コンジアム 50点
2022年2月4日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ウィ・ハジュン イ・スンウク
監督:チョン・ボムシク
近所のTSUTAYAで目についた。確か塚口サンサン劇場かどこかで上映していた時に、スルーしてしまった作品。サスペンスでは文句なしの韓国映画だが、ホラーではどうか。うーむ・・・という出来だった。
あらすじ
廃墟となったコンジアム精神病院への潜入ルポをYouTube配信しようというハジュン(ウィ・ハジュン)とその仲間たち。各種機材やカメラ、そして少々の演出も準備して臨んだ撮影だが、徐々に怪奇現象が起こり始め・・・
ポジティブ・サイド
このコンジアム廃病院は、何と実在するようである。セットや大道具、小道具では出せないおどろおどろしさが建物内には確かに充満していた。精神病院に首吊り自殺だの集団自殺だの人体実験だのといった属性を付与していくのは、現代日本だと難しそう。差別的、あるいは既に存在する差別を助長するかどで、そんな設定の映画や小説があれば、すぐに糾弾されるように思う。それをやってしまう韓国のエンタメ追求精神よ。
YouTuberとホラーという点では『 貞子 』よりもこちらが先行していた。その着眼点も悪くない。ホラー映画では登場人物の真後ろや真横から怪異がいきなり登場するのが最早お約束だが、今回の潜入パーティーのメンバーは皆、全身にカメラ装備。あらゆる角度を撮影していている。これにより、多くのホラー作品にありがちな「そのショットは誰が撮っているの?」という問い、すなわちカメラマンの存在を観る側の意識から消すことに役立っている。
このカメラマンの存在というのが、後半に明らかになる序盤にすでに起きていた怪奇現象につながっていて、これには少し唸らされた。
ジャケット裏の黒目少女はインパクトがあったが、これはマイナスか。ただし、彼女がしゃべる異言には一瞬だけ怖くなってしまったことは告白しておかねばなるまい。
ネガティブ・サイド
廃病院に行くまでは『 キャビン 』のように男女がワイワイしている。それはいい。だが、コンジアム病院に行くまでが長く感じられるし、肝腎のコンジアム病院内でも、ことが起こり始めるまでがひたすらに長い。定番のホラー的な展開になるまでに58分を要するというのは、いかがなものか。
霊の起こす怪異も、すでにどこかで見たものばかり。廃病院のただならぬ雰囲気を伝えるのに腐心しすぎて、観る側に恐怖の感情を催させることに失敗している。YouTuberの潜入レポートなら、雰囲気を伝えるだけで十分。しかし、これは潜入YouTuberを題材にした映画。捉えるべきはキャラクターの感じる恐怖。その意味では、多彩かつ臨場感あるカメラワークそのものは興味深かったものの、彼ら彼女らの恐怖の感情を存分に映し出したとは言い難い。その意味では『 ブレア・ウィッチ・プロジェクト 』は素晴らしかった。何も起きていないのに恐怖する学生たちの様を赤裸々に映し出していた。
マネキンやかつらなどのガジェットもジャパネスク・ホラーで散々扱われて手垢がついている。それを使うというのは感心しない。『 パラノーマル・アクティビティ 』から『 サイレントヒル 』まで、どこかで観たシーンや演出の繰り返しで、60分以降は完全に惰性で画面を眺めるだけになってしまった。
隊長のハジュンが、隊員からのギャラのアップ要求を受けるシーンも何か違うのではないか。逆にハジュンの方から隊員にギャラアップを申し出て、撮影を完了させる意志を見せるべきだったように思う。韓国語の「生きよう」の字が「死のう」に変わるのを見たことで弱気になるのなら、そもそもコンジアム病院に突撃しないだろうし、隊員が不甲斐ないからと自ら出陣もしないだろうと思う。
ハジュンの死に方も怖くない。例えば、霊に捕まって、どこかに閉じ込められて、救いの手が伸びてきたので力いっぱい掴んだ。しかし、それが実は序盤にロッカーに手を入れてきた隊員の女子の手で・・・という展開で暗転して終わり、という展開なら、観ているこちらも相当なショックを受けただろう。
総評
サスペンスでは邦画は韓国映画に手も足も出ないが、ホラーならまだまだ勝てるかな。とは言え、『 牛首村 』の出来映えによっては、ジャパネスク・ホラーもいよいよ終焉し、韓国映画に全ジャンルで抜かれてしまうかもしれない。大して怖い作品ではないので、ホラー映画に興味があるけれど、どれを入門編に選んでよいか分からない、という向きにお勧めできる程度の怖さである。
Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン
チンチャ
廃病院内でパーティーの面々が何度も何度も「チンチャ、チンチャ」と言っている。字幕は「本当だよ!」だったような。雰囲気的には「マジだって」、「ホントなんだよ」のような、カジュアル要素が感じられた。一時期、女子高生の間で「チンチャそれな」というフレーズが流行っていたらしいが、実際にそういうノリで使う言葉なのだろう。