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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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カテゴリー: 国内

『 まなみ100% 』 -単純一途な男の恋心-

Posted on 2023年10月10日2023年10月10日 by cool-jupiter

まなみ100% 65点
2023年10月8日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:青木柚 中村守里 
監督:川北ゆめき

 

世間は三連休でもJovianは仕事であった。ゆえに簡易レビュー。

あらすじ

バク転ができれば女の子にモテると思ったボク(青木柚)は、高校で器械体操部に入部する。そこで出会ったまなみ(中村守里)に恋をしたボクは、ことあるごとにまなみちゃんに求婚するのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

アホな高校生がアホな浪人生になりアホな大学生になりアホな社会人になる。その間、ボクは様々な女性遍歴を重ねていく。もうこの時点で凡百の邦画とは一線を画している。まなみちゃんがずっと心にありながら、他の女を平気で口説き、抱いていく。実にリアルだ。事実、どれだけの人間が中学高校の頃のような純粋な恋心に忠実なままでいられようか。本作はそういう意味では『 僕の好きな女の子 』や『 神回 』とは真逆に見えて、実は同じ系列に連なる作品なのである。

 

青木柚は『 終末の探偵 』の時と同じく、どこにでもいそうな少年~青年を好演。特徴のない顔立ちのおかげで、純粋に演技力でキャラを立たせることができている。Jovianも小学生の頃だけ器械体操をやっていたが、バク転はできなかったな。飛び込み前転とかはやっていたけど。

 

ヒロインのまなみも、クラスで2番目ぐらいに可愛いと感じられるところがリアル。『 アルプススタンドのはしの方 』のメガネっ子が、器械体操選手に化けるのだから、まさに女優という感じ。ルックスだけで同じような役ばかり演じて、それでいて全然上達しない女優も多い中、中村守里は本物の女優の卵という印象を受ける。

 

大好きな女の子との距離感に悩む男性、あるいはその逆でもいい。大好きな男との距離感に悩む女性が観ても楽しめるはず。夢見る少年でいられるのは幸せなこと。けれど青春の終わりを自覚できるのは、もっと幸せなことだと思う。

 

ネガティブ・サイド

ボクの高校の時のガールフレンド(菊地姫奈)と大学の時の彼女?セフレ?(宮崎優)と社会人になってからの彼女?セフレ?(新谷姫加)の顔の系統が似すぎている。全員を同系統の顔にするなら、まなみ系の顔にできなかったのだろうか。『 町田くんの世界 』の日比美思とか、『 交換ウソ日記 』の茅島みずきとか、色々候補はいたはずだ。もしくは、全員違う系統の顔にするとか。俺が年とって、若い子の顔の区別ができないだけ?いや、そんなはずはない(一応、教え子の大学生たちの顔の見分けはつく)。

 

ボクが作る映画の中身をもっと知りたかった。どう見ても監督自身の体験を映画にした本作をさらに映画にするという入れ子構造なのだから、それによってあまり見えてこないボクの内面を逆に一気にそこに吐き出すという作りにはできなかったのだろうか。夜の校舎でホラーっぽい絵面も悪くはないが、ボクの内面に迫る映像世界を見たかった。

 

総評

劇場の入りはまあまあ。客層も10代後半ぐらいから結構な中年層まで幅広くいた。映画監督は自分の中の語りたいという衝動や欲求を美意識をもって作品に反映させるものだと思うが、本作は衝動や欲求を映画に吐き出したい、この想いを昇華させたいという川北ゆめき監督の思いが画面に溢れている。私小説を読むつもりでチケットを購入するとよい。壮大なドラマを期待するとガッカリするかもしれないので、ちょっとユニークな小市民の青春物語だと思って鑑賞のこと。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Will you marry me?

『 ちょっと思い出しただけ 』と『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』でも紹介した表現。普通は falling tone で言うのだが、今作でのボクの求婚はどれも rising tone であるように感じた。本気度が感じられないのだ。英語話者に本気でプロポーズするなら、下がり調子で言うこと!!!

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オクス駅お化け 』
『 リゾート・バイト 』
『 沈黙の艦隊 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ラブロマンス, 中村守里, 日本, 監督:川北ゆめき, 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS, 青木柚Leave a Comment on 『 まなみ100% 』 -単純一途な男の恋心-

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』 -世界観の構築が弱い-

Posted on 2023年10月3日 by cool-jupiter

アリスとテレスのまぼろし工場 45点
2023年9月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:榎木淳弥 上田麗奈 久野美咲
監督:岡田麿里

 

『 空の青さを知る人よ 』の脚本を務めた岡田麿里の監督作品ということでチケットを購入。

あらすじ

製鉄の町、見伏は製鉄所の爆発事故によって外部から遮断され、時間も経過しなくなってしまった。元の世界に戻った時に矛盾を生じさせないために、いつしか町では「変化してはならない」というルールが課されるようになった。そんな中で淡々と日々を過ごしていた正宗(榎木淳弥)は、同級生の睦実(上田麗奈)に製鉄所内に幽閉されている謎の少女(久野美咲)の世話を手伝うように頼まれ・・・

 

ポジティブ・サイド

アニメーションは恐ろしく美麗。実写をそのままCG化したかのように錯覚させられるシーンも多数。ここ10年でアニメーションの技術は恐ろしく進歩しているなと実感。

 

ストーリーも悪くない。中学生の男女があーだこーだするのは王道。本作はそこに外界から分離され、時間も経過しない(というか、人間も事物も経時変化しない)という見伏という共同体を設定した。その中心にあるのは製鉄所。日本のお家芸だったモノづくりの象徴だ。そこが爆発したのは1991年。バブル崩壊の前夜で、ゲーテの『 ファウスト 』ならずとも「時よ止まれ」と言いたくなる時代だ。

 

その止まってしまった世界を止めたままにしようとする勢力と、その止まった世界の中で唯一成長する五実の存在にインスパイアされる若者たちという本作の構図は、そのまま近代日本の世代間闘争のパロディあるいは痛烈な皮肉だろう。世界に入った亀裂を製鉄所が吐き出す煙、神機狼がふさいでいくのも、ひび割れたコンクリートを必死に補修するゼネコンに見えてくるから面白い。

 

そうした諸々の社会批判のメッセージを恋に煩悶する中学生男女という、ある意味でお約束なキャラクターに仮託したのが本作。非常に観やすいし、中高生あたりでも楽しめるはず。実際に劇場に来ていたのは(レイトショーだったこともあるだろうが)中年以上の層だったように、大人でも楽しめるはずだ。

 

ネガティブ・サイド

空間的にも時間的にも外界から隔絶されていて、時間は経過するものの事物も生物も変化しないという特殊な設定を、もっと序盤で見せるべきだった。いつまでも妊娠し続けたままの妊婦だけではなく、毎日病院で苦しむ人や、あるいは認知症で毎日を毎日と認識できない人など、無常とは逆の苦悩を描くことで、セカイ系の延長あるいは亜種のような世界観をもっと深めることができたはず。

 

観ていて???となったのは、見伏の経済。人々はどうやってガソリンやら食料やらを調達しているのか。貨幣は流通しているのか。しているとすれば、誰がその価値を担保しているのか。電気や水道などのインフラは?通信は?疑問が次々に湧いてきてしまった。

 

また時間は経過しないものの、記憶は持続するという点を深掘りしない点も残念極まりない。五実の成長から見伏では10年以上が経過しているはずであり、中学生の主人公たちも中身は20代の半ばから後半。この肉体と精神のギャップ、つまりプエル・アエテルナス(永遠の少年)であることについての苦悩が正宗から感じられなかった。というか正宗の叔父が精神的に退行したとしか思えない言動をとったりと、掘り下げるべきところが掘り下げられず、妙なサブプロットを追求するというアンバランスさを生んでしまっている。

 

世界観の構築が貧弱であることに加えて、本作はシークエンスごとのつながりにもあまり説得力がない。ストーリーが先に構想されて、それに合わせてストーリーボードを描いたように感じられた。もちろん印象的なシーンを先に構想して、そこからストーリーを構築する作家もいるが、それは編集や脚本も兼ねているか、あるいはそうしたスタッフと緻密にコミュニケーションが取れている場合だろう。本作は先に撮りたいシーンや使いたい主題歌があり、それに合わせてシーンをつないでシークエンスにした、そのシークエンスをつないでストーリーにした、のような印象をぬぐえない。

 

クライマックスが露骨な演出に感じられた。胎内回帰ならぬ胎外排出か。もっとなにか、お約束ではないドラマチックなシーンが描けなかったのだろうか。

 

総評

個々のシーンは面白いが、全体を通して見るとイマイチという、やや残念な作品。主人公二人のキャラも特に立っていないので、感情移入するのも難しい。アリスとテレスは古代ギリシャのアリストテレス由来なのは間違いないが、まぼろし工場というのがよく分からない。「希望とは、目覚めている人間が見る夢である」というのは、見伏が夢なのか、それともひび割れの向こうの世界が夢なのか。アリストテレス的には前者なのだろうが、Jovianは胡蝶之夢という線もあるのではないか、などと邪推してしまう。ただ、アリストテレスの幸福論を追求していけば、恋する気持ちは幸福の構成要素であっても、恋する相手はそうではない。詳しくは『 二コマコス倫理学 』を読まれたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

steelworks factory

製鉄所の意。こんな語彙はTOEICでは100%出ない。英検1級ならまれに出るかも。TOEFLやIELTS(アカデミック・モジュール)なら時々出てくるかもしれない。まぼろし工場も英訳するなら illusion factory となるのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ハント 』
『 ほつれる 』
『 オクス駅お化け 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, アニメ, ファンタジー, ラブロマンス, 上田麗奈, 久野美咲, 日本, 榎木淳弥, 監督:岡田麿里, 配給会社:MAPPA, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 アリスとテレスのまぼろし工場 』 -世界観の構築が弱い-

『 BAD LANDS バッド・ランズ 』  -社会の底辺の連帯-

Posted on 2023年10月1日2023年10月1日 by cool-jupiter

BAD LANDS バッド・ランズ 55点
2023年9月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:安藤サクラ 山田涼介 生瀬勝久
監督:原田眞人

 

安藤サクラ主演ということでチケット購入。

あらすじ

大阪で特殊詐欺グループで三塁コーチ役を務めるネリ(安藤サクラ)は、大阪・西成で底辺の人々と暮らしていた。彼女は組織の番頭、高城(生瀬勝久)の元で警察の捜査をかいくぐって生きてきた。ある時、弟のジョー(山田涼介)と共にネリはある賭場に向かうことになり・・・

ポジティブ・サイド

個人的には冒頭のシーンが楽しめた。映画の中で職場近くの風景がたくさん観られるというのは面白い。Jovianはよく大川沿いを散歩していたりする。大阪都心部で働く人にはお馴染みの淀屋橋、難波、天王寺などの景色を観ると、架空のストーリーにもリアリティが付与される。

 

社会の下層民の描き方もいい。単なる怠惰な人間の集団ではなく、適度にインテリが混じっていたり、あるいはお上に対する反骨精神からの連帯感を発揮したりと、現代性と大阪らしさの両方が盛り込まれている。

 

安藤サクラはまさにインテリ下層民の代表。とある事情により東京から逃げてきた。そして番頭の高城の庇護のもとで詐欺の片棒を担いでいる。当然のように警察からマークされる。また東京の富豪からも常に監視をされている。そんなネリが、弟ジョーと共に起こした事件により、大金を得たものの警察とヤクザを相手に逃走する羽目になる。その過程が堪えられないサスペンスを生み出している。

 

『 さがす 』に続く、大阪社会のダークサイドと、ウェットな人間関係にあふれた作品。大阪人、関西人ならぜひ鑑賞を。

ネガティブ・サイド

生瀬勝久の大阪弁はパーフェクトだが、安藤サクラはやはりネイティブからは遠い。山田涼介は論外。大阪弁の要諦である小さい「ァ」、「ィ」、「ゥ」、「ェ」、「ォ」ができていない。「血」ではなく「血ィ」みたいに発音するのが大阪弁。誰か指導できるスタッフはおらんかったんかいな。

 

さらにこのジョーというキャラクターの設定がブレまくり。自分で自分をサイコパスと言いながら、中盤に友情出演している某キャラにあっさりと撃退される。かと思えば、最終盤にはガンガン人を殺しまくり。強いのか弱いのか、サイコなのかチキンなのか、よう分からん。山田涼介の出てくるシーン全般はノイズに感じられた。

 

後は特殊詐欺組織の脆さか。そこであっさりとそんなこと喋るか?高城の教育はどないなってんの?なんか番頭と聞くと漫画『 魔風が吹く 』の番頭を思い浮かべるのだが・・・ いくら高城が裏社会の大物でも、使っている手下がこんなアホでは、あっという間に警察に摘発されているはず。ここらあたりの警察捜査の過程はかなりご都合主義に感じられた。

 

総評

ストーリーは文句なしに良い。大阪を舞台にしたところや、大道具・小道具に衣装などのプロダクションデザインも素晴らしい。問題はジョーというキャラ、そして天童よしみや江口のりこといった、いくらでもサブプロットを生み出せそうなキャラを多数出しながら、特に彼ら彼女らが活かされなかったところ。それでも、このような社会の暗い一隅を照らそうとするエンタメ作品が日本でも作られ、公開されたということは歓迎したい。関西人はもちろんのこと、日本中の人に観てもらいたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

rotten edge

劇中で腐れ縁の訳語としてネリが挙げた表現。なのだが、これは腐れ縁というよりは悪縁や険悪な仲を指す言葉で、日本語の「腐れ縁」が持つ、切れそうで切れない縁というニュアンスはない。腐れ縁は on and off relationship または on/off relationship が最も当てはまりそう。ちなみに rotten edge は

Our love for each other became a rotten edge.
私たちの愛情は剣呑なものになってしまいました。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アリスとテレスのまぼろし工場 』
『 ほつれる 』
『 オクス駅お化け 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, クライムドラマ, 安藤サクラ, 山田涼介, 日本, 生瀬勝久, 監督:原田眞人, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 BAD LANDS バッド・ランズ 』  -社会の底辺の連帯-

『 劇場版シティーハンター 天使の涙 』 -序章と銘打つべし-

Posted on 2023年9月20日 by cool-jupiter

劇場版シティーハンター 天使の涙 40点
2023年9月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神谷明 伊倉一恵
総監督:こだま兼嗣

 

簡易レビュー。

あらすじ

冴羽獠(神谷明)と槇村香(伊倉一恵)のもとに、動画配信者のアンジーから逃げた猫を捜して欲しいとの依頼が入る。破格の報酬に猫を探し出そうとする二人。しかし、その依頼は獠の凄絶な過去に結びつくことになる依頼で・・・

ポジティブ・サイド

1980年代からしっかり現代にまでアップデートできている。ただし、いくら時代がアップデートされても「もっこり」は健在。これを失ってはシティーハンターがシティーハンターではなくなってしまう。シリアス極まりないシーンにも「もっこり」という台詞をぶち込んでくるあたり、製作者側は時代がうつろいゆく中でも失ってはいけないものが何であるのか分かっている。

 

一方でシティーハンター冴羽獠の超絶射撃は健在。手に汗握るアクションは十分に堪能できた。特に今回の相手は格闘戦でも獠を圧倒する。このハラハラドキドキ感は、通常のエピソードでは味わえない。すべてを吹っ切った獠の神業による決着は、まさに狙撃手の面目躍如。ゴルゴ13よりも冴羽獠の方が総合力では上手かな。

ネガティブ・サイド

神谷明、伊倉一恵、キャッツアイの面々の声の衰えが顕著である。こればっかりはどうしようもないが、どこかの時点でアニメ『 ドラえもん 』や『 サザエさん 』のように、声優交代は必要だったのではないかと感じてしまう。

 

そのキャッツアイの登場は北条司ワールドのスターシステムだと思えば普通にあり。しかし、『 うちのタマ知りませんか 』や『 ルパン三世 』まで出てきてしまえば、世界観も何もない。ところどころにものすごいノイズが混じったように感じられた。やるなら同じ媒体(週刊少年ジャンプ)のネタをてんこ盛りにした『 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 』に倣うべきだった。

 

海坊主が完全なる役立たず。なんだかなあ・・・

 

中途半端なインフォマーシャルも不要。カップ麺メーカーがスポンサーなのか?

総評

最終章への序章なら、序章であると銘打ってほしい。劇中でも北条司本人(?)が続編への意欲を示していたが、早くしないと声優陣が本格的に枯れてしまう。事実、映画館も結構な入りだったが、若い世代は見当たらず。ほとんど40代以上に見えた。今ならギリギリで純度100%のシティーハンターが製作できるはず。欲をかいて2章、3章と作るのではなく、次作でスパっときれいにまとめてほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

crowning achievement

最高傑作という表現はいくつかあるが、殊に弟子のような意味合いの場合はこの表現を使うことが多い。Plato was the crowning achievement of Socrates’ many disciples. =プラトンは数多くのソクラテスの弟子の中でも最高傑作であった、のように言える。英検準1級以上を目指すなら知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』
『 アリスとテレスのまぼろし工場 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, アニメ, 日本, 神谷明, 総監督:こだま兼嗣, 配給会社:アニプレックスLeave a Comment on 『 劇場版シティーハンター 天使の涙 』 -序章と銘打つべし-

『 天空のサマン 』 -編集に難あり-

Posted on 2023年9月17日 by cool-jupiter

天空のサマン 50点
2023年9月10日 シアターセブンにて鑑賞
出演:関雲徳
監督:金大偉

簡易レビュー。

 

あらすじ

金大偉は、失われゆく満州語と満州人のシャーマニズムを受け継ぐ現代サマンたちへの取材を通じて、文化と伝統を維持していくことの意義を模索する。

ポジティブ・サイド

1100万人の満州人がいても、ネイティブ満州語は絶滅の危機にあると言う。文化とは存在ではなく営為だが、その営為を可能にするのは言葉と行動だ。本作はその行動の中でもシャーマニズムに注目するという意味で非常にユニーク。Jovianの大学での専攻は宗教学で、専門は東北アジアにおけるアニミズム思想だった。なのでシャーマニズムの概要についても、それなりの知識を有している。なので本作で描かれる儀式や神歌の数々は非常に興味深く映った。

 

ヨセミテなどの美しさに魅せられたジョン・ミューアや、英国人ながら、いや英国人ゆえにアメリカの雄大な自然に魅了された風景画家トマス・コールなど、欧米人も自然の美しさを解する心はある。しかし、自然そのものを神聖視し、自然と交感・交流しようという意志や行動は見られない。それはアボリジニやネイティブアメリカンのもの。Jovianも大昔にアリゾナを旅行した時、ナバホ族のパフォーマンスを見たことがある。あれも一種のシャーマニズムだろう。今やシャーマニズムは中心ではなく周辺にしか残っていない。それは日本も同じ。中国も同じだろう。多様性や包摂、自然環境保護などの視点から周辺に追いやられた満州民族の伝統的風習から学べることは多い。

 

ネガティブ・サイド

編集に難ありと言わざるを得ない。時系列ごとにまとめるか、あるいは取材地域ごとにまとめるか、それとも祖先崇拝や神域での行事などサマンの行う各種のイベント種類ごとにまとめるなど、何らかの軸を持ったドキュメンタリー作品に仕上げるべきだった。時間の面でも場所の面でも、かなりバラバラになってしまっていて、正直なところ分かりやすい構成とは言い難い。DVD販売あるいは配信に際して再編集をお願いしたい(無理だろうが)。

 

低予算映画ゆえと言ってしまえばそれまでだが、監督自身が務めたナレーションがかなり稚拙に聞こえた。それは声の大きさ、発話の速度、抑揚(中国語にしてはずいぶんと控え目に聞こえた)など、プロフェッショナルとは思えなかった(監督の中でも『 主戦場 』のミキ・デザキはかなり上手かった印象がある)。『 JOMON 私のヴィーナス 』のブレイク・クロフォードのように、製作スタッフの中からナレーションに長けた人物を選ぶという方法もあったはず。

 

総評

日本人にとっては、シャーマニズムを通じて文化と言語を保持しようする人々の奮闘、つまり自らのアイデンティティーを見つめ直し、それを維持しようと思う機会になるかもしれない。観やすい、聞きやすい作品ではないのだが、興味を引くテーマを扱っていることは間違いないし、神歌や祖霊崇拝の儀式は同じアジア人という視点から共感しやすい。大学生で宗教学や人類学を学びたいという人は是非観てみよう。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

我

ウォと発音する。意味は「私」だが、つまりは一人称単数のこと。日本語は私、僕、俺、あたし、わたくし、吾輩、うち、など外国人泣かせの一人称を持つが、中国語ではウォだけ覚えればOK。これは劇中で数えきれないぐらい聞こえてくるのですぐに分かるだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 劇場版シティーハンター 天使の涙 』
『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ドキュメンタリー, 日本, 監督:金大偉, 配給会社:TAII Project, 関雲徳Leave a Comment on 『 天空のサマン 』 -編集に難あり-

『 福田村事件 』 -100年前と思うなかれ-

Posted on 2023年9月9日 by cool-jupiter

福田村事件 80点
2023年9月2日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:井浦新 田中麗奈 永山瑛太
監督:森達也

大学後期の開講直前につき簡易レビュー。

 

あらすじ

1923年、智一(井浦新)は朝鮮半島から故郷の福田村に妻の静子(田中麗奈)とともに帰ってくる。一方、讃岐から来ていた沼部新助(永山瑛太)率いる行商団15名は、薬売りをしながら千葉へと向かっていた。やがて関東大震災が発生。一帯は混乱に陥り、朝鮮人が攻めてくるとの噂が飛び交い、人々は疑心暗鬼に陥り・・・

ポジティブ・サイド

本作について、なにかをクドクドと言う必要はない。2020年に自分のFacebookで以下のように投稿したことがある。

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米ウィスコンシン州の警察官による黒人銃撃事件を報じるYahoo Japanニュースのコメント欄が恐ろしいことになっている。「銃を取りに行っているように思われても仕方がない」「黒人は元々犯罪率が高い」「白人でも普通に撃たれる案件」「警察の制止を無視する方が悪い」等々。世論を何らかの方向に誘導したい勢力に雇われているのか、それとも本気でそう思っている人間が一定数存在しているのか。すべてがステレオタイプにまみれた意見で、ジェイコブ・ブレイクという個人がどんな人間だったかということに全く関心がないらしい。

いくら銃社会のアメリカでも、『無抵抗』で『丸腰の人間』を『後ろから』、『7発』撃つ理由は見当たらないだろう。相手を無力化させるのではなく殺すことが目的の行動としか解釈できない。

黒人が殺された、ではなく、無抵抗の人間が殺された、ということに恐怖を感じる人間が、日本ではマイノリティであるらしい。そのことに戦慄させられる。「なんでもかんでも人種差別に結び付けるな」というエクストリーム意見もあるようだが、そういう人間の頭をカチ割って中身を見てみたい。人種差別云々ではなく、人を人とも思ってない所業が繰り返されてることに何か感じひんのかなあ・・・ 人種差別ではなく人間差別になってるとは思わんのかな・・・ アメリカのこの手の問題の根っこはracismではなくdehumanizationになりつつあると感じる。

_______________________________________

 

これが本作の問題提起そのもの。なんでもかんでもアメリカに追従する日本だが、実は人間差別という点ではアメリカに先んじていたのかもしれない。そこから日本人は進歩したと言えるのか。本作が問うのはそこである。

 

ネガティブ・サイド

東出の間男っぷりが現実とリンクしているのは一種のブラックジョークなのだろうか。当時の風俗習慣を垣間見る上では興味深いのだが、虐殺とそこに至るまでの社会的な混乱を描く上では不必要な要素に思えた。東出絡みのシーンはすべてカットして、120分ちょうどに収めてほしかった。

 

総評

Jovianも〇万円をクラファンに投じた作品が満を持して公開。実はクレジットにも名前が出ている。なぜ今、100年前の話なのか?と問うなかれ。これは現代の物語である。現代日本が持つことができずにいる多様性、その原因の根っこが本作で明らかにされている。日本人とそれ以外の人間に分けて考えるという二項対立的な思考がそれだ。それを一気に打ち砕く新助の言葉と、そこから始まる虐殺シーンの凄惨さは近年の邦画の中でも出色の出来。『 主戦場 』に並ぶ傑作。今という時代に本作を製作・公開した森達也監督の炯眼に満腔の敬意を表したい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

vigilante

2017年にシネ・リーブル梅田にて『 ビジランテ 』というタイトルの映画が上映されていた。意味は「自警団」である。form a vigilante = 自警団を組む・組織する、のように使う。ただ、自警団は往々にして組むこと自体が違法もしくは非合法であることを忘れてはならない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴァチカンのエクソシスト 』
『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, スリラー, 井浦新, 日本, 歴史, 永山瑛太, 田中麗奈, 監督:森達也, 配給会社:太秦Leave a Comment on 『 福田村事件 』 -100年前と思うなかれ-

『 神回 』 -男の習性を捉えた逸品-

Posted on 2023年9月1日 by cool-jupiter

神回 75点
2023年8月27日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:青木柚 坂ノ上茜
監督:中村貴一朗

 

『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』、『 リバー、流れないでよ 』に続く邦画のタイムループもの。本作もなかなかの秀作だった。

あらすじ

沖芝樹(青木柚)と加藤恵那(坂ノ上茜)は夏休みの教室で文化祭の出し物についての打ち合わせを始める。しかし樹は突如意識を失ってしまう。気が付くと目の前には恵那の姿。そして彼女は打ち合わせを始める前と寸分たがわぬ言動を見せる。樹はまたも意識を失い、気が付くと時が打ち合わせ直前に戻っていた。このタイムループを抜け出すために樹はあらゆる手段を講じるが・・・

以下、多少のネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

 

鑑賞直後、Jovian妻は「何これ、キモイ」という端的にも程がある感想を述べてくれた。その通り、本作はキモイ。グロ描写やゴア描写がドギツイわけではない(流血や暴力シーンはほんのちょっとある)。男の子側にも女の子側に性的な描写があるが、はっきり映ったり、あるいは思いっきり触っていたりするわけではないので、そこは安心してほしい。

ここでいうキモさとはずばり、男のとある習性のこと。

 

『 アンダー・ユア・ベッド 』

『 レミニセンス 』

 

このあたりの作品に

 

世にも奇妙な物語の『 バーチャル・リアリティ 』

 

のプロットを足して、それを青春映画っぽく仕立て上げたのが本作だ。というとずいぶんと安っぽく聞こえてしまうが、実際はさにあらず。まず本作は青春映画ではない。ジャンル分けするのは難しいが、敢えて言えばファンタジーだろうか。

 

主役の樹は『 よだかの片想い 』でアイコのゼミ仲間や『 終末の探偵 』のボランティア少年などで印象的だった青木柚。まったく特徴のない顔つきながら、出演作では必ず一定以上のインパクトを残している。故障したテレビを買い替えたら、彼のその他の出演作もチェックしてみたい。

 

ヒロインの恵那を演じた坂ノ上茜は『 きみの瞳が問いかけている 』の明香里の店のスタッフを演じていた。登場時間は多くなかったが、パッと見た瞬間に「あ、見たことある」と感じさせるぐらいには印象に残っていた。

 

この若い二人の織り成す無限にも思えるタイムループものが、何故に青春映画ではないのか。それは、女性が率直にキモイと感じてしまう男の習性によるものだ。ある程度年齢のいった男性(10代や20代はダメ、できれば不惑過ぎ)なら、分かるはず。『 僕の好きな女の子 』を楽しめた、あるいは某魔法使いシリーズの某キャラに激しく共感できるようならさらに良し。

ネガティブ・サイド

一番最初のショットは不要。学校の校門をくぐる描写すら不要だったかも。

 

最後、何故に教室は暗くなった?

 

謎解きパートというか、ネタ晴らしパートはもっと短くていい。全体を75分から80分でまとめられれば、それこそ神映画になれたかもしれない。

総評

男のアホな習性だけで一つの物語として成立させた力業はたいしたもの。男には忘れられない夜や忘れられない瞬間、忘れられない匂いや感触というものがある。Jovian妻を含め、女性全般はそれをキモイと感じるわけだが、それが男の性(さが)なのだからしゃーない。むしろ男の内面のダークサイドや鬱ルートを真っ向から描写し、ハッピーエンドを潔く否定した中村貴一朗監督の作劇術に満腔の敬意を表したいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You with me?

劇中で何度も何度も聞こえてくる「聞いてる?」の私訳。会話ではこうした時、Are you listening to me? とは普通は言わずに、Are you with me? または You with me? と言う。『 トップガン マーヴェリック 』でも、出撃前に一瞬上の空になっていたマーヴェリックに向かってホンドーが “Hey, you with me?” と言っていた。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 福田村事件 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』
『 MEG ザ・モンスターズ2 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ファンタジー, ラブロマンス, 坂ノ上茜, 日本, 監督:中村貴一朗, 配給:東映ビデオ, 青木柚Leave a Comment on 『 神回 』 -男の習性を捉えた逸品-

『 春に散る 』 -人間ドラマが中途半端-

Posted on 2023年8月28日 by cool-jupiter

春に散る 35点
2023年8月26日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:佐藤浩市 横浜流星 橋本環奈
監督:瀬々敬久

 

ボクシング映画ということで期待して劇場に赴いた。世間的にはどうか分からないが、個人的には「何じゃこりゃ?」という出来だった。

あらすじ

ボクサーの翔吾(横浜流星)は、偶然出会った元ボクサーの仁一(佐藤浩市)にボクシングを教えてほしいと頼み込む。やがて同居するまでになった二人は東洋太平洋タイトルマッチを実現させるが・・・

ポジティブ・サイド

意外にボクシングパートがしっかりしている。『 ケイコ 目を澄ませて 』のトレーナー役として爪痕を残した松浦慎一郎が今作でも躍動。原作が沢木耕太郎のせいか、実在のボクサーネタがちらほら。試合後に相手と抱き合い「強かったわ」と伝えるシーンの元ネタは薬師寺戦後の辰吉。仁一がボクシングを始めるきっかけになった平手のエピソードも辰吉由来。さらに仁一が言う「強いパンチと効くパンチは違う」というのはアドバイザーの一人、内山高志の言だったはず。チャンピオンがスーパーカーに乗っているというのも薬師寺の逸話。年来のボクシングファンなら色々と楽しめる小ネタが随所にある。

 

が、褒められるのは、そこまでだった・・・

ネガティブ・サイド

すべての人間ドラマのパートが中途半端だったという印象。仁一の家族の物語と、序盤の仁一の翔吾へのつっけんどんな態度が上手く結びついていない。自分が家族と上手く関係を構築できなかったから、ひたむきに自分に向き合おうとする若者に向き合うことに不安と恐怖があった、という描写がほぼ無かった。

 

橋本環奈演じる佳菜子と翔吾のなれそめは何だった?あのすれ違いざまの一瞬?大分の食堂で働いていたというバックグラウンドがあるのであれば、腹をすかせた小学生姉弟に弁当をプレゼントとするのもいいが、試合前の翔吾に効果的な減量食を振る舞ってあげるだとか、減量についてアドバイスする仁一や健三に「その知識はもう古い」と言ってやるといった描写が一切ないままに翔吾と佳菜子が接近していく展開はちょっと説得力に欠ける。

 

翔吾の最初のライバルである大塚のトレーナーに三羽ガラスの一人の次郎がつくという展開も意味不明。考えるボクシングを標榜してるんちゃうの?Sweet Science とは呼べないようなボクシングを期待のホープに叩き込むトレーナーを見て、山口智子演じる会長の令子は何を思うのか。いや、何も思っていないのか。

 

仁一の翔吾に対する指導も同じ。「パパ頑張れー」という家族の声援に思わず攻撃の手を緩めるというのは致命的。翔吾が自身のそうした甘さをどう乗り越えるのかに関心を抱いたが、とくにそうした描写はなし。おいおい・・・ さらにシレっと「今度の試合はキドニー・ブローが鍵になる」と指導していたが、それは反則パンチやんけ・・・

 

リングの中はなかなかの臨場感だったが、その他の部分がめちゃくちゃ。だいたい日本タイトルマッチまで行けるボクサーが、ライトクロスの知識を一切持っていないということが信じがたい。それに東洋太平洋タイトルを取った次戦が世界タイトルマッチというのも相当な異例。タイトルマッチが同国人同士で争われることを承認団体は普通あまり喜ばない。世界戦なのだから、指名挑戦者は当たり前として、世界各国のランカーと戦ってナンボというのが一応の建前である。そもそも窪田正孝演じる中西は噛ませ犬としてスーパーフェザー級王者と闘ったのではなかったか。なのに何故フェザー級のベルトをゲットできたのか。不可解極まりない。

 

最後の試合の最終盤のスローモーションは『 アンダードッグ 』のそれよりもさらに酷い出来で、失笑してしまった。中身を全部綿で満たしたグローブで役者の顔面を普通のスピードで殴る、それをスローモーション処理する、といった撮影方法は無理なのだろうか。

 

総評

残念ながら『 レッドシューズ 』と同レベルのチンプンカンプン物語。沢木耕太郎の原作もこうなのだろうか。キャストは豪華でも、肝心のストーリーにリアリティとしっかりしたドラマがなければ面白くなりようもない。邦画が『 百円の恋 』を超えるボクシング映画を生み出すのはいつのことになるのだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

protect

守る、の意。これは主として「危険から守る」という意味。野球の捕手や球審が身に着けるプロテクターを連想しよう。似たような語である defend は「敵から守る」という意味。これはスポーツや戦闘でディフェンスから覚えられるはず。guard はボディガード、ガードレールなど、より具体的なものを守る、あるいは具体的なものから守る場合に使う。翔吾が母親を守りたいと言っていたのは、protect の意味である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 神回 』
『 あしたの少女 』
『 17歳は止まらない 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ヒューマンドラマ, ボクシング, 佐藤浩市, 日本, 横浜流星, 橋本環奈, 監督:瀬々敬久, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 春に散る 』 -人間ドラマが中途半端-

『 リボルバー・リリー 』 -戦闘のリアリティがダメダメ-

Posted on 2023年8月15日 by cool-jupiter

リボルバー・リリー 30点
2023年8月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:綾瀬はるか
監督:行定勲

 

邦画もついに『 悪女 AKUJO 』のような本格アクション映画をリリースか?と期待したが、Don’t get your hopes up.

あらすじ

国際社会の要人57人を殺害した元工作員の小曽根百合(綾瀬はるか)は、東京の玉の井で女将をしていた。ある一家の殺人事件を辛くも逃れた少年・慎太と出会ったことで、百合は陸軍から追われる身となり・・・

 

ポジティブ・サイド

一介の商人がアホみたいな金額を密かに貯めてしまうというプロットはありだと思う。日露戦争や第二次世界大戦の戦費のかなりの部分がビール税で賄われたということから、カネはあるところにはあるからだ。

 

佐藤二朗演じるヤクザの親分が最も時代を反映していたように思う。民間人でもなく軍人でもないという、百合とはある意味で対照的なグレーな存在もリアル。清水博也の出演作にハズレはあっても、清水博也そのものの演技にハズレはないというジンクスは今作でも生きていた。

ネガティブ・サイド

うーむ、このリボルバー・リリーは『 るろうに剣心 』の焼き直しにしか見えなかった。冒頭の字幕での説明からして同作とまったく同じ。暗殺者稼業から足を洗って、殺しは辞めたと宣言するところも同じ。実は○○してました、も同じ。何だこりゃ・・・

 

綾瀬はるかがアクションに挑むこと自体は悪いことではないが、問題は見せ方が悪すぎること。格闘シーンはカット、カットの連続で『 AVA/エヴァ 』と同様に作り物感満載。相手がクルクルと宙で回転したり、マウントポジションを取られているのに下からの蹴り一発で相手を払いのけたりと非現実的なアクションのオンパレード。

 

タイトルにもなっているリボルバーも特にフォーカスされず。一発一発撃鉄を起こす必要があり、一人を射殺するのには向いていても今作のような対集団には向かないのでは?しかもベレッタと二刀流をしたりもして、タイトルのリボルバーの意味がますます分からない。

 

最大の問題は陸軍が弱すぎること。陸上自衛隊が観たら激怒するのでは?山小屋での手榴弾の爆発に対しても、咄嗟にうずくまるなどの反応もゼロ。ホンマに軍人か?そもそも、色街の娼婦の間に小隊規模で押し寄せて銃撃戦の結果、撃退されるとか、切腹ものの恥ずかしさ。もう東京界隈では陸軍は軍服着て街を歩くのは無理なほどの醜聞。原作もこの展開なのか?

 

正体不明の老婆の治癒や、祭りの場で目線の高さで発砲して誰にも命中しないなど、不可解なシーンも多数。最後の鈴木亮平のシーンも不要。長谷川博己からの問いかけに言葉では答えず、是とも非とも解釈できる眼差しで終幕すればよかった。

総評

行定勲は『 GO 』からそれなりに追っているが、この人はドラマやロマンスの人であって、アクションの演出は無理だと確信した。画面が暗い上に、細かいカットの連続で臨場感がない。暗殺者にも軍隊にもリアリティがない。豪華キャストの盛大な無駄遣い。綾瀬はるかの熱心なファンはチケット購入可だが、そうでなければスルーを推奨する。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

look into ~

長谷川博己が序盤で色々と調べていくが、「~を調べる」で最も一般的な表現は look into ~ である。硬い言い方だと investigate ~ となる。状況や話し相手によって使い分けよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』
『 ヴァチカンのエクソシスト 』

 

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『 658km、陽子の旅 』 -年間ベスト候補-

Posted on 2023年8月9日 by cool-jupiter

658km、陽子の旅 80点
2023年8月6日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:菊地凛子
監督:熊切和嘉

簡易レビュー。

 

あらすじ

陽子(菊地凛子)は従兄弟から父親の死を知らされる。葬儀のために青森に向かうという従兄弟の一家のクルマに同乗させてもらうが、アクシデントにより陽子はSAに取り残されてしまう。なんとか青森に向かうために、陽子はヒッチハイクを試みるが・・・

ポジティブ・サイド

クルマの中という一種の密室で虚飾のない人間の思考や感情が表出される。自分の部屋の中ですべてを完結させてきた陽子にとって心理的にキツイ時間と空間だ。そうして苦しさに耐えかねていたのが、やがて受容できるようになり、最後には自分自身の嘘偽りのない心情を吐露できるようにまでなった。その過程で出会う人々、彼ら彼女らとの関わり方、描き方がとてもリアルだった。

 

本作の特徴は徹底的に傍観者の視点を観客に与え続けること。しかし、ある一つのシーンだけは陽子の視点となる。そこが物語、そして陽子の心理的な転換点。そのシーンを境に陽子を苦しめていた父の亡霊は姿を消す。これは上手い演出だと感じた。

 

終盤のとある車内で、自らの旅について訥々と語る陽子には感動した。

 

引きのショットと孤独感、孤立感を演出しつつ、BGMで陽子の心情を奏でる。2023年のベストの邦画のひとつだ。

 

ネガティブ・サイド

『 スリー・ビルボード 』と同じ。余韻を残す前にもう1分欲しかった。

 

総評

中年女性のロードムービーと侮るなかれ、近年の邦画の中でも出色の出来映え。菊地凛子の渾身の演技の完成度は『 TAR/ター 』のケイト・ブランシェットのそれに勝るとも劣らない。老若男女問わず、多くの映画ファンに観てもらいたい傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

journey

旅を意味する英単語には travel や trip があるが、本作の陽子の旅を意味する語としては journey がふさわしい。travelは移動そのものが強調され、tripはいつもと少し違うところに行く(だからドラッグ体験を指してトリップと言う)ことだが、journeyはその旅を経ることで成長できるような体験を指す。英検1級を目指す、あるいは英語を本格的に教える人は知っておきたい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』
『 リボルバー・リリー 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, A Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:熊切和嘉, 菊地凛子, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 658km、陽子の旅 』 -年間ベスト候補-

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