Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: トム・ホランド

『 スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム 』 -The Dawn of SpiderVerse-

Posted on 2022年1月11日 by cool-jupiter

スパイダーマン 80点
2021年1月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・ホランド ゼンデイヤ ベネディクト・カンバーバッチ ジェイコブ・バタロン
監督:ジョン・ワッツ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220111222405j:plain

『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』の続編にして完結作。よくこれだけ壮大なストーリーを構想して、それを一本の映画に落とし込んだなと感心させられた。過去の『 スパイダーマン 』シリーズを鑑賞していることが望ましい・・・というか必須である。

 

あらすじ

自分がスパイダーマンであることが白日の下にさらされてしまったP・パーカー(トム・ホランド)は、助けを求めてドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)を訪れる。ドクター・ストレンジは、全世界にP・パーカー=スパイダーマンであることを忘れさせる魔法を実行するが、そのせいで他の世界のヴィランを呼び寄せてしまうことになり・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220111222420j:plain

以下、ネタバレあり

ポジティブ・サイド

見事なまでにスパイダーマン世界の文法に従い、スパイダーマンというキャラクターの特徴を描き出している。スパイダーマンの特徴とは、マン=男になろうとするボーイ=少年の物語であるということである。『 スパイダーマン:ホームカミング 』でT・スタークに”This is where you zip it. The adult is talking!”=「黙れ、大人が喋っているんだぞ」というシーンが象徴的だったが、本作でも子どもらしさが全開。大人(ひねくれてはいるが)のドクター・ストレンジが魔術を使おうと集中しているところに何度も何度も割り込むさまは、まさに子ども。Jovianも大学で教えている時に、たまにP・パーカーのようにマシンガンのようにまくし立てて、こちらを遮ってくる学生に遭遇する。スパイダーマンとは、このピーターという少年の成長物語なのである。

 

トレイラーで明らかにされていたドック・オックの出現、もっと言えば前作『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』のラストにJ・K・シモンズ演じる例の編集長が登場していたことに、もっと敏感になる必要があった。うーむ、悔しい。あそこに本作の胆の部分が大いに示唆されていたのだなあ。Jovianは『 スパイダーマン スパイダーバース 』が劇場公開された際にスルーしてしまった。

 

スパイダーマンが新しいスーツでドック・オックと激闘を繰り広げるシーンとそのオチはなかなか面白かったし、その他のお馴染みヴィランが次から次へと登場して、しかもそれらを演じるのもウィレム・デフォーやジェイミー・フォックスといったお馴染みの面々。「こいつら全員をまとめて相手するのは無理ちゃう?」と感じたが、ここまで来て鈍いJovianはやっとのことトビー・マグワイアやアンドリュー・ガーフィールドが登場する可能性に思い至った。そしてアンドリュー・ガーフィールド、そしてトビー・マグワイアが登場した際には、『 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 』のトレイラーで、ジェダイの帰還ならぬハン・ソロとチューバッカの帰還を知った時と同じような感覚を味わうことができた。

 

アクションも見せる。トムホのスパイダーマンがドクター・ストレンジとの一騎打ちで、まさかの大金星。MagicよりもMathだ、という発言には説得力があったし、P・パーカーがボストンの大学を志望するほどの優等生であるという背景ともちゃんと連動している。ドック・オックとの対決でも、ナノテク・スーツが文字通りに勝敗を分けた。観る側をひやひやさせつつ、しっかり笑わせてもくれた。

 

スパイダーマンは親愛なる隣人である一方、若さゆえの過ちや純粋な不運から、周囲の人を不幸にしたり、あるいはヴィランに変えてしまう。グリーン・ゴブリンなどが好例だが、そうした歴代でお馴染みのヴィランを本作は fix =治療しようとする。これには驚いた。同時に、やはりスパイダーマンは大事な人を喪失してしまう。これには胸が痛んだ。同じく、アメイジング・スパイダーマンが落下していくMJを見事に救い出したシーンには、彼自身が果たせなかったグウェンの救出を重ね合わせて観ることができた。まさにジョン・ワッツのスパイダーマンだけではなく、サム・ライミやマーク・ウェブのスパイダーマン世界をも包括した大団円には、目頭が熱くなった。

 

MCUはちょっと食傷気味のJovianも、本作はほとんどすべての瞬間を純粋に楽しむことができた。シリーズのファンなら、本作を鑑賞しないという選択肢は絶対にありえない。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220111222438j:plain

ネガティブ・サイド

マルチバースからやって来たヴィランたちやP・パーカーたちがあっさりと異世界に順応するのには、少々違和感を覚えた。彼らの世界には魔術師は存在しなかったはずだ。

 

ポストクレジットシーンが長い、というか informercial のようになっている。『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』のように、壁画だけを数秒間映し出してパッと暗転、クレジットへ・・・というので充分だと思う。

 

これは映画の出来とは関係ないが、明らかな誤訳はどうかと思う。林完治は売れっ子翻訳家だが、vigilanteを悪党と訳すのは、さすがにダメだろう。まさか villan と混同したわけはないだろうが、これはちゃんと「自警団」あるいは「自警団員」、もしくは「警官気取り」とでも訳すべきだ。もちろん映画字幕の字数制限については承知しているが、スパイダーマンを悪党呼ばわりはあんまりだと思った次第である。

 

総評

2022年最高の一本とまでは言わないが、間違いなくトップ10には入るだろう出来映え。トップ5もありえるかもしれない。過去の『 スパイダーマン 』映画の鑑賞がマストであるが、その労力は報われるはず。というよりも、本作を観る層の90%は過去作品を鑑賞済みだろう。スパイダーマン世界をきれいに終わらせつつ、新たな世界の幕開けにつなげるという離れ業を演じたジョン・ワッツに満腔の敬意を表したいと思う。政府がまん防や緊急事態宣言を出す前に鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a people person

字面だけ見ると何のことやら分からないかもしれないが、

He’s a dog person.
彼は犬好き人間だ。

She is a cat person. 
彼女は猫派だ。

I am a rabbit person. 
俺はウサギ大好き人間なんだ。

と来ると、a people person = 人間が好きな人、人付き合いが好きな人という意味が見えてくるだろう。

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アクション, アメリカ, ジェイコブ・バタロン, ゼンデイヤ, トム・ホランド, ベネディクト・カンバーバッチ, 監督:ジョン・ワッツ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム 』 -The Dawn of SpiderVerse-

『 カオス・ウォーキング 』 -ジュブナイル小説の映像化-

Posted on 2021年11月18日 by cool-jupiter

カオス・ウォーキング 50点
2021年11月13日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:トム・ホランド デイジー・リドリー マッツ・ミケルセン
監督:ダグ・リーマン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211118230531j:plain

マット・デイモンの『 ボーン 』シリーズや、『 バリー・シール アメリカをはめた男 』や『 ザ・ウォール 』など、骨太な物語とエンタメ性を両立させる監督。しかし、今作はビミョーな出来栄えであった。

 

あらすじ

西暦2257年。女はおらず、男は思考が「ノイズ」として具現化されてしまうニューワールド。そこでは何故か女性が存在しない。地球からの植民第二波の宇宙船が事故に遭い、不時着したことで、トッド(トム・ホランド)は女性のヴァイオラ(デイジー・リドリー)と出会う。母船と連絡を取れる場所へたどり着くため、トッドとヴァイオラは旅立つが、その過程で二人は星の秘密に迫ることになり・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211118230549j:plain

ポジティブ・サイド

『 メイズ・ランナー 』を面白いと思える人なら、本作も面白いと感じられるだろう。謎の環境。男しかいない世界。そこに現われた1人の少女。それによって動き出す運命。本作も、時代や場所こそ違えど、大きな枠では典型的なジュブナイル小説の映画化である。

思考が具現化されてしまうというのは面白いアイデア。女性がいない世界、あるいは男性がいない世界というのはSFやファンタジーでは使い古された設定ではあるが、「ノイズ」と組み合わせることで、非常にユニークなボーイ・ミーツ・ガールに仕上がった。男という生き物は『 君が君で君だ 』を観るまでもなく、隙あらば妄想するものである。それが筒抜けになることの恐怖と滑稽さよ。

 

ありふれた世界観にユニークな現象を一つ持ち込んだ一点突破型のストーリーを、トム・ホランド、デイジー・リドリー、マッツ・ミケルセンのスターが牽引することで魅力的なものにしている。彼らのファンならば鑑賞されたし。

 

ネガティブ・サイド

悪い意味でも『 メイズ・ランナー 』そっくりである。肝腎の「ノイズ」の謎の根源には1ミリたりとも迫らない。元々、三部作の小説の第一部だけというのも『 メイズ・ランナー 』と同じ。あちらは小説を読んだのだが、テレパシー設定が映画ではバッサリとカットされていた。それが映像化の際にはプラスに作用していたが、本作はおそらく小説から映画にする際に、取り除いてはいけない要素を取り除いてしまっている。女性がいない世界、文字も存在しない世界で、なぜキスを夢想できるのか。

 

同じく、冒頭でいきなり牧師だか神父だかにトッドが折檻されてしまうが、ニューワールドにおける宗教観、あるいは世界観がイマイチ不明である。「ノイズがあれば文字はいらない」というのは、ジュブナイル小説としてはありかもしれないが、SFとしてはなしだと感じた。それでどうやって農業を営むのか。あるいは、共同体の生産力と生産物を分配するのか。

 

最大の弱点は、エイリアンの存在。第一部の引きとして、先住エイリアンのスパクルが大挙して登場、敵、それとも味方?という場面がなかった。あわよくば二部、三部に続けられたらいいな、というのは映画製作の attitude としていかがなものか。「この世界に観客を引きずり込んでやるんだ」という強い気概は今作からは感じなかった。

 

総評

SFになりきれていない。文明や世界観を描き切れていない。熱心なSFファンには訴えるものがないだろう。男女二人の長変則的ロードムービーかつ逃避行ものとして見れば、それなりの出来栄え。若者向けデートムービーというのが最も無難な評価だろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

martyr 

「殉教者」の意。『 マーターズ 』はこの語の複数形である。英検1級やTOEFL iBT100点以上を目指すなら知っておきたい。コロナ前からも存在していたが、コロナ禍によって「健康のためなら死んでもいい」、「薬やワクチンはすべて毒」という考え方がますます可視化されるようになってきた。こうした考えの人間たちは、ある意味で殉教者と呼んで差し支えないと思うのだが、どうだろう。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アドベンチャー, アメリカ, デイジー・リドリー, トム・ホランド, マッツ・ミケルセン, 監督:ダグ・リーマン, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 カオス・ウォーキング 』 -ジュブナイル小説の映像化-

『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』 -是非、劇場で3D鑑賞を-

Posted on 2019年6月30日2020年4月11日 by cool-jupiter

スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 80点
2019年6月29日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:トム・ホランド ゼンデイヤ ジェイク・ジレンホール J・K・シモンズ
監督:ジョン・ワッツ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190630220236j:plain

親愛なる隣人が帰ってくる。トビー・マグワイア以上にピーター・パーカーを体現しているかもしれないトム・ホランドへの期待は世界的に高い。そしてSonyに敬意を表してか、全世界最速で日本で公開される。そして梅田ブルク7はこれに合わせてDOLBY CINEMA 3Dを導入。ならばさっそく体験せんとチケット購入。2,300円の価値に見合う体験ができた。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190630220315j:plain

あらすじ

ピーター(トム・ホランド)はアイアンマンとの別離に苦悩しながらも、高校生らしい生活に戻っていた。学校の科学体験ヨーロッパ旅行でMJ(ゼンデイヤ)との距離を縮めようとするピーターの前にしかし、謎の水の怪物とそれを撃退しようとする謎のヒーローが現れ・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190630220353j:plain

ポジティブ・サイド

3Dで鑑賞したが、この判断は正解だったと言えると思う。4DXやMX4Dでも良かったのかもしれない。スパイダーマンのアクションの肝はウェブを使った三次元機動にある。そんな立体的アクション観客に追体験してもらうためには、二次元的なスクリーンではなく3Dや4Dの力こそが必要なのかもしれない。もう一つ、我々はメガネ、アイウェア、ビューワー、呼び名は何であれ、何かを通じて何かを見ることに慣れきっている。それゆえに自分の目で見るという行為に知らず知らずのうちに絶大な信頼を置いている。この「見る」という行為の危うさと確かさを本作は同時に追求する。もの凄い離れ業である。詳しくは本作を堪能して欲しいとしか言えない。

 

スパイダーマンのアクションも順調に進化している。トニー・スタークはストーリーが進むにつれてアイアンマンであることと良くも悪くも不可分になっていったが、ピーター・パーカーはスパイダーマンになっても、ピーター本来のちょっとnerdyな部分も失わない。とあるシーンで理系の秀才の一面を存分に発揮した戦術を披露してくれる。前作では「スーツがないと自分は何者にもなれない」と言っていた子どもが、スーツの力を最大限発揮する為に自らの頭脳を駆使するようになった。こうして少年は少しずつ大人に近づいていくのである。そして、そのシーンでハッピーが流す音楽は完全に映画『 アイアンマン 』およびヒーローとしてのアイアンマン、人間としてのトニー・スタークへのトリビュート。本作鑑賞前には『 アベンジャーズ インフィニティ・ウォー 』、『 スパイダーマン ホームカミング 』、できれば『 シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ 』、『 キャプテン・マーベル 』や『 ドクター・ストレンジ 』、更に余裕があれば『 アイアンマン 』も鑑賞しておきたいものである。それだけの価値はきっとある。ピーターが生き生きとスパイダースーツをカスタマイズする様に、我々は“彼”を見出すのである。

 

それにしても、スパイダーマンというのはやはりかなり特殊なヒーローなのだろうなと感じる。気になるあのコのプロムのエスコート役の座をどうやってゲットしようかと思案したり、修学旅行の飛行機であのコの隣の座席をどうやってゲットしようかと悩んだり、自分ではない誰かと盛り上がるあのコを目の当たりにすると、何故これほど胸が千々に乱れるのかが分からない、そんな甘酸っぱい青春の一ページが蘇ってくるようだ・・・と感じられる人は相当に幸せな青春時代を遅れた勝ち組である。リア充爆発しろ

 

Back on track. 非常に現代的~近未来的なテクノロジーがふんだんに使われており、そのことがプロットのリアリティを増している。なおかつ、現代的なのはテクノロジーだけではない。我々は何を信じるのか、どうしてそれを信じるのか、という命題に対して一定の答えを本作は呈示するからだ。情報が溢れかえり、画質や音質、果ては立体映像や嗅覚や触覚まで刺激してくる劇場施設、さらにはVR技術の著しい発達など、現実と仮想の境目はどんどんと曖昧になってきている。それは、ファクトとフェイクの境目がいよいよ混沌になりつつある現代への痛烈な風刺であるように思えてならない。そのことを示唆するポストクレジットシーンは、否応なく次作への期待と不安を高めてくれる。おかえり、J・K・シモンズ!

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190630220438j:plain

 

ネガティブ・サイド

劇中で用いられる仕掛けとガジェットはそれなりに納得のいくものであるが、それでも全世界75億の人類すべてを納得させられる代物ではありえない。そう考えられる根拠は主に二つある。

 

1つには、アベンジャーズは、なかんずくトニー・スターク/アイアンマンは、戦いによって守った命もあれば、危険に晒した、あるいは奪ってしまった命もある。そのことは『 シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ 』でスカーレット・ウィッチがまさに苛むことになった事柄である。単純にアベンジャーズの後釜にヒーローが座ったからといって、万事が丸く収まることなどありえない。むしろ、新たなシビル・ウォーの呼び水になるだけだ。誰かにとっての正義が、万人にとっての正義にならないこと、それこそがシビル・ウォーの原因だった。強大な力は適切に管理されねばならないというトニーの思想は自身が兵器製造会社社長であるという背景から来ている。一方で、国際連合なる組織にアベンジャーズの出動可否を判断させるというのは、国際連盟が世界大戦の勃発を防止できなかったことをリアルタイムで見てきたスティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカにとってはとうてい承服しかねることである。正義の味方の喪失を、新たな正義の味方で補うことの危険性を、MCU世界は理解するはずだ。

 

もう1つには、他のアベンジャーが出張ってきた時にどうするのかということである。大人と子どもの中間であるピーターは騙しおおせても、大人の事情で出張ってこれなかったドクター・ストレンジやキャプテン・マーベル、またはハンク・ピム博士やブルース・バナーでも良い。彼らの目を欺けるだろうか。おそらく不可能だろう。それに、世の中には何でもかんでも陰謀論に仕立て上げてしまう人種も絶対に存在するのである。例えば『 X-ファイル 』のローン・ガンメンのような奴らは、全米だけでも千、もしかすると万の単位で存在しているのだ。ピーター・パーカーはそれなりにnerdyかつgeekyであるが、本気になったオタク連中というのは、ネッドの一億倍は有能であろう。他のスーパーヒーローに関してはこんなことは想像できないが、スパイダーマンは別だ。『 スパイダーマン2 』で列車を見事に止めたスパイダーマンを、ニューヨーク市民たちは見事に団結し、守り、送った。スパイダーマンの世界の市民は無力ではないはずだ。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190630220503j:plain

総評

色々と考えさせられてしまう面が多く、そのうちのいくつかは重要な示唆を含んでおり、そのうちのいくつかはスパイダーマン世界とどこか調和しない。そのように感じられる。しかし、エンターテインメント要素については優れたアイデアがてんこ盛りで、非常にシネマティックな体験ができることは請け合いである。できれば2Dではなく、3Dや4DXなどで鑑賞をしてほしい。映画館の回し者ならずとも、そのようにお勧めしたくなる快作である。

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, J・K・シモンズ, アクション, アメリカ, ジェイク・ジレンホール, ゼンデイヤ, トム・ホランド, 監督:ジョン・ワッツ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンターテインメントLeave a Comment on 『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』 -是非、劇場で3D鑑賞を-

『 スパイダーマン ホームカミング 』 -新たなスパイディの冒険の序章-

Posted on 2019年6月30日 by cool-jupiter

スパイダーマン ホームカミング 70点
2019年6月27日 レンタルBlu-rayにて鑑賞
出演:トム:ホランド マイケル・キートン ゼンデイヤ ロバート・ダウニー・Jr.
監督:ジョン・ワッツ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190630030913j:plain

『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』に向けての復習および『 アベンジャーズ:エンドゲーム 』の振り返りをしたいと思い、TSUTAYAでBlu-rayを借りてくる。初回に劇場で観た時とは、少々異なる感想を持った。

 

あらすじ

『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』の戦いから、ニューヨークに帰還したピーター(トム・ホランド)は、アベンジャーズの一員になることを夢見て学校生活も上の空。ニューヨークの街で人助けに精を出しながら、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)からの声かけを待っていた。しかし、そこではヴァルチャー(マイケル・キートン)が妖しく蠢動していた・・・

 

ポジティブ・サイド

今作のスパイダーマンは、サム・ライミ監督の初代『 スパイダーマン 』に近い。つまり、ピーター・パーカーがスパイダーマンとしての使命に目覚めていくということである。しかし、そこには本質的な差異がある。前者では、不注意からUncle Benを死なせてしまったことからピーターの物語が始まるが、今作ではトニー・スターク/アイアンマンの力になりたい、アベンジャーズの一員として認められたいというところから、ピーターの成長が始まる。そう、成長である。成長するための基本的な条件とは何か。それは「未熟」であるということである。スパイダーマンは英語ではSpider-Manである。一方でアイアンマンはIron Manと表記される。他にもSupermanやAquaman、Batmanなど、ハイフンを持つスーパーヒーローは少ない。スパイダーマンはおそらく、Manになりきれていないのだ。ピーター自身が、自分はボーイだと言ってしまう場面すらあるのだ。ManとBoyの境目とは何か。それはアメリカ風に言うならば、positive male figureから適切な影響を受けて、自らもpositive male figureになれるかどうかであろう。端的に言えば、文学的な意味で父親殺しができるかどうかにかかっているわけだ。

 

本作に登場する主要な男性キャラは、ネッドを除けば、ほとんど全員がピーターにとって疑似的な父親、あるいは本来の父親が果たすべきポジティブかつネガティブな影響を代理としてピーターに及ぼすキャラクター達である。その筆頭は言うまでもなくトニー・スターク/アイアンマンである。トニーとピーターの対話は、大人と子どもの対話でありながら、父と息子の対話でもある。トニー自身も、自らが父親に抱く複雑な想いと、父親が自分に対して抱いていたであろう愛情を意識したからこそ成立した名場面である。『 アベンジャーズ:エンドゲーム 』を観た後だからこそ、尚更にそう感じる。

 

もう一人の疑似的な父親、マイケル・キートン演じるヴァルチャーは、トニーとは対照的である。彼は地べたを這いつくばる労働者であり、家族を愛し、守り、食わせるためなら何でもやる男である。つまり、小市民ヒーローなのだ。と同時に、彼はピーターが乗り越えるべき、倒すべきものの象徴でもある。『 バットマン 』、『 バットマン リターンズ 』ではバットマンを、『 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 』ではバードマンを、そして本作では怪鳥ヴァルチャーを演じるなど、スーパーヒーローから、落ち目の俳優、そしてスーパーヴィランへと進化を遂げた。理知的で爽やかさ、清潔さを感じさせるイケメンだったはずが、強面の中年オヤジに変貌したという意味では、彼はダンディズムを決して失わないトニー・スタークとは真逆であると言えるのかもしれない。

 

アクションのハイライトは客船のシーンだろう。『 スパイダーマン2 』の電車を止めるシークエンスに優るとも劣らない緊張感とスペクタクル。そしてアイアンマンが見せつけるスーパーヒーローとしての格の違い。これは少年と壮年の物語、そして少年が何とか青年になろうと足掻く物語なのだ。『 プーと大人になった僕 』のレビューで、子ども=労働と性から疎外された存在という定義を紹介したが、今作のピーター・パーカーは労働=what you doの面で何とか子どもと大人の中間ぐらいの存在へと成長した。そして、次作では(性的な成熟という意味ではなく、ロマンチックな意味での)性の成長、つまりは男性に、Spider-BoyからSpider-Manになることを予感させて物語は閉じる。見事な脚本、見事なストーリーテリングである。

 

ネガティブ・サイド

FBIを欺き続けたとヴァルチャーは誇らしげに語るが、CIA、NSA、DHSやATFなどその他の機関をも出し抜いたというのは少々信じがたい。冒頭に登場したオバちゃん率いる部隊は相当な無能者の集まりだったのだろうか。

 

フラッシュ・トンプソンのキャラがウザい。いや、ウザいのは原作通りだが、このキャラに嫌味で小憎たらしい白人のクソガキをキャスティングしないのは何故なのだ?答えはおそらくこうだ。原作どおりに進めば、彼はその後、ピーターの友人になるからだ。人種のるつぼ、ニューヨーク万歳というわけだ。キャスティングだけで先が読めてしまうのは興醒めである。

 

ミシェルの見せ方も、もう少し工夫が欲しかった。『 ミーン・ガールズ 』のような生態系で生き抜いてきたような描写が欲しいとは思わないが、あまりにもアッサリとアカデミック・デカスロンのチームに溶け込んでいた。MJは家庭環境が余り良くないイメージをファンならば皆、抱いているはず。何か欠けたもの、何か隠したいもの、それでも何か共有したいものを抱えているからこそ、ピーターとMJは惹かれ合うべきで、その伏線が非常に弱かった。まあ、そのあたりは『 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 』がしっかりと描写してくれることに期待するとしよう。

 

これはトレイラー作成担当者に文句を言うべきなのだろうが、劇場鑑賞前に熱心な映画ファンがどれくらいの回数、スパイダーマンとアイアンマンがサイド・バイ・サイドで空を飛ぶシーンを見せられただろうか。本編に存在しないシーンでトレイラーを作るのは止めてもらいたい。こうした行為は法律で禁じられないのだろうか。

 

総評

欠点や粗が色々と浮かび上がってくるが、スパイダーマンというヒーローの特殊性、ピーター・パーカーというキャラの未熟さとそれゆえの魅力、そしてヒーローでありながらスーパーではないところ(親愛なる隣人レベルという意味で)が良い。かかる欠点がスパイディの大いなる魅力の源泉なのだ。だからこそ他のヒーロー物ではあまり描写されないビルドゥングスロマン要素が際立つ。サム・ライミ監督の手掛けた初代作品と肩を並べる傑作である。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アクション, アメリカ, ゼンデイヤ, トム・ホランド, マイケル・キートン, ロバート・ダウニー・Jr., 監督:ジョン・ワッツ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンターテインメントLeave a Comment on 『 スパイダーマン ホームカミング 』 -新たなスパイディの冒険の序章-

最近の投稿

  • 『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』 -青春の痛々しさが爆発する-
  • 『 28週後… 』 -初鑑賞-
  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme