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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 韓国

『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』 -自分らしさを弱点と思う勿れ-

Posted on 2025年6月30日 by cool-jupiter

ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 80点
2025年6月28日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:キム・ゴウン ノ・サンヒョン
監督:イ・オニ

 

なぜか近所の松竹系劇場が土日は本作を上映しない。仕方がないのでTOHOシネマズへ向かう。

あらすじ

ゲイであることを隠しながら生きるフンス(ノ・サンヒョン)は、奔放に生きるジェヒ(キム・ゴウン)と友人になる。互いの恋愛事情には干渉することなく友情を深めていく二人。そして条件付きで同棲することなっていくが・・・

ポジティブ・サイド

男女の友情は成立するのかという問いは古今東西で常に論じられてきたように思う。本作はその命題に対して一定の解を示したと言える。

 

刹那的に生き、恋に恋するタイプのジェヒと、ゲイであることが劣等感になってしまっているフンスが、友人関係になっていく過程が面白い。互いが互いを気に掛けるべき存在であると認識していくが、そこを言葉ではなく表情や動作でじっくりと描いていく。特に、ライターを小道具としてうまく使っていて、あるクラブのシーンでは唸らされた。

 

同居のきっかけにも説得力がある。いや、事件自体は( ゚Д゚)ハァ?というものだが、だからこそジェヒの家にフンスが引っ越してくるのだという話の流れは十分に首肯できるものだった。

 

普通ではない二人が同居しながらも、互いの恋愛事情には決して踏み込んでいかない。その距離感が絶妙だ。そして、それぞれが語り、そして歩んでいくロマンスの道も甘く、しかしほろ苦い。

 

「執着することが愛だというのなら、自分はまだ愛したことがない」というフンスは、大学やクラブで刹那的な情事にかまけていく。一方で、その相手に徐々に依存し、執着していくようになっていくことに無自覚だ。その自分の心境の変化を数年かけてじっくり描き出していく。初恋は実らないというが、失って初めて「自分は執着していたんだな」と思える関係性は、対象が異性であれ同性であれ、美しいにちがいない。

 

「自分らしさがなぜ弱点なのか」というジェヒの恋模様もかなりビター寄りのビタースイートだ。クラブで夜な夜なヒャッハーしつつ、学内でしっかりステディも作る。しかし・・・、この展開は見るに堪えないというか、かなりしんどい。特にある事件で年配女性がジェヒがなじられるが、まさに自分らしさを弱点・欠点扱いされ、さらにそれはジェヒの罪ではないというシーンは本当に胸が痛んだ。

 

大学に馴染めない二人が一般社会でも馴染めるわけがなく、ジェヒは就職先の会社内で職制と序列に適応できず、フンスは就職自体できない。そんな中でも二人の同居生活は続いていく。大都市という人だらけであるがゆえに孤独が強調されてしまう環境で、同病相哀れみ、肝胆相照らす仲の人間がいることがどれだけ心強いことか。

 

母にカミングアウトできないフンスの物語では『 君の名前で僕を呼んで 』がガジェットとして登場する。韓国における映画の影響力と、韓国国民の感受性の高さを感じさせるサブプロットが非常に興味深かった。

 

ジェヒもジェヒでクズ男吸引体質とでも言おうか、まったく報われない関係にばかり身を投じてしまうのが痛々しい。しかし、それを救ってくれるのが、かつて同じようなシチュエーションに駆けつけてくれなかったフンス。このシーンでは正直ちょっとウルっと来てしまった。

 

映画のエンディングでは、劇場のあちこちでお一人様女子たちのすすり泣きが聞こえた。明るくなってから気付いたが、驚きの女子率だった。それも女子同士のペアかお一人様。男女で来ていたのはパッと見でJovian夫妻以外には3組程度だったか。本作が以下に女性に訴求力を持っているのかを垣間見たように思う。

 

ネガティブ・サイド

タバコが意味あるガジェットとして頻繁に用いられるが、フンスとジェヒが二人同時に吸うシーンがなかったのは意外。Jovianは学生時代、仲の良かったドイツ人女子やアルゼンチン人女子とよく一緒にタバコを吸っていたし、彼女たちが帰国する前日には、互いに火をつけたタバコを交換したりもした。間接キスなのだが、そんなことは全く気にならなかった。そんな友情のシーンを見てみたかった。まあ、これは個人的すぎる願望か。

 

総評

傑作である。ステレオタイプであることを承知で言うが、男であるJovianがこれほど感銘を受けるのなら、自分らしさというものに苦しめられる女性なら、もっと力強さや励ましや肯定感を与えられるだろう。観客の反応がそれを如実に物語っている。自分らしさを肯定してくれる人が一人でもいれば、そして誰か一人に執着するような人生の一時期があれば、それはきっと不幸な人生にはならないはず。そう思わせてくれる作品だった。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

パリパリ

早く早く、の意。『 ベテラン 凶悪犯罪捜査班 』でも紹介した表現。韓国人のせわしない気質をよく表した、映画やドラマでおなじみの表現。関西人ならこの感覚が肌でわかることだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 28年後… 』
『 フロントライン 』
『 この夏の星を見る 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, キム・ゴウン, ノ・サンヒョン, ヒューマンドラマ, 監督:イ・オニ, 配給会社:KDDI, 配給会社:日活, 韓国Leave a Comment on 『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』 -自分らしさを弱点と思う勿れ-

『 脱走 』 -南へ向かう理由とは-

Posted on 2025年6月27日2025年6月27日 by cool-jupiter

脱走 65点
2025年6月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ジェフン リ・ヒョンサン
監督:イ・ジョンピル

 

『 サムジンカンパニー1995 』のイ・ジョンピル監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

除隊を目前に控えたギュナム(イ・ジェフン)は密かに脱北を計画していた。しかし、同じく脱北をもくろむ部下に計画を見破られたギュナムは、二人での脱出を提案する。あえなく発見された二人だが、ギュナムは脱出者を発見した英雄として扱われてしまい・・・

ポジティブ・サイド

北と南の反目と融和は数々の韓国映画のテーマだが、脱北する兵士に焦点を当てるのは珍しい。ウクライナでもロシアでもひと頃は脱走兵が盛んにニュースになっていたが、軍から逃げたくなるのは決して珍しいことではないはず。北朝鮮のように先軍政治などといって、国家まるごと軍のようなところなら、それこそ亡命したくなって当たり前。本作はなぜ北から逃げ、南を目指すのかについてユニークな答えを呈示してくれる。

 

除隊してしまっては国境線近くの基地から離れてしまい、38度線を超えるのが難しくなる。雨が降ってしまってはせっかく作った地雷原の地図が無駄になってしまう。様々な制約から、もう今しかないというタイミングでの脱北は緊迫感抜群。そこからのプチドンデン返しと、旧友が追手になって迫ってくる展開も手に汗握る。この旧友がとある特技の持ち主なのだが、それが追跡部隊の司令官として生きているところも見逃せない。逃げる側と追う側の個人的な信念が対照的で分かりやすい。つまるところエーリッヒ・フロムの『 自由からの逃走 』の反対なのだ。世界がナショナリズムに回帰しつつあり、そこにファシズムの萌芽も見られる今、本作は自由について考えるきっかにもなりうる。

 

主人公はどこかで見たことのある顔だと思ったら『 建築学概論 』の気弱男ではないか。本作では部下に優しい上官ながら、相手を欺く際には大胆に振る舞い、対決すべき相手には敢然と立ち向かうという、いくつもの顔を見せた。最後に見せる、とある家族への顔、そして誰もいない中で自分だけに見せる顔と、とにかく多彩な表情を使い分けた。北でも南でも、人間は人間。そして人間である限り、一つの顔しか持てないなどということはない、というのが本作のメッセージの一つなのだと思う。

 

ネガティブ・サイド

ちょっと設定に無理がある。そもそも軍隊は四六時中臨戦態勢なわけで、ギュナムがあんなに夜な夜な集団の寝所、さらには基地すらも抜け出して、地雷原の地図の製作に邁進できるものなのか。その地図も底なし沼でびちゃびちゃのボロボロにはならなかったのか。

 

また、ギュナムの射撃の腕前が笑ってしまうほどに良い。良すぎる。スコープ付きのライフルで照準をしっかり定めて撃つスナイパーよりも軽々と遠方の的に当ててしまうのは、いくらなんでも非現実的すぎる。

 

途中で仲間になった連中の結末を暗示程度でよいので映し出してほしかった。

 

総評

脱北のしんどさがよく分かる一作。成功や自由を夢見ての逃走ではなく、成功の手前の段階、あるいは自由の代償を求めての逃走になっている点がユニーク。韓国も『 ソウルの春 』が続けば、北朝鮮のようになっていたのだろうか。平和日本の今に完敗したくなると共に、平和しか知らない日本に一抹の不安も覚える。倒れても立ち上がれるのが本当の意味での良い社会。本邦はどうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒョン

兄の意味だが、必ずしも血のつながりはなくてもよい。日本語で年長の男性に親しみと敬意をこめて兄貴と呼ぶのと同じこと。そういえば「俺のことはヒョンと呼べ」と言ってくれた韓国系アメリカ人の元同僚は元気にしているだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』
『 28年後… 』
『 フロントライン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, イ・ジェフン, リ・ヒョンサン, 監督:イ・ジョンピル, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 脱走 』 -南へ向かう理由とは-

『 タイヨウのウタ 』 -アメリカ版リメイクよりも面白い-

Posted on 2025年5月21日 by cool-jupiter

タイヨウのウタ 70点
2025年5月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チョン・ジソ チャ・ハギョン
監督:チョ・ヨンジュン

 

邦画『 タイヨウのうた 』の、アメリカ版リメイク『 ミッドナイト・サン タイヨウのうた 』に続く韓国リメイク。邦画もアメリカ版もそれなりに面白かったので、本作もチケット購入。

あらすじ

XPを患うミソル(チョン・ジソ)は太陽の下に出られない。いつしか部屋の窓から見るだけのフルーツ販売のミンジュン(チャ・ハギョン)に恋をしていた。ある時、夜中に販売に来ていたミンジュンを追いかけ、思い切って声をかけたミソルだが・・・

ポジティブ・サイド

日本版もアメリカ版も、夜中に一人寂しく外でギターを弾いていた主人公だが、今作ではそもそも主人公のミソルが外に出ないという設定。だからこそ夜中にミンジュンを思い切って追いかけるシーンがよりドラマチックに感じられた。

 

ストリートミュージシャンになるのではなくYouTuberになるというのも現代的かつ現実的。病気を公表すると、自分という人間ではなく病気が注目されてしまう。だから顔出ししないというのも説得力がある。

 

ミンジュンが役者志望というところがコメディ要素にもロマンチック要素にもシリアスな要素にもなっている点が良かった。酒の力を借りてもなかなか真剣な告白ができないミソルが、ポロっと尋ねた質問へのミンジュンの答えも面白い。

 

なかなか距離を詰められないミソルと、思いがけない方向から距離を縮めてくるミンジュン、それをアシストするミソルの父と母が良い感じ。特にお母さんはネットフリックスの韓国ドラマでは母親役の常連。妻のネトフリのビンジウォッチに便乗しているので、それぐらいは分かる。

 

病気が進行するのはどうしようもないこと。これは日本版でもアメリカ版でも同じ。韓国版はアッと驚く速さで物語を進行させてしまう。その間に何があったかは観る側の想像力に委ねられるが、とあるシーンでのミソル父の非常に複雑な表情がすべてを物語っていたように思う。

 

歌い手として生きて、歌い手として死んでいく。典型的なお涙ちょうだいストーリーながら、かなり上手くまとめたなという印象を受けた。

 

ネガティブ・サイド

ミンジュンの父が一切出てこなかったが、編集でカットされたのか、そもそも出番は想定されていなかったのか。

 

ミンジュンは韓国ネットでは相当におもちゃにされるであろう演技をテレビドラマで披露したが、逆にあれで街を歩いても誰にも注目されないというのは解せなかった。また、大物YouTuberと俳優の卵のカップルなのに、デートの際に周囲の目にあまりにも無頓着に思えた。

 

とあるラジオのDJがシレっとすごいことをアナウンスしていたが、韓国では普通のことなのだろうか。

 

総評

腑に落ちない点や深掘りされないサブプロットもあったが、きれいに着地を決めた作品。面白いからリメイクされるわけで、そこに韓国の映画やドラマが得意とする不治の病という要素をつけ加えれば、大失敗にはならない。邦画だと10代の未熟な恋という感じだったが、こっちは20歳過ぎの純情だけれど大人っぽい恋に仕上がっている。若い世代のデートムービーにもいいだろうし、ミソルの両親に感情移入できる要素が満載なのでシニアにもお勧めできる佳作になっている。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チョギ

劇中でミソルがミンジュンに話しかける時に何度も口にする台詞。意味は「あの」や「すみません」にあたる。いつか3度目の韓国旅行に行った際には、場末の定食屋で「チョギ、アジュマ、チャ、チュセヨ」=「あの、おばさん、お茶をください」ぐらいは言ってみたいと思っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 新世紀ロマンティクス 』
『 金子差入店 』
『 か「」く「」し「」ご「」と「 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, チャ・ハギョン, チョン・ジソ, ラブロマンス, 監督:チョ・ヨンジュン, 配給会社:ライツキューブ, 韓国Leave a Comment on 『 タイヨウのウタ 』 -アメリカ版リメイクよりも面白い-

『 ベテラン 凶悪犯罪捜査班 』 -続編にも期待大-

Posted on 2025年4月13日 by cool-jupiter

ベテラン 凶悪犯罪捜査班 75点
2024年4月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ファン・ジョンミン チョン・ヘイン
監督:リュ・スンワン

 

『 ベテラン 』の続編。前作のキャラや要素を引き継ぎつつ、ドチョルの「私」の部分が掘り下げられた秀作だった。

あらすじ

罪を犯しながら法で裁かれない悪人たちが次々に殺害された。ヘチと呼ばれる実行者に世論は沸騰。そんな中、かつてドチョル(ファン・ジョンミン)らが逮捕したチョン・ソグが殺人の刑期を終えて出所。世論はヘチによるチョン・ソグへの私刑を支持。ドチョルたちは新人警官パク・ソヌ(チョン・ヘイン)を交えてチョン・ソグの警護に当たるが・・・

ポジティブ・サイド

コメディ全開のオープニングのアクションから一転、韓国社会の世論を大いに喚起させる凶悪連続殺人犯の出現で、そうしたムードは一変。そしてまさかのチョン・ソグの再登場に観ている側の怒りのボルテージも上がっていく。そしてヘチの標的であるチョン・ソグの警護にあたるドチョルの怒りのボルテージも当然ながら上がっていく。キャラと観客の感情をシンクロさせる手法はシンプルだが効果は抜群。

 

ヘチの正体は一番最初の目のシーンだけでほとんど明示されているわけで、ある意味、それに気付かないドチョルたちチームのメンバーに「おい、早く気付け」と観ているこちらがやきもきしてしまう。これもサスペンスを盛り上げる手法としてシンプルながら効果は抜群だ。

 

YouTuberが派手に騒いで収益を狙うというのは日本も韓国も同じ。迷惑系配信者のジョニー・ソマリへの攻撃などを見ると、韓国のYouTuberは日本のYouTuberよりも狂暴で、民度としてはいかがなものか。まあ、日本の方はそういう輩が選挙に出てきたりするので迷惑度としては五分五分か。ただ、YouTubeやソーシャルメディアのおかげで、偏った形とはいえ世論がある程度見える化されたことをそのまま映画に持ち込んだのは非常に現代的。日本も『 白ゆき姫殺人事件 』をバージョンアップさせたような作品作りが求められる。

 

韓国では当たり前のように軍隊上がりがいるので、『 殺人鬼から逃げる夜 』のように一般人が腕っぷしの強さを見せることに違和感がない。本作はそれに加えて前作通りの「痛みが見る側にダイレクトに伝わる」アクションを徹底。事件を解決して「よっしゃー!」ではなく、「疲れた」となるところが面白く、かつリアルだった。

ネガティブ・サイド

ヴィランの魅力というか、悪が悪として躍動する様は前作の方が上だった。日本でもねずみ小僧のような義賊がもてはやされた時代があったが、今作のヘチは民衆に還元するのではなく、単なる自己満足に見えなかった。

 

チョン・ソグはどうやって誘い出された?仮にクローン携帯だとして、たとえばソグの母親の携帯はどうやってクローンしたというのだろうか。

 

総評

チームとしての活躍や一体感もさらにアップ。加えて、こちらの見たかったドチョルの「私」の部分、すなわち夫および父親としての部分が、物語に大きく関わっている。事件を解決した時にドチョルがチームに対して見せる顔、そして家族に対して見せる顔が、非常に対照的で印象的だった。続編は「ドチョル、最後の事件」的に5~6年後かと思ったが、割と早くに実現しそう。こちらも制作と公開が待ちきれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

パリパリ

早く早く、の意。日本語と同じで二回繰り返すことが多い。韓国の映画やドラマを観ていると、かなりの頻度で使われていることが分かる。大阪と同じで、いらち(せっかち)が多いのだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 悪い夏 』
『 アマチュア 』
『 片思い世界 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, チョン・ヘイン, ファン・ジョンミン, 監督:リュ・スンワン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 ベテラン 凶悪犯罪捜査班 』 -続編にも期待大-

『 ベテラン 』 -再上映に感謝-

Posted on 2025年4月8日2025年4月8日 by cool-jupiter

ベテラン 75点
2025年4月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ファン・ジョンミン ユ・アイン
監督:リュ・スンワン

 

『 ベテラン 凶悪犯罪捜査班 』上映前に前作を劇場で再公開。ありがたい。こういうリバイバル上映はもっと行われてほしい。

あらすじ

広域捜査隊員のドチョル(ファン・ジョンミン)は、とあるパーティーで大企業幹部のテオ(ユ・アイン)と出会い、犯罪の臭いを嗅ぎつける。そのテオの関連会社勤務で、ドチョルとも旧知のトラック運転手が自殺した。事件の背後にテオの存在を確信するドチョルは捜査を始めるが・・・

ポジティブ・サイド

冒頭の警察らしからぬドチョルのおとり捜査に、直後のキレッキレのアクション、そして締めのユーモアと、冒頭から楽しませてくれる。

 

そんなドチョルが今作のヴィランのテオとパーティーで顔を合わせるシーンは、コメディ要素の強かった本作を一気にサスペンス風味に塗り替えた。骨の髄まで甘やかされた、腐った小悪党に見えたが、演じたユ・アイン自身が麻薬私用で起訴されているではないか。まあ、悪人が悪を演じるのもエンタメの一つの形かもしれない。

 

それにしても、あの手この手で捜査する警察側を、シンジン物産は先回りして潰してくる。メディアや警察の上層部まで押さえているから始末に負えない。財閥が圧倒的な強さを誇示する韓国らしい。労働者を労働者ではなく人権のない奴隷であるかのように扱う姿勢に、観る側は怒りを燃やし、被害者に共感し、主人公を応援したくなる。

 

本作ではドチョルの妻と、被害者の妻、二人の妻の見せ場が見どころになっている。これによってさらに主人公と被害者への共感が深まっていく。一歩で悪役のテオは、その悪魔的な所業をさらに加速させていく。しかし、チーム長や庁長は頼りにならない・・・と見せかけて、クライマックス前にお互いの絆と信頼の強さをコメディ全開で披露しあう展開には笑った。

 

最後は力で強行突破。逃げるテオと追うドチョル。拳と拳の勝負・・・に、ちょっとした変化球あり。それにしても、派手に殴り合うだけではなく、観る側に「痛い!」と思わせる絵作りの上手さよ。リーアム・ニーソンやジェイソン・ステイサムの映画のアクションとは質が全く異なっている。邦画もこうした格闘アクションは上手く咀嚼して取り入れてほしい。

 

出演陣もかなり豪華。この人が出ていればだいたい面白いこと確定のユ・ヘジンに、勝手に韓国の北村有起哉認定しているオ・ダルス、悪人から善人まで何でもござれのチョン・マンシク、その他、映画やドラマで見かける面々。それらをすべて包み込む、大らかで優しく、しかし悪は決して許さない一本気の刑事を演じたファン・ジョンミンはやっぱりかっこよかった。

 

ネガティブ・サイド

直接的に見せているわけではないが、動物虐待のシーンがあるのがしんどい。

 

『 犯罪都市 』より本作の方が先とはいえ、取り調べ中の暴力というのはいかがなものか。

 

最終盤にびっくりする人物が登場するが、「あっさり引き下がるんかーい」とズッコケてしまった。ファンサービスとしては嬉しいが、このシーンはカットで良かったのでは?

 

総評

いかにも韓国らしい、金持ち=悪をぶっとばすという勧善懲悪劇。ファン・ジョンミン演じるドチョルの刑事としての腕っぷし、義侠心、仲間意識、さらに夫として、父親としての心構えまで堪能できる。ベテランが何を指すのかはよくわからないが、『 終末の探偵 』的な面白さ、つまり主人公に魅力があり、シリーズ化してほしいと感じた。今週末の続編公開が待ち遠しい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒョン

兄の意。血のつながりがなくても使える表現。男→男で使われる。劇中ではドチョルがチーム長をヒョンニムと敬称付きで呼んでいたが、字幕は「先輩」となっていた。日本語で「兄貴」と呼んでしまうとヤクザっぽいからか。ちなみに女→男では「オッパ」となる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ケナは韓国が嫌いで 』
『 悪い夏 』
『 ベテラン 凶悪犯罪捜査班 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アクション, ファン・ジョンミン, ユ・アイン, 監督:リュ・スンワン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 ベテラン 』 -再上映に感謝-

『 プロジェクト・サイレンス 』 -パニック映画の佳作-

Posted on 2025年3月16日 by cool-jupiter

プロジェクト・サイレンス 65点
2025年3月15日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:イ・ソンギュン チュ・ジフン
監督:キム・テゴン

 

『 PMC ザ・バンカー 』、『 パラサイト 半地下の家族 』、『 最後まで行く 』などで、爽やかながらもダークサイドを秘めた演技を見せてきたイ・ソンギュンの遺作ということでチケット購入。

あらすじ

国家安保室の行政官ジョンウォン(イ・ソンギュン)は、娘を空港に送る途中、濃霧による多重衝突事故に巻き込まれる。橋が孤立する中、政府が秘密裏に進める対テロ兵器である軍用犬も事故によって放たれてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤はハイペースで進む。主要なキャラクターたちの背景を簡潔に描き、しかもそれが後半から終盤にかけて効いてくる。この脚本家=監督はなかなかの手練れ。多重衝突事故やヘリの墜落、橋の部分的な崩落などもCGながら見応えは抜群。予告編で散々観ていても、本番となるとハラハラドキドキさせられた。

 

序盤であっさりと襲い来るモンスターの正体は犬であるとばらしてしまうのも潔い。犬といっても軍用犬なので強い。一般の成人男性がそこらの野良犬が本気で襲い掛かってきたのを撃退しようとしても、勝率は20%もないだろう。軍人さんが次々にやられていくのもお約束とはいえ納得しよう。

 

橋の上でいつの間にやら結成されるチームが多士済済。政府高官の父と反抗期の娘、踏み倒されたガソリン代を徴収しに来た不良店員とその愛犬、ゴルファーの妹とちょっと間抜けなその姉、認知症の妻を甲斐甲斐しく世話する夫、そしてプロジェクト・サイレンスの研究者の一員である博士。彼ら彼女らの、時にはエゴ丸出しの言動がいつの間にやらファミリードラマやヒューマンドラマとして成立してくるから不思議で面白かった。

 

『 工作 黒金星と呼ばれた男 』では小憎らしさ満開の北朝鮮軍人、『 暗数殺人 』で人を食ったような殺人犯を演じたチュ・ジフンがコミック・リリーフを演じていたのには笑った。完全なる役立たずかと思いきや、とある大技で犬を一時的に撃退したり、最終盤にはとあるアイテムで大活躍したりと、ユーモアある役も演じられる役者であることを証明した。

 

主役のイ・ソンギュンは医師や社長の役も似合うが、今回は次期大統領候補を陰から支える国家公務員役を好演。明晰な頭脳で誰を助け、誰を助けないのか、またどんな情報をどのような形で公開・共有するのかを瞬時に判断する狡猾な男を好演。娘に対しても冷淡に見える態度を取っていたが、それは早くに妻をなくしてしまって以後、娘との距離の取り方を学ぶことができなかった可哀そうなファミリーマンに見えてくるから不思議。よくこんな短い時間にあれもこれもとヒューマンドラマ的な要素を詰め込めるなと感心する。

 

犬との戦い、政府の救助、生存者の脱出劇が交錯して、サスペンスに満ちた90分が続く。韓国映画のパニックものの佳作。特に予定のない週末なら、映画館で本作を鑑賞しよう。

 

ネガティブ・サイド

対テロリストのために研究・開発してきたと言うが、攻撃のトリガーが声だというのはどうなのか。そもそも事前にテロリストの声など入手できるのか。できたとして、その声をいつ、どこで、どうやって聞かせるのか。音は当然、音速でこちらに迫ってくるが、たとえば1km先の目標テロリストが大声をあげたとして、犬が犬がそれをキャッチするのに3秒かかり、なおかつ現場に急行するのに平均時速60kmで走っても1分。役に立つのか?

 

老夫婦の扱い方があんまりではないか。韓国もアメリカのようなプラグマティックな社会になりつつあるのだろうか。

 

総評

頭を空っぽにして楽しめる作品。ホラー要素もないので、怖いのはちょっと・・・という向きも大丈夫。自己中心的な人間の集まりが、いつの間にか熱い連帯を構成するのは韓国映画のお約束で、本作もその例に漏れない。続編の予感も漂わせているが、本作一作だけで完結しているし、そうあるべき。配信やレンタルを待つのも手だが、韓国映画のファンならば劇場鑑賞をお勧めしたい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンゴ

選挙の意。センキョとソンゴ。確かに音は近い。残念ながら今の韓国は漢字をまともに習った世代がどんどん高齢化しているので、若い世代は筆談で中国人や日本人と意思疎通できないと言われている。いくら右傾化が進んでも、漢字を捨てるなどという残念な決断をしないことを祈る。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ロングレッグズ 』
『 ゆきてかへらぬ 』
『 ミッキー17 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ソンギュン, スリラー, チュ・ジフン, パニック, 監督:キム・テゴン, 配給会社:ショウゲート, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 プロジェクト・サイレンス 』 -パニック映画の佳作-

『 #彼女が死んだ 』 -社会の闇の一端を覗く-

Posted on 2025年1月19日 by cool-jupiter

#彼女が死んだ 70点
2025年1月18日 kino cinéma 心斎橋にて鑑賞
出演:ピョン・ヨハン シン・ヘソン イエル
監督:キム・セフィ

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

不動産業を営むク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)は顧客から預かった鍵で家に入り込み、最も不要そうなものを失敬するという趣味の持ち主。彼はある時、インフルエンサーとして振る舞うハン・ソラ(シン・ヘソン)に興味を抱く。そのハン・ソラが引っ越しするということで、ジョンテは部屋の鍵を託される。留守を見計らって侵入したジョンテが見たのは、腹部から大量出血してピクリとも動かないソラだった・・・

 

ポジティブ・サイド

不動産屋に対しての信頼がゼロになりそうな冒頭ながら、他人のスマホやSNSを覗き込む主人公ジョンテに対して、徐々にシンクロしてしまうという現代人は多いのではないだろうか。そのような巧みな掴みから、ハン・ソラの死亡シーンの遭遇、そして消えた死体と刻々送られてくる謎めいた脅迫状と、中盤まで怒涛のスピードで展開される疾走感は、まさしく韓国映画。

 

中盤以降、ハン・ソラの見えざる顔が見えてくるあたりから、社会の闇が浮かび上がってくる。そんな中でも、極めて異質な個人として浮かびあってくるのは・・・おっと、ここから先は言ってはいけない。

 

中盤から登場するオ刑事の存在感が素晴らしい。本邦だと『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』で北川景子が長髪をくくりもせずに捜査現場に出向いていたが、無能揃いで知られる韓国警察も、女性刑事となるとリアリティが格段に増す。いかつい顔、長身、肩幅広い、気が強い、結構な武闘派という刑事で、彼女の登場シーンは一か所を除いて全てが絵になっていた。

 

それにしても韓国映画は、女優の発狂シーンを描くのが本当にうまい。人間の感情を視覚的に表現することにかけては韓国の俳優陣は世界でもトップレベルではないだろうか。そしてエンタメ作品ながらも、最後に苦味を残すのも『 目撃者 』同様に、韓国映画のお約束。主演の二人は『 エンドレス 繰り返される悪夢 』でも共演していた。確かに、二人ともうっすらと記憶にあった。

 

ネガティブ・サイド

お客さんから預かっている鍵の保管方法が緩すぎではないだろうか。ダイヤル式の金庫に入れておいてもいいと思うのだが。

 

詳しくは書けない(何故なら詳しく描写されていない)が、現代社会において取り扱いに厳重な注意を要する二つの対象が abuse されていたというのが本作の一つの肝。しかし、その部分の描写が必要最低限を下回っているように見えた。『 トガニ 幼き瞳の告発 』とまでは言わないが、1~2分で良いので、とある対象への虐待シーンは入れてほしかった。

 

とある殺人シーンがあまりにも非合理的。滑車が使われていたわけでもあるまいに、あそこまで物理的な力が作用するか?

 

総評

陰鬱かつ凄惨なサスペンスである。以下、ビミョーにネタバレっぽく言うなら、ビル・S・バリンジャーの小説『 歯と爪 』と、デビッド・フィンチャー監督の映画『 ゴーン・ガール 』、アニーシュ・チャガンティ監督の『 search サーチ 』に韓国テイストを加えたような感じと言えば伝わるだろうか。つまり、古典的・典型的な要素を盛り込みながらも、現代風にアップデートされた作品ということ。観て損はしない一作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Love what you do

スティーブ・ジョブズのスピーチの一節として知られる。当時はこれをどう訳すのかで英語界隈で結構な議論が巻き起こった。loveは愛せ、大好きになれ、惚れ込め、などで良いのだろうが、what you do を果たして仕事と訳してよいのかどうか。文脈的には仕事で問題ない。ただし、 What do you do? = お仕事は何ですか?と暗記するのは間違い。中学の同級生と10年ぶりに再会して、「久しぶり、今は何してるの?」というのが、What do you do?の意味。答えは「大学院に通ってる」かもしれないし、「サラリーマンやってる」かもしれないし、「バイトしながら投資の勉強してる」かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アット・ザ・ベンチ 』
『 港に灯がともる 』
『 怪獣ヤロウ! 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, B Rank, イエル, サスペンス, シン・ヘソン, ピョン・ヨハン, 監督:キム・セフィ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 #彼女が死んだ 』 -社会の闇の一端を覗く-

『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

Posted on 2024年12月17日 by cool-jupiter

地獄でも大丈夫 70点
2024年12月14日 第七藝術劇場にて鑑賞
出演:オ・ウリン パン・ヒョリン チョン・イジュ
監督:イム・オジョン

 

風邪でダウン中のため簡易レビュー。

あらすじ

いじめに苦しむナミ(オ・ウリン)とソヌ(パン・ヒョリン)は、修学旅行に参加せず、二人で心中をしようとするも断念。死ぬ前に、いじめグループのリーダーだった、現在はソウルにいるチェリン(チョン・イジュ)に復讐するため、2人だけの修学旅行へと旅立つが・・・

ポジティブ・サイド

韓国や中国、アメリカの映画はいじめを真正面から描くことが多いが、本作はいじめっ子に立ち向かう過程にロードムービーかつバディものの要素を取り入れたところが新鮮。

 

復讐しようとした対象が、思いがけない姿に変わってしまっていたというところも意外性があり、面白い。そして、そんな相手に対峙した自分の心境がどう変わったのか、あるいは変わらなかったのかを素直に吐露する場面の緊迫感も素晴らしかった。

 

ナミとソヌの女の友情の中にもとんでもない爆弾が仕込まれていたりと、どうしてなかなか練られた脚本。物語の行き着く先は韓国アニメ映画『 フェイク 我は神なり 』や、日本では『 星の子 』あたりと同じく宗教的な方面へ。信じる者は救われると言うが、救われるべきは信じる者とは限らない。日本でも宗教二世の問題がやっと認知されつつあるが、歴史上の宗教戦争の99%が経済的搾取が目的だったように、歴史上の不況の99%はビジネスなのである。

 

いじめとは異なる地獄を体験するナミとソヌだが、そんな二人が旅路の果てに見出した真理は陳腐ではあるが尊い。願わくば、二人が『 ソウルメイト 』のようにならないことを祈るばかりである。

ネガティブ・サイド

序盤の自殺失敗シーンだが、あれでは実は助けられないのでは?重力とは上から下向きに作用するので、本当に助けるためには真下から真上に力を与えなくてはいけない。

 

楽園とは何だったのだろうか。いや、想像はつくが、もう少し明示的にしてくれてもよかったのではなかろうか。

 

総評

イム・オジョン監督はこれが長編デビュー作だという。ビジュアル感覚や役者の表情の切り取り方などで、すでに自分のスタイルを確立しているように感じられた。インディー映画のように撮影して商業映画のように成立させる監督というのは、韓国にはちらほらいるが、日本ではほぼ見当たらない。そういう意味でもお国柄および国のバックアップ体制の違いが見て取れる作品。シスターフッドものが好みなら、ぜひ劇場鑑賞を。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チャムカンマン

「ちょっと待って」の意。ただし「待つ」という動詞はここにはなく、「ちょっと」という副詞だけがある。英語にすると Just a minute あたりだろうか。 日本語同じく、不可解な状況などに接した時にも発せられる。英語で言う “Wait a minute.” と同じ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 レッド・ワン 』
『 ライオン・キング:ムファサ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, オ・ウリン, チョン・イジュ, パン・ヒョリン, 監督:イム・オジョン, 配給会社:スモモ, 青春, 韓国Leave a Comment on 『 地獄でも大丈夫 』 -旅は道連れ世は情け-

『 対外秘 』 -毒を食らわば皿まで-

Posted on 2024年12月15日 by cool-jupiter

対外秘 65点
2024年12月13日 kino cinéma 心斎橋にて鑑賞
出演:チョ・ジヌン イ・ソンミン キム・ムヨル
監督:イ・ウォンテ

 

シネマート心斎橋が閉館、その後釜にやって来たkino cinéma 心斎橋の初日ということでチケット購入。座席の座り心地が向上し、なおかつ勾配がついて後ろの座席からの視認性がアップしていた。

あらすじ

釜山出身の政治家ヘウン(チョ・ジヌン)は党の公認を得て国政選挙に出馬しようとするものの、地元のフィクサーであるスンテ(イ・ソンミン)により公認を取り消されてしまう。怒りに燃えるヘウンは無所属で立候補する。そして対外秘である国家事業のプサン再開発プロジェクトの資料の中身を入手。それを使って地元で貸金業を営むヤクザのピルド(キム・ムヨル)を陣営に引き込み・・・

 

ポジティブ・サイド

軍事政権崩壊後、民主化の途上にある韓国、釜山から国会議員を志すヘウン。地元で生まれ、地元で育ち、地元を愛する青年政治家の希望に満ちた表情が、公認を外されたことで恨(はん)の表情に変わっていき、その顔もやがて修羅になっていく。主演のチョ・ジヌンの顔面の演技力には驚かされるばかり

 

『 犯罪都市 PUNISHMENT 』で寡黙ながら常に相手の隙とさらに上の地位を狙う悪訳を演じたキム・ムヨルが、本作でも同レベルの好演を見せる。ベンチャーキャピタルという名目で貸金業を営みながら、同時にモーテルで違法賭博を隠れ蓑にした贈賄も行うという知能犯。もちろん腕っぷしの強さも見せてくれる。ヘウンとスンテの間で揺れ動く心情を言葉ではなく表情だけで描き切ったのも見事。

 

釜山の実力者のスンテは土地開発だけではなく方法にまで介入。殺人すらもいとわぬフィクサーで、投票の操作もなんのその。私利私欲で動く政治と経済への寄生虫。一方でヘウンや自らの子飼いの候補者たちに「国に忠誠を誓え」、「国民に奉仕しろ」と伝える。うそぶいているのか、本気でそう言っているのかを測りかねるところが、このキャラに単なる巨悪に留まらない深みを与えている。

 

虚々実々の裏工作合戦で最後に生き延びるのは誰なのか。鑑賞後の妻の第一声が「ヤクザ、ええ人やん」だった。実際はいい人でもなんでもなく完全なる悪人なのだが、ヘウンやスンテがあまりにもどす黒くなっていくため、そのように錯覚してしまったのだろう。「選挙は広報の総合格闘技」とは某社長の言だが、これを韓国風に言えば「選挙は裏工作の総合格闘技」となるだろうか。韓国の政治系ノワールの新たな佳作である。

 

ネガティブ・サイド

暗黒面に支配されていくヘウンとは対照的に、ヘウンの妻や報道の使命遂行に燃える若き記者など、変わらない面々もいる。彼女たちのその後がどうなったのかを少しで良いので知りたかった。

 

ピルドのVCの事務所はおんぼろビルの3Fあたりではなかったか。そこに車で突っ込んでいくシーンがあるが、空飛ぶ車でも使っていたのだろうか。

 

ドンデン返しの一つがあまりにも荒唐無稽で、驚きはあったものの納得はできなかった。その人物のその後の結末が悲惨極まりなく、そのシーンを映すために復活させたのかと邪推してしまった。

 

総評

我が兵庫県の知事選挙が全国的なスキャンダルとなり、真相の究明も今なお遠い。本作の製作国の韓国でも、大統領による戒厳令は不正選挙の証拠応酬のためというニュースもあった。民主主義の主役は本来は一般大衆。しかし、その一般大衆は実は「収穫」されるだけの存在なのか。本邦が『 決戦は日曜日 』を作る一方で、韓国は本作を作る。自国の暗部をどのような形でさらけ出すのかで民度というものが見えてくるのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。学校でも職場でも先輩は大事。しかし「こいつは敵だ」と認識すれば、潰しに行くのが韓国らしい。上司に苦情を寄せたことで部署異動させられたJovianは、この姿勢を他山の石とすべきなのだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 地獄でも大丈夫 』
『 レッド・ワン 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ソンミン, キム・ムヨル, クライムドラマ, チョ・ジヌン, 監督:イ・ウォンテ, 配給会社:キノフィルムズ, 韓国Leave a Comment on 『 対外秘 』 -毒を食らわば皿まで-

『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

Posted on 2024年11月18日 by cool-jupiter

シングル・イン・ソウル 65点
2024年11月15日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:イム・スジョン イ・ドンウク
監督:パク・ボムス

 

予告編が面白そうだったのでチケット購入。

あらすじ

小さな出版社勤務のヒョンジン(イム・スジョン)は、大都市でのシングル・ライフに関するエッセイ本を手がけることになる。そこで予備校で小論文指導をして、SNSでもシングル・ライフについて発信するヨンホ(イ・ドンウク)に執筆を依頼するが・・・

ポジティブ・サイド

主人公ヒョンジンは年齢不詳ながら、おそらくアラサー(大学の先輩であるヨンホが飲酒可能な学生時代から数えて11年だったので)。それにしてはメルヘンチックな幻想を抱き続ける姿が面白い。一方でエッセイを執筆することになるヨンホも、独身貴族生活を満喫しつつも、過去の恋愛を引きずっている姿が物悲しくも面白おかしい。二人が距離を縮めていきながらも男女の仲を予感させないストーリーは、一昔前だと考えられない構成。しかし本作はそこにリアリティがある。出版社の同僚たちもキャラが立っていて、それぞれに見せ場がある。

 

本作の見どころの一つは非常にぎこちないキスシーン。『 ロッキー 』で、ロッキーとエイドリアンが玄関でキスするシーンとは一味違った、非常に不器用なキスが描き出される。これはこれでリアルだと感じた。

 

初恋を美化する男の悪癖が今作でも強調されていたのもリアルだった。記憶の美化は、たいてい『 青春18×2 君へと続く道 』のように、印象的な瞬間を忠実に脳裏に焼き付けておくことで起こる。本作は一味違うパターンだが、こうした記憶の仕方を知らず知らず実行してしまっている男性はかなり多いと思われる。

 

ネガティブ・サイド

100分ちょっとという上映時間にして、間延びしているように感じられた。フォーカスがヒョンジンのロマンスなのか、キャリアなのか、家族の関係なのか、色んなところに飛ぶので、それだけ展開のテンポが悪くなってしまっていた。

 

ヨンホ仕事=小論文指導をしているシーンが少なかった。講義の中で彼が「書く」という営為をどのように捉えているのかをもっと語ってくれていれば、エッセイの中身や彼自身のバックグラウンドにさらに深みが生まれたものと思う。

 

総評

韓国には負けるものの、日本もかなりの未婚社会になってきた。お一人様を満喫するのか、それとも伝統的な価値観に抗うことに疲れながら生きるのか。そのあたりのヒントが得られないこともない。さわやかなストーリーではあるが、デートムービーには適しない点には注意が必要。案外、DINKSで鑑賞するのが最も良いのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。ソンベニム=先輩様という形で使われることもあるが、本作ではソンベだった。先輩後輩を強く意識するのはアジアでは日本と韓国ぐらいだろうか。韓国からの留学生も増えているので。案外今どきの大学生は知っている語彙かもしれない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 オアシス 』
『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, イ・ドンウク, イム・スジョン, ラブロマンス, 監督:パク・ボムス, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 シングル・イン・ソウル 』 -恋愛しても結婚しないという選択-

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