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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: B Rank

『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

Posted on 2024年12月17日 by cool-jupiter

地獄でも大丈夫 70点
2024年12月14日 第七藝術劇場にて鑑賞
出演:オ・ウリン パン・ヒョリン チョン・イジュ
監督:イム・オジョン

 

風邪でダウン中のため簡易レビュー。

あらすじ

いじめに苦しむナミ(オ・ウリン)とソヌ(パン・ヒョリン)は、修学旅行に参加せず、二人で心中をしようとするも断念。死ぬ前に、いじめグループのリーダーだった、現在はソウルにいるチェリン(チョン・イジュ)に復讐するため、2人だけの修学旅行へと旅立つが・・・

ポジティブ・サイド

韓国や中国、アメリカの映画はいじめを真正面から描くことが多いが、本作はいじめっ子に立ち向かう過程にロードムービーかつバディものの要素を取り入れたところが新鮮。

 

復讐しようとした対象が、思いがけない姿に変わってしまっていたというところも意外性があり、面白い。そして、そんな相手に対峙した自分の心境がどう変わったのか、あるいは変わらなかったのかを素直に吐露する場面の緊迫感も素晴らしかった。

 

ナミとソヌの女の友情の中にもとんでもない爆弾が仕込まれていたりと、どうしてなかなか練られた脚本。物語の行き着く先は韓国アニメ映画『 フェイク 我は神なり 』や、日本では『 星の子 』あたりと同じく宗教的な方面へ。信じる者は救われると言うが、救われるべきは信じる者とは限らない。日本でも宗教二世の問題がやっと認知されつつあるが、歴史上の宗教戦争の99%が経済的搾取が目的だったように、歴史上の不況の99%はビジネスなのである。

 

いじめとは異なる地獄を体験するナミとソヌだが、そんな二人が旅路の果てに見出した真理は陳腐ではあるが尊い。願わくば、二人が『 ソウルメイト 』のようにならないことを祈るばかりである。

ネガティブ・サイド

序盤の自殺失敗シーンだが、あれでは実は助けられないのでは?重力とは上から下向きに作用するので、本当に助けるためには真下から真上に力を与えなくてはいけない。

 

楽園とは何だったのだろうか。いや、想像はつくが、もう少し明示的にしてくれてもよかったのではなかろうか。

 

総評

イム・オジョン監督はこれが長編デビュー作だという。ビジュアル感覚や役者の表情の切り取り方などで、すでに自分のスタイルを確立しているように感じられた。インディー映画のように撮影して商業映画のように成立させる監督というのは、韓国にはちらほらいるが、日本ではほぼ見当たらない。そういう意味でもお国柄および国のバックアップ体制の違いが見て取れる作品。シスターフッドものが好みなら、ぜひ劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャムカンマン

「ちょっと待って」の意。ただし「待つ」という動詞はここにはなく、「ちょっと」という副詞だけがある。英語にすると Just a minute あたりだろうか。 日本語同じく、不可解な状況などに接した時にも発せられる。英語で言う “Wait a minute.” と同じ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 レッド・ワン 』
『 ライオン・キング:ムファサ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, オ・ウリン, チョン・イジュ, パン・ヒョリン, 監督:イム・オジョン, 配給会社:スモモ, 青春, 韓国Leave a Comment on 『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』 -内野聖陽のベストアクト-

Posted on 2024年12月12日 by cool-jupiter

アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 70点
2024年12月8日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:内野聖陽 岡田将生 小澤征悦
監督:上田慎一郎

 

『 カメラを止めるな! 』の上田慎一郎監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

税務署員の熊沢(内野聖陽)は詐欺師の氷室(岡田将生)に大金をだまし取られてしまう。親友の刑事の手を借りて氷室を追っているところ、氷室の方から返金と協力の申し出が。熊沢の追っている巨額の脱税犯、橘(岡田征悦)からカネを詐取してやると言って・・・

ポジティブ・サイド

これは内野聖陽のキャリアの中でもベストの演技である。人情味を持った税務署員であり、若手の良き先輩・上席であり、良き夫、良き父であり、友情にも篤い男である。様々な顔を見せつつも、その奥底に秘めた芯の強さが感じられた。すまじきものは宮仕えとは言うが、公務員ながらも上司にくらいつく気概にはサラリーマンとしてしびれた。

 

地面師が世間をにぎわせたのはかなり前だが、そのニュースのインパクトは巨大だった。なので、本作を鑑賞する多くの層も積水ハウスの事件を念頭に置いて鑑賞したはず。つまり、詐欺師側を応援・・・とは言わないまでも、どのような手口で大企業=金持ちを騙すのか、興味津々だったことは間違いない。

 

実際にあの手この手で橘に近づき、旨そうな土地をちらつかせ、その取引の場をでっちあげる。その過程も真剣に、かつ面白おかしく描かれる。特に〇〇〇〇業者の男がポイントで、この男が無邪気に・・・おっと、これ以上はやめておこう。

 

多士済々の詐欺師軍団はさながら『 オーシャンズ11 』のようだが、上田慎一郎監督はここに自身の大好きな芝居の要素をふんだんに盛り込んだ。詐欺師軍団全員で役を演じるのだ。小道具大道具に衣装にエキストラ(友情出演)まで使って、ていねいに相手をはめていく。そのプロセスが小気味よくて楽しい。途中で冷や汗ものの展開もあるが、そこはお約束である。

 

公務員でもサラリーマンでもなんでもいい。組織の中でがんじがらめの人間が、アウトローと組んで勧善懲悪を果たす。そんな物語も時には一服の清涼剤である。

 

ネガティブ・サイド

ある程度、ミステリやクライム・ドラマを観ているなら、トリックもオチも早い段階ですべて読めるだろう。好意的に表現すればフェアだが、ニュートラルに表現させてもらえればチープである。今回のトリックはかなりチープだった。

 

岡田将生は『 ゴールド・ボーイ 』と演技がまったく一緒。特に笑い方。これはもうどうしようもないのか。ある意味、トム・クルーズが常にトム・クルーズを演じるように、岡田将生も常に岡田将生を演じることを目指すべきなのかもしれない。

 

とある秘密の遊興クラブにアングリースクワッドの面々が続々と入りこむが、ここはあまりに非現実的だった。客の素性はまだしも、こういう場所はスタッフの身元こそ何よりも重要なのではないか。あまりにも簡単に入り込めていたのが解せない。または詐欺的なトリックでなんとかしてしまうシーンを挿入しても良かったのではないか。



総評

『 スペシャルアクターズ 』とある意味で同工異曲の作品ながら、主人公の内野聖陽が多面性のあるキャラクターを好演して物語全体を力強く牽引した。ドンデン返しにきれいに騙されるも良し、ドンデン返しの伏線を見破るために目を凝らして鑑賞するも良し。デートムービーにもなるし、ファミリーでの鑑賞も可。しかし実は本作が一番刺さるデモグラフィックは『 トップガン マーヴェリック 』と同じく、仕事に疲れを感じることの多い中年男性なのかもしれない。内野聖陽に自己を投影する男性はきっと多いはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

evade

回避する、の意。日常生活ではあまり使わない。戦争ゲームだと “Incoming missile, evade!” =「ミサイル接近、回避せよ!」みたいに使われている。自民党のお歴々はパーティー券の売り上げを申告せず、収入を過少申告し、結果として evade taxes = 脱税をしていた。Many LDP lawmakers are accused of tax evasion connected to political fundraising events. =多くの自民党議員が政治資金パーティー関連の脱税で非難されている、のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 対外秘 』
『 地獄でも大丈夫 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, クライムドラマ, 内野聖陽, 小澤征悦, 岡田将生, 日本, 監督:上田慎一郎, 配給会社:JR西日本コミュニケーションズ, 配給会社:ナカチカピクチャーズLeave a Comment on 『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』 -内野聖陽のベストアクト-

『 ごはん 』 -米作りと親子の再生-

Posted on 2024年12月4日 by cool-jupiter

ごはん 75点
2024年12月1日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:沙倉ゆうの 源八 福本清三
監督:安田淳一

 

『 侍タイムスリッパ- 』の安田淳一監督が同作の沙倉ゆうのを主演に製作した2017年の作品。近所でトークイベント付きで上映されるということでチケット購入。

あらすじ

東京で派遣社員として働くヒカリ(沙倉ゆうの)は京都の叔母から父の訃報を受ける。葬儀のために故郷へ戻ったヒカリは父が30軒分の水田を引き受けていたことを知る。父の弟子、ゲンちゃん(源八)は足を骨折しており、他の面倒を見られる者は誰もおらず・・・

ポジティブ・サイド

米作りの苦労がリアルに伝わってくる作品。同時にその苦労がゲンちゃんというシリアスなコミックリリーフによって笑いに還元され、あるいは西山老人(演じるのは福本清三!)によって労わられることでドラマとしても深みを増している。特にゲンちゃんの気取った発言はどれもこれも笑える。対照的に西山老人の語る言葉はどれも深い。特に彼が開陳する歴史観は、しばしば列伝体で歴史が語られる本邦においては非常に貴重なものである。また「○○の扱いなら任せとけ」という台詞は一種のメタ発言にもなっていたのも面白かった。

 

一方で米作りを通して見えてくる景色も確かにある。特に日本の原風景は山、森、川、海だが、そこに田園を加えてもいいかもしれない。そう思わせるほど本作は田んぼの見せる美しさを活写していた。苗代に始まり、田んぼの稲、そして稲穂と姿を変えていく中で、力強い緑から黄金の輝きまで、季節とともに変わる稲の美しさをとことん追求していた。また音にも注目(注耳?)されたい。緑の稲が風にそよぐ音、出穂した稲が風にそよぐ音も非常に心地よい。その音を聞くだけで稲の色までが目にありありと浮かぶようである。まさにサウンドスケープである。

 

コメを作るには八十八の手間をかける必要があることからコメは米と書くと小学校で習ったが、本作はそうした手間についても一つひとつ丁寧に、しかし決して説明的にならずに解説してくれる。水の出し入れのタイミングやその量、狙いなどはまさに目からうろこだった。

 

故人の仕事を通じて亡き父の想いを知るというプロットはありふれている。しかし、その仕事が農作業だというのはユニーク。そしてヒカリ自身が稲穂を見つめる目線が、そのまま父が自分に注いでいた眼差しだったと知るという筋立ても、ベタベタではあるが美しい。

以下、上映後のトークイベントや今後の展開について

 

米作りは監督自身の経験が反映されているとのこと。そして、80代の農家の後を60代がなんとか継いでいるというのが日本の現状のようで、国が何とかしないと日本の米作りは滅びる恐れがあるとのこと。NHKの『 歴史探偵 』でも米作りの回があったが、農業、就中、米作りについて真剣に考える必要があるようだ。

 

『 侍タイムスリッパ- 』や本作は、まずは年明けから配信、その後に円盤化される方向で話が進んでいるとのこと。Blu rayになったら購入しようかな。

 

実は福本清三の奥様は、旦那の出演作が観たことがないらしく、本作の剛毅朴訥な農民の姿を観て「あれが本物の福本です」と語ったとのこと。『 ラスト サムライ 』のあれが実像に近いわけではなかったのね・・・

 

劇中でヒカリが絶妙なタイミングで吹き出すシーンがあるが、沙倉さん本人に「演技ですか、アドリブですか?」と尋ねたところ、演技だったとのこと。

 

安田監督に今後の展望を尋ねてみたところ「僕はいつか『 男はつらいよ 』(実際は『  フーテンの寅さん 』と言っていた)をリブートしたい」と語ってくれた。令和の時代にあんなキャラを復活させても大丈夫か?と思ったが、寅さんは昭和の時代でも(愛すべき)迷惑キャラだったわけで、キャラの芯さえしっかりしていてスポンサーもつけば、案外うまく行くアイデアかもしれない。

ネガティブ・サイド

稲作以外にも農業といえば重労働のイメージがある。サラリーマンのように一日8時間労働で年間休日124日などと決まっているわけではないからだ。というよりも農繁期と農閑期の差が激しいと考えるべきか。いずれにせよ世の大半のサラリーマンの労働とは大きく異なる。そのあたりのギャップに戸惑い、疲労するヒカリを描くという選択はなかったか。

 

もう一つ気になったのがBGMの多用。風にそよぐ稲の姿とその音だけで十分に映画なのに、なぜかそこにBGMがかぶせられていた。監督は色々と手直しをして、足すべきシーンは足して削るべきは削ったそうだが、絵だけではなく音を削ることも考慮してほしかった。Sometimes, less is more.

総評

Jovianが大昔に引っ越した先の岡山県備前市では三十数年前、小学校低学年が学校の行事として田植えをしていた(Jovianはしなかった)。今思えば、貴重な機会を逃したのかもしれない。米作りを通じて、日本の歴史、日本の原風景を体験できるし、本作を通じて親子の精神的な和解の物語を追体験できる。あちこちで散発的に上映しているようなので、機会があれば鑑賞してみてはどうだろうか。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

straw hat

麦わら帽子の意。strawとは藁のこと。某漫画のキャラクターだったり、あるいは某歌手のマリーゴールドを思い出す人もいるだろう。Jovianも備前の祖母を思い浮かべると、麦わら帽子がセットで思い出される。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』
『 オン・ザ・ロード 〜不屈の男、金大中〜 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 沙倉ゆうの, 源八, 監督:安田淳一, 福本清三, 配給会社:未来映画社Leave a Comment on 『 ごはん 』 -米作りと親子の再生-

『 最後の乗客 』 -追憶と忘却-

Posted on 2024年12月2日 by cool-jupiter

最後の乗客 70点
2024年11月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:冨家ノリマサ 岩田華怜
監督:堀江貴

 

評判の良さにつられてチケット購入。

あらすじ

タクシードライバーの遠藤(冨家ノリマサ)は、深夜の街道で謎めいた女性客を拾う。その直後、路上に小さな女の子と母親の2人が飛び出してきた。事故にはならなかったものの、車が動かなくなってしまい・・・

ポジティブ・サイド

東日本大震災から10年後の設定。55分と短く、登場人物もわずか数人。劇中でもわずか一晩(回想シーン除く)しか経過しない。その限られた時間と空間で濃密なドラマが展開された。ストーリー自体はよくあるもので、Jovianは割と早い段階で「ああ、アン・ハサウェイ出演のあれと同じか」と感じ取れた。

 

ただ本作の価値はストーリーの秀逸さではなく、その陳腐さにある。親子のミスコミュニケーション、親子のすれ違い。そんなものはたいていの人間が経験する。問題は、そんな陳腐な日常が大災害で突然に崩されてしまった時、どうなるのかということ。

 

『 侍タイムスリッパ- 』の冨家ノリマサがタクシー運転手にして頑固一徹の中年オヤジを好演。謎の乗客の女性は岩田華怜は陰のある演技で印象を残した。東日本大震災は「忘れない」、「風化させない」という言葉と共に語られてきたが、阪神淡路大震災(Jovianは幸いにも直接の被災者ではないが)では、あまりそのような言葉は用いられなかったと記憶している。その違いの要因の一つに前者には津波があり、後者には津波がなかったということが挙げられる。言い換えれば、前者は行方不明者多数、後者は死体の確認がしっかりできた、ということである。『 あまろっく 』で阪神大震災の描写があったが、あれはJovianがその後に尼崎や神戸の親戚や友人知人から聞いた反応と同じ。すなわち「生き残ってしまった」、「あの人は死んでしまった」という後悔の念。それが転じて「もう忘れたい」と吐露する友人にJovianは当時かける言葉を持たなかった。

 

死んだかどうか不明だが死亡したものと見做すという世界では『 風の電話 』のような伝説が生まれる。それはそれで美しい。その一方で「忘れたい」という想いを吐き出すことが許されなかった空気も当時は存在したのではないか。そうした想いに寄り添う作品が発災後十年以上を経て作られたことには大きな意味がある。作られた大きな枠組みのドラマではなく、どこのだれか分からない、しかし確実に存在する個人のドラマは平凡で陳腐であるがゆえに荒唐無稽を超えたところでリアリティを有する。

 

ネガティブ・サイド

照明や音響は残念ながら低レベルだったと言わざるを得ない。映画の画的には仕方ないが、タクシー車内だったり、大通りから外れた深夜の小さな街道だったりの不自然な明るさはもう少し何とかならなかったか。『 ちょっと思い出しただけ 』のように、そこらへんをリアルに描出できた作品もあるだけに照明担当と監督にもう少し頑張ってほしかった。まあ、自主映画に求めすぎだとは思うが。

 

舞台というか世界というか、それが何であるかを間接的に説明する台詞が発せられるが、その台詞がかなり直接的。もう少し抽象的にできたのではなかったか。

 

総評

エンタメとして面白いではなく、ドラマとして面白い。商業映画が時たま見せるカッコつけたシーンや台詞が一切ない。大震災という悲劇を感動劇の材料にせず、しかし海は常世の国にもつながっているのだと実感させるエンディングにはえも言われぬ重みを感じた。エンドロールもある意味で衝撃的。Every picture tells a story, don’t it?

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

move on

いくつかの意味がある句動詞だが、ここでは Cambridge の to accept that a situation has changed and be ready to deal with new experiences = 状況が変わったことを受け入れ、新しい経験をすることに備える、という意味を紹介したい。She’s married now. It’s time to move on. = 彼女はもう結婚してるんだ。そのことを受け止めて次へ進むんだ、のように使う。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ファンタジー, 冨家ノリマサ, 岩田華怜, 日本, 監督:堀江貴, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 最後の乗客 』 -追憶と忘却-

『 オアシス 』 -乾いた心を潤すものは-

Posted on 2024年11月21日 by cool-jupiter

オアシス 70点
2024年11月17日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:清水尋也 高杉真宙 伊藤万理華
監督:岩谷拓郎

 

兵庫県知事選の結果がショッキングだったので、簡易レビュー。

あらすじ

ヤクザのヒロト(清水尋也)がクスリの売人を締めたことで、半グレ集団と一触即発になってしまう。そこにはヒロトの幼馴染みの金森(高杉真宙)も属していた。しかし、二人の共通の幼馴染みの紅花(伊藤万理華)が戻ってきたことが事件につながってしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

『 さがす 』で鮮烈な印象を残した清水尋也がヤクザ者を好演。歩き方、目つき、タバコの吸い方など時代錯誤と思えるほどにステレオタイプなヤクザで、令和の今となっては逆に新鮮だった。また痩せ型の長身なのもプラス。無言の威圧感がある。『 クローズ 』でまったく怖くない不良を演じていた東出昌大とは対照的。高杉真宙も『 ギャングース 』同様の軽いチンピラ役が板についていた。

 

かなり血なまぐさいシーンが多いのも個人的にはプラス。『 終末の探偵 』ではギャグにしか見えなかったヤクザ者同士の果たし合いも、本作はドラマチックに見せることに成功していた。

 

ネガティブ・サイド

組長の息子が警察にとっ捕まっていないのが不思議でしょうがない。白昼堂々とあんな犯行を過去に行っていたら、いくらなんでも逃げ切れるものではないと思うが。それとも日本も『 チェイサー 』で描かれたように、場末の風俗嬢が消えてもほとんど誰も気づかない社会になりつつあるという意味なのだろうか。

 

総評

欲しいものなどない。今を生きていられればいい、という若者たちの刹那的なドラマが悲しくもあり、羨ましくもある。はっきり言って未来も何もない終わり方なのだが、中年Jovianは何故か清々しさを感じた。生きた証を残す、生きた実感を得るために必要なのは、生きた年数ではなく生きた密度なのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

stab

刺すの意。刃物で刺す時はだいたい stab を使えば間違いない。stab someone in the back と言えば、「人の背中を刺す」と「背後から刺す=裏切る」の意味がある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 ドリーム・シナリオ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 伊藤万理華, 日本, 清水尋也, 監督:岩谷拓郎, 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS, 青春, 高杉真宙Leave a Comment on 『 オアシス 』 -乾いた心を潤すものは-

『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』 -対岸の火事と思うなかれ-

Posted on 2024年10月29日 by cool-jupiter

拳と祈り -袴田巖の生涯- 75点
2024年10月26日 第七藝術劇場にて鑑賞
出演:袴田巌 袴田秀子
監督:笠井千晶

 

ボクシングファンの端くれとして、ずっと応援していた袴田巌さんが先月、遂に無罪確定。そこで本作の公開ということでチケットを購入。

あらすじ

1966年6月、強盗、殺人、放火事件の犯人として袴田巌氏は死刑判決を受ける。しかし、証拠や警察の取り調べ方法に疑義が残ることから、姉の秀子さんや支援者は再審を訴える。だが、司法が動くのに約50年の歳月を要して・・・

ポジティブ・サイド

袴田事件に関する予備知識ゼロ、あるいは2024年9月の袴田さん無罪確定のニュースを一切知らずに本作を鑑賞する向きはない。そうした読みから、袴田事件の概要や、いかに証拠として提出された衣料品が馬鹿げたものであるかを殊更に主張はしない。笠井監督のこの演出は、特に秀子さんが静岡県警本部長に掛けた言葉を考えると、正解だったと思う。

 

また笠井監督自身が冤罪に関して何らかの言葉を述べることはなく、袴田秀子さん、巌氏の二人を中心に、事実だけを淡々と映し出していくスタイルを選択したことも賢明だった。たとえば作中で医師が袴田氏の血糖値が高すぎることを注意するシーンがあるが、秀子さん自身はその日の夕食をスキップさせるぐらいで、基本は袴田さんの行動にはノータッチである。それは、医師であろうと肉親であろうと、無理やり言うことを聞かせてしまうと、警察や検察と同じ愚を犯すことになるからだ。

 

ニュースに触れている人なら袴田さんが重篤な拘禁反応を呈していることは知っているはず。本作はそこを包み隠さず映し出してしまう。普通の刑務所なら、規則正しい生活、規則正しい食事、規則正しい労働・運動、規則正しい睡眠に加えて、囚人仲間との交流が得られる。ただし死刑囚は独房生活。つまり孤独。畢竟、ストレスがたまり、精神的に追い詰められる。冤罪被害者なら尚更である。

 

袴田さんはカトリックに救いを見出した。作中での袴田さんの言動全てを理解するのは難しいが、その行動原理の大きな部分をキリスト教が占めているのは間違いない。彼の脳内ではAgnus Dei, qui tollis peccata mundi = この世の過ちを取り除きたもう神の仔羊よ、と常に讃美歌が流れているのである。つまり、自分が死ぬことで、その他の衆生(これは仏教用語だが)が救われるという理屈で、自分をイエスと同一視しているわけだ。自分は死ななくなったというのは、死んでも復活すると言っているのである。

 

そうした袴田さんの姿に現実逃避を見出しても、あるいは不屈の闘志を見出してもいい。宗教の持つ力を見出してもいいだろう。しかし、決して忘れてはならないのは姉の秀子さんと多くの支援者たちの存在だ。袴田さんは元ボクサーだ。アマチュアの強豪で、プロでも年間19試合をしたというタフガイだ。日本のボクシング界の関係者が陰に日向に袴田さんを支援しようとする姿に一菊の涙を禁じ得なかった。またカナダのルービン・❝ハリケーン❝・カーターの映像まで見られるとは正直思っていなかった。笠井監督の行動力の視野の広さには脱帽である。

 

意味不明の言葉を発することが多い袴田さんだが、ボクシングに関してはきわめてまっとうな発言が多かった。印象に残ったのは「ボクシングに魂をかけているかどうかは見れば分かる」、「結局はいかにナックルパートを当てるか」、「前に出てくる相手を止めるにはジャブとワン・ツー」など(ちなみに現代だと、ジャブ、ワン・ツー、カウンターで止めるとされている)。本人は現役時代に近距離ファイターだったようだが、指導者を志しただけあって、当時としてはかなりしっかりした理論を持っていたのだ。最初は拒否していたグローブをはめて、スクリューの入った左フックを見せる袴田さんが微笑みを浮かべているところは決して見逃さないようにしたい。

 

それにしても国家、特に検察の硬直した姿勢には辟易する。元裁判官は涙ながらに謝罪し、静岡県警本部長も極めて儀礼的ながら謝罪した。しかし検事総長は袴田氏を犯人扱いする談話を発表し、名誉棄損にあたるのではないかと物議をかもしている。検事総長と言えば賭けマージャンの黒川検事長が思い出される。検察は身内や政治家、上級国民は過剰に保護するが、一般庶民にだけは厳しいという現実をわずか数年前に見せつけられていたので、今回の談話にも驚きは少ない。

 

袴田巌氏88歳、姉の秀子さんは91歳。二人の今後の人生に幸多かれと願う次第である。Dona eis requiem. 

ネガティブ・サイド

警察の取り調べの録音は、あんなものだったのだろうか。殴る蹴る水をぶっかけるなどがあったはず。あるいは、そこだけ録音を止めていたかも。いずれにせよ、昭和中ごろの警察とは思えないマイルドな取り調べだった。他にもっと警察の横暴を感じさせる箇所はあったのではないか。あるいは、存命者は少ないかもしれないが、当時の捜査員などを取材できなかったか。別に袴田事件そのものについて尋ねなくてもいい。当時はとにかく怪しい奴を見つけたら無理やり引っ張ってきて、自白するまで追い込むことは珍しくなかったという実態を語ってもらえれば、後は観る側が判断する。

 

もう一つ、刑務官OBへインタビューもできなかったのだろうか。顔や声は当然隠してOK。刑務所の中の囚人の実態をより客観的に知るには、こうした人々へのアプローチも必要であるように思う。熊本裁判官が顔出しで判決の舞台裏を暴露したのは法曹としてはアウトなのだろうが人間としてはセーフ。そうした意味で粘り強く取材すれば、袴田氏のことではなく囚人一般について語ってくれれれば、反省する人間、しない人間のことが少しわかり、また反省しない人間というのは極悪人なのか、それとも反省すべきことがない人間なのではないかということまで考えるきっかけになっただろう。

 

総評

まさに今、出るべくして出たドキュメンタリー。作中でルービン・カーターがいみじくも指摘した通り、袴田さんの身にこのようなことが起きたのなら、自分の身にも起こるかもしれない。そうなってしまった時、自分は闘えるだろうか。自分には支持者がいるだろうか。鑑賞中も鑑賞後も、ずっと自問自答している。国家権力と闘い続けたという点で、袴田巌氏は日本のモハメド・アリであると評したい。ボクシングファンのみならず、広く一般市民に観てもらいたい作品。

 

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free

日本語にもなっているフリーという語だが、品詞も意味も多岐にわたる。本作では Free Hakamada! のスローガンで使われていた。これは動詞で「~を自由にする、解放する」の意味。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 破墓 パミョ 』
『 トラップ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ドキュメンタリー, 伝記, 日本, 歴史, 監督:笠井千晶, 袴田巌, 袴田秀子, 配給会社:太秦Leave a Comment on 『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』 -対岸の火事と思うなかれ-

『 シュリ 』 -南北の融和は見果てぬ夢か-

Posted on 2024年10月19日 by cool-jupiter

シュリ 75点
2024年10月14日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:ハン・ソッキュ キム・ユンジン ソン・ガンホ チェ・ミンシク
監督:カン・ジェギュ

 

シネマート心斎橋に別れを告げるためにチケット購入。といっても、もう1~2回は行きたい。

あらすじ

韓国情報部のユ・ジュンウォン(ハン・ソッキュ)は、相棒イ・ジョンギル(ソン・ガンホ)とともに、国防関連の要人の連続暗殺事件を追っていた。北朝鮮の女性工作員が捜査線上に浮上する一方で、韓国が極秘に開発した液体爆弾を用いたテロが計画されていて・・・

ポジティブ・サイド

1990年代後半というと太陽政策の前、つまり南北がまだまだ普通ににらみ合っていた時代で、38度線がうんたらかんたらというニュースは中学生、高校生の頃のニュースでJovianもよく耳にしていた。そんな時代の映画だけに古さもあるが、逆に新鮮さもあった。

 

スーパースターと言っても過言ではないチェ・ミンシクやソン・ガンホの若かりし頃の熱演が見られるし、主演のハン・ソッキュは近年でも『 悪の偶像 』でカリスマ的な悪徳政治家

で強烈な印象を残したし、お相手のキム・ユンジンも『 告白、あるいは完璧な弁護 』で弁護士役として非常に印象的な演技を見せたのが記憶に新しい。

 

作劇上の演出も光っていた。特に女性工作員の正体を映し出すシーンは暗闇の中、無音かつ無言、そして効果音もBGMも無しで淡々と進んでいくワンカット。このシーンは震えた。また、スタジアムで彼女が銃を構えるポーズは『 悪女 AKUJO 』や『 聖女 MAD SISTER 』に確実に受け継がれていると感じた。

 

全編にわたって銃撃アクションに、スパイは誰なのかというサスペンス、そして常に敵に先回りされるのは何故なのかという謎解きミステリもあり、さらにそこに悲恋の要素も盛り込んだ全部乗せ状態。それだけたくさん詰め込みながら、緩む瞬間がないという驚き。ヒューマンドラマの名手、カン・ジェギュ監督の最高傑作という評価は揺らぐことはないだろう。

 

ネガティブ・サイド

サッカーのスタジアムに仕込まれた液体爆弾の起爆方法はユニークだが、あまりにも偶然の要素に頼りすぎでは?たとえば天気。他にも、保安・警護上の理由で首脳たちが座る位置などが直前まで明らかにならないということは?あまり突っ込むのも野暮だが、こうした疑問は公開当時からあったはず。

 

あとは爆発までのカウントダウンか。それこそ外気温や湿度、風速など、液体の温度に影響を与える要素は数多くあるわけで、爆発までのカウントダウンが正確にできるわけがない。この部分は鼻白みながら観ていた。

 

総評

突っ込みどころは多々あれど、緊迫感や緊張感、猜疑心などが途切れることがなく、2時間をノンストップで突っ走る。国のために、愛する人のために、という想いは共通だが、それによって敵味方に分かれてしまうという不条理は今の時代でも残念ながら真理のまま。地政学的に見れば38度線はベルリンの壁よりも強固な分断の象徴だが、だからこそ、それを乗り越えようとする人間のドラマがこの上なく熱くなるのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イルボン

日本のこと。韓国の映画やドラマでは割と日本が出てくる。近いから当たり前と言えば当たり前だが、日本と韓国は文化的・経済的には38度線のような線は不要だと個人的には思っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 若き見知らぬ者たち 』
『 破墓 パミョ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アクション, キム・ユンジン, サスペンス, ソン・ガンホ, チェ・ミンシク, ハン・ソッキュ, 監督:カン・ジェギュ, 配給会社:ギャガ, 韓国Leave a Comment on 『 シュリ 』 -南北の融和は見果てぬ夢か-

『 犯罪都市 PUNISHMENT 』 -シリーズの折り返し地点-

Posted on 2024年10月12日 by cool-jupiter

犯罪都市 PUNISHMENT 70点
2024年10月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マ・ドンソク キム・ムヨル パク・ジファン
監督:カン・ユンソン

 

『 犯罪都市 NO WAY OUT 』の続編にしてシリーズの4作目。8作目までが構想されているらしいので、これでちょうど半分消化ということになる。

あらすじ

剛腕刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)は、アプリを利用した麻薬売買事件の捜査の中で、アプリ開発者がフィリピンで殺害されたことを知る。オンライン・カジノが捜査の糸口になると確信したソクトは元ヤクザのチャン・イス(パク・ジファン)をアドバイザーにする。しかし、その先にはIT企業の社長の下で働く元傭兵ペク・チャンギ(キム・ムヨル)が暗躍しており・・・

ポジティブ・サイド

今度はIT犯罪、しかもオンライン・カジノがフォーカスされているではないか。IR事業が云々かんぬんと喧しい隣の大阪府も、本作を観て「カジノ、やばくね?」と思い直してほしい。

 

というのはもちろん冗談だが、IT犯罪を追うことでソクトのアナログっぷりが際立ち、それが巧まざるユーモアにつながっている。また第一作の『 犯罪都市 』のヤクザで、『 犯罪都市 NO WAY OUT 』のラストにも少しだけ出てきたチャン・イスが、コミック・リリーフとして大活躍。いや、本当はかなり優秀な捜査アドバイザーなのだが、顔も面白ければ行動も面白いので、マ・ソクトの恰好のいじられ役としてハマっている。

 

こうした面白おっさんコンビのユーモアが、その他の場面でのソクトの怪力剛腕アクションを際立たせている。またヴィランのチャンギもどこかで見た顔だと思ったら『 悪人伝 』の熱血刑事ではないか。今回は残虐非道なナイフ使いを演じており、熱血とは程遠い冷血漢。この男の冷酷無比な様も、上司であるIT社長のおとぼけっぷりにより際立っている。韓国映画はこうしたキャラの対比によって人情味や非情さを際立たせるのが相変わらず上手い。

 

室内やバスの中など、狭いところで戦うことで強制的に拳と拳の勝負になるのが本シリーズのお約束。今回の舞台は飛行機のファーストクラス。そんなものが武器になるわけないやろ・・・、って、え?そう来るか?という展開には唸った。

 

今回はソクトのヒョン=兄貴と呼ぶ、弟分の活躍も目だったり、サイバー捜査のために若い男女が2名加わったりと、チームの今後に期待が持てる内容だった。また最初の犠牲者の母親との約束を守る姿勢や、殉職した先輩の妻が切り盛りする店に足繫く通ったりと、これまで全く描かれてこなかったソクトの「私」の部分をうかがわせる描写も本作の見どころ。おそらくソクトの過去、あるいは家族関係がシリーズの後半に向けて深掘りされていくのではないかと思う。期待して待ちたい。

 

ネガティブ・サイド

いくらフィリピンの片田舎とはいえ、ロードサイドで重機をぶん回して破壊活動をすれば、現地の警察も動くだろう。それ以前に、チャンギがフィリピン警察をあっさりと冒頭で殺害しておきながら、高飛び先がまたもフィリピンというのは不用心すぎないか。ボディカメラはないにしても、パトカーにダッシュカメラは絶対についていて、犯行の一部始終がフィリピン警察ならびにインターポールにまで共有されているはずだが・・・

 

チャンギの右腕的存在のアクションはイマイチ腰が安定しておらず、迫力にもリアリティにも欠けた。チャンギを演じたキム・ムヨルのアクションが『 アジョシ 』のテシクを思わせる迫真のナイフ使いだっただけに残念。

 

総評

このシリーズ自体がそうだが、頭を空っぽにしたい時に最適な一本に仕上がっている。ソクトの刑事としての出世はおそらくここらへんで終わりなので、ここからはソクトの過去や現在のプライベート=公私の私の部分にフォーカスしたサイドストーリーが展開されていくと思われる。だが「鉄拳がすべてを解決する」というポリシーは決して変わらないはず。スカッとしたい時にちょうどいい作品である。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

オンマ

お母さんの意。他人が別人の母親をこう呼んでも良いところが日本語と韓国語の共通点の一つか。オモニが英語で mother なら、オンマは英語では mom となる。なんとなく分かっていただければ幸いである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 花嫁はどこへ? 』
『 ジョーカー:フォリ ア ドゥ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, キム・ムヨル, パク・ジファン, マ・ドンソク, 監督:カン・ユンソン, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 犯罪都市 PUNISHMENT 』 -シリーズの折り返し地点-

『 シビル・ウォー アメリカ最後の日 』 -ロードムービー&戦争ドキュメンタリー-

Posted on 2024年10月8日 by cool-jupiter

シビル・ウォー アメリカ最後の日 70点
2024年10月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キルステン・ダンスト ケイリー・スピーニー
監督:アレックス・ガーランド

 

2023年から楽しみにしていた作品。事前情報は極力仕入れずにチケット購入。イメージとは違ったが、これはこれでありだと思えた。

あらすじ

内戦勃発から14か月、一度もメディアの取材を受けない大統領にインタビューを試みるため、戦場カメラマンのリー(キルステン・ダンスト)は仲間と共にワシントンDCを目指していた。ふとしたことから知り合ったカメラマン志望のジェシー(ケイリー・スピーニー)と旅路を共にするが、道中では分断されたアメリカの現実を目の当たりにすることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

キルステン・ダンスト演じるリーと、彼女にあこがれるケイリー・スピーニー演じるジェシーのロード・トリップが前半、後半は戦闘の最前線を行く従軍カメラマンの師弟の物語だった。

 

ワシントンに向かう途上で出会うアメリカ人たちが、同胞であるはずのアメリカ人を虐待する、あるいは訳も分からず殺し合う風景に遭遇していく。ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルのガザ地区やレバノンへの攻撃が思い起こされるが、これを同国人同士でやってしまうのが内戦の恐ろしいところであると慄然とさせられる。

 

トレーラーにもあった、”We are American.” に対するジェシー・プレモンス演じる不気味な兵士の ”What kind of American are you?” という問いが剣呑だ。これに対する一定の答えがあるのだが、それはまさに多くの近代国家の歴史そのもの。日本とて例外ではない。もう一度、アメリカ合衆国は United States of America であるということを思い起こそう。我が兵庫県も五か国連合(摂津、丹波、但馬、播磨、淡路)で、時にヒョーゴスラビア連邦などと言われるぐらいにバラバラである。もちろん内戦をジョークにはできないが、国家としての一体感よりも、個人の収入や生活の方が大事なのだ、という局面にアメリカ、そして先進国が至っていることは間違いない。そうした状況では、分断が分裂に至ることもありえるだろうと感じる。

 

後半から終盤はワシントンの市街戦、そしてホワイトハウス陥落を描く。詳細は観てもらうしかないが、米国はアブグレイブ刑務所から特に何も学んでいないことを感じさせるものだった。それがアレックス・ガーランド監督の抱える問題意識なのだろう。銃撃戦の迫力は文句なし。砲塔を戦車で吹っ飛ばすシーンの迫力も文句なし。容赦のない破壊の行き着く先はどこになるのか。やはりアメリカ人はウサーマ・ビン・ラーディンの暗殺と死体遺棄を反省していないようである。これもアレックス・ガーランド監督の問題意識の表れなのだろう。

 

civil war とは内戦を指すが、特に the Civil War と表記すると、アメリカの南北戦争を指す。『 アンテベラム 』でも描かれたように、南北戦争は奴隷制度の有無および保護貿易(北の合衆国= United States of America)と自由貿易(南の連合国= Confederate States of America)が主な対立軸だった。

 

本作では、カリフォルニア州とテキサス州を中心とするWF(Western Forces)が連邦政府軍を相手に戦っているという、東西戦争の様相を呈している。その原因は分からないし、明示もされない。ただ、D・トランプが大統領に就任した2017年、世間では盛んにアメリカは United States ではなく Divided States になったと言われていたのは多くの人の記憶に新しいはず。また彼の支持者が選挙不正の疑いを不満に思って連邦議事堂に大挙して乗り込んだ事案は、先進国の民衆が暴徒化したという意味で衝撃的でもあった。それこそ『 ジョーカー 』のように、何かきっかけがあれば民衆は一挙に暴徒化しうるのである。

 

そういった意味で本作は確かに現代アメリカ的である。そして現代アメリカ的ということは、数年もしくは数十年後の日本的でもあるということである。

ネガティブ・サイド

途中で合流してくるジャーナリスト仲間は、もう少しプロフェッショナルに描けなかったのか。それまで筋金入りのジャーナリストとして描かれてきたジョエルやリーが、急に薄っぺらく見えてしまった。

 

最後の最後にリーが見せた行動は、従軍記者としてのキャリアの長いリーらしからぬ動作。行動については旅路の中で経験した喪失と悲嘆で説明がつく。問題はその動作。ここに説得力がなかったので、最後の最後にやや白けてしまった。

 

総評

インタビュー記事などを読むに、キルステン・ダンスト自身もメリー・コルビンを意識していたようである。本作も面白いとは感じたが、残念ながら『 プライベート・ウォー 』ほどではなかった。随所に流れる能天気なオールディーズと波長が合うかどうか。案外、本作の評価はそこで決まるようにも感じる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

secede

分離する、の意。ラテン語では se = apart、cedere = to go である。つまり「離れて行く」ということ。Brexit の際のニュースで使われることが多かったので、BBCやCNNの視聴者なら耳にした、あるいは記事で見たことがあるだろう。secessionist secessionist = 分離独立運動のように使う。cede = 行くだと理解していれば、precede = 先行する、proceed = 前進する、exceed = 超過する、succeed = 成功する(どんどん行く)、concede = 譲歩する(共に行く)などもパッと整理して理解できるだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 犯罪都市 PUNISHMENT 』
『 ぼくのお日さま 』
『 花嫁はどこへ? 』

 

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『 ナミビアの砂漠 』 -現代人の心象風景-

Posted on 2024年9月20日 by cool-jupiter

ナミビアの砂漠 70点
2024年9月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:河合優実 寛一郎 金子大地
監督:山中瑶子

 

『 あんのこと 』の河合優実主演作ということでチケット購入。

 

あらすじ

カナ(河合優実)は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる恋人のホンダ(寛一郎)と同棲しつつ、ハヤシ(金子大地)とも逢瀬を繰り返していた。ある時、出張から帰ってきたホンダがあることを告白してきて・・・

 

以下、軽微なネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

21歳の奔放女子ながら、その中身は空虚で、仕事にも友情にもどこか身が入っていない。その一方で健全にセクシャルな魅力も放っているカナというキャラクターは、おそらく一種のサイコパスなのだろう。そうでなければ離人症か。カナというキャラを一言で表すなら「自分で自分が分からない」、これである。誰もが経験する感覚だが、それを非常にリアルに体現している。

 

友達もいるし、恋人もいるし、浮気相手もいるし、職場の上司や同僚もいる。それでもカナは孤独である。なぜか。満たされないからだ。ホンダから注がれる愛情にも満足できず、ハヤシから愛情を注がれないことにも満足できない。そのハヤシとの喧嘩のシーンは圧巻だ。というのも、言い争いではなく取っ組み合いだからだ。それもかなりロングのワンカットで、リハーサルは大変だったと思われるが、それを見事にやってのけている。

 

喧嘩するほど仲がいいと言うが、カナとハヤシはある意味で冷めてしまった夫婦のような関係であると思う。劇中でも「二人ではなく、一人と一人」という台詞があるが、これが実に腑に落ちる。この二人でいるはずなのに独りでいるように感じてしまうカナの背景には何があるのか。それが少しずつ明らかになっていく中盤以降の展開は非常に重苦しい。

 

本作は撮影面でもユニークだ。家の中では手ぶれが見て取れる一方で、家の外のシーンでは定点カメラで撮影されている。『 幼な子われらに生まれ 』でも家の中ほど手ぶれしていて、それが臨場感、つまりその場に自分も居合わせているかのように感じさせるのと同じ手法がここでも見られた。家の中と外のギャップ、それを絶妙に橋渡しする存在としての隣人が非常に良い味を出している。

 

カナの抱える悲しい過去や、少し人と異なるバックグラウンドを持つことが、カナを追い詰める。しかし、そのことが逆に希望にもなっている。ナミビアの砂漠というのは古い歌謡曲『 東京砂漠 』の現代版ということだろう。砂漠に点在するオアシス。そこにわずかばかりの動物が集まってくる。動物たちは決して仲睦まじく交わろうとはしない。ただ、相手を追い払うこともない。広い砂漠で偶然に出会った。その相手の存在を決して否定しないこと、その相手と共存すること。それが現代人の生き方の一つのモデルになるのではないだろうか。

 

ネガティブ・サイド

カナがある意味で現代人の脆さを体現しているのは分かるが、カナの精神の均衡を壊すきっかけが、うーむ・・・ もちろんショッキングな出来事であることは間違いないが、それをあたかも女性だけが重く受け止められる事象であるかのように描くのはいかがなものか。

 

また、カナの精神的な不調をそのままメンタルの病に還元してしまうのも安易というか安直というか。中島歩演じる心療内科医がいくつか鑑別を挙げて、その後の方針も示していたが、ここはもっとダイレクトに心の不調の原因となる出来事や、それを維持させている環境についてダイレクトに示唆を与えても良かったのではないか。そのうえで、オンライン診療よりも、人と人との出会いと交わりにこそ意味があるのだ、という幕引きはありえなかっただろうか。

 

総評

『 あんのこと 』と並ぶ河合優実の代表作であることは間違いない。現代社会の一種の病理を非常に分かりクリエイターたちがあぶり出した作品。ただし『 カランコエの花 』のように、時間の経過と共に作品のテーマ自体が新奇性を失うものでもない。カップルのデートムービーには決して向かないと思うが、同棲前に一種のシミュレーションとして鑑賞してみるのも、それはそれでありかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

ティンブトン

I don’t understand. の意。つまり、「理解できない」「言っていることが分からない」ということ。劇中でこの台詞が使われることでカナの孤独がより際立っていた。現代人の病理(と言っていいのかどうか・・・)に、他の人と一緒にいる時により強く孤独を感じる、というものがあると思うのだが、どうだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 愛に乱暴 』
『 侍タイムスリッパ- 』
『 ヒットマン 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 寛一郎, 日本, 河合優実, 監督:山中瑤子, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 金子大地Leave a Comment on 『 ナミビアの砂漠 』 -現代人の心象風景-

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