インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 70点
2023年7月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ハリソン・フォード マッツ・ミケルソン カレン・アレン
監督:ジェームズ・マンゴールド
インディ・ジョーンズの引退作品。前作の『 インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 』がアレだったせいか、予想以上に楽しめた。
あらすじ
学校を退官したインディ・ジョーンズだが、妻マリオン(カレン・アレン)とは別居中で、俗世にもなじめずにいた。そんな彼の前に教え子のヘレナが現れ、インディが若き日に発見し、紛失したアンティキティラの片割れを見つけることができると言う。インディは、アンティキティラを求めて迫りくる敵から逃れつつ、再び冒険の旅に出ることになり・・・
ポジティブ・サイド
ハリソン・フォードが最後となるインディ・ジョーンズ役を等身大で演じた。ここでいう等身大とはもちろん80歳手前のお爺さんのこと。
もちろんいきなり年老いたインディを見せられてもアレなので、デジタル・ディエイジング技術でもって若き日のインディ・ジョーンズをスクリーンに復活させた。シリーズ恒例のノンストップ・アクションが炸裂。ジョン・ウィリアムズの “Raiders March” ともあいまって、一気にインディ・ジョーンズの世界に入っていける。
舞台は一転して現在(1969年)。大学も退官し、俗世に馴染めないインディの姿にはどうしたって哀愁が漂う。これまでの作品では学生は皆、熱心に授業を聞いてくれていたし、オフィス・アワーでもないのに質問攻めにあっていた。同じ大学教員の端くれとして、インディの気持ちはよく分かる。
その一方でナチスと激闘を繰り広げ、米軍のスパイとしても大活躍したインディが “I like Ike.” はまだしも、“Hell no, we won’t go!” を叫ぶ姿にも違和感を覚えたが、これは計算された伏線であった。なるほどなあ、前作はインディ・ジョーンズというキャラが、インディ・ジョーンズという人間であったという面を掘り下げたが、今作はそうした面をさらに追求したと言える。
今回のガジェットは、ちょっとした歴史好き(歴山大王がパッと誰だか分かれば十分な歴史好きだ)なら誰もが知っているアンティキティラ、そしてキーパーソンはアルキメデス。『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』の聖杯以外はフィクション要素満載だったシリーズが、現実に近づいてきた。これもキャラクターとしてのインディ・ジョーンズの人間的側面をより強く描きたいという製作者側の願望もしくは狙いなのだろう。
シリーズ恒例の世界を股にかけた大冒険は本作でも健在。謎解きの面白さも維持されているし、 共に冒険に出るヘレナやテディもキャラが立っている。マッツ・ミケルセンがインテリかつ過激思想の持ち主というヴィランを好演。東西冷戦は軍拡競争、すなわち科学力の争い。考古学とは相容れない。だからこそ、芸術や文化、歴史を破壊しようとしたナチスをもう一度敵役に据える、という判断は賢明だった。最初は『 帰ってきたヒトラー 』か、いやいや変化球で『 ブラジルから来た少年 』的なものを狙っているのかと思ったが、このヴィランはさらに違うことを考えていた。
クライマックスのインディの決断には涙が出そうになった。厭世家にならざるを得なかったインディならではの心情だろう。
そうそう、『 インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 』の数少ないネガティブだった、古典語を話すインディ・ジョーンズが第5作にしてついに実現。ラテン語学習者のJovianは一人歓喜した(インディたちが話したのはラテン語ではなかったが)。
ネガティブ・サイド
アンティキティラのもう半分を探す必然性をインディ自身が持っていない。ヘレナを追う敵から、知らない間に一緒に逃げるという、かなり消極的な冒険への旅立ち。もっとインディ自身の探求心を刺激するイベントが必要だった。
バンデラスの扱いが雑。『 エクスペンダブルズ 』のドルフ・ラングレンよりも酷い。
シリーズ恒例のユーモアとホラー要素が薄かった。前作がアレだったとはいえ、やはりスピルバーグ御大がメガホンをとるべきだったのではないか。
総評
意味ありげなラストシーンは、ついに安住の地を見つけたインディが、冒険はやめるけど、インディアナ・ジョーンズであることはやめない、という宣言なのだろう。そこからの爆音レイダース・マーチで、シリーズは本当に終わったのだなと実感した。トム・クルーズが本作鑑賞後に「自分も80歳までイーサン・ハントを演じたい」と言ったそうな。とりあえず、ハリソン・フォード、お疲れ様!
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
Give’ em hell!
直訳すれば「あいつらに地獄を見せてやれ」だが、実際は激励の言葉として使われる。『 トップガン マーヴェリック 』でも出撃前にハングマンがルースターに You give ‘em hell! =ぶちかませ、と言っていた。状況によって「やってやれ!」「お前ならできる!」のようにも訳せる。デカい勝負(プレゼンや入札など)に出る同僚にかける言葉としてもありだろう。
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『 忌怪島 きかいじま 』
『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』