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『 アリー / スター誕生』 -脚本に現代的な味付けが足りない-

Posted on 2018年12月27日2019年12月6日 by cool-jupiter

アリー / スター誕生 40点
2018年12月22日 にて鑑賞
出演:ブラッドリー・クーパー レディー・ガガ
監督:ブラッドリー・クーパー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20181227140025j:plain

バーブラ・ストライザンドや、古くはジュディ・ガーランドにまでさかのぼるスター誕生物語の系譜が現代の歌姫、レディー・ガガに受け継がれた。ガガの歌唱力と意外な演技力、ブラッドリー・クーパーのカリスマ性をもってしても、しかし、これは残念ながら凡作の烙印を押されることを免れ得ないだろう。

 

あらすじ

アリー(レディー・ガガ)は、昼はウェイトレスを、夜は場末のバーで歌いながら、歌手になる夢を見ていた。そのバーに、有名ミュージシャンのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)が来店。アリーの歌に魅了されたジャクソンは、彼女を自分のコンサートの舞台に立たせる。喝采を浴びたアリーのキャリアとロマンスが動き始める・・・

 

ポジティブ・サイド

“Shallow”と“Always Remember Us This Way”は素晴らしい。容易に歌詞が視覚化されてくる。それは映画のシーンとそれだけシンクロ率が高いからだ。極端な例を挙げれば、あのゴジラのテーマを聞けばゴジラが思い浮かぶし、ジョン・ウィリアムズのSuperman’s Themeを聞けば、クリストファー・リーブが思い浮かぶ。最近だと、ハンス・ジマーのワンダー・ウーマンのテーマがキャラを完璧に体現する傑作だった。冒頭の二曲は、本作を思い起こす上で絶対に欠かすことのできないピースになっているとさえ言える。

 

また、ガガの意外な素顔というか、彼女は普通の格好をしてノーメイクまたはかなり薄いメイクぐらいが最も美しいという意外な発見もある。露出多めの衣装も着てくれるし、入浴シーンやラブシーンもかなりある。スケベなビューワーも期待してよろしい。実際、ブラッドリー・クーパーはこういうシーンがやりたくて自分で監督及び主演をしたんじゃないのかと勘繰られても文句は言えまい。そういえば、シルベスター・スタローンもその昔、『 スペシャリスト 』という何とも微妙な映画で一部のファンや批評家から批判されていた。曰く、「シャロン・ストーンとベッドシーンを演じたかっただけじゃないのか」と。それでも、本来は歌手であって女優ではなかったはずのガガがここまで体を張ってくれるのだから、映画ファンは眼福とばかりに思わず、その表現をしかと受け止めねばならない。

 

個人的には映画のピークは駐車場のシーンかな。何気ない会話にこそ本当のドラマがあるように思う。『 ロッキー 』でエイドリアンとロッキーが無人のスケートリンク内で語り合うシーンこそが、Jovian的には the most romantic moment ever in filmなのだが、夜の駐車場シーンにも似たような趣があった。

 

ネガティブ・サイド

アメリカの成功者とは、なぜ酒、ドラッグ、女に溺れて身を持ち崩すのだろうか。そういうのは『 ウルフ・オブ・ウォールストリート 』などで散々見てきたし、冒頭のジュディ・ガーランドへのオマージュであろうか、アリーの歌う“Over the Rainbow”が夢の国への旅立ちとそこでの試練、そして現実への回帰を予感させる。それはかつて何度もリメイクされてきた本作のストーリーのフラクタルでもあるだろう。それでも、この物語の陳腐さはもう少しどうにかならなかったのだろうか。雌伏、雄飛、成功、愛憎、別離、そして悲劇と、今日日の韓国ドラマでももう少し何らかの手を加えてくるだろうという、その起伏そのものが余りにも平板に感じられてしまうストーリー展開。はっきり言って、ガガの成功と歌唱力、パフォーマンスを我々があらかじめ知っているからこそ感情移入できるし説得力も生まれているのだが、これが誰か別のキャスト、たとえば歌唱力抜群だが、本当に自分の容姿容色にコンプレックスを抱いているような若い女性を起用したらどうなっていただろうか。恐らく、何の変哲もない凡百の作品との評価を受けて終わりだろう。それほど、本作のプロットは平々凡々である。

 

また現代というテクノロジーの転換期にある時代、梅田望夫の言葉を借りるならば「総表現社会」においては、すでに類似の事例がいくつもある。スケールはまったく異なるが、少し古いところではニコニコ動画初のKURIKINTON・FOXがメジャーデビューを果たしたり(その後、色々あったようだが・・・)、現在でも米津玄師やDAOKOなど、インターネット上のプラットホームからメジャーデビューを果たすという事例は、もはや珍しいものではなくなっている。また、海外の事例を挙げるとするならば、Rod Stewartに見出されたグラスゴーのストリート・パフォーマー、Amy Belleであろう。“I don’t want to talk about it”のデュエットは、始めて見た時、文字通り鳥肌が立った。

 

ことほど左様に、本作のストーリーは現実世界によってそのファンタジー性を剥ぎ取られてしまっている。YouTubeでバズったというだけでは現代に本作をリメイクする意味が無い。もっと新しいアイデアが盛り込まれてしかるべきだった。クーパーの嗅覚も少し鈍ったのだろうか。個人的には、ジャクソンとアリーは、RodとAmyのデュエットを超えなかった。

 

総評

映画としては普通の面白さである。ここで言う普通をどう捉えるかは観る人次第である。ガガやクーパーのファンであれば観るべきだ。しかし、『 ボヘミアン・ラブソディ 』と比較してはならない。音楽も演技も演出も映像も、『 ボヘミアン・ラブソディ 』に軍配が上がる。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, ブラッドリー・クーパー, ラブロマンス, レディー・ガガ, 監督:ブラッドリー・クーパー, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 音楽

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