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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 池田エライザ

『 映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット 』 -前作よりもパワーダウン-

Posted on 2021年6月15日 by cool-jupiter

映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット 50点
2021年6月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浜辺美波 高杉真宙 池田エライザ 藤井流星
監督:英勉

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210615234113j:plain

『 映画 賭ケグルイ 』の続編。残念ながら続編はパワーダウン。それは肝腎かなめのギャンブルのパートに緊張感がなかった。今後どうやって大風呂敷をたたんでいくのだろうか。

 

あらすじ

私立百花王学園の生徒会は蛇喰夢子(浜辺美波)を脅威だと捉えていた。そんな中、2年間停学になっていた視鬼神真玄(藤井流星)が夢子への刺客として呼び戻された。しかし、視鬼神の復学は学園と生徒会にさらなる混乱をもたらして・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210615234221j:plain

ポジティブ・サイド

浜辺美波の狂いっぷりが素晴らしい。やはりこの女優は少女漫画的な王道キャラよりも『 センセイ君主 』や本シリーズのキャラのようなぶっ飛んだキャラを演じる方が性に合っている。王道のキャラというのは、 replaceable で expandable なものだ。元々の漫画の構図を忠実に再現している、あるいは監督の演出もあるのだろうが、目や口角での些細な演技が素晴らしい。佐藤健が緋村剣心を自分のものにしているように、浜辺美波も蛇喰夢子というキャラを完全に掌握している。

 

前作でほぼ置物だった池田エライザが躍動してくれたのもよかった。それだけで個人的には満足。特に夢子以上に狂った行動に出る会長のオーラには、視鬼神ならずとも圧倒されてしまう。次作での更なる活躍に期待。

 

多種多様なキャラが複雑な思惑をもって学園内を立ち回っているが、そのあたりの背景の映し出し方が適切。情報が多すぎず、かといって少なすぎず。『 カイジ 』的な世界であり、『 LIAR GAME 』的な世界でもあるが、そのどちらとも異なる独自の空気感が心地よい。

 

今作でフィーチャーされる指名ロシアンルーレットというゲームは前作のポーカーよりも格段に面白そう。単位を億から万に変えて、銃と弾をグラスとウォッカに変えれば、別のロシアンルーレットのできあがり。未成年はダメだが、二十歳以降なら実際にプレーできる。一話も視聴できていないが、テレビドラマ版もいつか観てみたい。というか、漫画もドラマも観ていなくても入っていけるのは有難い。



ネガティブ・サイド

ギャンブル・パートが相変わらず説明過多である。が、それはいい。今作のヴィランの視鬼神真玄なるキャラに魅力が全くない。魅力というのは、別に正のエネルギーでなくともいい。悪のカリスマ、狂気のプリンス。そういったカリスマ性のようなものが全く感じ取れなかった。復学の噂があがった時に新聞部の男が「強いなんてもんじゃない、化物だ」と語っていたが、別に化物でもなんでもないだろう。これなら前作の宮沢氷魚(Jovianの大学の後輩、面識は当然ない)の方がもっと迫力や実力を感じさせた。ロシアンルーレットはスリリングなゲームであるが、普通に考えれば実弾を使うわけがないし、漫画原作の映画化作品で、病気や交通事故以外で人死にが出るわけもない。この時点で指名ロシアンルーレットの恐怖感は消えている。

 

また演じた藤井流星の演技もちょっと酷い。こういう演技を指して chew up the scenery と言う。まるで劣化した藤原竜也 を観るようである。またセリフ回しもあまりに拙く、若手のまあまあ演技ができる連中の中に放り込むと、余計に悪目立ちする。したがって大声で喚き散らすように演技指導するしかないわけだが、それによって余計に悪目立ちする・・・という悪循環。いいかげんジャ〇ーズを起用するのはやめてはいかがか。

 

視鬼神の戦法は卑怯千万だが、これによって物語世界が狭くなってしまった。ギャンブルというのはルールがしっかり決まっており、そのルールの範囲内で争うからこそ、代償が生じることが正当化される。視鬼神のやり方は学園の在り方を根底から覆しかねない。よくこんな脚本が原作者からOKをもらえたなと感心してしまう。

 

高杉真宙と森川葵の謎のミュージカルは不要。というか邦画にミュージカルは要らんよ。歌って踊ってをやりたいなら、オープニングの流れに乗ってやってくれ。

 

総評

ギャンブルに行くまでが長く、なおかつ純粋なギャンブル勝負ではない。これで「賭け狂いましょう!」といわれてもなあ、という感じである。それでもキャラの再現度がかなり高いのは、原作未読でもすぐにわかるし、浜辺美波や池田エライザが躍動する様は見ているだけで楽しい。今作はややダメだったことから、逆にテコ入れされるであろう次作は期待が持てる。そう思おうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

play Russian roulette

ロシアンルーレットを行う、の意味。当たり前だが、実弾入りの銃でこんなことをしてはならない。どうせやるなら、水入り5つ、ウォッカ入りグラス1つからランダムに選んで一気飲みをするという、よりリスクの少ないロシアンルーレットをお勧めする。ロシア人とこれをやるとめちゃくちゃ盛り上がる(経験者談)。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, 日本, 池田エライザ, 浜辺美波, 監督:英勉, 藤井流星, 配給会社:ギャガ, 高杉真宙Leave a Comment on 『 映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット 』 -前作よりもパワーダウン-

『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬-

Posted on 2019年5月26日2020年2月8日 by cool-jupiter

貞子 10点
2019年5月26日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:池田エライザ
監督:中田秀夫

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190526203042j:plain

鈴木光司作品に高校生の頃から親しんできたJovianにとっては『 リング 』シリーズ、さらに“貞子”は時を超えて心に残るサムシングなのである、とは言わないまでも、それなりに思い入れのある作品そしてキャラクターなのだ。しかし、どこで間違ってしまったのか・・・。このような超絶的な駄作を見せられては、二の句が継げないではないか。

 

あらすじ

心理カウンセラーの秋川茉優(池田エライザ)は、YouTuberとなった弟の和真が霊能者が死んだという団地の火災後で動画の撮影後に行方不明になったと知らされる。時を同じくして、その団地の火災のあった部屋に住んでいたと思われる少女が保護され、茉優の務める病院に入院。その時から、奇怪な現象が起こり始め・・・

 

ポジティブ・サイド

池田エライザの絶叫が、そこそこ響いたかなというぐらい。後は佐藤仁美と久々に再会したというぐらいかな。

 

そうそう、貞子はすでに一般レベルで消費できるコンテンツとして確立されているので、出し惜しみをする必要はない。ホラー映画は往々にして恐怖の源の登場シーンを後ろに持って行こうとする傾向があるが、今作は割とすぐに貞子を登場させてくれる。そこは褒めても良いだろう。

 

ネガティブ・サイド

まず「撮ったら呪われる」というコンセプトが非常につまらない。つまらないという言葉が辛辣に過ぎるなら、面白くないと言おう。いや、はっきり言って怖くないのである。いくらYouTuberという職業が認知されつつある現代でも、映像作品を作る人間と言うのは圧倒的にマイノリティである。つまり、呪いの対象になりうる可能性が圧倒的に低い。つまり、恐怖感を与えにくい設定になってしまっている。動画を観たら呪われる、なら分かる。誰も彼もがスマホやPCで動画を観る今、流れ弾的に呪いの動画を観てしまうことはありうる。凝った演出ができるならば、そちらの方が遥かに観客に恐怖を与えられる。劇場で映画鑑賞後に我々が真っ先にすることは何か。スマホの電源を入れることである。撮ったら死ぬ、ではなく、観たら/見たら死ぬ、の路線で行くべきだった。今さら言っても詮無いことだが・・・

 

肝心の貞子もひどい。特に、テレビ画面からのっそりと抜け出てくるシーンは『 リング 』を撮った中田秀夫監督のオリジナルアイデアで、小説版に優る点である。しかし、その後が良くない。思わず劇場内で失笑してしまうところだった。爬虫類は、無機質な目やチロチロとした舌の動き、静から動に一瞬にして切り替わる動きを見せることで、観る者を時々驚かせるが、貞子にトカゲか何かのような匍匐前進をさせて、それで観る者に恐怖感を与えられると一体誰が考えたのだ?この瞬間をもって本作はホラー映画からギャグ映画に一挙に転換してしまった。

 

謎の少女も意味が分からない。貞子の依り代か何かと思わせながら、どうもそうではないようだ。しかしそれ以上に、老婆や老人を曰くありげなガジェットとして配置するのはやめてもらいたい。手垢のついたクリシェ以外の何物でもない。ギャグとホラーの境界線上を敢えて進もうとする作品なら『 来る 』が先行している。二番煎じは不要である。

 

ホラー映画における恐怖とは、怪異の原理が不明であることから産生されるのである。しかし、本作で不明なのは貞子の行動原理よりも登場人物の行動原理の方だ。YouTuberとして身を立てたいというのは別に構わない。しかし、事件現場に立ち入って動画を撮るのは何故なのだ?いや、ただの動画を撮るならまだいい。自分の顔や声を一切出さないようにして、そうした動画をネット上にこっそりアップするというのなら、まだ理解できる。しかし、警察や消防が封鎖している事件現場に白昼堂々と忍び込み、顔出し動画をネットに上げる意味がさっぱり分からない。即、逮捕されて終了ではないか。起訴されるかどうかは分からないが、YouTubeの運営側にアカBANされるのは火を見るより明らかだ。本当に大学生なのか。

 

訳が分からないのは、塚本高史演じるWebマーケターもである。「動画は削除されてますけど、探せばいくらでも出てきますよ」ちゃうやろ。その場で検索して、見せたれよ。その上でエライザのために一肌脱いだらんかいな。そして、貞子と対決してあっけなく、しかし華々しく死んでいかなあかんやろ。何を呑気に生き延びてんねん。しかも、岩を動かそうとする時に、重力とてこの原理を全く無視してて、大いに笑わせてもらったわ。とことん何の役にも立たんキャラやったな。

 

と冷静さを失って関西弁になってしまうほど、酷い出来の映画なのであった。

 

総評

一言、つまらない。

これから鑑賞を予定している諸氏におかれては、チケット代と2時間をドブに捨てる覚悟で臨んで頂きたい。貞子は今後、『 富江 』シリーズのように、売り出し中の美少女の登竜門的作品になってしまうのだろうか。

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2010年代, F Rank, ホラー, 日本, 池田エライザ, 監督:中田秀夫, 配給会社:KADOKAWA『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- への4件のコメント

『 映画 賭ケグルイ 』 -続編ありきの序章-

Posted on 2019年5月4日 by cool-jupiter

映画 賭ケグルイ55点
2019年5月3日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:浜辺美波 高杉真宙 池田エライザ
監督:英勉

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元は漫画、そしてテレビドラマ化された作品が満を持して銀幕に登場。これが意味するところは、よほど原作およびドラマが面白いということか。Jovianが南沙良と並んで最も買っている若手女優の浜辺美波が主演とあらば、観ないという選択肢は存在しない。

 

あらすじ

 

舞台はギャンブルの強さで学園内の序列が決まる百花王学園。そこに転校してきた蛇喰夢子(浜辺美波)は、学園の頂点に君臨する生徒会長、桃喰綺羅莉(池田エライザ)とのギャンブル勝負を渇望していた。しかし、学園にはギャンブルを拒絶する集団「ヴィレッジ」も台頭しつつあった。夢子とヴィレッジ、両方を一挙に叩き潰そうと画策する生徒会は、「生徒代表指名選挙」を開催する。夢子は鈴井涼太(高杉真宙)を相棒に参戦するが・・・

 

ポジティブ・サイド

前向きなヒロイン像から少女漫画の定型を外れるヒロイン像、それらの加えてギャンブルにエクスタシーを感じるヒロイン像を浜辺美波は開拓した。これはファンとして大いに歓迎したい。天然で、それでいてシニカルで、ユーモラスでもあり、賢しらさを隠さない狡猾さを、その口調や佇まいで悟らせない。そんな複雑なキャラをしっかりと演じた浜辺をまずは称えようではないか。

 

歩火樹絵里を演じた福原遥の演技力にも舌を巻いた。彼女はテレビや映画よりも、舞台上で演じる方が映えるのではないか。カリスマ性すら感じさせる演技で、今後も多方面での活躍を期待できるだろう。今作のような世界観の作品やキャラクターばかりを演じると、藤原竜也のように chew up the scene の役者になってしまう恐れがあるので、彼女のハンドラー達には注意をしてもらいたいものである。ちなみにJovianは藤原竜也を高く買っていることをを申し添えておく。

 

その他には小野寺晃良、中村ゆりか、秋田汐梨らも印象に残った。この世代の若手俳優は、一頃のサッカー日本代表とは異なり、人材難ではなさそうだと思えた。それが一番の収穫だったと言えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

個人的な嗜好の問題も多分にあるのだろうが、先行作品の世界観の構築の点で『 カイジ 人生逆転ゲーム 』に劣り、勝負の駆け引きや頭脳性の描き方において『 ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ 』に劣る。ライアーゲームやカイジは原作を読んでいて、こちらに関しては原作漫画、テレビドラマ、いずれも鑑賞していないので、このあたりの評価に偏りが生じているのは承知している。

 

浜辺美波は良い仕事をしたが、クライマックスのシーンを販促物に載せる必要は一切ない。究極のドヤ顔を、上映前に見せまくってどうする。それをするのであれば、プロローグの夢子の紹介シーン全てで賭け狂っている時の必殺の顔として観る側に認知させておくべきだった。こういうのは出し惜しみしておくべきだと切に思う。

 

肝心のギャンブルについても突っ込みどころが満載である。票争奪じゃんけん勝負を先手必勝とあるキャラクターコンビは結論付けたが、これはおかしい。普通に考えれば、1/3の確率で敗北する勝負に先手必勝などあり得ない。まずは自分の手札を秘密にし、素早く勝負が発生する場に行き、誰がどの手を有しているかを観察しなければならない。1/3の確率であいこが発生するのだから、その勝負を見届けてから動く方が合理的だ。というか、自分から真っ先に手札をばらしに行くというのは、どうなのだろうか。誰か他の者に獲物をさらわれるのがオチだと思うのだが。

 

トランプの1~7+ジョーカーを使うデュアルクラッシュ・ポーカーにも突っ込みたい。これも普通に考えれば、チームで相談し、第1ターンは2人そろって最弱の1を出して、相手チームの手札を削りにかかるのではないだろうか。というか、チームで相談することなく、つまりバッティングをいつ起こすのか、もしくは起こさないようにするのかを相談しないなどということは、ゲームの性質上、ありえないし、考えられない。このあたりが本作がライアーゲームに及ばないと感じる一番の理由である。

 

森川葵の生脚は眼福であるが、池田エライザは何故、生脚ではないのか。そして、ああいう座り方をする以上は『 氷の微笑 』の審問シーン的なサービスショットを盛り込んでくれても良いではないか。オッサン映画ファン100人に訊けば100人が賛同してくれるだろう。

 

全体的には、賭けに狂っている高校生達というよりは、ゲームを楽しんでいる若者達という印象の方が強い。そこがディレクションの一番の問題点であろう。

 

総評

浜辺の新たな一面を切り拓いた作品と言えるが、その他のキャストに関してはどうだろうか。以前にも評したが、英勉監督は『 貞子3D 』および『 貞子3D2 』という超絶クソ作品を世に送り出した。一方で、『 あさひなぐ 』のような佳作を作る力もある。今作では若手俳優たちの演技力に救われた感があるが、監督としてはかなり伸び悩んでいるのかもしれない。劇場に行く際には、ドラマもしくは漫画である程度の予習が必要かもしれない。また、続編政策にかなり色気を見せたエンドクレジットを作っているが、その時には英監督以外を起用することも選択肢に入れるべきであろう。

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2010年代, D Rank, サスペンス, スリラー, 日本, 池田エライザ, 浜辺美波, 監督:英勉, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 映画 賭ケグルイ 』 -続編ありきの序章-

『 一礼して、キス 』 -採点に難儀してしまう駄作-

Posted on 2018年9月9日2020年2月14日 by cool-jupiter

一礼して、キス 15点
2018年9月7日 レンタルDVDにて観賞
出演:池田エライザ 中尾暢樹 松尾太陽 鈴木勝大
監督:古澤健

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なんでこんなもんを作ってしまったんですか、古澤健監督さんよ・・・ 確かにあなたは甘酸っぱい青春ものを撮ったり、性のデリケートな部分をちょいと面白おかしく切り取る癖のある映画監督だとは知っていたが、甘酸っぱい青春物にセクシーな要素をちょびっと取り入れると大失敗してしまうというのは『 クローバー 』や『 今日、恋をはじめます 』から、ある程度の予想はしていた。が、これほどの惨事を引き起こしてしまうとは予想外だった。本作を駄作たらしめている要素は数限りなくあるが、大きく分けると4つだ。

1つ目は、感情移入できないキャラクターたち。いきなりキスされて全く無抵抗の杏(池田エライザ)。新部長としての役割を全うしようとしない曜太(中尾暢樹)。そんな曜太を強く諌めるでもなく責めるでもない先輩や同級生や教師たち。デリカシーに欠ける、と言うよりも大人として、人間としてのネジが外れているとしか思えない言動をとる曜太の父親。存在しても、しなくても、特にストーリーに影響を及ぼさないライバル高校の生徒、そして大学の弓道部員たち。いったいぜんたい、これらのキャラクター達にどういうケミストリーを起こしてほしいのか。意図が全く見えないし、面白さがあるわけでも、緊張感が漂うわけでも、ユーモアが生じてくるわけでもない。とにかく意味が分からない。不愉快でしかない。

2つ目は、役者陣の稚拙な演技。これについては何も言うべきではないのだろう。なぜならOKテイクを出したのは監督だからだ。もしくは複数あるはずのショットからベストと思われるものを編集したスタッフの罪とも言える。古澤監督は、もう一度、北野武の言葉によくよく耳を傾けるべきだ。または失敗作の後に必ず名作を世に送り出してきた黒澤明の数々の言葉をもう一度噛みしめるべきだ。

3つ目は、照明と使い方。特に夕陽のシーンを多く使っていたが、もう少し光の角度や影が落ちる方向を考えければならない。絶対にそうはならないだろう、という角度がついた影が多すぎる。せっかくロマンチックな、もしくはセクシーなショットが撮れているところなのに、何故こんな致命的ともいえるミスを犯すのか。映画とテレビ番組の最大の違いは、映画は照明を落とした劇場で大画面で観るもので、テレビは狭い空間で明るいままに見るものである、ということだろう。つまり、映画を観る人は、まず何よりも光の使い方に注目するし、映画を作る側は光の使い方に工夫を凝らさなければならないのだ。その意味では本作は落第の烙印を押されても文句は言えまい。

4つ目は杜撰な脚本だ。台詞と実際の物語の描写や進行が合致しない場面が多すぎる。曜太が「ユキ」に電話で呼ばれて行ってしまうシーンは2度。それを指して「いつもユキさんに呼ばれると言ってしまう」という杏の台詞は、この時点ではやや過剰すぎる反応に見えてしまう。また、一度しかそんなシーンは無かったにもかかわらず、「曜太くん、いつもここにいたから」といった台詞もあった。繰り返すが、曜太がそこに佇立しているシーンは1度だけしかなかったはずだ。それを指して「いつも」というのは、やはり説得力に欠けると言わざるを得ない。それともこれも編集ミスの類なのか。他にも、曜太が誰かを殴るシーンも不自然すぎる。というよりも、これまでに見たどんな映画の殴りのシーンよりも不自然なシークエンスだった。興味のある方だけご覧あれ。

兎にも角にも、採点するのが困難になるほどの駄作である。古澤監督には宿題としてオイゲン・ヘリゲルの『 日本の弓術 』を100回読んで、無我の境地に至ってほしいと思う。一度頭を空っぽにリセットして頂きたい。『 走れ!T校バスケット部 』の出来が心配になってきてしまった。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, F Rank, ロマンス, 日本, 池田エライザ, 監督:古澤健, 配給会社:東急レクリエーションLeave a Comment on 『 一礼して、キス 』 -採点に難儀してしまう駄作-

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』 -オリジナルには及ばないリメイク-

Posted on 2018年9月2日2020年2月14日 by cool-jupiter

SUNNY 強い気持ち・強い愛 50点

2018年9月1日 東宝シネマズ梅田にて観賞
出演:篠原涼子 広瀬すず 板谷由夏 山本舞香 池田エライザ 小池栄子 野田美桜 ともさかりえ 田辺桃子 渡辺直美 富田望生 リリー・フランキー
監督:大根仁

 

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オリジナルは韓流映画の『サニー 永遠の仲間たち』である。それを日本流にリメイクしたのが本作である。すでにオリジナルのレビューで懸念を表してはいたが、ミュージカル映画ではないのだから、エンターテインメント要素を極力排したとしても面白さを維持できるような作品を目指すべきだったのだ。というよりも、特定のデモグラフィックだけをターゲットにすることで、他の観客層を排除しかねない描写や台詞を持ってくる意図がよく分からない。もちろん、過度のバイオレンスやホラー要素、エロティックな描写は、一定の年齢層以下には見せるべきではないだろう。しかし、それとこれとは話は別で、ストーリーを見せたいのか、小室サウンドの宣伝および90年代の懐古主義をやりたいのか、その峻別ができないような作品に仕上がってしまっている。本作を純粋に楽しめる中高大学生が果たしてどれだけいるのだろうか。冒頭近く、久保田利伸の『LA・LA・LA LOVE SONG』が流れ、現在が過去に切り替わるシーンにそのことが凝縮されている。おそらく映画ファン100人に尋ねれば、80人以上が『ラ・ラ・ランド』を思い浮かべた、と答えるであろう。個人的には同作冒頭の高速道路のシーンはあまり好きになれなかったが、今作の歌とダンスシーンはもっと酷い。クオリティが低いわけではない。高い。しかし映画のテーマにそぐわない。ミュージカルでも無いのに、なぜミュージカル風味に仕立てるのか。

尺の関係だろうか、オリジナル版から一人減らしてしまったのも残念至極。これのせいで、芹香(板谷由夏/山本舞香)のかつてのリーダーとしての威厳と面影が蘇ってくるような温かみのある厳しさというものが全カットされてしまった。いくつかの歌と踊りのシーンを削れば、2時間に収まる脚本にできただろう。こうしたところから、本作が小室サウンドのプロモーションなのか、それとも映画という芸術的・文学的表現なのかが判断できないのだ。本作が本当に発するべきだったのは、オリジナルが力強く発していた「あなたは確かに生きていたし、これからも私たちの心の中で生き続ける」というメッセージを日本風に練り直して伝えることであるべきだったのだ。同時に、90年代をまるで輝かしさばかりが目立つ時代に映し、社会問題でもあったブルセラショップや援助交際の描写は抑えめにしていたことも気になった。オリジナルにあった人生や社会の暗部に、同じだけ斬り込めなかったのは何故か。世界は、ロッキー・バルボアの言葉を借りるまでもなく「陽の光や虹だけで出来ているわけでなく、意地汚い場所」(The world ain’t all sunshine and rainbows. It’s a very mean and nasty place.)なのだ。そのことを原作に最も近い形で表現してくれたともさかりえには拍手を贈りたい。

演技の面で言えば、広瀬すずはかなり忠実にオリジナルのシム・ウンギョンをコピーしていた。この点は非常に好意的に評価したい。一方で、淡路島弁が少し、いや、かなりおかしい。淡路島は不思議な地域で、兵庫と徳島の両属のようなもので、だが方言は播州弁と東部岡山弁のちゃんぽんのようなものだ。それが忠実に再現出来ていたかと言うと疑問であったし、さらに奈美(篠原涼子/広瀬すず)を淡路島出身に設定してしまったことが、あるキャラクターのバックグラウンドとそのキャラと奈美の関係に、いささかの矛盾を生んでしまっているような気がしてならない。こればかりは兵庫、大阪、徳島の人間でないと分からないかもしれない。しかし、感じる者にはそう感じられてしまうのだ。

全体として見れば、優れたオリジナル作品を可能な限り忠実に時にはコピーし、時にはトレースし、ところによっては大胆な改変を加えるか、もしくはバッサリと切り落としてしまった作品だ。細かい部分だが、担任の先生の妊娠ネタが全て削られていたり、逆に奈美の兄がエヴァンゲリオンにハマって働きもしないぷータローになっていたり(原作では、過激な労働運動にのめり込むあまり、反政府活動にまで踏み込んでしまっていた)と、ちょっと何かが違うのではないかと思わされる場面が多々あった。現実の社会が不安定であっても、女子高生の友情は不滅だというコントラスト際立つ構図であったはずが、リメイク版では、女子は輝き、少年~青年はオタクになり、オッサンは援助交際に走るという、非常に内向きな論理の世界を見せられてしまった。それが大根仁の解釈なら、それはそれとして尊重する。だが評価はしない。

良く練られたコピーである。しかし、オリジナルの暗さと明るさのコントラスト、世界の美しさと残酷さの対比が再現できておらず、中途半端な歌と踊りでお茶を濁してしまった作品、という印象に留まってしまったのは非常に残念である。観るのならばオリジナルをお勧めしたい。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, ヒューマンドラマ, リリー・フランキー, 広瀬すず, 日本, 池田エライザ, 監督:大根仁, 篠原涼子, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『SUNNY 強い気持ち・強い愛』 -オリジナルには及ばないリメイク-

『ルームロンダリング』 -死んでいない ≠ 生きるの不等式、再び-

Posted on 2018年7月17日2020年2月13日 by cool-jupiter

ルームロンダリング 65点

2018年7月15日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:池田エライザ オダギリジョー 渡辺えり 田口トモロヲ つみきみほ 木下隆行 渋川清彦 伊藤健太郎 光宗薫 
監督:片桐健滋

【ありそうでなかった奇抜な職業“ルームロンダリング”】というのがパンフレットの惹句であるが、10年ちょっと前に東京には存在していた。実際にはJovian自身もそうした一時しのぎの仕事に手を出そうとしたこともある。それはさておき、今作の主題はルームロンダリング=自己物件の居住者歴の浄化であるが、今作のテーマは「生きること」の定義である。ちなみに主題とは、目に見える、もしくは手で触れられるような形で呈示されるもので、しばしば名詞で表現可能なもの。テーマとは、しばしば主題に潜む/隠されている事柄で、しばしばセンテンスもしくは名詞節の形で表現されるものと思えば良いだろう。例えば映画『ゴジラ』の主題は巨大怪獣、そのテーマは核の恐怖であり、戦争という災厄がもたらす破壊の悲惨さである。本作のテーマは『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』に通底するものがある。

八雲御子(池田エライザ)は訳あり物件に入居し、一定期間で引っ越していくルームロンダリングで生活費を稼いでいた。父はいない。母も失踪。自分を育ててくれた祖母(渡辺えり)も他界。天涯孤独だった。そこに父親の葬儀で真っ向を投げつけたとされる信長もかくや、とばかりに乱入してきたのは母親の弟、御子の伯父にあたる雷土悟郎(オダギリジョー)。悪態をついたかと思うと、おもむろに御子を連れ去り、以後、自分の経営する不動産会社(という名目の裏社会に足を突っ込んだ怪しい稼業)のアルバイトとしてルームロンダリングを任せる。足りない生活費はポケットマネーから渡す。思いやりがあるのか無いのか分からない男である。その御子はというと、自殺したパンク歌手の春日公比古(渋川清彦)、殺人事件の被害者、千夏本悠希(光宗薫)、団地の公園に住みつく少年幽霊らと奇妙な交流を通じて、自分を見失っていく。ココがまず面白い。凡百のシナリオなら、幽霊との交流を通じて、天涯孤独の少女が徐々に心を開いて、現実の社会に足を踏み入れられるようになっていく・・・となるはずだが、そうはならない。そもそも裏稼業をやっている会社のアルバイトで、経営者たる伯父も叩けばホコリが出るどころではない。また、パッと見でロマンスを予感させる二軒目のアパートの隣人の虹川亜樹人(伊藤健太郎)も、ある重大な秘密を抱えている、陰のキャラ。映像やストーリーはコメディタッチでありながら、そこで語られる物語は非常に暗い。御子が常に携帯しているアヒルは、観客にとっては信号機のような役割を果たすアイテムであるが、御子にとってはある種の精神安定剤かつ幼稚さの象徴になっている。『グーニーズ』のマイキーが喘息の薬の吸入器をなかなか手放せなかったのと同じである。あるいはスティーブン・キングの『イット』のエディと言えば分るだろうか。

その御子が変化を遂げていくきっかけとなる、橋の上のシーンがある。これは近年の邦画では稀に見る計算されたシークエンスで、電車は合成だろうか、それともタイミングを完璧にリサーチした上でのテイクだったのだろうかと、劇場鑑賞中に我あらず考え込んでしまった。また、もしもあの電車のタイミングが偶然であるのなら、伊藤健太郎のアドリブ力というか、臨機応変さは大したものである。『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』で中条あやみに延々と告白し続け、最後にはステージで踊りながら顰蹙を買うという印象的な役割を無難にこなしていたあの子がここまで来たかと感心させられた。

その相手役にしてヒロインの池田エライザは、今後は少女漫画原作の映画のヒロインにはなるべく使わず、本格的な女優への道を歩ませてやって欲しい。今作のようなオリジナル脚本の作品への出演が望ましい。彼女のハンドラー達には切にそうしてほしいと願う。日本とフィリピンのミックスというのは良い。Jovianがマニー・パッキャオ(昨日は予想外の勝利! でも早く現役を引退してくれ!!)好きなのもあるのだろうが、この子には華がある。色気、もしくは妖艶さと言い換えても良い。本作でも、ほんのわずかではあるが着替えシーンや入浴シーンがあるから、スケベ映画ファンは少しだけなら期待してもいい。個性的な目鼻立ち、意外と巨乳、確かな演技力・表現力というのが、どこかアナ・ケンドリックを思わせる。小松菜奈に続いてハリウッド映画から出演オファー来ないかな。そんな期待も抱かせてくれる良作である。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, オダギリジョー, コメディ, ヒューマンドラマ, 日本, 池田エライザ, 監督:片桐健滋, 配給会社:ファントム・フィルムLeave a Comment on 『ルームロンダリング』 -死んでいない ≠ 生きるの不等式、再び-

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