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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: D Rank

『 さんかく窓の外側は夜 』 -ホラーならホラー路線に振り切れ-

Posted on 2021年1月25日 by cool-jupiter

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さんかく窓の外側は夜 45点
2021年1月23日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:岡田将生 志尊淳 平手友梨奈 滝藤賢一
監督:森ガキ侑大

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『 シン・ゴジラ 』で布告された緊急事態宣言も、現実の日本では二度目の発出。慣れとは怖いものだ。「コロナより怖いのは、私たち人間ね」と言いたくなるニュースがこの半年は多かった。「呪いよりも怖いのは人間なのか?」との問いを立てて本作を鑑賞した。

 

あらすじ

幼いころから幽霊が見えてしまう三角(志尊淳)は、ひょんなことから除霊ができる冷川(岡田将生)の相棒として仕事をすることになる。ある時、冷川の馴染みの刑事・半澤(滝藤賢一)から持ち込まれた事件を捜査しているうちに、ヒウラエリカ(平手友梨奈)という謎の女子高生の存在が浮上し・・・

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ポジティブ・サイド 

完全に偏見なのだが、『 ストレイヤーズ・クロニクル 』および『 秘密 THE TOP SECRET 』が超絶駄作(特に前者)だったため、岡田将生が主役級という作品は避けていた。が、『 星の子 』での演技はなかなかのものだったので、もうそろそろ無意味な偏見から解放されてもよい頃合いと思い、本作を鑑賞。演じやすい=特徴を出しやすいキャラクターという面に救われている面はあるものの、冷川という癖のある男を好演できていた。さわやかなイケメンというのは時と共に消費されつくして次世代に取って代わられるもの。今後は自信満々で鼻持ちならない系のキャラを極めていくのもいいだろう。『 君が君で君だ 』の向井理のようなチンピラ役にも挑戦してもらいたい。

 

除霊する時に、その霊の生前をうかがい知れるイメージを挿入するのは、なかなか親切な演出だと感じた。バディものの変形とはいえ、これほどあからさまに野郎同士の身体接触を決めのシーンとして描くのは、今日の目で見ると違和感というか、逆に新鮮味が感じあれる。

 

呪いや幽霊一辺倒になるのではなく、滝藤賢一演じる「信じない」キャラという存在が物語を引き締めている。J・ピール監督の『 ゲット・アウト 』でも主人公の親友が極めて堅実かつ現実路線の男(ギャグやユーモア担当でもある)だったおかげで、荒唐無稽なストーリーが“現実”と上手く対比された。滝藤演じる半澤刑事は、同じような作用を本作にもたらしている。

 

「簡単な除霊作業」の先に壮大な陰謀が隠されている、という展開も王道でよろしい。超自然的な現象の根本を人知の及ばない領域に求めるのではなく、そうした超自然的な現象をも人間の業の一部に組み込んでしまうというのは現代的である。カルトの存在を真正面から描くという意味では、本作は邦画の中では珍しいと言える。近年では『 スペシャルアクターズ 』や『 星の子 』ぐらいだろうか。本作のシリアスさは、これらの中間ぐらいである。

 

目に見えない存在が人間に害をなす。これまではそうした存在の代表は幽霊だった。今ではウィルスが大きく存在感を増してきており、こうした現実がフィクションである物語の奥行きを深めている。そうした見方をすれば、単なる中途半端なBL物語以上のものとして鑑賞することができる。

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ネガティブ・サイド

最初に劇場で予告編を観た時は、「すわ、オリジナル脚本か?」と思ったのだが、これもやはり漫画原作だった。そのせいか、各エピソードやキャラの背景描写が非常に底浅い、もしくはつながりやまとまりに欠ける。最も気になったのは、志尊淳演じる三角。幼少の頃に同級生が川で幽霊に襲われる(多分、死んだ)という経験がトラウマになっているのではないのか。にもかかわらず、冷川と組んでの最初の除霊作業で自身も水難事故に遭いかけるとか、おかしいだろう。さらに冷川から「霊はたいていは無害」とか説明されて反論もしないのは何故だ?例を見るたびに「うわっ」と驚くのも妙だ。散々見てきたでのははないのか。自身のトラウマ体験と折り合いをつけられずに生きてきたという背景が全く活かされていない。また、逆にラストの母親とのシーンでは空回りになってしまっている。原作の漫画はおそらく大部のエピソードでもってこのあたりの流れを描いているのだろうが、2時間足らずの映画では完全に描写不足。志尊淳の芝居(特に涙のシーン)は全編を通じてかなり良かっただけに、なおのこと物語とキャラと演技者の乖離が悪い意味で目立ってしまった。

 

平手友梨奈は『 響き-HIBIKI- 』の主人公役でインパクトを残したが、本作ではさっぱりだった。ミステリアスな雰囲気を出したいのは分かるが、それはその異能性ゆえに周囲から浮いてしまうことで放たれるもの。女子高生と言いながら、学校や同級生の描写がほとんどと言っていいほど存在しない本作では、その属性は不要だったのでは?むしろ『 ジオラマボーイ・パノラマガール 』の神奈川ケンイチのように、学校に行かず日夜街を徘徊して、人間の悪意をばらまいている、あるいは吸収している存在に描いた方が面白かったのではないか。

 

その人間の悪意が“言葉”だという点にも正直なところ拍子抜けさせられた。それも『 白ゆき姫殺人事件 』の二番煎じにもなれていないように見えた。言葉が悪意で、それが呪いとして成就しないのは、それを巧みに利用する者が存在するからだという背景はもっと丁寧に、なおかつ説得力のある方法で描けたはずなのだ。

 

クライマックスの“貯金箱”の描写もチープの一語に尽きる。これ以外にも、バラバラ殺人の被害者のパーツを集めて一つの人体に再構成するというサブプロットで、つなぎ合わされた死体が腐敗していない謎が最後まで説明されないなど、色々な要素を置いてきぼりにしたまま物語が進んでいく。続編制作に色気を持たせる終わり方だが、これだけとっちらかった序章では『 ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 』の二の舞を演じることになるだろう。

 

総評

出演者の演技は総じて悪くない。だが、脚本と演出が破綻してしまっている。コロナ禍という現実を下敷きに本作を観るという醍醐味もあるにはあるが、ストーリーを純粋に楽しむ、キャラクターの背景や経験を追体験するという映画的な楽しみ方は難しい。岡田や志尊のファンにならば勧められるか。Jovianは滝藤賢一目当てだったので、彼のパートだけはまあまあ楽しめた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

cast a curse on ~

~に呪いをかける、の意。普通に考えれば日常生活で使うことはない表現だが。ファンタジーやホラーではたまに聞こえてくる表現。単に“I’ll curse you”または“Curse you”=呪ってやる、とも言うが、日本語でも「呪いをかける」の方が「呪ってやる」よりも本格的に聞こえるように、英語でもcast a curse on ~の方がシリアスに聞こえる。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ホラー, 岡田将生, 平手友梨奈, 志尊淳, 日本, 滝藤賢一, 監督:森ガキ侑大, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 さんかく窓の外側は夜 』 -ホラーならホラー路線に振り切れ-

『 カリキュレーター 』 -平均的なロシアSF-

Posted on 2021年1月17日 by cool-jupiter

カリキュレーター 50点
2021年1月17日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:エフゲニー・ミローノフ アンナ・シポスカヤ
監督:ドミトリー・グラチョフ

 

友人の勧めでロシア映画を鑑賞。ロシアと言えば、面白そうなSFを定期的に作っているなという印象があったが、『 惑星ソラリス 』を高校生および大学生時に鑑賞して、いずれも睡魔によって撃沈されたJovianは、以来ソ連・ロシアの映画から遠のいてしまっていた。今年あたり、韓国映画、インド映画に加えてロシア映画も観始めていこうか。

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あらすじ

惑星XT-59は、すべてが「システム」および総統の統治下にあった。この星の犯罪者は、シールドの外の過酷な生態系の果てにある「幸福の島」へ向けて追放される。エルヴィン(エフゲニー・ミローノフ)はクリスティ(アンナ・シポスカヤ)と共に「幸福の島」を目指すが、危険な犯罪者ユスト達から追跡されて・・・

 

ポジティブ・サイド

ロシア的な美意識が様々なオブジェやガジェットから垣間見える。特に小キューブが立方格子上に連なったキューブ状の「システム」や、直方体の頂点から角が生えたような形状の飛行船(これも直方体に変化したりする)など、メカメカした感じではなくミステリアスな雰囲気をたたえるものが多い。

 

XT-59の大地も荒涼とした雰囲気を醸し出している。おそらく一部はCGなのだろうが、灰色の大地に巨岩が点在し、地平線の果てまで見渡せるような景色には、やはり広大なロシアの自然観や世界観が表れているように感じた。

 

クリスティ役の女優さんが眼福だ。フィギュアスケートで見るような妖精のような少女ではなく、成熟したロシアン・ビューティー。ニップレスなし風のタンクトップ姿はサービスか。いったいどんな犯罪をやらかしたのかと思ったが、なるほど、ロシア人女性は怒らせてはいけないらしい。

 

「幸福の島」を目指す旅路は貴志祐介の小説『 クリムゾンの迷宮 』とよく似ている。協力を持ちかける人間、敵対する人間、そして自分たち以外の人間など、サバイバル小説や映画によくある展開が待ち受けていて、良く言えば基本を押さえている。悪く言えば展開が読みやすい。本作はそこに、奇妙な生物を織り交ぜてくることで、別の緊張感を生み出している。特に殺人カビ(というより糸を出す粘菌に見えたが)は実際の宇宙に存在していそうな生命形態で説得力を感じた。

 

エルヴィンが「システム」に仕掛けた罠も『 インディペンデンス・デイ 』的で、これも良く言えば基本的、悪く言えばクリシェ。しかい、そこに同じ囚人のユストや総統の手先が追撃に現れ、「殺したいけど殺せない」というジレンマに陥るところはそれなりにユニークだ。

 

オチもなかなか考えさせられる。Jovianの世代だとソ連邦の崩壊をリアルタイムで体験しているので、抑圧的なシステム(社会主義)の元から解放された人々が屈折した人間心理を発達させてしまうことを知らされている。当然、現代ロシア人もソ連のことをよく覚えているだろう。そうした作り手がこのようなオチをつけるところに、自由の意味を考えずにはいられなくなってしまう。

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ネガティブ・サイド

低予算映画のためか、シーンとシーンのつなぎが貧弱だ。惑星XT-59がどのような自然環境の惑星で、人々はそこでどのような営みに従事し、どのような社会制度や文化を発達させてきたのかを徹頭徹尾映し出してくれない。このため、エルヴィンの置き土産によって「システム」がダウンしてしまうことが、惑星および社会にどのような影響を及ぼすのかが分からない。そこが分からないため、終盤の展開にカタルシスを感じにくい。

 

また、総統も何をしたいのかが意味不明だ。エルヴィンを殺す機会などいくらでもあっただろうに。回りくどく動きすぎて単なる狂言回しになっている。

 

ヒロインのクリスティも行動と感情に一貫性が感じられない。エルヴィンとの距離感の設定が色々とおかしい。最初は無関心、それが嫌悪になり、ある時から好意に変わる。または最初が嫌悪、それが無関心に変わり、いつしか好意に変わっていく。それなら理解できる。しかし、嫌悪と無関心の間をジェットコースター並みに行ったり来たりして、最後に「愛してる」とか言われても、説得力がない。まるで90年代のC級のハリウッド映画だ。

 

けれども一番キャラ設定がおかしいのはカリキュレーター=計算機であるエルヴィンだろう。自らをもって数学者を任じるなら、もっと思考や行動に数学という根拠を持たせるべきだ。確率や統計、力学の蘊蓄などをもう少しだけでも披露していれば、カリキュレーターというタイトルロールとしてもっと説得力が持てていたことだろう。口癖が「論理的だ」とか「非論理的だ」だけでは数学者とは言えない。

 

エルヴィンがもっとストレートに「クリスティを救いたいが、自分にはその権限がない。だから自分も囚人になって、過酷な流刑先で守護してやらねば」と奮い立ったという設定の方が、低予算映画として分かりやすい。無理やりロマンスの要素を入れたがために、ロシア的な要素が行きなかったように思われる。もしくは、最初からグローバルに売り出すつもりなら、ハリウッド的な文法で物語を作って、キャラクターや世界観にロシアっぽさを盛り込むべきだろう。全体的なトーンが一貫しないところが目についた。

 

総評

非常に鑑賞しやすい映画である。時間も90分足らずだし、登場人物の数も多くない。さらにストーリーも複雑ではなく、ほぼ一本道である。ロシアの人間ドラマや青春ドラマはどんなものなのかは分からないが、少なくとも『 コズミック フロント☆NEXT 』でコンスタンチン・ツィオルコフスキーに興味を持ったJovianは本作のSF部分をそれなりに楽しめた。もともとバレエなどの舞台芸術や文学の分野に強いロシアである。今後、韓国やインドのように力強い作風の映画を送り出してきてくれることを願いたい。

 

Jovian先生のワンポイントロシア語会話レッスン

スバシーバ

ロシア語で「ありがとう」の意。劇中で何度か聞こえてくる。「ありがとう」は何か国語で言えても損はない。大学時代の寮の仲間のロシア人に「ゼイビシ」なるスラングを教えてもらったことがある。意味は「Fucking good」だったと記憶しているが、ネットで調べてみてもヒットしない。ロシア語に詳しい方からご教授いただけると幸いです。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アンナ・シポスカヤ, エフゲニー・ミローノフ, ロシア, 監督:ドミトリー・グラチョフ, 配給会社:インターフィルムLeave a Comment on 『 カリキュレーター 』 -平均的なロシアSF-

『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』 -平均的なコメディ-

Posted on 2021年1月15日 by cool-jupiter

おとなの事情 スマホをのぞいたら 55点
2021年1月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:東山紀之 常盤貴子
監督:光野道夫

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原作も、2019年に心斎橋シネマートで公開されていた韓国版リメイクも未鑑賞。ということは新鮮な目で本作を味わえるわけで、期待を胸に劇場へ。そこそこのコメディに仕上がっていた。

 

あらすじ

雇われ店長とその妻、パラリーガルの夫と子だくさんの妻、たたき上げの美容整形外科医の夫とテレビでも活躍する精神科医の妻、そして独身で塾講師の三平(東山紀之)はCAFFE ANGELAに集って晩餐を楽しんでいた。ふとしたことからスマホをテーブルに置き、通話やメールを全員に公開するというゲームを行うことに。そして、着信やメールのたびに、隠されていた秘密や人間関係が露わになっていき・・・

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ポジティブ・サイド

腹筋やらジョギングを欠かさないというマッチョなイメージの東山紀之が非常に良い味を出している。男らしいからではない。5ちゃんの塾講夜話をしげしげと眺めていそうな、どこか浮世離れした塾講師をリアルに体現できていた。

 

パラリーガルの田口浩正も素晴らしい。曲者ぞろいの晩餐会参加者の中でコミックリリーフをほぼ一手に引き受けていた。顔面で演技ができるタイプで、表情がくるくる変わり、心情をダイレクトに伝えられるのが強み。のみならず、土着的な中年日本人顔で、とにかく親近感が湧くのである。東山紀之と絶妙な掛け合いを披露してくれるが、数多くの中年男性映画ファンが感情移入し、なおかつ声援を送るのは、東山ではなく田口だろう。

 

電話の着信やメールやテキストの受診のたびに明かされていく秘密も、まあまあ面白いし、中には心臓が飛び出るかと思うほどのシリアスな通話もあったりする。秘密の大部分は夫婦関係に属するものなので、脛にやましいところがある諸兄は細君を劇場鑑賞のお供に誘わないこと。『 喜劇 愛妻物語 』を本当に喜劇として受け取れる夫婦なら、全く問題ないだろう。

 

役者同士の演技合戦や、テンポの良い進行、ほとんど一か所だけで展開されるし、時間もわずか一晩のこと。『 キサラギ 』を楽しめたという人なら、チケットを買って損はない(『 キサラギ 』の方が面白さという点では上だろうけれど)。

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ネガティブ・サイド

これだけの演技派をそろえたのだから、アンサンブル・キャストに徹してほしかった。明らかに木南晴夏のスクリーン・タイムは短かったように感じる。もちろん、魂の絶叫や意外なところからのメール受信など見せ場はあったが、ゲームの言い出しっぺであるためか、他キャラよりも目立たなかった。

 

鈴木保奈美と益岡徹の夫婦仲の崩壊とそこからの回復は、なんというか非常にシラケるものだった。木南晴夏にも突っ込まれていたが、良い話でも何でもない。そもそも精神科医の妻が、「夫が自分に話してくれないことがある!」と憤慨するのがおかしい。話の内容ではなく、話さないという態度などから鑑別(別に病気ではないが)していくというプロフェッショナルな姿勢が見られなかった。他のキャラが仕事をネタにした話をする、あるいは職務で身に着いた喋りや振る舞いを見せているだけに、鈴木保奈美のキャラだけはもう少し深掘りができたのではないかと思ってしまった。

 

益岡徹が最後に種明かし的に語り始めるパートもノイズだった。おそらくこの部分が日本版リメイクで付け加えられた部分なのだろう。序中盤でちらっと見せられていたガジェットや、各キャラの発する伏線となる台詞を丁寧に説明したくなるのは分かるが、これはミステリではなくシチュエーション・コメディ。もっとスパッと説明するか、あるいは回想シーンにしてしまっても良かった。引っかかるのは「11月下旬に台風が本州、しかも関東にやってきて、建物の3階まで浸水するような大雨を降らせるか?」という疑問である。まあ、深く考えては負けなのだろう。

 

総評

突出した面白さがあるわけではないが、かといってチケット代を損したなどという気分にはならない。Jovianと同世代なら、すっかりmilfyになった常盤貴子目当てで劇場を訪れるのも良いだろう。誰と一緒に観に行くかで感想が変わるかもしれない。そうそう、一つだけアドバイスするが、ファミリーで見に行ってはいけない。直接的なラブシーンなどはないが、気まずくなること請け合いである。子どもが小学生ぐらいなら、質問攻めにされることだろう。タイトル通り、「おとな」が楽しむ作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You’ve got mail.

「あなたはメールを受け取りました」の意。劇中でメールを受信するたびにスマホがこのように喋ってくれる。トム・ハンクスとメグ・ライアンの『 ユー・ガット・メール 』の原題も“You’ve Got Mail”である。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, コメディ, 常盤貴子, 日本, 東山紀之, 監督:光野道夫, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』 -平均的なコメディ-

『 ソング・トゥ・ソング 』 -すべては監督と波長が合うかどうか-

Posted on 2021年1月4日 by cool-jupiter

ソング・トゥ・ソング 50点
2021年1月2日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ライアン・ゴズリング マイケル・ファスベンダー ナタリー・ポートマン ルーニー・マーラ
監督:テレンス・マリック

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『 ドント・ウォーリー 』や『 A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー 』など、通常とは趣が異なる関係の一方を演じさせれば天下一品の女優。ルーニー・マーラ目当てで鑑賞。ライアン・ゴズリングもカナダ人俳優の中ではJovianのfavorite actorだ。
 

あらすじ

シンガーソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)は、辣腕プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)と組んで、徐々に頭角を現していく。BVはギタリストのフェイ(ルーニー・マーラ)と恋仲になるが、フェイは以前から秘かにクックと関係を持っていて・・・

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ポジティブ・サイド

ルーニー・マーラとライアン・ゴズリングに加え、マイケル・ファスベンダーとナタリー・ポートマン、そして中盤以降にはケイト・ブランシェット、さらには名のあるスターもさらに数名登場。俳優陣がとにかく豪華だ。俳優たちに加えて、イギーポップらの本物のアーティストも多数登場。彼ら彼女らがコンサートやパーティー。アメリカ各地やメキシコのリゾート地などを巡る画は、どれもこれもが美しい。まるで自分もそのイベントに参加し、旅をしているかのような気分にさせてくれる。

 

彼ら彼女をカメラに収めるはエマニュエル・ルベツキ。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 』では全編ワンカットに見える絵を巧みの技で撮り切った。そのルベツキの手腕が今作でも遺憾なく発揮されている。各ショット内の人物と事物のサイズ比や色合いがシネマティックに計算されていて、まるで『 続・夕陽のガンマン 』のようにどのシーンも絵になる、というのは流石に褒めすぎか。それでも、各地の建築や街並み、自然の風景を捉えたショットの数々は目の保養にもってこいである。暗転した劇場の大画面にこそ映える絵だ。

 

アメリカでも日本と同じく、モラトリアムの期間が長くなっているのだろうか。Jovianと同世代であるBVやクックが仕事に精を出すのは当然として、確固とした恋愛観や人生観を持てていないことにどういうわけか安心させられる。ふとした出会いから恋愛面でもビジネス面でもシリアスな人間関係に発展するまでの経過描写が短く、確かに大人になると時間感覚が若い頃よりも格段に速くなるし、仕事も人間関係も深まるのも速ければ冷めるのも速い。そうした青年期以降、壮年期の観客は登場人物とシンクロしやすいだろう。事実、Jovianは最初から最後までライアン・ゴズリング演じるBVに己を重ね合わせていた。出会い、別れ、そして再会する。多くの関係を結んできた、そして多くの関係を壊してしまってきたからこそ、人間関係の本当の機微や価値が分かるようになる。人生の本当の意味や目的が見えるようになる。中年夫婦で観に行くことをお勧めしたい。

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ネガティブ・サイド 

ストーリーはあるにはあるが、とにかく薄い。まるで『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 』と『 アリー / スター誕生 』を足して5で割ったものから、エロ成分をマイナスしたような作品。いや、一応女性のトップレスが拝めるシーンはあるにはあるが、エロティックでは全然ない(別に脱いでくれた女優さんに他意があるわけではない、念のため)。各シーンの映像美は素晴らしいが、そのシーンに深い意味が認められない。まるで『 フィフティ・シェイズ・フリード 』を観ているようだった。つまり、眠気との勝負である。正直なところ、ルーニー・マーラが小悪魔~魔性の女風の視線や表情を定期的に見せてくれなければ、多分Jovianは2~3回は寝落ちしていたように思う。マーラの魅力に感謝である。

 

タイトルが“Song to song”であるにも関わらず、肝心かなめのキャラクターの心情はナレーションで語ってしまうのはどういう了見なのか。BVがピアノの弾き語りをしながら作曲するシーンが、かろうじて彼の心情を表しているぐらいで、全編これ会話、しかもドラマを盛り上げない雑談で進むとはこれ如何に。テレンス・マリック監督におかれては、映像美にこだわるのもよろしいが、『 はじまりのうた 』や『 カセットテープ・ダイアリーズ 』を観て、音楽で語るとはどういうことかを研究して頂きたいものである。

 

会話劇としても盛り上がりに欠ける。『 TENET テネット 』のような難解極まる会話ではなく、非常にカジュアルな会話、表面的な意味しか持たない言葉のやりとりには、いささか閉口させられた。絞り出すような言葉、丁々発止のやりとりなどはほとんど存在しないので、やはりどれだけキャラクターに自分を重ね合わせられるかが肝になる。老親の介護が現実の問題として迫ってきているというのは30代40代あたりなら我が事のように感じられるだろうが、いかんせんキャラクターの多くが音楽業界でセレブ然とした生活を送っているものだから、やはりシンクロするのは難しい。

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総評

鑑賞して評価するには、かなりの文学的素養が求められると思われる。キャラクターがどれもこれも浮世離れしていて、地に足がついていない。大人の人間関係を描いてはいるが、これを見たままに消化吸収して解釈するには、かなりの映画的ボキャブラリーが必要だ。Jovianはその任に堪えない。英語のレビューをこれから渉猟しようとは思うが、それらを読んで自分の感想が変わるとも思えない。チケット購入を検討中の向きは、娯楽作品ではなく映像芸術だと思われたし。劇場ではなく美術館に赴くようなものと心得られたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

take ~ back

~を後ろに持っていく、の意。take back ~ という形でも使われる。テニスや野球をする人なら「テイクバック」という言葉を聞いたことがあるはず。ボールを打つ前にラケットやバットを後ろに引く動作のこと。物体以外にも、コメントや約束を撤回する時にも使われる。

 

The politician never took back her comment regarding LGBT people.

その政治家はLGBTに関する自身のコメントを撤回しなかった。

 

のように使う。take backという句動詞には他にも多様な意味があるが、まずは「後ろに持っていく」、転じて「撤回する」を覚えておこう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, ナタリー・ポートマン, マイケル・ファスベンダー, ライアン・ゴズリング, ルーニー・マーラ, 監督:テレンス・マリック, 配給会社:AMGエンタテインメント, 青春Leave a Comment on 『 ソング・トゥ・ソング 』 -すべては監督と波長が合うかどうか-

『 AWAKE 』 -もっと綿密な取材を-

Posted on 2020年12月31日 by cool-jupiter

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AWAKE 50点
2020年12月29日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:吉沢亮 若葉達也 落合モトキ 寛一郎
監督:山田篤宏

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Jovianの映画以外の趣味として、ボクシング観戦、テニス、そして将棋がある。実際に2015年の電王戦も、それをさらにさかのぼる渡辺明 vs ボナンザ戦もリアルタイムで観ていた。阿久津主税 vs AWAKEに着想を得た本作はどうか。将棋の部分のリアリティが不足していたと言わざるを得ない。

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あらすじ

奨励会の大一番で幼少期からのライバル・浅川陸(若葉竜也)に敗れた清田英一(吉沢亮)は、将棋から足を洗い、大学に入学するも、将棋意外に人とのかかわりを持てない英一は孤立。しかし、自宅で父親がコンピュータ将棋をしているのを見て、大学の人工知能研究同好会に向かい、そこで磯野(落合モトキ)と出会う。英一は将棋プログラムの開発に没頭するようになり・・・

 

ポジティブ・サイド 

吉沢亮といえば『 リバーズ・エッジ 』、『 キングダム 』、『 青くて痛くて脆い 』など、どこかダークサイドを内に秘めたキャラを演じることに長けている。その力を今作でも遺憾なく発揮している。碁打ちや将棋指しは完全情報ゲームで戦っているので、建前上そして理論上は勝ち負けに運の要素はない。すべては実力で決まる(ことになっている)。そうした勝負の最中の敗北を悟った瞬間の目の演技は見事だった。また、『 聖の青春 』で東出昌大が羽生の仕草を完コピしていたのを参考にしていたのだろう。羽生の癖をよくよく研究していると思しき演技にも好感が持てた。

 

若葉竜也演じる浅川陸が阿久津主税に似ているかというと、さにあらず。現実の阿久津は、飲む打つ買うの三拍子そろった昭和気質の悪童・・・ではなく、酒とパチンコを嗜む現代的な将棋指しである。ただ、本作は阿久津のドキュメンタリーではないので、そこのディテールにこだわる必要なし。棋士とはどういったたたずまいの生き物なのか、どういった生態なのかを描出できていれば合格。その意味では、和服で対局室に向かう浅川の姿は、写真集『 棋神 』に掲載されている谷川浩司を意識したとしか思えない構図のショットあり、往年の中原誠の所作をコピーしたと思われるタイトルホルダーあり、また大山康晴の格言「助からないと思っても助かっている」を忠実に表す局面ありと、将棋ファンのノスタルジーを大いに刺激してくれる。

 

ストーリーも現実の改変度合いが適度だったと感じた。現実の電王戦2015は、双方ともに納得のいく展開でも結末でもなく、ソフト開発者にも阿久津にも賛否両論があった。そうした現実のドロドロはいったん無視して、清田と浅川を幼少期からのライバルという設定を導入したのは面白かった。棋譜を読み込むことが生活の一部だった清田が、プログラミングの教科書を読むだけで丸暗記するところは、非現実的でありながら「元奨ならありそうだ」と思えた。またプロ棋士浅川が将棋以外はからっきしの音痴であるという設定もリアルだ。漫画『 将棋の渡辺くん 』を読めばわかるが、トッププロは著しく家事家政能力やその他の日常生活関連の知識や技能に乏しいことが多い(渡辺は徐々に料理ができるようになったようだが)。プロ棋士を変に天才や超人のように描かないところも、本作のテイストに合っていた。

 

浅川とAWAKEの決戦の緊張感は、リアルタイムで当時の対局を見守っていた頃のハラハラドキドキを思い起こさせてくれた。結末が分かっていても、それでも安心できない。当時の対局の空気感を本作は見事に蘇らせている。当時を知る人も知らない人も、人間とコンピュータが激突することの意味を改めて現代に問い直すために、本作を鑑賞されたし。

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ネガティブ・サイド

人間の、特に将棋に夢破れた人間の負の感情がストレートに吐露されたイベントだった電王戦の空気が再現され、棋士の姿も将棋ファンを満足させる程度には練り上げていた。決定的に欠けていたのは、電王戦に至るまでの歴史的な経緯だ。特にボナンザのソースコードが公開されたというくだりは不要だろう。そこに言及してしまうと渡辺明 vs ボナンザが存在したことになってしまう。そうするとドワンゴが主催する電王戦というイベントの重みが急に軽くなってしまう。また、清田のメンターでありパートナーとなる磯野は「将棋は完全情報ゲームだから、それを解明しても人類の進歩に寄与しない」と吐き捨てていたが、だったら何故全幅探査型のボナンザのコードにあれほど興奮するのか、不思議でならなかった。磯野がコンピュータ将棋に前のめりになるきっかけのようなものを30秒でよいので描くべきだった。

 

ボナンザという現実のソフトの名前を出しながら、GoogleがGeegloに、WikipediaがWakipediaになっているのもいかがなものか。変えるべきは阿久津や巨瀬氏の名前であって、その他の人物や事物、出来事については現実に即したもののままで良かった。また、「私は失敗などしていない。上手く行かない方法を1万通り見つけただけだ」と嘯いたのはトーマス・エジソンだが、何故か磯野はそれを息子のチャールズ・エジソンの言葉にしている。このあたりの現実世界とのシンクロしない点がリアリティを殺いでおり、そこが大いに不満である。

 

何名かの女性キャラクターもノイズだ。浅川の姉や磯野の妹は完全に不要なキャラ。もしも登場させるなら、もっと浅川や磯野のキャラクター背景を掘り下げるために使うべきで、残念ながら本作の本筋に彼女らの居場所はなかった。

 

重大なミスも散見された。2点だけ指摘する。電王戦前の浅川の段位が「七段」 、電王戦終局直後の記者の呼びかけが「浅川八段」、そして翌日の新聞の見出しでは「浅川七段」。この大ポカに脚本段階でも撮影段階でも編集段階でも誰も気付かなかったのだろうか。もう一点はとある縁台将棋的な場面。「それは教えてもらって打ってるんだぞ」という台詞が気になった。確かに直前には持ち駒を「打った」が、その次の手は盤上の駒を「指して」いたのではなかったか。上で「碁打ちや将棋指し」と敢えて書いたが、囲碁は打つ、将棋は基本は指す、持ち駒は打つものである。将棋の素人ならまだしも、『 聖の青春 』や『 3月のライン 』では決して見られなかったミスである。製作者側の取材や勉強が不足していると感じる。

 

最後に・・・プロのタイトル戦経験者と2枚落ちで指せるガキンチョとはいったい・・・6枚落ちではなく?プロと2枚落ちで指せる(≠勝てる)=アマチュア3段レベルで、小学生になったばかりぐらいの子が・・・はっきり言って藤井聡太レベルの器だろう。つまり、非現実的だ。最後にスクリーンに映し出されるキャプションも、「今日も人間同士の戦いは続いている」などで終わっていれば、電王戦だろうと伝統的な将棋だろうと、結局は人間と人間のぶつかり合いなのだな、と納得できたのだが。

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総評

日本将棋連盟も制作に協力していたようだが、実在のプロ棋士をモデルにしたと思しきキャラクターは数えるほどしかいない。将棋界の面白さは、1.将棋というゲームの面白さ、2.将棋指したち自身の面白さ、の二つで成り立っている。将棋というゲームの面白さを映画で描くことは困難だ。だが、将棋指しの面白さを伝えることは比較的容易だろう。テレビで加藤一二三を見て「このじいさん、面白い」と多くの人が感じているではないか。浅川や清田という人間にもっとフォーカスを当てた物語を作るべきだった。ライトな将棋ファンならまだしも、生粋の長年の将棋ファンをも唸らせるクオリティには本作は残念ながら達していない。

 

私的電王戦雑感

『 泣き虫しょったんの奇跡 』で以下のように述べていたので引用する。

 

元奨の残念さという点では、電王戦FINALで21手で投了した巨瀬亮一を思い出す。FINALはハチャメチャな手が飛び出しまくる闘いの連続で、特に第一局のコンピュータの水平線効果による王手ラッシュ、第二局のコンピュータによる角不成の読み抜け(というか、そもそも読めない)など、ファンの予想の斜め上を行く展開が続いた。特に第二局は、▲7六歩 △3四歩 ▲3三角不成 という手が指されていれば一体どうなっていたのか。

 

Jovianは個人的には巨瀬氏は28角を誘導されたからといって投了すべきではなかったと今でも強く思っている。劇中でも少年時代の清田が奨励会幹事に「自分の力でどうしようもなくなったら投了するんだ」と諭されていたが、それは明確な詰みがある、一手一手の寄りで受けがない、攻防ともに見込みがないなどの局面でのこと。とんでもない悪手を指したから投了というのが許されるのは、芸術家気質の強い棋士(例:谷川浩司)ぐらいのもの。最低限、飛車で馬がボロッと取られるところまでは指すべきだった。投了するならばそこの局面であるべきだった。本作を通じてプロ棋士の姿がほとんど見えてこないのは、それだけプロが電王戦、なかんずくAWAKEの開発者の巨瀬氏に複雑な感情を抱いているからだと見ることもできる。本作で提示される清田の葛藤にどれだけ共感できるか、そこは人によってはかなり難しいのではと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

awake

劇中では動詞として紹介されていたが、実際は形容詞として使われることの方が圧倒的に多い(動詞で“眠りから覚ます”、“覚醒させる”のならawakenを使う)。職場で眠気に襲われてコーヒーを淹れてくる際に

 

I need some coffee to keep myself awake.

眠らないようにするためにコーヒーが必要だよ

 

と一声かけてみよう。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 吉沢亮, 寛一郎, 日本, 歴史, 監督:山田篤宏, 若葉竜也, 落合モトキ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 AWAKE 』 -もっと綿密な取材を-

『 マー サイコパスの狂気の地下室 』 -邦題担当者は切腹せよ-

Posted on 2020年12月27日 by cool-jupiter

マー サイコパスの狂気の地下室 50点
2020年12月22日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:オクタビア・スペンサー ダイアナ・シルヴァーズ
監督:テイト・テイラー

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YouTubeか何かでトレイラーを観て、「たまには頭を使わずサスペンスでも観るか」とTSUTAYAでレンタル。よくよく見ればオクタビア・スペンサーだけではなく『 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー 』の最後の最後でインパクトを残した同級生役のダイアナ・シルヴァーズも出演しているではないか。ホリデーシーズン向けの映画ではないが、パーティーがしづらい今だからこその映画だと割り切って鑑賞した。

 

あらすじ

マギー(ダイアナ・シルヴァーズ)は引っ越し先の学校の友だちと飲み会をすることに。高校生であるため誰か大人に酒を買ってもらおうと、通りがかった女性スー・アン(オクタヴィア・スペンサー)に依頼する。何度か彼女に酒を買ってもらっているうちに、スー・アンは自宅の地下室をパーティー用に貸してくれると言い・・

ポジティブ・サイド

オクタヴィア・スペンサーと言えば『 ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜 』、『 ドリーム 』、『 アメイジング・ジャーニー 神の小屋より 』、『 シェイプ・オブ・ウォーター 』のような優しいおばさん、強いおばさんのイメージが強かったが、『 ルース・エドガー 』や本作を通じて、キャリアの方向性を少し変えつつあるようである。人好きのするおばさんが徐々に変質していく様は非常にサスペンスフルだった。特に印象に残ったのは、ある抱擁のシーン。これはマギー視点からすれば、震え上がるしかない。オクタビア・スペンサーの円熟の演技力に磨きがかかったと言えるだろう。

 

本作はリベンジ・スリラーに分類される。スー・アンは生まれながらのサイコパスではない点に注意。というか、後天的にサイコパスになったわけでもない。学生時代にトラウマを植え付けられ、片田舎でひっそりと暮らしてきたところに、思いがけず復讐のチャンスが巡ってきたというストーリーである。田舎特有の人間関係が垣間見られ、どこか『 スリー・ビルボード 』を彷彿とさせる。限定的なコミュニティ内では人間関係も限定的になり、それゆえに濃密なものになる。問題はその濃さが人間関係のどういった要素によるものなのかだ。そうした意味で、序盤の酒盛りが警察官に見つかるシーンは、この片田舎のコミュニティの人間関係がきわめて長く、そして強く維持されてることが示唆されていた。

 

他にも最序盤の学校のシーンが終盤の伏線になっていたりと、作り自体は非常にフェアである。マーがマギー達を追い詰めていく反面で、マーも次第に追い詰められていく。Social Mediaを巧みに使い、何かあればすぐにググって対策を練るところも現代的。登場人物の心理描写を極力排して、代わりに具体的な行為を見せることでキャラクターの内面がかえってよく見える。本作には芸術映画要素はなく、徹底して商業映画である。斬新な殺し方もあるので、復讐ものが好きな方はどうぞ。

 

ネガティブ・サイド

マーのリベンジ方法の濃淡に差があるところにが不満である。Motor mouthな女子高生に「え、それやっちゃう?」というお仕置きを加える一方で、黒人少年に対してはpunishにならないpunishmentを与える。やるなら残虐に徹してほしい。

 

全編を通じて、母と娘の物語を紡ぎ出そうとしているのだろうが、そのあたりは盛大に失敗している。マギーと母親の関係性、そしてスー・アンの母性。このあたりからもっとコントラストを利かせたサブ・プロットが生み出せたはず。原題=Ma=母親というからには、子どもとの関係性をもっと追求せねばならない。同じ母親映画にしても『 母なる証明 』や『 MOTHER マザー 』と比較すれば、数段落ちる。

 

もっとスー・アンとパリピ学生以外の視点からの物語も欲しかった。ルーク・エヴァンスはもっと効果的に使えたはず。大人たちからスー・アンに抗議が行くが、当の子ども達が「スー・アンは悪くない!!」と言い張るような展開、『 ミセス・ノイズィ 』のように同じ事象を異なる視点で見つめるというシークエンスがあれば、サスペンスがもっと盛り上がったのにと思う。

 

最後にこれだけは言っておきたい。この邦題はおかしい。これは別に作品の罪ではないが、なぜにこのようなアホな副題をつけるのか。上で挙げた『 ドリーム 』も当初は『 ドリーム 私たちのアポロ計画 』という、イメージ先行かつ史実無視の酷いものだったし、効果間近の『 ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 』も、崖っぷち~の部分は不要だ。映画の宣伝会社や配給会社はもっと日本の映画ファン、さらには日本語話者の国語力を信頼すべきだ。

 

総評

典型的な a rainy day DVDだろう。純粋な娯楽映画で、ここから何かメッセージを受け取ろうなどと思ってはダメ。観終わってから「いやあ、片田舎の人間関係って怖いね」と呟いて、一か月後にはすべて忘れてしまう。そのぐらいのスタンスで観賞すべきだろう。オクタビア・スペンサーのちょっと怖い演技を堪能して、ダイアナ・シルヴァーズで目の保養をする映画だと割り切るべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Ma

「母」の意味。呼びかけで使う。Mama, Mommy, Momなどがあるが、Maという単純な呼びかけも結構使われる。テレビドラマ『 リゾーリ&アイルズ ヒロインたちの捜査線 』でも主人公のジェーンは自分の母親を常に“Ma”と呼んでいた。ちなみにmamaというのは、哺乳類=mammalや乳房X線撮影=mammographyと起源を一にする語である。母とは乳なのだ。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, オクタビア・スペンサー, サスペンス, スリラー, ダイアナ・シルヴァーズ, 監督:テイト・テイラーLeave a Comment on 『 マー サイコパスの狂気の地下室 』 -邦題担当者は切腹せよ-

『 アンダードッグ 二人の男 』 -とにかく鉄拳、やっぱり鉄拳-

Posted on 2020年12月14日 by cool-jupiter

アンダードッグ 二人の男 55点
2020年12月13日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ミンホ マ・ドンソク キム・ジェヨン チョン・ダウン
監督:イ・ソンテ

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『 アンダードッグ 』が個人的には少々消化不良気味だったため、ストーリーやキャラクターについてあまり深く考える必要のなさそうな本作を近所のTSUTAYAでセレクト。とにかくマ・ドンソクと来れば鉄拳なのである。

 

あらすじ

バイクや車の窃盗、万引き品の違法転売をしながらストリートで生きるジニル(ミンホ)たちは、バイクの転売に失敗、無一文になる。ジニルの恋人ガヨン(チョン・ダウン)が売春客を取るが、そこに現れたのはカラオケ店経営者のヒョンソク(マ・ドンソク)だった。ジニルたちはヒョンソクのクルマとクレジットカードを盗み出すが、カードの決済情報からすぐにヒョンソクに補足されてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

韓国のストリートというのは容赦の無い世界であると感じる。ストーリーとしては『 ギャングース 』に近い。刑務所上がりの半端者たちが、やはり半端な生き方しかできずに街を彷徨うところなど、韓国も日本も社会のセーフティネットの底が抜けてしまっているところは同じのようである。一方の主人公であるミンホは気の強さはあるもののケンカの腕はそれほどでもなく、頭の回転もそこまで速いほうではない。だが、恋人を一途に守ろうとする気概だけは見上げたもの。売春もしくは美人局の客がその筋の人間だった、あるいは自分の手に負える相手ではなかったというのは『 聖女 Mad Sister 』でもお馴染みの展開。ミンホがマ・ドンソクと対峙する場面では格の違いを見せつけられているのだが、ここで相手に向かっていけるのは男の証明だ。

 

そのジニルの追撃者、ソンフンを演じたキム・ジェヨンの凄みよ。モデル上がりの俳優らしいが、これは間違いなく兵役経験者、あるいはテコンドーやボクシングの心得がある。暴力シーンが生々しい。パンチの放ち方が素人ではない。そして狂人そのものの目つき。ジニルらを追いかける目つき、仲間に半笑いで謝罪を要求する時の目つきなど、クスリをやっている人間のそれとしか思えない。『 アジョシ 』の噛みつき攻撃にも驚嘆したが、本作でソンフンは禁断のサッカーボールキックを披露。こんなのは『 デッドプール 』ぐらいでしか見たことがない。演技者としてのキャリアは浅いようだが、それでもこれだけの演技を見せるのは本人の才能と努力か、それとも監督の演出力か。イってしまった目のソンフンと『 息もできない 』のサンフンの対決を、個人的に見てみたい。

 

マ・ドンソクもいつも通りの剛腕キャラなのだが、家族、特に娘という明確な弱点を持つことで、ガキンチョたちとある意味で対等の地点に引きずり下ろされてしまう。それによって本来の力関係ならば生まれることのないスリルやサスペンスが生まれている。表社会と裏社会のちょうど中間に生きるような存在で、冷酷無比に見えて、実は血も涙もあるタイプ。こういうキャラクターは確かにマブリーの得意とするところなのだろう。

 

ジニルたち、マ・ドンソク、そしてソンフンの三つ巴の争いがラストに収れんしていくプロセスは非常にスピーディーだ。クライムドラマとしても見応えがある。頭を空っぽにして90分鑑賞できる作品である。

 

ネガティブ・サイド

クライマックスの展開があまりにも衝撃的すぎて、これは減点対象である。普通に最後はヒョンソクがミンホにもサンフンにも鉄拳制裁し、サンフンは刑務所に送り返し、ミンホとガヨンはヒョンソクのカラオケ店で死ぬまで働く・・・ではダメだったのだろうか。このエンディングは、最後の最後に監督がすべてを放り出したかのように映る。

 

警察が無能というのは韓国映画の鉄則だが、それでもジニル4人組をここまで放置というか、犯罪をさせておくだろうか。4人組でつるんでいる窃盗団など、すぐに捕まりそうなものだが。まあ、韓国映画の警察にツッコミを入れるのは野暮というものか。邦画の警察とは違うのだ(邦画の警察も、最近ちょっと怪しくなってきているが)。

 

ジニルの実父の遺産のエピソードは不要。完全にノイズだった。マ・ドンソクがカードと車を取り返しにやって来た時に「育ててくれた叔父さんを裏切るとは」という内容をアリバイ作りに喋っていた内容が伏線になっていたのは感心するが、ならば本当にジニルが叔父さんを裏切ったエピソードを臭わせるべきだった。ジニルがstreet smartなバッド・ボーイでないと、他の仲間たちとの連帯感の説明がつかなくなる。

 

そのジニルの仲間のボンギルに、見せ場が一つもないとはこれいかに。「ここでアイツに礼を言わないと一生後悔しそうだ」と格好いいセリフで出陣しながら、ソンフンに文字通りに一蹴されるとは・・・ 同じことはボンギルの彼女のミンギョンにも当てはまる。

 

総評

『 スタートアップ! 』からコメディ要素を抜いて、『 悪人伝 』の三つ巴の争い要素をプラスしたような作品である。面白さとしては『 スタートアップ! 』 < 本作 <『 悪人伝 』である。別にマ・ドンソクでなくともよかったのではないかと思う(キム・ユンソクやチェ・ミンシクが良かったというような意味ではない、念のため)。これも典型的なrainy day DVDだろう。自粛を強制されそうな週末もしくは長期休暇時のお供にするのがよいかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イーセッキ

『 スタートアップ! 』でも何十回と聞こえてきたが、本作でも同じくらい聞こえてくる表現。意味は「この野郎」。北野武映画を韓国語に訳した時にも、イーセッキが何十回と字幕もしくは吹き替えで使われるのだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, キム・ジェヨン, クライムドラマ, チョン・ダウン, マ・ドンソク, ミンホ, 監督:イ・ソンテ, 配給会社:マクザム, 韓国Leave a Comment on 『 アンダードッグ 二人の男 』 -とにかく鉄拳、やっぱり鉄拳-

『 記憶の技法 』 -ミステリ要素が弱い-

Posted on 2020年12月6日 by cool-jupiter
『 記憶の技法 』 -ミステリ要素が弱い-

記憶の技法 55点
2020年12月2日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:石井杏奈 栗原吾郎
監督:池田千尋

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タイトルだけでチケット購入。販促物を見ても「ドンデン返し」や「衝撃の展開」などという惹句は見当たらない。こういう作品にこそドンデン返しや衝撃の展開が潜んでいるはずと期待して劇場に向かったが、期待は裏切られた。プロモーションとはかくも難しい。

 

あらすじ

華蓮(石井杏奈)は幼少時の謎の記憶のビジョンを見ることがあった。修学旅行で韓国に行くことになった華蓮は戸籍謄本から自身に姉がいて、さらに自分は養子だったことを知る。自分の出自や記憶の謎を探るため、華蓮は修学旅行をキャンセルし、同級生の怜(栗原吾郎)の強力の元、福岡へ向かうが・・・

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ポジティブ・サイド

なかなか現代風なテーマを孕んでいる。移民大国となった日本の学校には、いわゆるハーフ(今後はダブルやミックスという呼称が一般的になるだろう)の子ども達がたくさんいる。同時に『 朝が来る 』絵にがかれたような養子もますます市民権を得ていくことだろう。そうした子ども達が大きくなる過程で自身のアイデンティティを問うことになるのはとても自然なことだ。両親はひそひそ話しているのを偶然にも聞いてしまい・・・というテレビドラマ的展開ではなかったところは評価したい。

 

劇中では明示されないが、華蓮のお供をすることになる怜も、おそらく祖父母あたりがミックスで、自身にたまたま劣性遺伝の青い瞳が発現したのではないか。裕福な家の出であらながら cast out されていることが暗示されている。怜が華蓮の旅に同行することによって、観る側はある種の「連帯感」を与えられる。安易なロマンスの予感を漂わせないところも良い。

 

怜の機転の良さやさりげない配慮が随所にあり、頼りない華蓮を支えるという演出が随所に光る。福岡の郊外で断片的な記憶のその先を思い出すシーンは非常にリアルだった。Jovian自身もハネムーンで訪れたカナダのホテルが、10代の時に宿泊したホテルと同じだと気づいた瞬間の脳内の奇妙な時間の流れ方をよく覚えている。その時は、ホテルのロビーの動物のオブジェを見て思い出したのだが、まさにこのオブジェが劇中で言うところの「検索ワード」だったのだろう。

 

華蓮の記憶のビジョンに映る女の子、そして最初からその存在が明示されていたもう一人の人物の造形も巧みだ。ちょっと老け過ぎだろうとは思うが、その影のある生き方には大いに説得力がある。またも卑近な例になるが、Jovianの備前市時代の同級生も、父親が犯した犯罪のせいで残された家族は逃げるように岡山を去った。しかし、その息子は岡山に帰ってきているのである。記憶、過去、出自。自分にとってあやふやなものであっても、確実に存在するそのようなものに、我々は翻弄されて生きている。けれど、そうした曖昧模糊としたものが確固たる意味を持つ時、人は強くなれるし、希望を抱いて前に進んでいける。本作からはそうしたことを感じ取ることができた。

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ネガティブ・サイド

色々なキャラクターの一貫性がないと感じられた。主人公の華蓮も、新宿の夜の街に制服姿で行くことができる、というよりも未成年お断りのバーを何軒も渡り歩く度胸があるのなら、両親にじっくり話を聞いてみるべきではないのか。警察に補導されることを全く恐れていないのなら、もう一歩踏み込んで両親に尋ねてみるべきではなかったか。自分で役所に行けるなら、新宿駅のINFORMATIONなどに足を運べば、どこで新幹線のチケットが取れて、どこで高速バスのチケットが取れて、宿の手配はどこそこの旅行代理店が・・・と親切に教えてくれるだろう。というか、スマホを持っていないのか、それとも極度の箱入り娘なのか。華蓮の積極性と消極性のアンバランスさが物語のリアリティを損なっている。

 

東京―福岡―釜山の記憶を巡る旅・・・というのは羊頭狗肉であった。というか、釜山は記憶に関係ないやろ・・・。非常にローカルな事件と見せかけたその裏に国際的なスケールの犯罪が・・・と深読みした自分が愚かだったと思うことにしよう。

 

旅の中でもう一人の主人公であるべき怜の因果が掘り下げられなかったのも残念だった。自分の家族が自分の本当の家族ではないという華蓮に、同病相憐れむ形で協力することになるのだが、何か一言、その複雑な胸中を吐露するシーンがあってほしかった。「修学旅行よりも、こっちの方が面白そう」だけではなく「一人でいるより皆といる方が独りだ」みたいなセリフがあれば、華蓮の旅について行き、あれこれと助けてくれることの理由の説明としては十分だったはずだ。

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総評

非常に静かな立ち上がりそのままに、ラストまで静謐な雰囲気を維持したまま収束していく。けれども、登場人物の内面は大きく変化している。日本的かつ現代調のビルドゥングスロマンとしては及第点であろう。しかし、ミステリ部分の演出が貧弱で、謎解きの感覚は味わえない。華蓮と怜の真相探しの旅にもっとミステリ要素があれば、ドラマも盛りあがったのではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a 30% interest rate

「3割増し」の意味。厳密には「30%の金利」の意。利子付きで返済する=give back the money with an interestは、金融・信販関係の人間なら押さえておきたい表現。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 栗原吾郎, 監督:池田千尋, 石井杏奈, 配給会社:KAZUMOLeave a Comment on 『 記憶の技法 』 -ミステリ要素が弱い-

『 フード・ラック!食運 』 -焼肉愛〇 映画愛△~×-

Posted on 2020年11月22日 by cool-jupiter

フード・ラック!食運 50点
2020年11月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:EXILE NAOTO 土屋太鳳 りょう 石黒賢 松尾諭
監督:寺門ジモン

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『 ハルカの陶 』で書いてしまったが、Jovianの実家は焼肉屋であった。自分でも店に短期だが関わったことがあるし、家族で焼肉研究をしていた時期もある。今年の4~5月、さらにその後にも続く飲食業界の惨状を焼肉業界は1996年のO-157、そして2001年の狂牛病ですでに経験していた。だからこそ今も存続している、あるいは新規にこの業界にチャレンジしてきた店には個人的には満腔の敬意を表している。ちなみに監督の寺門ジモンは顔も名前も知らなかったし、今も知らない。嫁さんから「ダチョウ俱楽部やん!」と言われたが、ダチョウ倶楽部というのも名前しか知らない。浮世離れと言わば言え。

 

あらすじ

類まれな食運を持つ良人(EXCILE NAOTO)は、新庄(石黒賢)の依頼で竹中静香(土屋太鳳)と組んで、本当においしい焼肉屋だけを取り上げたグルメサイトを立ち上げることに協力する。静香と二人であちこちの名店を訪れていく良人は、やがて自らの実家、「根岸苑」と母・安江の味の秘密にも迫っていくことになる・・・

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ポジティブ・サイド

焼肉愛が画面を通じて伝わってくる。なんでもかんでも炭火を良しとする向きがあるが、劇中で良人の指摘する通り、炭火はムラがある。本当に炭火に特化した焼肉を提供するなら、タンもカルビもロースもホルモン系もすべて切り方や厚みを変えなければならない。本作はガス焼きの店ばかりが登場し、そのいずれもが薄切り肉に特化している。この一貫性は見事である。

 

また焼肉という料理の特性もしっかりと捉えた議論ができている点も素晴らしい。焼肉というのは一部のお好み焼きや鍋料理と並んで、最後の調理部分を客が担う料理である。だからこそ、店は客と信頼関係を結んでいて、場合によっては一見さんお断りも可能になるとJovianは解釈している(そういう意味では寿司屋の一見さんお断りは意味がちょっとわからない)。良人が焼き方にとことん真剣にこだわる姿勢は元焼肉屋として非常に好ましいものとして映った。

 

良人というキャラが食のライターとして葛藤するところも良い。自分の書いたものが正しく解釈されず、店を苦境に追いやってしまう。それはとても恐ろしいことだ。実際にそうした影響力を持つ個人というのは存在するし、ごく最近でもとある前科者のIT実業家が餃子店の経営を窮地に追いやった。Jovianも映画の出来をコテンパンに酷評することがあるが、それによってダメージを受けている人がいるのかもしれないと感じた(ただし、自分はクソ作品にも美点を見出す努力を忘れていないつもりである)。良人のまっとうな人間としての感覚が、彼の人間ドラマの部分、すなわち母親との関係性や食への向き合い方にリアリティを与えている。

 

相棒となる竹中静香というキャラも悪くない。はっきり言って仕事ぶりはちょっとアレだが、その分、良人の母親への接し方に素の人間性がよく出ていたように思う。余命いくばくもない人間には元気に接するぐらいでいい。息子のパートナーとなるかもしれないと母親に予感させるような女性は、妙にへりくだるよりも堂々としているぐらいがいい。土屋太鳳も年齢的に演じる役柄の転換点を迎えているが、女子高生役ではなく新卒社会人役をまずは違和感なくこなせていた。そして安江役のりょうの若作りと病床での痩せ具合。首筋にしわが大きく見えていたのは、特殊メイクではなく本当に減量した結果なのだろうと思わせてくれた。本作はある意味で一から十まで安江の幻影を追うストーリーである。様々な焼肉職人らと時代や地域を超えて協業してきた安江とその夫のストーリーは描かれることはないものの、その立ち居振る舞いと存在感でキャラクターの重厚性を表現したのは見事の一語に尽きる。

 

焼肉を提供する側の努力や工夫をさりげなく見せているところも好感度が高い。エンドクレジットで一瞬映る厨房には包丁がパッと見で10本ほどあった。Jovianの実家は8本。回らない寿司屋だと1~4本ぐらいが多い気がする。焼肉屋は実は日本で一番包丁を使い分けているところなのだ。また熟成肉を解体するシーンが見られるところもポイントが高い。なぜそれが熟成肉だと分かるのか。店で解体しているからだ。つまり、〇月×日から□月△日まで冷蔵庫で寝かせておいたということが証明できる。今はどうか知らないが、20年ほど前は「熟成肉でござい」と言って売ってくる業者もいたのである(しかも港のマイナス60度とかの倉庫で半年眠っていたような肉)。上等かつ良心的な焼肉屋の舞台裏を大スクリーンで見せるところに寺門ジモンの肉愛が感じられる。エンドクレジットというのが心肉い、いや心憎いではないか。

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ネガティブ・サイド

寺門ジモンに焼肉愛があることは分かったが、映画愛はそれほどでもないのだろう。愛とは愛情だけではなく造詣や、新境地を切り拓いてやろうというフロンティア・スピリットは感じ取れなかった。たとえば「焼肉が最高の演技をしたらどうなる?」とトレイラーは散々煽ってくれたが、果たして肉に熱が加えられていく様をこれまでにない角度で撮影できたか?その音をこれまでにないクオリティで録音できたか?全くダメだった。肉の焼ける様を鉄板や網の裏側から映す、あるいは俯瞰視点からズームインして秒単位で経時的に肉の表面の焼き色がどう変化していくかを捉える“通”の目線など、新規の実験的なカメラワークはまったくなかった。音響にしても同じで、肉が焦げ、脂がはじける音に究極的にフォーカスしたか。一切していない。既存の映画の調理シーンとなんら変わることのないアプローチで、これで「焼肉が最高の演技をした」ところを捉えたとはとても言えない。肉好き、肉通ではあっても映画好き、映画通の作劇術ではない。

 

ストーリーにも説得力がない。本物の店だけを掲載するサイトを作るというが、そんなものの需要がいったいどこにあるのか。Jovianは食べログを盲信してはいないが、集合知というものに対しては楽観的な見方をしている。ごく少数の人間が意見や情報を世に発信するというのはインターネット以前のマスメディア的な権威のやり方そのものであり、敢えて時代に逆行するやり方を採用するからには、既存の集合知(たとえば食べログ)の弱点を修正する、あるいは補完するという意義が必要である。だが結局やっているのは古山というもう一人の権威者との対決で、だったら食べログなどの設定は一切無視して世の中の権威と称される人間に挑戦していく筋立てにするか、食べログには乗らない上質なお店を丹念に救い上げていく筋立てするか、そのどちらかで良かった。安江と良人の関係性を描いていくのなら前者だけにフォーカスすればよく、やたらと「食べログが~、食べログで~」というのは単なるノイズになってしまった。

 

また良人が食運を持っているという設定がまったくもって活かされていない。独特の感覚で上手い店を発掘するという才能も、結局は冒頭の一軒だけ。あとはすべて静香に連れられて行く食べログで星が云々の店がメイン。せっかくの食運という魅力的な属性設定が台無しの脚本である。また静香も正攻法の取材をするのか覆面取材をするのかがはっきりしない。このあたり、脚本を通読した時に誰も何も思わなかったのだろうか。

 

全体的に肉にばかり目が行ってしまい、焼肉屋のその他の工夫を救い上げられていない。冒頭で古山と鉢合わせする店は無煙ロースターがあったにもかかわらず、もくもくと煙が上がっていて、「これは煙とにおいに関するうんちくが聞けそうだ」と期待したが何もなし。その他の無煙ロースターを敢えて使わない店で「いよいよ何か語ってくれるか?」という店でも何もなし。それやったら最初の店は煙の演出いらんやろ・・・結局のところ、牧場の直売契約や仲買業者との付き合いができるかどうかで手に入れられる肉の味は大きく左右される。であるならば焼肉屋で本当に見るべきところはタレや各種調味料であったり、キムチやスープ類などのサイドメニューである。そのあたりをもう少し物語に組み込むべきだったと思う。

 

ひとつ気になったのが和牛と米国産輸入牛の違いを良人が古山と議論していた場面。「お、禁断の和牛と国産牛の違いに触れるのか?」と期待したが、それは無し。興味のある方は「和牛 国産牛 違い」でググられたし。日本の食肉業界および行政の闇が垣間見えることだろう。

 

余談だが、Jovianの実家の店のタレは醤油ベースの至ってノーマルなものだったが、隠し味にピーナッツを炒ったものを粉末にして混ぜていた。同じくキムチも至ってノーマルだったが、味付けのために殻をむいたエビを電子レンジで15~20分加熱してパリパリにしたものをゴマすり器で粉末状にしたものを一緒に漬け込んでいた。良い機会なのでここに記録を残しておく。

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総評

肉通には面白い作品かもしれないが、では映画通を唸らせるか?というとはなはだ疑問である。お笑い芸人が映画監督をやってみましたという作品なら『 洗骨 』の方が優っている。こうして考えてみると北野武というのは相当に特異な才能の持ち主なのだなとあらためて思わされる。焼肉好きなら劇場へ行こう。映像美やドラマを求めるなら、スルー可である。

 

Jovian先生のお勧め焼肉屋 

岡山県岡山市の焼肉韓国料理 『 南大門 』

肉も内蔵も鮮度抜群。ユッケやナマセンも超美味だった。岡山の親戚、ホテルOZやホテルmesaのオーナー御用達の名店。もう7~8年行っていないが、食べログによるとまだまだ頑張っているようだ。

 

大阪府大阪市の『 万両 』(南森町店)

某法律事務所の専従経営者の方のお勧め。グルメリポートをやる芸能人やアナウンサーは極度のボキャ貧で「美味し~、やわらか~い」ぐらいしか言えないが、それは主に「脂」の味と触感。ここは「肉」の味と触感を重視している。肉の繊維質まで味わえる、王道でありながら数少ない焼肉屋。

 

大阪府大阪市の和匠肉料理 『 松屋 』(阪急うめだ本店)

文の里の商店街のポスターの文句「いいものを安くできるわけないやろ!」の精神を発揮して、「いいものやから高いに決まってるやろ!」で商売している。肉の柔らかさと噛み応えの両方を堪能させてくれる稀有な店。Jovianは夫婦の誕生日や結婚記念日に行く。それぐらい値段が高く、しかしプレミアム感のあるお店。機会があればぜひ来店されたし。ちなみに『 松屋 』はJovianの大学の後輩の弟が現社長だったりする。

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, EXILE NAOTO, ヒューマンドラマ, りょう, 土屋太鳳, 日本, 松尾諭, 監督:寺門ジモン, 石黒賢, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 フード・ラック!食運 』 -焼肉愛〇 映画愛△~×-

『 ホテルローヤル 』 -細部の描写に難あり-

Posted on 2020年11月20日2022年9月19日 by cool-jupiter

ホテルローヤル 40点
2020年11月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:波瑠 安田顕 松山ケンイチ
監督:武正晴

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武正晴監督は、基本的に可もなく不可もない作品を量産する御仁であるが、時に『 百円の恋 』のような年間最優秀作品レベルの映画を時折送り出してくる。本作はどうか。やはり可もなく不可もない出来栄えであった。

 

あらすじ

雅代(波瑠)は大学受験に不合格したことから、家業のラブホテル経営を手伝うことに。しかし、頼みの母が不倫相手と出て行ってしまい、父と二人でホテルを切り盛りすることに。雅代はホテルで働く従業員や、ホテルの客の人生の様々な一面に触れていくことになり・・・

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ポジティブ・サイド

役者陣はいずれも頑張っている。安田顕のオーナーっぷりは堂に入ったものだし、出番こそ少ないものの夏川結衣は milfy なオーラを発していた。余貴美子が呆然自失とした表情で歌う様は、とてもサブプロットとは思えない迫力があった。

 

ラブホテルに来るお客もユニークだ。特に中年夫婦の風呂場での語らいとまぐわいには大いに説得力を感じた。Jovianはとある受講生だった産婦人科の先生に「妊娠は通常ではないけれど正常で、決して異常ではない」と教わったことがある。これを少々言い換えさせてもらえれば、「セックスは日常ではないけれど正常で、決して異常ではない」となるだろうか。若者の恋愛やセックスよりも、中年夫婦のセックスの方が見ていて癒される。これはむずがゆくも新しい発見であった。

 

波瑠は『 弥生、三月 君を愛した30年 』と同じく、高校生から大人までを演じ切った。常にアンニュイなオーラを醸し出しながら、優しさもありならが激情も秘めていた。父親に対してのみ気持ちを言葉にして発するが、それ以外は基本的に表情や立ち居振る舞いで表現しているところが好ましく映った。ラスト近くで服を脱ぐ所作もGood。長回しのワンカットだったが、カメラの距離やアングルを完璧に把握して、“期待させる”シーンを生み出していた。

 

踏切で過去と現在が交錯する演出も面白かった。性とは生であり正なのかもしれないと、ほんの少しだけ感じた。

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ネガティブ・サイド

ラブホのバックヤードにリアリティが感じられない。Jovianには岡山県でラブホをいくつか経営している親戚がいる(岡山県でこの映画のタイトルっぽいホテルを見かけたら、ぜひご利用いただきたい)。なので、親戚を尋ねた時に2度ほど舞台裏をのぞかせてもらったことがある。まず、声などは絶対にバックヤードまで漏れ聞こえてこない(隣の部屋の声が聞こえることはあるが)し、もし構造上それが可能であるならばただちに是正されているはずだ。親戚に言わせると年に1回ぐらい警察がやってきて、ホテルの隅から隅まで見て回るのだ。おそらく仕事をしているふりなのだろうが、行政指導、下手をすれば営業許可の取り消しを食らいかねない建造物の欠陥を何年も何十年も放置するか?信じがたいことだ。

 

またオバちゃん連中の仕事がベッドメーキングばかりで、ラブホの仕事で一番大変とされる泡風呂の後始末については何も描かれなかった。観客のかなりの数がラブホユーザーの生態に興味があると同時に、ラブホを経営・運営する人間に興味があって劇場に足を運んだはず。そうしたラブホを支える仕事人たちのプロフェッショナリズムが映し出されなかったのは残念である。

 

火災報知機のシークエンスは場面のつなぎがおかしかった。廊下に客が溢れ出してきたのに、雅代が携帯で通話し始めると全員がパッと消えた。編集の時点で奇妙さに気が付かなかったのだろうか。

 

メインキャストは頑張っていたが、一部の俳優はミスキャストであるように感じた。特に伊藤沙莉の女子高生役は無理があるし、キャバ嬢の真似事も妙に似合っているせいで、逆にシラケてしまった。というか、武監督は何をどう演出してリアルなキャバ嬢を伊藤に演じさせたのだろう。馬鹿な女子高生が馬鹿なことをやっているという絵を撮りたければ、リアルにキャバ嬢を演じさせる必要はないだろう。上手な演技ではなく下手な演技を指導することも時には必要である。

 

その伊藤沙莉とホテルにやってくる岡山天音の演技・演出面はもう一つ。嘔吐したなら最後に「ペッ」とやりなさいよ。そして口ぐらい拭いなさい。すぐ目の前にトイレットペーパーがあるのだから、それを使えばいいのに、何をダラダラとセリフをしゃべっているのか。仮に酔っぱらって吐いたという経験がなくとも、それぐらいの演技はできるだろう。それとも武監督の手抜きだろうか。

 

雅代が最後にボソッと呟く「あまりに久しぶりなので忘れてしまいました」という台詞も引っかかった。ご無沙汰なのは良いとして、では最後の経験はいつ、どこで?少なくともそれを感じ取らせるようなシーンは必要だったと思う。八百屋の同級生の言う同窓会がそれにあたるのかもしれないが、だったら同窓会で酒を飲んでため息をつく雅代のシーンを挟んでおけば、観る側が脳内で保管できる。手間がかかるのは百も承知だが、そうしたちょっとしたひと手間が作品のクオリティを高めるのである。

 

総評

コメディかと期待して劇場に行くと面食らうだろう。様々なヒューマンドラマが展開されるが、ちょっと非日常感が強めで、そこを肯定的に捉えるか否定的に捉えるかは観る人による。ただし、細部のリアリティについては神経が行き届いているとは言えないし、物語が放つメッセージも極めて不明瞭である。波瑠のファンなら鑑賞しても損はないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I no longer have a home to return to.

伊藤沙莉演じる女子高生の言う「もう帰る家がない」という台詞の私訳。a home to return toで一種のセットフレーズである。どういうわけか a home to go back to だとか a home to get back to という言い方はほとんどしないし、a home to return to という表現も、おそらく九分九厘は否定形で使われる。a moment of glory を求めてのone night stand の結果、“I no longer have a home to return to.”となる人間が一定数生まれるのも人の世の常であろうか。

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