それぐらい三田佳子の演技は鮮烈だった。

ネガティブ・サイド

残念ながら役者の演技以外に褒められるところがない。震災で亡くなってしまった人々は確かに痛ましいとは思う。けれど最も苦しめられるのは、亡くなった人の家族や友人ではなく、見つからない人、行方不明のままの人の家族や友人ではないか。言い方は悪いが、遺体があれば、その人は死んだと受け入れられる。受け入れざるを得ない。しかし遺体が見つからないままであれば、まだ生きているのではないかという絶望的な希望にすがるしかないではないか。『 風の電話 』が傑作だったのは、まさにここに焦点を絞ったからである。

 

そもそも漫画『 スカイハイ 』は、天国に行く、現世をさまよう、復讐するの三択から一つを選ぶのではなかったか。津波によって街ごと破壊された、なので三ツ瀬という街をそのまま天と地の間に再現しようというのは、原作の世界観を破壊してはいないか。何か腑に落ちない。

 

絵師の少女の物語が今一つ。正直なところ、こんな風に孤立してしまう子は残念ながらどこにでもいる。今の大学生がどれくらいメンタルの不調を抱えて、いわゆる「配慮願い」を学校に提出してくるか、本作の制作者たちは知っているのだろうか。Jovianはこの少女の因果にまったく同情も共感もできなかった。

 

本作はのんのキャラクターと合っていないようにも感じた。のんの持ち味として、たとえば『 私をくいとめて 』や『 さかなのこ 』、『 Ribbon 』のように、世間や時代に簡単に迎合しないキャラクターが挙げられる。これは彼女自身の生き様とも共通するところだろう。その一方で、本作ではいわゆるフリーターで、旅館の女中からイルカの調教師を目指すというサブプロット。偏屈な財前との絡みから、おもてなしを極めることを志すのではダメなのか?死者のメッセージを生者に届ける役目を引き受け、天地の間にたゆたう魂を昇天させるという筋立てではなダメなのか?ぶっちゃけイルカの調教師のシーンは必要か?しかも、ザバーンと水に飛び込んだ直後のシーンで、のんの髪が濡れていないという大失敗の画も・・・

 

本作は『 スカイハイ 』のスピンオフであることを明示するか、あるいは『 パッセンジャーズ 』のようなトリックを仕込むべきだった。天間荘でたまえが様々な客をもてなしていくが、実はもてなされていたのは・・・という感じである。ファンタジーを描きたいのか、ヒューマンドラマを描きたいのか。そこをはっきりさせない中途半端な作品である。

 

総評

一部はとても面白いのだが、全体を観ると凡庸というか、はっきりいって面白くない。製作者の死生観に文句をつけるわけではないが、死者側から生者側を観るという物語の必然性を感じない。『 スカイハイ 』は理不尽に命を奪われた個人が、死を受容したり、あるいは復讐するところが肝なのであって、記憶をもって蘇るというのはご都合主義が過ぎる。チケットを買うなら、役者の演技を堪能するためと割り切るべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

near-death

ニアミスならぬニアデスで、これは臨死という意味。しばしば near-death experience = 臨死体験という使われ方をする。臨死体験は『 フラットライナーズ 』の昔から映画や小説のテーマになっているので、この表現を見聞きしたことがある人も多いのではないか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』
『 警官の血 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, のん, ファンタジー, 大島優子, 日本, 監督:北村龍平, 配給会社:東映, 門脇麦Leave a Comment on 『 天間荘の三姉妹 』 -スカイハイだと明示せよ-

『 アムステルダム 』 -ファシズムの萌芽を摘めるか-

Posted on 2022年10月30日 by cool-jupiter

アムステルダム 50点
2022年10月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリスチャン・ベイル ジョン・デビッド・ワシントン マーゴット・ロビー
監督:デビッド・O・ラッセル

アメリカ史の知られざる闇に迫る作品。戦争の時代に逆戻りしつつある現代、思いがけずタイムリーな作品になった。

 

あらすじ

1930年代のニューヨーク。復員兵のバート(クリスチャン・ベイル)とハロルド(ジョン・デビッド・ワシントン)は、軍時代の恩人の死の原因を調べてほしいという依頼を、その恩人の娘から受ける。しかし、その依頼人が殺害され、バートとハロルドが被疑者にされてしまう。二人は身の潔白を晴らそうと奔走するが・・・

ポジティブ・サイド

第一次世界大戦中のベルギーでのバートとハロルドにアメリカらしさ、そしてある意味での現代ロシアらしさも垣間見える。少数派をあからさまに差別し、排除する姿勢が見えるからだ。クリスチャン・ベイルが、本家デ・ニーロの前でデ・ニーロ・アプローチを披露。心身共にボロボロの平氏、復員兵かつ医師を渾身の演技で体現した。カリスマ性ではなく、普通の人間性の持ち主だからこそ、ハロルドや黒人兵士たちも彼と共に従軍できたことがよくよく伝わってくる。看護師であるヴァレリーとの出会いも極めて印象的。兵士の体から摘出した弾丸でアートを作るというのはユニークなのか、それとも戦争のもたらす狂気なのか。

 

彼らがアムステルダムで享受する自由と平和、そしてそこで育む友情が、その後のニューヨークでの不可解な殺人事件につながっているという筋立ては、まさに王道ミステリ的。となれば、ここから先は謎解きとなる。実際にハロルドとバートは様々な伝手をたどり、事件の調査を行い、有力者や協力者にあたっていく。このあたりは非常にテンポが良く、次々と新たな人物が現れ、その人物から新たな事実、新たな人間関係が明らかになっていく。

 

そしてたどり着いた殺人事件の真相。これに説得力を感じるかどうかは人それぞれだろうが、史実だというのなら受け入れるしかない。人間の欲は思想信条や平和な社会体制よりも優先されてしまう。100年近く前のアムステルダムで育まれた友情の意味を、今一度回顧すべき時期に我々は来ている。

ネガティブ・サイド

早い話が、アメリカを全体主義国家にして、戦争でバンバン儲けたいという企業経営者、富裕層による社会変革論を、主人公たちが期せずして暴いていくというストーリー。日本でも「不景気だから、そろそろ戦争でも起こってもらわないと」と発言した経団連参加者がいたと報道されたこともあったが、そういうストーリーだ。なので、一定のリアリティはある。問題は、その目的達成のために取るべき手段があまりにも回りくどいことだ。軍人を担ぐよりも、政治家を担ぐ方が確実だと思うが。また、バートやハロルドを指して「お前たちは常に監視下にある、いつでも殺せる」と脅しておきながら、そうした脅威を実際に感じさせるシーンもわずかしかない。陰謀史観論者から見たもう一方の陰謀史観論的に見えてしまう。あまりにもご都合主義的だ。

 

豪華キャストをそろえた割りにはケミストリーが生まれていない。アニャ・テイラー=ジョイとマーゴット・ロビーの二人には演技対決と呼べるようなシーンはなかったし、いぶし銀のマイケル・シャノン(この人が出ている作品はハズレが少ない)とベイル、ワシントンのコンビの間に何らかの連帯感が生まれるような展開もなかった。シーンとシーンの移り変わりのテンポの良さのために豪華俳優陣を無駄使いしている。

 

総評

『 アメリカン・ハッスル 』同様に、荒唐無稽なプロットにリアリティを与えるデビッド・O・ラッセル監督の持ち味が出ている。ただし、あくまでロシアによるウクライナ侵攻や、中国の習指導体制の強化など、ファシズムの萌芽を世界が目撃しつつある瞬間が味方したことも忘れてはならない。今作は悪があまりにも間抜けすぎて、最後は fizzle out してしまった。ただ、序盤から中盤にかけての展開はミステリアスかつスリリング。キャストも非常に豪華なので、楽しむこと(だけ)はできる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

wear it well

作中で、ラミ・マレック演じる富豪トム・ヴォーズの言葉。これは直訳すると「それを上手に着ている=着ているものが似合っている」ということだが、もう一つ、「性格や境遇が合っているという意味もある。Rod Stewart がそのものズバリ  “You wear it well” という歌を歌っている。その中で、And I wear it well. = 俺にはそういうのがお似合いなんだよ、という歌詞があるので、興味のある人は聴いてみよう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 天間荘の三姉妹 』
『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, クリスチャン・ベール, サスペンス, ジョン・デビッド・ワシントン, マーゴット・ロビー, ミステリ, 歴史, 監督:デビッド・O・ラッセル, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 アムステルダム 』 -ファシズムの萌芽を摘めるか-

『 貞子DX 』 -社会批評の精神だけは買う-

Posted on 2022年10月29日 by cool-jupiter

貞子DX 10点
2022年10月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:小芝風花
監督:木村ひさし

『 仮面病棟 』や『 屍人荘の殺人 』の木村ひさし監督が貞子を料理するという。まったく期待はしていないので、貯まったポイントを使って無料で鑑賞。

 

あらすじ

謎の不審死が全国で頻発。IQ200の天才大学院生・一条文華(小芝風花)は、呪いのビデオと貞子の実在を解く霊能力者・Kenshinにテレビ番組内で反論する。しかし、妹の双葉が呪いのビデオのコピーを観てしまい、文華に助けを求めてくる。文華は呪いの謎を解くことができるのか・・・

ポジティブ・サイド

様々な貞子映画の文法に則りつつも、社会批評のメッセージを込めてきたのは本作だけだろう。短い意味不明の動画ばっかり観てるんじゃねえ!劇場でちゃんとした映画を観ろ!という木村ひさし監督の叫びだけは評価せねばならない。

 

ネガティブ・サイド

主人公の文華がIQ200に見えない。せいぜい母親の行動を言い当てるぐらいだが、これなどもろにシャーロック・ホームズのパクリ。それ自体は否定しないが、呪いを科学で解き明かすと予告編では豪語していたのに、科学的な思考をしているようには見えなかった。なんというか、薄っぺらいのだ。各地で頻発する不審死を急性心不全で片付けようとする文華を、冷静に論破するKenshinを見て「なんや、この小娘は・・・」と思った観客は多かったに違いない。そもそもIQ200の科学信奉者が宿主を「やどぬし」と読むか?そこはサイエンティフィックに「しゅくしゅ」やろ。大学院生という設定だが、院生があんなでかい教室で授業受けるかな?普通はもっと少人数のゼミやろ。大学院の実態をスタッフの誰も知らんかったんかいな。

 

占い王子も演技がクソ下手で、なおかつ訳の分からん決めポーズがひたすらウザい。『 貞子 』の塚本高史を超えるクソキャラの誕生だ。感電ロイドも切れ者に見せかけてアホ。占い王子の撮った動画を観て、まったくもって当たり障りのないコメントしかできない。こいつの神社までの移動手段はいったい何だったのか。モブキャラのたかしもインターネット・ミームをそのまま借用。母ちゃんを困らせる引きこもり=たかしは笑えないこともないが、そういうのは深夜アニメまたは純粋なコメディ映画でやってくれ。

 

貞子はもはやギャグなのか・・・静岡のおじさんって何やねん。この、迫ってくる貞子が自分にしか見えず、なおかつ姿を変えるというのは、どう考えても『 イット・フォローズ 』のパクリ。また誰もかれもが貞子の呪いの対象になるというのも『 シライサン 』から着想を得たとしか思えない。陳腐なパクリより、くだらなくてもオリジナル要素を交えてほしい。這いずり回る貞子の動きも、今作からは不気味さが消えたように感じる。単に我々が貞子に慣れてしまったのか、それとも貞子を演じた女優の体の使い方が下手なのか。いずれにせよ、近年まれに見る糞ホラー、クソ貞子映画であった。

総評

コロナ禍もあり、映画は劇場ではなく端末で鑑賞する時代になりつつある。そんな中、2時間も劇場に座っていられない。オンデマンド授業動画も倍速で視聴するという時代になってきた。さらにSNSを席巻するリール動画の数々。本作がそうした世の流れに異議申し立てをしている点だけは評価できる。逆に言うと、それ以外はまったくもってダメ。そもそもDXの指すものがデラックスなのか、デジタル・トランスフォーメーションなのか。それすらもよく分からない。いや、もう貞子より富江をリバイバルさせたら?

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go viral

ウィルス的になる、転じてバズるの意。viral は virus の形容詞。コロナ禍で viral infection = ウィルス感染という表現も浸透してきた。一昔前は、virus infection という微妙に間違えた表現を使う人も多かった。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱 』
『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 天間荘の三姉妹 』

 

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『 秘密の森の、その向こう 』 -フレンチ・ファンタジーに酔いしれる-

Posted on 2022年10月29日 by cool-jupiter

秘密の森の、その向こう 70点
2022年10月26日鑑賞 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ジョセフィーヌ・サンス ガブリエル・サンス
監督:セリーヌ・シアマ

予備知識ゼロで鑑賞。あらすじすら読まなかった。Twitter友達から勧められたからなのだが、そういう人からのお勧めは当たり率が非常に高い。

 

あらすじ

ネリー(ジョセフィーヌ・サンス)は両親に連れられ、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けに来る。しかし、母は自分の母を喪失した悲しみから、家を出て行ってしまう。残されたネリーは森を散策するうちに、母と同じ名前の少女マリオン(ガブリエル・サンス)と出会い、友達になる。ネリーはマリオンの家に招かれるが・・・

ポジティブ・サイド

何とも言えない余韻を残す作品。鑑賞中に思い浮かんだのは『 思い出のマーニー 』と『 リング・ワンダリング 』の二作。時を巡る、そして自らのルーツに図らずも迫ってしまう物語である。

 

BGMはほとんどない。しかし、それが使われる際の情景の美しさとキャラクターの心象風景とのマッチング具合は素晴らしいの一言。キャラクターも少なく、さらに台詞も多くない。台詞が発されたとしても、多くの場合は何らかの比喩というか婉曲的な表現が多く、それが観る側をぐいぐいと惹きつける。フランスといえば少ない登場人物にもかかわらず読者を翻弄するミステリの良作を生み出す国だが、映画でもその技法は存分に活かされている。

 

母マリオンが姿を消した直後に現れる、母と同じ名前の少女マリオン。ネリーとマリオンの子ども同士の無邪気な交流が、いつしか魂の交感にまで昇華される。普通なら2時間はかかりそうなものだが、シアマ監督は70分でそれをやってのける。ここまで研ぎ澄まされた演出と編集は見たことがない。

 

「人はいつか死ぬ。早いか遅いかだけだ」とは『 もののけ姫 』のジコ坊の言。死ぬ時期を知ってしまうというのはシビア極まりないことだが、同時に確実に出会える人間がいるのだ、という希望にもなる。なるほど、これは男を主軸にしては作れない物語。男の自分でも心揺さぶられるのだから、女性視点ではどうなるのだろう。有休を使って一人で観に行ったことがある意味で悔やまれる佳作だ。

ネガティブ・サイド

ネリーとマリオンはなかなか見分けがつかない。双子のキャスティングというのは吉とも凶とも出るが、今作ではその中間ぐらいだろうか。

 

ネリーの父が、終盤の手前でネリーとマリオンの両方に出会うシーン。ここにマリオンを連れてこず、ネリーと父との会話だけでもう一日だけ滞在を延ばす(予定の繰り上げをやめる、が正しいか)ようにすれば、さらにファンタジー色が強まっただろうと思う。

 

総評

『 シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 』を鑑賞した時に近いインパクトがあった。フランス映画はたまにこういう静謐な傑作を送り出してくる。『 トップガン マーヴェリック 』では疑似的な父と息子の関係作りに失敗したマーヴェリックが、ペニーとアメリアの母と娘の関係性から学ぶ姿が印象的だったが、本作はもっと直接的に母と娘の関係性に切り込んでいく。父と息子というのは『 オイディプス王 』の時代からの古典的テーマであるが、本作は母の母と、母の娘という対極的なテーマの古典になりうる力を秘めている。

 

Jovian先生のワンポイントフランス語レッスン

Excusez-moi

エクセキューゼ・モワという感じの発音。英語で言うところの Excuse me. で、軽めの謝罪であったり、あるいはちょっと話しかけたり、ちょっと通らせてもらったり、といった時に使える。日本語の「すいません」に相当するのだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 アムステルダム 』
『 天間荘の三姉妹 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ガブリエル・サンス, ジョセフィーヌ・サンス, ファンタジー, フランス, 監督:セリーヌ・シアマ, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 秘密の森の、その向こう 』 -フレンチ・ファンタジーに酔いしれる-

『 グッド・ナース 』 -医療とは何かを問う-

Posted on 2022年10月26日 by cool-jupiter

グッド・ナース 65点
2022年10月22日 心斎橋シネマートにて鑑賞
出演:ジェシカ・チャステイン エディ・レッドメイン
監督:トビアス・リンホルム

傑作の誉れ高い『 アナザーラウンド 』の脚本を手掛けたトビアス・リンホルムの監督作品。主演に『 女神の見えざる手 』のジェシカ・チャステインということでチケット購入。

あらすじ

シングルマザーの看護師エイミー(ジェシカ・チャステイン)は心臓病を抱えていたが、健康保険に加入できるまで、まだ数か月の勤務を要していた。そんな時、ベテラン看護師チャーリー(エディ・レッドメイン)がやってくる。二人は意気投合し、チャーリーはエイミーを公私で支えていく。しかし、チャーリーの着任以来、病院では患者の不審死が相次いで・・・

ポジティブ・サイド

dark cinematography が冴える。普通、薄暗い画面というものはあまり歓迎されないが、物語全体を貫く疑念が、本作では暗さという形で全編にわたって視覚的に表現される。夜勤のシーンが多く、当然のように病棟は消灯されている。このことが不自然な暗さへの違和感を緩和している。

 

ジェシカ・チャステインはアクション映画に出演するよりも、サスペンスやヒューマンドラマ方面にもっと出るべき。看護師としての演技は堂に入ったもの。注射前にシリンジをコンコンとやるのは、まさに看護師あるある。最初の心臓発作の際は、患者の体位変換の只中で、急性腰痛症、いわゆるギックリ腰の発症かと勘違いした。2000年代初頭はアメリカでも体圧分散マットはまだ普及していなかったか。様々なシーンでジェシカ・チャステインの見せる多くの所作や立ち居振る舞いは看護師をよくよく研究していて、実にリアルだった。まさに good nurse 。 

 

対するエディ・レッドメインのベテラン看護師ぶりにも説得力があった。死亡した老女の体を丁寧に清拭する様には真面目な職業人で、死者の尊厳を守ろうとする人間らしさも感じられた。エイミーと友情を紡ぎ、エイミーの娘たちにも positive male figure として接する姿は、こちらもまさに good nurse 。しかし、病棟で患者の不審死が続くようになってから、徐々に観客の疑念が大きくなってくる。

 

警察の介入、そして病院の不可解な対応・・・というよりもあからさまな隠蔽工作に慄然とする。警察の捜査にこっそりと協力するエイミーだが、ここでは病院どころか市議会議員や検察までもが事件に対してみて見ぬふり。アメリカの警察が悪というのはお定まりであるが、これはフィクションではなく実話。このあたりから、エイミーとチャーリーの友情に一気にサスペンス要素が盛り込まれてくる。徐々にあらわになるチャーリーの過去、そしてチャーリー自身が語る元妻や子どもとの関係についても、観る側はエイミー同様にますます疑心暗鬼になってくる。

 

エイミーとチャーリーの最後の面会のピーンと張りつめた緊張感は素晴らしい。これ見よがしなBGMもわざとらしいカメラワークもなく、二人の役者の演技合戦に委ねた感じがした。実際、チャーリーの犯行の動機が不明である以上、下手な味付けは不要だろう。脚本家が変に出しゃばらなかったことも奏功している。最後に明かされる事実については衝撃的の一語に尽きる。アメリカのヘルスケア・システムの歪さはある程度知っていたが、ここまでだったとは・・・。まさに事実は小説よりも奇なり。

 

ネガティブ・サイド

エイミーの心筋症は物語を重くするファクターであり、彼女がチャーリーに頼るようになる重要な契機でもある。その病気がドラマ作りにあまり寄与していない。チャーリーへの疑惑が深まるか、というタイミングで心臓の発作が・・・ 娘たちに対しても親身に接してくれるチャーリーを疑うとは何事かという葛藤が・・・のようなシーンがあってもよかったのではないか。

 

チャーリーが取り調べ室でぽつぽつと語り始めるシーンは少し陳腐に感じた。そこに至るまでの過程がこれ以上ないほどにスリリングだったので、ここで拍子抜けしてしまうのは作劇上、誠に惜しいと言わざるを得ない。

 

ほんの少しだけ医学的な知識が必要になるが、最小限の説明すらなし。日本の映画やドラマのように何もかもを台詞で説明するのもどうかと思うが、まったく説明がないのもやや不親切か。

 

総評

これが実話というのだから恐れ入る。エンディングで明かされる数字には震えあがるしかない。近年、エッセンシャル・ワーカーとして看護師という職業への認知がアップデートされているが、元より看護は医行為を含み、医行為は侵襲を伴うものが多い。今も現役看護師であるJovian母は、よく胸骨圧迫で患者さんの肋骨を折っていた(本人談)。

J「それでどうやったん?」
母「アカンかったわ」

みたいな会話は普通だった。チャーリーのような bad nurse を擁護するつもりは毛頭ないが、人間にダメージを与える行為への看護師の心理的閾値が低いのは間違いない。ではどうすればよいのか?その答えが本作である。看護師はペアで働かせるべし。一人でなにもかもさせてはならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

At the end of the day

その日の終わりに、という意味ではない。これは「結局は」、「最終的には」、「つまるところ」のような意味。劇中では

At the end of the day, we are here for you.
結局のところ、我々は皆さんの味方です。

のように使われていた。結論や重要な点を述べる前に、At the end of the day と言うようにしてみよう。

 

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『 アムステルダム 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, エディ・レッドメイン, サスペンス, ジェシカ・チャステイン, 伝記, 監督:トビアス・リンホルム, 配給会社:NetflixLeave a Comment on 『 グッド・ナース 』 -医療とは何かを問う-

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