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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ベン・バート

『 ようこそ映画音響の世界へ 』 -オーディオ・エンジニアに敬意を-

Posted on 2020年9月28日2021年1月22日 by cool-jupiter

ようこそ映画音響の世界へ 75点
2020年9月26日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ウォルター・マーチ ベン・バート ゲイリー・ライドストローム
監督:ミッジ・コスティン

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『 すばらしき映画音楽たち 』という優れた先行作品があり、どうしてもその二番煎じであるとの印象は拭い難い。しかし、音響という仕組みや現象を映画史と共に概説してくれる本作が、映画ファンの視野を広げてくれることは間違いない。

 

あらすじ

『 スター・ウォーズ 』のベン・バート、『 地獄の黙示録 』のウォルター・マーチ、『 ジュラシック・パーク 』のゲイリー・ライドストロームら、映画音響のパイオニアたちのインタビューを軸に、映画における音響の役割とその拡大の歴史に迫っていくドキュメンタリー。

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ポジティブ・サイド

映画はキャラクターと物語と映像と音楽で成り立っている。しかし、じつはそこにもう一つ、「音響」という要素もある。我々は映画サントラを買うことはあっても、音響サントラを買うことはない。というか、売っていない。映画サントラの需要は分かりやすい。その音楽を聴けば、映画のシーンやセリフや物語そのものが脳内で再生されるからだ。邦画で最もインパクトのあるサントラと言えば伊福部昭の『 ゴジラ 』のマーチ、そして海外の映画では『 スーパーマン 』のテーマや『 ロッキー 』の“Gonna Fly Now”、『 トップガン 』の“Danger Zone”や“Take my breath away/愛は吐息のように”が思い浮かぶ。だが、このようにも考えてみてほしい。『 スター・ウォーズ 』で最も印象に残っている音は、実は音楽ではなく、ライトセイバーの唸るような音、ブラスターの発射音、TIEファイターの飛行音やビーム発射音、ミレニアム・ファルコンのジェット音やコクピット内部の機械音、そしてワープ時の音ではないだろうか。

 

本作は、音楽ではなく音響にフォーカスした稀有なドキュメンタリーである。映画史の中で音響がどのように導入され、発達していったのかを稀代のオーディオ・エンジニアらや映画監督たちとのインタビューを通じて再発見していく物語である。

 

個人的に勉強になったと感じたのは、集音技術発達前の映画の作り方。その描き方がコミカルなのだが、作っている側としては非常に悩ましい問題だったのだろう。もう一つはフォーリー・サウンドの歴史。『 羊と鋼の森 』で“4分33秒”で名高いジョン・ケージについて述べたが、ジャック・フォーリーについては全く背景知識を持っていなかった。ステレオの発明が金山の発見ならば、フォーリー・サウンドの発明は、大袈裟な言い方をすれば、新大陸を発見したようなものである。それほどのインパクトを感じたし、この分野には無限に近い鉱脈が眠っているのは間違いない。

 

映画の黎明期から2018年までの映画史が音響の面からわずか90分程度にまとめられている。発見の連続であったし、今後は映画館でエンドクレジットを眺める際の楽しみが増えた。映画ファンだけなく、広く一般の人々にも観てもらいたいと願う。

 

ネガティブ・サイド

映画史を俯瞰する圧倒的スケールの作品であるが、少し人間だけフォーカスしすぎているとも感じた。今後10年で映画音響がどのような進化を遂げるのかについての道標を示してもよかったのではないか。例えば『 シライサン 』で実施されたイヤホン360上映のような、新機軸の音響効果を体感できる映画館またはイヤホン・ヘッドセットの開発など。または、ホロフォニクス=立体音響録音技術を今後どうやって映画館に組み込んでいくのかといったことも示唆できたのではないか。

 

様々な作品が紹介されていたが、そこにアニメーションやNon-Americanの作品がなかったことは率直に言って不満である。女性や外国ルーツの女性エンジニアにフォーカスするのなら、作品にもinclusivenessが欲しかった。

 

総評

2020年はコロナ禍により世界中の映画館が存在意義を問い直された。もちろん映画館の存在意義は、圧倒的な大画面である。だが、映画館でこそ味わえる音響の世界もあるし、映画そのものを鑑賞する時に音楽だけではなく音響に我々はもっと注意を向けるべきだ。そうしたことを本作を通じて考えさせられた。今後は照明や撮影監督にスポットライトを当てた作品が、さらには映画館という施設そのものの発展史を概説するドキュメンタリーが求められる。もう誰かが作り始めているかな。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Talk about ~

「 ~について語る 」という意味が主役であるが、他にも用法がある。これは「 まさに~だ 」、「 何という~なんだ 」という意味で使われる慣用表現。作中では“Talk about innovative”と使われていた。つまり、「 なんと革新的なのか 」という意味である。

 

My client never makes eye contact with me. Talk about a lack of respect!

クライアントは俺と目を合わせないんだよ。まったくもって失礼じゃないか!

 

のように使う。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, ウォルター・マーチ, ゲイリー・ライドストローム, ドキュメンタリー, ベン・バート, 監督:ミッジ・コスティン, 配給会社:アンプラグドLeave a Comment on 『 ようこそ映画音響の世界へ 』 -オーディオ・エンジニアに敬意を-

『 ウォーリー 』 -ロボットたちの織り成す美しいロマンス-

Posted on 2020年1月22日 by cool-jupiter

ウォーリー 85点
2020年1月21日 レンタルBlu-rayにて鑑賞
出演:ベン・バート
監督:アンドリュー・スタントン

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Jovianはアニメーション映画をそれほど好まない。アニメ映画は、それなりに鑑賞する。アニメーション=映像を主眼にする。アニメ=ストーリーテリングを主眼にする。手塚治虫にならって、そのように区別したい。その意味では、本作はアニメーションとアニメ、両方の分野における極北である。まさに炉火純青である。

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あらすじ

人類が宇宙に旅立った後の荒涼とした地球で、ロボットのウォーリー(ベン・バート)はゴミ収集に明け暮れていた。唯一の友だちはゴキブリのハル。だが、ある日、空から宇宙船がやってきて、探査ロボット、イヴを置いていった。イヴに一目惚れしたウォーリーは、何とかイヴとコミュニケーションを取ろうとするが・・・

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ポジティブ・サイド

ピクサー作品はLA行きの機内で観た『 モンスターズ・インク 』が個人的にさほどでもなかったので、以来長きにわたって敬遠していた。しかし、先日訪れたピクサー展の内容をつぶさに見て、その技術の粋に感銘を受けた。そして、ストーリーが最も面白そうな本作を借りてきた。その判断は間違いではなかったと思う。これは文句なしの傑作である。

 

オープニングから数十分、セリフが全くない。これだけで名作の予感がする。『 続・夕陽のガンマン 』もそうだった。テレビドラマではないのだから、映画は映像でもって物語を語らしめるべきである。『 グリンチ(2018) 』のアニメーションも美麗だったが、ピクサーはその一段上を行っている。その技術の高さについては、関西在住の方は大阪梅田のグランフロントでピクサー展を行っているので、そちらに行かれたし。このクオリティのCG画像が2008年のものだとすると、現在のピクサーの技術水準はどのあたりにあるのだろうか。それとも、時間とカネと人手をかければ、どこの組織や会社でも、この画のレベルに到達できるのだろうか。

 

それにしてもウォーリーというキャラクターの可愛らしさよ。それは外見から来るものではない。人によっては見方は様々だろうが、パッと見ではウォーリーは可愛らしくは見えない。しかし、誰もいない世界で一人せっせとゴミを収集し続ける様に、観る側もどうしても孤独感を共有してしまう。そしてその孤独さは、人間だけではなくロボットすらも蝕むものであることを思い知る。『 孤独なふりした世界で 』でピーター・ディングレイジの演じたデルという男の broken な様はウォーリーにインスピレーションを得たのではないかとも感じられた。孤独に適応した者ほど、他者とのつながりを断ち切りにくいのだ。

 

このウォーリーはR2-D2やディズニー映画『 ブラックホール 』のV.I.N.CENT.やB.O.B.の系譜に連なるロボットである。つまり、初見では可愛くは見えないのだが、徐々に愛着が湧いてくるタイプである。その造形は『 ニューヨーク東8番街の奇跡 』的であるとも言える。ウォーリーが長く孤独なゴミ収集生活から、文化的な品々を選り分け、大切に保管していることに、Humanity=ヒューマニティー=人間性と、Humanities=ヒューマニティーズ=人文学の両方の芽生えが見て取れる。一方で、地上のみならず軌道上までゴミだらけにしていく人類=Humanityとは、いったい何であるのか。そして、宇宙船アクシオム号で怠惰に生きる人類に、人間性はあるのか。その人間性が欠落したかに見える人類の産物であるイヴに、どうやって人間性が芽生えるのか。その過程が素晴らしく美しい。邦画『 8年越しの花嫁 奇跡の実話 』のとある脚色部分は、本作に着想を得たのではないか。

 

融通の利かないロボットたちと、故障扱いされたロボットたちのスラップスティックな対立、そして『 2001年宇宙の旅 』的な人間vs人工知能という対立、それらをすべて内包する形で花開くウォーリーとイヴの物語は、2000年代最高峰のものの一つだろう。

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ネガティブ・サイド

ストーリーにオリジナリティが少々欠けている。未来そして宇宙の世界の人間像は、漫画『 銀河鉄道999 』のとあるエピソードの丸パクリ(まあ、偶然の一致・・・というか、誰でも考え付く陳腐な未来像)である。

 

『 エリジウム 』や『 オブリビオン 』、『 インターステラー 』、『 パッセンジャー 』といった作品の下敷き的な描写もあるが、そもそも荒涼とした地球、そして宇宙に新天地を求める人類といったテーマ自体が手垢のついたものになっている。ウォーリーの孤独と人類の業をもう少し新たな次元で関連付けることはできなかっただろうか。

 

また、映像はめちゃくちゃ美しいが、これは小学校低学年の子どもを引き付けられるのだろうか。Jovian自身の経験や、甥っ子たちの観察からすると、子どもを引き付けるのは絵だけではなく声もである。その声が序盤はほとんど聞こえない、つまり本当に小さな子どもなら序盤で寝落ちしてしまう恐れなしとしないところが弱点である。

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総評

愛嬌のあるロボットの物語というのは、元来は日本のお家芸だったはずである。アメリカでロボットと言えば『 アイ、ロボット 』のように反乱するのがお約束。『 ターミネーター 』も元々は殺戮マシーンだった。だが、本作で紡がれるウォーリーとイヴの物語は、CG映像よりも美しい。中学生以上であれば、何かを感じ取れるに違いない。もちろん大人が楽しむことも十二分に可能な大傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

rogue

凶暴な、荒くれの、面倒な、のような意味である。劇中でウォーリーとイヴが“Caution, rogue robots”としてアクシオム艦内で指名手配される。人間に危害を加えかねないロボットにつき注意というわけだ。『 ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション 』や『 ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 』など、メジャーな映画のタイトルにも含まれている語。ドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮を指して「ならず者国家」と言った時にも’Rogue Nation’という表現を使っていた。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, A Rank, SF, アニメ, アメリカ, ベン・バート, ロマンス, 監督:アンドリュー・スタントン, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ウォーリー 』 -ロボットたちの織り成す美しいロマンス-

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