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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 海外

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』 -ナードのビルドゥングスロマン-

Posted on 2024年12月31日2024年12月31日 by cool-jupiter

I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 70点
2024年12月31日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:アイザイア・レティネン
監督:チャンドラー・レヴァック

 

2024年の締めくくりにテアトル梅田へ。大晦日の夕方でも結構な客の入りだった。

あらすじ

トロント郊外で母親と暮らすローレンス(アイザイア・レティネン)は無類のシネフィルで、NYUで映画を学ぶための学費のため、地元のレンタルビデオ店でアルバイトを始めた。そのために唯一の親友マットとの時間が減り、また高校の卒業式に上映する記録映画の製作にも遅れが出て・・・

 

ポジティブ・サイド

これはおそらく『 ルックバック 』同様に、監督の自伝的な作品なのだろう。コミュニケーションが下手というか、あまりにも直球過ぎるところがナード気質満開で、顔、表情、体型、仕草などとも併せてオタクの典型とも言うべきキャラを生み出した。それが映画オタクで、自分でも学校のプロジェクトで映画を撮っているという導入はパーフェクト。

 

この年齢の若者が時々陥る肥大化した自我の罠に、ローレンスも見事にはまっているのはオッサン視点から面白くもあり、物悲しくもある。今すぐにでも思考を改めないと、そのまま大人になってしまうと矯正が難しいから。ここでバイト先のレンタルビデオ店のマネージャーと母親が中盤以降に大活躍。凡庸ではあるが、元SMAPメンバーのやらかしが報じられる今だからこそ刺さるエピソードも盛り込まれている。

 

ローレンスが家を離れてから見せる成長には、我あらず涙が。『 ライオン・キング

ムファサ 』でタカが犯した失敗を繰り返さなかった。これもやはり母とアラナのおかげか。実家や故郷を離れれば殻を破れるわけではない。自分というものを抑えることで破れる殻もある。10代の時に本作を観てみたかったなとしみじみ思う。

 

ネガティブ・サイド

ローレンスとマットの creative differences をほんの少しで良いので見せてほしかった。「女だけは自分が一番大事にしてきたものの隣にあっさり座る」と喝破したのは柴田ヨクサルだったか。マットにとってのローレン・Pがまさにそれで、そこには説得力があった。しかし、彼女の編集の腕が一切示されなかったので、マットが思い出動画の作成に取り組む姿勢がどう変わったのか分からず、ローレンスと疎遠になってしまう契機がやや不明瞭だった(まあ、決定的なのは jerk off ninety-eight times だろうが)。

 

総評

舞台が2003年ということで、まさにJovianの20代前半、TSUTAYAが日本を席巻していた頃で、デジカメも普及しつつある、まさに映画と普通の人間の距離が近くなっていった時代だった。一方でスマホやSNSなどはなく、人と人とが直接的につながっていた時代でもあった。AIによって文章や画像、音楽や映像ですら手軽に生み出せる時代になったが、そんな時に古き良き時代を思い起こさせてくれる一本だった。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

school night

翌日に学校がある夜、登校日の前夜の意味。映画などでしばしば親が夜更かしする子に 

It’s a school night!
明日は学校でしょ!

と言っている。学校に行った当日の夜ではない点に注意が必要である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』
『 港に灯がともる 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アイザイア・レティネン, カナダ, ビルドゥングスロマン, 監督:チャンドラー・レヴァック, 配給会社:イーニッド・フィルムLeave a Comment on 『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』 -ナードのビルドゥングスロマン-

『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

Posted on 2024年12月30日 by cool-jupiter

ライオン・キング:ムファサ 50点
2024年12月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アーロン・ピエール ケルビン・ハリソン・Jr
監督:バリー・ジェンキンス

 

『 ライオンキング(2019) 』前日譚ということでチケット購入。

あらすじ

シンバは息子キアラの世話を旧知のラフィキ、ティロン、プンバァに託す。ラフィキはそこで、偉大な王ムファサの物語をキアラに語り掛けて・・・

ポジティブ・サイド

CGの美しさは言わずもがな。風景に至っては、最早一部は実写と見分けがつかない。水のシーンは『 ゴジラ-1.0 』の海のクオリティにも決して劣らない。

 

前日譚ではあるが、前作のキャラも大量に登場。やはりプンバァとティロンが出るだけで『 ライオンキング 』の世界という感じがする。ザズーとムファサの出会いが描かれていたのも個人的にはポイントが高い。

 

ライオンの習性というか、オスの旅立ちとはぐれライオンによるプライドの乗っ取り、まったく赤の他人のオス同士が広大なサバンナでたまたま出会い、パートナーになっていくなど、近年の調査で明らかになりつつあるライオンの実像を盛り込んだストーリー構成も悪くない。

 

随所に「おお、これがあれにつながるのか」というシーンが盛り込まれていて、前作ファンへのサービスも忘れていない。

 

命の輪のつながりを実感させるエンディングは予想通りではあるものの、非常にきれいにまとまった大団円だった。

ネガティブ・サイド

楽曲がどれも弱かった。”He lives in you.” や “Can you feel the love tonight?” は再利用不可能だとしても、せめて “Circle of Life” は聞きたかった。命の輪について劇中で何度も触れるのだから、なおさらそう感じた。

 

若き日のスカーであるタカが色々な意味で可哀そう。Like father, like son.という言葉があるが、父親のオバシのある意味で過保護と歪な愛情がタカを作ったわけで、タカそのものは悪戯好きな、よくいる子どもに過ぎない。また母のエシェもムファサに向ける愛情のいくらかを実子のタカに向けられなかったのか。子どもにとって親から信頼されることと親から愛されることは似て非なるもので、前者よりも後者の方が必要なはず。

 

ムファサもタカに命を救ってもらい、プライドにも(中途半端ながら)加入させてもらったことに一度もありがとうと言っていないところも気になった。タカの傷にしても、なにか辻褄合わせのように見えた。Let’s get in trouble もっと幼少期のムファサとの遊びの中で、ムファサの不注意で、あるいはムファサをかばったことで負った傷という設定にはできなかったか。

 

総評

鑑賞後のJovian妻の第一声は「タカが可哀そう」だった。Jovianもこれに同意する。詳しくは鑑賞してもらうしかないが、このストーリーは賛否の両方を呼ぶと思われる。ただし誰にとっても楽しい場面はあるし、楽曲のレベルも低いわけではない。家族で見に行くにはちょうどいい塩梅の物語とも言える。チケット代を損したという気分にはならないはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

steal one’s thunder

直訳すれば雷を盗むだが、実際は「お株を奪う」、「出し抜く」の意。

You’re closing deals with companies A, B, and even C? You’re stealing my thunder!
A社、B社、さらにC社とも契約を結べそうだって?俺の出番を奪わないでくれよ!

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』
『 #彼女が死んだ 』
『 アット・ザ・ベンチ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アーロン・ピエール, アメリカ, ケルビン・ハリソン・Jr., ミュージカル, 監督:バリー・ジェンキンス, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ライオン・キング:ムファサ 』 -凡庸な前日譚-

『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

Posted on 2024年12月17日 by cool-jupiter

地獄でも大丈夫 70点
2024年12月14日 第七藝術劇場にて鑑賞
出演:オ・ウリン パン・ヒョリン チョン・イジュ
監督:イム・オジョン

 

風邪でダウン中のため簡易レビュー。

あらすじ

いじめに苦しむナミ(オ・ウリン)とソヌ(パン・ヒョリン)は、修学旅行に参加せず、二人で心中をしようとするも断念。死ぬ前に、いじめグループのリーダーだった、現在はソウルにいるチェリン(チョン・イジュ)に復讐するため、2人だけの修学旅行へと旅立つが・・・

ポジティブ・サイド

韓国や中国、アメリカの映画はいじめを真正面から描くことが多いが、本作はいじめっ子に立ち向かう過程にロードムービーかつバディものの要素を取り入れたところが新鮮。

 

復讐しようとした対象が、思いがけない姿に変わってしまっていたというところも意外性があり、面白い。そして、そんな相手に対峙した自分の心境がどう変わったのか、あるいは変わらなかったのかを素直に吐露する場面の緊迫感も素晴らしかった。

 

ナミとソヌの女の友情の中にもとんでもない爆弾が仕込まれていたりと、どうしてなかなか練られた脚本。物語の行き着く先は韓国アニメ映画『 フェイク 我は神なり 』や、日本では『 星の子 』あたりと同じく宗教的な方面へ。信じる者は救われると言うが、救われるべきは信じる者とは限らない。日本でも宗教二世の問題がやっと認知されつつあるが、歴史上の宗教戦争の99%が経済的搾取が目的だったように、歴史上の不況の99%はビジネスなのである。

 

いじめとは異なる地獄を体験するナミとソヌだが、そんな二人が旅路の果てに見出した真理は陳腐ではあるが尊い。願わくば、二人が『 ソウルメイト 』のようにならないことを祈るばかりである。

ネガティブ・サイド

序盤の自殺失敗シーンだが、あれでは実は助けられないのでは?重力とは上から下向きに作用するので、本当に助けるためには真下から真上に力を与えなくてはいけない。

 

楽園とは何だったのだろうか。いや、想像はつくが、もう少し明示的にしてくれてもよかったのではなかろうか。

 

総評

イム・オジョン監督はこれが長編デビュー作だという。ビジュアル感覚や役者の表情の切り取り方などで、すでに自分のスタイルを確立しているように感じられた。インディー映画のように撮影して商業映画のように成立させる監督というのは、韓国にはちらほらいるが、日本ではほぼ見当たらない。そういう意味でもお国柄および国のバックアップ体制の違いが見て取れる作品。シスターフッドものが好みなら、ぜひ劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャムカンマン

「ちょっと待って」の意。ただし「待つ」という動詞はここにはなく、「ちょっと」という副詞だけがある。英語にすると Just a minute あたりだろうか。 日本語同じく、不可解な状況などに接した時にも発せられる。英語で言う “Wait a minute.” と同じ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 レッド・ワン 』
『 ライオン・キング:ムファサ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, オ・ウリン, チョン・イジュ, パン・ヒョリン, 監督:イム・オジョン, 配給会社:スモモ, 青春, 韓国Leave a Comment on 『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

『 対外秘 』 -毒を食らわば皿まで-

Posted on 2024年12月15日 by cool-jupiter

対外秘 65点
2024年12月13日 kino cinéma 心斎橋にて鑑賞
出演:チョ・ジヌン イ・ソンミン キム・ムヨル
監督:イ・ウォンテ

 

シネマート心斎橋が閉館、その後釜にやって来たkino cinéma 心斎橋の初日ということでチケット購入。座席の座り心地が向上し、なおかつ勾配がついて後ろの座席からの視認性がアップしていた。

あらすじ

釜山出身の政治家ヘウン(チョ・ジヌン)は党の公認を得て国政選挙に出馬しようとするものの、地元のフィクサーであるスンテ(イ・ソンミン)により公認を取り消されてしまう。怒りに燃えるヘウンは無所属で立候補する。そして対外秘である国家事業のプサン再開発プロジェクトの資料の中身を入手。それを使って地元で貸金業を営むヤクザのピルド(キム・ムヨル)を陣営に引き込み・・・

 

ポジティブ・サイド

軍事政権崩壊後、民主化の途上にある韓国、釜山から国会議員を志すヘウン。地元で生まれ、地元で育ち、地元を愛する青年政治家の希望に満ちた表情が、公認を外されたことで恨(はん)の表情に変わっていき、その顔もやがて修羅になっていく。主演のチョ・ジヌンの顔面の演技力には驚かされるばかり

 

『 犯罪都市 PUNISHMENT 』で寡黙ながら常に相手の隙とさらに上の地位を狙う悪訳を演じたキム・ムヨルが、本作でも同レベルの好演を見せる。ベンチャーキャピタルという名目で貸金業を営みながら、同時にモーテルで違法賭博を隠れ蓑にした贈賄も行うという知能犯。もちろん腕っぷしの強さも見せてくれる。ヘウンとスンテの間で揺れ動く心情を言葉ではなく表情だけで描き切ったのも見事。

 

釜山の実力者のスンテは土地開発だけではなく方法にまで介入。殺人すらもいとわぬフィクサーで、投票の操作もなんのその。私利私欲で動く政治と経済への寄生虫。一方でヘウンや自らの子飼いの候補者たちに「国に忠誠を誓え」、「国民に奉仕しろ」と伝える。うそぶいているのか、本気でそう言っているのかを測りかねるところが、このキャラに単なる巨悪に留まらない深みを与えている。

 

虚々実々の裏工作合戦で最後に生き延びるのは誰なのか。鑑賞後の妻の第一声が「ヤクザ、ええ人やん」だった。実際はいい人でもなんでもなく完全なる悪人なのだが、ヘウンやスンテがあまりにもどす黒くなっていくため、そのように錯覚してしまったのだろう。「選挙は広報の総合格闘技」とは某社長の言だが、これを韓国風に言えば「選挙は裏工作の総合格闘技」となるだろうか。韓国の政治系ノワールの新たな佳作である。

 

ネガティブ・サイド

暗黒面に支配されていくヘウンとは対照的に、ヘウンの妻や報道の使命遂行に燃える若き記者など、変わらない面々もいる。彼女たちのその後がどうなったのかを少しで良いので知りたかった。

 

ピルドのVCの事務所はおんぼろビルの3Fあたりではなかったか。そこに車で突っ込んでいくシーンがあるが、空飛ぶ車でも使っていたのだろうか。

 

ドンデン返しの一つがあまりにも荒唐無稽で、驚きはあったものの納得はできなかった。その人物のその後の結末が悲惨極まりなく、そのシーンを映すために復活させたのかと邪推してしまった。

 

総評

我が兵庫県の知事選挙が全国的なスキャンダルとなり、真相の究明も今なお遠い。本作の製作国の韓国でも、大統領による戒厳令は不正選挙の証拠応酬のためというニュースもあった。民主主義の主役は本来は一般大衆。しかし、その一般大衆は実は「収穫」されるだけの存在なのか。本邦が『 決戦は日曜日 』を作る一方で、韓国は本作を作る。自国の暗部をどのような形でさらけ出すのかで民度というものが見えてくるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。学校でも職場でも先輩は大事。しかし「こいつは敵だ」と認識すれば、潰しに行くのが韓国らしい。上司に苦情を寄せたことで部署異動させられたJovianは、この姿勢を他山の石とすべきなのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 地獄でも大丈夫 』
『 レッド・ワン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ソンミン, キム・ムヨル, クライムドラマ, チョ・ジヌン, 監督:イ・ウォンテ, 配給会社:キノフィルムズ, 韓国Leave a Comment on 『 対外秘 』 -毒を食らわば皿まで-

『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

Posted on 2024年11月18日 by cool-jupiter

シングル・イン・ソウル 65点
2024年11月15日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:イム・スジョン イ・ドンウク
監督:パク・ボムス

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

小さな出版社勤務のヒョンジン(イム・スジョン)は、大都市でのシングル・ライフに関するエッセイ本を手がけることになる。そこで予備校で小論文指導をして、SNSでもシングル・ライフについて発信するヨンホ(イ・ドンウク)に執筆を依頼するが・・・

ポジティブ・サイド

主人公ヒョンジンは年齢不詳ながら、おそらくアラサー(大学の先輩であるヨンホが飲酒可能な学生時代から数えて11年だったので)。それにしてはメルヘンチックな幻想を抱き続ける姿が面白い。一方でエッセイを執筆することになるヨンホも、独身貴族生活を満喫しつつも、過去の恋愛を引きずっている姿が物悲しくも面白おかしい。二人が距離を縮めていきながらも男女の仲を予感させないストーリーは、一昔前だと考えられない構成。しかし本作はそこにリアリティがある。出版社の同僚たちもキャラが立っていて、それぞれに見せ場がある。

 

本作の見どころの一つは非常にぎこちないキスシーン。『 ロッキー 』で、ロッキーとエイドリアンが玄関でキスするシーンとは一味違った、非常に不器用なキスが描き出される。これはこれでリアルだと感じた。

 

初恋を美化する男の悪癖が今作でも強調されていたのもリアルだった。記憶の美化は、たいてい『 青春18×2 君へと続く道 』のように、印象的な瞬間を忠実に脳裏に焼き付けておくことで起こる。本作は一味違うパターンだが、こうした記憶の仕方を知らず知らず実行してしまっている男性はかなり多いと思われる。

 

ネガティブ・サイド

100分ちょっとという上映時間にして、間延びしているように感じられた。フォーカスがヒョンジンのロマンスなのか、キャリアなのか、家族の関係なのか、色んなところに飛ぶので、それだけ展開のテンポが悪くなってしまっていた。

 

ヨンホ仕事=小論文指導をしているシーンが少なかった。講義の中で彼が「書く」という営為をどのように捉えているのかをもっと語ってくれていれば、エッセイの中身や彼自身のバックグラウンドにさらに深みが生まれたものと思う。

 

総評

韓国には負けるものの、日本もかなりの未婚社会になってきた。お一人様を満喫するのか、それとも伝統的な価値観に抗うことに疲れながら生きるのか。そのあたりのヒントが得られないこともない。さわやかなストーリーではあるが、デートムービーには適しない点には注意が必要。案外、DINKSで鑑賞するのが最も良いのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。ソンベニム=先輩様という形で使われることもあるが、本作ではソンベだった。先輩後輩を強く意識するのはアジアでは日本と韓国ぐらいだろうか。韓国からの留学生も増えているので。案外今どきの大学生は知っている語彙かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オアシス 』
『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ドンウク, イム・スジョン, ラブロマンス, 監督:パク・ボムス, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

Posted on 2024年11月9日 by cool-jupiter

破墓 パミョ 50点
2024年11月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク ユ・ヘジン キム・ゴウン イ・ドヒョン
監督:チャン・ジェヒョン

 

チェ・ミンシクとユ・ヘジンが出演しているということでチケット購入。

あらすじ

巫女のファリム(キム・ゴウン)と助手のボンギル(イ・ドヒョン)は、名士の家の赤ん坊の謎の症状の原因を先祖の墓に求める。旧知の風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)と共に破墓の儀を執り行おうとするが・・・

 

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 天空のサマン 』に出てきた多くのシャーマンや、『 哭声 コクソン 』でファン・ジョンミンの演じた祈祷師と同じく、一心不乱に踊るキム・ゴウンに目を奪われる。なぜ邦画の祈祷師や霊媒師は『 来る 』の小松菜奈や松たか子のような中途半端な描かれ方をしてしまうのか。

 

「魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくべきか」とはお岩さんの断末魔の言葉だが、韓国は土葬なので魂魄の魄がばっちり残る。なので、これを丁寧に供養する、あるいはこれを荼毘にふすことで魂の方も供養される、あるいは焼却されてしまうというのは、確かに筋が通っている。

 

改墓して、やれやれ一段落・・・というところで、棺の下からまた別の棺が現れるというのは斬新。また、下に埋められた棺の上に別の棺を埋めた理由もそれなりに練られている。

 

日本の亡霊と戦うために韓国式のシャーマニズムではなく、中国由来の陰陽五行思想を持ってくるあたり、単なるスーパーナチュラル・ホラーではなく、一種の political correctness にも配慮を見せるという曲芸的な荒業を脚本及び監督を務めたチャン・ジェヒョンは見せてくれた。耳なし芳一には笑ったが。あれも実は中国起源だったりするのだろうか。

 

ちなみにJovianの卒論ゼミの教授は敬虔なクリスチャンにして陰陽五行思想の大家であったが、最近鬼籍に入られてしまった。合掌。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーや設定は面白いし、キャラクターはいずれも個性的で、役者の演技は堂に入っている。にもかかわらず微妙な評価に留まるのは、ひとえに墓から出てきた怪異があまりにも非現実的だからである。

 

日本産の怪異は構わない。しかし、それが戦国大名だったり、あるいは関ヶ原の兵士だったり、はたまた旧日本軍の兵士だったりと、正直なところ訳が分からない。ムカデが云々やら尺進あって寸退なしのような、伊達成実を思わせる発言をしていたが、一方で自分を大名だというのは矛盾している。

 

まあ、ぶっちゃけ怖くなかった。「こいつはやばい」という恐怖よりも「こいつは何者?」という興味・関心が勝ってしまった。日本からの政治的・文化的な独立運動をエンタメにできても、精神的な恐怖とその克服をエンタメにはできなかった。

 

総評

土着のシャーマニズム、風水、陰陽五行、キリスト教が入り混じるという、宗教的にカオスな日本に負けず劣らずの韓国の世界観が垣間見える。一方で韓国特有の恨の精神の発露に対しては日本人は賛否両論(この言葉が使われるときは、だいたい賛2否8である)だろう。だが、本作を単なる反日映画だと見るのは皮相的に過ぎる。憎悪の根底に恐怖がある(それこそまさに棺の埋葬構造だ)のだと知れば、その恐怖の原因が何であるかについても想像力を働かせることはできるはずだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

トッケビ

超自然的存在のこと。字幕では確か精霊だったか。LINEマンガで『 全知的な読者の視点から 』を読んでいるのだが、そこに出てくるトッケビとは何ぞや?とググったことを思い出した。ちなみにトッケビを英語にすると goblin=ゴブリンだったりする。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』
『 つぎとまります 』
『 オアシス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イ・ドヒョン, キム・ゴウン, チェ・ミンシク, ホラー, ユ・ヘジン, 監督:チャン・ジェヒョン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 破墓 パミョ 』 -韓国シャーマニズムの一端を垣間見る-

『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

Posted on 2024年11月4日 by cool-jupiter

トラップ 50点
2024年11月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョシュ・ハートネット
監督:M・ナイト・シャマラン

 

Jovianのカナダ人の友人は ”I gave up on him.” と語ったが、Jovian自身はまだ少しシャマランに期待しているためチケット購入。

あらすじ

クーパー(ジョシュ・ハートネット)は愛娘ライリーが学校で好成績を収めたご褒美に、人気の歌姫レディ・レイブンの追加コンサートに連れて行く。しかし、会場は異様なまでの厳重警備。実はコンサートそのものが連続殺人鬼ブッチャーを捉えるための仕掛けだったのだ・・・

以下、逆説的なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

あまりに色々と感想を書くと、それだけでネタバレに近づく。なのでJovianが鑑賞前に予想していたプロットをいくつか下に紹介してみたい。

 

1.実はサイコパスは父親ではなく娘の方。父親は何も知らない娘を必死で逃がそうとしているだけ。

2.実はトレイラーにある口の軽い従業員の話はジョーク。レディ・レイブンが用心深い人物なので本当に会場が厳重に警備されているだけで、クーパーは独り相撲を取っている。

3.実は『 デビル 』と同じ世界で、シリアル・キラーが悪魔に追い詰められていく。 

 

仮説1はたいていの人が思いつきそう。2はフレドリック・ブラウンのとある小説とそっくり。興味のある人は短編以外の中から探してみよう。3は『 アイム・ノット・シリアルキラー 』に着想を得た。

 

本作は視点操作がユニークで、スマホやカメラ、果ては銃のスコープなど、何かを通じて何かを見るという行為の危うさが示唆されている。また『 ザ・サークル 』のようなSNSの力がこれでもかと示されるのも現代的。

 

サスペンスとして観れば間違いなくアベレージ以上の作品。

 

ネガティブ・サイド

警察がかなり無能。というか、現場に入る心理学の博士が無能というべきか。もちろん、そうしないことには脱出は無理ゲーになるのだが、クーパーが機転を利かすというよりは博士の手腕に疑問符が付くという展開が多かったと感じた。

 

娘の同級生とその母親とのいざこざのくだりはバッサリとカットしてよかったのでは?

 

コンサート会場以外にも、車や家などからも脱出しまくる。ここまで来るとギャグの領域。

 

総評

映画や小説を楽しむ方法は、1)事前にストーリーを予測する、と2)事前情報一切なしで臨む、の二つに大別される。本作はどちらのアプローチも可能だが、できれば2)の方が望ましいのかな。理想は本作がシャマラン映画の初体験であること。まあ、そんな観客は圧倒的少数派だろうけれど。楽しむためにはシャマランらしさ=大どんでん返しを期待しないことが肝要である。できるだけ頭を空っぽにして、深く考えずライトに楽しもう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crispy

元々は食べ物がサクサク、パリパリのような意味で、Longman Dictionary では food that is crispy is pleasantly hard on the outside = クリスピーな食べ物は外側が心地よい硬さであると定義されている。一方、urban dictionary では if something or an act that someone does is good or looks cool (by BigSexyBuffalo April 3, 2017)となっている。Jovianは大学でも教えていたので、現代日本の若者言葉にはそれなりについていけていたが、英語の現代スラングとなると少々弱い。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 破墓 パミョ 』
『 スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム 』
『 ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, サスペンス, ジョシュ・ハートネット, 監督:M・ナイト・シャマラン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 トラップ 』 -シャマランらしさはあまり無し-

『 マーズ・コンタクト 』 -アイデアの検証と追求が足りない-

Posted on 2024年10月26日 by cool-jupiter

マーズ・コンタクト 20点
2024年10月25日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:アレクサンデル・クリコフ アンドレイ・スモリャコフ
監督:アレクサンデル・クリコフ ミハイル・ラスドニコフ

 

近所のTSUTAYAでパッと見て借りてきた。Sometimes, I’m in the mood for garbage.

あらすじ

ロシアの火星探査船に事故が発生。司令官のチャパエフ(アレクサンデル・クリコフ)は脱出戦を切り離してクルーを救うも、自身は火星に取り残されてしまう。チャパエフの救出を試みる地球だが、いつしか彼との交信をテレビ番組にしてしまう。一方でチャパエフは謎の音が聞こえると主張し始め・・・

 

ポジティブ・サイド

設定は『 ミッション・トゥ・マーズ 』+『 レッド・プラネット 』+『 オデッセイ 』。そこにテレビ番組要素をつけ加えたのが、変化球的でユニークだと感じた。テレビは教育的でもある一方で、衆愚の元にもなりうるということが示されていた点は評価していい。

 

ネガティブ・サイド

『 レッド・プラネット 』のようにロボットが暴走するのではないなら、そもそもロボットは不要では?

 

ロボットが大暴れしないのなら、ジョニー・デップとシャーリーズ・セロンの『 ノイズ 』的な展開か?と思わせて、え、そっちかい???という方向へ。

 

最後も、あーこれはひょっとして『 アーカイブ 』なのか?と思わせて、やっぱりそっち方面だった。どうせなら小説『 地球最後の男 』的な方向に行った方がまだインパクトは強かったかもしれない。もしくは『 アド・アストラ 』のように、救助のためにひたすらに火星を目指したものの、チャパエフは・・・という展開は選択肢になかったのか。

 

『 マーズ・ミッション2042 』と同じく、火星と地球でほぼリアルタイムで通信してしまっているが、中国もロシアもいつの間に超光速通信技術を開発してしまったのか。火星と地球の最短距離でも数分のラグが発生するわけで、そこを無視して宇宙飛行士チャパエフ

子ども向けの科学教育番組のホストをさせるのは茶番以外の何物でもない。

 

じいさんが唐突に見せる格闘アクションも不要。元スペツナズか何かなのか?

 

作り手の見せたいもの、訴えたいものがバラバラで、ストーリーのテンポもすこぶる悪い。1時間30分が2時間30分に感じられた。C級SFだとは分かっていたが、E Rank とまで予想していなかった。そうそう、本作を鑑賞しようという好事家には原語のロシア語ではなく英語音声をお勧めしておく。

 

総評

古代ローマから現代まで、火星はおそらく太陽、月に次ぐインスピレーションだった。というわけで火星に関する映画も大量に生産されてきた。本作は残念ながら粗製乱造の粗悪品の一つ。ただ、余計なものを取り除いて、光る部分に特化すれば十分に面白くなれる下地はある。ある意味、本作を通じて映画作り、広くは製品やサービスの開発について学ぶことができるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

forsake

英語タイトルは Forsaken 。ナザレのイエスの最後の言葉とされるエリ・エリ・レマ・サバクタニは英語では My God, my God, why have you forsaken me? と訳される。日本語(新共同訳)では「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」となる。forsakeという語を知っていれば、それだけで英検準1級以上だろう。ちなみにこの動詞は take と同じように、forsake – forsook – forsaken と活用する。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 破墓 パミョ 』
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『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』 -国家の対立と個人の友情-

Posted on 2024年10月22日 by cool-jupiter

工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 85点
2024年10月20日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ファン・ジョンミン イ・ソンミン
監督:ユン・ジョンビン

シネマート心斎橋に別れを告げるための一本として本作をチョイス。当日券もガンガン売れていて、劇場は満員だった

あらすじ

軍の情報部に所属するパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北朝鮮の核開発の実態を探るべく、黒金星というコードネームの工作員として北朝鮮に潜入する。ビジネスマンとして北で活動するパクは、遂に北の外貨獲得の責任者であるリ所長(イ・ソンミン)からコンタクトされ・・・

ポジティブ・サイド

上映開始直前、『 ソウルの春 』の感想を述べあうオッサン二人が後ろの席にいたが、『 殺人女優 』と同じく韓国映画は合う人には合う。その中でも本作は一級品。上映終了直後の劇場内やロビーでも「圧倒された」、「すごい」、「韓国の現代史を勉強せな」という感想が漏れ聞こえてきた。自分の感想も「まるでブライアン・フリーマントルの『 消されかけた男 』の韓国版だな」というものだった。

まず、スパイ映画にありがちな変装や秘密裏の侵入などがほとんどない。『 ミッション:インポッシブル 』シリーズのような派手さは一切ない。しかし、本作が全編にわたって産み出す緊迫感はM:Iシリーズのどれよりも上だと感じた。

まず第一に北の核施設に近づくために、まずは外貨獲得に血眼になっている北朝鮮にビジネスマンとして近づくというアプローチが秀逸。その下準備として、中国産の野菜が北朝鮮産と偽って売られていることをパク自身が当局にリーク。中国にある北朝鮮拠点をまんまと一つ潰してしまう。そして在日の朝鮮総連系のあやしげな男(このキヨハラ・ヒサシにもモデルはいるのだろうか?)とのビジネスもシャットアウト。あくまでも狙いは北朝鮮の中枢。

そして遂に有力者のリ所長に接触することになるが、明らかにその筋の人、早い話がインテリヤクザの雰囲気を漂わせるイ・ソンミン演じるリ所長と、番犬的存在のチョン課長が、当時の(そしておそらく今も)北朝鮮がならず者国家 = rogue nation であることをひしひしと感じさせる。一歩間違えれば命が危うい。のみならず、国家間の緊張がそれ以上の状態に発展してしまう恐れなしとはしない。

そんな中でもパクはビジネスマン然として振る舞い続ける。しかし、テープレコーダーその他の小道具も駆使して諜報活動も行う。この陽気で少し短気なビジネスマンの顔と敏腕のスパイとしての顔を劇中でファン・ジョンミンは見事に使い分けた。北朝鮮側に見せる顔と韓国側(上司)に見せる顔が明らかに違う。つまり北朝鮮側に向けては演技している演技をしていた。ファン・ジョンミンの卓越した演技力なくして、この二重性・二面性は出せなかった。

徐々にリ所長の信頼を得て、奇妙な友情すら育んでいくパク。国は異なれど民族は同じだし、話す言語も同じ。しかし都市部を離れれば北朝鮮の人民はなすすべもなく餓死していくという惨状がある。このシーンは下手なホラー映画よりも遥かに怖かった。リ所長が北の惨状に挙げていた子どもが10ドルで売られるという現実は、奇しくもチェ・ミンシクが『 シュリ 』で涙ながらに訴えたもの。まさに1990年代にニュース23で見ていた北の農村が思い起こされた。

映し出されるのは北のどす黒い現実ばかりではない。南の腐敗した政治にも焦点が当てられる。国政選挙のたびに北が武力挑発し、南の人民の不安をあおることで与党の後押しになるのだという。まるでどこかの島国が北のミサイル発射を支持率アップの道具にしているようではないか。北は北で金王朝を維持したいし、南は南で現体制を維持したい。そのためには仮想敵国、いや現実の敵国が存在し続けることが望ましいという、もはや政治とは何なのか分からなくなってくる現実が、パクにもリ所長にも、そして当然我々にも突きつけられてしまう。

しかし、そんな現実に屈せず危険を冒して最後の冒険に出る二人が奇跡を起こす様は胸が張り裂けんばかりになる。国と国は分断されていても、個人と個人は分かり合える。それは南北朝鮮だけの問題ではなく、あらゆる国と個人が直面しているテーマではないだろうか。

ネガティブ・サイド

リ所長のガッツポーズは、そこら中に間諜がいる北京のホテルでは軽率ではなかっただろうか。辺境の死体置き場にまで監視役がおる国やで。

韓国側のもう一人の工作員のコード・ワンが迂闊というか間抜けすぎではないか。どうやって北に潜伏し続けられていたのか。このコード・ワンはさすがに架空の存在だと思うが、このシーンは滑稽に過ぎた。

総評

なぜ劇場公開当時にリアルタイムで観なかったのかが悔やまれる。同時に、なぜこれほど多くの人がシネマートを訪れていたのかも理解できた。本当は『 サニー 永遠の仲間たち 』が観たかったのだが、こちらも負けず劣らずの大傑作。韓国映画のサスペンスのレベルの高さをあらためて思い知らされた。ファン・ジョンミンはソン・ガンホやソル・ギョングに並んだ、いや超えたと評してもいいのかもしれない。

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャングン

将軍のこと。本作では将軍・金正日との対面が一つの山場となっている。また物語の冒頭のニュース映像では、日本でもお馴染みの女性アナウンサーが一瞬だけ映るが、彼女がしばしばチャングンニムと言っていたのを一定以上の世代なら覚えていることだろう。

次に劇場鑑賞したい映画

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, イ・ソンミン, サスペンス, ファン・ジョンミン, 歴史, 監督:ユン・ジョンビン, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 』 -国家の対立と個人の友情-

『 殺人女優 』 -殺るか殺られるか-

Posted on 2024年10月20日2024年10月21日 by cool-jupiter

殺人女優 60点
2024年10月19日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ジヨン
監督:ユ・ヨンソン

 

妻の「面白いんかなあ?」の一言でチケット購入。邦画では絶対作れないであろう作品だった。

あらすじ

女優のスヨン(ジヨン)は、ある出来事がきっかけで業界を干されていた。ファンがほとんど集まらなかったサイン会の夜、同居している後輩女優と言い争いになってしまう。目覚めたスヨンは、その後輩が死んでいるのを発見してしまう。果たしてこれは自分の仕業なのか・・・

ポジティブ・サイド

韓国映画でいつも感心するのが、女優が発狂する瞬間。本作でもスヨンは様々なストレスを抱えているが、それが爆発するシーンの迫力は見もの。国民性の違いもあるのだろうが、純粋に演技に対する考え方の違いも大きいはず。

 

また流血描写に殺人描写など、暴力シーンも本作の特徴の一つ。日本の女優やアイドルなら絶対に拒否するであろうシーンが次々に出てくる。ジヨンではないが、別の女性キャラの用便シーンなどもある。韓国映画はそうした描写から決して逃げない点もポイントが高い。

 

死体が移動したり、謎のメッセージが届いたりと、謎解き要素もふんだんにちりばめられていて、それが上質なサスペンスにもつながっている。冒頭から女子高生の回想シーンがたびたび挿入され、それがジヨンの現在とどう結びついてくるのかという点も、ミステリアスかつサスペンスフルだ。

 

原題は Wannabe だが、これを『 殺人女優 』としたのは配給サイドの隠れたファインプレーである。

 

ネガティブ・サイド

攻撃的な知的障がい者のキャラは蛇足だったかな。本筋に全く関係なく、ただ単にバイオレンスとサスペンス、そして警察を呼び込むという装置にしか見えなかった。何かもっと説得力のある筋立てが欲しかった。

 

代表が家に帰り着くのが遅すぎる。おそらく酒席で酔っていて酔い覚ましが必要だったのもあるのだろうが、事務所の期待の星を都市部からあれほど離れた片田舎に住まわせるのかというのも大いに疑問だ。

 

スヨンの不祥事というのが普通に重犯罪で、いくら呑み助だらけの韓国社会といえど、とても許容できるものではない、つまり芸能界に留まれるものではないと思われる。もう少しソフトな不祥事(たとえば政治家もしくは財界人の愛人疑惑があったetc)を設定できなかったのか。

 

総評

ショッキングな展開が多く、バイオレンスも激しい。人によっては拒絶反応が出るだろうが、本作のポスターを見れば内容はともかく展開の予想は容易につく。なので耐性のある人だけが鑑賞するようになっているはず。鑑賞後、ロビーで大きな声で展開の仕方や真相を絶賛するおっさん二人(Jovianより15~20歳は上だったかな)が印象的だった。韓国映画は波長が合う人にはとことん合うのだ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アラッチ

アラッチ⤴という上り調子で使われることが多い。「分かった?」という意味で、ややくだけた表現。韓国映画を観ていると頻繁に使われる表現なので、知っているという人も多いはず。

 

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