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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:松竹

『 ロングレッグス 』 -誇大広告に騙されることなかれ-

Posted on 2025年3月18日 by cool-jupiter

ロングレッグズ 35点
2025年3月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マイカ・モンロー ニコラス・ケイジ
監督:オズグッド・パーキンス

 

『 羊たちの沈黙 』以来の傑作なる評に惹かれてチケット購入。Don’t believe the hype…

あらすじ

FBI捜査官のリー・ハーカー(マイカ・モンロー)は連続殺人事件を捜査していた。すべての事件で、父親が家族を殺害した後に自殺しており、現場には謎の暗号文が残されていて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 イット・フォローズ 』で主役を張ったマイカ・モンローが主人公ではないか。気弱だが、芯の強さを感じさせる。しかし、どこか壊れてしまいそうな脆さを常に漂わせるキャラクターを好演した。

 

ニコラス・ケイジもB級映画への出演が相次いでいるが、これは役としては当たりではないか。ニコラス・ケイジは(ある意味トム・クルーズのように)常にニコラス・ケイジを演じているが、今回の車の中での絶叫シーンはニコケイっぽさがなく、新鮮に感じられた。

 

ラストの余韻もなかなか。自分の〇〇と△△を☆してしまったわけで、バッドエンドを選ぶのか、それともワーストエンドを選ぶのかは、ある意味で観る側の解釈次第というわけか。それもありだろう。

 

ネガティブ・サイド

ジャンプ・スケア多過ぎ。序盤からガンガン使われて、「あれ、これはそういう映画か?」と思ったあたりから、そろそろ来るなというところでギャン!・・・白けるで、ホンマ。

 

殺人犯が潜伏している可能性のある家に、単独で「FBIだ!」と叫んで訪問するアホがいるのか?

 

あの猫はどうやって生きていた?一月ほど飲まず食わずで放置されていたのではないのか。それとも捜査の直前に自分からケージに入ったとでもいうのか。

 

暗号の解き方も呆気ないというか、こちらはそこを知りたいのに特に深い考察もなく終わってしまう。まあ、ジャンルがサスペンスやミステリではなくホラーあるいはスーパーナチュラル・スリラーなので仕方ないのだが、だったら何故に『 羊たちの沈黙 』や『 セブン 』を引き合いに出して宣伝するのだ?こういうのは公正取引委員会に訴えられないのだろうか。

 

閑話休題。

 

一番の疑問が、呪いの人形の運搬および搬入。これまでの被害者家族のだれ一人として「教会の方から来ました」と言われて、こんな人、地元の教会にいたっけ?と感じなかったのか。そもそもある程度信心深い=定期的に教会に行く人でないと、教会側も誕生日や住所を把握できないだろう。コスプレだけで住民が信用してしまうという設定を当の脚本家は何も感じなかったのだろうか。

 

またアメリカには信教の自由があるから悪魔崇拝を止められないというのも笑った。いや、信教の自由は保護されてしかるべきだが、それと殺人教唆や殺人の共謀は完全に別の話。そこを混同するFBIの面々には笑わされると同時に頭を抱えざるを得なかった。

 

とにかく珍品というのは一番しっくりくる作品である。

 

総評

人間同士の頭脳戦と見せかけてスーパーナチュラル・スリラーで、ポップな感じのエンディングが『 アイム・ノット・シリアルキラー 』を髣髴させた。同作が好きだという向きは本作も口に合うかもしれない。ニコラス・ケイジのファンにもお勧めする(出番は少ないが)。そうでなければ、わざわざチケットを購入する必要はない。配信・レンタルを待つか、それもスルーして構わない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

So they say.

彼ら彼女はそのように言う、転じて「世間ではそう言われているね」、「そうらしいね」の意。

A: Baseball is a national pastime in Japan.
    野球は日本の国民的娯楽だって。

B: So they say. 
    らしいね。


A: It takes inspiration to be an artist.
    芸術家になるにはインスピレーションが必要だよ。

B: So they say.
   そうみたいですね。

のように使う。これがパッと言えれば、英会話中級者以上だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ゆきてかへらぬ 』
『 Flow 』
『 ミッキー17 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, E Rank, アメリカ, ニコラス・ケイジ, ホラー, マイカ・モンロー, 監督:オズグッド・パーキンス, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 ロングレッグス 』 -誇大広告に騙されることなかれ-

『 雪の花 ―ともに在りて― 』 -ワクチン接種のはじまりを描く-

Posted on 2025年2月5日 by cool-jupiter

雪の花 ―ともに在りて― 70点
2025年2月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松坂桃李 芳根京子 役所広司
監督:小泉堯史

 

『 散り椿 』など、時代劇を世に問い続ける小泉監督の最新作。どう考えてもコロナ禍とそのワクチン接種にインスパイアされて出来た作品である。

あらすじ

江戸時代末期、越前の町医者、笠原良策(松坂桃李)はある村に診療に訪れる。しかし、患者たちは痘瘡を患っていた。患者を隔離するしか為す術がない良策は、漢方でなく蘭方に治療法を見出す。そして蘭方医の日野鼎哉(役所広司)に教えを乞うため京の都に向かうが・・・

ポジティブ・サイド

冒頭から、病を患う村人に対して何もできないという無力感。疱瘡の患者は山あげして、後は運よく生き残る者が出るのを待つのみという絶望感。中世ヨーロッパで何度も流行したペストや、100年前のスペイン風邪もこのようなものだったのだろうか。ある意味で当然だが、最初期のコロナ禍を思い起こさせる。

 

松坂桃李が笠原良策を好演。名を求めず、利を求めず、ただただ人を救いたい、自分に救うことができる人を何としても増やしたいという医者の鑑のような人物をきっちりと描き出した。蘭方への唐突な宗旨替えも、無力感の強さが使命感の強さに転化したものということで説明がついた。

 

種痘の原理は理解できても、それを実施するために越えなければならない政治的な関門がいくつもあるのもコロナ禍との共通点だった。特に種苗を海外から輸入するというのは、そのまんまワクチンの輸入に重なっていた。

 

また工場で生産できるワクチンとは異なり、当時は子どもから子どもへ抗原を受け継いでいく必要があり、かつその期間も限定されていたため、吹雪の峠越えをも敢行したようだ。これは映画化に際しての脚色だろうと思っていたシーンが、調べてみると日記に基づく史実だということに度肝を抜かれた。

 

なんとか種苗を入手して解説した種痘所も、流言飛語によって閑古鳥が鳴く始末。しかし、先輩医師の援助や藩への歎願、さらに良いのか悪いのか権力者への根回しなどもあり、ついに藩を挙げての種痘の体制が整う。いつの時代も真偽不明の風説が流布される。そしてその発信元が往々にして既得権益側であるというのも本邦の伝統なのか。そうした旧弊は打破されるべきであるし、実際に過去にも打破されてきたのだという力強いメッセージを受け取ったように思う。

 

少し前に仕事の一環として、このようなレクチャー動画を作ったことがある。センメルヴェイスとナイチンゲール、さらにパスツールについてリサーチしている中でジェンナーも調べた。しかし笠原良策については勉強が及ばなかった。我が目の不明を恥じるとともに、蒙を啓いてくれた小泉監督、原作者の吉村昭氏に感謝したい。

 

ネガティブ・サイド

時々、左から右へワイプで画面が切り替わるのが目障りと言うか、不自然に感じた。

 

四季折々の印象的なショットの数々とは対照的に、良作が旅するシーンでは画角がかなり小さく、旅をしているという感覚があまり共有されなかった。特に最後のシーンは全画面に広がるほどの〇〇を見せるべきではなかったか。それこそが流れの先というものだろう。

 

良策の大立ち回りが非現実的。悪党2~3人を懲らしめる程度なら日ごろの鍛錬の賜物だと納得はできるが、それ以上の大人数となると医者ではなく相当な腕利きの武士になってしまう。

 

芳根京子の男之介っぷりも映画の絵作り以外の意味がなかった。

 

総評

知識を更新することの大切さはいつの時代でも同じ。現代人でもRNAワクチンが何たるかを理解できない、というか免疫機構の概要を理解できない者が多くいるが、100年以上前の人間ならなおさらだろう。そんな中でEBM=Evidence Based Medicineに宗旨替えし、利を求めず名を求めずを貫いた医師がいたことには素直に感動させられた。ぜひ多くの人に観てもらいたいと思える秀作。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

vaccinate

ワクチン接種させる、の意味。自身が注射する側でなければ、be vaccinated または get vaccinated という形で使う。政府や自治体が主語なら、The government vaccinated 20 million people last year. のように能動態でも使える。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アット・ザ・ベンチ 』
『 怪獣ヤロウ! 』
『 Welcome Back 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, B Rank, 伝記, 役所広司, 日本, 松坂桃李, 歴史, 監督:小泉堯史, 芳根京子, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 雪の花 ―ともに在りて― 』 -ワクチン接種のはじまりを描く-

『 正体 』 -トレーラーは避けるべし-

Posted on 2024年12月1日 by cool-jupiter

正体 60点
2024年11月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:横浜流星
監督:藤井道人

 

藤井道人監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

死刑囚の鏑木慶一(横浜流星)が脱走、警察の目をかいくぐり、仕事をしながら逃走を続けていた。逃亡先で出会う人々と交流を深めながらも正体がばれて逃げ続ける鏑木。彼にはある目的があり・・・

 

ポジティブ・サイド

そもそも逮捕・勾留されている犯罪者がそんなに簡単に逃げられるのかと思うが、Jovianは大阪の富田林署から脱出し、数十日の逃走後に山口県で捕まった男性を思い出した。なので鏑木の逃走劇およびその後の潜伏にもリアリティを感じることができた。

 

最初の潜伏先がなにわ万博の建設現場だというのも生々しい。『 BAD LANDS バッド・ランズ 』や『 さがす 』で描かれた西成区のような場所は、素性も経歴もどうでもいい日雇い労働者の供給先だからだ。我が町尼崎の南の方も昔はそうだった。

 

まるで韓国映画であるかのように警察が無能だが、その根源は松重豊演じる警視総監?または捜査一課長。推測することしかできないが、『 拳と祈り -袴田巖の生涯- 』の袴田さんもそんないい加減な采配で犯人扱いされたのではなかっただろうか。

 

追う刑事の山田孝之の芝居も抑制的でよかった。台詞ではなく表情や行動で内なる想いを表出させていたのが印象的。特に記者会見で、すぐ横にいる上司への不信感と国民に対する謝罪および協力の呼びかけをするためのプロフェッショナルの顔を両立させていたのは見ごたえあるシーンだった。

 

SNSから身バレし、しかしSNSを活用することで注目を集め世論を喚起する。まるで最近のどこぞの県知事選のようだが、終盤の立てこもりにもリアリティが認められた。

 

鏑木と交流するキャラの中では吉岡里穂演じる記者の父親役が印象に残った。以前の勤め先で京都弁護士会所属の大御所二人が痴漢に間違われた際の対応について、一人は「身元を明らかにして立ち去る」、もう一人は「その場にとどまって弁護士を呼ぶ」だった。なので弁護士が対応を誤ることもありえるし、実際にこうした描写を入れることで鏑木についた弁護士が無能だった、あるいは対応を誤ったと間接的に示す効果もあった。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて、逮捕から死刑の確定までが早すぎる。弁護士が超絶無能だったとしか考えられない。衣類に残る血痕の量や、実際の血液型鑑定などをすれば鏑木が犯人ではない可能性は相当に高いはず。警察および検察はどう証拠を捏造したというのか。警察は鏑木の育った施設をマークするよりも、担当弁護士の事務所および自宅をマークすべきと考えるべきではなかったか。

 

吉岡里帆と同居するようになってからの流れがやや雑だと感じられた。アラサーのバリキャリ女子が二十歳少々の若造を居候させていく中で、偶発的に、または意図的に背中のやけどの跡を見るとか、もう少し那須(で漢字は合っている?)の「正体」に関わるヒントを提示すべきだった。

 

鏑木が逃亡中に一重まぶたにするシーンがあったが、次の瞬間にはもう二重に戻っていた。いくらなんでも編集が乱暴すぎると感じた。

 

とある介護施設が重要拠点になるのだが、これも割とすぐにメディアあるいはフリーランサーが突き止めそうなものだが。実際に調査力に秀でた嫌な個人記者も出てきているのだから。

 

兎にも角にもトレーラーがほとんど全部ネタバレだった。物語上の重要なシーンや台詞の多くがすでにトレーラーにあり、重要なシーンの流れや台詞がすべて分かってしまい、正直なところかなり白けてしまうことが多かった。予告は宣伝会社・担当が作るのかな。『 六人の嘘つきな大学生 』のトレーラーも決して良くない出来栄えの上にネタバレが潜んでいた。トレーラーも藤井道人監督自身が手掛けてはどうか。

 

総評

予告編を一切観ることなく鑑賞すれば印象は全く違ったはず。決して直接的ではないが、それゆえに力強いメッセージを発するという藤井監督の演出は随所で光っている。それゆえにストーリー展開の意外性が損なわれたことが余計に残念に感じられる。トレーラーは正式には teaser trailer と言う。tease とは「焦らす」の意味。情報は小出しにしてナンボ。これから鑑賞する人は可能な限り事前情報をカットして鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be on the run

逃走中である、の意。警察や敵兵から逃げている状態を指す。ちなみに潜伏中であるという場合はbe in hidingがよく使われる。英語の映画ではニュースのアナウンサーがよく使っている表現である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 最後の乗客 』
『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, ミステリ, 日本, 横浜流星, 監督:藤井道人, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 正体 』 -トレーラーは避けるべし-

『 花嫁はどこへ? 』 -新たなインドの女性像を模索する-

Posted on 2024年10月13日2024年10月13日 by cool-jupiter

花嫁はどこへ? 80点
2024年10月11日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ニターンシー・ゴーエル プラティバー・ランター スパルシュ・シュリーワースタウ ラビ・キシャン
監督:キラン・ラオ

 

妻が「アーミル・カーンがプロデュースしていて面白そう」というのでチケット購入。確かに非常に面白かった。

あらすじ

新郎のディーパク(スパルシュ・シュリーワースタウ)は新婦のプール(ニターンシー・ゴーエル)を自分の村まで連れて帰る途中、似たようなサリーで顔をベールで覆った別の花嫁ジャヤ(プラティバー・ランター)を連れ帰ってしまう。一方、全く見知らぬ駅で降りたプールは変わった人々との出会いに戸惑いながらも、何とか自立を目指して・・・

ポジティブ・サイド

新郎が新婦を取り違えるか?と疑問に思うが、それが大いにありうるのがインド。事前にほとんど、あるいは一切会わず、似たような背格好の女性が同じような衣装、同じようなベールを身に着けていたら、確かに間違えても仕方がない。

 

そうして取り違えられた花嫁二人が正しい旦那のところに帰る・・・のではない。特にディーパクに着いてきてしまったジャヤは行動がとにかく不審。もしやロマンス詐欺?しかしインドでは女性の方が結婚に際して持参金を準備するという。それにしてもジャヤの行動は何なのだ?と観る側に強く疑念を抱かせる。そして警察でも身分を偽る。ますます怪しい。

 

その一方で、途方に暮れるばかりのもう一人の花嫁のプール。妙な出会いから宿と職場を得るが、花嫁修業はしていても世事には疎い。そんな彼女に温かく、しかし厳しく接するマンジュおばさんが、その仕事っぷりや人生哲学の面で味わい深い演技を見せる。生きる力を発揮しつつあるプールだが、夫の村の名前も言えず、実家に帰るのも恥にあたると、こちらも警察の助力を得るには至らず。ジャヤにも困ったものだが、プールもなかなかの箱入り娘。

 

正体不明なままのジャヤを捜査するマノハル警部補を演じるラビ・キシャンが怪演を見せる、いや魅せる。韓国映画の警察は無能だが、インド映画の警察は横暴である。まるで昭和中頃の腐った日本の警察か?と思わせて・・・おっと、これ以上は無粋というもの。

 

ディーパクがとにかく純粋無垢で、ジャヤの婚約者との対比で、そのピュアさが更に際立つ。花嫁を取り違えた時に、相手が人違いだと主張しなかったなどと一切非難せず、ただ自分の不注意を恥じ入り、プールの無事を祈る姿勢が美しかった。そんなディーパクの優しさの裏でコソコソと動いていたジャヤが、ディーパクの一家の家業である農業だったり、あるいは料理だったり、あるいは人間関係だったりに少しずつ変化をもたらしていく。

 

最後に訪れる大団円のカタルシスは『 バジュランギおじさんと、小さな迷子 』に匹敵する。女性の生き方のアップデートが叫ばれて久しいが、それを芸術作品ではなく、ここまで鮮やかなエンタメ作品として提示してくるのは驚き。『 RRR 』のラストでビームがラーマにお願いしたもの。それを女性がどう享受するのか。その課題は今も続いているのだろうが、しかし確実に改善されているのだろう。

 

ネガティブ・サイド

花嫁修業を修めただけのプールが、本当の意味で自活する道へ踏み出す大事なシーンで、「パコラを作ってくれ」と依頼されたシーンで、なぜかサモサを作り始めるのは何故だ?

 

ディーパクのじいさんはギャグ扱いだろうが、牛の方はもう少し面白く深掘りできなかっただろうか。たとえばばあちゃんと牛が会話らしきものを交わすとか(半分冗談だが)。

 

総評

大スターを前面に押し出さず、むしろ若手ばかりを主役級に据えて本作を製作したこと、それ自体が一つのメッセージなのだろう。既存の権威に頼らず、あるいはそれに囚われず、新しい映画製作の在り方を追求していこうというアーミル・カーンとキラン・ラオ監督の意気込みが、そのまま次代のインドを担う若者たちへのエールなのだ。ダンスシーンはないが、確かにこれも一級のインド映画である。

 

Jovian先生のワンポイントヒンディーレッスン

パコラ

アルファベットでは pakora と表記する。揚げ物の意。インド料理やカレーショップでは鶏の唐揚げであることがほとんどだが、実際は油で揚げる料理全般を指すようだ。Jovianも月に1~2度は梅田の某カレーショップに行くが、パコラを3ピース頼むのが定番になっている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ぼくのお日さま 』
『 ジョーカー:フォリ ア ドゥ 』
『 若き見知らぬ者たち 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, インド, スパルシュ・シュリーワースタウ, ニターンシー・ゴーエル, ヒューマンドラマ, プラティバー・ランター, ラビ・キシャン, 監督:キラン・ラオ, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 花嫁はどこへ? 』 -新たなインドの女性像を模索する-

『 マイ・スイート・ハニー 』 -韓流ラブコメの佳作-

Posted on 2024年5月7日 by cool-jupiter

マイ・スイート・ハニー 65点
2024年5月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ユ・ヘジン キム・ヒソン
監督:イ・ハン

 

『 キラー・ナマケモノ 』鑑賞を妻に却下され、逆に本作を提案されたのでチケット購入。

あらすじ

製菓会社の研究員チャ・チホ(ユ・ヘジン)は、刑務所上がりの兄の借金を返済する過程で、シングルマザーのイルヨン(キム・ヒソン)と出会う。二人は意気投合し、食べ友になるが・・・

 

ポジティブ・サイド

色んな作品でちらほら見かけるユ・ヘジンがラブコメの主役に。このあたりも韓国映画らしい。『 パスト・ライブス/再会 』が30代男性のピュアすぎる恋を描いたかと思えば、こちらは40代男女のピュアな恋愛模様を活写してきた。なんというか、痛々しい男子大学生のようなノリの良さ、あるいはノリの悪さを40代半ばのブサイク男子がやるのだから、これが面白くないはずがない。

 

お菓子やらジャンクフードばかりで栄養失調になっているチホとシングルマザーのイルヨンが食べ友になるという流れも自然。最初は金の貸し借りの関係だったのが、知人になり、友人になり、そしてかけがえのない恋人になっていくというストーリーは凡庸ではあるが楽しめた。チホの会社の役員会議の内容やその面々の台詞やアクションが笑えるし、イルヨンの職場の上司も『 ただ君だけ 』に出てきたような典型的な下心ありありの小悪人キャラで、観る側としてはどうしたってイルヨンを応援せざるをえない。

 

すったもんだがありながらも、落ち着くべきところに落ち着く物語だった。案外、高校生や大学生などの若い世代が観ても楽しめるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

チホの兄貴とチホの関係性や幼少時のとある出来事などは全部省略して、10分ぐらい短縮してしまっても良かった。

 

イルヨンの夫のネタも笑えるには笑えるが、必要なサブプロットだったかというと、うーむ・・・ これもバッサリとカットしてしまって良かったのでは?

 

総評

チホの外見と行動のキモチワルサが最初の見どころ。しかし、そのチホがどんどん魅力的に見えてくるのが本作の movie magic。その絶妙な仕掛けを知りたい人はぜひ鑑賞を。本作は一風変わった家族の物語でもあり、変則的なサラリーマン物語でもある。若い世代でもチホやイルヨンと同世代でも楽しめるはず。ぜひ多くの方に鑑賞いただきたい韓流ラブコメの佳作である。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒュン

兄の意。必ずしも血のつながりがなくても使える。やくざ者の映画でもしょっちゅうヒュンニム=兄様=兄貴という形で使われている。Jovianの元同僚韓国系アメリカ人も「俺のことをヒュンと呼んでいいぞ」と言ってくれていたっけ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 劇場版 再会長江 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・ヒソン, ユ・ヘジン, ラブコメディ, 監督:イ・ハン, 配給会社:松竹, 韓国Leave a Comment on 『 マイ・スイート・ハニー 』 -韓流ラブコメの佳作-

『 交換ウソ日記 』 -セクハラのオンパレード-

Posted on 2023年7月19日 by cool-jupiter

交換ウソ日記 40点
2023年7月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:桜田ひより 高橋文哉
監督:竹村謙太郎

妻が映画.comを見て、「これ☆4.1やで。漫画の出だしも面白かったし行こう」と言う。何か嫌な予感がしたので無料鑑賞クーポンを発行。この選択は正解だった。

 

あらすじ

黒田希美(桜田ひより)は、移動教室の机の中に「好きだ」と書かれた手紙を見つける。送り主は学校一のイケメン、瀬戸山潤(高橋文哉)からだった。希美は恐る恐る返事をしたため潤の靴箱に入れたことから、二人の交換日記が始まった。しかし、潤が告白した相手は実は希美の親友の江里乃だった・・・

ポジティブ・サイド

Line や Instagram のDM全盛のご時世に紙のノートで交換日記というのは実に微笑ましい。今どきの高校生がそんなことをするとは思えないが、それだけに二人が日記のやりとりに夢中になるのが分かる。多くの高校生の恋愛ものが告白するまでがゴールなのに対し、本作は告白から始まる、なおかつ相手を間違えるというところがユニーク。これはアイデアの勝利と言える。

 

主演の桜田ひよりは『 妖怪人間ベラ 』や『 映像研には手を出すな! 』での謎めいた美少女役が印象に残っている。本作では自分の中身がないようでいて芯のある高校生を上手く演じた。自分を表現するのが苦手なだけで、放送部員として時々流す音楽が自己表現の手段になっているという演出は悪くない。自分の気持ちに素直でありたいがゆえに自分を偽り親友を裏がってしまうという罪悪感を、薄幸そうな見た目にも乗じて上手く表出していた。

 

男で壊れる女の友情や、女同士の仲直りはテンプレ通りで及第点。全体的には落ち着くべき地点にしっかりと落ち着いたなという印象。

 

ネガティブ・サイド

ヒーローであるべき瀬戸山が全然それっぽくない。勉強ができないのはいいとしても、肝心のサッカーめちゃくちゃ下手くそなのには苦笑せざるを得なかった。もうちょっと練習しようや。それか監督がもっと役者を追い込まんと。江里乃のバスケも同様。ドリブルした瞬間に素人だとバレる。練習していたわけではないが、『 ショーシャンクの空に 』で数時間にわたって黙々とキャッチボールをしたと言われるモーガン・フリーマンを少しは見習うべし。

 

あとは瀬戸山の希美に対する目に余るセクハラの数々。原作は小説らしいが、どれくらいこういう描写があるのか。それとも映画化に伴って脚本家が色々と詰め込んできたのか。女子の髪の毛やらほっぺたやらを触る邦画は過去にもあったが、本作は酷過ぎ。本邦のアホな中学生高校生大学生男子が本作を観て、「そうか、好きな子にはこうやってアプローチしたらいいのか」と勘違いしないことを切に祈る。というか、今あっさりとネタバレしたけど、ええやろ。

 

交換日記というアイデアは悪くないのだから、後はそれがどうバレるのかというサスペンスを盛り上げなければならないが、その仕込みがあまりにもあからさますぎ。球技大会にかこつけず、なにかもっと別のもの、たとえば黒板の板書とか、放送室のすぐ外の掲示物とか、もっとさりげないヒントを出せたはず。おかげで中盤以降は惰性で観てしまった。

 

最後のエピローグも蛇足。もしやるなら希美が潤を完全に尻に敷く展開でないと意味がない。告白大失敗エピソードがその後の二人の力関係を決定づけてしまった、というのなら分かるが、そうなっていない後日談に意味などあるのか。

 

総評

本作は『 シラノ 』でお馴染みのシラノ・ド・ベルジュラックの変則バージョンなのだが、演出面が非常に弱い。というかJovian妻が読んだ漫画によると江里乃は瀬戸山をにくからず思っているそうだが、何故そこを変えた?そのせいで交換ウソ日記の内容に関して希美が葛藤するシーンが減ってしまった。脚本には自分の願望ではなく面白いアイデアを詰め込んでほしい。デートムービーにはならない。とにかくセクハラシーンが多すぎる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nothing lasts forever.

「永遠に続くものは何もない」、「何事もいつかは終わりを迎える」の意。劇中でも同様のナレーションがあった。良い状態・状況にも悪い状態・状況に対しても使う。コロナ禍や不景気でもいいし、付き合い始めや新婚のラブラブムードに対して使ってもいい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 君たちはどう生きるか 』
『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』
『 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ラブロマンス, 日本, 桜田ひより, 監督:竹村謙太郎, 配給会社:松竹, 高橋文哉Leave a Comment on 『 交換ウソ日記 』 -セクハラのオンパレード-

『 シャイロックの子供たち 』 -カタルシスとディテールが弱い-

Posted on 2023年3月11日 by cool-jupiter

シャイロックの子供たち 50点
2023年3月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:阿部サダヲ
監督:本木克英

仕事が繁忙期なので簡易レビュー。

 

あらすじ

東京第一銀行・長原支店に務めるお客様係の西木(阿部サダヲ)は、同支店で発生した100万円の現金紛失事件を密かに調査していた。そこには支店の不可解な融資が絡んでいるらしいと気付いた西木は、やがて支店を超えた銀行の闇に迫っていく・・・

ポジティブ・サイド

銀行のブラック体質がよくよく描けている。Jovianの大学の先輩、同級生、後輩は銀行員だらけだが、だいたい皆ソッコーで辞めていく(まあ、ICU卒はだいたいどんな職場ですぐに辞める傾向が強いのだが)。とある先輩が銀行での業務を「毎日がクロイワとファイナル前だよ」とおっしゃっておられた、その空気が本作からありありと感じられる。

 

*クロイワというのは、まあ、大昔のICU第一男子寮のイニシエーションの一環。興味のある方はここにその一端が書かれているので、読んでみるのも乙かもしれません。

 

出演する俳優たちの多くに力があり、演じているのではなく、もともとそういう人なのだと感じられるぐらいにハマっていた。特に橋爪功と忍成修吾は最高だった。古典の名作と、そこに込められたメッセージを上手く融合させた佳作。

ネガティブ・サイド

銀行は15時ピッタリに窓口が閉まって、現金やら伝票の照合をして、それを本店に報告して、本店はさらにお上に報告する。何かが足りなければ、それこそシュレッダーの紙クズすら丹念に見ていくと聞いたことがある。そうした銀行の実態からすると、あるキャラのある行動はあまりにも軽率。というか、ご都合主義的。

 

担保もないのに億のカネを融資するというのもリアリティに欠ける。不動産会社の取引先となるデベロッパーについても、よくよく調べてこそ銀行。そのあたりを全部すっ飛ばすのは尺の関係で仕方がないのかもしれないが、結果として綿密に練られた悪事が最後にすべて白日の下に晒されるというカタルシスではなく、当事者だけがダメージを受ける展開に矮小化されてしまった。

 

総評

池井戸潤作品としてはカタルシスが弱い。『 七つの会議 』や『 空飛ぶタイヤ 』の方が個人的には波長が合った。ただ『 アキラとあきら 』が銀行と大企業の話だったのに対して、本作は銀行と市井の人々の話。その意味で、こちらの方が親しみやすいし共感しやすいという人も多くいるだろう。苦みのあるエンディングとはいえ、勧善懲悪ものとして見れば悪い作品ではない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Payback is a bitch!

たしか『 ローグ 』でも紹介した表現。「やられたら倍返し!」の私訳(というかWWEなどからのパクリ)。I’ll pay you back double! は字義的かつお上品に聞こえる。別に文字通りに2倍をお返しするというわけではなく、やられた以上にやり返すという意味なので、上の表現でいいと思う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 湯道 』
『 少女は卒業しない 』
『 Winny 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 監督:本木克英, 配給会社:松竹, 阿部サダヲLeave a Comment on 『 シャイロックの子供たち 』 -カタルシスとディテールが弱い-

『 かがみの孤城 』 -中高大学生+教師にお勧め-

Posted on 2022年12月28日2022年12月28日 by cool-jupiter

かがみの孤城 70点
2022年12月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:當真あみ 北村匠海
監督:原恵一

『 バースデー・ワンダーランド 』の原恵一監督作品。原作者が辻村深月であること、そしてJovianが教えている大阪と神戸の某私立大学の学生たちが原作小説を激推ししていたのでチケット購入。

あらすじ

安西こころ(當真あみ)はとある出来事から中学校に行けなくなってしまった。ある日、部屋の鏡が妖しく光り、こころはその中へ入っていってしまう。そこには絶海の孤島に聳え立つ城と、狼の仮面をかぶった謎の少女オオカミ様、そして中学生の男女6人がいた。オオカミ様は城のどこかにある秘密の部屋を見つければ、どんな願い事も叶えられると言うが・・・

ポジティブ・サイド

語学教育企業に勤務するJovianは本作を非常に興味深く鑑賞した。教える時は主に大学の正課授業なのだが、高校や中学の課外講座を担当することもある。その中で色々な人間模様が見えてくる。昔も今も変わらないなと感じること、そして昔と今では全然違うなと感じることの両方がある。

昔と今で変わらないのは、学校に居場所がないという子が一定数存在すること。中学や高校だとたまに帰国子女だったり、あるいは未就学児童の頃から英語をかなり勉強していて、発音がとてもいい子がいたりする。そうした子は発音の良さを今でもクラスメイトから冷やかされたりする。それを嫌がる子もいれば、嫌がらない子もいる。ただ嫌がる子は英語の授業に出なくなり、ただし課外の英検対策講座やGTEC対策講座には喜んで出てきたりする。そうした生徒を満足させると、学校や保護者から感謝されることが多い。

Jovianはそうした目で本作を鑑賞していた。学校という場所は、集団からはじき出されるみそっかすが出やすいところだ。そしてその原因は往々にしてはじき出される側ではなくはじき出す側にある。こころをはじめ、本作でかがみの孤城に招かれる子どもたちは、皆それぞれに居場所を持たせてもらえなかった。そうした子たちが、どういうわけか交流し、時に意図せずその仲間内でもヒエラルキーを作り、それを反省し、また交流を深めていく。

願いを叶えてくれる秘密の部屋の存在が、この非常に友好的かつ閉鎖的な人間関係にスパイスを加えている。誰もが叶えたい願いがあるのだが、主人公のこころの願いはかなり強烈だ。思春期には親友=世界の全てのように思えるものだが、だからこそ観る側はこころのダークサイド(心の闇)に激しく共感する。ベタなストーリーとはいえ、高校や大学で授業していると、ペアワークやグループワーク時に明らかに「ああ、この子は浮いてるな」というのが分かる。本人が異彩を放っているからなのか、それとも周りから疎外されているからなのかも分かる。なのでJovianはこころが涙ながらに語る願いに、かつての教え子数名の姿を重ね合わせて見てしまった。

7人の子どもたちが紡ぐ数奇なファンタジーであるが、しっかりと地に足の着いたストーリーである。日本中の中学生、高校生、大学生、教師、親御さんに見てもらいたい作品に仕上がっている。

ネガティブ・サイド

こころの母親の冒頭の冷たさと、中盤で見せた優しさのギャップが大きすぎた。もう少し、家でのこころの寄る辺なさと家族との関係を描くシーンも欲しかった。

某アニメ作品でも感じたことだが、出会うはずのない人間たちが出会ってしまうというプロットにこの手のトリックを仕込むのは、もはや一種の cliche なのでは?原作未読のJovianでもあっさりと分かってしまった。同時に、某女子キャラは某男子キャラが持っているアイテムにびっくり仰天しなければならないはずだが、そんな様子はなかった。これはおかしい。また、そのアイテムで「写真を撮る」という至極当然そうに見える行動を取らなかったことにも納得いく説明はなかった。

総評

不可解なシーンもいくつかあるが、物語の持つ力、物語のもたらす感動がそれを上回る。思春期の少年少女の抱える問題をここまで真正面から描く作品は珍しい。この一点だけでも本作には価値がある。キャラの心理描写を全部セリフでやってしまうあたり稚拙は稚拙だが、それもストーリーの面白さの前には些事。中学生のお子さんを持つ親御さんは、年末年始に家族で劇場へどうぞ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

special needs student

一昔前は disabled people とか disabled students などという表現を使っていたが、今ではもう使わない。その後、people with disabilities や students with disabilities に変わったが、これらも今は使われない。今は special needs people / students または people / students with special needs のように言う。今風の日本語訳をつけるなら「要配慮学生」だろうか。大昔はフィジカル、メンタルどちらか、あるいは両方の問題を抱えた生徒・学生はそれだけで障がい者扱いされて、特別養護学校・特別支援学校に入れられていた。何らかの事情で学校に来られない、あるいは登校するにしても何らかの配慮を要する学生は special needs students と言う。この言い方はかなり一般化してきているので、教育関係者や保育関係者はぜひ知っておこう。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, アニメ, ファンタジー, 北村匠海, 日本, 當真あみ, 監督:原恵一, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 かがみの孤城 』 -中高大学生+教師にお勧め-

『 シスター 夏のわかれ道 』 -家族の在り方を問う-

Posted on 2022年12月6日 by cool-jupiter

シスター 夏のわかれ道 75点
2022年12月3日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:チャン・ツィフォン ダレン・キム シャオ・ヤン
監督:イン・ルオシン

妻が観たいというのでチケット購入。チャン・ツィフォンとイオ・ルオシン監督のコンビは、チョウ・ドンユイとデレク・ツァン監督のコンビに並ぶほどのポテンシャルがあるのではないかと感じた。

 

あらすじ

看護師のアン・ラン(チャン・ツィフォン)は、ある日、両親を交通事故で失う。両親と疎遠だったアン・ランは初めて自分に幼い弟ズーハン(ダレン・キム)がいたことを知る。医師になるために北京に進学しようとするアン・ランは、ズーハンを養子に出そうとするが・・・

ポジティブ・サイド

中国の一人っ子政策が廃止されたというニュースは記憶に新しい。調べてみると2015年のことだった。ということは現在の10代、20代、30代の大部分は一人っ子ということになる。本作の主人公のアン・ランも20代で、まさに一人っ子政策のど真ん中の世代だ。本作はこの一人っ子政策とアジア、特に中国(韓国や日本もだが)に根強く残る男尊女卑的な社会の在り方を鋭く批判している。

 

冒頭、いきなりの交通事故でアン・ランの両親が死亡するが、肝心の葬式やその後の親戚の集いでもアン・ランはあまり悲しそうではない。それもそうで彼女は両親とは疎遠にしていた。そのあたりの事情はおいおい明らかになっていくのだが、その見せ方が非常に巧みであると感じた。生まれてくることを望まれなかったアン・ラン、そして決して映像で見せられることはないが、甘やかされて育った(それは愛されて育ったとも言い換えられる)ことが明らかなズーハンの姿に、アン・ランとの残酷な対比が否が応でも浮かび上がってくる。

 

このズーハンを何とか自分の人生から追い出そうとする前半、我々はアン・ランに激しく感情移入する。自分で自分の人生を切り拓こうとする人間は、どうしたって応援したくなるではないか。その転機はいくつかある。アン・ランとズーハンの両親の事故の原因となった可能性のあるタクシー運転手の子どもが、ズーハンと同じ幼稚園に通っているのだ。当然、火種となる。また、アン・ランとボーイフレンドの間にも、いつもと異なる空気が流れるようになる。ここでアン・ランが感じるボーイフレンドとの距離というか隔たりに、男と女、上流階級と下層民、医師と看護師など、あらゆる格差が浮き彫りになる。

 

このあたりから北京に行くという夢と、自分が決して持つことのなかった家族を持ちたいというアン・ランの願望がせめぎ合い始める。その心情の細やかな移り変わりはぜひ直接鑑賞されたい。

 

それにしてもチャン・ツィフォンの演技力には恐れ入る。抑えつけられてきた女性が爆発するシーンは韓国映画ではお馴染みだが、中国の女性も似たようなものなのか。韓国女優に勝るとも劣らない抑圧された者の凄みを見せる。子役のダレン・キムも負けていない。父母の死を理解できない甘えん坊が、ある瞬間から姉を思いやれる心優しい子に変わっていく。この、姉を思いやるがゆえに姉と自分は離れた方が良いと思い込む姿には泣けてしまう。邦画なら、ここで情けないボーイフレンドと対比するために、頼りがいのある同世代の男子を投入するのだろうが、本作はそこでズーハンの成長と、ギャンブル中毒ながら、親戚の中で唯一アン・ランの味方をしてくれた叔父、そして同じ女性として夢を諦めた叔母を映し出す。家族とは所与のものではなく、自分で作る、あるいは見出すものなのだ。本作はそうした新時代の中国の家族観を提示する試みだと言える。

 

ネガティブ・サイド

『 共謀家族 』のシャオ・ヤンにもう少し見せ場が欲しかった。アン・ランは何度か両親の墓参りに来るが、そこに誰のものか分からないお供え物がある、あるいはお墓が何故かいつもきれいだった、という描写があれば、アン・ランは叔父を見直すシーンの感動がもっと深まったはず。

 

アン・ランが最後に選ぶ選択肢が少々陳腐に感じた。詳しくはネタバレになるので書けないが、本当に見たいのは、この選択の先、5年後、10年後だ。無茶苦茶なアイデアかもしれないが、アン・ラン自身が北京で誰かの養子になる、のようなエクストリームな展開を模索してみてもよかったのではないだろうか。

 

総評

中国産の駄作『 マーズ・ミッション2042 』を鑑賞直後のためか、同じ中国産の本作は光輝いて見える。そうした贔屓目を抜きにしても本作のクオリティの高さは際立っている。一人っ子政策批判=中国共産党批判だが、最近のゼロコロナ政策の緩和など、中国も政治的にマイルドになりつつあるのだろうか。社会批判と人間ドラマをハイレベルで融合させた注目の一作である。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

jiějiě

発音は「ジエジエ」、お姉さんの意である。劇中でズーハンが何度も何度もジエジエと言うので、否が応でも覚えてしまう。ちなみにエンディングの歌でも何度も聞こえてくる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, シャオ・ヤン, ダレン・キム, チャン・ツィフォン, ヒューマンドラマ, 中国, 監督:イン・ルオシン, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 シスター 夏のわかれ道 』 -家族の在り方を問う-

『 ”それ”がいる森 』 -パクリまみれの糞ホラー-

Posted on 2022年10月2日 by cool-jupiter

”それ”がいる森 15点
2022年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:相葉雅紀 松本穂香 上原剣心
監督:中田秀夫

監督の名前がお亡くなりになられた方のように見えるが、気のせいだろう。邦画で It 映画を作るというのだから「どうせダメだろうな・・・」と思いつつも、チケットをゲット。しかしポイント鑑賞で金は使っていない。この判断は残念ながら正解だった。

 

あらすじ

福島県の片田舎で農業に従事する田中淳一(相葉雅紀)のもとに小学生の息子・一也(上原剣心)が家出をして訪ねてくる。一也は新しい学校で出来た友達に天源森秘密基地につれていってもらうが、そこで不思議な物体を目にする・・・

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

『 IT イット “それ”が見えたら、終わり。 』のように、子どもが未知なる脅威に対して団結することで生まれるスリルとサスペンスは買いである。

 

捕食シーンはなかなか面白い。イメージとしては Venus Flytrap なのだろう。そして、それが攻略法とよくよくマッチしている。

ネガティブ・サイド

まあ、ここまで色んな作品をパクるからには、それらを乗り越える、あるいは上回るようなアイデアが盛り込まれていることを期待せざるを得ないが、まあ何もない。空っぽである。オリジナリティという意味では数々の小説・漫画原作を下回るのではないだろうか。

 

どこからどう見ても元ネタはM・ナイト・シャマランの『 サイン 』でしょ。エイリアンの造形から、主人公が農場経営者であるところまで、ここまで大胆にパクるか?さらに『 サイン 』の信仰から逃げる父と、本作の会社や妻、諸々の人間関係から逃げる父という構図も同じ。さらに宇宙人にとっ捕まった息子を救うところまで、どこからどう見ても和製『 サイン 』でしょ。問題は『 サイン 』の持っていた面白さが全部スポイルされているところ。

 

もう一つの大きなパクリ元に『 SUPER8/スーパーエイト 』も挙げられる。子どもと父親、宇宙人と地球人の関係性をひっくり返せば・・・ほら、本作のプロットとほとんど同じでしょ。ただ、『 SUPER8/スーパーエイト 』もスマホ=超高性能カメラという常識が定着する前の作品だったからこそ価値があったわけで、本作はそのカメラの性能がほとんど活きていない。また、子どもの活躍が大人をハラハラさせるというアドベンチャー的な要素もない。一也がただの嫌なガキンチョにしか描けていないのが致命的だ。

 

もう一つのパクリ元は『 宇宙戦争 』で間違いない。ただ、H・G・ウェルズの時代なら細菌ネタは通用しただろうが、現代、しかもコロナ禍で微生物やウィルスと感染のメカニズムが(誤解も相当多いとはいえ)一般人にも普及してきている中で、恒星間飛行するような宇宙人が「動物性の細菌は対策立ててきました、しかし植物性の細菌の方は対策が立てられてませんでした」って、アホかな。宇宙人がアホというよりも脚本家がアホすぎる。『 大怪獣のあとしまつ 』は一応、科学的にあれこれ検証していたが、本作は科学の域を超えている。というよりも科学の域に達していないと言うべきか。

 

アホなのはキャラクターも同じ。ビニールハウス内で取れた粘液を「大学教授に見てもらう」って、それよりも先に警察の鑑識を呼べよ。いくら警察に門前払いされたからって、諦めるか?農園で窃盗被害、犯人と思しき2人組に暴行されたと言えば、しぶしぶながら警察も動かざるを得んよ。しかも結局、粘液は分析されず・・・

 

アホキャラは他にもいっぱい。一也の友達となるふとっちょ(名前忘れた)は、母親のスマホを天源森に持ち込んだが、機種によっては場所特定ができるだろう。なぜふとっちょの母親はそれをしない?というか、映画にいっさい出てこない?どう考えてもキーパーソンになりうるだろう。

 

地元住民もアホすぎ。クマ出没注意の山に入って心配する一也に「熊は冬眠中」と返すふとっちょは野生動物を舐め過ぎ。温暖化の影響も舐め過ぎ。実際にハンターに捕殺されたのは冬眠していない熊だった。じゃないと、あんな山の斜面でいきなり発砲しない。しかし一頭だけ捕殺して、はいお終いって、なんで熊が複数存在する可能性を考慮しないのか。町長も警察もアホすぎ。

 

一也もわがまますぎてウザいことこの上なかったし、それを真っ正面から叱れない父親にもイライラさせられる。最後に母親まで移住してくるというが、それは何の問題の解決にもなってないやろ。それに一也も友達の遺品を渡したいなら、相手の親をその秘密基地まで案内せいよ。なんで担任の先生に託すの?ホンマに友達やったと思ってる?プロットにオリジナル性がゼロで、キャラがどいつもこいつもアホすぎる。約2時間が苦痛でしかなかった。

 

エンドクレジットも噴飯もの。ご当地のUFO映像を披露してくれるが、すべて天文現象、鳥、虫、ドローンで説明がつくものばかり。観る価値無し。すぐに席を立ってよい。

 

総評

観てはならない。観るとしてもカネを払ってはならない。溜まったポイントを活用するなら止めはしないが、それでもポイントがもったいない。相葉雅紀は残念ながら俳優の才能がないし、中田秀夫はホラーの才能も枯渇して久しいし、子役への演出能力もない。松本穂香も大して活躍しない。年間クソ・映画・オブ・ザ・イヤー候補だが、『 大怪獣のあとしまつ 』の超絶ご都合主義的エンディングを超えるには至らない。あとは『 貞子DX 』と本作、どちらのクソ度が上なのかが気になる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sorry, no lessons. This is absolutely one of the worst JP films of the year, by far. I need to forget about this crap ASAP. 

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, F Rank, ホラー, 上原剣心, 日本, 松本穂香, 監督:中田秀夫, 相葉雅紀, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 ”それ”がいる森 』 -パクリまみれの糞ホラー-

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