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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 2020年代

『 イノセンツ 』 -超能力子どもジャンルの佳作-

Posted on 2023年8月6日 by cool-jupiter

イノセンツ 70点
2023年7月30日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム
監督:エスキル・フォクト

同僚の突然死やら自分自身のMRSA感染などもあり、簡易レビュー。

 

あらすじ

イーダ(ラーケル・レノーラ・フレットゥム)は両親の仕事の都合で、自閉症の姉アナと共に団地に引っ越しする。イーダはそこでベンジャミンという男の子と知り合う。彼は不思議な力の持ち主で、イーダはその能力に魅了されてしまう。一方、姉のアナはアイシャという女の子と不思議な形で心を通わせ始めていて・・・

ポジティブ・サイド

子どもの持つ純粋さと、それゆえの残酷さがよく描かれている。猫を殺すシーンは残酷極まりないが、大人だって堂々と尊厳死を議論している。子どもは大人の写し鏡で、逆もまた然り。子役たちの演技はどれも素晴らしい。子どもならではの無邪気さと、子どもならでは邪悪さが、表情にも仕草、行動にもさりげなく表されている。

 

友情と、その亀裂、そして最後の超能力対決までサスペンスが途切れることがない。特にラストの対決では、自閉症とコミュニケーションに対して大きな示唆を与えているように感じられてならなかった。

 

ネガティブ・サイド

団地というロケーションをもっと際立たせられなかったか。移民の子どもであることや顔の白斑など、差別・疎外される要素があり、実際に差別・疎外されるシーンがあれば、4人が奇妙な友情をはぐくんでいく展開にもっと説得力が出たものと思う。

 

総評

監督・脚本が『 テルマ 』の脚本を書いたエスキル・フォクト。同作と同じく人間の倫理観が大金テーマになっている。ハリウッドは超能力=国家の危機的な大味な展開に持っていってしまうが、子どもには子どもの世界があるのだということを本作は静かに、それでいて力強くアピールしている。大友克洋の『 童夢 』にインスパイアされているらしいが、そちらは未読。今度読んでみようかな。

 

Jovian先生のワンポイントノルウェー語レッスン

natt

ノルウェー語で night の意。劇中で子どもたちが夜寝る前に母親に Natto というシーンが複数回あるので、すぐに分かった。英語でも Good night と言わずに Night の一言だけで済ますことが多いが、ノルウェー語も同様のようである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 658km、陽子の旅 』
『 神回 』
『 セフレの 品格 プライド 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, スウェーデン, スリラー, デンマーク, ノルウェー, フィンランド, ラーケル・レノーラ・フレットゥム, 監督:エスキル・フォクト, 配給会社:ロングライドLeave a Comment on 『 イノセンツ 』 -超能力子どもジャンルの佳作-

『 キングダム 運命の炎 』 -キャラ映画になってきた- 

Posted on 2023年8月5日 by cool-jupiter

キングダム 運命の炎 65点
2023年7月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山崎賢人 吉沢亮 大沢たかお 杏
監督:佐藤信介

同僚の突然死やら自分自身のMRSA感染などもあり、簡易レビュー。

あらすじ

秦軍主力の韓への侵攻の隙を突いて趙が秦に侵攻。秦は大将軍・王騎(大沢たかお)を総大将に任命。その王騎から中華統一の動機を問われた秦王政(吉沢亮)は、かつての恩人・紫夏(杏)と果たした約束を語り・・・

ポジティブ・サイド

原作で最も面白い馬陽防衛戦とそこに至るまでの過程がきっちり実写化されている。山崎や吉沢、大沢たかおのキャラ再現度は相変わらず高い。飛信隊の面々もなかなか。ひょうきんだが熱情があり、そして思いやりもある。続編では・・・

趙の面々も濃い。原作ではかなり粘った馮忌をあっさりと料理したのは英断。

闇商の紫夏に杏がはまり役。漫画の実写化もここまで忠実にやると、それはそれで面白い。

ネガティブ・サイド

蒙武の見せ場が少なすぎ。

李牧の配役だけはちょっと違和感。もともとこの役者が演じるという噂はあったが、ここで実写御用達俳優を起用するのはちょっと違うのでは?龐煖を演じる役者もなんか違うような気がする。鵜堂刃衛(白字)はめちゃくちゃ似合っていたのだが。

総評

すべては続編の馬陽防衛戦の後半次第か。原作で最もドラマチックな戦いとなるが、「俺たちの戦いはこれからだ!」になるのか、それとも更なる続編製作に舵を切るのか。単純な漫画の実写化として見れば、キャラの再現度が非常に高いので、そこは評価できる。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

pay it forward

人から受けた恩を別の人に返す、の意。上方芸人の世界では、師匠やベテランは弟子や後輩に気前よく芸事を教えたり、あるいは飯をおごったりする。それを次世代につなげていく伝統がある。まさに pay it forward だ。Jovianは大学時代に寮で暮らしていて、まさにそういう伝統を体験してきた。廃寮になるまで、我が第一男子寮には pay it forward の精神は生きていたのだろうか。

次に劇場鑑賞したい映画

『 イノセンツ 』
『 658km、陽子の旅 』
『 神回 』

現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。

I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, アクション, 吉沢亮, 大沢たかお, 山崎賢人, 日本, 杏, 監督:佐藤信介, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 キングダム 運命の炎 』 -キャラ映画になってきた- 

『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』 -色々と詰め込みすぎ-

Posted on 2023年8月1日 by cool-jupiter

ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 60点
2023年7月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・クルーズ ヘイリー・アトウェル
監督:クリストファー・マッカリー

 

繁忙期のため、簡易レビュー。

あらすじ

ロシアの潜水艦が謎の事象により沈没。そこには恐るべき新技術の存在があった。イーサン・ハント(トム・クルーズ)はその技術を手にせんとする者との攻防を繰り広げることになるが、相手はハントがIMFに所属するきっかけを作った因縁の人物で・・・

 

ポジティブ・サイド

トム・クルーズが走ること、走ること。もはや恒例行事だが、この年齢でここまで出来るということを証明し続けるのは、それだけで尊敬に値する。クルーズがナルシストであるのは間違いないが、自己愛を証明し続けるのは誰にでもできることではない。

 

序盤の空港でのやりとりは、IT技術も交えた非常に現代的な攻防。さらにそこにエンティティ=人工知能の脅威を持ってくることで、緊迫感をさらにリアルなものにしている。

 

アクションも相変わらず豪華だが、変装や対話シーンも多く、IMFのエージェントらしい活躍をたくさん目にすることができた。特に孤立無援のはずなのにあれやこれやの物資を調達してくるルーサーに拍手。Guy in the chair でありながら漫画『 エリア88 』のマッコイ爺さんのようだ。Part Twoは間違いなくルーサーがエンティティを解析しているシーンから始まるはず。期待したい。

 

ハントの過去、就中、IMFのエージェントとなるきっかけを作った人物がヴィランということで、シリーズの総決算になりそうな予感。第一作以来の登場のキトリッジもそれを予感させる。

ネガティブ・サイド

トム・クルーズのエゴが色濃く反映されている気がする。序盤の砂漠のシーンとかは『 ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 』のリベンジをしたかったのだろうか。終盤の列車シーンも同作の冒頭の飛行機内シーンとそっくりに見えた。そもそも列車の上で戦うのも『 ミッション:インポッシブル 』へのオマージュというか焼き直し。さらに黄色の小型車でのカーチェイスはさすがにやりすぎ。これなら『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』のモロッコのカーチェイスの方が楽しめた。

 

アクションは凄いことは凄いのだが、どれもこれもシリーズ過去作の焼き直しに見える。トレーラーで盛んに喧伝されていた崖からのダイブも『 ミッション:インポッシブル / フォールアウト 』のパリ上空の軍用機からのダイブに劣る。全体的にイーサン・ハントというキャラクターではなく、トム・クルーズの「これをやりたい」欲求が強く出すぎていると感じた。ここらへんがハリソン・フォードがインディ・ジョーンズを演じる時と、トム・クルーズがイーサン・ハントを演じる時の違いのように思う。

 

エンティティ(字幕では文字数の関係でそれと訳されている)の脅威が今ひとつ伝わってこないのも惜しい。ロシアの原潜を自滅させ、銀行や政府も容易にハッキングし、無線でベンジーに成りすますというのは確かに多芸だが、オリジナルかと言われればそうでもない。最近だと『 M3GAN / ミーガン 』、古典的なところだと『 2001年宇宙の旅 』がAIの反乱を描いている。本作だけでは、エンティティが世界破滅の序曲だと感じられない。Part Two のオチが『 エクス・マキナ 』にならないことを切に祈る。

総評

やや期待外れか。さすがいつものIMFメンバーも高齢化が激しい。ヘイリー・アトウェルの新加入は良いのだが、『 M:I-2 』のナイアとキャラがかぶっていると感じるのは自分だけか。Part Two が(『 ローン・ガンメン 』+『 ボーン・アルティメイタム 』)÷2にならないことを祈る。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

state-of-the-art

芸術作品状態の、転じて「最新型の」、「最新鋭の」の意。

In the movie “Top Gun Maverick”, Maverick flew an F-14 and shot down two state-of-the-art SU-57s, which I believe is a feat that nobody can pull.

のような感じで使う。コロナ禍で日本の企業の多くがMS TeamsやZoomといった state-of-the-art technology をなかなか使いこなせなかったのは多くの人の記憶に新しいはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 キングダム 運命の炎 』
『 イノセンツ 』
『 658km、陽子の旅 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, アメリカ, トム・クルーズ, ヘイリー・アトウェル, 監督:クリストファー・マッカリー, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』 -色々と詰め込みすぎ-

『 君たちはどう生きるか 』 -宮崎駿の遺言-

Posted on 2023年7月23日 by cool-jupiter

君たちはどう生きるか 70点
2023年7月15日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山時聡真
監督:宮崎駿

『 風立ちぬ 』以来の宮崎駿の監督作品。これは一種の遺言だと思われる。本作は前情報が全くない状態で公開され、世間のレビュワー諸賢もネタバレにならないように慎重に本作を評している。なのでJovianもネタバレを割けてレビューをしたい。

 

あらすじ

眞人(山時聡真)は病院火災で最愛の母を亡くした。失意の父と共に田舎に疎開することになった眞人は、そこで不思議なアオサギに出会う。アオサギは眞人に「母親はまだ生きている」と告げてくる。眞人はアオサギを追って、離れにある不思議な塔に足を踏み入れて・・・

ポジティブ・サイド

ジブリ映画の集大成。といっても『 となりのトトロ 』や『 魔女の宅急便 』ではなく、『 千と千尋の神隠し 』や『 ハウルの動く城 』、『 崖の上のポニョ 』的な世界観が強く打ち出されている。思慕と別離の世界だ。

 

眞人が迷い込む世界は時の流れを超越した世界。そこでは過去と未来、生と死が混在している。二重らせんならぬ一重らせんはなかなかユニーク。コウノトリならぬペリカンがそれを食べる。なんというカオス。

 

その世界の深奥に鎮座ましますのは宮崎駿その人。世界はおもちゃ。しかしそれはもう崩壊する。誰かが新しいおもちゃを作らなければ。『 ネバー・エンディング・ストーリー 』的で、虚無が世界を覆う時、誰かが物語ることで世界を再生させなければならないということか。

 

物語として見ればイマイチかもしれないが、自伝かつ遺書だと思って鑑賞すれば、様々な解釈=メッセージが受け取れる良作だろう。我々はこの混迷の世界を生き残れるのか。我々はこの世界に真の友を持つことができるのか。我々は後継者を残すことができるのか。メッセージの受け取り方はなんでもいい。何かを感じ取れれば、それだけで充分。

ネガティブ・サイド

これはもうしゃーないのだが、やっぱり本職の声優を使ってくれないと、一発で醒めてしまう時がある。某女性キャラの声は聞いた瞬間に〇〇だなと分かってしまう。もちろんそういう声優もいるが、その場合に思い浮かぶのは声優の名前であって顔ではない。俳優や女優の場合、その人間の顔が思い浮かんでしまう。これはもう宮崎駿作品を観る時の修行というか、心構えだろう。不承不承に受け入れるしかない。

 

キリコが眞人を救出してくれた、あの石舞台古墳みたいなものは結局何だったのだろうか。

 

総評

普通に面白い。前情報なしでも楽しめる。ただし純粋なエンタメとして鑑賞するにはメッセージ性が強すぎるとも感じる。ジブリ作品をリアルタイムで追うことができなかった若い世代からすると、老い先短い老人がえらく説教臭い作品を作ったな、ぐらいにしか感じないかもしれない。コロナ禍で『 風の谷のナウシカ 』や『 もののけ姫 』がリバイバル上映されたが、ああいう試みを日本映画界はもっとやっておくべきだった。大学の後期が始まったら、若い世代に本作の感想をちょこっと聞いてみよう。宮崎の問いは40代ではなく10代に向けられているはずだから。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

heron

サギの意。鳥は非常に数が多いが、人間に馴染みのある動物でもある。少し田舎に行けば、あるいは水田や、それなりの池がある地域なら目にすることが多いだろう。NPBやMLBに将来、The Blue Herons なるチームが誕生するかもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』
『 658km、陽子の旅 』
『 神回 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, アニメ, ファンタジー, 山時聡真, 日本, 監督:宮崎駿, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 君たちはどう生きるか 』 -宮崎駿の遺言-

『 交換ウソ日記 』 -セクハラのオンパレード-

Posted on 2023年7月19日 by cool-jupiter

交換ウソ日記 40点
2023年7月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:桜田ひより 高橋文哉
監督:竹村謙太郎

妻が映画.comを見て、「これ☆4.1やで。漫画の出だしも面白かったし行こう」と言う。何か嫌な予感がしたので無料鑑賞クーポンを発行。この選択は正解だった。

 

あらすじ

黒田希美(桜田ひより)は、移動教室の机の中に「好きだ」と書かれた手紙を見つける。送り主は学校一のイケメン、瀬戸山潤(高橋文哉)からだった。希美は恐る恐る返事をしたため潤の靴箱に入れたことから、二人の交換日記が始まった。しかし、潤が告白した相手は実は希美の親友の江里乃だった・・・

ポジティブ・サイド

Line や Instagram のDM全盛のご時世に紙のノートで交換日記というのは実に微笑ましい。今どきの高校生がそんなことをするとは思えないが、それだけに二人が日記のやりとりに夢中になるのが分かる。多くの高校生の恋愛ものが告白するまでがゴールなのに対し、本作は告白から始まる、なおかつ相手を間違えるというところがユニーク。これはアイデアの勝利と言える。

 

主演の桜田ひよりは『 妖怪人間ベラ 』や『 映像研には手を出すな! 』での謎めいた美少女役が印象に残っている。本作では自分の中身がないようでいて芯のある高校生を上手く演じた。自分を表現するのが苦手なだけで、放送部員として時々流す音楽が自己表現の手段になっているという演出は悪くない。自分の気持ちに素直でありたいがゆえに自分を偽り親友を裏がってしまうという罪悪感を、薄幸そうな見た目にも乗じて上手く表出していた。

 

男で壊れる女の友情や、女同士の仲直りはテンプレ通りで及第点。全体的には落ち着くべき地点にしっかりと落ち着いたなという印象。

 

ネガティブ・サイド

ヒーローであるべき瀬戸山が全然それっぽくない。勉強ができないのはいいとしても、肝心のサッカーめちゃくちゃ下手くそなのには苦笑せざるを得なかった。もうちょっと練習しようや。それか監督がもっと役者を追い込まんと。江里乃のバスケも同様。ドリブルした瞬間に素人だとバレる。練習していたわけではないが、『 ショーシャンクの空に 』で数時間にわたって黙々とキャッチボールをしたと言われるモーガン・フリーマンを少しは見習うべし。

 

あとは瀬戸山の希美に対する目に余るセクハラの数々。原作は小説らしいが、どれくらいこういう描写があるのか。それとも映画化に伴って脚本家が色々と詰め込んできたのか。女子の髪の毛やらほっぺたやらを触る邦画は過去にもあったが、本作は酷過ぎ。本邦のアホな中学生高校生大学生男子が本作を観て、「そうか、好きな子にはこうやってアプローチしたらいいのか」と勘違いしないことを切に祈る。というか、今あっさりとネタバレしたけど、ええやろ。

 

交換日記というアイデアは悪くないのだから、後はそれがどうバレるのかというサスペンスを盛り上げなければならないが、その仕込みがあまりにもあからさますぎ。球技大会にかこつけず、なにかもっと別のもの、たとえば黒板の板書とか、放送室のすぐ外の掲示物とか、もっとさりげないヒントを出せたはず。おかげで中盤以降は惰性で観てしまった。

 

最後のエピローグも蛇足。もしやるなら希美が潤を完全に尻に敷く展開でないと意味がない。告白大失敗エピソードがその後の二人の力関係を決定づけてしまった、というのなら分かるが、そうなっていない後日談に意味などあるのか。

 

総評

本作は『 シラノ 』でお馴染みのシラノ・ド・ベルジュラックの変則バージョンなのだが、演出面が非常に弱い。というかJovian妻が読んだ漫画によると江里乃は瀬戸山をにくからず思っているそうだが、何故そこを変えた?そのせいで交換ウソ日記の内容に関して希美が葛藤するシーンが減ってしまった。脚本には自分の願望ではなく面白いアイデアを詰め込んでほしい。デートムービーにはならない。とにかくセクハラシーンが多すぎる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nothing lasts forever.

「永遠に続くものは何もない」、「何事もいつかは終わりを迎える」の意。劇中でも同様のナレーションがあった。良い状態・状況にも悪い状態・状況に対しても使う。コロナ禍や不景気でもいいし、付き合い始めや新婚のラブラブムードに対して使ってもいい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 君たちはどう生きるか 』
『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』
『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ラブロマンス, 日本, 桜田ひより, 監督:竹村謙太郎, 配給会社:松竹, 高橋文哉Leave a Comment on 『 交換ウソ日記 』 -セクハラのオンパレード-

『 デウス/侵略 』 -英国SFの珍品-

Posted on 2023年7月16日 by cool-jupiter

デウス/侵略 20点
2023年7月11日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:クラウディア・ブラック
監督:スティーブ・ストーン

近所のTSUTAYAで何となく手にした準新作。クソ映画だろうなという予感通りクソ映画だった。

 

あらすじ

地球人口が100億をはるかに超えた近未来、火星の軌道上に謎の球体を発見する。グレイ(クラウディア・ブラック)をはじめとした6名のクルーが調査のため火星軌道に派遣されるが、球体は地球上のあらゆる言語で「デウス=神」という意味の語を発信してきて・・・

 

ポジティブ・サイド

『 2001年宇宙の旅 』や『 エイリアン 』、近年の作品だと『 パッセンジャーズ 』を彷彿させる巨大宇宙船を大写しにするスタートに期待感が高まる。そしてそこが全てだった。

 

そうそう、宇宙船AIのミズはなかなかチャーミングだった。小説『 巨人たちの星 』のヴィザーのようだった。ChatGPTやGoogle Bardがこのレベルに来るのに、あと何年かかるだろうか。

 

ネガティブ・サイド

アイデアが陳腐すぎる。地球人口が爆発したので、それを間引いてやろうというプロットはは腐るほど観たり読んだりしてきた。謎の球体も『 スフィア 』のパクリに見えるし、序盤のアキレス号船内の展開も『 サンシャイン2057 』の後半にそっくり。最後の展開も『 ターミネーター3 』とそっくり同じ。そして最終盤は『 インターステラー 』でフィニッシュ。他にも色々な先行映画がいくつも思い浮かんだ。とにかくオリジナリティの欠如が甚だしい。

 

『 エイリアン2 』と同じく、クルーの誰もかれもが非常に口汚くしゃべる。ただ、エイリアンの世界では宇宙貨物船が当たり前の時代で、こちらは火星に6人を送り込むのがやっとの文明・技術レベル。そんな船に乗っている人間がこんな低レベルな喋りをするとは考えられない。個人的にはスラングは大好きだが、これもリアリティに欠ける演出だった。そもそも火星軌道と地球でリアルタイムに通信ができるなら、それは超光速通信を実現してしまっているわけで、だったら恒星間移住とは言わないまでも、とっくに火星に移住したり、あるいは地球環境を劇的に改善できていてしかるべきだろう。

 

SFを作るなら、もう少し scientifically correct を目指すべきだ。

 

総評

悪く言えばクソ映画。上品に言えば珍品。SFを作りたいはずが、ホラーやサスペンスの要素を中途半端に盛り込んでしまい、肝心のストーリーが盛り上がらず、キャラも深掘りされないという悪循環。まあ、しかし、数多くのクソ映画の上に傑作が成り立つのだから、今後も定期的にクソ映画を鑑賞して、ほんのわずかでも製作者に還元はしなければならないのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go fuck yourself

これは時々ドラマや映画で聞こえてくるし、『 サウスパーク 』的な友人がいれば日常でも使っていい。意味は「うるせえ、ボケ、死ね」ぐらいだろうか。映画のいちばん最後のクレジットシーンでこの台詞の応酬がある。人工知能がこういう台詞を正しく使い始めれば、人間はAIと適切な距離を取れているのだろうと個人的には思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』
『 君たちはどう生きるか 』
『 交換ウソ日記 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, SF, イギリス, クラウディア・ブラック, 監督:スティーブ・ストーン, 配給会社:ツインLeave a Comment on 『 デウス/侵略 』 -英国SFの珍品-

『 1秒先の彼 』 -リメイク成功-

Posted on 2023年7月16日 by cool-jupiter

1秒先の彼 65点
2023年7月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:岡田将生 清原果耶
監督:山下敦弘

 

『 リンダリンダリンダ 』や『 もらとりあむタマ子 』の山下敦弘監督が台湾の『 1秒先の彼女 』をリメイク。まあまあ面白かった。

あらすじ

何事もワンテンポ早いハジメ(岡田将生)に齢30にしてモテキ到来。路上ミュージシャンのサクラコとの宇治での花火大会デートの当日、気が付けばその日は過ぎていた。失くした一日の謎を追い求めるハジメの陰に、何事もワンテンポ遅いレイカ(清原果耶)がいて・・・

ポジティブ・サイド

原作とは主人公たちの性別が逆だが、それはそれで成功していると思う。岡田将生演じる能天気京都人には笑った。まさに「京都人の脳内地図」(←気になる人はググるべし)の持ち主。Jovianは表現者としての岡田将生はあまり評価してこなかったが、本作の演技はまあまあ良かったと感じた。

 

サクラコ役も当然ながら原作とは性別逆転しているが、これも良かった。タチの悪い男よりもタチの悪い女と対比させた方が、真のヒロインの輝きが増す。

 

その真ヒロインを演じた清原果耶は、これまで『 デイアンドナイト 』や『 護られなかった者たちへ 』では社会のダークな一隅に生きる女子だったり、あるいは『 宇宙でいちばんあかるい屋根 』のような人と人との交流ファンタジーや、『 まともじゃないのは君も一緒 』など、一筋縄ではいかないヒロイン像を打ち出すなど、少女漫画の実写化ヒロインを演じてこなかったというところでポイントが高い。

 

原作の肝だった、消失した一日の中での男の純粋な(それゆえにキモイ)行動の数々をしっかり再現したのも素晴らしい。そして純粋さとキモさを両立させたところも特筆できる。今後も、unorthodox なヒロインを演じ続けてほしい。

 

ラブコメとして間違いなく標準以上の面白さ。デートムービーに最も適しているはず。

 

ネガティブ・サイド

原作の弱点、すなわち「今日は月曜日だ」という街の人々の答えがやはり腑に落ちない。その答えはどう考えてもおかしい。

 

また、ハジメの消えた一日に対して、これでもかと説明が加わったのは個人的にはやりすぎだと感じる。またハジメとレイカ以外のキャラが ”そこ” で動いてしまうのにもとんでもない違和感が。一応説明はされるのだが、その理屈で行けばもっと頻繁にタイムストップが起きていることになる(はず)。

 

クドカンの脚本であるため、必要以上にキャラに走りすぎてストーリーがちょっと・・・というところがある。ハジメの家族のサブストーリーはばっさり削ってよい。ハジメとサクラコ、その裏で進むレイカの物語だけに集中した方が、もっと濃密かつ効率的なストーリーテリングができたはず。

総評

ちょうど6月に夫婦で天橋立観光に行ってきたところなので、本作は非常に楽しめた。天橋立を挟むことで、ハジメとレイカの二人が star-crossed lovers であることがより強調されたように思う。突っ込みどころもいっぱいあるのだが、一途な片想いが両想いに変わるという物語そのものは陳腐だが、その過程が極めてユニーク、それゆえに面白い。原作鑑賞済みでもチケット購入の価値はある。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

What day is it today?

「今日は何曜日ですか?」の意味。夜勤だったり、土日勤務があるような仕事の人が使う印象がある。Jovianのように大学の授業に携わったりしている場合もたまに使うかな。曜日ごとに授業の内容が決まっているクライアントもあるので。自分が使わなくても、いきなり尋ねられることもあるかもしれないので、とりあえず知っておくべき表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』
『 君たちはどう生きるか 』
『 交換ウソ日記 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, ファンタジー, ラブコメディ, 岡田将生, 日本, 清原果耶, 監督:山下敦弘, 配給会社:ビターズ・エンドLeave a Comment on 『 1秒先の彼 』 -リメイク成功-

『 忌怪島 きかいじま 』 -夏恒例の糞ホラー-

Posted on 2023年7月12日 by cool-jupiter

忌怪島 きかいじま 20点
2023年7月8日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:西畑大吾 山本美月 當真あみ
監督:清水崇

簡易レビュー。

 

あらすじ

VR研究チーム“シンセカイ”の片岡(西畑大吾)は、父親の死をきっかけにある島を訪れる。自らの研究によって父が最後に見た光景を再現したところ、不可解な現象が観測された。そこから島では不可解な死亡事件が発生。片岡は環(山本美月)とともに真相を解明しようとするが・・・

ポジティブ・サイド

密室のオフィスなのに、水の中へドボンというのはなかなかシュール。パソコンやら何やらの機器に囲まれた環境が一気に恐怖空間と化すのも悪くない。

 

VR世界と現実世界をつなぐというアイデアは悪くない。小説『 リング 』の続編である『 ループ 』や『 エス 』は当時は革新的だったが、今後は本作のようなデジタルなホラーというジャンルがどんどん開拓されていくのだろう。

 

ネガティブ・サイド

リアリティがさっぱり。というか、基本的にどこかで見たシーンばかり。

 

また主要キャラがアホの集まり。霊能者の婆さんは有能だが役立たず。シンセカイのメンバーも、鳥居があちらとこちらをつないでいると聞いたのなら、その鳥居の場所を尋ねろ。闇雲に探し始めて、見つからないから婆さんに聞こう、ってアホかいな・・・ 全編だいたいこんな感じで動くので、見ていて本当にイライラした。

 

浅瀬とはいえ、海面に浮かんでいる鳥居を女子二人が引っ張ってきたというのは、膝どころか足首すら濡れていないのは何故なのか。海水べったりのはずの鳥居が、マッチの火だけであっさりと灰と化すのも解せない。灯油でもぶっかけていたとでも言うのか。

 

イマジョの呪いや島の閉鎖性というのも、結局は『 犬鳴村 』や『 牛首村 』と同工異曲。クライマックスで笹野高史演じるシゲルの秘密も、エドガー・アラン・ポーの『 黒猫 』かいな。清水崇のクリエイティビティは完全に枯渇したのだろう。

 

オチも結局『 犬鳴村 』路線だろうなと思わせて、やっぱりその通り。『 マトリックス レザレクションズ 』がなぜ駄作だったのか。それと同じ轍を思いっきり踏みに行くのは、果たして何故なのか。故意にクソ映画を作りに行っているのだろうか。

 

総評

夏恒例の糞ホラーとしか言えない。ところどころに面白いシーンはあるのだが、それが持続しない。清水崇もそのスタッフたちも、もはやテンプレ通りの作業で映画を作っているとしか思えない。まあ、それでもJovianのひとつ前の座席ではカップルが時々小声でワーとかキャーとか言いながらくっついていた。おそらく日本中でこういう光景が見られる限り、本作のようなゴミが作られ続けるのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

glitch

劇中ではバグという言葉が使われていたが、バグはプログラミングのミスで再現性があるものを指す。正しくは様々な要因から一時的に発生しうるエラーであるグリッチがふさわしい。別にIT畑の人間ではないJovianでもこれぐらい知っている。なので西畑大吾演じる片岡にリアリティを感じられなかった。『 シュガー・ラッシュ 』のヴァネロペのあだ名がGlitch だったと思い出せる人はかなりの映画通かつ英語通であろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』
『 Pearl パール 』
『 君たちはどう生きるか 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ホラー, 山本美月, 日本, 當真あみ, 監督:清水崇, 西畑大吾, 配給会社:東映Leave a Comment on 『 忌怪島 きかいじま 』 -夏恒例の糞ホラー-

『 リバー、流れないでよ 』 -タイムループものの秀作-

Posted on 2023年7月10日 by cool-jupiter

リバー、流れないでよ 70点
2023年7月2日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:藤谷理子
監督:山口淳太

嫁が観たいというのでチケット購入。『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』に次ぐタイムループものの秀作だった。

 

あらすじ

京都・貴船の老舗旅館で働くミコト(藤谷理子)は、ある時、自分が特定の2分間を繰り返していることに気づく。そしてそれは自分だけではなく、旅館の他の従業員や宿泊客も同じだった。一同は何とかしてループから抜け出そうと知恵を絞るが・・・

ポジティブ・サイド

タイムループものは小説でも映画でも数多く生み出されてきたが、ループの幅が2分というのは異例の短さではないだろうか。本作は2分という限られた時間のループをひたすら繰り返すことで、「次はどうなる?」、「え、これってどういうこと?」という観る側の思考を次から次に刺激してきて飽きさせない。

 

キャラクターたちの掛け合いも、基本全員が関西人(京都人)なのでノリがいい。高速の会話劇が旅館内部で、時には道路を挟んだ別館まで巻き込んで、従業員たち、そして宿泊客たちも巻き込んで、毎ループごとに少しずつ物語を進めていく。

 

途中で、ループの真相というか原因が明かされ、「まあ、京都やしな」と一瞬納得させられてしまう。だがしかし、真相はそんなものではなかった。正直、デウス・エクス・マキナなのだが、そこに至るまでが面白いので許せてしまう。『 ファウスト 』ならずとも「時よ止まれ」と思うことは誰にでもある。しかし未来は否応なくやって来る。現在とは、それを受け止める準備をすることなのだろう(つまり、本作は京都らしいハイデガー哲学の映画化なのだ)。

 

そうそう、ひとつ感心したのが、ミコトがループの最初に戻った瞬間に野鳥(コガラ)のディーディーディーという鳴き声が聞こえる時と聞こえない時があるが、それが聞こえる時にはミコトは真っ先に他の従業員のところに向かっていく(ように思えた)。だとすると山口監督、相当な手練れである。これから鑑賞する方はコガラの鳴き声にも注意されたし。

 

ネガティブ・サイド

刃傷沙汰になったり、自殺したりと、途中で結構ハラハラする展開になるのだが、ミコトが殺されるルートがありそうと思わせてなかったのは何故?絶対あの作家先生が行き詰っていた原因である、キャラクターの死生観とリンクしてくると思った。鞍馬山で、あの世界観の中で「私は天狗です」とか言ったら、かなりの確率で一回は撃たれると思うのだが。

 

総評

『 四畳半神話大系 』や『 四畳半タイムマシンブルース 』の脚本を担当してきた上田誠が、またしても京都を舞台にした良作を送り届けてくれた。記憶喪失ものとタイムトラベル or タイムループものは、オープニングが抜群に面白く、しかし最後は尻すぼみというパターンが非常に多い。本作もまさにそのパターンにはまっているのは残念。けれど、まあ、そこに至るまでに散々楽しませてくれるから良しとしようではないか。ちなみにJovianはこの夏もしくは秋に嫁さんと貴船旅行に行くことにした。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

break the loop

ループを解く、の意。反対は get stuck in a loop = ループにはまる。近年でも『 パーム・スプリングス 』が製作されたように、タイムループものは定期的に出てくる。なので、映画ファンかつ英語学習者なら、これらの基本的な表現は知っておいていいだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 忌怪島 きかいじま 』
『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』
『 Pearl パール 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, SF, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:山口淳太, 藤谷理子, 配給会社:トリウッドLeave a Comment on 『 リバー、流れないでよ 』 -タイムループものの秀作-

『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』 -さらば冒険の日々-

Posted on 2023年7月8日 by cool-jupiter

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 70点
2023年7月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ハリソン・フォード マッツ・ミケルソン カレン・アレン
監督:ジェームズ・マンゴールド

 

インディ・ジョーンズの引退作品。前作の『 インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 』がアレだったせいか、予想以上に楽しめた。

あらすじ

学校を退官したインディ・ジョーンズだが、妻マリオン(カレン・アレン)とは別居中で、俗世にもなじめずにいた。そんな彼の前に教え子のヘレナが現れ、インディが若き日に発見し、紛失したアンティキティラの片割れを見つけることができると言う。インディは、アンティキティラを求めて迫りくる敵から逃れつつ、再び冒険の旅に出ることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

ハリソン・フォードが最後となるインディ・ジョーンズ役を等身大で演じた。ここでいう等身大とはもちろん80歳手前のお爺さんのこと。

 

もちろんいきなり年老いたインディを見せられてもアレなので、デジタル・ディエイジング技術でもって若き日のインディ・ジョーンズをスクリーンに復活させた。シリーズ恒例のノンストップ・アクションが炸裂。ジョン・ウィリアムズの “Raiders March” ともあいまって、一気にインディ・ジョーンズの世界に入っていける。

 

舞台は一転して現在(1969年)。大学も退官し、俗世に馴染めないインディの姿にはどうしたって哀愁が漂う。これまでの作品では学生は皆、熱心に授業を聞いてくれていたし、オフィス・アワーでもないのに質問攻めにあっていた。同じ大学教員の端くれとして、インディの気持ちはよく分かる。

 

その一方でナチスと激闘を繰り広げ、米軍のスパイとしても大活躍したインディが “I like Ike.” はまだしも、“Hell no, we won’t go!” を叫ぶ姿にも違和感を覚えたが、これは計算された伏線であった。なるほどなあ、前作はインディ・ジョーンズというキャラが、インディ・ジョーンズという人間であったという面を掘り下げたが、今作はそうした面をさらに追求したと言える。

 

今回のガジェットは、ちょっとした歴史好き(歴山大王がパッと誰だか分かれば十分な歴史好きだ)なら誰もが知っているアンティキティラ、そしてキーパーソンはアルキメデス。『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』の聖杯以外はフィクション要素満載だったシリーズが、現実に近づいてきた。これもキャラクターとしてのインディ・ジョーンズの人間的側面をより強く描きたいという製作者側の願望もしくは狙いなのだろう。

 

シリーズ恒例の世界を股にかけた大冒険は本作でも健在。謎解きの面白さも維持されているし、 共に冒険に出るヘレナやテディもキャラが立っている。マッツ・ミケルセンがインテリかつ過激思想の持ち主というヴィランを好演。東西冷戦は軍拡競争、すなわち科学力の争い。考古学とは相容れない。だからこそ、芸術や文化、歴史を破壊しようとしたナチスをもう一度敵役に据える、という判断は賢明だった。最初は『 帰ってきたヒトラー 』か、いやいや変化球で『 ブラジルから来た少年 』的なものを狙っているのかと思ったが、このヴィランはさらに違うことを考えていた。

 

クライマックスのインディの決断には涙が出そうになった。厭世家にならざるを得なかったインディならではの心情だろう。

 

そうそう、『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』の数少ないネガティブだった、古典語を話すインディ・ジョーンズが第5作にしてついに実現。ラテン語学習者のJovianは一人歓喜した(インディたちが話したのはラテン語ではなかったが)。

 

ネガティブ・サイド

アンティキティラのもう半分を探す必然性をインディ自身が持っていない。ヘレナを追う敵から、知らない間に一緒に逃げるという、かなり消極的な冒険への旅立ち。もっとインディ自身の探求心を刺激するイベントが必要だった。

 

バンデラスの扱いが雑。『 エクスペンダブルズ 』のドルフ・ラングレンよりも酷い。

 

シリーズ恒例のユーモアとホラー要素が薄かった。前作がアレだったとはいえ、やはりスピルバーグ御大がメガホンをとるべきだったのではないか。

 

総評

意味ありげなラストシーンは、ついに安住の地を見つけたインディが、冒険はやめるけど、インディアナ・ジョーンズであることはやめない、という宣言なのだろう。そこからの爆音レイダース・マーチで、シリーズは本当に終わったのだなと実感した。トム・クルーズが本作鑑賞後に「自分も80歳までイーサン・ハントを演じたい」と言ったそうな。とりあえず、ハリソン・フォード、お疲れ様!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Give’ em hell!

直訳すれば「あいつらに地獄を見せてやれ」だが、実際は激励の言葉として使われる。『 トップガン マーヴェリック 』でも出撃前にハングマンがルースターに You give ‘em hell! =ぶちかませ、と言っていた。状況によって「やってやれ!」「お前ならできる!」のようにも訳せる。デカい勝負(プレゼンや入札など)に出る同僚にかける言葉としてもありだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アドベンチャー, アメリカ, カレン・アレン, ハリソン・フォード, マッツ・ミケルセン, 監督:ジェームズ・マンゴールド, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』 -さらば冒険の日々-

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