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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: マハーシャラ・アリ

『 グリーンブック 』 -ロードムービーの佳作-

Posted on 2019年3月7日2020年1月3日 by cool-jupiter

グリーンブック 70点
2019年3月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ビゴ・モーテンセン マハーシャラ・アリ
監督:ピーター・ファレリー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190307162522j:plain

アカデミー賞受賞と聞けば、否が応にも期待は高まるが、たいていはそれが映画をダメにしてしまう。新作ゴジラ映画にも、あまり興奮しすぎないようにしなくては。本作は良作ではあるものの、昨年の『 スリー・ビルボード 』ほどのインパクトは感じなかった。

 

あらすじ

1960年代。ナイトクラブの用心棒、イタリア系白人のトニー・リップ(ビゴ・モーテンセン)は店の改装閉店のために別の職を探すことに。ひょんなことから、天才黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の南部諸州へのツアーに運転手謙マネージャー的存在として付き添うことになる。何から何まで対照的な二人は、旅を通じて友情を育むようになるが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 ドリーム 』とほぼ同時代を背景としている。つまり、それだけ人種差別の激しい時代だったということである。南北戦争の爪痕は当然の如く、南部の方に強く残っている。そんな南部に旅をしようというのだから、トニーならずとも「何じゃそりゃ」となる。皆が皆、ハリエット・タブマンになれるわけではないだろう(映画『 ハリエット 』の公開が待ち遠しい)。がさつで大飯食らいで腕っ節が自慢のトニーと、落ち着いた物腰で教養ある人物特有の語彙で話し、高い倫理観も備えたシャーリーの二人が、旅の中でどのように互いへの偏見をなくし、友情を育むのか。Jovianは本作を観て、差別の何たるかをあらためて思い知らされた気がした。

 

『 私はあなたのニグロではない 』で、有名大学教授が「無知な白人より教養ある黒人に親近感を覚える」と発言していたが、これは人種ではなく博識か否かで人を判断するという宣言である。人格ではなく知識で相手を判断するということである。実は、これと同様の構造がシャーリーと農場奴隷さながらの黒人労働者の間で成り立ちそうな瞬間がある。その時のシャーリーのいたたまれなさは必見である。差別される側であった自分の心に、差別の心があったことを自覚させられてしまうからである。劇中では色々と食べ物であったり音楽であったりと、黒人に対するステレオタイプがトニーの口から開陳されるが、個人的に最も強く心に焼きついたシーンは、農場の人たちを見つめるシャーリーの眼差しであった。

我々は差別の存在に慣れきっているのではないか。差別とは人種や出身地、性別、職業などに基づいて疎外することだという考えに浸り切っているのではないか。雨中で自分の心情を赤裸々に吐露するシャーリーに、Jovianはかつての韓国系カナダ人の言葉を思い出した。2歳の時に家族で韓国からカナダに移住した彼は、縁あって日本で職を得た。そんな彼から聞かされた言葉で最も印象に残っているものの一つが

“The saddest thing is to be discriminated against by your own people.”

( 一番悲しいことは、自分と同じ人間から差別されることだ )

彼は見た目は典型的な韓国人、東洋人である。しかし話す言語はカナダ英語、そのマインドも95%は西洋人、カナダ人のそれであった。そんな彼が韓国を旅行した時に悲しく感じたのが、同国人からの差別の眼差しということであった。Jovianが言わんとしていることは、韓国人が差別的であるということでは決してない。その点を誤解しないでもらいたい。差別とは、その人の属性ではないものを押しつけることだ。その結果として、相手が傷ついたとしたら、それは差別なのだ。

黒人を相手に「黒人である」と告げることが差別なのではない。黒人に「不潔である」という属性を勝手に付与するトニーに、我々は嫌悪感を催す。しかし、車の中というクローズド・サークル、すなわち外界からシャットアウトされた、ある意味では別世界で、二人は互いの人間性を見出していく。人間性とは、人間らしくあるということだ。人間が人間であるとは、思いやりを持つことだ。そのことはJovianだけが傑作だ名作だと騒いでいる『 第9地区 』で鮮やかに描かれていた。仲間を見つめ茫然自失する宇宙人こそが最も人間らしいキャラクターだったからだ。本作も、観ればなにがしかを感じうる作品である。

 

ネガティブ・サイド

スタインウェイのピアノを強調するのなら、他のピアノならどんな音がするのかを、後ではなく先に見せて欲しかった。同時に、音楽そのものをもっと味わえる構成にしてほしかったと思うのは、高望みをし過ぎだろうか。事前におんぼろピアノを独り侘びしく奏でるとどんな音が響くのかを観客に知らせておけば、終盤のギグがもっと映えたと思うのだが。

また、劇中でのトニーとシャーリーのとあるピンチを政治的な力で乗り切るシーンがあるのだが、このエピソードはノイズであるように感じた。

文字通りの意味での「象牙の塔」で暮らすドクター・シャーリーが求めていたであろう、ある人物との関係についてのその後も描かれていれば、なお良かったのだが。

 

総評

良い作品ではあるが、アカデミー賞の作品賞を受賞するほどだとは思わない。昨年の『 シェイプ・オブ・ウォーター 』でも感じたが、我々は本当に差別というものに慣れ切ってしまっていて、いつかそれをコンテンツ化して消費することに何の抵抗も感じないようになってしまうのではないか。そのような懸念も少しだけ感じてしまう作品である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, ビゴ・モーテンセン, ヒューマンドラマ, マハーシャラ・アリ, 監督:ピーター・ファレリー, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 グリーンブック 』 -ロードムービーの佳作-

『 アリータ バトル・エンジェル 』 -2Dでも3D的ビジュアル効果!-

Posted on 2019年2月27日2019年12月23日 by cool-jupiter

アリータ バトル・エンジェル 80点
2019年2月23日 大阪ステーションシネマにて鑑賞
出演:ローサ・サラザール クリストフ・ワルツ マハーシャラ・アリ エド・スクレイン
監督:ロバート・ロドリゲス

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日本のSF漫画でスクリーン映えするだろうものは、『 AKIRA 』、『 BLAME! 』、『 攻殻機動隊 』だと思っていた。皆、映像化された。そこへ満を持して『 銃夢 』である。日本の漫画界最後の戦闘美少女である。期待せずにいらりょうか。Don’t get your hopes up because that’ll spoil a movie! そんなことは分かっていても、やはり期待する。そして、その期待は裏切られなかった。

あらすじ

時は26世紀。火星連邦共和国との“没落戦争”が終結して300年。唯一残った空中都市ザレムと、その直下のアイアンタウン。ある日、Dr.イド(クリストフ・ワルツ)がザレムから落とされるスクラップを漁っていたところ、脳と心臓がまだ生きているサイボーグの頭と胴体を見つけてしまう。新たなボディを与えられた“彼女”は記憶を失っていたが、アリータを名付けられ、徐々にアイアンタウンに馴染んでいく。しかし、ある時、殺人事件が発生し、さらにイドの様子に不審なところがあり・・・

 

ポジティブ・サイド

ガリィではなくアリータだが、いきなりアリータでも良いだろう。ファイナルファンタジーⅥのティナも、英語版ではTerraになっていた。そして、ここでも20th Century Foxのロゴがオープニングから一気に映画の世界に我々を引きずり込んでくれる。ゆめゆめ見過ごすことなきよう。こうした『 ピッチ・パーフェクト ラストステージ 』や『 ボヘミアン・ラプソディ 』から続く、ロゴいじりは是非とも続けて欲しいトレンドである。

 

本編について何よりも驚かされたのが、2Dで鑑賞したにもかかわらず、3Dを見たかのような印象が強く残ったことである。また、トレイラーの段階では、アリータの目の異様な大きさに、いわゆる「不気味の谷」現象を感じていたが、本編が進むにつれ、アリータに不自然さを感じなくなり、ある時点からは可愛らしいとさえ感じるようになった。製作指揮のジェームズ・キャメロンは、『 エイリアン2 』や『 ターミネーター 』シリーズ、そして『 アバター 』など、人と人なるざる者との関係を描かせれば天下一である。その彼の芸術的な感性と、マチェーテ映画を手掛けてきたオタク監督(と見なして差し支えないだろう)のロバート・ロドリゲスの感性が見事にマッチして生み出されたアリータは、モーション・キャプチャ-とアニメと実写の幸福なマリアージュである。

 

それにしても最近の技術の進歩は凄まじい。『 アントマン&ワスプ 』におけるマイケル・ダグラスやミシェル・ファイファー、『 アクアマン 』におけるウィレム・デフォーなど、デジタル・ディエイジング技術の進化とその応用が著しい。ターミネーターの新作でもシュワちゃんおよびリンダ・ハミルトンが若返るのだろうか。しかし、モーション・キャプチャ-によるフルCGキャラクターというのは、『 シン・ゴジラ 』のゴジラ、『 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 』および『 スター・ウォーズ/最後のジェダイ 』のマズ・カナタがいるが、これらは人間ではなくクリーチャー。そして、アリータは人間ではないがクリーチャーではない。サイボーグである。そこに最先端CGを施すことで、これほど「生きた」キャラクターが生み出されるということに感動すら覚えた。『 ゴースト・イン・ザ・シェル  』の草薙素子がスカーレット・ジョハンソンによって演じられたことが一部(主に日本国外)で典型的なホワイトウォッシュだとして問題視されたが、5年後には少佐がこの技術を使って再登場してくるかもしれない。それほどのポテンシャルを、アリータというキャラのCGの美麗さとリアルさから感じた。

 

戦闘シーンおよびモーターボールのシーンは圧倒的な迫力と説得力である。しかし、それよりも光るのはアリータが、いわゆる戦闘美少女として覚醒する前に、アイアンタウンでオレンジを食べるところであろうか。これは『 ワンダーウーマン 』がアイスクリームの美味しさに感動し、『 アクアマン 』でメラが花をむしゃむしゃとやったように、これだけでアリータの可愛らしさを描き切ってしまった。人が萌え(死語なのだろうか?)を感じるのは、そこにギャップがあるからなのだ。続編も期待できそうだ。いや、絶対に製作されねばならない。

 

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ネガティブ・サイド

ヒューゴがアリータを300年前の没落戦争の遺物であることを知った明確な描写は無かったはず。にもかかわらず、何故そのことをナチュラルに知っているかのような流れになっていたのだろう。ちょっとした編集ミスなのか?それとも何か見落とすか聞き逃すかしたのだろうか(そんなことはない筈だが・・・)。

 

人間が機械の身体を持つことに抵抗を感じない世界というのは、『 銀河鉄道999 』を読んできた我々には分かる。しかし、2019年という今の時代、AIが社会の様々な場面で実用化されつつあり、またロボティックスも長足の進歩を遂げつつあるこの時代と、アリータの時代をつなぐ描写がほんの少しで良いので欲しかった。

 

総評

近いうちに、3DまたはIMAXでもう一度鑑賞したい。MX4Dや4DXも、吹替えではなく字幕なら、是非トライしてみたい。『 シドニアの騎士 』の映画化も見えてきたかと、映画を観終わって、感想よりも次の鑑賞や更なる別作品の映画化を夢想するなど、これほど浮き浮きしたのは久しぶりである。早くこのバトル・エンジェルと再会したい!

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, SF, アクション, アメリカ, エド・スクレイン, クリストフ・ワルツ, マハーシャラ・アリ, ローラ・サラザール, 監督:ロバート・ロドリゲス, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 アリータ バトル・エンジェル 』 -2Dでも3D的ビジュアル効果!-

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