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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:本木克英

『 シャイロックの子供たち 』 -カタルシスとディテールが弱い-

Posted on 2023年3月11日 by cool-jupiter

シャイロックの子供たち 50点
2023年3月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:阿部サダヲ
監督:本木克英

仕事が繁忙期なので簡易レビュー。

 

あらすじ

東京第一銀行・長原支店に務めるお客様係の西木(阿部サダヲ)は、同支店で発生した100万円の現金紛失事件を密かに調査していた。そこには支店の不可解な融資が絡んでいるらしいと気付いた西木は、やがて支店を超えた銀行の闇に迫っていく・・・

ポジティブ・サイド

銀行のブラック体質がよくよく描けている。Jovianの大学の先輩、同級生、後輩は銀行員だらけだが、だいたい皆ソッコーで辞めていく(まあ、ICU卒はだいたいどんな職場ですぐに辞める傾向が強いのだが)。とある先輩が銀行での業務を「毎日がクロイワとファイナル前だよ」とおっしゃっておられた、その空気が本作からありありと感じられる。

 

*クロイワというのは、まあ、大昔のICU第一男子寮のイニシエーションの一環。興味のある方はここにその一端が書かれているので、読んでみるのも乙かもしれません。

 

出演する俳優たちの多くに力があり、演じているのではなく、もともとそういう人なのだと感じられるぐらいにハマっていた。特に橋爪功と忍成修吾は最高だった。古典の名作と、そこに込められたメッセージを上手く融合させた佳作。

ネガティブ・サイド

銀行は15時ピッタリに窓口が閉まって、現金やら伝票の照合をして、それを本店に報告して、本店はさらにお上に報告する。何かが足りなければ、それこそシュレッダーの紙クズすら丹念に見ていくと聞いたことがある。そうした銀行の実態からすると、あるキャラのある行動はあまりにも軽率。というか、ご都合主義的。

 

担保もないのに億のカネを融資するというのもリアリティに欠ける。不動産会社の取引先となるデベロッパーについても、よくよく調べてこそ銀行。そのあたりを全部すっ飛ばすのは尺の関係で仕方がないのかもしれないが、結果として綿密に練られた悪事が最後にすべて白日の下に晒されるというカタルシスではなく、当事者だけがダメージを受ける展開に矮小化されてしまった。

 

総評

池井戸潤作品としてはカタルシスが弱い。『 七つの会議 』や『 空飛ぶタイヤ 』の方が個人的には波長が合った。ただ『 アキラとあきら 』が銀行と大企業の話だったのに対して、本作は銀行と市井の人々の話。その意味で、こちらの方が親しみやすいし共感しやすいという人も多くいるだろう。苦みのあるエンディングとはいえ、勧善懲悪ものとして見れば悪い作品ではない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Payback is a bitch!

たしか『 ローグ 』でも紹介した表現。「やられたら倍返し!」の私訳(というかWWEなどからのパクリ)。I’ll pay you back double! は字義的かつお上品に聞こえる。別に文字通りに2倍をお返しするというわけではなく、やられた以上にやり返すという意味なので、上の表現でいいと思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 湯道 』
『 少女は卒業しない 』
『 Winny 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:本木克英, 配給会社:松竹, 阿部サダヲLeave a Comment on 『 シャイロックの子供たち 』 -カタルシスとディテールが弱い-

『 居眠り磐音 』 -“陽炎の辻”前日譚、または坂崎磐音は如何にして脱藩して浪々の身になったか-

Posted on 2019年5月19日2020年10月18日 by cool-jupiter

居眠り磐音 75点
2019年5月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松坂桃李 芳根京子 南沙良
監督:本木克英

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190519173129j:plain
山本耕史から松坂桃李へと確かにバトンは受け渡された。長谷川平蔵や水戸光圀など、役者を変えながらシリーズを存続させていく、あるいはリメイクし、あるいはリブートするというのは古今東西で用いられてきた手法である。それが奏功する場合もあれば、盛大に失敗することもある。テレビドラマから銀幕へと移ってきた本作はどうか。成功である。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190519173157j:plain

あらすじ

江戸勤番を終えた坂崎磐音(松坂桃李)とその仲間達。幼馴染であり、これからは祝言を挙げて義理の兄弟にもなろうという時に、ちょっとした行き違いから互いに斬り合うことに。親友を斬ってしまった磐音は、妻となるべき奈緒(芳根京子)の元をも去り、江戸で浪々の身になっていた。そんな時、磐音に両替屋の用心棒にならないかとの誘いがあり・・・

 

ポジティブ・サイド

まずは何をおいても、ピエール瀧の代役を務めた、というよりも取り直しによって作品の質をさらに高めてくれた(勝手にそう断言させてもらう)奥田瑛二に満腔の敬意を表したい。『 ゲティ家の身代金 』で、ケビン・スペイシーの代役を務めたクリストファー・プラマーと同じく、彼の仕事は本作の骨格をより太くしてくれた。

 

そして芳根京子と奥田瑛二が相対するシーンでの彼女の涙。喜怒哀楽は演技の基本にして究極だが、芳根がこのロングのワンカットで流す涙は、『 君の膵臓をたべたい 』で北村匠海が桜良の家で流す涙のドラマチックさに匹敵する。芳根には、今後はあまり女子高生役などは引き受けることなく、本格路線を目指してほしい。その時は、Joviam一押しの南沙良も一緒に連れて行ってあげて欲しい。

 

そして山本耕史からのバトンを見事に受け継いだ松坂桃李も称えたい。ドラマ版では柄の部分をシャキーンと持ち変えて開眼するスタイルだったのを、剣をまるで杖であるかのように扱う様が妙にシネマティックで銀幕に映えたのは、松坂の雰囲気と撮影監督の手腕であろう。また磐音が強すぎないのも良い。ドラマ版を毎回欠かさず観ていたわけではないが、昼行灯の磐音の描写は映画版の本作の方がより説得力があった。鰻を黙々と捌く手つきに職人気質がありありと感じられながら、長屋暮らしには生活感が欠けており、生活力がありそうなのに無い、しかし仕事はきっちりやるという、磐音の本質が見事に描写されていた。そんな磐音のチャンバラでも、適度に負傷するのも良い。何食わぬ顔で「浅手じゃ」と、おこんに告げるところでも、実はこの男が木刀剣術、道場剣術のみの男ではないことを間接的に告げており、心憎い演出。今、日本映画における侍ヒーローと言えば、坂崎磐音か緋村剣心だろう。

 

監督は『 空飛ぶタイヤ 』で、巨大な組織と個人との関わりについて非常に大きな示唆を残した本木克英。今作では江戸幕府や豊後藩という巨大な体制と、江戸の町人連中の中に生きる浪々の侍を活写した。会社勤めのサラリーマンが思わぬ形で同期を危地に追いやってしまい、それを苦にした本人も退職。フリーター生活を送るうちに、大企業や政府の巨大な陰謀を巡る、一般庶民の代理権力闘争に巻き込まれていくという具合に読み替えていくこともできた。それもこれも、磐音の剣の実力と、実直さ、誠実さ、勤勉さといった人間力に依るところが大きい。腕は立つが決して無敵ではなく、頭は切れるが、決して利得のみを計算することはしない。この新時代のヒーローは、社畜サラリーマンの心にかなりの確率で突き刺さるだろう。

 

ネガティブ・サイド

まずはトレーラーや予告編がよろしくない。ほとんど全部、話の筋がばれてしまっているではないか。特に奈緒を花魁にするシーンなどは、予告編には無用だろう。また、その奈緒が豊後の国家老の宍戸文六の“援助交際”の申し出を断るシーンは剣劇さならがの迫力だったが、全体を通して見ればノイズだったのかもしれない。

 

銭の妖怪と化した柄本明も凄みを見せつけるが、断末魔が間延びしすぎだ。磐音のトラウマを抉るような発言などしなくとも、観る側は人を斬るたびに磐音がトラウマを呼び起こされることなど百も承知である。受け手をもっと信頼した作りにしてもらいたい。熱演すればするほど、ストーリーテリングを壊してしまっていた。

 

また磐音と幼馴染たちの一人称が一定していないところも少し気になった。冒頭では「オレ」なのに、その後は「ワシ」になっていた。

 

総評

細かい部分に不満はあるものの、素晴らしい作品に仕上がっている。奈緒とおこんを巡る続編も観てみたいし、その時はパラレルワールドな展開を夢想したいと思う。芳根京子に奥田瑛二と来ると、どうしても『 散り椿 』を思い出されるが、侍のパトスとエートスについては本作の方が上質な描写をしている。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 南沙良, 日本, 時代劇, 松坂桃李, 監督:本木克英, 芳根京子, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 居眠り磐音 』 -“陽炎の辻”前日譚、または坂崎磐音は如何にして脱藩して浪々の身になったか-

『空飛ぶタイヤ』 -奇跡でもなく、ジャイアント・キリングでもなく-

Posted on 2018年6月18日2020年2月13日 by cool-jupiter

空飛ぶタイヤ 70点

2018年6月17日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:長瀬智也 ディーン・フジオカ 岸部一徳 笹野高史 寺脇康文
監督:本木克英

 

『 TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ 』以来の久しぶりの長瀬智也である。あの「マザァファッカァァーーーーーーッ!!!!」の長瀬智也である。我々はもっとはっちゃけた長瀬を観たいのだが、この作品で長瀬は、演技力という技術ではなく、リアリティというか存在感で大いに魅せる。それは中小企業の赤松運送の社長ながらホープ自動車という大企業を相手に一歩も引かず、最後には勧善懲悪的に勝利を収めるからではない。むしろ、長瀬の人間としての至らなさや苦悩を今作は冒頭の5分である意味描き切っている。長瀬は決して超人的な体力、知力、精神力、リーダーシップを持った人間ではなく、本当にそこかしこにいるような中小企業の社長なのだ。そこには先入観もあり、誤りもあり、逡巡もあり、後悔もある。つまり、極めて人間的なのだ。今作が描こうとしたのは、人間の強さは、弱さに飲み込まれないところにあるということでもあるはずだ。

また『 坂道のアポロン 』で何故か妙に浮いていたディーン・フジオカは本作ではスーツとネクタイの力を借り、若くして大企業の課長職を務めることで説得力ある存在感を発揮した。大企業では往々にして血も涙もないようなタイプが上に行きやすいが、観る者にあっさりと「ああ、コイツもその類か」と思わせる職場での所作は見事。芝居がかった演技も、ムロツヨシと並ぶことで中和されていた。この男は多分、スーツ以外の衣装を着こなすことはまだできない。が、ポテンシャルはまだまだ十分に秘めているし、良い脚本や監督との出会いでいくらでも上に行けるに違いない。

それにしても、これは元々の題材となった事件があまりにも有名すぎて、WOWOWでドラマ化までは出来ても、銀幕に映し出されるようになることは予想していなかった。本作で思い出すことがある。Jovian自身、とある信販会社で働いていた頃、〇菱〇そ〇の会社員から「不良品作りやがって、このヤローー!!」と電話口で怒鳴られたことがある。一瞬カチンと来たが、すぐに冷静さを取り戻し、「ああ、この人もきっと全く関係ない人にこうした言葉を浴びせかけられたのだろうな」と分析したことを覚えている。組織の中では、個の意思は時に無用の長物にさえなってしまう。その個の意思を貫こうとすることで、思いっきり冷や飯を喰らわされることもありうる。超巨大企業などは特にそうだろう。かといってそれは中小企業でもありうることだということは、佐々木蔵之介の役を見て痛切に感じさせられた。

これは中小企業と大企業の闘い、というよりもゲマインシャフトとゲゼルシャフトの闘い、と言い表すべきなのかもしれない。なぜなら長瀬演じる赤松社長は資金繰りに奔走し、カネの誘惑に溺れかけてしまうところもあるし、長年一緒に戦ってきた戦友に去られてしまう場面すらある。一方でディーン・フジオカ演じる沢田は、実は濃密な人間関係を社内に持っていて、彼らと共闘もするからだ。我々は何を軸に人間関係を構築し、何を信念に行動していくのか。問われているのは、大企業や中小企業の在り方だけではなく、個の生きる指針でもあったように思う。

今作はエンドクレジットが微妙に短く感じられたが、気のせいだったのだろうか?それにしてもつくづく凄いなと唸らされるのは、映画製作に関わる人間の数とその職種の多様さ。このキャスティングが長瀬ではなく山口だったらと思うとぞっとする。そんなことさえ思えてしまうほどの、大作であり力作である。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ディーン・フジオカ, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:本木克英, 配給会社:松竹, 長瀬智也Leave a Comment on 『空飛ぶタイヤ』 -奇跡でもなく、ジャイアント・キリングでもなく-

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