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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:ファン・ドンヒョク

『 トガニ 幼き瞳の告発 』 -精神的に削られる傑作-

Posted on 2020年4月11日 by cool-jupiter

トガニ 幼き瞳の告発 80点
2020年4月9日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:コン・ユ チョン・ユミ
監督:ファン・ドンヒョク

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200411141316j:plain
 

心斎橋シネマートに行くことができないので、近所のTSUTAYAでずっと気になっていた作品をレンタル。傑作であったが、鑑賞には精神的なスタミナが必要である。2時間の作品を全て観るのに、三日を要してしまった。

 

あらすじ

恩師の紹介で地方の聴覚障がい者学校に赴任した美術教師カン・イノ(コン・ユ)は、そこで校長や教諭による生徒への性的虐待や暴行が行われていることを知る。人権センターの活動家ユジン(チョン・ユミ)と共に、彼らを告発するが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 岸和田少年愚連隊 』ならば笑い飛ばせるような教師から生徒への暴力も、聴覚障がい者への平手打ち連発やストンピングというのは笑えない。最初こそ憤りを感じたものの、だんだんとそれが恐怖に代わり、最後には吐き気になった。2時間5分の映画なのに、開始35分の時点で、もう観る側の精神はズタボロである。容赦のない体罰、いや暴力、虐待の嵐が吹き荒れている。そんなシーンの直後に挿入される無邪気な天使の笑顔。この落差は何なのだ。ここから勧善懲悪物語が本格的にスタートするのだという予想はしかし、見事に裏切られる。開始54分ちょうどで、ホラー映画的な展開に。初日はここで観るのをいったんストップしてしまった。近所のTSUTAYAで色々と借りてきたのはよいが、観る順番を間違えたようである。

 

それでもカン先生やユジンの尽力もあり、悪徳教師らを一気に逮捕。裁判に持ち込んだまではいいが、ここでも精神を削られる展開が。『 記者たち 衝撃と畏怖の真実 』のオープニングで、車イスの軍人に「起立して右手を上げて宣誓しなさい」と軍事法廷の裁判官が述べ、瞬時に己の愚を悟り、謝罪するシーンがある。対照的に、本作の裁判長(野間口徹によく似ている)は聴覚障がいの傍聴人らに口頭で注意をし、「手話通訳をつけてほしい」と叫ぶユジンを容赦なく退廷させる。公正公平な裁判制度とは何なのか、慨嘆させられる。そして、見た目だけではすぐに分からない障がいの持ち主に対する配慮のあるべき姿についても考えさせられる。『 37セカンズ 』という良作が邦画の世界でも生み出されるようになってきた。今こそ『 レインツリーの国 』のようなファンタジー・ロマンスではなく、聴覚障がい者による骨太の人間ドラマの制作が待ち望まれる。

 

それにしても、暴力シーンにせよレイプシーンにせよ、子ども相手にここまでやるのかと心配になってくる。『 PERFECT BLUE 』の暴行凌辱シーンの撮影では、男優が未麻を気遣うシーンが見られたが、韓国の子役たちのメンタルケアは万全なのだろうか。まあ、万全だからこうして公開されているのだろうが、『 韓国映画 この容赦なき人生 〜骨太コリアンムービー熱狂読本〜 』が言うところの【そこまでやるか、韓国。ついていけるか、日本】である。少女が無理やり手籠めにされるだけではなく、男性が少年を“愛でる”シーンは、凡百のホラーよりもよほど恐ろしいシーンである。観ていて本当に胸が締め付けられるような苦しさを感じる。特にミンス役の子の泣きと嗚咽の演技には魂を持っているかれそうになった。障がいを持つ子どもの演技としては『 ギルバート・グレイプ 』におけるレオナルド・ディカプリオに並ぶと感じた。子役だけではなく大人も見せる。特にユン・ジャエ先生、怖すぎである。日本で同じレベルの狂気の演技にトライしてほしいのは市川実日子か。時にgoing overboardな韓国俳優の演技であるが、本作ではその過剰なまでの演技が物言えぬ子どもらとのコントラストを特に際立たせた。

 

クライマックスの法廷からエンディングまでは『 黒い司法 0%からの奇跡 』的な展開を期待させてくれる。そして我々は地獄に突き落とされるような気分を味わう。このような気持ちになったのは、カトリーヌ・アルレーの小説『 わらの女 』や江戸川乱歩の小説『 陰獣 』を読んで以来・・・というのは大袈裟かもしれない。だが、この報われないエンディングこそが、公開当時の韓国社会を突き動かす原動力となったのだろう。『 殺人の追憶 』もそうだが、優れた映画というのは商業的・芸術的な媒体には留まらないものなのである。

 

ネガティブ・サイド

主人公の動きがとろい。もたもたしすぎである。ネチネチと小言を言う母親との絡みも中途半端であるように思う。カン先生の父性を描写するために、敢えて父性の欠如を描くのは悪いアイデアではない。ただ、子どもを病弱にする必要はなかった。言葉はアレだが、カン先生の子どもは健常な健康優良児に設定すればよかった。

 

またカン先生の恩師の教授に、もっと善人っぽい顔の人をキャスティングできなかったのか。普通っぽい人であるせいで、恩師からのプレッシャーがカン先生にそれほど強く重くのしかからないように見えてしまった。

 

総評

社会性と娯楽性(良い意味でも悪い意味でも)を兼ね備えたコリアン・ムービーの傑作である。この映画の公開を機に、事件の再捜査と法整備がなされ、再審理も行われたという。現実の事件が映画となり、映画が現実に影響を及ぼす。韓国社会における映画がどういったものであるのかを垣間見ることもできる。作品としては、非常に素晴らしい出来であるが、repeat viewingをしたいとは一切思わない。それほど精神的にキツイ映画である。鑑賞前後にメンタルを整える準備をされたし。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語会話レッスン

ペゴパ

「おなか減った」の意である。語尾を上げて、ペゴパ?(⤴)とすれば疑問文にもなる。韓国旅行(2021年以降か)で地元の食堂などに入った時に使ってみようではないか。

 

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『 怪しい彼女 』 -Youth is Short, Walk on Girl!-

Posted on 2019年9月23日 by cool-jupiter

怪しい彼女 75点
2019年9月19日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シム・ウンギョン
監督:ファン・ドンヒョク

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190923002749j:plain 

森見登美彦の小説およびそのアニメ映画化作品の『 命短し歩けよ乙女 』は傑作だった。そして英題は“The night is short, Walk on girl”である。若さもまた短い。知らぬ間に失っているものだ。そして一度失えば二度と手には入らない。だが、もし若返ることができれば?The Fountain of Youthを求めるの古今東西の共通テーマである。老人が若返る映画はブラピ主演の傑作『 ベンジャミン・バトン 数奇な人生 』からライアン・レイノルズ主演の駄作『 セルフレス/覚醒した記憶 』まで数多い。韓流のお手並みはいかに?

 

あらすじ

70代の意地悪ばあさんオ・マルスンは、ある時、青春写真館で写真を撮ってもらう。するとどういうわけか20歳の若さに逆戻り。新生オ・マルスン=オ・ドゥリ(シム・ウンギョン)として新たな人生を歩み出す。そして、彼女の家族や周囲の人間に様々な影響を及ぼして・・・

 

ポジティブ・サイド

なんといってもシム・ウンギョンの熱演、これである。老マルスンを演じたナ・ムニは大阪は鶴橋か、東京なら新大久保または上野にしぶとく生息していそうなサバイバル系パワフルばあちゃんだが、シムは彼女の表情や話し方、仕草、体の使い方などを相当に研究した跡が伺える。『 ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 』のオールデン・エアエンライクは本作を観て反省するように。もちろん、メイクさんや衣装さんの力が大きかったのは言うまでもない。

 

若さを取り戻せたら、我々は何をするだろうか。ある者は勉強に打ち込むかもしれないし、スポーツに打ち込む者もいるだろう。恋愛にうつつを抜かす者もいれば、旅をして見聞を広める者もいるだろう。共通していることは、やれなかったこと、やり残したことをやってみたいという想いがそこにあるということだ。一個人の過去の苦労話だけではなく、韓国社会の暗部にも光を当てた点が本作の貢献だろう。現に『 主戦場 』でも、韓国の授業的価値観に支配された社会、伝統主義、教条主義的家父長制がミキ・デザキの批判の対象になっていた。だが、これはなにも韓国だけの暗部ではない。『 あなたの名前を呼べたなら 』ではインド社会における未亡人の生き辛さが直接・間接に描かれていたし、『 マイ・ブックショップ 』では英国の事情が、『 今日も嫌がらせ弁当 』では未亡人と男やもめのしんどい生活が(コミカルに)描かれていた。(ただ、日本の場合はどうなのだろうか。女やもめに花が咲く、男やめもに蛆が湧くと今でも言うように、日本において伝統的とされる価値観は戦後、せいぜい遡っても明治大正あたりが起源になるものが相当に多いのではないだろうか。夫婦ではなく女男(めおと)と昔は女性を前に呼称していたわけだから。日本の伝統の闇は浅くて深そうである)。

 

Back on track. マルスンは若かりし頃の夢を追うわけだが、逆に言えば年齢を理由に夢をあきらめる必要などないという高齢者へのエールにもなっているわけだ。さらに推し進めて言えば、年齢を理由に夢をあきらめてはならないという強迫的・脅迫的なメッセージを発している。年齢を重ねるとは、それだけ死に近づくということだ。ハイデガーならずとも、現存在は死にコミットしている。死ぬまでに何をすべきかである。本作は我々にそのことをあらためて考えるきっかけを与えてくれる。

 

もうひとつ、本作が単純に若さを謳歌すること、若さを賛美すること以上に高齢者へのエールとなっている点がある。それはパク氏の存在である。グループホームなどの施設で高齢者同士の恋愛が美しく花開いたり、あるいはとんでもないトラブルになったりすることはよくあるらしいが、このパク氏は一方的な思慕の念を70代になるまで抱き続けた、ある意味で男の中の男である。『 アンダー・ユア・ベッド 』や『 宮本から君へ 』を楽しみにしているJovianからすれば、無限のリスペクトを捧げたいほどの男である。パク氏の愛情に幸あれ。ファン・ドンヒョク監督も同じように感じていたようで、パク氏には素敵なプレゼントが贈られる。楽しみに待ってほしい。

 

本作はラブコメとしても秀逸で、外見はうら若き女子、中身はクソババアというキャラクターが自分の孫に夭折した自分の夫を重ね合わせるシーンが白眉である。ロマンティックでありながらコメディックなのだ。この監督はコメディを手掛けるの初めてらしいが、なかなかの手腕を持っている。今後にも期待。

 

ネガティブ・サイド

音楽のシーンにもう一つ迫力と臨場感が欲しかった。もちろん、音楽映画ではないのは承知しているが、老人ホームのカラオケで老マルスンのライバル的女性がセクシーな歌いっぷりを見せてくれたのだから、若マルスンも負けじと色っぽい歌い方をしてほしかった。年老いた心もときめくのだから、それを体で表現しても良かったように思う。

 

若返りの効果が失われるきっかけの見せ方は良かったが、それによって結末が見えてしまう。不治の病、交通事故、実は血のつながった親子または兄妹というのは韓流ドラマや韓国映画のお約束であるが、さすがにそろそろ別の路線を模索する時期に来ているのではないだろうか。

 

総評

高齢化においては世界ナンバーワンの日本である。老いてますます盛んという言葉があるし、ビューティフルエージング協会も活発に活動している。老いるというのは生理現象であって、そこにネガティブな要素を本来は見出すべきではないのだろう。姥捨て山はおとぎ話であって、しかもハッピーエンディングである。不器用な生き方が祟って、家族に捨てられそうになった老人が、若さを得、そして家族と最終的に和解するという、とてもシリアスなコメディである。日本版リメイクもチェックしようと思うし、ハリウッドリメイクも楽しみである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Did you sleep with him?

 

「アイツと寝たのか?」の意である。日本語でも英語でも、寝るという営みは、生理現象と共に男女の行為を指す意味でも使われている。それは韓国語でも同じだろう。“I want to sleep with you.”や“I don’t want to sleep without you.”と言えるようになれば、英会話スクールは卒業である。こうした言葉をスッと口に出せる関係を作れるほどに、コミュニケーションが取れているということだから。

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