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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 西野七瀬

『 鳩の撃退法 』 -端折り過ぎた故の失敗か-

Posted on 2021年9月4日 by cool-jupiter

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鳩の撃退法 50点
2021年8月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤原竜也 土屋太鳳 風間俊介 西野七瀬
監督:タカハタ秀太

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仕事が多忙を極めているため簡易レビューを。

 

あらすじ

売れない小説家・津田伸一(藤原竜也)の手元に、ひょんなことから3003万円もの札束が舞い込んできた。しかし、一部を使ってみたところ偽札だったことが判明。そして、津田の周囲では不可解な事件が起きていき・・・という原稿を読んだ編集者の鳥飼(土屋太鳳)は、津田に小説のプロットが事実なのかフィクションなのかを尋ねる。しかし、津田は答えをはぐらかすばかりで・・・

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ポジティブ・サイド

冒頭の深夜のカフェで繰り広げられる謎めいた人物同士の会話。これには引き込まれた。藤原竜也と風間俊介が、ある書籍の貸し借りに至るまでの言葉のやり取りは非常に舞台演劇的で、映画を見ていながらもリアルタイムかつリアルスペースで繰り広げられる芝居を観るようでもあった。

 

次々に繰り出される事件と謎のつるべ打ちは非常にテンポがよく、小説のプロットなのか、それとも作家自身の実体験なのかという境目が良い意味で分かりづらくなっていた。

 

後半に土屋太鳳が現地に飛んで色々と調査するシーンから、明らかに観る側の脳みそをもう一段階混乱させようとしてくる。謎解きの過程それ自体が別の謎を生み出している。より具体的に言えば、某男性登場人物2名の実在性および関係性。このあたりを敢えて曖昧模糊にしておくことで、ラストで明らかになる「〇〇〇〇は真実である」という箇所と「▲▲▲▲は虚構の可能性あり?」という点がより味わい深くなっている。

 

考察それ自体よりも、考察しがいのあるモヤモヤ感を楽しめる人向きか。逆説的に聞こえるかもしれないが、エヴァンゲリオンを楽しめるなら、本作も楽しめることだろう。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210904232529j:plain

ネガティブ・サイド

原作小説は未読であるが、映画の全体的な第一印象は「なんだかなあ・・・」だった。まず、「津田の書いた小説が現実になる?」という宣伝文句は公正取引委員会への通報を検討するほど酷いもの。おそらく「津田は秀吉のハッピーエンドの物語を構想して、それを書く」ということで、救いのない物語にも救いはあるのだと観る側に伝えたいのだろうが、いくらなんでも誇大広告に過ぎる。現実を小説にすることは可能でも、小説が現実と化すという筋立てには無理がありすぎる。それをやるならSFにしてしまうか、あるいは伊坂幸太郎的な世界を早めに構築・呈示しておくべきだろう。冒頭でナレーションを司る藤原竜也が、役者としての藤原竜也と並び立った時には「これがその仕組みなのかな」と感じたが、この見せ方は冒頭だけ。何じゃそりゃ・・・

 

偽札と一家失踪事件の思いもよらぬつながりに面白さを見出せるかどうかだが、映画はこの部分のサブプロットをかなり削ぎ落してしまっていると思われる。その考える根拠は二つ。一つには、特定の人物の実在性をかなりの程度まで説明してしまっている。これは特定の存在を虚実定かならぬものとして描くための虚の部分を削った閉まったことに起因すると思われる。『 ザ・ファブル 殺さない殺し屋 』の某ボスのような人物に、これ見よがしなキャスティングをすることで、考察の余地が返って狭まったように感じた。もう一つには、偽札そのもの。普通、小説家ともあろう者が偽札の可能性が高いものを不用意にATMに入れるか?一昔前にニコニコ動画で自宅のコピー機でお札を刷るところを実況中継していたアホが半日と経たずに逮捕されていたが、一部のコピー機や複合機には紙幣の偽造防止機能や警報機能がついているし、ATMも同様の機能を持ったものがある。この時点で「偽札の存在自体が偽物」と思えてしまい、せっかく入っていけた物語世界から早々に出てきてしまった(劇中の偽札が本物の紙幣だと言っているわけではない、念のため)。

 

全編を通じて『 ユージュアル・サスペクツ 』的な仕掛けが施されているものと感じていたが、鳩はどこにも見当たらず。津田の書く原稿に出てくる人名や地名が、実は高円寺のバー内、あるいは高円寺界隈、または地方新聞のあちらこちらにも見られるものだという伏線にも目を凝らしたが、そんなものはなかった。少なくともまあまあの鵜の目鷹の目を自認するJovianには見つけられなかった。一家失踪も、それ自体がニュースバリューを持っているものとは思えず、この点でも虚々実々の虚の部分に白けてしまった。

 

総評

宣伝文句は誇大広告(というか虚偽広告)だが、一応製作者側の解釈もラストに呈示されている。それはとある楽曲の歌詞と歌い手である。Jovianはこの部分からして本作で津田が描く物語は虚構であると(勝手に)断じる。何のことやら分からない、しかし物語の中身や結末が気になるという人は、チケット代と2時間を無駄にしてしまうかもしれないという覚悟をもって劇場鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fiction

フィクションの意。この物語はフィクションであり云々の決まり文句でもおなじみ。面白いもので、ラテン語の語源は facio = 作る、であり、この facio から生まれた別の英単語に faction = 派閥、というものがある。派閥を持たない島国の首相が退陣を表明したが、人間というのは虚構の物語や派閥を作らずにはおれない生き物なのかもしれない。英語上級者は fictional と fictitious の違いを調べてみよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 土屋太鳳, 日本, 監督:タカハタ秀太, 藤原竜也, 西野七瀬, 配給会社:松竹, 風間俊介Leave a Comment on 『 鳩の撃退法 』 -端折り過ぎた故の失敗か-

『 孤狼の血 LEVEL2 』 -狼は滅びていない-

Posted on 2021年8月22日2022年5月7日 by cool-jupiter

孤狼の血 LEVEL2 75点
2021年8月21日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎 西野七瀬
監督:白石和彌

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210822124448j:plain

『 孤狼の血 』の続編。松坂桃李がキャラクターとしても役者としても成長していることを証明したが、対する鈴木亮平がもっと恐ろしかった。

あらすじ

平成3年、広島。かつての仁正会と五十子会の抗争は、大上と日岡(松坂桃李)の奮闘によって手打ちに終わり、治安が取り戻されていた。しかし、超武闘派の上林(鈴木亮平)の出所により2代目五十子会に亀裂が入り、尾谷組との対立構造も先鋭化していく。日岡は騒乱を防ぐべく、チンタ(村上虹郎)をS=スパイとして上林組に送り込むが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210822124518j:plain

ポジティブ・サイド

鈴木亮平演じる上林が言葉そのままの意味でヤバすぎる。まさに『 仁義なき戦い 』の世界観で、弱きを助け強きを挫くという任侠道などあったものではない。弱きを挫き、強きも挫くという、まさに悪い意味での極道。一般人が抱くヤクザへのイメージを極限まで肥大化させるとこんな奴になるのだろうという極悪人になっている。ただ悪いだけではなく頭も切れる。殺人事件の捜査でアジトに不意打ちをかけてきた日岡の尋問に対する切り返しは見事だったし、”ビジネス”を食らい、自身の叔父貴にあたる人物まで食らうという貪欲さとカリスマは、単なる暴力男に出せるオーラではなかった。白石監督の演出もあるのだろうが、鈴木亮平の役作りも大きい。デニーロ・アプローチが注目されがちだが、今作でも野生の肉食獣のような肉体美を披露してくれた。凶暴ヤクザを演じる力があるのが証明されたが、やりすぎである。これを超える演技は無理に思える。ヤクザ役のオファーはしばらく来ないだろう。Jovianのトラウマでもある目潰しをやりまくるのもポイントは高かった。『 ドント・ブリーズ2 』でも「勘弁してくれ」と感じたが、立て続けに見ること目潰しへのトラウマが少し減った気がする。

上林と対峙する日岡は前作から大きく成長した。オーソドックスな役よりも普通ではない役の方が成長できるのか。ヤクザをコントロールしようとしてヤクザそのままになってしまった大上の後継者に成長しつつあるように思えた。特に血まみれ、泥まみれになって戦うシーンが数多く出てくる。かなりきつめのアクションシーンが長めのワンカットで収められているが、事前の稽古は相当に大変だっただろう。正に体当たり。糞便を食わされた前作の大上の域には達していないが、それはまだまだ成長の余地があるということと解釈しておこう。

演技者として他にも印象に残ったのはチンタを演じた村上虹郎。在日のチンピラだが、ヤクザになりきれない半端者。普通のあんちゃんの顔とヤクザに取り込まれてしまった男の顔へ変貌する様はこの若い役者の確かな実力を感じさせる。チンタの魅せる実の親への盲目的な愛と上林が見せる盃ごとの親への盲目的な愛が奇妙な相似形になっていて、上林の上昇とチンタの転落のコントラストが大きく際立っている。

劇中でとあるキャラクターが共産党をユーモラスにディスるシーンは二重の意味で面白い。自分の行いを悪だと分かって悪行に手を染める者と、自分の行いを善だと信じて悪行に手を染める、いわゆる確信犯との違いを嗤うシーンだが、ここでは共産党員を嗤いながら、自分の信念に忠実な上林というヤクザと、これまた自分の信念に忠実な日岡という刑事が嗤われている。「お前らは根っこでは同じだよ」というわけだ。

物語は全編を通じて説教臭さとはほとんど無縁。重厚な人間ドラマだった前作の世界観を引き継ぎつつ、作風をガラリと変えてアクション方向に踏み切った判断は正解。最近の邦画がなかなか描けない人間が生きて人間が死んでいくという濃厚な物語に仕上がった。是非とも劇場でご覧いただきたい。

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ネガティブ・サイド

前作から引き続き登場する安芸新聞の記者が言う「表現の自由」は、「報道の自由」の間違いだろう。なぜこのようなミスがチェック段階で発見されず、なおかつ撮影まで行ってしまったのだろうか。

吉田鋼太郎のヤクザの親分役はさっぱりだった。元々のイメージも実際の演技もコミカルすぎて、物語世界から浮いていた。ミスキャストのように感じた。

西野七瀬の演技は悪いものではなかったが、平手打ちの力のなさや、声を張り上げるべき場面での声量の小ささは減点せざるをえない。

前作で大上が抱えていた秘密の大きさと深さから受けた衝撃があるので、今作のとある展開には驚きがなかった。「警察とはそういう組織である」ということを日岡は前作で学んだのではないか。

総評

どう考えても LEVEL3 に続くのだろう。日岡が狼の幻影を探し求めるのは、かつての大上、そして自身の中にある凶暴性の幻影を追っているように思えてならない。松坂桃李は『 不能犯 』、『 娼年 』あたりから演技の幅を如実に広げてきたが、本作でさらにその印象を強めた。さらに強烈なインパクトを残したのは鈴木亮平。小栗旬よりもハリウッドに近いのでは?ヤクザの没落と悲哀を描いた『 ヤクザと家族 The Family 』や『 すばらしき世界 』が目立つ2021年であるが、本作のような正統的なヤクザ映画もまだまだ面白さを保っている。日岡という刑事、松坂桃李という役者のビルドゥングスロマンとして必見である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

freedom of the press

「報道の自由」の意。どういうわけか the freedom of the press や the freedom of press、freedom of press のように微妙に間違った形が散見される(特に受験業界)。

報道の自由を行使する = use freedom of the press

報道の自由を抑圧する = suppress freedom of the press

のように使う。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, アクション, 日本, 村上虹郎, 松坂桃李, 監督:白石和彌, 西野七瀬, 配給会社:東映, 鈴木亮平Leave a Comment on 『 孤狼の血 LEVEL2 』 -狼は滅びていない-

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