Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: ピーター・ディンクレイジ

『 シラノ 』 -ややパンチの弱いミュージカル-

Posted on 2022年3月8日 by cool-jupiter

シラノ 65点
2022年3月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ピーター・ディンクレイジ ヘイリー・ベネット ケルビン・ハリソン・Jr.
監督:ジョー・ライト

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220308225446j:plain

『 シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい! 』のシラノが、現代風に換骨奪胎されたミュージカル。期待に胸膨らませて劇場へ赴いたが、Don’t get your hopes up. 

 

あらすじ

騎士のシラノ(ピーター・ディンクレイジ)は、自身の体躯や容姿に劣等感を抱いており、ロクサーヌ(ヘイリー・ベネット)に想いを打ち明けられずにいた。ある時、ロクサーヌは新兵のクリスチャン(ケルビン・ハリソン・Jr.)に一目惚れし、隊長であるシラノに二人の恋を取り持ってほしいと依頼する・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220308225504j:plain

ポジティブ・サイド

ピーター・ディンクレイジ演じるシラノには賛否両論あるだろうが、彼の意外な(と言って失礼か)歌唱力の高さには驚かされた。渋い良い声をしているのは知っていたが、歌声もなかなかのもの。また殺陣もいける。舞台の上でのチャンバラは割と普通だったが、夜の階段で複数の刺客に襲われるシーンはワンカットに見えるように編集されたものだろうが、かなりの迫力だった。目の演技も素晴らしく、パン屋の個室でロクサーヌに恋の相談を持ちかけられるシーンの目の輝き、そしてその目から一瞬にして輝きが消えて虚ろになってしまうのは凄かった。目でこれほど雄弁に語れるのはジェームズ・マカヴォイぐらいだろうか。

 

ロクサーヌを演じたヘイリー・ベネットも feminist theory に則って現代的な女性に生まれ変わった。この変化は肯定的なものと受け止めることができた。理由は二つ。一つには、貴族あるいは素封家との愛のない結婚は悲惨だと高らかに宣言したこと。経済格差が広がり、ブルジョワジーとプロレタリアートに二分されつつある現代社会を間接的に批判している。もう一つには、イケメンだから好きという単純な恋愛観を超えているところ。もちろんクリスチャンはイケメンなのだが、器量良しというだけで惚れ続けてくれるほど甘い女ではないところがポイントが高い。

 

別にフランスだから云々ではなく、それこそ一昔前までは恋愛とは言葉だったのだ。それこそ日本でも平安貴族は顔云々ではなく和歌の巧拙で相手にキュンとなったり、ゲンナリしたりしていたのだ。顔など見ない。噂で美しいと聞いて、御簾の向こうのまだ見ぬ女性(ここでは「にょしょう」と読むべし)に恋文を送っていたのだ。それが日本古来の伝統だったのだ。イギリスでもイタリアでも同じである。不朽の名作『 ロミオとジュリエット 』で感じるのは、圧倒的な修辞の技法である。ロミオは確かにイケメンであったが、顔はきっかけに過ぎず、気品と教養ある言葉の力でジュリエットを攻略したのである。とにかく言葉を尽くすというローコンテクスト言語の特徴がよく出ており、そのことが不細工ながらも詩文の才に恵まれたシラノというキャラクターにリアリティを与えている。

 

ハイライトの一つはバルコニーのジュリエット・・・ではなくロクサーヌと、クリスチャンを手助けするはずのシラノが、いつの間にか自分の言葉でロクサーヌと語り合う場面だろう。この「愛しているが故に姿を見せられない」というジレンマは、男性の90%を占める非イケメンの共感を呼ぶ。だいたい顔面や容姿にコンプレックスのある人間は、恋をすると臆病になる。そしてその臆病さを思いやりにすり替える。「こんなしょうもない男があの子と付き合っても、向こうがかわいそうだ」という認知的不協和を起こす。シラノも同じで、ロクサーヌを愛し、かつ自分のことを愛しきれないが故に、ロクサーヌの幸せのためにクリスチャンの恋路に手を貸してやる。しかし、自分の恋心は隠せない。このシーンで胸が打たれないというなら禽獣だろう(というのはさすがに言いすぎか)。

 

最後のシラノとロクサーヌの語らいの穏やかさと、そこに潜む想いの強さのコントラストが胸を打つ。シラノの健気さ、愚直さ、一途さ、朴訥さに気付いたロクサーヌの涙が、悲恋の悲しさに拍車をかける。散ってこそ桜というが、たまには成就しない恋の物語を味わうのも良いではないか。現実の恋も、上手く行かないことの方が圧倒的に多いのだから。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220308225519j:plain

ネガティブ・サイド

古典作品のリメイクなのだが、シラノのコンプレックスの原因を鼻ではなく、身長にしてしまうのは賛否両論だろう。Jovianはやや否よりである。手塚治虫のキャラクター、猿田から芥川龍之介の禅智内供、映画で言えば『 エレファント・マン 』や『 グーニーズ 』のスロースや『 アンダー・ザ・スキン 種の捕食 』のあの男まで、顔が醜いキャラというのはたいてい良い奴である(中には『 オペラ座の怪人 』のような例外もいるが )。ストレートにキモメン俳優をキャスティングしても良かったのではないか。某プロゲーマーが「170cm以下の男性に人権はない」と発言して炎上したことで身長というファクターが思いがけず注目を集めているが、やはり顔の美醜の問題こそがシラノとクリスチャンの最も際立つコントラストであるべきだと思う。

 

楽曲とダンスに決定的な力が不足しているように思う。例えばアンドリュー・ロイド=ウェバーの『 オペラ座の怪人 』のような圧倒的な楽曲の力や、『 ウェスト・サイド物語 』のダンス・パーティーのシーンのような圧巻のパフォーマンスはなかった。これはちょっと、直前に観た作品に引きずられすぎた意見か。

 

物語全体のペーシングに難ありでもあった。微笑ましい舞台のシーンから、シラノに迫る危機とクリスチャンの登場までの序盤、シラノがクリスチャンを陰日向なく甲斐甲斐しく世話を焼いてやる中盤までは良かったが、シラノたちが戦地に赴くことになってからの終盤が異様に長く感じられた。ド・ギーシュ伯爵が戦場でもあれこれ動いたり、あるいはシラノがこそこそと、しかし悲愴な表情で筆まめにしている描写などがあれば、戦地のシーンも少しは締まったはずだと思う。

 

総評

ミュージカル好きにはややパンチが弱いが、超有名戯曲の実写映画化という面では標準以上のクオリティに仕上がっている。シラノ・ド・ベルジュラックなんか知らないよ、という人はこれを機に鑑賞してみるのも一興かと思う。現代日本版にもアレンジできそうに思う題材である。恋する女子をめぐって、イケメンだが口下手という男と、キモメンだがSNSやブログでは雄弁能弁という男がタッグを組んで・・・というロマコメがパッと構想できるが、どうだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

volunteer 

日本語でもボランティアという言葉は定着しているが、本作では志願兵あるいは義勇兵という意味で使われていた。時あたかも三十年戦争の時代。この戦争の講和のために結ばれたウェストファリア条約によって、ヨーロッパ諸国の輪郭が定まり、個人の自由という概念が生まれた。そして今、ロシアがウクライナに侵攻、世界中から義勇兵 = ボランティアがウクライナに駆けつけている。歴史に学べないのも人か。

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, イギリス, ケルビン・ハリソン・Jr., ピーター・ディンクレイジ, ヘイリー・ベネット, ミュージカル, ラブロマンス, 監督:ジョー・ライト, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 シラノ 』 -ややパンチの弱いミュージカル-

『 パーフェクト・ケア 』 -高齢化社会の闇ビジネスを活写する-

Posted on 2021年12月10日 by cool-jupiter

パーフェクト・ケア 75点
2021年12月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ロザムンド・パイク ピーター・ディンクレイジ エイザ・ゴンザレス 
監督:J・ブレイクソン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211210222419j:plain

『 ゴーン・ガール 』で一気にトップスターに昇りつめたロザムンド・パイクの最新作。介護ビジネスを悪用するやり手の話というのは、世界随一の高齢社会である日本にとっても非常に興味深いものがある。

 

あらすじ

マーラ(ロザムンド・パイク)は、高齢者をケアホームで保護しつつ、実はクライアントの財産を食い物にする悪徳後見人だった。独り身の高齢者ジェニファーの財産に目をつけるが、彼女をホームに送り込むが、彼女の背後にはロシア系マフィアの存在があり・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211210222435j:plain

ポジティブ・サイド

日本はもはや多死社会だが、アメリカも相当な高齢社会である。畢竟、介護の需要が高まるが、行政と民間の二軸でサポートする日本と違い、彼の国では司法が民間業者に一般人の保護を命じることが当たり前のようにあるらしい。この制度を上手く利用して儲けてやろうと目論むところが痛快・・・もといプラグマティックである。

 

『 ゴーン・ガール 』で世間の目を見事に欺いたロザムンド・パイクが本作でも魅せる。法廷で高齢者の家族から「勝手に財産を処分して、その金を自分の懐に入れている」と糾弾されても、「高齢者の保護が私の仕事で、仕事であるからには報酬を受け取る」といけしゃあしゃあと言ってのける。そして判事も納得させる。何という女傑だろうか。

 

こうして高齢者家族を煙に巻き、裁判所を味方につけ、友人の医師に株とのトレードで資産家高齢者の情報と診断書を得ていくマーラだが、次の獲物のジェニファーが曲者。詳しくは鑑賞してもらうしかないが、背後にいるマフィア(ピーター・ディンクレイジ)が登場してくるあたりから、悪 vs 悪の図式となり、一挙にストーリーが加速する。

 

ハイライトは2つ。一つはマフィアに拉致されたマーラが、その親玉であるピーター・ディンクレイジに交渉を持ちかける場面。どれだけ狂った人生を送ったら、このような言葉を実際に口に出せるようになるのだろうか。『 女神の見えざる手 』のジェシカ・チャステイン演じるスローン女史と並ぶ、強烈な女性キャラクターの誕生を目撃した気分になった。二つ目は、マフィアへのリベンジを果たすマーラが、ピーター・ディンクレイジから交渉を受けるところ。こちらもアメリカ社会の闇を感じさせるが、それはある意味で日本社会にもそっくりそのまま当てはまる。

 

平成の初期から、独居老人のもとに足繁く通って話し相手になり、信頼を得たところで高額な羽毛布団を売りつけるセールスマンというのは、全国津々浦々にいたのである。今後は高齢者向けにビジネスをするのではなく、高齢者そのものをビジネスにしようとする動きが、先進国で加速していくだろう。それがどういう結末になるのか、本作は一定の示唆を与えて終わっていく。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211210222451j:plain

ネガティブ・サイド

エイザ・ゴンザレスの存在感が今一つだった。マーラとビジネスパートナーであり、セックスのパートナーでもあったが、さらにもう一歩踏み込んだ関係性を構築できていなかったように思う。もしもマーラがこのキャラに介護ビジネスの帝王学を伝授しているようなシーンがあれば、終幕のその先にもっと色々な想像が広がるのだが。

 

マフィアのピーター・ディンクレイジがチト弱いし、詰めも甘い。普通なら即死させて終わり。死体は、それこそ手慣れた始末方法があるはず。『 ベイビー・ドライバー 』のケビン・スペイシーはそういうキャラだった。拉致するまでの手際があまりに見事なせいで、その相手を事故死に見せかけて殺すところで下手を打つところに、どうにもリアリティがない。

 

ストーリー上のコントラストのために、介護の現場で甲斐甲斐しく働くケアワーカーの姿が必要だったが、それが一切なかった。もちろん現場で働く人たちはいたが、フォーカスは警備員や経営者であった。正しい意味で介護をビジネスとしている人々の姿編集でカットされていたとしたら残念である。

 

総評

一言、傑作である。弱点はあるが、それを補って余りある展開の良さとキャラクターの濃さがある。現代社会の闇にフォーカスしながら、単なるヒューマンドラマではなく極上のエンタメに仕上げている。介護の現場にパワードスーツやロボットが導入されるなど、その営為は様変わりしつつあるが、介護のニーズが減じることは、今後数十年はない。その数十年の中で、本作のような出来事は必ず起こる。それを是とするのか非とするのか、それは鑑賞後にじっくりと考えられたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

bona fide

ラテン語の「ボナーフィデー」で、bona = good, fides = faithの奪格である・・・と言っても何のこっちゃ抹茶に紅茶であろう。英語では「ボウナファイド」と発音し、意味は「本物の」や「真正の」となる。奪格=副詞句的には使われず、形容詞として使われることがほとんど。This is a bona fide autograph of Muhammad Ali. = これは本物のモハメド・アリのサインだ、のように使う。英検1級以上を目指すなら、同じラテン語のbona由来の pro bono = 無料で、も知っておきたい。こちらは副詞句として使うが、慣れるまでは on a pro bono basis を使うといい。 

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エイザ・ゴンザレス, クライムドラマ, ピーター・ディンクレイジ, ロザムンド・パイク, 監督:J・ブレイクソン, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 パーフェクト・ケア 』 -高齢化社会の闇ビジネスを活写する-

『 ピクセル 』 -レトロゲーマーのノスタルジー映画 -

Posted on 2019年9月29日 by cool-jupiter

ピクセル 65点
2019年9月23日 レンタルBlu-rayにて鑑賞
出演:アダム・サンドラー ミシェル・モナハン ピーター・ディンクレイジ
監督:クリス・コロンバス

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190929190449j:plain
 

カーラ・デルヴィーニュとアシュリー・ベンソンの交際1年のニュースに、彼の国の自由さを感じた。Pretty Little Liarsの主要キャストのその後を追いかけようと、『 トゥルース・オア・デア 殺人ゲーム 』に続いて、トローヤン・ベリサリオの『 マーターズ 』を探しているも、クソ映画との評判のせいか見つからず。ならば、劇場で観たこちらを最鑑賞。

 

あらすじ 

サム(アダム・サンドラー)はゲームの天才少年だった。長じてもゲームに興じ、妻に逃げられた冴えない中年のサムは、ある時、ホワイトハウスに召集される。かつて宇宙に送られたメッセージに含まれたゲーム映像が宣戦布告と受け取られ、宇宙人がゲームの形式で地球を攻撃してきたのだ。サムたちはこの危機をクリアできるのか・・・

 

ポジティブ・サイド

ドンキーコングやパックマンが隆盛を極めた時期とJovianが小学生になる、つまりゲームをプレーできるようになる時期は微妙にずれていた。が、ここに登場するゲームはどれもこれも懐かしいものばかりである。特にスペースインベーダーは親父と銭湯に行った時に、よくプレーさせてもらったし、百円玉を山と積んだオッサンのプレーを傍で眺めていたこともある。古き良き時代という言葉は好きではないが、ノスタルジックな気持ちにさせてくる映画であることは間違いない。特にアラフォーには刺さる作品であろう。

 

本作は子どもであり続けることと大人になることの両方が追求される、ユニークな作品でもある。主人公のサムは子どもの頃から大好きだったゲームに大人になっても興じているが、彼は世界大会の決勝で敗れたことが、抜けない棘のように心に刺さったままなのだ。その棘が抜ける瞬間こそが作品にとってもサムというキャラクターの成長にとってもハイライトなのである。一個人の内面の変化が世界の危機を救う(または引き起こす)というのは、『 新世紀エヴァンゲリオン 』に象徴されるように、オタクの好物テーマなのである。そのことをクリス・コロンバス監督はよく理解している。オタクの好きなレトロゲームをふんだんに使い、リアルに再現しているから面白いのではない。オタクが苦手とする心の成長をドラマチックに描いているから面白いのである。

 

だからといって、オタクの生態を美化しているわけでもない。特にサムの友人ラドローによる米軍精鋭への pep talk の脱線ぶりはたくまざるユーモアを生み出している。『 ハクソー・リッジ 』ではヴィンス・ヴォーンが恐ろしくも面白おかしい鬼軍曹を好演したが、あちらは毒の効いたユーモア。こちらはコミュ障の哀れさとみじめさが笑える形で爆発する。笑ってはいけないはずなのに、笑ってしまう。

 

もちろん、ロマンスもあるので安心してほしい。ピーター・ディンクレイジの趣味はちょっと理解できないが、ラドローの趣味は理解できる。もちろん、逆の意見もあるだろう。大切なことは、「愛」の形の多様性を認めることだ。そんな教訓も得られるエンタメ作品である。

 

ネガティブ・サイド

地球人は、やはり宇宙人による侵略を受けないと一つにまとまることができない生物なのだろうか。これは『 インディペンデンス・デイ 』以来、いやそれ以前から、ずっと立てられ続け、そして答えを出せていない問いである。ID4から幾星霜、我々の間の分断は進むばかりである。日陰者たちが活躍する物語には胸がスカッとするものの、現実の人間社会の問題は何一つ解決しないという寂しさも残る。最後に残るハイブリッドは素晴らしいと思うが、アダム・サンドラーとミシェル・モナハンのロマンスも描いて欲しかったと思う。

 

街中にピクセルが放たれた時こそ、米軍兵士が活躍する場で、そこにスペクタクルがあるべきだったと思う。なぜなら、屈強なソルジャーたちを大活躍させながらも、やっぱり最後はアーケイダーズでないと手に負えないという流れが欲しかったからだ。イギリスの対センチピードでそうなったが、あれはゲームのルールを軍人が理解できていなかったからで、ルール関係なしの市街戦なら、米軍兵士の独壇場だったはず。そこで彼らを大活躍させ、しかし、最後はやはりレトロゲームでないと決着がつけられない、という流れの方がもっとノレたと思うのだが。

 

総評

二度目の鑑賞だが、フツーに面白い。ただし、あくまでフツーの面白さであって、それ以上ではないので注意。今の若い世代では何のことやら分からない描写もあるだろう。個人的には、中学生ぐらいの頃だったか、『 スーパーマリオクラブ 』で日米のマリオカートのチャンピオン同士のマッチレースで、全米王者(子ども)が日本王者(子ども)を圧倒したのを思い出した。ゲームでもやはりアメリカは王国なのである。だからといって日本のゲーマーが劣るわけではない。かつてゲーマーだった少年少女であれば、レンタルや配信で一度はチェックされたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Did I do good?

 

「俺は上手くやったかな?」 goodは基本的に形容詞なので、文法的には少々おかしい。しかしそんな事を気にしていては、外国語の運用能力など身につかない。言語学習は基本的にネイティブスピーカーの真似をすることである。これと同じような台詞は『 ベイビー・ドライバー 』でも聞こえる。ジョン・ハムがアンセル・エルゴートに“You did good, kid.”と言う台詞がそれである。機会を見て、一度使えば身に着く簡単フレーズだろう。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

 

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アダム・サンドラー, アメリカ, コメディ, ピーター・ディンクレイジ, ミシェル・モナハン, 監督:クリス・コロンバス, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンターテインメントLeave a Comment on 『 ピクセル 』 -レトロゲーマーのノスタルジー映画 -

『 孤独なふりした世界で 』 -やや竜頭蛇尾なディストピアもの-

Posted on 2019年4月15日2020年2月2日 by cool-jupiter

孤独なふりした世界で 55点
2019年4月11日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ピーター・ディンクレイジ エル・ファニング
監督:リード・モラーノ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190415014149j:plain

人類滅亡ものはフィクションの世界ではそれこそ星の数ほど生産されてきた。しかし、近年ではディストピア後の世界をどう生きるかに焦点が当てられているように思う。本作もそうした潮流に乗った作品である。

あらすじ

人類が死滅した世界で、一人黙々と生きるデル(ピーター・ディンクレイジ)。彼は空き家を片付け、死体を穴に埋め、生活に使えるものを回収して、生きていた。しかし、ある時、グレース(エル・ファニング)という女性がデルの街にやってくる。人間嫌いのデルは、グレースとの共同生活を始めるが・・・

ポジティブ・サイド

ビジュアル・ストーリーテリングに徹している作品である。何かが起きて人類の大半が死滅してしまったことが示唆されるが、それが何であったのかは決して明かされない。しかし、それを推測するヒントというか材料は、スクリーンの端々に散りばめられている。それは時に映像であったり、事物であったり、人間の死骸であったり、動物の存在と不在であったりする。魚釣りはできる。人間の死骸はネズミやカラスに食い荒らされてはいない。小鳥の囀りが聞こえる。犬が登場する。建物などが破壊されたわけではない。イスに座ったまま死んだ人もいる。さあ、こうした描写から何が人類滅亡の原因になったのかを考えてみようではないか。

『 クワイエット・プレイス 』や『 死の谷間 』と同じく、本作も具体的に何が起きたのかを決して安易にキャラに喋らせたりはしない。そこのところに好感が持てる。デルというキャラが図書館を根城にしているのも象徴的である。書物を読むという行為は極めて能動的であるが、書物の方から我々に話しかけてくることは決してない。それが映画であっても音楽であっても同じで、デルは能動的に働きかけることができる対象には能動的でいられるが、自分が受動的にならざるをえない対象、それは往々にして他者なのであるが、それに対しては極めて脆弱もしくは攻撃的になる。死体を無造作に引きずり、月曜日の朝のゴミ出しの如くポイッと穴に捨てていく様は、異様である。

こうした、ある意味では極まったmisanthropeであるデルはグレースとの出会いと生活によってどう変わっていくのか。または変わらないのか。このあたりの説明描写も巧みである。映像と役者の演技にそれを語らしめるからだ。本作は中盤までは、それなりに面白い。そこから先を楽しめるかどうかは、おそらく鑑賞者の経験値に依るだろう。SF、特にディストピアものを数多く消化した人ならば、やや拍子抜けさせられるだろう。しかし、こうしたジャンルへの造詣が深くないという人であれば、ある程度は混乱させられつつも、楽しめるはずだ。

ネガティブ・サイド

中盤以降は、残念ながらどこかで観たり聞いたり読んだりしたストーリーのパッチワークである。詳しくはネタばれになるので書かないが、グレースに『 アンダー・ザ・スキン 種の捕食 』を思わせるネタを仕込むのはどうなのだろう。人類の大半が死滅してしまった原因の一つとして考えられないでもないが、そこを微妙な加減でぼやかしているからこそ、前半が際立つのだ。そのテンションやトーンは後半でも維持すべきだった。また日本の漫画で映画化もされた『 ドラゴンヘッド 』にもそっくりという展開も、個人的には買えない。

本作のその他の弱点としては、サウンドトラックが本編ストーリーとケンカしているということが挙げられる。また、デルの住む世界の静謐さを際立たせたい意図が込められているのだろうが、サウンドのボリュームが不意・不必要に大きいと感じられるシーンも多数存在する。このあたりも減点材料である。

総評

弱点を抱えてはいるものの、導入部から中盤までは引き締まっている。台詞の少なさに辟易してしまう人には向かないが、映像そのものや役者の演技からストーリーを読み取れる人なら、本作の前半は必見である。日本にもピーター・ディンクレイジのような渋い役者が必要だ。本作のエンディングについて、より深く考察してみたいという向きには、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『 不死の人 』をお勧めしておきたい。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190415014212j:plain

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アメリカ, エル・ファニング, ピーター・ディンクレイジ, 監督:リード・モラーノ, 配給会社:ツインLeave a Comment on 『 孤独なふりした世界で 』 -やや竜頭蛇尾なディストピアもの-

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme