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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 韓国

『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

Posted on 2024年11月9日 by cool-jupiter

破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン

 

チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。

あらすじ

巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。

 

「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。

 

改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。

 

日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。

 

ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。

 

日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。

 

まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。

 

総評

土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

トッケビ

超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』
『 オアシス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イ・ドヒョン, キム・ゴウン, チェ・ミンシク, ホラー, ユ・ヘジン, 監督:チャン・ジェヒョン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』 -国家の対立と個人の友情-

Posted on 2024年10月22日 by cool-jupiter

工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 85点
2024年10月20日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ファン・ジョンミン イ・ソンミン
監督:ユン・ジョンビン

シネマート心斎橋に別れを告げるための一本として本作をチョイス。当日券もガンガン売れていて、劇場は満員だった

あらすじ

軍の情報部に所属するパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北朝鮮の核開発の実態を探るべく、黒金星というコードネームの工作員として北朝鮮に潜入する。ビジネスマンとして北で活動するパクは、遂に北の外貨獲得の責任者であるリ所長(イ・ソンミン)からコンタクトされ・・・

ポジティブ・サイド

上映開始直前、『 ソウルの春 』の感想を述べあうオッサン二人が後ろの席にいたが、『 殺人女優 』と同じく韓国映画は合う人には合う。その中でも本作は一級品。上映終了直後の劇場内やロビーでも「圧倒された」、「すごい」、「韓国の現代史を勉強せな」という感想が漏れ聞こえてきた。自分の感想も「まるでブライアン・フリーマントルの『 消されかけた男 』の韓国版だな」というものだった。

まず、スパイ映画にありがちな変装や秘密裏の侵入などがほとんどない。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズのような派手さは一切ない。しかし、本作が全編にわたって産み出す緊迫感はM:Iシリーズのどれよりも上だと感じた。

まず第一に北の核施設に近づくために、まずは外貨獲得に血眼になっている北朝鮮にビジネスマンとして近づくというアプローチが秀逸。その下準備として、中国産の野菜が北朝鮮産と偽って売られていることをパク自身が当局にリーク。中国にある北朝鮮拠点をまんまと一つ潰してしまう。そして在日の朝鮮総連系のあやしげな男(このキヨハラ・ヒサシにもモデルはいるのだろうか?)とのビジネスもシャットアウト。あくまでも狙いは北朝鮮の中枢。

そして遂に有力者のリ所長に接触することになるが、明らかにその筋の人、早い話がインテリヤクザの雰囲気を漂わせるイ・ソンミン演じるリ所長と、番犬的存在のチョン課長が、当時の(そしておそらく今も)北朝鮮がならず者国家 = rogue nation であることをひしひしと感じさせる。一歩間違えれば命が危うい。のみならず、国家間の緊張がそれ以上の状態に発展してしまう恐れなしとはしない。

そんな中でもパクはビジネスマン然として振る舞い続ける。しかし、テープレコーダーその他の小道具も駆使して諜報活動も行う。この陽気で少し短気なビジネスマンの顔と敏腕のスパイとしての顔を劇中でファン・ジョンミンは見事に使い分けた。北朝鮮側に見せる顔と韓国側(上司)に見せる顔が明らかに違う。つまり北朝鮮側に向けては演技している演技をしていた。ファン・ジョンミンの卓越した演技力なくして、この二重性・二面性は出せなかった。

徐々にリ所長の信頼を得て、奇妙な友情すら育んでいくパク。国は異なれど民族は同じだし、話す言語も同じ。しかし都市部を離れれば北朝鮮の人民はなすすべもなく餓死していくという惨状がある。このシーンは下手なホラー映画よりも遥かに怖かった。リ所長が北の惨状に挙げていた子どもが10ドルで売られるという現実は、奇しくもチェ・ミンシクが『 シュリ 』で涙ながらに訴えたもの。まさに1990年代にニュース23で見ていた北の農村が思い起こされた。

映し出されるのは北のどす黒い現実ばかりではない。南の腐敗した政治にも焦点が当てられる。国政選挙のたびに北が武力挑発し、南の人民の不安をあおることで与党の後押しになるのだという。まるでどこかの島国が北のミサイル発射を支持率アップの道具にしているようではないか。北は北で金王朝を維持したいし、南は南で現体制を維持したい。そのためには仮想敵国、いや現実の敵国が存在し続けることが望ましいという、もはや政治とは何なのか分からなくなってくる現実が、パクにもリ所長にも、そして当然我々にも突きつけられてしまう。

しかし、そんな現実に屈せず危険を冒して最後の冒険に出る二人が奇跡を起こす様は胸が張り裂けんばかりになる。国と国は分断されていても、個人と個人は分かり合える。それは南北朝鮮だけの問題ではなく、あらゆる国と個人が直面しているテーマではないだろうか。

ネガティブ・サイド

リ所長のガッツポーズは、そこら中に間諜がいる北京のホテルでは軽率ではなかっただろうか。辺境の死体置き場にまで監視役がおる国やで。

韓国側のもう一人の工作員のコード・ワンが迂闊というか間抜けすぎではないか。どうやって北に潜伏し続けられていたのか。このコード・ワンはさすがに架空の存在だと思うが、このシーンは滑稽に過ぎた。

総評

なぜ劇場公開当時にリアルタイムで観なかったのかが悔やまれる。同時に、なぜこれほど多くの人がシネマートを訪れていたのかも理解できた。本当は『 サニー 永遠の仲間たち 』が観たかったのだが、こちらも負けず劣らずの大傑作。韓国映画のサスペンスのレベルの高さをあらためて思い知らされた。ファン・ジョンミンはソン・ガンホやソル・ギョングに並んだ、いや超えたと評してもいいのかもしれない。

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャングン

将軍のこと。本作では将軍・金正日との対面が一つの山場となっている。また物語の冒頭のニュース映像では、日本でもお馴染みの女性アナウンサーが一瞬だけ映るが、彼女がしばしばチャングンニムと言っていたのを一定以上の世代なら覚えていることだろう。

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 破墓 パミョ 』
『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, イ・ソンミン, サスペンス, ファン・ジョンミン, 歴史, 監督:ユン・ジョンビン, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』 -国家の対立と個人の友情-

『 殺人女優 』 -殺るか殺られるか-

Posted on 2024年10月20日2024年10月21日 by cool-jupiter

殺人女優 60点
2024年10月19日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ジヨン
監督:ユ・ヨンソン

 

妻の「面白いんかなあ?」の一言でチケット購入。邦画では絶対作れないであろう作品だった。

あらすじ

女優のスヨン(ジヨン)は、ある出来事がきっかけで業界を干されていた。ファンがほとんど集まらなかったサイン会の夜、同居している後輩女優と言い争いになってしまう。目覚めたスヨンは、その後輩が死んでいるのを発見してしまう。果たしてこれは自分の仕業なのか・・・

ポジティブ・サイド

韓国映画でいつも感心するのが、女優が発狂する瞬間。本作でもスヨンは様々なストレスを抱えているが、それが爆発するシーンの迫力は見もの。国民性の違いもあるのだろうが、純粋に演技に対する考え方の違いも大きいはず。

 

また流血描写に殺人描写など、暴力シーンも本作の特徴の一つ。日本の女優やアイドルなら絶対に拒否するであろうシーンが次々に出てくる。ジヨンではないが、別の女性キャラの用便シーンなどもある。韓国映画はそうした描写から決して逃げない点もポイントが高い。

 

死体が移動したり、謎のメッセージが届いたりと、謎解き要素もふんだんにちりばめられていて、それが上質なサスペンスにもつながっている。冒頭から女子高生の回想シーンがたびたび挿入され、それがジヨンの現在とどう結びついてくるのかという点も、ミステリアスかつサスペンスフルだ。

 

原題は Wannabe だが、これを『 殺人女優 』としたのは配給サイドの隠れたファインプレーである。

 

ネガティブ・サイド

攻撃的な知的障がい者のキャラは蛇足だったかな。本筋に全く関係なく、ただ単にバイオレンスとサスペンス、そして警察を呼び込むという装置にしか見えなかった。何かもっと説得力のある筋立てが欲しかった。

 

代表が家に帰り着くのが遅すぎる。おそらく酒席で酔っていて酔い覚ましが必要だったのもあるのだろうが、事務所の期待の星を都市部からあれほど離れた片田舎に住まわせるのかというのも大いに疑問だ。

 

スヨンの不祥事というのが普通に重犯罪で、いくら呑み助だらけの韓国社会といえど、とても許容できるものではない、つまり芸能界に留まれるものではないと思われる。もう少しソフトな不祥事(たとえば政治家もしくは財界人の愛人疑惑があったetc)を設定できなかったのか。

 

総評

ショッキングな展開が多く、バイオレンスも激しい。人によっては拒絶反応が出るだろうが、本作のポスターを見れば内容はともかく展開の予想は容易につく。なので耐性のある人だけが鑑賞するようになっているはず。鑑賞後、ロビーで大きな声で展開の仕方や真相を絶賛するおっさん二人(Jovianより15~20歳は上だったかな)が印象的だった。韓国映画は波長が合う人にはとことん合うのだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アラッチ

アラッチ⤴という上り調子で使われることが多い。「分かった?」という意味で、ややくだけた表現。韓国映画を観ていると頻繁に使われる表現なので、知っているという人も多いはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 若き見知らぬ者たち 』
『 破墓 パミョ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, ジヨン, 監督:ユ・ヨンソン, 配給会社:「殺人女優」上映委員会, 韓国Leave a Comment on 『 殺人女優 』 -殺るか殺られるか-

『 シュリ 』 -南北の融和は見果てぬ夢か-

Posted on 2024年10月19日 by cool-jupiter

シュリ 75点
2024年10月14日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ハン・ソッキュ キム・ユンジン ソン・ガンホ チェ・ミンシク
監督:カン・ジェギュ

 

シネマート心斎橋に別れを告げるためにチケット購入。といっても、もう1~2回は行きたい。

あらすじ

韓国情報部のユ・ジュンウォン(ハン・ソッキュ)は、相棒イ・ジョンギル(ソン・ガンホ)とともに、国防関連の要人の連続暗殺事件を追っていた。北朝鮮の女性工作員が捜査線上に浮上する一方で、韓国が極秘に開発した液体爆弾を用いたテロが計画されていて・・・

ポジティブ・サイド

1990年代後半というと太陽政策の前、つまり南北がまだまだ普通ににらみ合っていた時代で、38度線がうんたらかんたらというニュースは中学生、高校生の頃のニュースでJovianもよく耳にしていた。そんな時代の映画だけに古さもあるが、逆に新鮮さもあった。

 

スーパースターと言っても過言ではないチェ・ミンシクやソン・ガンホの若かりし頃の熱演が見られるし、主演のハン・ソッキュは近年でも『 悪の偶像 』でカリスマ的な悪徳政治家

で強烈な印象を残したし、お相手のキム・ユンジンも『 告白、あるいは完璧な弁護 』で弁護士役として非常に印象的な演技を見せたのが記憶に新しい。

 

作劇上の演出も光っていた。特に女性工作員の正体を映し出すシーンは暗闇の中、無音かつ無言、そして効果音もBGMも無しで淡々と進んでいくワンカット。このシーンは震えた。また、スタジアムで彼女が銃を構えるポーズは『 悪女 AKUJO 』や『 聖女 MAD SISTER 』に確実に受け継がれていると感じた。

 

全編にわたって銃撃アクションに、スパイは誰なのかというサスペンス、そして常に敵に先回りされるのは何故なのかという謎解きミステリもあり、さらにそこに悲恋の要素も盛り込んだ全部乗せ状態。それだけたくさん詰め込みながら、緩む瞬間がないという驚き。ヒューマンドラマの名手、カン・ジェギュ監督の最高傑作という評価は揺らぐことはないだろう。

 

ネガティブ・サイド

サッカーのスタジアムに仕込まれた液体爆弾の起爆方法はユニークだが、あまりにも偶然の要素に頼りすぎでは?たとえば天気。他にも、保安・警護上の理由で首脳たちが座る位置などが直前まで明らかにならないということは?あまり突っ込むのも野暮だが、こうした疑問は公開当時からあったはず。

 

あとは爆発までのカウントダウンか。それこそ外気温や湿度、風速など、液体の温度に影響を与える要素は数多くあるわけで、爆発までのカウントダウンが正確にできるわけがない。この部分は鼻白みながら観ていた。

 

総評

突っ込みどころは多々あれど、緊迫感や緊張感、猜疑心などが途切れることがなく、2時間をノンストップで突っ走る。国のために、愛する人のために、という想いは共通だが、それによって敵味方に分かれてしまうという不条理は今の時代でも残念ながら真理のまま。地政学的に見れば38度線はベルリンの壁よりも強固な分断の象徴だが、だからこそ、それを乗り越えようとする人間のドラマがこの上なく熱くなるのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イルボン

日本のこと。韓国の映画やドラマでは割と日本が出てくる。近いから当たり前と言えば当たり前だが、日本と韓国は文化的・経済的には38度線のような線は不要だと個人的には思っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 若き見知らぬ者たち 』
『 破墓 パミョ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アクション, キム・ユンジン, サスペンス, ソン・ガンホ, チェ・ミンシク, ハン・ソッキュ, 監督:カン・ジェギュ, 配給会社:ギャガ, 韓国Leave a Comment on 『 シュリ 』 -南北の融和は見果てぬ夢か-

『 犯罪都市 PUNISHMENT 』 -シリーズの折り返し地点-

Posted on 2024年10月12日 by cool-jupiter

犯罪都市 PUNISHMENT 70点
2024年10月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マ・ドンソク キム・ムヨル パク・ジファン
監督:カン・ユンソン

 

『 犯罪都市 NO WAY OUT 』の続編にしてシリーズの4作目。8作目までが構想されているらしいので、これでちょうど半分消化ということになる。

あらすじ

剛腕刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)は、アプリを利用した麻薬売買事件の捜査の中で、アプリ開発者がフィリピンで殺害されたことを知る。オンライン・カジノが捜査の糸口になると確信したソクトは元ヤクザのチャン・イス(パク・ジファン)をアドバイザーにする。しかし、その先にはIT企業の社長の下で働く元傭兵ペク・チャンギ(キム・ムヨル)が暗躍しており・・・

ポジティブ・サイド

今度はIT犯罪、しかもオンライン・カジノがフォーカスされているではないか。IR事業が云々かんぬんと喧しい隣の大阪府も、本作を観て「カジノ、やばくね?」と思い直してほしい。

 

というのはもちろん冗談だが、IT犯罪を追うことでソクトのアナログっぷりが際立ち、それが巧まざるユーモアにつながっている。また第一作の『 犯罪都市 』のヤクザで、『 犯罪都市 NO WAY OUT 』のラストにも少しだけ出てきたチャン・イスが、コミック・リリーフとして大活躍。いや、本当はかなり優秀な捜査アドバイザーなのだが、顔も面白ければ行動も面白いので、マ・ソクトの恰好のいじられ役としてハマっている。

 

こうした面白おっさんコンビのユーモアが、その他の場面でのソクトの怪力剛腕アクションを際立たせている。またヴィランのチャンギもどこかで見た顔だと思ったら『 悪人伝 』の熱血刑事ではないか。今回は残虐非道なナイフ使いを演じており、熱血とは程遠い冷血漢。この男の冷酷無比な様も、上司であるIT社長のおとぼけっぷりにより際立っている。韓国映画はこうしたキャラの対比によって人情味や非情さを際立たせるのが相変わらず上手い。

 

室内やバスの中など、狭いところで戦うことで強制的に拳と拳の勝負になるのが本シリーズのお約束。今回の舞台は飛行機のファーストクラス。そんなものが武器になるわけないやろ・・・、って、え?そう来るか?という展開には唸った。

 

今回はソクトのヒョン=兄貴と呼ぶ、弟分の活躍も目だったり、サイバー捜査のために若い男女が2名加わったりと、チームの今後に期待が持てる内容だった。また最初の犠牲者の母親との約束を守る姿勢や、殉職した先輩の妻が切り盛りする店に足繫く通ったりと、これまで全く描かれてこなかったソクトの「私」の部分をうかがわせる描写も本作の見どころ。おそらくソクトの過去、あるいは家族関係がシリーズの後半に向けて深掘りされていくのではないかと思う。期待して待ちたい。

 

ネガティブ・サイド

いくらフィリピンの片田舎とはいえ、ロードサイドで重機をぶん回して破壊活動をすれば、現地の警察も動くだろう。それ以前に、チャンギがフィリピン警察をあっさりと冒頭で殺害しておきながら、高飛び先がまたもフィリピンというのは不用心すぎないか。ボディカメラはないにしても、パトカーにダッシュカメラは絶対についていて、犯行の一部始終がフィリピン警察ならびにインターポールにまで共有されているはずだが・・・

 

チャンギの右腕的存在のアクションはイマイチ腰が安定しておらず、迫力にもリアリティにも欠けた。チャンギを演じたキム・ムヨルのアクションが『 アジョシ 』のテシクを思わせる迫真のナイフ使いだっただけに残念。

 

総評

このシリーズ自体がそうだが、頭を空っぽにしたい時に最適な一本に仕上がっている。ソクトの刑事としての出世はおそらくここらへんで終わりなので、ここからはソクトの過去や現在のプライベート=公私の私の部分にフォーカスしたサイドストーリーが展開されていくと思われる。だが「鉄拳がすべてを解決する」というポリシーは決して変わらないはず。スカッとしたい時にちょうどいい作品である。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

オンマ

お母さんの意。他人が別人の母親をこう呼んでも良いところが日本語と韓国語の共通点の一つか。オモニが英語で mother なら、オンマは英語では mom となる。なんとなく分かっていただければ幸いである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 花嫁はどこへ? 』
『 ジョーカー:フォリ ア ドゥ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, キム・ムヨル, パク・ジファン, マ・ドンソク, 監督:カン・ユンソン, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 犯罪都市 PUNISHMENT 』 -シリーズの折り返し地点-

『 ソウルの春 』 -勝てば官軍負ければ賊軍-

Posted on 2024年9月1日 by cool-jupiter

ソウルの春 75点
2024年8月31日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チョン・ウソン ファン・ジョンミン
監督:キム・ソンス

 

Jovianの生年に実際に韓国で起こった歴史的事件をモチーフにした作品ということでチケット購入。

あらすじ

朴正煕大統領が暗殺された。実行犯を取り調べの責任者に任命されたのは、韓国陸軍内で隠然たる勢力を誇るハナ会のチョン・ドゥグァン(ファン・ジョンミン)。しかし彼は自身の権勢拡大のために陸軍参謀総長を拉致し、クーデターを画策する。首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)はチョンの野望を阻止するために立ち上がるが・・・

 

ポジティブ・サイド

140分超ながら、体感では90分ほど。ひと息つける場面が一切ないままに物語は進行していく。登場人物は多いものの、クーデターを起こして権力を握りたいチョン・ドゥグァン、それを阻止したいイ・テシンの二人の名前だけ押さえておけばよい。

 

クーデターの計画、参謀総長の拉致、大統領からの裁可、指揮下の精兵部隊のソウルへの召喚とそれを阻止するための別の精鋭部隊の召喚と、わずか一夜の中で状況が刻一刻と変化していく。

 

ファン・ジョンミン演じるクーデター首謀者のチョン・ドゥグァンは人間味に溢れており、豪放磊落な一面と繊細な一面を併せ持っている。大人物のようでもあり、小者のようにも映るのだが、かかる魅力が彼をハナ会のトップに、ひいてはクーデター勢力のトップに君臨させている。一度決めたら最後までとことん行く男で、情勢の変化に一喜一憂する仲間や先輩を時に脅迫し、時に一喝し、時に弱みを見せることで取り込んでいく。韓国版の木下藤吉郎とも言うべき人たらしである。

 

対するイ・テシンは職務に忠実で群れることを潔しとしない孤高の軍人。韓国軍の上層部が情勢の変化に一喜一憂し、時に日和見を決め込もうとする中でも、首都防衛に専心する。その高潔さ故に従う者、従えない者があぶり出され、当時の韓国軍の体質や、一枚岩になれない体制がよくよく見て取れる。

 

クライマックスチョン・ドゥグァンとイ・テシンの対峙の迫力には息を呑んだ。そして対決の結末には鳥肌が立った。というか、途中で気付かなかった俺はアホだ。冒頭ではっきり史実を脚色しているという注意書きがあったではないか。クーデター側の首謀者二人の名前をちょっと変えれば・・・ 本作は軍事政権時代を反省・批判している一方で、「この国をなんとかしたい」という強烈な野望を抱く政治家の不在を嘆いているようにも受け取れる。おこぼれに与ろうと権力に群がる小物は不要だという韓国映画界から韓国政治へのメッセージに思える。単なる善悪の対立にとどまらない深みを生み出すのは、キム・ソンス監督の面目躍如といったところか。

 

クーデターというと1991年のソ連崩壊を覚えているが、韓国もよく似た歴史をたどっていたのか。民主主義を自力で得た国と、民主主義を与えられた国。どちらが幸せなのだろうと考えさせられる。

 

ネガティブ・サイド

漢江にかかる橋を封鎖するためにテシンが「市民の力も借りねば」と言うが、そのシーンこそカットせずに盛り込むべきではなかったか。また、警察は何をしていたのだろう。ハナ会の人脈で警察も抑えていたという描写があれば、さらに説得力や緊迫感は増したはず。

 

最後のバリケードを挟んでの対峙シーン前に市民の存在に言及するシーンがあったが、これは不要だったか。もしここで市民に言及するなら、橋の封鎖のシーンで市民の協力を描くべきだし、それを描かなかったのなら、最後の対決シーンでも市民の描写は不要だった。

 

総評

やはり韓国映画の本領は歴史の闇、社会の闇に迫るスリラー作品だなとつくづく感じる。次にTSUTAYAでレンタルするのは『 KCIA 南山の部長たち 』、その次は『 光州5・18 』かな。この後味の悪さは『 トガニ 幼き瞳の告発 』のそれに比肩する。とことんはじけたアホな映画か、とことん出来の悪い映画を観て気分をリセットしたくなる。そんな韓国映画の怪作である。

 

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アンジャ

これも韓国映画やドラマでお馴染みの表現。意味は「座って」で、インフォーマルな表現。しばしばアンジャアンジャのように使われている。日本語でも「座って座って」と二回言うのと同じ感じ。階級や軍人歴の違いはあれど、腹を割って話をしようとする姿勢を常に打ち出すチョン・ドゥグァンが多用していた。そういう意味では政治家向きの軍人だったのかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 エイリアン:ロムルス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, チョン・ウソン, ファン・ジョンミン, 歴史, 監督:キム・ソンス, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ソウルの春 』 -勝てば官軍負ければ賊軍-

『 壁越しの彼女 』 -Love is blind-

Posted on 2024年8月28日 by cool-jupiter

壁越しの彼女 60点
2024年8月25日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:イ・ジフン ハン・スンヨン
監督:イ・ウチョル

 

台湾ロマンスの次は韓国ラブコメ。

あらすじ

歌手を夢見るスンジン(イ・ジフン)は安アパートの最上階に引っ越しする。しかし、その隣には住人をあの手この手で追い出してきたラニ(ハン・スンヨン)が住んでいた。互いに譲らない二人は、やがて生活音を出しあう時間帯を取り決めるが・・・

ポジティブ・サイド

序盤のホラー調から一転してコメディ路線に突っ走り、その後は少しシリアスなお仕事ムービーに。最後はちゃんとしたロマンス路線に着地という具合に、短時間の中でかなり物語のトーンが変わる。しかし、そのことに違和感を覚えず、むしろどんどん物語世界に引き込まれるのは、主要キャラクターの魅力と壁を隔てた顔を知らない二人の奇妙なロマンスの行き着く先を見たいという好奇心ゆえ。

 

歌手を目指すと言いながら、どこか本腰を入れられないスンジンと、ユーモラスに、時にシリアスに向き合ってくれる竹馬の友たちが素晴らしい。男の友情かくあるべし。一人黙々と、しかし騒々しく創作に打ち込むラニの過去にあった悲しい裏切り。二人が急速に距離を縮めながらも、スンジンの善意からの行動がすべてをぶち壊してしまう、そのお下劣な方法と、それがもたらす深刻な結果の落差は、さすが韓国映画。邦画では絶対に描けない展開を軽々と描写してくれる。

 

『 her 世界でひとつの彼女 』にリアリティを感じなかった向きも、本作なら受け入れられるのではないか。恋愛に壁はつきものだが、本物の壁で隔てられたラブロマンスというのは、おそらく世界的にも希少価値が高いはず。観ればハラハラドキドキからホンワカまで味わえる、韓国ラブコメの佳作である。

ネガティブ・サイド

ラニの体調不良を匂わせるシーンが序盤から出てくるが、これがかなりの拍子抜け。少しネタバレ気味になるが、邦画の秀作『 夜明けのすべて 』のような描写がほしかったと思う。あるいは、薬を飲むシーンは全カットでも良かったかもしれない。

 

スンジンと竹馬の友たちとの交流は男の友情の極致と言えるものだが、なぜ彼らがそれほどプー太郎状態のスンジンを純粋に応援できるのかが不可解と言えば不可解。少年時代、あるいは大学生時代あたりでスンジンが思いがけない形で優しや、または逞しさを見せた、という短いエピソードがあっても良かった。

 

総評

おそらくコロナ禍の最中に構想された作品。オンライン飲み会ならぬ壁隔て食事会は、一歩間違えばギャグを通り越して意味不明な絵となるが、コロナを経験したことでこのようなシーンも可能になった。このあたりの作劇術が見え隠れするのも面白い。日本だと本作にかなり先行する『 おと・な・り 』がシチュエーション的に近い。が、感情の表出方法が日韓ではまったく異なるので、そのあたりの国民性の違いを微笑ましく思えるかどうかが評価の分かれ目になりそう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

platonic love

古代ギリシャの哲学者プラトン的な愛のこと。人間は元々アンドロギュヌス=両性具有だった。それが男と女に分かれてしまったので、両者は互いを求めあうようになったというもの。これがエロス。プラトニック・ラブはこの感性そのものを指す。すなわち実際に一つになるという行為ではなく、一つになりたいという願望、その心の在りようを「愛」と呼んでいるわけだ。イデアという理想世界を構想したプラトンらしいと言えばプラトンらしい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 ソウルの春 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ジフン, ハン・スンヨン, ラブコメディ, 監督:イ・ウチョル, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 壁越しの彼女 』 -Love is blind-

『 ニューノーマル 』 -殺しのオムニバス-

Posted on 2024年8月18日 by cool-jupiter

ニューノーマル 60点
2024年8月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ジウ
監督:チョン・ボムシク

 

コロナによって生まれた新しい生活習慣=New Normalという、このタイトルだけでチケット購入。

あらすじ

ヒョンジョン(チェ・ジウ)のもとに、突然、火災報知器の点検をしにきたという男がやって来る。男は点検の傍ら、不穏な空気を醸し出しながら、最近起きた未解決の殺人事件について語り始め・・・

ポジティブ・サイド

ニューノーマル=衛生習慣の徹底だと理解していたが、人と人の物理的・精神的な距離が日本よりもはるかに近い韓国では、マッチング・アプリやオンラインゲーム、匿名掲示板がさらに勢いを増しているということか。

 

本来ならば出会わない、あるいは関係のない人間と、ちょっとしたことから繋がりが生まれ、それが悲劇につながっていくというオムニバスかつアンソロジー形式のスリラー。

 

Chapter 1: 覚えられなかった・・・

チェ・ジウの住居に怪しげな男が訪ねてきて・・・ オチはすぐに分かるが、チェ・ジウの一種の恍惚とした表情が強く印象に残る。

 

Chapter 2: Do The Right Thing 

塾の仲間や講師にボランティアを呼びかけられた少年が、車椅子の老婆を助けたところ、お礼を上げると申し出られて・・・ 『 バニシング 未解決事件 』でも未解決だった問題は、コロナ禍を経ても、やはり未解決のまま。『 ユージュアル・サスペクツ 』や『 愚行録 』など、足が悪いところが印象的なキャラクターはやはり・・・

 

Chapter 3: Dressed To Kill

第一章の続き。マッチング・アプリで新たな出会いを求める男女を痛烈に皮肉っている。このチャプターで、アプリのアラーム=マッチ度の高い相手が周囲にいるという通知を見るたびに、コロナ禍における本邦のごみアプリCOCOA(これも誹謗中傷にあたる表現だろうか)の接触通知を思い出した人はちらほらいるのではなかろうか。ちなみにこのチャプターのタイトルの kill は「悩殺する」の意味に近い。

 

Chapter 4: Be With You

前章の続き。縁とは何かについての仮説は興味深かった。その縁を感じた男がたどる道筋の先の恐怖とは・・・ どこかで見たタイトルだが、当然 Rod Stewart の “To Be With You” ではなく、邦画の『 Be With You いま、会いにゆきます 』か。まさか竹内結子からインスピレーションを得たのではないと思いたいが。

 

Chapter 5: Peeping Tom

江戸川乱歩やアルフレッド・ヒッチコックの昔から、覗きは人間の習性であったようだ。ましてカメラが普及した現代、盗撮はいともたやすい。美しき隣人に恋焦がれるニート(?)の男性の気持ち悪さが爆発する。その一方で、美しいバラにはとげがあるとの格言通りに・・・

 

Chapter 6: My Life As A Dog

このチャプターが最も面白い。Chapter 2 を除く(?)他の章がほんの少しずつ絡んでくる。ミュージシャンを目指しつつコンビニ店員で糊口をしのぐヨンジンが迷惑客や苦情客に盛大に、ささやかにリベンジしていく。その一方で、彼女の内なるストレスはネット掲示板とオンラインゲームで発散され・・・ 自分も時々コンビニ店員さんに無愛想に接することがないとは言い切れない。そこを反省すると共に、ネットへの書き込み(映画のレビュー含む)について、大いに考えさせられるチャプターでもあった。

 

ネガティブ・サイド

各チャプターごとに時系列がバラバラで、それは製作者が意図してのことだろうが、このような構成にするのなら、素直に各章を時系列に並べても良かったのでは?

 

つながっている章とつながっていない章があるのは何故?それともこちらの見落としか?

 

Chapter 4: Be With You では、もっと写真をじっくりと見せてほしかった。そもそも、あのキャラはもしや〇〇〇〇?

 

総評

雰囲気としては邦画の『 クリーピー 偽りの隣人 』に少し似ている。スリラー/ホラーでありながら、どことなくコミカルな面が感じられる。それは、ニューノーマルという新たな社会規範を脚本家や監督が嗤っているからだろう。少しモタモタした印象を与える中盤のストレスについては最終チャプターのヨンジンが大爆発させてくれる。そこまではしっかりと鑑賞しよう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イーセッキ

韓国映画を観るたびに聞こえてくる。意味は「この野郎」。使用することが推奨されない韓国語の一つ。本作の Chapter 6 で頻繁に使われるFワードを人間相手に言いたくなったら、こちらを心の中で唱えるのもありかもしれない。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 エア・ロック 海底緊急避難所 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, スリラー, チェ・ジウ, 監督:チョン・ボムシク, 配給会社:AMGエンタテインメント, 韓国Leave a Comment on 『 ニューノーマル 』 -殺しのオムニバス-

『 密輸 1970 』 -虚々実々の密輸ドラマ-

Posted on 2024年7月15日 by cool-jupiter

密輸 1970 70点
2024年7月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ヨム・ジョンア キム・ヘス
監督:リュ・スンワン

 

『 モガディシュ 脱出までの14日間 』のリュ・スンワン監督作品ということでチケット購入。

 

あらすじ

港町クンチョンは工場排水により漁が成り立たなくなりつつあった。そんな中、海女のリーダーのジンスク(ヨム・ジョンア)は生活のために密輸に協力することを決断する。ある時、税関によってジンスクは現行犯逮捕され、親友チュンジャ(キム・ヘス)だけがその場から逃亡するが・・・

ポジティブ・サイド

1970年代の韓国と言えば民主化前=軍事政権下ということぐらいしか知らないが、工業化による公害が問題になるところは日本と同じか。海女たちが自発的にではなく、生活の糧を売るためにやむなく密輸に協力するというプロットには説得力があった。

 

その海女たちが一度は摘発され、刑務所で過ごし、娑婆に戻ってからも汚れた海で生きるしかないという描き方が痛切。腐った海藻でスープを作って幼い子どもに与えざるを得ないシーンには胸が痛んだ。こうした背景があるため、密輸という犯罪に従事する海女たちを一方的に断罪することができない。

 

その海女の中心人物ジンスクを演じたヨム・ジョンアと、裏切り疑惑のチュンジャの再会。そこから動き出すヒューマンドラマとクライムドラマの両方が、非常にテンポよく展開される。随所で挿入される韓国版懐メロも映像とストーリーにマッチしていて、それもストーリーテリングに一役買っている。

 

ソウルの密輸王、クォン軍曹と彼の片腕がアメリカのグリーンベレーかと思うほど強すぎるが、ベトナム戦争帰りだという設定によって、荒唐無稽なアクションシーンにもリアリティが感じられた。終盤の水中での大立ち回りは非常に新鮮に映った。水連達者の海女が男たちを一人また一人と始末していくのは痛快だった。

 

最後はすべての悪を華麗に打ち倒して、ハツラツとしている海女たち。密輸や殺人に関わっておきながらそれはないだろうとも思うが、「まあ、そんなことはええか」と思わせるだけのデタラメなパワーを持った作品でもある。韓国映画は邦画が絶対に作れない作品を時々軽々と作ってくれるが、本作は間違いなくそうした一品である。

 

ネガティブ・サイド

海女たちの集合写真がまんま『 セックス・アンド・ザ・シティ 』なのは時代が合わないし、オリジナリティにも欠けると感じた。

 

チュンジャがクォン軍曹の信用を得る過程の描き方が弱かった。軍人上がりでソウルの地下社会・密輸業の実力者たるクォン軍曹の片腕的なポジションに成り上がるまでに、クンチョン以外の舞台でのチュンジャの活躍を2~3分挿入しても良かったのではないかと思う。

 

韓国(映画)では警察=無能、役人=悪人という等式が成立するが、本作でもそれは例外ではない。そういう意味では本作の真相にはあまりサプライズを感じられなかった。

 

総評

50年前の韓国でこんなに生き生きと女性が活躍していたとは思えないが、それでも「ひょっとしたらこんな人たちがいたのかも・・・」と思わせるだけの妙なパワーが本作にはある。実話ベースということだが、おそらく海女さんが密輸に協力していたことがあっただけで、ヤクザや税関相手に大立ち回りをしていたはずはない。ただ、そうした荒唐無稽な想像を実際に映画に仕立て上げてしまうリュ・スンワン監督の手腕は見事。子供向けとは言えないが、40代以上なら男女を問わずに楽しめるはずの作品だ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

セグァン

税関の意。言わずと知れた輸出入に関わるレギュレーションを担当するお役所。本作で最も多く聞こえてくる語彙の一つ。今学期、Jovianは薬学部で英語を教えていたが、受講者の中には「将来は麻薬取締官になりたい」という者も毎年ちらほらいる。彼ら彼女らは将来、税関と連携して、水際で禁輸や密輸を食い止めてくれることだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』
『 YOLO 百元の恋 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, キム・ヘス, ヨム・ジョンア, 歴史, 監督:リュ・スンワン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 密輸 1970 』 -虚々実々の密輸ドラマ-

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

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