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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 映画

『 死霊館 悪魔のせいなら、無罪 』 -拍子抜けもいいところ-

Posted on 2022年9月11日 by cool-jupiter

死霊館 悪魔のせいなら、無罪 20点
2022年9月11日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:パトリック・ウィルソン ベラ・ファーミガ
監督:マイケル・チャベス

『 死霊館 』シリーズ。一つも見たことはないが、「悪魔のせいなら、無罪」という副題に惹かれて近所のTSUTAYAでレンタルしてしまった。

 

あらすじ

心霊研究家のエド(パトリック・ウィルソン)とロレイン(ヴェラ・ファーミガ)のウォーレン夫妻は、悪魔に憑りつかれたせいで殺人を犯してしまったという青年アーニーの無実を証明するため、その呪いの実態を調査することになるが・・・

 

ポジティブ・サイド

子役の男の子はそれなりに迫力があったかな。

 

ベラ・ファーミガは良い年齢の重ね方をしていると感じた。

 

ネガティブ・サイド

こんなん、タイトル詐欺やん。悪魔のせいなら無罪という部分に惹かれて、『 エミリー・ローズ 』のような丁々発止のやりとりを期待していたのに、肝心の法廷部分は最後におまけ程度についてくるだけ。実際に悪かったのは人間ですというオチ。しかも無罪判決が出るわけでもなし。

 

冒頭の悪魔祓いのシーンも『 エクソシスト 』で見た構図の焼き直し。サメ映画が『 ジョーズ 』を超えられないように、悪魔祓い映画も『 エクソシスト 』を超えられないのか。白目むいたり、四肢を変な方向に曲げたりといった視覚的な演出以外を追求しようとは思わんのか。

 

その他のシーンもホラー映画の文法にあまりにも忠実すぎて、退屈になるだけ。ここはこけおどしだろう、ここはそろそろ来るな、という予感がほとんど全部的中する。多分、作り手も流れ作業で製作しているような気がする。それでも『 死霊館 』ユニバースの熱心なファンなら、キャラクターの development を楽しめるのかもしれないが、初見の人間ではストーリーも演出も全く楽しめない。

 

総評

ホラー+法廷サスペンスというテイストを期待していたのに裏切られた。和洋折衷の料理屋だと思って入ったら、ほとんど全部洋食で、最後の最後に抹茶アイスのデザートを供された感じである。ホラーの初心者にもホラーの愛好家にも勧められない。死霊館シリーズのファンだけが楽しめば良いというスタンスで作られた作品なので、それに該当しない人は近づくべからずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

curse

呪い、または呪うの意。これをセンテンスの形で使うことはまずない。普通は “Curse you!” = 呪ってやる!=この野郎め!という意味合いで使う。というか、こんな表現を使えるなら、もう英語コミュニケーションの上級者だろう。 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アメリカ, パトリック・ウィルソン, ベラ・ファーミガ, ホラー, 監督:マイケル・チャベス, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 死霊館 悪魔のせいなら、無罪 』 -拍子抜けもいいところ-

『 夏へのトンネル、さよならの出口 』 -もう少しオリジナリティを-

Posted on 2022年9月11日 by cool-jupiter

夏へのトンネル、さよならの出口 60点
2022年9月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:鈴鹿央士 飯豊まりえ
監督:田口智久

半日出勤の後、昼寝。その後ふらりと近所の映画館に赴き、タイトルだけでチケット購入。素材は良いと感じたが、料理する側のスキルが平々凡々だったという印象。

 

あらすじ

そこに入ると欲しいものが何でも手に入るというウラシマトンネル。しかし、代償として100歳老化してしまうという。過去のある出来事がトラウマになっている塔野カオル(鈴鹿央士)は、自暴自棄になって家を飛び出したある夜に、偶然にもウラシマトンネルを発見する。そこは時間の流れが外界とは全く異なるトンネルだった。カオルは転校生の花城あんず(飯豊まりえ)とトンネルを調査するための共同戦線を結び・・・

ポジティブ・サイド

原作小説は未読だが、ウラシマトンネルという設定は悪くない。時間を一つのテーマにするのはクリストファー・ノーランのような大巨匠も好むところである。本作はタイトルからして『 夏への扉 ーキミのいる未来へー 』のは明らか。原作もラノベらしいので、まず間違いなくボーイ・ミーツ・ガールだろうと予測した(100人いれば97人はそう予測するはず)。

 

アニメーションは美麗である。キャラもゆらゆらと揺れたりしないところは個人的に気に入った。随所に挿入される山や海、そして空の景色の美しさが、鬱屈したカオルとあんずの心象風景とは真逆で、二人がこの世界に馴染めていないことを静かに、しかし確実に印象付けた。

 

ウラシマトンネルを調査するシークエンスは面白かった。通話しながら境界線の位置を測ったり、時間の流れの違いを数値化したり。特に時間の境界線の内側から外側を見た時の視界は、なかなかにSF的だった。ガラケーが重要なアイテムになっていて、懐かしさを感じた。スマホだと、映像を録画したり、それを配信したりできてしまうので、時代設定は適切だった。

 

カオルとあんずのつかず離れずの距離感がもどかしくもありながら、同時に好ましくもあった。水族館でのデートで、ジンベエザメが陰と陽になって混ざり合いそうになり・・・というシーンは、二人の行く末の暗示として上手い演出だったと感じる。『 君の名は 』っぽさがありつつも、『 ナビゲイター 』的な終わり方にも好感が持てた。

ネガティブ・サイド

オリジナリティの無さには感心しない。色々ありすぎて頭が痛いが、「なんじゃこりゃ」とガッカリさせられたのは『 新世紀エヴァンゲリオン 』の綾波レイの「どいてくれる?」のまるパクリ。いや、別に監督の好みでも脚本家の好みでも何でもいい。ただ、このようなオマージュは、やるならやるで徹底的にやるべき。カオルの左手の位置はそこではないだろう。『 インターステラー 』や『 ほしのこえ 』へのオマージュも、やるならもっと徹底的にすべし、だ。

 

あんずの造形および性格が一部の層に媚びすぎている、というのはJovian妻の言。Jovianも同意する。黒髪ロングのクール系美少女がだんだんと打ち解けてくるのは、ステレオタイプでしかない。カオルとあんず、二人とも声に「演技力」がないので、キャラに深みが生まれないのもマイナス要素だ。

 

疑問なのは、単線電車の走る田舎町で、クラスメイトもカオルとあんずがあーだこーだというゴシップに興じるほど情報伝播の速い。にもかかわらず、二人が頻繁に踏切で出会い、線路を歩いていく姿が目撃されなかったのだろうか。

 

総評

時間と漫画を巡る不思議な物語という意味では『 リング・ワンダリング 』のようであり、夏と時間を巡る物語という点では『 永遠の831 』とも共通するところがある。批判すべき点も多いが、90分弱でコンパクトにまとめられていて、非常に観やすい。高校生、大学生のデートムービーにはちょうどいいだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

flip

フィギュアスケートでたまに聞こえる語。意味は「引っくり返す」である。映画では懐かしのガラケーが重要なアイテムになっていたが、これは英語で flip phone と言う。モニター部分がカパッと開いたり閉じたりするところが、flip になっているからである。英検1級受験者なら、二次試験で試験官に “Now, flip over the card and put it down.” と言われたことがあるかもしれない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, アニメ, ファンタジー, 日本, 監督:田口智久, 配給会社:ポニーキャニオン, 鈴鹿央士, 青春, 飯豊まりえLeave a Comment on 『 夏へのトンネル、さよならの出口 』 -もう少しオリジナリティを-

『 この子は邪悪 』 -もっと捻りが必要-

Posted on 2022年9月6日2022年10月31日 by cool-jupiter

この子は邪悪 40点
2022年9月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:南沙良 玉木宏 桜井ユキ
監督:片岡翔

Jovianは南沙良が大好きである。広瀬すずを吹っ飛ばす女優になると思っている。なので、どんなに駄作のにおいがしてもチケットを買う。

 

あらすじ

心理内科医の窪司朗(玉木宏)は、一家で交通事故に遭い、自身は脚に障がいを、次女は顔にやけどを、妻は意識不明の重体のまま植物状態になってしまった。唯一、長女の花(南沙良)だけが無傷だったことから、花はどこか罪悪感に苛まれていた。そんな時、母が5年ぶりに目覚め、自宅に帰ってきた。しかし、花は母にどこか違和感を覚えて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

ミステリ風味ではあるが、ミステリではない。伏線の張り方は極めてフェアというか、あっけらかんとしている。意味不明の冒頭のシーンで「何だこいつ?」と思ったその感性を大事にしてほしい。「何だこいつ?」であって「誰だこいつ?」ではないことを心に留め置くべし。

 

南沙良が言い知れぬ不安に押しつぶされそうになる少女を好演。この女優は、少女漫画の映画化作品でヒロインを演じるのではなく、常にどこか陰のあるキャラを演じてほしい。天真爛漫な10代女優は毎年陸続と現れては消えていくが、陰のある役を説得力をもって演じられる若手女優は少ない。

 

ロングのワンカットが多用されており、監督の演出上のこだわりが感じられる。また、古い木造家屋を歩く時のキィキィときしむ音が効果的だった。作った音ではなく、ナチュラルな音が観客の不安を煽る。この手法は嫌いではない。

ネガティブ・サイド

ほとんど何の事前情報も入れずに鑑賞に臨んだが、すれっからしのJovianは開始30分ほど、より正確に言うと母親が帰ってきた後、父親がとある発表をするところで話のオチまで予想できてしまった。そのポイントは、過去に類似の先行作品を映画および他メディアでたくさん経験してきたからだろう。以下、それらの作品例(白字で表示)である。

 

小説『 わが体内の殺人者 』

漫画『 多重人格探偵サイコ 』

映画『 ゲット・アウト 』

  『 シェルター 』

  『 悪魔を憐れむ歌 』

 

他にも少年ジャンプで全く同じようなオチの読み切り作品が1980年代にあった(主人公の友達の名前が風太だったような)。

 

欠点は、オチの弱さ、意外性の無さだけではない。ストーリーの核心に触れて以降は、急にカメラワークや演出が陳腐になったと感じた。明らかに『 ミッドサマー 』や『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』を意識したシーンがあったが、カメラが全然動かないし、こちらが観たいと思っている絵を映してくれない。その直後のシーンでも、登場人物たちが動かないのなんの。立ち尽くしているにしても、もっと震える、あるいは目を背けるなど、何らかの動きでキャラの心情や思考を語るべきシーンが、見事に spoil されてしまっている。前半と後半の演出上の落差がありすぎる。本当に同一人物が最初から最後まで監督したのだろうか。

 

おそらく玉木宏で女性を、なにわ男子の大西流星で女子を惹きつけようとした作品なのだろう。南沙良と桜井ユキでおっさんから青少年の層もカバー。そうしたライトなファンに各種の先行作品の優れたアイデアをごった煮にした作品を提供しよう、として作った映画にしか思えない。映画ファンをびっくり仰天させてやろうという気概に満ちた作品ではない。最初から「そこそこのヒット作」を志向している。監督は『 町田くんの世界 』の脚本などを務めており、Jovianと波長が合わないとは思わない。先行作品を敬うのはいいが、そのまま倣う必要などない。次作にとりかかる前に、商業主義的にではなくクリエイターとしての自分に向き合うべきだろう。

 

総評

主要キャストのファンなら鑑賞してもいいだろう。また、ライトな映画ファンにもお勧めできそうだ。逆に小説やら映画を相当に渉猟しているという人には勧め辛い。Jovianと同じで、一挙に結末まで予想出来てしまう人は、おそらく日本だけで数万人(その全員が本作を観るとは思えないが)はいると思われる。うーむ、誰に勧めるべきか難しい。『 NOPE / ノープ 』の監督のこれまでの作品を見て( ゚Д゚)ハァ?とならなかった人はどうぞ、と言っておこうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

hypnotize

催眠術にかける、の意。漫画『 聖闘士星矢 』世代なら、ヒュプノス=眠りの神だと知っていることだろう。似たような語に mesmerize もある。こちらの語を知りたければ、邦画ホラーの秀作『 CURE 』(主演:役所広司 監督:黒沢清)をお勧めする。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, ホラー, 南沙良, 日本, 桜井ユキ, 玉木宏, 監督:片岡翔, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 この子は邪悪 』 -もっと捻りが必要-

『 アキラとあきら 』 -大企業パートがファンタジー-

Posted on 2022年8月29日2022年8月29日 by cool-jupiter

アキラとあきら 50点
2022年8月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:竹内涼真 横浜流星
監督:三木孝浩

 

『 空飛ぶタイヤ 』や『 七つの会議 』の池井戸潤による小説の映画化。中小企業パートは見応え抜群だが、大企業パートは現実味が非常に薄かった。

あらすじ

倒産した町工場経営者の子、山崎瑛(竹内涼真)と大企業の御曹司、階堂彬(横浜流星)。正反対の理念を持つ同期入行の二人は、それぞれの仕事に邁進していく。しかし、山崎はある取引先との仕事で私情を挟んだことから左遷される。一方で東海郵船の社長、階堂彬の父が脳梗塞に倒れ、階堂は親族のしがらみに縛られることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

Jovianの大学の寮の大先輩にカナイマン(WikiではUFJ出身となっているが、実際はほぼ三和出身であられる)がいる。ありがたいことに今でもFacebookでつながりがある。その先輩が銀行員時代の債権回収の辛さを当時大学4年生だったJovianやその他の後輩にしばしばこぼしておられた。血も涙もない人間が上に行く世界というのは、逆に言えば血も涙もある人間が冷や飯を食わされる世界である。竹内涼真演じる山崎瑛がそのような世界で誠心誠意に銀行マンを務める姿は観る者の胸を打つ力があった。

 

銀行員でなくともサラリーマンなら、瑛の抱えるジレンマにいたく共感できることだろう。なぜ自分の提案が通らない。なぜ自分の稟議が通らない。若くしてそのような思いを抱き、だんだんと組織に染まり、情熱を失い、いつしか惰性で仕事をするだけになってしまった多くの中年サラリーマンが、『 トップガン マーヴェリック 』におけるトム・クルーズの現役バリバリの姿に rejuvenate されている今、本作は純国産のサラリーマン賛歌たりうる。

 

本作のストーリーを一言でまとめてしまえば、お定まりの不良債権処理。しかし、単に融資を引っぺがして資産を切り売りし、銀行本体のダメージを最小限に食い止める話ではない。経営が悪化した企業に勤める従業員とその家族の姿を序盤のうちに十分に観る側に焼き付けることで、観客がその企業の従業員あるいはその家族であるかのように感じられる仕掛けがここで効いてくる。企業買収や融資について専門的な知識がなくても、凄いアイデアで大逆転できるということは十分に伝わってくる。しかもそれがもう一人の彬のパーソナルな問題の解決にもつながるという力業。原作未読のため、この筋立てが原作に忠実なのか、それとも脚色の妙なのか判断しかねるが、一定のカタルシスが得られることは間違いない。

以下、マイナーなネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

冒頭の新人研修のファイナルでいきなり興ざめ。渡された資料の数字を粉飾するか?普通、こんなことをすれば役員激怒→新人研修担当激怒→新人にしてキャリアのお先真っ暗となりそうだが。それともそれが20世紀末の銀行だったのだろうか・・・

 

序盤で描かれる山崎瑛の行員としての仕事ぶりと対を成すはずの階堂彬の仕事ぶりが全くと言っていいほど描かれない。己に忠実な男が左遷され、己に忠実な男が順調に出世していくというコントラストが弱いせいで、その後に二人のキャリアが思わぬ形で交わり、共闘していくという流れに説得力が生まれてこない。ドラマのエピソードを持って詰め込めなかったか。

 

企業売却案件の相談行脚にしても、銀行員だけで回るものか?交渉の場には着かなくとも、東海グループの人間も同行して然るべきと思うが。またメインバンクの支援融資の可否が決まる前から買収先の企業が合意書に印鑑まで押していることに至ってはファンタジーとしか言えない。

 

役者の演技で見せるべきところでもBGMが少々邪魔をする。『 暗数殺人 』のクライマックス、BGMも何もなく、キム・ユンソクが訥々と語る。それでいて迫力満点のようなシーンは邦画では撮れないのだろうか。最後のBGMも物語の世界観とずれているようにJovianとJovian妻は感じた。

総評

社会や企業の成り立ちを基に本作を観るべきではない。タイトルにある通り、瑛と彬(こちらはちと弱いが)の二人の人間の思いや行動力に注目して観るべきである。鑑賞中は場面ごとに銀行員や、融資先企業の従業員、その家族という具合に共感の対象を変えていこう。そうすれば『 アキラとあきら 』というタイトルの意味に迫れるはずである。物語の整合性やリアリティなどは考えてはいけない。素直にサラリーマン賛歌として観るのが吉である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fate

「宿命」の意。映画での使用例では『 ターミネーター2 』の There is no fate but what we make for ourselves. が特に印象深い。もう一つ、『 インディペンデンス・デイ 』のウィットモア大統領(『 トップガン マーヴェリック 』のボブの父親)の “Perhaps it’s fate that today is the Fourth of July” から分かるように、客観的な事象としての宿命の場合は不可算名詞である。まあ、英語講師以外には全く不要な知識だろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 横浜流星, 監督:三木孝浩, 竹内涼真, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 アキラとあきら 』 -大企業パートがファンタジー-

『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

Posted on 2022年8月28日 by cool-jupiter

NOPE  / ノープ 70点
2022年8月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ダニエル・カルーヤ キキ・パーマー スティーブン・ユアン ブランドン・ペレア
監督:ジョーダン・ピール

Jovianは矢追純一世代だったので、UFOには一時期かなりハマっていた。そのUFOをジョーダン・ピールが料理するというのだから、観ないわけにはいかない。

 

あらすじ

馬の飼育と調教を生業にするヘイウッド家の父が、謎の死を遂げる。長男OJ(ダニエル・カルーヤ)は、父の死と空に一瞬見えた謎の飛行物体が関連していると確信。妹のエム(キキ・パーマー)と共に、謎の物体をカメラに収めようと考えるが・・・

ポジティブ・サイド

予告や内容紹介の段階では、M・ナイト・シャマランの『 サイン 』のようなストーリーなのかと思った人は多くいそう。実際に似ているところもあったし、そうでないところもあった。いずれにせよ確実なのは、ジョーダン・ピールがまたしても非常にオリジナル作品を送り出してくれたことだ。

 

オープニングのTVショーはまったくもって意味不明。また映画の各段階で馬の名前が画面に大々的に表示される。これもこの段階では意図が見えない。しかし、後々これらが本作のテーマとダイレクトにつながっていることが分かる。

 

ハリウッドのはずれのはずれにある広大な馬の飼育場、その上空の雲の中に得体の知れない存在がいる。そして、それはどうやら人や馬を襲う。この正体不明の存在との闘争・・・ではなく、とにかくこいつを写真や映像にしてビッグになってやろう、というところが現代風で面白い。また、その奇妙なモチベーションに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのが興味深い。

 

主人公OJを演じるダニエル・カルーヤは、『 ゲット・アウト 』とはガラリと異なる寡黙な男。しかし馬および野生動物に対する造詣が深く、そのことが物語上で大きな意味を持っている。また馬の調教師であるというバックグラウンドに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのは興味深い。映画産業の初期の初期から現代に至るまで、我々は物語(往々にしてそれは事件)をカメラという媒体で撮られ、スクリーンという媒体に映写されるものだと思ってきた。しかし、本当の事件が自分の身にリアルに起きた時、人はどう対応するのか。これが本作の裏テーマなのではないかと思う。

 

徐々に正体を現すUFOと、それをカメラに収めようとするOJとMの兄妹や、奇妙な協力者エンジェル、自身の経験が裏目に出て被害に遭ってしまうジュープなど、それぞれの登場人物が物語に意味と味わいを与えている。個人的に最も印象に残るのは、後半に登場する老カメラマン。常にPCモニターで「あるもの」を見ているのだが、本作ではそれは痛烈な皮肉に見えてくる。UFOで始まり、ハリウッドの新たな神話の誕生で終わる。何を言っているのか分からない?だったら劇場で観るべし。

以下、マイナーなネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

序盤から中盤にかけての展開がスリリングだったのに対して、終盤にかけての展開は少しテンポが落ちたと感じる。「あれは何だ?」、「もっとちゃんと見せろ」という中盤までのテンションが、後半にまで持ち越されていない。謎の存在をカメラに収めるというミッションに、途中で別キャラが入り込んでくるからだろう。もしも牧場の倉庫に主導のフィルムカメラが眠っていて「ひいひいひいお爺ちゃん、ありがとう!」という展開であれば、また異なる印象を受けたと思う。

 

これはトレーラーの罪なのだろうが、Mがしきりに “Don’t look, don’t look.” と言いながら歩くシーンは盛大なネタバレだった。

 

UFOが『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』的な変形を見せるのはちょっといただけない。もっと無機質なままで良かったのにと思う。写真に収めるべきは馬に乗ったOJであるべきだったと思う。

 

総評

『 ゲット・アウト 』のような意表を突いたSF的な要素もありながら、常に社会批判も盛り込んでくるのがジョーダン・ピール流。今作でも伝統的な映画業界やパパラッチ、YouTuber を皮肉る一方で、エンターテイメントとしての面白さもしっかり追求できている。ジャンルとしてはSF+ホラーになるのだろうが、このホラー映画は観る人を選ばない。ある意味で、『 ゲット・アウト 』や『 アス 』よりも、本作の方がジョーダン・ピール世界への入門編としては適しているかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nope

No のくだけた言い方。No をクイックに歯切れよく発音すると、語尾に p の音がついてくる。同じことは Yes にも言える。これをインフォーマルに言うと Yep となる。いずれの表現もかなりカジュアルな表現なので、ビジネスの場では使わないようにしたい。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アメリカ, キキ・パーマー, スティーブン・ユアン, ダニエル・カルーヤ, ブランドン・ペレア, ホラー, 監督:ジョーダン・ピール, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

『 マインド・ゲーム 』 -This Story Has Never Ended-

Posted on 2022年8月24日2022年8月24日 by cool-jupiter

マインド・ゲーム 75点
2022年8月22日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:今田耕司 前田沙耶香 藤井隆
監督:湯浅政明

『 犬王 』以来、ずっと観たいと思っていた本作を、ついに借りることができた。脳が溶けるような映像&物語体験であった。

 

あらすじ

幼なじみにして初恋の相手みょんちゃん(前田沙耶香)に再会した西(今田耕司)は、みょんちゃんの父親の借金の取り立てにきたヤクザに射殺されてしまう。あの世で神に出会った西は、神の言いつけに逆らって、現世に舞い戻るが・・・

 

ポジティブ・サイド

今田耕司の声だけで笑ってしまうが、物語自体も極めてクレイジーとしか言えない。幼馴染にして初恋の相手、中学の時には両想いになれたのに真剣交際に発展せず。あれよあれよという間にみょんは別の男と付き合い始め、cherry pop ・・・ 哀れ、西は漫画家を目指す。

 

20歳にして偶然にみょんと再会する西だが、みょんにはやはり他に男が。しかも婚約者。もうこの時点でヘタレの西に感情移入するしかない。さらにみょんの実家での西の妄想というか、手前勝手な思考回路はまるで『 君が君で君だ 』の尾崎豊(偽物)を思い起こさせる。Jovianはここで西に同化してしまった。自分でも同化している・・・ではなく、どうかしていると思うが、この西の物語を見届けたい、見届けなければならないという気分にさせられた。

 

ビックリするのは、その次の瞬間にあっさりと西が死んでしまうこと。正確には殺されるわけだが、まず殺される直前の緊迫した空気に戦慄させられる一方で、西の殺され方には不謹慎にも笑ってしまう。このテンションのジェットコースター的な上がり下がりが、物語の全編を通じて続いていく。

 

ストーリーは荒唐無稽もいいところだが、これらは全て西の人生観や世界観のメタファーだ。クジラはどう見ても西の胎内回帰願望だろう。母の子宮内で胎児でいることほどストレスフリーな生き方はない。騒音もなく、常にぬるま湯の中。呼吸をする必要もなく、食事を自分で用意する必要もない。しかし、そんな安楽な環境にいつまでもいられるはずはない。人は常に生み出されなければならない。西にもその時が来る。

 

本作のメッセージは、あまりにもストレートだ。死んだ気になれば、いつでも生まれかれるということだ。絵柄も独特、ストーリーも独特、キャラも独特。何もかもが既存のアニメや既存の映画という枠に囚われない、非常に自由な湯浅政明色の演出に染められている。さあ、脳が溶けてしまうようなトリッピーな映像世界を味わおうではないか。

 

ネガティブ・サイド

西とみょんちゃんのセックスシーンは、もっと婉曲的に描けなかったのだろうか。二人の身体が重なり合うところをもっと抽象的に描く方法はあったはず。機関車=ピストン運動のような非常に直接的かつ間接的案、もっと記号的な形で西とみょんのまぐわいを描く方法を湯浅監督には模索してほしかった。

 

ところどころでキャラクターが実写化されるのはノイズに感じた。島木譲二がヤクザの親分とか、笑えるのは笑えるが、それは面白いから笑っているのではなく、「しゃーないな」と思って笑っているのである。

 

総評

なんというか、『 トップガン マーヴェリック 』を鑑賞し続けているせいか、本作を観て “Don’t think. Just do.” という言葉が思い出された。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

kick one’s ass

「しばく」の意。標準語にするなら「ぶん殴る」か。俗説だが、アメリカ人はストリートファイトであっても蹴ることはあまりない。蹴るのは卑怯で、闘うなら拳だろうと思われているらしい。なんにせよ、kick one’s ass を能動態で日常会話で使うことはあまりないはず。実際は I got my ass kicked. = ぼろ負けした、のように受け身で使うことが多いだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2000年代, B Rank, アニメ, コメディ, ファンタジー, 今田耕司, 前田沙耶香, 日本, 監督:湯浅政明, 藤井隆, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 マインド・ゲーム 』 -This Story Has Never Ended-

『 トップガン マーヴェリック 』 -追いトップガン5回目-

Posted on 2022年8月21日2022年12月31日 by cool-jupiter

トップガン マーヴェリック 90点
2022年8月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー

「追いトップガン」なる言葉が生まれていたことを最近知った。Jovianも5度目の追いトップガンである。

 

あらすじ

マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・

ポジティブ・サイド

2週間前の西宮ガーデンズも凄い入りだったが、今日のMOVIXあまがさきもかなりの混雑。座席は8~9割は埋まっていた。中高年が多いが、10代男子や20代カップルもちらほら。コロナは高止まりしているが、映画館に人は帰ってきているなと強く印象付けられた。

 

多くの人々が大画面と大音響の中毒になっているのだろう。冒頭の Top Gun Anthem と Danger Zone でノリノリになっているオッサンが数名見受けられた(頭や肩がヒョコヒョコ動いているのが見えるのだ)。彼らもきっと追いトップガン組だろう。

 

5度目の鑑賞となると、字幕に目をやらず、役者のセリフに集中することができる。ハングマンとフェニックスのやりとり(フェニックスがこっそり中指を立てるところなど)は観ていて毎回とても面白いが、今回新たな発見が。

 

Maverick: Leaving your wingman? That’s a strategy I haven’t seen in a while.
僚機(ウィングマン)を見捨てる?こんな戦法を見るのは久しぶりだ。

Hangman: He called you a man, Phoenix. You’re gonna take that?
フェニックス、マーヴェリックが man だと言ってるぞ?受け入れるか?

Phoenix: As long as he doesn’t call you a man.
あんたを man と呼ばなければね。

 

めちゃくちゃ痛快なやりとりである。『 エイリアン2 』の

ハドソン:Hey Vasquez, have you ever been mistaken for a man? 

バスケス:No. Have you? 

並みに面白い。字幕がどう表示されたかは覚えていないが、wingman は確かに男に聞こえる。余談だが、アメリカでは定期的に大学一年生を freshman ではなく freshperson と呼ぶようにしよう、という運動が起きると聞いたことがある。けれど毎回 fizzle out するようだ。fisherman や fireman も同じらしい。映画やドラマでも firefighter より fireman の方が圧倒的に使われている頻度は高いと感じる。きっと wingman もいつまでも wingman なのだろう。

 

閑話休題。本作はリリースのタイミングもある意味で絶妙だった。ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界は戦争を抑止するシステムが膨大な力によって成立していることを図らずも知ってしまった。同時に「死ぬのも仕事のうち」だという人々が存在するということも。たた、死ぬのが仕事のうちだからといって必ず死ななければならないわけではない。死なないに越したことはない。本作や前作『 トップガン 』で戦闘機や軍事そのものに興味を持ったという若い世代には、ぜひとも漫画『 ファントム無頼 』をお勧めしたい。日本の空にもマーヴェリックのような自衛官が飛んでいると思えるようになるだろう。

ネガティブ・サイド

マーヴェリックが単騎でミッション演習コースを駆け抜けるシーンで、峡谷を飛ぶマーヴェリックの機ではない機体の影が一瞬だけ映っている。最初の頃の鑑賞では気のせいかと思っていたが、何度見てもやはり映っている。マーヴェリックのF-18の機影ならまっすぐ動くはずだが、その影の元になった機体は上昇しているっぽい。画面に映るのは1秒ほどだが、誠に惜しいシーンである。

 

総評

何度見てもやっぱり面白い。ターミネーター=A・シュワルツェネッガー、ハン・ソロ=ハリソン・フォード、ロッキー=シルベスター・スタローンと同じレベルで、ピート・”マーヴェリック”・ミッチェル=トム・クルーズであると感じる。今年の最優秀海外俳優の座は彼のものである。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズは4作目か5作目で観るのをやめてしまったが、やっぱり観たいと思えてきた。トム・クルーズのスターパワー、恐るべしである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

None of your business.

「お前には関係ない」の意。結構きつい表現なので職場などでは使わない方が吉。ほぼ同じ意味とニュアンスの表現に Mind your own business. がある。これらを正しく使えれば、それだけでコミュニケーションの上級者である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, S Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ヒューマンドラマ, マイルズ・テラー, 監督:ジョセフ・コジンスキー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 トップガン マーヴェリック 』 -追いトップガン5回目-

『 フェイク 我は神なり 』 -信じる者は救われる?-

Posted on 2022年8月21日 by cool-jupiter

フェイク 我は神なり 70点
2022年8月19日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ヤン・イクチュン
監督:ヨン・サンホ

待てど暮らせど返却されない『 マインド・ゲーム 』。しゃーないので、前々から気になっていた本作をセレクト。

 

あらすじ

韓国の田舎の村。ダム建設のために近く水没する予定のこの村に、ミンチョル(ヤン・イクチュン)が帰ってきた。村では若いソン牧師が村人から崇敬を集めていた。しかし、その傍らには村人から補償金を巻き上げようとする詐欺師ギョンソクの姿があり・・・

 

ポジティブ・サイド

アニメではあるが、韓国映画の容赦ないテイストがこれでもかと詰め込まれている。『 はちどり 』の父親よりも暴力的なミンチョル。それを『 息もできない 』のヤン・イクチュンがけれんみタップリに演じるのだから笑おうにも笑えない。いや、笑ってしまうようなストーリーではないのだが、韓国の伝統的な父親像を体現するダメ親父が、確立された宗教的権威に挑むというのだから、普通は笑ってしまうだろう。しかし、この無茶なプロットを成立させるのも韓国映画の剛腕っぷりと言えようか。

 

能弁家のギョンソクと若い牧師のソンが立ち退き料を受け取った村人に、あの手この手で浄財をさせようという序盤が目を引く。「こんな馬鹿な手口に引っかかるとは、さすが韓国の田舎者」と感じたら、それだけで負けである。日本でも毎年のように数億円規模の詐欺集団が検挙されているが、逆に言えば野放しの詐欺集団もたくさんいるということである。個人を悪く言うものではないが、2021年に死去した細木数子などはギョンソクと同種の人間だろう。彼女がテレビで「地獄に落ちるぞ」と言うたびに、ああ、室町時代の坊主はこんな感じで庶民を食い物にしてたんやろなあ、と思っていたものである。

 

閑話休題。本作は、ろくでなしが語る真実と聖人君子がもたらすまやかしのどちらを信じるのかを我々に問いかけてくる。『 沈黙 サイレンス 』そのままに、神は黙して語らない。だからこそ、その代弁者としてのソン牧師や、そのスポークスマンであるギョンソクの言葉に村人は耳を傾ける。このあたりのイライラ感と、他人に対して粗野にしか振る舞えないミンチョルのイライラ感が合わさって、観ていて非常にストレスが溜まる。警察もとことん無能で、こいつら仕事する気あんのかいな?とイライラさせられる。このイライラが最高潮に達する時、すべてが破滅に向かって動き出す。この救いの無さは『 ソウル・ステーション パンデミック 』でも明らかだったヨン・サンホ監督の持ち味か。何を信じるのかではなく、信じるという営為そのものが持つ危うさが本作の肝である。

 

ネガティブ・サイド

アニメではなく実写でやるべきテーマ、かつストーリーだろう。ミンチョルのような粗野で暴力的な中年を演じられる俳優も、韓国にはいくらでも存在するだろう。『 息もできない 』のヤン・イクチュンが、そのまま本作のミンチョルを演じるところを是非とも見たかった。

 

これは一種のネタバレだが、字幕に問題ありである。おそらく翻訳者は気を利かせて、ある簡単な韓国語を別の言い方に訳してしまっているが、これによって終盤のあるシーンの驚きが減じてしまうことにつながっている。小さな親切が余計なお世話になることもある。

 

総評

日本の代議士、特に政権与党が旧統一教会(&創価学会)に汚染されまくっていて、なおかつ「知らなかった、今後は気を付ける」で済ませようとする国会議員の多さ、その神経の図太さには呆れるばかりである。そんな状況なものだから「旧統一教会によって救われた人もいる」という発言も大いにバッシングを浴びるわけだが、日本人はそもそも宗教とは何か、信仰とは何かを知らない。「日本人に哲学なし」とは中江兆民の言だが、これは「日本人に宗教なし」とも言い換えられるかもしれない。では宗教とは何か?その問いに対するひとつの答えが本作にはある。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

カ

Ka is go, Ke is stay. と昔、Korean American の非常勤講師に教わったことがある。さよなら=アンニョンヒ「カ」セヨは相手が去る時、アンニョンヒ「ケ」セヨは自分が去る(=相手が残る)時だ、と。本作では「カ」の一言で「帰れ」のように使っていた。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アニメ, サスペンス, ヤン・イクチュン, 監督:ヨン・サンホ, 配給会社:ブロードウェイ, 韓国Leave a Comment on 『 フェイク 我は神なり 』 -信じる者は救われる?-

『 ねむれ思い子 空のしとねに 』 -シンギュラリティ後にありうる未来か-

Posted on 2022年8月20日 by cool-jupiter

ねむれ思い子 空のしとねに 70点
2022年8月17日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:福島央俐音 井上喜久子 田中敦子
監督:栗栖直也

『 マインド・ゲーム 』がまだレンタルされている。いつになったら返却されるのか。すぐ近くにあった本作を、ジャケット裏のあらすじも読まずタイトルだけでレンタルする。

 

あらすじ

赤ん坊が生まれたばかりの夫婦が交通事故に遭い、子どもの織音(福島央俐音)だけが生き残った。それから19年後、警察から追われる織音を、エージェントのユリ(田中敦子)が逃亡を幇助する。そのまま実験用宇宙ステーションへ連れて行かれた織音は、事故当時の姿のままの母・里美(井上喜久子)と再会する・・・

 

ポジティブ・サイド

栗栖直哉が独力で作り上げたということに舌を巻く。それができるだけのテクノロジーが一般に普及し、だからこそ本作の設定にリアリティが付与されている。

 

何が何やら分からないままに序盤は進んでいくが、宇宙ステーションで織音が母・里美と再会するシーンにまず驚かされる。のみならず、その里美の正体が明かされ、なぜ織音が宇宙ステーションまで呼び出されたのか、その理由の壮大さにも圧倒される。

 

死者の復活、死者との交信あるいは語らいというのは、映画や小説などのフィクションの世界では割とありきたりなテーマではある。本作はそうしたジャンルでは陳腐ですらある愛や恐怖といった要素に、さらに謀略やアクションといった要素も盛り込んできた。スケール大きいなあと感心してしまう。

 

ついついナレーションで色々と説明したくなってしまうところをグッとこらえて、物語そのものにキャラクターを描かせた。そしてキャラクターが動くことで、物語も進んでいった。いつかハリウッドあたりが実写映画化するかもしれないという期待を抱かせる。

 

ネガティブ・サイド

いくつかのシーンが非常に陳腐だったというか、『 GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』や『 AKIRA 』といった先行作品のシーンや構図をそのまま持ってきたように見えたのはマイナス。

 

アニメーションは日本のお家芸だが、『 あした世界が終わるとしても 』のようなユラユラと動くアニメキャラというのは個人的に気味が悪い。絵柄については賛否両論あるようだが、そこは別に気にならない。むしろ不気味の谷を感じさせる絵柄で、本作のテーマにも合っている。問題は、不自然な動き。

 

総評

設定にリアリティがある。一昔前なら完全な純SF扱いだっただろうが、人間の脳の仕組み、特に意識や記憶を司る部位の働きなどがどんどん解明され、また人工知能や超大容量記憶装置などが夢物語ではなくなっている現代において、本作が提示する世界観そして人間観は非常に示唆に富む。描写に陳腐なところがあったり、どこかで見たような構図があったりするが、気にしては負けである。『 JUNK HEAD 』の堀貴秀のような奇才が、まだまだ日本にはいる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

freak

劇中で里美が「化け物」呼ばわりされるが、これは monster ではなく freak だろう。『 ダークナイト 』でもジョーカーがギャングの一人から Freak 呼ばわりされていたように、人間ではあるが通常の人間ではない者、しばしば嫌悪感を催させる者を freak と呼ぶ。綾辻行人の『 フリークス 』を読めば、この言葉の意味がより強く実感できるだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, SF, ヒューマンドラマ, 井上喜久子, 日本, 田中敦子, 監督:栗栖直哉, 福島央俐音, 配給会社:インターフィルムLeave a Comment on 『 ねむれ思い子 空のしとねに 』 -シンギュラリティ後にありうる未来か-

『 グレイマン 』 -頭を空っぽにして楽しむべし-

Posted on 2022年8月18日 by cool-jupiter

グレイマン 65点
2022年8月15日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ライアン・ゴズリング クリス・エヴァンス アナ・デ・アルマス
監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ

 

Netflix製作・配給の映画。典型的な popcorn flick である。アクション満載なのは楽しいが、すべてがどこかで観た構図なのが玉に瑕。

 

あらすじ

長期服役中だったが、CIAの工作員としてスカウトされたコードネーム、シエラ・シックス(ライアン・ゴズリング)。ある時、タイのバンコクでターゲットを暗殺するが、その男は自らを元シエラ・フォーだと言い、シックスにとある機密情報を託す。シックスは同作戦に従事したミランダ(アナ・デ・アルマス)にフォーのことを告げる。同時に、CIA本部では、冷酷非情な工作員ロイド・ハンセン(クリス・エヴァンス)がシックス暗殺に向けて動き始めて・・・

ポジティブ・サイド

とにかく最初から最後までど派手なアクションの連続。格闘戦あり、ナイフ使いあり、銃撃あり、カーチェイスあり、爆発ありと何でもござれ。戦闘の舞台もバンコクから始まり、ウィーン、プラハ、クロアチアなど正に世界を股にかける工作員たちのスーパーバトル。CGと実写の両方が使われているが、どちらにも相当のカネが費やされている。アクションを期待するなら、You will get your money’s worth. その期待は裏切られることはないだろう。

 

はじめはブレードランナーVSキャプテン・アメリカぐらいに思っていたが、とんでもない。シエラ・シックスは『 ブラック・ウィドウ 』よりも強いのではないか。観る側にそう思わせるだけのド派手なアクションのオンパレードである。

 

カナダでは「ライアンと言えばゴズリング」と言われるぐらいの人気俳優だが、ライアン・ゴズリングの北米大陸どころか、名実ともに世界的スーパースターになった。本作でもその地位を更に固めることになったと言えるだろう。『 ナイスガイズ! 』のようなコメディ・アクションから、本作のようなシリアス・アクションまで、その演技ボキャブラリーは巨大。わずか数秒だけしか画面に映らないが、ムキムキの体も作ってきた。

 

悲しい過去を背負った男が、友情、そして新たな愛情の対象を見つけ、それを命がけで守る姿は美しい。ライアン・ゴズリングのファンなら本作は必見だろう。『 アメリカン・アサシン 』が面白かったと感じた向きにもお勧めだ。スペシャリストvsスペシャリストという分野に新たな快作が送り出されてきた。次回作への期待も膨らむ。Netflix限定配信などと言わず、ぜひ劇場公開を!

ネガティブ・サイド

アクションの規模は空前絶後だが、全てのシーンに既視感を覚える。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズからジェイソン・ボーンのシリーズまで、どこかで観た銃撃戦だったりカーチェイスだったり、肉弾戦だったりする。観ている最中は手に汗握るが、観終わって少し時間が経つと、興奮したことは覚えていても感銘を受けたシーンがほとんどなかったことに気付く。

 

また悲しい過去を背負った男が少女を守るために闘うというプロットでは『 アジョシ 』が先行している。アクションのスケールでは本作の勝ちだが、チャ・テシクとシエラ・シックスが素手もしくはナイフで戦えば、チャ・テシクが勝つ構図しか見えない。本作はそういう感想を抱かせる作品である。

 

悪役のクリス・エヴァンスはそれなりに新鮮だったが、劇中で盛んに sociopath と形容される悪役そのまんま。予想通りの悪でしかない。爪をはぎとっていく拷問シーンはまあまあの迫力だが、それとても『 ただ悪より救いたまえ 』のインナムが錆びた極太ばさみで拷問相手の指を切り落としていくシーンと比較してしまうと、非常に小物っぽくなってしまう。それこそエヴァンス演じるロイドは、それこそ『 ただ悪より救いたまえ 』のレイ以上の狂気を放つ極悪人であるべきだった。このあたり、監督の演出の弱さか、それともエヴァンスがキャプテン・アメリカの殻を破れないのか。

 

最大の問題は、あれだけ他国で大暴れしておきながら、肝心のCIAがまったく揺らいでいないところである。他国であれだけ警察官や一般市民を殺傷すれば、CIA長官どころかアメリカ大統領の首が飛ぶだろう。エンディングで( ゚Д゚)ハァ?となること請け合いである。

 

総評

シネ・リーブル梅田の新音響を利用したodessa上映回に行ってきたが、Netflix配信=個人用デバイスでの鑑賞では味わえない音響と音圧だった。odessa上映ではなくても、大画面かつ大音響を堪能する価値のあるアクション巨編である。頭を空っぽにして、とにかく2時間ハラハラドキドキを味わいたいなら、本作鑑賞は must だろう。ぜひ劇場鑑賞を。 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Heads will roll.

直訳すれば「首が転がるだろう」の意。転じて「リストラが行われるだろう」ということを意味するが、劇中では文字通りの意味で、首が転がる=死人が出るの意味で使われていた。実際のセリフでは Heads would roll. と仮定法だったが、 普通の学習者であれば「リストラが計画されている」という意味だけ押さえておけばよい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, アナ・デ・アルマス, アメリカ, クリス・エヴァンス, ライアン・ゴズリング, 監督:アンソニー・ルッソ, 監督:ジョー・ルッソ, 配給会社:NetflixLeave a Comment on 『 グレイマン 』 -頭を空っぽにして楽しむべし-

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