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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:小林啓一

『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』 -学園系ジャーナリスト物語-

Posted on 2024年8月17日 by cool-jupiter

新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 55点
2024年8月16日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:藤吉夏鈴 髙石あかり 
監督:小林啓一

 

『 殺さない彼と死なない彼女 』の小林啓一監督の作品ということで食指が動き、チケット購入。

あらすじ

文学少女の所結衣(藤吉夏鈴)は、あこがれの作家・緑町このはが在籍する櫻葉学園高校に入学する。しかし緑町このはは覆面作家で、かつ入部試験中のアクシデントで結衣は文芸部に入部できなくなった。しかし、このはの情報を持つという新聞部への入部と捜査を文系部部長は提案してきて・・・

ポジティブ・サイド

誰でも文章を書けて、手軽に写真や動画を撮影し、それらをネットで発表できる時代に、記事は足で拾うというタイプの古き良きジャーナリスト精神を感じさせる新聞部。ホームページやメルマガ形式ではなくザラ紙にこだわる点も買い。

 

結衣あらためトロッ子のこのは探しと新聞部の活動がパラレルに進んでいく中、新聞部は順調に教師のスキャンダルをスクープし、やがて学園の最深部の闇に近づいていくという構成もテンポが良い。

 

学生間の対立もありながら、巨悪を大人にすることで青春映画としても成立している。一方で、子どもに味方をしてくれる大人も設定されており、そのバランス感覚も良い。

 

子どもが大人を権力の座から追い落とすのに必要なのは「正義」ではなく「真実」という信念が貫かれている。正義は往々にして独りよがりになりがちだが、真実は見る方向さえ誤らなければ万人に届くものだ。軽い気持ちで鑑賞したが、硬骨なジャーナリズムを感じ取ることができた。

 

ネガティブ・サイド

主演の藤吉夏鈴のしゃべりがかなりボソボソかつ平板。演技力の無さなのか、それともそういう演出なのか。共演の髙石あかりとの差が目立った。

 

とある小道具があまりにこれ見よがしだったので、すぐに先が読めてしまった。また、肝心の緑町このはの正体もすぐに分かってしまった。

 

学園の文系部に関する諸問題のひとつに特進科と普通科の格差があるというが、そうしたところをもっと描写すべきだった。たとえば茶道部の主体は普通科なのに文芸部の一声で茶室を明け渡さざるを得ない、のような場面がほしかった。

 

総評

『 新聞記者 』をもっとライトに、かつ巨悪を打倒して大団円で締めくくる学園系・・・と言うと語弊があるが、ストーリーとしてはそんな感じである。Jovianはつい最近まで大学の語学系クラスの教務スタッフだったので、大学と出版社の固い結びつきというものは肌で感じてきた。本作のような不正の構図は決して荒唐無稽ではないと感じた。政治とカネの問題がまたもや有耶無耶にされようとしているが、教育とカネは有耶無耶にしてほしくない。その意味で本作には大いにカタルシスを感じた。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

cross the line

特定の線を横切る=一線を越えるの意。なにかをやりすぎてしまった時、言動などが許容範囲を超えてしまった時に使われる表現。Take a step back before you cross the line. のように使う。割とよく出てくる表現なので知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 ニューノーマル 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 監督:小林啓一, 藤吉夏鈴, 配給会社:SPOTTED PRODUCTIONS, 配給会社:東映ビデオ, 青春, 髙石あかりLeave a Comment on 『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』 -学園系ジャーナリスト物語-

『 殺さない彼と死なない彼女 』 -死なないでいる理由がそこにある-

Posted on 2019年12月20日2020年4月20日 by cool-jupiter

殺さない彼と死なない彼女 70点
2019年12月19日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:間宮祥太朗 桜井日奈子 恒松祐里
監督:小林啓一

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191220002150j:plain
 

鷲田清一みたいな感想を持ってしまったが、確かに本作では、各キャラクター達が死なないでいる理由を追い求めていく。プロットにもちょっとした仕掛けもある。若者から中年まで幅広い層が劇場に足を運び、なかなかの入りだった。終盤ではかしこですすり泣きが聞こえた。この作品で泣けるのは、間違いなく若者である。そして、それは良いことだ。

 

あらすじ

留年高校生の小坂れい(間宮祥太朗)は、ふとしたことからリストカット常習者の鹿野なな(桜井日奈子)に興味を持つ。「殺すぞ」、「死ね」、そんな言葉を掛け合う二人だったが、いつしか二人の時間がとても愛おしいものになっていき・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191220002207j:plain

 

ポジティブ・サイド

原作者の世紀末は、角川文庫から出ている『 死なないでいる理由 』(著者:鷲田清一)を読んだのだろうか。それとも、人間の生と死を考察していくと、誰でもこのような思考にたどり着くものなのだろうか。哲学的に非常に深い問いの答えを、高校生たちの不器用な友情や恋愛未満といった関係を描写することで呈示しようとしている。小林啓一監督はかなりの手練れである。

 

「殺すぞ」だとか「死ね」といった過激な言葉を使ったことのない者はいないだろう。軽口のつもりで言うことがほとんどだろうし、本気で言ってしまったこともあるだろう。ただ、我々がこのような攻撃的な言辞を弄する時、ほとんどの場合は本気ではない。職場の上司や同僚がむかつく、だから「死ね」と思うことはあっても、本当に死んでほしいと心から願っているわけではない。むしろ、近しい関係だからこそ、そのような言葉を使うことができるという見方も可能である。一方で、我々はニュースで凶悪犯罪が報じられたりすると、「こんなことをする奴は死刑だ!」などと簡単に他者の死を願う。劇中でも触れられるが、遠くの人間の死、数の多過ぎる死は、我々にとって意味を成さない。「今、この瞬間にも飢えで亡くなる人がいるのです」と言われても、ピンとこない。鹿野ななは、そこに想いを馳せることができる貴重な人間である。そんな鹿野に興味を持てるれいもとても人間味にあふれた人間である。

 

本作の登場人物たちは、びっくりするほどテキストによるコミュニケーションを行わない。つまり、LINEやメールをしないのだ。「こいつら、本当に高校生か?」と思わされるが、それもまた小林監督の計算である。彼は東浩紀の『 郵便的不安たち 』を読んでいる。間違いない。携帯、さらにスマホによりコミュニケーション手段はより確実に、より強固になった。にも関わらず、我々は未読や既読スルーに悩まされるようになった。コミュニケーションが郵便的なのだ。手紙が届いたのかどうか、その不安により強く悩まされているわけだ。対面での、声によるコミュニケーションに徹底的にこだわっているのが本作の特徴である。

 

カメラワークも多くを語っている。ロングのワンカットがこれほど多用されている邦画は珍しい。特に桜井と間宮は、何かを食べているシーンばかりなので、NG → リテイクを繰り返せば、確実にカロリーオーバーだっただろう。また、キャラクターたちが一人の時は後ろから、二人の時は前から撮るというポリシーが、ほぼ全編を通じて貫かれている。一人の時は誰かを求めて前に進む。二人の時には、その後ろの道、つまり共に歩んできた時間が見える。そう言っているかのようである。

 

本作はオムニバス形式で進んでいく。きゃぴ子と地味子の女の友情、撫子と八千代の一方通行の恋が、それぞれに思わぬ形で「彼」と「彼女」の物語と関わりを持っている。人と人が関わること、その意義をこれほどまでに陳腐な手法で、これほどまでに深く、鋭くえぐり出した作品はちょっと思いつかない。2019年の邦画の中でも白眉の一つである。

 

ネガティブ・サイド

間宮祥太朗の演技に悪いところは見当たらないが、キャスティングにかなり無理がある。留年しているという設定にしても、高校生は無理がある。彼は悪い役者ではないが、本作では少々苦しかった。

 

八千代のキャラクターがイマイチだ。演じるゆうたろう自身も『 3D彼女 リアルガール 』と、何も変わっていないように見えた。また、八千代というキャラ自身が心の内に抱えているものも『 空の青さを知る人よ 』の某キャラと同じだった。どんな因果を抱えているのかと思っていたが、それならそれで自分なりに動いているということが分かる演出が欲しかった。八千代はあらゆる意味でがきんちょであった。

 

意識的か無意識になのかは不明だが、『 君の膵臓をたべたい 』と構成がそっくりである。それは長所でもあり短所でもある。しかし、本作の終盤は暗転 → 場面転換の繰り返しで少々ダレてしまう。非常に良い余韻を残すエンディングであるが、そこに行くまでに中だるみがあるのが残念である。

 

総評

『 ママレード・ボーイ 』で可もなく不可もなかった桜井日奈子が、これほどの成長を遂げているとは驚きである。可愛いだけの処女漫画的なキャラではなく、確かに息をして生きているキャラを具現化した。生きるということは、誰かと関わることであるというテーマを、近年では最も鮮烈に表現した邦画である。劇場で公開しているうちに観るべし。例え見逃しても、レンタルや配信で観るべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Die!

「死ね!」を直訳するとこうなる。実際に戦争映画では戦闘機や爆撃機のパイロットや戦車の砲撃手、狙撃兵などがしばしばこの台詞を呟いたり叫んだりする。日常で使うべきではない言葉だが、本作鑑賞後にこの言葉の意味に今一度想いを馳せてみて頂きたい。

 

また、本作に刺激を受けた、本作に考えさせられたという向きには鷲田清一の『 死なないでいる理由 』と東浩紀の『 郵便的不安たち 』をお勧めしておく。

 

 

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 恒松祐里, 日本, 桜井日奈子, 監督:小林啓一, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:ポニーキャニオン, 間宮祥太朗Leave a Comment on 『 殺さない彼と死なない彼女 』 -死なないでいる理由がそこにある-

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