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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ミステリ

『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

Posted on 2023年7月2日 by cool-jupiter

告白、あるいは完璧な弁護 75点
2023年6月25日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ソ・ジソブ ナナ キム・ユンジン
監督:ユン・ジョンソク

簡易レビュー。

 

あらすじ

IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)の不倫相手キム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺害された。第一容疑者となったミンホは犯行を否認。弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自身の無実を証明しようとする。シネは弁護のために事実を知る必要があると主張し、ミンホに情報提供を迫る。その過程で、ミンホは殺人事件前日の交通事故について語り始め・・・

ポジティブ・サイド

これは快作。いや、怪作か。ほとんどすべてが室内の会話劇で、これほどミステリとサスペンスの両方を盛り上げるとは。無実を訴える殺人事件の容疑者と、その無罪判決を勝ち取るためには事実を知る必要があると主張する弁護士の会話劇がたまらなくリアルだ。Jovianの過去の受講生には弁護士の先生が数名おられたが、一様におっしゃっていたのは「黒の人を灰色にすることはできる。だが、自分は灰色だと主張する人を白にはできない」ということだった。シネがミンホに迫るのは、このようなプロフェッショナリズムから来るもので、だからこそあの手この手でミンホの口を割らせようとする。

 

そのミンホの語る事件および前日の交通事故についても、何が事実なのかが分からない。供述は二転三転し、それによって殺害されたセヒが哀れな被害者にも見えてくるし、その逆に稀代の悪女のようにも見えてくる。演じたナナは韓流アイドルらしいが、あちらのアイドルの演技力というのは高いのだなあと感心。めちゃくちゃ美人なのだが、その顔つきがミンホの回想シーンとシネの推理シーンで、別人かと見まがうほどに変わる。素晴らしい演技力である。

 

最後のドンデン返しの連発には鳥肌が立った。いや、最初のドンデン返しには割と早い段階で予想がついていたが、その後の展開には茫然自失。自分はいったい何を観ていたのか。脚本も務めたユン・ジュンソク監督自らがオリジナルのスペイン映画を大幅に改稿したそうだが、『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』のように、邦画界もリメイクに乗り出そうではないか。

 

ネガティブ・サイド

『 最後まで行く 』でも感じたが、韓国のクルマにはエアバッグがないのか?

一部の推測が荒唐無稽すぎで、まるで『 謎解きはディナーのあとで 』のようだった。理論的に可能なことと現実的に可能なことの間には、実際はとんでもない開きが存在する。ここのところにもっと説得力ある仮説が提示できていれば、さらに一段上の評価になったはず。

 

総評

韓国映画お得意の恨に基づくリベンジ・ストーリーで、大傑作『 オールド・ボーイ 』的な用意周到さ。観ている最中は「ははーん、これはアレだな」と割とすぐにピンとくるのだが、それすらも製作者の罠。久々に清々しく騙されたというか、作り手の意図にまんまと引っかかってしまった。悔しいが、爽快な悔しさである。ぜひ多くの人に鑑賞してもらい、見逃してしまった数々の伏線の鮮やかさに地団太を踏んでほしい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

チンシル

真実の意。ちなみに事実はサシル。Jovianは大学の恩師の影響か、事実はひとつ、真実は複数あると思っている。なので本作による真実の描き方には感じいるものがあった。チンシルやサシルは韓国映画では割と頻繁に聞こえる語彙なので、耳を澄ませてみよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 忌怪島 きかいじま 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ユンジン, サスペンス, スリラー, ソ・ジソブ, ナナ, ミステリ, 監督:ユン・ジュンソク, 配給会社:シンカ, 韓国Leave a Comment on 『 告白、あるいは完璧な弁護 』 -珠玉の韓流サスペンス-

『 search #サーチ2 』 -珠玉のスリラー-

Posted on 2023年4月21日 by cool-jupiter

search #サーチ2 75点
2023年4月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ストーム・リード
監督:ウィル・メリック ニック・ジョンソン

簡易レビュー。

 

あらすじ

ジューン(ストーム・リード)は、恋人とコロンビア旅行に出かけた母が予定日に帰国しないことから、犯罪に巻き込まれたことを危惧し、連邦警察に連絡する。一方でジューンはSNSや各種ネットの情報を使い独自に母を探そうとするが・・・

ポジティブ・サイド

『 search サーチ 』の続編的な作品。正直なところ、同じ手法でもう一度びっくりさせるのは無理だろうと思っていたが、こちら側のそうした予想を軽く超えてきた。

 

コロナ禍で一気に浸透したZoomやGoogle Meetのおかげで、PC画面上で様々な事象が展開されることに全く違和感を覚えなくなった。前作は今思えば、少々強引な自宅内のショットや音声もあったが、今作のPCカメラ映像や音声には不自然なところは一切ない。

 

人間、誰でも秘密を抱えているもの。本作はPCからあらゆるサービスやサイトに侵入していき、様々なキャラの秘密が次々に明かされていく。『 スマホを落としただけなのに 』とは比較にならないサスペンスだ。

 

そんな中でも現地コロンビアの協力者ハビエルがすごく良い人。ネットの先にこそリアルな人間関係がある。

 

ネガティブ・サイド

大活躍のGoogle様だが、普段使っていないデバイスからアクセスされると本人に通知が行くはずだが。ジューンがあそこまで好き勝手できたことに「Google、仕事しろ」と思ってしまった。

 

いくらコロンビアでも、あそこで発砲するか?ここも納得いかなかった。

 

総評

『 search サーチ 』に負けず劣らずの秀作。form は同じながら、content をガラリと変えてきた。あまり書くとネタバレになってしまうが、前作を見た人ほど製作者側の思惑に引っかかってしまうのではないだろうか。Jovianはかなり早い段階で「ああ、黒幕はこいつだろうな」と目星をつけて大失敗。いやはや、こういう感覚は何度味わっても楽しい。本作から鑑賞して、前作に行くのも可能。今春の見逃すべからざる逸品だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

itinerary

アイティネラリィと発音する。TOEICに頻出する語で、意味は「旅程表」や「旅行の行き先」のこと。普通に実生活でも使うので、ビジネスパーソンならずとも知っておきたい語彙である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヴィレッジ 』
『 ザ・ホエール 』
『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ストーム・リード, スリラー, ミステリ, 監督:ウィル・メリック, 監督:ニック・ジョンソン, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 search #サーチ2 』 -珠玉のスリラー-

『 母性 』 -トレーラーを観るなかれ-

Posted on 2022年12月9日 by cool-jupiter

母性 50点
2022年12月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:戸田恵梨香 永野芽郁 高畑淳子 大地真央 中村ゆり
監督:廣木隆一

湊かなえ原作ということでチケット購入。原作は未読だが、おそらく脚本家および監督が小説の良さを少しスポイルしてしまったと思われる。トレーラーも misleading すぎる。

 

あらすじ

箱入り娘のルミ子(戸田恵梨香)は、絵描きを趣味にする鉄工所務めの田所と結婚する。娘の清佳(永野芽郁)を授かり、幸せな家庭を築いていた。ルミ子は母からの教え通りに清佳に惜しみなく愛情を注いでいく。しかし、清佳が祖母、つまり自分の母の愛情を受けることにルミ子は内心で激しく嫉妬していて・・・

ポジティブ・サイド

観始めた瞬間から、よく分からない違和感を覚えた。看護師や助産師が戴帽しているシーンを見て「いつの話だ?」と感じた。また、ルミ子の家の電話が固定電話。さらに新居の家のテレビがブラウン管のテレビ。この時点で、これは昭和の物語なのだ、と確信できた。この時点で俄然興味が湧いてきた。Jovianも一応昭和生まれなわけで、アメリカ人の同世代の demographic が1980年代をノスタルジックに思っているように、我々世代も昭和を懐かしむのである。

 

本作がオーディエンスに感じ取ってほしいと思っている点は、タイトルにもなっている母性である。母と女性の違いは何か。それは、母は子どもを産んでいるということ。女は弱し、されは母は強しと言われるが、母性も行き過ぎると鬼子母神になってしまう。我が子は可愛いが、他人の子はどうでもいいということになってしまう。ある意味でその究極形が『 母なる証明 』だった。我が子への愛が狂気の暴走を見せる大傑作だ。その一方で、邦画も『 MOTEHR マザー 』を近年送り出してきている。我が子を愛さず、我が子に自分を愛させるという母親にフォーカスした怪作である。本作はどちらの系譜に属するのか。そのどちらにも属さない。

 

母の愛を一身に受けたルミ子が、自分が母になることでその愛を我が子に向ける・・・ようにならない。逆に、自らが母であるにもかかわらず、敢えて娘であり続けようとするルミ子の姿は異様に映る。戸田恵梨香は長澤まさみに近いレベルの演技を見せたと言える。

 

しかし、本作のタイトルにある母性を最も強烈に体現したのは、ルミ子の母親を演じた大地真央とルミ子の義母を演じた高畑淳子ではないだろうか。命をつなぐこと、その素晴らしさ、それを喜べること。そうした心を持ち、娘も孫も愛する大地真央。対照的に、息子の嫁をいびり倒す義母。この妖怪女優二人が同じ画面に出てくることはないのだが、明らかに二人は演技バトルをしている。この両者の演技対決だけでも鑑賞の価値がある。

 

母性とはことほどさように、女を優しくもするし、また醜くもする。ルミ子と清佳の築く関係の真実は何なのか。「母であること」と「母であろうとすること」は同じものなのか、異なるものなのか。愛憎入り混じる母娘の関係は母性を育むのか、それとも阻害するのか。普通に考えれば愛は母性を育みそうだが、ルミ子と実母の関係はそうではない。一方で、ルミ子と義母の関係は最終的には非常に興味深い形に発展する。そこから考えられるルミ子と清佳の関係、さらにその先をどう想像するべきなのか。本作が我々に問うのはそこである。

 

ネガティブ・サイド

永野芽郁の力不足が顕著だった。『 マイ・ブロークン・マリコ 』で少し殻を破った感があったが、女の友情を体現することはできても、母の愛と憎しみを一身に受け止める役は演じきれなかったという印象を強く受けた。まだ女子校生あるいはOL止まりなのかな。箱入り娘のまま母親になってしまった戸田恵梨香に完全に食われてしまっていた。いや、テーマは母性であって娘性ではないので、抑えた、控え目な演技をしていたと捉えることもできる。であれば、トレーラーで母と娘の対立を煽るべきではない。これは宣伝・広告のマズさが本編の面白さを減じてしまった悪しき例だろう。

 

そもそも予告編は本作をミステリとして売っていたのではなかったか。「母の証言を信じないでください」、「娘の証言を信じないでください」という、立場によって事象の見え方、捉え方が違うというところが本作の肝と言えるほど大きくなかった。というか、女子高生が首を吊ったという事件を冒頭で映しておきながら、同時に教員として働いている永野芽郁を映してしまっては、ミステリとしての面白さ=女子高生は永野芽郁なのか、何が彼女を自死に追い込んだのかという疑問への興味がしぼんでしまう。トレーラーから普通に考えれば、死んだ女子高生は永野芽郁の同級生もしくはクラスメイトだろう。冒頭でいきなり「それは違います」と言われても・・・

 

母性にフォーカスするなら、夫の浮気やら何やらはばっさりカットしてもよかった。あるいは夫の浮気を「男の甲斐性」だと擁護する義母像をもっと強く打ち出すべきだった。2022年は昭和でいえば97年。完全に大昔だ。または甲斐甲斐しく義母を介護するルミ子だが、遺産は一銭も入らないということをもっと強調して、現在は血縁がなくても介護者に遺産が入るような法的根拠が整備されたという情報をサラリと挿入することもできたはず。母性というテーマをルミ子というキャラクター周辺に限定して描くことで、本当に現代に訴えるべきテーマがぼやけてしまったと感じる。

 

総評

トレーラーから『 白ゆき姫殺人事件 』のようなものを想像していたが、これが全然違った。予告編と本編が違うのは別に構わない。ただ、ミステリ要素を前面に出しておきながら、この作りでは納得できるものも納得できない。物語そのものも面白さやインパクトに欠ける。男性と女性で受け取り方が大きく異なる作品だと思うが、Jovian妻もあまり感銘は受けなかったようだ。もしもチケットを購入するのなら、高畑淳子や大地真央といった大ベテランの演技を堪能することに集中されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Women are weak, but mothers are strong.

女は弱し、されど母は強しの意。出典はビクトル・ユーゴーの『 ああ無情 』らしいが、読んだのが大昔過ぎて覚えていない。シンプルだが、女も母も複数形にするのがポイント。そういえば数年前にバズった動画がある。ミステリではないが、ドンデン返しなら本作よりこちらの動画の方がインパクトは上だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 グリーン・ナイト 』
『 MEN 同じ顔の男たち 』
『 ホワイト・ノイズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, ミステリ, 中村ゆり, 大地真央, 戸田恵梨香, 日本, 永野芽郁, 監督:廣木隆一, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 高畑淳子Leave a Comment on 『 母性 』 -トレーラーを観るなかれ-

『 ザリガニの鳴くところ 』 -異色のミステリ+法廷サスペンス-

Posted on 2022年11月30日 by cool-jupiter

ザリガニの鳴くところ 70点
2022年11月27日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ テイラー・ジョン・スミス ハリス・ディキンソン デビッド・ストラザーン
監督:オリヴィア・ニューマン

タイトルだけで観たくなる映画、タイトルだけで読みたくなる書籍というのがたまにある。本作はそんな一本。なかなかの秀作だった。

 

あらすじ

1960年代のノースカロライナ。チェイス(ハリス・ディキンソン)という青年が死亡した。事件の容疑者として、地元で湿地の少女と呼ばれ、疎外されているカイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)が逮捕される。弁護士から引退していたミルトン(デビッド・ストラザーン)は彼女の弁護を申し出る。彼女は次第に自分の半生を語り始めるが・・・

ポジティブ・サイド

1950年代に幼少期を過ごしたカイアが、1960年代に成長し、いくつかの出会いと別れを経験し、そして殺人事件の容疑者として逮捕される。果たして真相は・・・というのが本作のプロット。本作の何がユニークかというと、まずカイアとその家族が湿地帯に暮らしていること。『 刑事ジョン・ブック 目撃者 』でアーミッシュの生活がこれでもかと映し出されたが、本作でも湿地帯での生活が活写される。『 ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男 』や『 ハリエット 』でも湿地帯は戦闘地域もしくは逃走経路として出てきたが、ここまで湿地にフォーカスした作品というのは他に思い当たらない。

 

その湿地の自然も、まさに wilderness と呼ぶにふさわしい。水辺の生き物や植物のありのままの姿をスクリーンに満たしてくれる。wilderness というのは何故か辞書では「荒野」と訳されるが、正しくは「人の手が加わっていない自然の領域」のこと。カイア一家が住んでいるので、厳密には wilderness ではないかもしれないが、アメリカの大地や河川の美しさや雄渾さを映し出してくれる作品としては『 ミナリ 』に近いものがある。 

 

しかし本作が最も独特なのは、1950~1960年代という人種差別の時代、そして公民権運動の時代の物語でありながら、疎外され、迫害されるのが白人の少女だという点である。その意味で、本作は差別の要因は肌の色や人種、国籍ではなく、共同体の内側に住む者か、共同体の外側に住む者かの違いに求める。これは非常に斬新だと言える。この内と外の対照性が、湿地の明るさと美しさと街の薄暗さと汚さという映像上のコントラストにもよく表れている。

 

カイアとテイトの出会いと淡い恋の発展、そして別れ。さらにカイアとチェイスの奇妙な関係は、優れた青春映画でもあるが、本作はれっきとしたミステリ。チェイスの死因は何なのか。そこにカイアは関わっているのか、いないのか。チェイスはある意味で韓国映画によく出てくるようなタイプの男性。平たく言えば暴力の予感を常に漂わせる男だ。そして、それはカイアの父を彷彿とさせる。一方のテイトは、カイアに読み書きを教え、セックスにも慎重な姿勢を見せる紳士。さらに現代の法廷シーンでは老弁護士のミルトンが、検事や証人たちの鋭い弁舌を巧みにかわし、時にはきれいなカウンターパンチも入れてみせる。観る側は否応なく、カイアを巡る人間関係と、チェイスの死の真相、そして裁判の行方に惹きつけられてしまう。そして訪れる結末・・・ これには心底びっくりした。『 真実の行方 』並みに驚かされた、というのは言い過ぎかもしれないが、それぐらいの衝撃を受けた。この後味は江戸川乱歩の『 陰獣 』を想起させる。いやはや、凄い作品である。

 

そうそう、本作でストラザーン以外はほぼ全員無名の役者だが、その中でも湿地で小売店を営む夫婦の演技力が素晴らしかった。『 ガルヴェストン 』で強烈なオーラを放っていたC・K・マクファーランドに並ぶ名脇役である。

 

ネガティブ・サイド

学校にも行けず、ホームスクールもされず、読み書きできず、ごくごく限られた人間関係しか持っていなかったカイアが、テイトとあっさり恋仲になったのは感心しない。小説だと、カイアの内面描写がたっぷりなされていたのだろうか。このあたりのカイアの心の動きをもっと感じ取らせるような描写が欲しかった。

 

あと、これはネガティブというよりは愚痴に近いが、本作のミステリとしての伏線の張り方はいささかアンフェアというか、一貫性の無さを感じた。湿地の風景、湿地の生き物や植物を、それこそカイアの視点のごとく丹念に映し出してきたのに、チェイスの死の真相のヒントを映像ではなく言葉で出してしまうとは・・・ まあ、これから鑑賞する人は、これを読んでも「何のこっちゃ?」だろうが。ここでいう言葉とは二通りの意味で・・・、おっと、これ以上は本当にネタバレになってしまう。

 

総評

なかなかの秀作である。ミステリ、サスペンス好きなら鑑賞しない手はない。そうしたジャンルに興味がなくても、一人の女性の自立の物語として鑑賞することもできる。ただ、暴力シーンや暴力的な性描写シーンもあるので、高校生や大学生のデートムービーには向かないので、そこは注意のこと。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

A is one thing. B is another.

AとBは別物だ、というよくある言い回し。劇中では Living in isolation was one thing. Living in fear was quite another. みたいに言われていた。

Listening to music is one thing. Playing music is another.
音楽を聴くのと音楽を演奏するのは全くの別物だ。

Watching movies is one thing. Making them is definitely another.
映画を観ることと映画を作ることというは、完全に別物だ。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, デイジー・エドガー=ジョーンズ, テイラー・ジョン・スミス, デビッド・ストラザーン, ハリス・ディキンソン, ミステリ, 監督:オリヴィア・ニューマン, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 ザリガニの鳴くところ 』 -異色のミステリ+法廷サスペンス-

『 ある男 』 -人間の在り方を問う-

Posted on 2022年11月25日 by cool-jupiter

ある男 75点
2022年11月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:窪田正孝 安藤サクラ 妻夫木聡
監督:石川慶

 

石川慶監督が『 愚行録 』以来、妻夫木聡とタッグを組む。そしてメインのキャストは日本一の女優である安藤サクラと実力派の窪田正孝。チケットを購入しない理由はゼロである。

あらすじ

失意のうちに暮らす里枝(安藤サクラ)は、訳あって神奈川から宮崎にやってきた大祐(窪田正孝)と出会い、やがて二人は結婚した。新たに生まれた子どもと里枝の長男の4人家族は幸せな生活を送っていたが、ある日、大祐が事故死してしまう。疎遠になっていた大祐の兄は、しかし、大祐の遺影を指して大祐ではないと言う。夫の身辺整理の助けのために、里枝はかつて離婚の際に頼った弁護士の城戸(妻夫木聡)を再度頼ることになり・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭、後姿の男が二人並んだ不思議な絵が見せられる。そこから場面を転じて雨の日。客のいない文房具店でいきなり悲嘆の涙を流す安藤サクラによって、一気に物語世界に引き込まれた。相対する窪田正孝も、田舎では明らかに浮いてしまうアウトサイダーでありながら、素朴さと素直さがにじみ出る好漢をきっちり演じた。里枝が大祐に死んだ我が子のことを訥々と語り、それを黙々と聞く大祐というシーンは、今年の邦画の中では最高レベルの静かな演技合戦だったように思う。

 

やがて家族となる二人だが好事魔多し。大祐は倒木の下敷きになり死亡してしまう。ここから妻夫木演じる弁護士の城戸が登場する。夫の身元が不明であったとして生命保険金の受け取りの可不可を尋ねる里枝に「問題ない」と法律の専門家として助言するが、これはかなりグレーな対応に見える。その一方で、この弁護士が通り一遍の法律家ではなく、困っている人を助ける人間であることも垣間見える。城戸が調査する谷口大祐という男の軌跡が明かされるにつれ、罪とは何か、幸せとは何かという問いがますます重みを増してくる。

 

本作は基本的にはサスペンスだが、ミステリとしてもなかなか面白い仕掛けが施されている。本作は『 人数の町 』と同じく、戸籍の問題を扱っている。いわゆる戸籍売買である。そこに仕掛けられたトリックは、見かけは全く異なるが趣旨としてはウィリアム・カッツの某小説のトリックに非常によく似ている。なので、80年代、90年代の海外ミステリ好きならピンとくるかもしれない。

 

城戸自身が在日三世という設定で、日本人や日本社会が時にそこはかとなく、時に非常にあけすけに、かつ激烈に排外的な差別を行う様は、観客として見ていてもキツイ。これが “The means of defense against foreign danger, have been always the instruments of tyranny at home.” =「外敵への防衛の意味するものは、常に国内における暴政の方便である」というジェームズ・マディソンの言葉そのまんまなのが更にキツイ。憎悪を煽られた当人たちは一時は自分たちの問題を忘れられるかもしれない。しかし、問題そのものは存在し続ける。では、どうすればいいのか。その問題が自分に関わってこないような、違う自分になればいい。

 

本作が提起する問題は、別人になることの是非ではなく、別人になりたい、ならなければならないと人に思わせる社会的なシステムである。高畑淳子の息子が婦女暴行で逮捕された時に、何故か高畑淳子が謝罪し、活動縮小に追い込まれた。別に息子は未成年でもなかったのに。同時期のアメリカではロバート・ダウニー・Jrの息子がドラッグの使用で逮捕された。自身もドラッグ常習者だったダウニーは「息子のリハビリを支援する」と言い、アメリカのメディアも特に何も言わなかった。別にJovianは「だからアメリカが優っていて日本が劣っている」と主張しているわけではない。ただ、罪というものを償えるものと考えられるか。あるいは家族の罪はその家族全体が共有すべきものなのか。このあたりを真剣に考えるべき時期に日本社会も来ていると言える。

 

最後の最後の場面で城戸が放ったセリフは何だったのか。その言葉が何であるかを想像することで、現代日本社会の生きづらさをどれだけ感じているのか、あるいは感じていないのかが測れるような気がする。何とも重い作品である。

ネガティブ・サイド

柄本明のわざとらしすぎる演技は何とかならんのか。『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』の時に負けず劣らずの過剰な演技は、さすがにちょっとどうかと思う。そろそろ佑と時生に譲って引退しては?

 

その柄本のキャラに妻夫木が「在日ですか?」と声をかけられるが、いくらなんでも無理がある。元カープの金本や元阪神の桧山ですら、カミングアウトされて、はじめて「そうかも?」と思えるレベルで、在日三世を見た目で見破るというのは、あまりに現実離れしている。せめて刑務官が「あのじいさんは誰が訪ねてきても最初はああ言うんです」とでも言ってくれればフォローにもなったのだが。

 

総評

ミステリかつヒューマンドラマの秀作である。差別とは何かを正面から問うことを巧妙に避け、差別から逃れようとすることが悪なのかという非常に重い問いを投げかけてきた。最初と最後に提示される絵画はマグリット作の『 不許複製 』というらしい。Jovianは、ある意味でこれに先立つマネの『 フォリー・ベルジェールのバー 』という作品を思い浮かべた。興味のある向きは本作を鑑賞後にググられたい。近代になって、人間がいかに自分から逃避しようと思うようになったかが見えてくるかもしれない。 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

How do you know?

劇中でとあるキャラクターが「何で分かるんですか?」と言うが、これは英語では How do you know? となる。Why do you know? にはならない。「なんで?」と聞くと、あるいは読むとついつい “why” と訳してしまいたくなることがあるが、Why do you know ~? というのは、かなり限定された文脈でしか使えない。How do you know? は日常でもよく使うので、無条件にこちらを覚えておこう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 サイレント・ナイト 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ミステリ, 安藤サクラ, 日本, 監督:石川慶, 窪田正孝, 配給会社:石川慶Leave a Comment on 『 ある男 』 -人間の在り方を問う-

『 アムステルダム 』 -ファシズムの萌芽を摘めるか-

Posted on 2022年10月30日 by cool-jupiter

アムステルダム 50点
2022年10月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリスチャン・ベイル ジョン・デビッド・ワシントン マーゴット・ロビー
監督:デビッド・O・ラッセル

アメリカ史の知られざる闇に迫る作品。戦争の時代に逆戻りしつつある現代、思いがけずタイムリーな作品になった。

 

あらすじ

1930年代のニューヨーク。復員兵のバート(クリスチャン・ベイル)とハロルド(ジョン・デビッド・ワシントン)は、軍時代の恩人の死の原因を調べてほしいという依頼を、その恩人の娘から受ける。しかし、その依頼人が殺害され、バートとハロルドが被疑者にされてしまう。二人は身の潔白を晴らそうと奔走するが・・・

ポジティブ・サイド

第一次世界大戦中のベルギーでのバートとハロルドにアメリカらしさ、そしてある意味での現代ロシアらしさも垣間見える。少数派をあからさまに差別し、排除する姿勢が見えるからだ。クリスチャン・ベイルが、本家デ・ニーロの前でデ・ニーロ・アプローチを披露。心身共にボロボロの平氏、復員兵かつ医師を渾身の演技で体現した。カリスマ性ではなく、普通の人間性の持ち主だからこそ、ハロルドや黒人兵士たちも彼と共に従軍できたことがよくよく伝わってくる。看護師であるヴァレリーとの出会いも極めて印象的。兵士の体から摘出した弾丸でアートを作るというのはユニークなのか、それとも戦争のもたらす狂気なのか。

 

彼らがアムステルダムで享受する自由と平和、そしてそこで育む友情が、その後のニューヨークでの不可解な殺人事件につながっているという筋立ては、まさに王道ミステリ的。となれば、ここから先は謎解きとなる。実際にハロルドとバートは様々な伝手をたどり、事件の調査を行い、有力者や協力者にあたっていく。このあたりは非常にテンポが良く、次々と新たな人物が現れ、その人物から新たな事実、新たな人間関係が明らかになっていく。

 

そしてたどり着いた殺人事件の真相。これに説得力を感じるかどうかは人それぞれだろうが、史実だというのなら受け入れるしかない。人間の欲は思想信条や平和な社会体制よりも優先されてしまう。100年近く前のアムステルダムで育まれた友情の意味を、今一度回顧すべき時期に我々は来ている。

ネガティブ・サイド

早い話が、アメリカを全体主義国家にして、戦争でバンバン儲けたいという企業経営者、富裕層による社会変革論を、主人公たちが期せずして暴いていくというストーリー。日本でも「不景気だから、そろそろ戦争でも起こってもらわないと」と発言した経団連参加者がいたと報道されたこともあったが、そういうストーリーだ。なので、一定のリアリティはある。問題は、その目的達成のために取るべき手段があまりにも回りくどいことだ。軍人を担ぐよりも、政治家を担ぐ方が確実だと思うが。また、バートやハロルドを指して「お前たちは常に監視下にある、いつでも殺せる」と脅しておきながら、そうした脅威を実際に感じさせるシーンもわずかしかない。陰謀史観論者から見たもう一方の陰謀史観論的に見えてしまう。あまりにもご都合主義的だ。

 

豪華キャストをそろえた割りにはケミストリーが生まれていない。アニャ・テイラー=ジョイとマーゴット・ロビーの二人には演技対決と呼べるようなシーンはなかったし、いぶし銀のマイケル・シャノン(この人が出ている作品はハズレが少ない)とベイル、ワシントンのコンビの間に何らかの連帯感が生まれるような展開もなかった。シーンとシーンの移り変わりのテンポの良さのために豪華俳優陣を無駄使いしている。

 

総評

『 アメリカン・ハッスル 』同様に、荒唐無稽なプロットにリアリティを与えるデビッド・O・ラッセル監督の持ち味が出ている。ただし、あくまでロシアによるウクライナ侵攻や、中国の習指導体制の強化など、ファシズムの萌芽を世界が目撃しつつある瞬間が味方したことも忘れてはならない。今作は悪があまりにも間抜けすぎて、最後は fizzle out してしまった。ただ、序盤から中盤にかけての展開はミステリアスかつスリリング。キャストも非常に豪華なので、楽しむこと(だけ)はできる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

wear it well

作中で、ラミ・マレック演じる富豪トム・ヴォーズの言葉。これは直訳すると「それを上手に着ている=着ているものが似合っている」ということだが、もう一つ、「性格や境遇が合っているという意味もある。Rod Stewart がそのものズバリ  “You wear it well” という歌を歌っている。その中で、And I wear it well. = 俺にはそういうのがお似合いなんだよ、という歌詞があるので、興味のある人は聴いてみよう。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 天間荘の三姉妹 』
『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, クリスチャン・ベール, サスペンス, ジョン・デビッド・ワシントン, マーゴット・ロビー, ミステリ, 歴史, 監督:デビッド・O・ラッセル, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 アムステルダム 』 -ファシズムの萌芽を摘めるか-

『 渇きと偽り 』 -乾いた大地の人間関係-

Posted on 2022年9月27日 by cool-jupiter

渇きと偽り 70点
2022年9月25日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:エリック・バナ
監督:ロバート・コノリー

 

サイモン・ベイカー主演・監督『 ブレス あの波の向こうへ 』以来のオーストラリア映画の劇場鑑賞。

 

あらすじ

連邦警察官アーロン・フォーク(エリック・バナ)は旧友ルークの葬儀に参列するため、20年ぶりに故郷の小さな町に帰ってきた。ルークは自身の妻子を射殺した後に自殺したとされていた。プライベートで捜査に乗り出したフォークは、自分たちの若い頃に起きたある事件と、今回の事件がつながっているのではないかと感じ始め・・・

 

ポジティブ・サイド

どこまでも無慈悲に広がる乾いた大地が、よそ者を拒むかのように画面を支配する。主人公のアーロンも全く歓迎されない。アメリカの警察映画などで、FBIが片田舎の地元警察や地元住民に相手にされないのと同じような展開で、それ自体は珍しくもなんともない。本作はそこに、アーロン達の身に起きた過去のある事件を効果的に織り交ぜてくる。これによって、中央と田舎の対立以上の火種が事件そして町に潜んでいることが浮き彫りになってくる。

 

アーロン自身の捜査によって少しずつルークの事件の情報の断片が手に入ってくるが、それと並行するようにアーロン自身の過去の回想シーンが挿入される。なぜアーロンはこれほど町で歓迎されないのか。逆になにがアーロン自身をこれほど捜査に駆り立てるのか。そのあたりの事情が徐々に明らかになるペースが絶妙である。「なるほど」と「それは何だ?」と感じさせる塩梅がちょうどよい。脚本および編集の妙味だなと感じる。

 

怪しげな人間やきな臭い人間関係が浮かび上がっては消えていく。まるで町そのものが大きな闇を抱え込んでいるかのように、アーロンの捜査はいいところまで行くたびに袋小路に入ってしまう。しかし終盤に思いがけない形で真相に迫るヒントが浮上、物語は一気に最終盤へ。コロナ大流行前の世界のニュースといえば、オーストラリアの超大規模森林火災だったことを覚えている人も多いだろう。そうした大災害の予感を感じさせるクライマックスは、それまで散々干ばつに悩まされてきた土地および住民の描写のおかげで、より迫力を増していると感じた。

 

ミステリ風味たっぷりのサスペンス、サスペンス風味たっぷりのミステリとも言える。こうしたジャンルを好む向きなら、本作を鑑賞しない手はない。

 

ネガティブ・サイド

序盤の展開にもう少しテンポの良さが欲しい。少し眠気を誘われてしまった。

 

ティーンエイジャーのアーロンと現在のアーロンがまったく似ていない。なんかもう顔も体も骨格レベルで別人である。もう少し顔かたちが似た若い俳優はいなかったのか。

 

ネタバレを避けるため詳しくは書けないが、過去の事件の真相と現在の事件の繋がり方(と言っていいのかどうか・・・)には拍子抜けである。現在の事件の真犯人が最後に自暴自棄になってやろうとしたことは「まじでそれはヤバい」感があったが、犯行の理由はあまりにもありきたり。もっと衝撃的な真相が欲しかった。

 

総評

サスペンスは最後まで持続するが、ミステリ部分のカタルシスが最後はとても弱い。ただし、ちょっぴり残念な真相に至るまでの展開は very mysterious and suspensful 。様々な人間関係や人間模様は徐々にあらわになる中盤の展開は間違いなく一級品。警察ジャンルが好きな人ならきっと楽しめるはず。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

second nature

「第二の性分・習性」の意。しばしば become second nature という形で使う。

Practice this move until it becomes second nature to you.
この動きが自然にできるようになるまで練習しなさい。

スポーツ、あるいは演奏や美術品・工芸品作成の指導時に使うことが多そうな表現である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, エリック・バナ, オーストラリア, サスペンス, ミステリ, 監督:ロバート・コノリー, 配給会社:イオンエンターテイメントLeave a Comment on 『 渇きと偽り 』 -乾いた大地の人間関係-

『 ナイル殺人事件 』 -謎解きを楽しもうとすべからず-

Posted on 2022年3月11日 by cool-jupiter

ナイル殺人事件 50点
2022年3月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ケネス・ブラナー ガル・ガドット
監督:ケネス・ブラナー

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『 オリエント急行殺人事件 』に続くエルキュール・ポワロもの。仕事が超絶繁忙期のため、簡易レビューを。

 

あらすじ

巨額の遺産を相続したリネット(ガル・ガドット)は友人のフィアンセとの略奪婚を果たす。しかしエジプトを新婚旅行中にリネットが殺害されてしまう。ハネムーンに集まった人々は実は全員リネットに怨恨を抱いていた。名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は事件の真相解明に挑むが・・・

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ポジティブ・サイド

ドロドロの愛憎劇として観るなら、かなり良い出来映え。アガサ・クリスティは、友好的な登場人物たちが実は裏では・・・という人間関係を描く最初の世代にして名手である。現代でこそ意外性はないのだが、クリスティの時代はこれが斬新だったのだ。世界が今ほど近代化・都市化しておらず、コミュニティの中の人間関係が十分に可視化される時代だったのだ。だからこそリネットが言う「私に近づいて来る人間は、みんな私のお金が目当て」という言葉に説得力が出ている。

 

巨大なピラミッドやラムセス2世の神殿、そしてナイル川をクルーズする豪華客船とエジプト旅行の雰囲気を味わうことができた。色々と緩和されてきたとはいえ、海外旅行はまだまだ難しそう。劇場で異国情緒を味わうのも一興かもしれない。

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ネガティブ・サイド

『 ねじれた家 』と同じく、ハウダニットを深く考えてはいけない。ホワイダニットだけを考えるべき作品で、その意味ではミステリとしては非常に弱い。一応、最後の最後で筋の通った謎解きはなされるが、推理としては噴飯もの。「説明がつく」ということと「実行することができる」は別のこと。あまりツッコミすぎると野暮だが。

 

ポワロの若き日のエピソードは必要だったろうか。愛する人を偲ぶあまりに独身のまま老年に差し掛かろうとするのは確かに物悲しくはあるが、そのことが本編に深みも奥行きも与えているようには見えなかった。『 ダークナイト 』のトゥーフェイスを見せられても意味が分からない。まあ、更なる続編への布石なのだろうが。

 

総評

悪い作品ではないが、面白いとも感じない。超豪華な火曜サスペンス劇場という感じである。どうせなら『 アクロイド殺し 』を現代風にアレンジして映画化してみてはどうか。超絶技巧が要求されるが、挑んでみたいと思う脚本家は数多いるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

square

色々な意味がある語だが、ここでは人物を指して「四面四角」という意味。He is a square. = あいつは四面四角な奴だ = 融通が利かない面白味のない奴だ、という意味になる。fair and squareと言えば、正々堂々、公明正大という意味にもなる。Let’s fight fair and square. = 正々堂々と戦おうじゃないか、という意味。 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, ガル・ガドット, ケネス・ブラナー, ミステリ, 監督:ケネス・ブラナー, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ナイル殺人事件 』 -謎解きを楽しもうとすべからず-

『 死神の棋譜 』 -将棋ミステリの佳作-

Posted on 2021年11月21日 by cool-jupiter

死神の棋譜 75点
2021年11月16日~11月19日にかけて読了
著者:奥泉光
発行元:新潮社

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奥泉光とJovianは並木浩一という共通の師を持つ。その縁もあって、奥泉宅のクリスマス会に過去に二度ほど招かれたことがある。そんな大先輩が上梓した一冊を、藤井聡太の竜王戴冠の軌跡に合わせて読んでみた。

 

あらすじ

元奨励会員の夏尾は神社で不可解な矢文を見つけた。そこには不詰めの詰将棋の図面が結ばれていた。その後、夏尾は謎の失踪を遂げる。将棋ライターの北沢は、かつて存在したとされる棋道会と謎の不詰めの図面、そして夏尾の失踪の謎を追うが・・・

 

ポジティブ・サイド

阪神大震災翌年の羽生の七冠フィーバーも凄かったが、今の藤井フィーバーはそれ以上かもしれない。将棋は漫画になり、アニメになり、小説になり、映画にもなってきたが、ほとんどは「青春」というジャンルに分類されてきたように思う。そこへミステリである。しかも書き手は虚々実々の手練手管で、読者を常に虚実皮膜の間に落とし込んできた奥泉光である。

 

事実、本書の物語は常に現実と虚構の間を行き来する。奥泉小説の特徴であるが、主人公の経験する事象が、現実なのか非現実なのかがはっきりしない。夏尾という夢破れた男の悲哀、その後の人生は、大崎善生の『 将棋の子 』を思い起こさせる。つまり、それだけリアリティがある。一方で、夏尾がたどり着いた龍神棋は、大山康晴が若かりし頃に修行の一環で取り組んだとされる中将棋のイメージが投影されているし、その龍神棋という狂気の世界は、かつて米長邦雄や羽生善治が語った「読み続けていくと、そこから帰ってこれなくなる狂気の世界」のイメージも投影されているように感じた(ちなみに、将棋の読みの狂気の領域に到達してしまった棋士としては加藤一二三が挙げられるのではないかというのがJovianの私見である)。

 

磐というのが本作のキーワードの一つであるが、これは天照大神の岩戸隠れ伝説を下敷きにしているように思えてならない。遥か地の底、闇の底で、夏尾と北沢が指す龍神棋の圧倒的なイメージとビジョンは奥泉ならではの筆力。この場面だけは棋譜と読み筋が詳述されるが、おそらく将棋初心者にとっても全く気にならない迫力。ぐいぐいと引き込まれる。

 

同じく北沢と女流二段・玖村の爛れた関係も読ませる。「将棋に負けることは少し死ぬこと」というのは、まさに勝負師の言であるが、実際に現・将棋連盟会長の佐藤康光は対極に負けた悔しさで泣くことがあるというのを、先崎が著書でばらしていた。幼少の藤井聡太が谷川浩二との駒落ち対局で勝てなかったことで大泣きしたというエピソードも広く知られるようになった。とにかく将棋で負けるというのは、素人でもプロでも結構つらいものがあるのである。

 

昨今の将棋界の良い面も悪い面も意欲的に取り込んだ野心作である。Jovianは本書の最後で示唆される内容に怖気をふるった。すべては「ある人物」の読み筋であり、登場人物はすべて駒だったのか。それとも、その見方も「一局」なのか。もちろん、本作における本当の意味での真相は闇の中であり、それも奥泉流だろう。将棋ファンならば一読をお勧めする。

 

ネガティブ・サイド

兄弟子にネガティブなことを言うのは憚られるが、文人・奥泉光だからこそ棋道会や龍神棋を巡る物語に、愛棋家で知られた山口瞳や団鬼六のエピソードも盛り込んでほしかったと思う。

 

升田幸三や木村義男まで登場するが、将棋の磐の底、龍神棋という異形の世界を広さや深さを描き出すためには、それこそ時空を超えた描写があれば、もっと混沌とした世界を描けていたと思う。たとえば、天野宗歩や初代・伊藤看寿を登場させたり、あるいは女性の名人、もしくは外国人の名人を登場させるなど、現代の将棋界のイメージをぶち壊すような世界観が呈示されれば、ショッキングではあるだろうが、将棋の可能性を推し広げるビジョンになっていだろう。

 

総評

帯に「圧倒的引力で読ませる」とあるが、この惹句は本当である。特に112ページからは、ページを繰る手が止まらなくなる。奥泉ワールドに親しんできた人ならなおさらだろう。本書ではちょろっと藤井聡太も登場する。ライトな将棋ファンもディープな将棋ファンも、一番の関心は「藤井が谷川浩司の持つ最年少名人記録を更新できるか」であろう。おそらく達成するだろう。その時、本作の評価はもう一段上がるであろうと思われる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

drop

「落とす」の意味だが、将棋では「持ち駒を打つ」の意。Sota Fujii dropped a silver on 4 1. = 藤井聡太は41に銀を打った、のように使う。Habu’s amazing 5 2 silver drop is one of his most famous moves. = 羽生の52銀打ちは、彼のもっとも有名な指し手の一つである、のように名詞でも使う。将棋の英語解説に興味がある人はYouTubeでHIDETCHIと検索されたし。

 

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Posted in 国内, 書籍Tagged 2020年代, B Rank, ミステリ, 日本, 発行元:新潮社, 著者:奥泉光Leave a Comment on 『 死神の棋譜 』 -将棋ミステリの佳作-

『 マスカレード・ナイト 』 ー人間模様の描写が弱い-

Posted on 2021年9月19日 by cool-jupiter

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マスカレード・ナイト 45点
2021年9月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞 
出演:木村拓哉 長澤まさみ 
監督:鈴木雅之

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大学後期の開講ラッシュで仕事が多忙を極めているが、なんとか映画館通いは継続させたい。そこでお気軽に犯人当てでもするかと思い、本作をチョイス。犯人は2択まで絞って、なんとか的中させた。

 

あらすじ

都内アパート暮らしの女性殺人事件を捜査する警察の元に匿名ファックスが届く。その事件の犯人が、大みそかに仮面舞踏会を主催するホテル・コルテシア東京に現れるというのだ。警視庁捜査一課の刑事の新田(木村拓哉)は捜査のため再びフロント係としてホテルに潜入し、腕利きコンシェルジュの山岸尚美(長澤まさみ)と共に事件の解決に乗り出すが・・・

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ポジティブ・サイド

前作『 マスカレードホテル 』に引き続き、豪華キャストをよく揃えたものだと思う。木村拓哉と長澤まさみを当て書きしたかのようにハマっていたが、今作でも他人をどこまでも疑う刑事と他人をどこまでも信じるホテルマンの対比が映える。

 

ホテルのフロントロビーのプロダクションデザインも、やはり見事の一語に尽きる。前作のスタートは拍子抜けするようなホテル外観のCGから始まったが、マスカレード=仮面舞踏会をタイトルに持つ本作は、そんな Establishing Shot は持ってこない。

 

冒頭の殺人事件から、怪しい客が次から次にやって来るシークエンスは確かに引き込まれる力を持っている。そこへ、他人のかぶる仮面を引っぺがしたい新田と他人のかぶる仮面を守りたい山岸のぶつかりあい=漫才的な掛け合いは、ワンパターンではあるが面白い。

 

冒頭の殺人事件の犯人、その密告者、そして犯人と密告者の関係が複雑に絡まりう展開は観る者をぐいぐいと引き込んでくる。謎解き要素を別にすれば、デートムービーにもなりうるだろう。

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ネガティブ・サイド

これはミステリに対してどれだけ慣れているかによるが、おそらく密告者が誰であるかは、分かる人はかなり早い段階で分かったのではないか。ズバリこの人物だと指摘できないまでも、こんな「属性」の人物あろうと見当はつく。これから観る人は、映画製作者(小説の作者も)は、新田や山岸を騙そうとしているのはなく、我々を騙そう、ミスリードしてやろうと思っていることを忘れるべからず。同時に、我々に対して結構フェアに伏線を呈示してくれてもいる。だが、今回の新田のファックスの文言への指摘は、あからさまにミスリードすぎるだろう。もう少し見せ方に工夫が必要だった。

 

犯人候補=ホテル客なのだが、ここの見せ方もあからさますぎた。「さあ、この人物は怪しいですよ」という人間を何度も何度も出し入れするが、さすがにここまでやるとすれっからしならずとも犯人候補からは外すだろう。このキャラをもっと怪しく見せる小道具として、とある隠語になっていない隠語(以下白字、Love Affair、情事、不倫、頭文字を取ればLA)をもっと効果的に使えたはずだ。

 

別の犯人候補について言えば、小日向文世が語る捜査情報とあからさまに食い違う情報が呈示された瞬間(以下白字、夫の死亡時期)に「こいつだ!」と思えたが、新田がその矛盾に反応できなかったのは無理がある。また、この犯人候補同士のとあるインタラクションをコンシェルジュである山岸がお膳立てせざるを得ない場面があるが、この展開にはおそらく全世界のホテルマンが頭を抱えることだろう。無理が通れば道理が引っ込むという極めて日本的な悪弊の顔が見える。もちろん、最後には痛快な肘鉄を食らわせるわけだが、この切羽詰まったタイミングでこんな展開を持ってくるか?この無茶苦茶な展開のおかげで「やっぱりあいつが犯人だ」と確信した。もっと純粋に推理をさせてほしかった・・・

 

ホテルのバックヤードに設置された警察の捜査本部は無能の集まり。「なんとしても犯人を見つけろ」の一点張りで、捜査の方向性も論理的な指揮も何もない。元警察官のJovianの義理の父親が見たら、どう感じることか。また、犯人の犯行動機も前作の極めてパーソナルなものから、巨大な相手に対する憎悪になっているが、そんなもんのどこに説得力があるのか。警察の権威を失墜させたいなら、衆人環視の中での犯行を止められなかったという汚名を着せるのではなく、誰も注目していない事件には警察は本腰を入れないということをもっと効果的に満天下に知らせるべきだろう。気宇壮大な犯行動機だが、ここまでくると小説ではなく漫画に思える。

 

総評

ミステリ小説の映画化というよりも、割と上質な2時間ドラマ、テレビ映画、またはドラマの劇場版だと捉えるべきだろう。長澤まさみはキャリアウーマンや母親役として芸域を開拓していくだろう。キムタクはおそらくキムタクのままか。おそらく第三弾も制作されるだろうが、その時はもっともっと純粋ミステリに徹してほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

the 

冠詞は英文法の中で最も難しいと思っている。ちなみに難しさランク2位は単数・複数の使い分け、3位は前置詞である(あくまで私見)。時々、ホテル名には the をつけるべしと解説する書籍やサイトを見るが、厳密には正しくない。 

ホテル~には the はつかない

~ホテルには the がつく

というのが正しい解説。例を挙げると

〇 The Cortesia Hotel

✖ Cortesia Hotel

〇 Hotel Cortesia

✖  The Hotel Cortesisa

となる。英検1級、TOEFL iBT90点、IELTS7.0を目指す人なら正しく理解しておきたい。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 木村拓哉, 監督:鈴木雅之, 配給会社:東宝, 長澤まさみLeave a Comment on 『 マスカレード・ナイト 』 ー人間模様の描写が弱い-

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