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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: テッサ・トンプソン

『 クリード 過去の逆襲 』 -父親殺しに失敗-

Posted on 2023年6月4日 by cool-jupiter

クリード 過去の逆襲 50点
2023年5月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マイケル・B・ジョーダン ジョナサン・メジャース テッサ・トンプソン
監督:マイケル・B・ジョーダン

好物のボクシングもの。スタローンが出演しないのが吉と出るか凶と出るか。

 

あらすじ

アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)は世界王者として引退し、家族と共に幸せに暮らしながら、ジムの後輩の面倒を見ていた。ある日、刑務所から出てきた幼なじみのデイム(ジョナサン・メジャース)が現れ、かつての夢だった世界王者を目指したいと言う。負い目のあるアドニスはデイムをジムに招き、世界王者のフェリックスのスパーリングパートナーにするが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 クリード 炎の宿敵 』でドラゴの息子との二度の激闘を経て、これ以上語るべきドラマがあるのかなと思っていたところ、確かにあった。『 クリード チャンプを継ぐ男 』で、引き取られる前のアドニスは荒くれ非行少年だった。ここに物語の鉱脈を見出した脚本家は did a good job だろう。

 

デイムを演じたジョナサン・メジャースのヴィランっぷりが素晴らしかった。『 アントマン&ワスプ クアントマニア 』のカーンには「ギャグかな?」と感じたが、本作では根っからの悪人ではなく正当性のある悪人、執念の悪人を演じきった。監督でもあるジョーダンの演出なのか、本人の役作りなのか。凄みのある演技だった。売れてきたところで、いきなりキャリア終了の危機だが・・・ 

 

デイムがいきなり世界戦というのは荒唐無稽にもほどがあるが、作中で述べられていた通り、『 ロッキー 』自体がそういう荒唐無稽な話だったし、その元ネタであるチャック・ウェプナーの経歴がデイムとよく似ている。色々な意味でクリードの物語ながら、ロッキーへのオマージュも忘れていない。

 

スタローンが出てこない=『 ロッキー 』シリーズからの独立、とも言える。もちろん、権利関係でスタローンが色々と主張していて、残念ながらそこに法的根拠がないことは明白。ならばと、アポロ・クリードの息子たるアドニス・クリードが前二作を通じて、アポロという父を失い、ロッキーという父を得て、さらに本作で自らが父となり、そして精神的・文学的な意味でロッキーという父親を敢えて殺すために、自らの少年時代と決別する、つまり完全に大人になる、というプロットは筋が通っていた。

 

ネガティブ・サイド

フェリックスの線が細すぎて、とてもヘビー級とは思えない。せいぜいスーパーミドル級ぐらいにしか見えない。もっといかにもヘビー級然とした役者をキャスティングできなかったのか。

 

少年時代の過ちに決着をつける必要があるというのは分かるが、デイムに耳を傾けてもらう方法がリングの中で戦うことだけだとは思えない。たとえば、アドニスにメディアの前で過去の罪を自白させるとか、あるいはF・メイウェザーがやっていたようなエキシビション・マッチを提案することもできただろう。それでは一般大衆が納得しない、ということでアドニスの現役復帰というストーリーなら納得できたのだが。

 

二人の対決が観客を置き去りにした、監獄の中での殴り合いになる演出は悪くないと思うが、そこに至るまでのドラマがリングの中にない。アドニスが引退試合でデイムから得た観察力を発揮していたり、あるいはデイムが獄中でもアドニスのすべての試合をつぶさに観ていた、ということが感じられるようなシーンがなかった。そうした二人だけが理解できるボクシングの世界から、観客やセコンドを置いてきぼりにした殴り合いの世界に没入するという流れは構築できなかったのか。

 

Going the distance を流すのも中途半端。ロッキーには敬意を表しつつも、クリードの物語だということを徹底して欲しかった。

 

総評

面白いと思える部分と、イマイチだなと感じる部分が同居する作品。スタローンが出てこないことで、あらためて『 ロッキー 』というシリーズの重みが感じられた。ただ、マイケル・B・ジョーダン演じるアドニスというキャラの魅力は全く損なわれていないし、『 トップガン マーヴェリック 』のように次世代への継承を大いに予感させる終わり方も悪くない。20年後にアマラがボクサーになって、『 ケイコ 目を澄ませて 』的なドラマを盛り込みつつ、レイラ・アリ vs ジャッキー・フレイジャー、またはレイラ・アリ vs クリスティ・マーティンのような試合を見せてくれるのなら、それはそれで歓迎したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a Creed

学校では「人名には不定冠詞 a はつけない」と教えるが、実はつけることもある。一番よくあるのは a + 名前 = その一族の一人という意味。『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』のカイロ・レン “You are a Palpatine.” がその代表例か。他には「そういう名前の人」という用法。I’m looking for a Ken Smith. = ケン・スミスという人を探しているのですが、のように使う。もう一つは「その名前のような偉大な人」という用法。We need a Steve Jobs now. = 我々には今こそスティーブ・ジョブズのような異能の人が必要だ、のように使う。英語教師を目指す人だけ覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 The Witch 魔女 増殖 』
『 65 シックスティ・ファイブ 』
『 怪物 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, アメリカ, ジョナサン・メジャース, スポーツ, テッサ・トンプソン, ヒューマンドラマ, ボクシング, マイケル・B・ジョーダン, 監督:マイケル・B・ジョーダン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 クリード 過去の逆襲 』 -父親殺しに失敗-

『 ヘヴィ・ドライヴ 』 -アメリカ下層社会の現実-

Posted on 2020年4月18日 by cool-jupiter

ヘヴィ・ドライヴ 65点
2020年4月17日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:テッサ・トンプソン リリー・ジェームズ
監督:ニア・ダコスタ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200418185341j:plain
 

まずDVDのジャケットを作ったデザイナーおよびコピーライターに天誅を。原題は‘Little Woods’なのに邦題は『 ヘヴィ・ドライブ 』、しかも爆発をフィーチャーしたジャケットに、惹句が【 国境を越えろ! 世界一ヤバいブツを運べ! “運び屋”エンタテインメント 】である。運び屋の部分は確かにほんの少しだけ『 運び屋 』的な人間ドラマだが、その他は全部、誇大広告か虚偽広告である。

 

あらすじ

オリー(テッサ・トンプソン)はドラッグ所持のかどで保護観察処分に。その処分があと10日で解けるという時に妹のデブ(リリー・ジェームズ)が子どもを連れて現れる。しかも妊娠して。中絶を望む彼女に金銭的援助を与えるために、オリーはドラッグの密売稼業に戻るのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

デブを演じたリリー・ジェームズのやさぐれ感がいい。もちろんメイクアップアーティストやヘアドレッサー、照明の尽力あってのことだが、『 シンデレラ 』の頃の可憐さは一切なかった。そして『 ベイビー・ドライバー 』のデボラを思わせるデブ(Deb)という名前。本名はデボラ(DeboraまたはDebra)なのだろうが、『 ベイビー・ドライバー 』直後のデボラの末路、あるいは『 イエスタデイ 』でジャックが駅に来なかった世界のスピンオフを見ているようで、妙に物悲しく感じた。近年、スカーレット・ジョハンソンがママキャラへと見事な変貌を遂げたが、リリー・ジェームズにも役者としての転機が訪れている。社会の下層にいながら、それでも与えられることなく奪われる一方という境遇の悲哀を巧みに表現できていた。

 

主役のテッサ・トンプソンの静かな存在感も光る。トレイラーを走らせ、日雇い労働者的な男たちに食品や物品を都合する何でも屋を営む姿に、個の強さを見た。また前身が drug trafficker というのもアメリカ社会の闇を表していて、何とも言えない悲壮感と皮相な人生観を表している。生きるということは尊いことであるが、一方で生きることにはどうしようもない汚さやもある。ドラッグを売りさばいて得たカネで生計を立てるのは悪である。だが、そうしなければ生きていけない社会に誰がした?あるいは、下層に生きる人間の生には尊厳などないと言うのか。このあたりは『 ジョーカー 』が提起した問題であり、今なお解決を見ないし、今後も解決はされないだろう。

 

カネがいると言いながら、子どもの父親から受け取ったカネは投げ捨てる。衣食住の問題ではないと言いながら、衣食住を頑張って提供するというお腹の子どもの父親の言葉は拒絶する。一見するとデブの言動は支離滅裂だ。だが、「生きる」という営為の意味を真摯に見つめれば、そこに一定の答えが見えてくる。本作で衝撃的なのは、中絶を巡る姉妹それぞれの思いと人間関係だ。我々はよく妊娠、そして出産を崇高なものとして報じ奉る。一方で、自宅で出産したとか、誰にも妊娠を知らせることなく死産させてしまったというニュースが報じられるたびに、「なぜ周囲の協力や理解を得ないのか」と無責任に批判する。生が持つはずの尊さや崇高さが、別のものにかき消されていることに気づかない。タバコの紫煙を吐き出すデブの姿と、その姿に涙するオリーの姉妹の絆に、何とも言えないショックを受けた。『 イニシエーション・ラブ 』で前田敦子が「プハーッ!!」とビールを一気飲みするシーンがあるが、あのようなシーンの意味について我々はもっと思いを馳せるべきなのだろう。

 

ネガティブ・サイド

ほんの少しで良いので、オリーとデブの母親が健在だった頃、またはオリーとデブの幼少期の回想シーンが欲しかった。姉妹と言いながらも、姉は黒人、妹は白人。複雑な背景があるのは分かる。長じてから疎遠になってしまった姉妹だが、心の奥底では通じ合えている。それはかつて、こんなドラマが二人にあったから・・・というベタな演出をちょっとでいいから観たかった。

 

カナダとの国境近くの町で偽造IDの仕事を頼むことになる野郎どもがクズである必要はあったのか。こういう奴らがダーク・ヒーローであるとは決して思わないが、少なくとも必要悪なのではないか。違法な仕事で身を立ててますが何か?と開き直るぐらいでよかった。こういうクズな若い男を出すのならば、『 ガルヴェストン 』で安モーテルを経営していたナンシー・コヴィントン的な老婆を出すべきである。そうでないとストーリーのバランスが取れない。

 

総評

何か普通に日本でもありそうなストーリーで、時に胸を締め付けられるような気持にすらさせられる。これをアクション・クライムドラマとして売り出している日本の宣伝広報担当の会社および担当者は腹を切るべきである。それができないならば眼科と耳鼻科を受診すべし。なぜなら本作を正しく観たり聞いたりできていないことは明らかだからである。巣ごもり中の映画ファンは、凡百のアクション映画と思うことなかれ。かなり深いヒューマンドラマである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Be natural.

オリーの保護観察官が、面接前のオリーにかける言葉。字幕は「自然体でな」だったか。TOEFL ITPのWorkbookで時々出てくるマジシャンのDai Vernonの有名なQuoteの一つに“Be natural, be yourself.”というものがある。思想家のラルフ・ワルド・エマーソンあたりが残していそうな箴言である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, テッサ・トンプソン, ヒューマンドラマ, リリー・ジェームズ, 監督:ニア・ダコスタLeave a Comment on 『 ヘヴィ・ドライヴ 』 -アメリカ下層社会の現実-

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