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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:CJ Entertainment Japan

『 王になった男 』 -現代韓国人の歴史意識が垣間見える-

Posted on 2021年8月22日 by cool-jupiter

王になった男 70点
2021年8月21日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:イ・ビョンホン ハン・ヒョジュ リュ・スンリョン チャン・グァン シム・ウンギョン
監督:チュ・チャンミン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210822223534j:plain


『 白頭山大噴火 』前にイ・ビョンホン出演作を観ておきたくなったので、近所のTSUTAYAでレンタル。韓国映画人の歴史意識がどのようなものなのかが見えてくる良作。

 

あらすじ

光海君(イ・ビョンホン)は何物かに暗殺を企てられたことから人間不信に陥り、自身の影武者となれる者を探していた。そこで自身に瓜二つの道化師ハソン(イ・ビョンホン)をひそかに宮廷入りさせるが、光海君はケシによって意識不明の重体になってしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

イ・ビョンホンの一人二役が冴えわたる。下品で粗野な道化師ハソンと人間不信の光海で表情が全く違う。もちろんメイクアップアーティストの力によるところも大きいし、照明の当て方で印象もがらりと変わる。それでもやはり役者本人の力が大きい。最初は簡単に見分けがついたけれども、それが場面によってどちらが本物でどちらが影武者か分からなくなるシーンがある。ハソンが「王になりたい」と言った時に描いた王のイメージ、そして我々が抱く「王様とはかくあるべし」という認識が一致するからこそだろう。本作が呈示する『 王になった男 』という像は、劇中の登場人物たちに向けてではなく、観る側に向けられている。いわばメタ構造の映画になっているのだ。

 

王の影武者として政務にあたるハソンをサポートする都承旨と内官の二人も素晴らしい。都承旨ホギュンを演じたリュ・スンリョンは『 エクストリーム・ジョブ 』の班長。コメディからシリアスまで、その演技ボキャブラリーの広さに脱帽である。宦官でもあるチョ内官は、なんと『 トガニ 幼き瞳の告発 』で一人二役を演じた恐怖の校長先生。人間の皮をかぶった悪魔というキャラが、イ・ビョンホン以外にも本作にはいた。それがまた、なんとも温かみのある宮廷人を演じている。序盤こそホラーなテイストで描かれるシーンもあるが、文字通りの意味で陰に陽に”王”を支える忠臣である。その他にもユーモア満点の立ち居振る舞いからの、あまりにもシリアスな結末を迎えてしまうト部将など、一人一人の役者の演技力の高さが目立つ。

 

名女優のシム・ウンギョンも、宮廷という伏魔殿で翻弄される女官を好演。入れ替わった王様の変化を皆で笑ったり、王様の食べ残しを有難く頂戴する序盤のシーンから、庶民の置かれた苦境、それによって人身売買に等しい行為によって宮廷入りせざるを得なかったという悲哀がダイレクトに伝わってくる。

 

政治の世界とは「1を与えて1を奪う」と都承旨ホギュンは言うが、それでは何も変わらない。持たざる者から奪うな。それが『 ジョーカー 』や『 パラサイト 半地下の家族 』の一面が訴えていたことではなかったか。それを力強く覆していく「王」の姿は感動的ですらある。格差の深刻さを訴える現代韓国映画は多いが、だからこそ平等を一時的にでも施行しようとした光海君を現代(21世紀)に蘇らせようとしたのだろう。それはとりもなおさず、現代の政治が”上級国民”を優遇し、下層民から搾り取っているからに他ならない。このあたりの感覚は、史実かどうかも疑わしいエピソードの再現にばかり凝る日本のドラマや映画製作者も見習うべきだろう。

 

ネガティブ・サイド

前半のコメディタッチが少々強すぎだと感じた。王の排泄物を医官が詳しく調べるのは『 宮廷女官チャングムの誓い 』でもお馴染みだったが、食べて味を確認するシーンは必要だったか・・・ 排泄分云々かんぬんに力を入れるのは『 悪魔を見た 』だけで充分である。

 

政務パートにもう少し力を入れてほしかった。2010年代といえば、すでに国策として映画を作り始めていたはず。ということは外国もマーケットだったわけで、もう少し当時の李氏朝鮮の情勢というものを、実際の政治を通じて見せてくれても良かったのではないか。皆が皆、韓国紙に詳しいわけではないのだから。

 

ハソンが見たくて見たくてたまらなかったハン・ヒョジュの笑顔は見られずじまい。なんたること・・・

 

総評

韓国史、あるいは一般的な王制や封建制度・貴族制度に関する知識がないと、宮廷で何が行われているのかが分からないだろう。逆に言えば、そうした知識がある程度あれば、なぜ韓国映画人が、史実に虚構の要素を交えながら本作を制作したのかが浮かび上がってくる。イ・ビョンホンの迫力やハン・ヒョジュの美貌だけではなく、脇を固めるキャストの確かな演技力が本作の物語性を豊かにしてくれている。韓国の歴史ドラマ好きなら観て損はないだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

チューナー

「殿下」の意。韓国の歴史ドラマを見ると、1話で10回以上使われているのではないかと思う。大昔が舞台、たとえば『 太王四神記 』では為政者はペーハー=陛下と呼ばれている。これは当時の朝鮮半島が中国の冊封体制に組み込まれていたかどうか、早い話が属国だったかどうかで変わる。独立国ならペーハー、属国ならチューナーとなるわけである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, イ・ビョンホン, シム・ウンギョン, チャン・グァン, ハン・ヒョジュ, リュ・スンリョン, 歴史, 監督:チュ・チャンミン, 配給会社:CJ Entertainment Japan, 韓国Leave a Comment on 『 王になった男 』 -現代韓国人の歴史意識が垣間見える-

『 トガニ 幼き瞳の告発 』 -精神的に削られる傑作-

Posted on 2020年4月11日 by cool-jupiter

トガニ 幼き瞳の告発 80点
2020年4月9日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:コン・ユ チョン・ユミ
監督:ファン・ドンヒョク

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心斎橋シネマートに行くことができないので、近所のTSUTAYAでずっと気になっていた作品をレンタル。傑作であったが、鑑賞には精神的なスタミナが必要である。2時間の作品を全て観るのに、三日を要してしまった。

 

あらすじ

恩師の紹介で地方の聴覚障がい者学校に赴任した美術教師カン・イノ(コン・ユ)は、そこで校長や教諭による生徒への性的虐待や暴行が行われていることを知る。人権センターの活動家ユジン(チョン・ユミ)と共に、彼らを告発するが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 岸和田少年愚連隊 』ならば笑い飛ばせるような教師から生徒への暴力も、聴覚障がい者への平手打ち連発やストンピングというのは笑えない。最初こそ憤りを感じたものの、だんだんとそれが恐怖に代わり、最後には吐き気になった。2時間5分の映画なのに、開始35分の時点で、もう観る側の精神はズタボロである。容赦のない体罰、いや暴力、虐待の嵐が吹き荒れている。そんなシーンの直後に挿入される無邪気な天使の笑顔。この落差は何なのだ。ここから勧善懲悪物語が本格的にスタートするのだという予想はしかし、見事に裏切られる。開始54分ちょうどで、ホラー映画的な展開に。初日はここで観るのをいったんストップしてしまった。近所のTSUTAYAで色々と借りてきたのはよいが、観る順番を間違えたようである。

 

それでもカン先生やユジンの尽力もあり、悪徳教師らを一気に逮捕。裁判に持ち込んだまではいいが、ここでも精神を削られる展開が。『 記者たち 衝撃と畏怖の真実 』のオープニングで、車イスの軍人に「起立して右手を上げて宣誓しなさい」と軍事法廷の裁判官が述べ、瞬時に己の愚を悟り、謝罪するシーンがある。対照的に、本作の裁判長(野間口徹によく似ている)は聴覚障がいの傍聴人らに口頭で注意をし、「手話通訳をつけてほしい」と叫ぶユジンを容赦なく退廷させる。公正公平な裁判制度とは何なのか、慨嘆させられる。そして、見た目だけではすぐに分からない障がいの持ち主に対する配慮のあるべき姿についても考えさせられる。『 37セカンズ 』という良作が邦画の世界でも生み出されるようになってきた。今こそ『 レインツリーの国 』のようなファンタジー・ロマンスではなく、聴覚障がい者による骨太の人間ドラマの制作が待ち望まれる。

 

それにしても、暴力シーンにせよレイプシーンにせよ、子ども相手にここまでやるのかと心配になってくる。『 PERFECT BLUE 』の暴行凌辱シーンの撮影では、男優が未麻を気遣うシーンが見られたが、韓国の子役たちのメンタルケアは万全なのだろうか。まあ、万全だからこうして公開されているのだろうが、『 韓国映画 この容赦なき人生 〜骨太コリアンムービー熱狂読本〜 』が言うところの【そこまでやるか、韓国。ついていけるか、日本】である。少女が無理やり手籠めにされるだけではなく、男性が少年を“愛でる”シーンは、凡百のホラーよりもよほど恐ろしいシーンである。観ていて本当に胸が締め付けられるような苦しさを感じる。特にミンス役の子の泣きと嗚咽の演技には魂を持っているかれそうになった。障がいを持つ子どもの演技としては『 ギルバート・グレイプ 』におけるレオナルド・ディカプリオに並ぶと感じた。子役だけではなく大人も見せる。特にユン・ジャエ先生、怖すぎである。日本で同じレベルの狂気の演技にトライしてほしいのは市川実日子か。時にgoing overboardな韓国俳優の演技であるが、本作ではその過剰なまでの演技が物言えぬ子どもらとのコントラストを特に際立たせた。

 

クライマックスの法廷からエンディングまでは『 黒い司法 0%からの奇跡 』的な展開を期待させてくれる。そして我々は地獄に突き落とされるような気分を味わう。このような気持ちになったのは、カトリーヌ・アルレーの小説『 わらの女 』や江戸川乱歩の小説『 陰獣 』を読んで以来・・・というのは大袈裟かもしれない。だが、この報われないエンディングこそが、公開当時の韓国社会を突き動かす原動力となったのだろう。『 殺人の追憶 』もそうだが、優れた映画というのは商業的・芸術的な媒体には留まらないものなのである。

 

ネガティブ・サイド

主人公の動きがとろい。もたもたしすぎである。ネチネチと小言を言う母親との絡みも中途半端であるように思う。カン先生の父性を描写するために、敢えて父性の欠如を描くのは悪いアイデアではない。ただ、子どもを病弱にする必要はなかった。言葉はアレだが、カン先生の子どもは健常な健康優良児に設定すればよかった。

 

またカン先生の恩師の教授に、もっと善人っぽい顔の人をキャスティングできなかったのか。普通っぽい人であるせいで、恩師からのプレッシャーがカン先生にそれほど強く重くのしかからないように見えてしまった。

 

総評

社会性と娯楽性(良い意味でも悪い意味でも)を兼ね備えたコリアン・ムービーの傑作である。この映画の公開を機に、事件の再捜査と法整備がなされ、再審理も行われたという。現実の事件が映画となり、映画が現実に影響を及ぼす。韓国社会における映画がどういったものであるのかを垣間見ることもできる。作品としては、非常に素晴らしい出来であるが、repeat viewingをしたいとは一切思わない。それほど精神的にキツイ映画である。鑑賞前後にメンタルを整える準備をされたし。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語会話レッスン

ペゴパ

「おなか減った」の意である。語尾を上げて、ペゴパ?(⤴)とすれば疑問文にもなる。韓国旅行(2021年以降か)で地元の食堂などに入った時に使ってみようではないか。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, コン・ユ, サスペンス, チョン・ユミ, 監督:ファン・ドンヒョク, 配給会社:CJ Entertainment Japan, 韓国Leave a Comment on 『 トガニ 幼き瞳の告発 』 -精神的に削られる傑作-

『 怪しい彼女 』 -Youth is Short, Walk on Girl!-

Posted on 2019年9月23日 by cool-jupiter

怪しい彼女 75点
2019年9月19日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シム・ウンギョン
監督:ファン・ドンヒョク

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190923002749j:plain 

森見登美彦の小説およびそのアニメ映画化作品の『 命短し歩けよ乙女 』は傑作だった。そして英題は“The night is short, Walk on girl”である。若さもまた短い。知らぬ間に失っているものだ。そして一度失えば二度と手には入らない。だが、もし若返ることができれば?The Fountain of Youthを求めるの古今東西の共通テーマである。老人が若返る映画はブラピ主演の傑作『 ベンジャミン・バトン 数奇な人生 』からライアン・レイノルズ主演の駄作『 セルフレス/覚醒した記憶 』まで数多い。韓流のお手並みはいかに?

 

あらすじ

70代の意地悪ばあさんオ・マルスンは、ある時、青春写真館で写真を撮ってもらう。するとどういうわけか20歳の若さに逆戻り。新生オ・マルスン=オ・ドゥリ(シム・ウンギョン)として新たな人生を歩み出す。そして、彼女の家族や周囲の人間に様々な影響を及ぼして・・・

 

ポジティブ・サイド

なんといってもシム・ウンギョンの熱演、これである。老マルスンを演じたナ・ムニは大阪は鶴橋か、東京なら新大久保または上野にしぶとく生息していそうなサバイバル系パワフルばあちゃんだが、シムは彼女の表情や話し方、仕草、体の使い方などを相当に研究した跡が伺える。『 ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 』のオールデン・エアエンライクは本作を観て反省するように。もちろん、メイクさんや衣装さんの力が大きかったのは言うまでもない。

 

若さを取り戻せたら、我々は何をするだろうか。ある者は勉強に打ち込むかもしれないし、スポーツに打ち込む者もいるだろう。恋愛にうつつを抜かす者もいれば、旅をして見聞を広める者もいるだろう。共通していることは、やれなかったこと、やり残したことをやってみたいという想いがそこにあるということだ。一個人の過去の苦労話だけではなく、韓国社会の暗部にも光を当てた点が本作の貢献だろう。現に『 主戦場 』でも、韓国の授業的価値観に支配された社会、伝統主義、教条主義的家父長制がミキ・デザキの批判の対象になっていた。だが、これはなにも韓国だけの暗部ではない。『 あなたの名前を呼べたなら 』ではインド社会における未亡人の生き辛さが直接・間接に描かれていたし、『 マイ・ブックショップ 』では英国の事情が、『 今日も嫌がらせ弁当 』では未亡人と男やもめのしんどい生活が(コミカルに)描かれていた。(ただ、日本の場合はどうなのだろうか。女やもめに花が咲く、男やめもに蛆が湧くと今でも言うように、日本において伝統的とされる価値観は戦後、せいぜい遡っても明治大正あたりが起源になるものが相当に多いのではないだろうか。夫婦ではなく女男(めおと)と昔は女性を前に呼称していたわけだから。日本の伝統の闇は浅くて深そうである)。

 

Back on track. マルスンは若かりし頃の夢を追うわけだが、逆に言えば年齢を理由に夢をあきらめる必要などないという高齢者へのエールにもなっているわけだ。さらに推し進めて言えば、年齢を理由に夢をあきらめてはならないという強迫的・脅迫的なメッセージを発している。年齢を重ねるとは、それだけ死に近づくということだ。ハイデガーならずとも、現存在は死にコミットしている。死ぬまでに何をすべきかである。本作は我々にそのことをあらためて考えるきっかけを与えてくれる。

 

もうひとつ、本作が単純に若さを謳歌すること、若さを賛美すること以上に高齢者へのエールとなっている点がある。それはパク氏の存在である。グループホームなどの施設で高齢者同士の恋愛が美しく花開いたり、あるいはとんでもないトラブルになったりすることはよくあるらしいが、このパク氏は一方的な思慕の念を70代になるまで抱き続けた、ある意味で男の中の男である。『 アンダー・ユア・ベッド 』や『 宮本から君へ 』を楽しみにしているJovianからすれば、無限のリスペクトを捧げたいほどの男である。パク氏の愛情に幸あれ。ファン・ドンヒョク監督も同じように感じていたようで、パク氏には素敵なプレゼントが贈られる。楽しみに待ってほしい。

 

本作はラブコメとしても秀逸で、外見はうら若き女子、中身はクソババアというキャラクターが自分の孫に夭折した自分の夫を重ね合わせるシーンが白眉である。ロマンティックでありながらコメディックなのだ。この監督はコメディを手掛けるの初めてらしいが、なかなかの手腕を持っている。今後にも期待。

 

ネガティブ・サイド

音楽のシーンにもう一つ迫力と臨場感が欲しかった。もちろん、音楽映画ではないのは承知しているが、老人ホームのカラオケで老マルスンのライバル的女性がセクシーな歌いっぷりを見せてくれたのだから、若マルスンも負けじと色っぽい歌い方をしてほしかった。年老いた心もときめくのだから、それを体で表現しても良かったように思う。

 

若返りの効果が失われるきっかけの見せ方は良かったが、それによって結末が見えてしまう。不治の病、交通事故、実は血のつながった親子または兄妹というのは韓流ドラマや韓国映画のお約束であるが、さすがにそろそろ別の路線を模索する時期に来ているのではないだろうか。

 

総評

高齢化においては世界ナンバーワンの日本である。老いてますます盛んという言葉があるし、ビューティフルエージング協会も活発に活動している。老いるというのは生理現象であって、そこにネガティブな要素を本来は見出すべきではないのだろう。姥捨て山はおとぎ話であって、しかもハッピーエンディングである。不器用な生き方が祟って、家族に捨てられそうになった老人が、若さを得、そして家族と最終的に和解するという、とてもシリアスなコメディである。日本版リメイクもチェックしようと思うし、ハリウッドリメイクも楽しみである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Did you sleep with him?

 

「アイツと寝たのか?」の意である。日本語でも英語でも、寝るという営みは、生理現象と共に男女の行為を指す意味でも使われている。それは韓国語でも同じだろう。“I want to sleep with you.”や“I don’t want to sleep without you.”と言えるようになれば、英会話スクールは卒業である。こうした言葉をスッと口に出せる関係を作れるほどに、コミュニケーションが取れているということだから。

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『サニー 永遠の仲間たち』 -止まっていた時間が動き出す、韓流青春映画の傑作- 

Posted on 2018年8月2日2019年4月30日 by cool-jupiter

サニー 永遠の仲間たち 80点

2018年8月9日 レンタルDVD観賞
出演:シム・ウンギョン/ユ・ホジョン カン・ソラ/ジン・ヒギョン キム・ミニョン/コ・スヒ パク・チンジュ/ホン・ジニ ミン・ヒョリン ナム・ボラ/イ・ヨンギョン キム・ボミ/キム・ヨンギョン
監督:カン・ヒョンチョル

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180810024353j:plain

イム・ナミは母としても主婦としても忙しい生活を送る42歳。夫は稼ぎもよく生活に不自由は無かった。しかし、義母の入院先で高校時代の親友にしてチーム「SUNNY」のリーダー、ハ・チュナと思わぬ再会を果たす。チュナは余命2カ月、最期にSUNNYのメンバーと出会って死にたいとナミに伝える。そんな時、ナミの夫から急きょ、2か月の出張に出るとの電話が。これを僥倖とナミは探偵を使って、かつてのメンバーを探し始める。止まっていた時が動き始める・・・

1970~1980年代の洋楽ヒットナンバーに乗って云々と喧伝されているが、フランス映画『ラ・ブーム』への言及あり、ソフィー・マルソーへの言及あり、ロッキーⅣの巨大広告あり、独裁政権打倒のデモあり、音楽喫茶での耽溺風景ありと、時代を彩る要素であれば、何でもぶち込まれているのであり、時代と権力による抑圧からの逃避に音楽と踊りがあったとすれば『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・アディオス』の冒頭で語られたようなキューバ独立と音楽の意外な(ある意味では当然の)関係を見出すこともできるし、『無伴奏』のような時代はお隣にもあって、そこで輝く少年少女もいたんだなと思うこともできる。しかし、この映画の魅力はそうしたところにあるのではなく、むしろそうしたエンターテイメント的に分かりやすい要素を全て除去したとしても、一つの感動的なストーリーとして成立するであろうというところだ。

主題は17歳の青春と友情だが、その奥に潜むテーマはそんなキラキラと輝くものではなく、もっと暗くドロドロとした、人間が生きる上で避けては通れない世の暗部とでも言うべき物にどのように立ち向かうのか、である。この辺の解釈は人によって分かれるだろうし、2度、3度と観賞していくことで物語の異なる面や層が見えてくるかもしれない。都市と地方の格差、容貌の格差、貧富の格差、生徒同士のいじめや教師による体罰まがいの対応、姑の嫁いびりなど、人生やこの生活世界において、全く美しくない部分が生々しく映し出される。しかし、それこそが我々が目を逸らしてはならないもので、その究極の対象は「死」である。かつての仲間の死が目前に迫った時、その仲間に贈ることができるものは何であるのか。それは「あなたは確かに生きていたし、これからも私たちの心の中で生き続ける」というメッセージであるということを本作は力強く宣言する。このあたりはどこか『焼肉ドラゴン』を思わせる。家族=何があっても離れない小さな共同体、のようなイメージを拡大再生産するだけの作品が溢れる中、家族=離散しなければならないもの、と捉え直したところが新しかった。同様に、友情にも排除の論理がある。それを正面から描く作品というのは存外に少ないのではないか。最近だと『虹色デイズ』が近かったか。何を言っているのか分からん、という人は是非本作を観よう。

日本版リメイクが劇場公開間近だが、上述したように本作の魅力は、音楽の要素を全て取り除いたとしても面白さを保っているであろうという点にある。今さら祈っても手遅れなのだが、それでも大根仁監督が小室サウンドを前面に押し出し過ぎない作品に仕上げてくれていることを祈るしかない。

この映画は冒頭から自虐的なシーン連発で笑わせてくれる。韓国ドラマのワンシーンが一瞬ずつ映し出されていくのだが、「僕たちは兄妹なんだ」、「不治の病なのか」などの韓国ドラマの様式美とも言えるシーンの切り貼りで、画面内の全ての人たちが呆れてしまうシーンがある。カン・ヒョンチョル監督は「この映画は普通の韓国映画・ドラマとは一味違いますよ」と作中で堂々とメッセージを発信しているのだ。この時点で「傑作に巡り合えた」との印象を受けたが、その感覚は裏切られなかった。生きるとはどういうことか。息をして心臓が動いているから生きているわけではない。生きるとは、必死になることだ。考えてみれば、必死とは凄い言葉だ。必ず死ぬ、死亡率100%というわけだ。しかし、哲学者ハイデガーの言葉を借りるまでもなく、我々はあまりにも死を意識することなく頽落している。生きる意味を見失いがちな現代人、特に30代40代50代には自信を持ってお勧めできる、韓流傑作青春映画である。

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, シム・ウンギョン, ヒューマンドラマ, 監督:カン・ヒョンチョル, 配給会社:CJ Entertainment Japan, 韓国Leave a Comment on 『サニー 永遠の仲間たち』 -止まっていた時間が動き出す、韓流青春映画の傑作- 

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