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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: スリラー

『 FALL フォール 』 -シチュエーション・スリラーの秀作-

Posted on 2023年2月8日2023年2月8日 by cool-jupiter

FALL フォール 75点
2023年2月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレイス・キャロライン・カリー ヴァージニア・ガードナー ジェフリー・ディーン・モーガン
監督:スコット・マン

妻が観たいというのでチケット購入。個人的には優先順位は低い作品だったが、予想以上に面白かった。

 

あらすじ

ベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)は、フリークライミング中の夫の事故死の悲嘆から抜け出せずにいた。事故から一年後、デンジャーDとして活躍する親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)が訪問してくる。夫の死を乗り越えるために、高さ600メートルの旧テレビ塔の頂上まで昇ろうと誘ってきて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

高さ600メートルは想像しがたい。東京スカイツリーと言われても、関西人にはピンと来ない。しかし、梅田のスカイビルの3倍以上の高さと言われるとギョッとするし、あべのハルカスの展望台の2倍の高さと言われると冷や汗をかいてしまう。高所恐怖症の人がいる反面、高いところが怖くない人もいる。しかし、本作の描く高所に恐怖を感じない人はいないはずだ。本国のキャッチコピーの通り、Fear reaches new heights. である。

 

トレーラーの時点では承認欲求モンスターの女子二人が繰り広げる迷惑劇だと思い込んでいたが、『 フリーソロ 』とまでは行かないまでも、クライミングのバックグラウンドがあることを描いてくれたのは良かった。高いところに昇るというのは、それだけでかなり危険な行為なのだ。

 

テレビ塔の頂上につくまでの描写も不穏である。振動で揺さぶられて緩くなったり外れてしまうネジなどをこと細かく映すことで、いつベッキーとハンターは窮地に陥るのか、とサスペンスを盛り上げていく。冷静に考えれば頂上にたどり着くまではピンチになるはずがないのだが、観ている間は結構ハラハラドキドキさせられた。スコット・マン監督の手腕はお見事。

 

頂上に到達するも、梯子が壊れて降りられない。電波もない。人影もない。さあ、どうする?本作はスリラーであると同時にサバイバル映画でもある。水が少量で食い物なし。トイレもなし。ベッドも無し。着替えも無し。二人が持っているものを最大限に使って、なんとか状況を打開していこうとあがく様は素直に応援したくなるし、試みが上手く行きそうで上手く行かないという展開の連続で非常に疲れる。そんな中で、二人の間に思わぬ不協和音も聞こえてくる。状況だけでも非常にサスペンスフルなのに、ここにきて人間関係までもが・・・ ここから先の展開は是非劇場で確かめられたし。

 

サバイバルの先にはホラー展開も待っている。高度600メートルで何が襲ってくるのか?とも感じたが、その正体は序盤で明らかにされている。これには純粋に恐怖を感じた。逃げ回ろうにも逃げられない。文字通り、一歩間違えれば転落死するのだから。だが本作はある意味で『 127時間 』も真っ青の展開で主人公を生かす。諦めなければ人間ここまで出来るのか、とホラーと人間賛歌を同時に行うという離れ業も見せてくれる。これもぜひ劇場で確認されたい。本作鑑賞後、しばらく高層ビルには登りたくなくなること請け合いである。

 

ネガティブ・サイド

物語にケチをつけるとすれば、最後の最後の救出劇がすべて省略されていたところか。

 

『 海底47m 』のスタッフが再集結、みたいな宣伝は不要に思う。いや、まあ宣伝側の意図は分かるが、おかげで劇中のとある展開が予想できたというか、あっさり見破れてしまった。

 

字幕翻訳者にも喝。ベッキーの好きなWWEレスラーの名前がバウティスタになっていたが、それは役者としての名前。レスラーとしての名前はバティスタだ。

 

最後の最後、Let’s go home. は無いわ・・・。普通に警察に逮捕される案件やろ。

 

総評

女子二人だけで、ここまで観る側をグイグイ引っ張り続ける力を持った作品は近年だと『 17歳の瞳に映る世界 』と『 Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バック 』ぐらいか。スリラーとしても、これでもかと観客をハラハラドキドキさせ続けてくれて、まさにサービス満点。この恐怖と緊迫感はまさに劇場の大画面と大音響で味わうべきだ。ぜひチケット購入を!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You got this.

『 トップガン マーヴェリック 』(追いトップガン6回目)でも紹介した表現。You can do this. の意味。劇中ではハンターが何度も何度もベッキーをこう言って励ます。日常でも職場でも使える表現。ぜひ知っておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』
『 日本列島生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た! 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, イギリス, ヴァージニア・ガードナー, グレイス・キャロライン・カリー, ジェフリー・ディーン・モーガン, スリラー, 監督:スコット・マン, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 FALL フォール 』 -シチュエーション・スリラーの秀作-

『 非常宣言 』 -デタラメなパワーで突っ切る韓国映画-

Posted on 2023年1月12日 by cool-jupiter

非常宣言 70点
2023年1月8日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ソン・ガンホ イ・ビョンホン チョン・ドヨン イム・シワン
監督:ハン:ジェリム

色々あって年末年始は劇場に行けなかったが、新年一本目に本作をチョイス。

あらすじ

パク・ジェヒョク(イ・ビョンホン)の娘は、トイレで不審な男性を目撃する。その後に搭乗したハワイ行きの航空便で、乗客が吐血して死亡。機内はパニックに陥る。同じ頃、国内ではバイオテロの犯行予告動画が拡散しつつあった。捜査に乗り出したク・イノ刑事(ソン・ガンホ)は、テロの標的となった飛行機に妻が乗っていると知り・・・

ポジティブ・サイド

物語の開始から、最初の死者が出るまでが非常にスピーディーだが、このテンポが最後まで落ちない。やれやれ、話がちょっと一段落したか、と思った瞬間から、新たな展開が矢継ぎ早に始まっていく。普通の映画だったらここで終わり、という瞬間からさらに40分は尺を稼ぐが、そこに長さを感じない。最初から最後まで無茶苦茶な展開ながら、観る側を飽きさせずに惹きつけ続ける力を持っている。

撮影という面でビックリさせられたのは、機長が感染して、飛行機の操縦が滅茶苦茶になるところ。飛行機がきりもみ回転しながら降下していくシーンでは、キャビンの乗客の一部がマイナスのGの作用で天井にはりつけられてしまう。トム・クルーズの『 ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 』のように本物の飛行機を使ったとは思わないが、観ていてハッとさせられた。

ソン・ガンホとイ・ビョンホンという二大巨頭の揃い踏みだが、バイオテロの犯人を演じたイム・シワンが最も凄みのある演技を見せる。『 殺人鬼から逃げる夜 』のウィ・ハジュンでも感じたことだが、整った顔立ちの青年が狂気をはらむ歪んだ笑顔に変わっていく瞬間は、本当に気持ち悪い。これは誉め言葉である。イム・シワンが聞けば「俺の演技力を見たか」と思うに違いない。

もちろん両巨頭の見せ場も十分にある。妻を思う心優しきソン・ガンホが、そんな馬鹿なという方法で状況を打開するし、トラウマを抱えるイ・ビョンホンがそれを乗り越えていく過程にもドラマがある。チョン・ドヨン演じる強気の大臣も素晴らしい。緊急事態宣言下でサービスエリアが営業しない中で、トラック運転手にコンビニ利用を促したどこぞの島国のアホな国土交通大臣とは大違い。このようなリーダーシップを真正面から描ける点は素直に羨ましい。

ネガティブ・サイド

アメリカに追い返される韓国機はまだしも、日本の航空自衛隊があんな対応するかなあ。厚木の米軍が出張ってくるのは現実的にも本作のストーリー的にも考えられるが、百里あたりの自衛隊が、下手したら日韓戦争の引き金をひくような真似をするだろうか。やはり日韓は互いに相手を仮想敵国と見ているのか。

韓国国民が飛行機に対して拒絶反応を起こすのは理解できるが、たかだが数時間程度の間に各種のプラカードや横断幕を準備して、組織だった反対デモが起こるものだろうか。いくらデモ好きの韓国人とはいえ、非現実的に見えた。

総評

劇中の韓国国民が感染者を多数抱えた飛行機を受け入れるかどうかで激論を交わす様は、2020年当時の我々がダイヤモンド・プリンセス号に対して投げかけた言説と同じであることを思い起こさせられた。ちょうど本作鑑賞の前日に中部空港のジェットスターに爆破予告の電話があったとのニュースが。パンデミックと航空機テロという二つの要素が、この上ないタイミングで合わさった韓国スリラーである。

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ピ

血の意。劇中で何度も何度も「ピ!ピ!」とキャラたちが大騒ぎするので、すぐに分かる。チとピで何となく似ている気がする。

次に劇場鑑賞したい映画

『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』
『 ファミリア 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ビョンホン, イム・シワン, スリラー, ソン・ガンホ, チョン・ドヨン, 監督:ハン・ジェリム, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 非常宣言 』 -デタラメなパワーで突っ切る韓国映画-

『 MEN 同じ顔の男たち 』 -要グロ耐性のスリラー-

Posted on 2022年12月11日2022年12月11日 by cool-jupiter

MEN 同じ顔の男たち 40点
2022年12月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェシー・バックリー ロリー・キニア
監督:アレックス・ガーランド

 

『 ワイルドローズ 』のジェシー・バックリー主演作。『 エクス・マキナ 』で、え?という結末を見せたアレックス・ガーランドが監督(ところで『 アナイアレイション 全滅領域 』の続編はいつ?)。ということでチケット購入。

あらすじ

DV気質の夫の自死後、ハーパー(ジェシー・バックリー)は田舎町へやって来る。大家のジェフリー(ロリー・キニア)から家の鍵を受け取り、散歩するなどして田舎生活を満喫していたところ、庭に全裸の不審者が現れる。警察に通報して、男は取り押さえられたが、その後もお面をかぶった少年や牧師など、ジェフリーと瓜二つな男たちが、彼女に不安や不信を植えつけていき・・・

 

ポジティブ・サイド

イングランドの片田舎の自然の風景が美しい。低い空に生い茂った草木などは、鑑賞してはいないが、『 ピーターラビット 』のトレイラーに出てくるような景色を思い起こさせる。こうした風景は確かに都会人を癒やす効果を持つ。特にDV夫の自死を目撃した後なら尚更だろう。

 

前半は美しい自然と、どこか不穏な気配が入り混じった雰囲気が観る側の不安を書き立てる。ハーパーが山中の廃トンネル内の音声のリフレインを使って一人無邪気に歌って遊ぶシーンは、クライマックスの展開を示唆していたのか。

 

ハーパーが教会を訪れるシーン以後、一気にホラー色が強まってくる。このあたりの build up の仕方はお見事。イングランドといえばストーンヘンジのような巨石文化で知られているが、片田舎に行けば土着の古い信仰や遺物もまだまだ眠っている。表が男で裏が女という謎の石像も絶妙な気持ち悪さ。これも終盤の”トラウマ的”な展開の(一応の)伏線になっている。

 

最後の “トラウマ的なイベント” はかなりグロいシーンの連発なので、間違ってもデートで女性を連れてきてはいけない。高校生カップルとかなら尚更である。だが、それゆえに強烈なインパクトを残すことは間違いない。

 

ジェシー・バックリーは意識せず妖艶な雰囲気をまとう女性を好演。だが、それ以上にロリー・キニアが怪演を見せつける。気の良い大家から自己責任を追及してくる聖職者、そしておつむが少々足りない青年まで丁寧に演じ分ける。英国の役者はけれんみが強い印象があるが、キャスティングがハマれば強い。

ネガティブ・サイド

様々なメッセージを発しているのは分かるが、それが物語に直接つながっていない。いや、間接的にすらつながっていないことも多い。こちらにそれを読み解く力がないのかもしれないが、それにしても思わせぶりなメタファーが多すぎて、作っている側もそれを処理しきれなかったのではないか。

 

リンゴ=禁断の果実というのはイマイチ。せっかくイングランドの土着信仰的なアーティファクトを出しているのだから、知恵の実云々の蘊蓄は不要。失楽園を描きたいなら、別の舞台でやってくれ。

 

天の川銀河があるもののモチーフになっているが、このネタは古い。すでにテレビ映画の『 ランゴリアーズ 』が同じことをやっている。

 

トレイラーや邦題でも強調されているが、ロリー・キニアがほとんど全部の男性キャラクターを演じていることに、鑑賞中は恥ずかしながら気付けなかった。お面の青年と牧師と大家だけかと思いきや、全裸の不審者や警察官、バーテンダーやバーの客まで彼が演じていると言う。なぜもっとそのことをビジュアル面で強調しないのか。また、なぜハーパーがそのことに気付かないのか。ハーパーがこの狭いエリアの男たちが皆、同じ顔をしていることに怖気をふるう場面があれば、観ている側もハーパーの感じる不安や恐怖を共有しやすくなるのだが。

 

オチもなあ・・・ ラストの ”トラウマ的” とされるイベントが始まったところで、「ああ、最後はこうだよね」というのが見えてしまう。元ネタは、最近作者が死亡してしまったが、友人が志を継いで再開された某漫画の某展開だろうな。

 

総評

A24らしいと言えばA24らしい作品。『 LAMB/ラム 』や『 ウィッチ 』のように、辺境の地での異様な体験を描いてはいるが、これらの先行作品に比べると明らかに一枚も二枚も落ちる。同じ顔の男たちというのは、虐待された女性から見れば男は全員加害者候補という意味なのだろうが、いくらなんでもメッセージとして極端すぎる。ちなみに一緒に鑑賞したJovian妻は「なんちゅうもん見せてくれたんや」という感じで、鑑賞後はかなり不機嫌だった。人によっては突き刺さるもののある作品なのだろうが、刺さる範囲はかなり狭いと思われる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a stone’s throw

石をひと投げ、転じて「目と鼻の先」という意味。しばしば

A is within a stone’s throw of B.

または

A is a stone’s throw away from B.

という形で使われる。意味はどちらも「AはBの目と鼻の先にある」となる。この表現はアメリカ人よりブリティッシュの方がよく使う印象がある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 グリーン・ナイト 』
『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イギリス, ジェシー・バックリー, スリラー, ロリー・キニア, 監督:アレックス・ガーランド, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 MEN 同じ顔の男たち 』 -要グロ耐性のスリラー-

『 ザ・メニュー 』 -Don’t just eat. Taste.-

Posted on 2022年11月27日 by cool-jupiter

ザ・メニュー 70点
2022年11月26日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:レイフ・ファインズ アニャ・テイラー=ジョイ ニコラス・ホルト
監督:マーク・マイロッド

あらすじ

有名シェフのジュリアン・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が手がける、孤島のレストラン「ホーソン」を訪れたマーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(ニコラス・ホルト)たち。絶品料理の数々に感動するタイラーを横目に、マーゴは違和感を覚える。そしてコースが進むにつれ、シェフの凝らした趣向がどんどんとエスカレートし、ある時ついに一線を越えてしまい・・・

ポジティブ・サイド

何とも奇妙な趣向を凝らした映画である。これでもかと瀟洒な料理を見せつけつつ、作り手たちが届けたいメッセージは食べ物に関することではない。食べ物を味わう姿勢、もっと言えば芸術作品そのものを味わう姿勢についてだ。

 

ごく少数の客が船に乗り、孤島のレストランに向かう様子は『 ナイル殺人事件 』を彷彿させ、否が応でもサスペンスが盛り上がる。孤島で出迎えてくれるエルサの存在がさらに不穏な空気を充満させる。この役者、ホン・チャウさんというらしい。方向性は全然違うが、『 カメラを止めるな! 』の竹原芳子(どんぐり)並みのインパクトを残したと思う。今後、どんどん売れて、最終的にミシェル・ヨーの領域を目指してほしい。

 

閑話休題。レイフ・ファインズ演じるシェフは技巧の限りを尽くしたフルコースを振る舞うが、一品ごとに小咄を挿入してくる。そこで彼が言う「ただ単に食べてはいけません。味わってください」=Don’t just eat. Taste. こそが本作のメッセージ、いや裏メッセージと言うべきか。芸術を消費するな、ちゃんと鑑賞しろという、一種の批判になっている。ごく最近、ファスト映画のアップロード者2名に5億円という目玉が飛び出るような賠償金請求が出たが、Jovianはこの判決はありだと考える。抑止力になることもそうだが、なによりファスト映画を消費することによって、映画を観たと堂々と言えるような風潮を世間に広めてはならないと思うからだ。

 

本作でもレストランオーナーの友人だという3人組が「一回あのレストランに言っておけば箔がつく」と話すシーンがあるが、これは味を楽しむ姿勢ではなく、単なるステータスを獲得しようという姿勢である。Jovianと同世代なら T.M.Revolution の『 WHITE BREATH 』の歌詞、「タランティーノぐらいレンタルしとかなきゃなんて、殴られた記憶もロクにないくせに」 を思い出すかもしれない。殴られる痛みを知らないのに、暴力的な映画を鑑賞して、その真価が分かるのか?という疑問である。ニコラス・ホルト演じるタイラーを通じて、シェフはこのことを非常に痛烈に批判してくる。こんなブログ書いてる俺も大丈夫かいなと心配になってきた。

 

最後の一品の際に、マーゴが機転を利かして虎口を脱するが、この知恵は見事だった。結局のところ、ファスト映画の消費や、あるいは配信などの形態に、古き良き劇場鑑賞という経験そのものが屈してしまう。それが認められない映画人による壮絶な自爆テロ的な寓意をはらんだ結末なのかと思う。

 

ネガティブ・サイド

『 フード・ラック!食運 』と同じく、食材の調達や調理のシーンが決定的に不足していた。撮影開始の前のロケハンや、大道具・小道具の作成、衣装の用意、役者のリハなど、映画製作もカメラが回り始めるよりも前の方が重要であると思う。料理も同じで、キッチンで調理をする前の段階こそが大事で、牡蠣を取るシーンにもっとクローズアップしたり、ハチミツや鶏卵を収穫するシーンを挿入することも出来たはずだ。またレイフ・ファインズ自身の調理シーンも、もう少し欲しかった。

 

趣向の一つとしての男性だけの逃走タイムは何だったのだろう。

 

アニャ・テイラー=ジョイのキャラの職業もちょっと捻りすぎかなと感じた。また。エルサとの対決の結果は、レストランの惨状とは無関係なので、そこをどうカバーするのだろうという疑問は残った。

 

総評

アニャ・テイラー=ジョイがR15+ということで、ついに脱ぐのか?という期待が高まったが、そういう意味でのR指定ではないので、スケベ映画ファンは期待してはいけない。またグルメ映画だと思ってもいけない。本作は一種のシチュエーション・スリラーだと思うべきだ。そのうえで豪華な食材=有名俳優を使って、美味を極めた料理=極上の映画を送り届けてきたと解釈すべし。つまり、レストラン「ホーソン」のゲスト=映画の観客なのだ。それを念頭に置いて鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

theater

普通は劇場という意味だが、これは a theater のように冠詞がつく場合。劇中では、This is theater. = これはお芝居よ、のように使われていた。書籍『 マネーボール 』の原書でも、アート・ハウ監督のダグアウトでの在り方が、Everything was theater. =「何もかもが芝居なのだ」と訳されていた。a theater と theater の区別が適切にできれば、英検準1級以上はあるだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザリガニの鳴くところ 』
『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アニャ・テイラー=ジョイ, アメリカ, スリラー, ニコラス・ホルト, レイフ・ファインズ, 監督:マーク・マイロッド, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ザ・メニュー 』 -Don’t just eat. Taste.-

『 ドント・ウォーリー・ダーリン 』 -トレイラーに(良い意味で)騙された-

Posted on 2022年11月23日2022年11月24日 by cool-jupiter

ドント・ウォーリー・ダーリン 65点
2022年11月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:フローレンス・ピュー ハリー・スタイルズ
監督:オリヴィア・ワイルド

『 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー 』で鮮烈な青春映画を撮ったオリヴィア・ワイルドが、夫婦のサスペンス、あるいはミステリ風味の作品を送り出してきた。

 

あらすじ

夫ジャック(ハリー・スタイルズ)と幸せな結婚生活を送るアリス(フローレンス・ピュー)。夫の仕事は順調で、近隣の仲間たちとも良好な関係を築いていた。充実した日々を過ごすアリスだったが、次第に不可思議な現象に悩まされるようになり・・・



ポジティブ・サイド

これはジャンル分けが難しい。サスペンスのようでもあるし、ミステリのようでもある。おそらくスリラーに分類するのが正しいのだろが、なかなかそれを悟らせないストーリーテリングにはヤキモキさせられるものの、謎の正体が不明なため、それだけで緊張と興味が持続する。何を言っているのか分からないと思うが、本作はモヤモヤを楽しむ映画なのである。

 

幸せなカップルの女性を演じるフローレンス・ピューだが、『 ミッドサマー 』の印象は今も続いていて、「あ~、きっとトラウマ的な体験をするんだろうなあ」と思わせてくる。そう思わせて、実際にトラウマ的な体験をして、それできっちり観る側を満足させてくれるのだから大したもの。変なラブロマンスに出演するよりも、トニ・コレットの後継者路線を目指すべし。

 

どこか『 アス 』や『 アンテベラム 』を思わせる雰囲気の共同体で、夫たちが順調に仕事をしている留守を守る、夫の不在を存分に享受する妻たちの姿は美しい。にもかかわらず、徐々に流れていく不協和音。夫たちの仕事とは何か。消えた友人はどうなったのか。街そのものが何かおかしいことを訴えるアリスと、Don’t worry, darling 的な態度に終始する夫ジャックのすれ違いに、奇妙な共感をする夫婦は多いのではないか。本作の見所は、男性が「女性目線」に立ってフェミニズムを体現しようとしている様を、女性監督が「男性目線」から見えているであろうフェミニズムを体現しようという、一種の入れ子構造にある。

 

ネタバレになるので白字にするが、『 ラスト・ナイト・イン・ソーホー 』的な物語なのかな?と思わせておいて『 レミニセンス 』的な話だった。是非とも夫婦で鑑賞してほしい。これは、ある意味でとてもまっすぐな愛の物語だから。

 

ネガティブ・サイド

本作のトリックはそれなりにショッキングなものだが、フェアな伏線が張られていたとは言い難い。せいぜい中身のない卵くらいか。というか、あの飛行機は何?あれで『 アンテベラム 』を想起した人も多いと思うが、あの飛行機墜落はかなり強引な演出だった。

 

できれば全てのキャラたちの背景を語って欲しかった。カップルたちの奇妙な出会いの共通点などが語られ、街の核心に迫っていこうとするところで、そこには至らず。オリヴィア・ワイルドは監督としての職権乱用ではなかろうか。

 

ジェンマ・チャンのキャラクターも拍子抜け。「お、仁義なき女の戦いが勃発か?」というところで物語そのものがフェードアウト。ここは決着をつけてほしかった。

 

総評

非常に複雑なフェミニズム映画という印象。間違っても『 ミッドサマー 』的なノリで若者がデートで観るような映画ではない。夫婦、できれば共働き夫婦で鑑賞してほしい。特に日本は不景気でDINKSも増えている。本作が夫婦関係を見つめ直すヒントになるかもしれない。また。こうした世界が現実に到来する予感も漂っている。ユートピア=ディストピアという図式を、古い革袋に新しい酒という形で提示する意欲作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a shoulder to cry on

『 エンダーのゲーム 』でも紹介した表現。そこで泣くための肩という意味で、弱音や愚痴を聞いてくれる人の意味。もうすぐホリデーシーズンなので『 ラスト・クリスマス 』が聞こえてきたら耳を澄ましてみよう。Me? I wish I was a shoulder to cry on ♪♪♪

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 サイレント・ナイト 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, スリラー, ハリー・スタイルズ, フローレンス・ピュー, 監督:オリヴィア・ワイルド, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 ドント・ウォーリー・ダーリン 』 -トレイラーに(良い意味で)騙された-

『 リトル・ジョー 』 -静謐&ノイズ系ホラー-

Posted on 2021年11月29日2021年11月29日 by cool-jupiter

リトル・ジョー 65点
2021年11月25日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エミリー・ビーチャム ベン・ウィショー
監督:ジェシカ・ハウスナー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211129193017j:plain

シネ・リーブル梅田で上映していたが、見逃してしまった作品。こけおどしで溢れる昨今のホラーの中では異色の仕上がりとなった。

 

あらすじ

アリス(エミリー・ビーチャム)は、その匂いを嗅ぐことで多幸感が得られるという「リトル・ジョー」という新種の植物を開発し、息子のジョーにプレゼントにした。しかし、「リトル・ジョー」の花粉を吸ったジョーは普段と少し異なる言動を取り始めた。同じころ、花粉を吸い込んだ助手のクリス(ベン・ウィショー)も、奇妙な振る舞いを見せ始めて・・・

 

ポジティブ・サイド

どこか彼岸花を連想させるリトル・ジョーという植物が、とても妖しげな雰囲気を放っている。それは、全編を通じて独特の色使いと、ノイズとも言えるBGMが、不協和音を奏でながらも、一つのハーモニーとして機能しているからだろう。「赤」の使い方としては、『 シックス・センス 』のシャマランを思わせる。リトル・ジョーという植物の持つ魔力のようなものが、この赤の使い方によって際立つ。少なくとも見る側にとってはそのように映る。オリエンタルなBGM(というか日本人の作曲家なのね)も、リトル・ジョーが画面に映る際のノイズとあいまって、観る側の心をざわつかせる。

 

アリスと息子ジョーの関係の変化も自然である。思春期の息子が母親に隠し事をする、あるいは言動が以前と変わってしまう。それは当たり前のことである。しかし、そこにリトル・ジョーの花粉吸引をまじえることで、独特のスリルが生まれている。また、ベン・ウィショー演じる助手のクリスの変化も興味深い。詳しくはネタバレになってしまうが、ヨーロッパあるいは日本には「リトル・ジョー」を購入する理由がたくさんありそうである。

 

ジョーや、そのガールフレンドの演技はなかなかのものである。瞬きを極力しないというのは演技者の基本だが、それに加えて無表情なのに雄弁な表情ができることに恐れ入った。特にジョーのガールフレンド役の女の子は不気味なこと、この上なかった。アリスが定期的に訪れるカウンセラーも、アリスに傾聴するふりをしながら、実に底浅い心理分析を行い、やはり観る側を苛立たせる。愛犬ベロを失った(というか・・・)同僚ベラの言動のあれこれも、観る側を戸惑わせる。リトル・ジョーは無害なのか、有害なのか。

 

植物が人間を操るということにリアリティを感じられるかどうかが胆だが、実際に植物は多くの動物を操っている。繁殖の時期になると、花粉の飛ばしをよくするために、はなびらを敢えてトカゲ好みの味に変える植物もあるぐらいなのだ。植物の力、そして人間の生物学的かつ社会的・心理的な弱さを知っている人であれば、本作は非常に不愉快かつ興味深いものになるはずだ。『 リトル・ショップ・オブ・ホラーズ 』へのオマージュが盛り込まれているらしいが、Jovianは中学生の時に読んだ『 トリフィド時代 』を思い出した。これもまた本作の持つ英国らしさゆえなのだろう。

 

ネガティブ・サイド

研究所の同僚のベラとその愛犬ベロの関係の変化を、もっとじっくりと描いてほしかった。犬は人間の何万倍、下手したら何億倍の嗅覚性能を誇るのだから、リトル・ジョーの香りや花粉から受ける影響も、(理論的には)もっと大きいはず。ここを丹念に描いておけば、アリスが気付くキャラクターたちの変化と、観る側が気付くキャラクターたちの変化がシンクロする、あるいはギャップを生み出すことできる。それによって、観る側がアリスに「おーい、気付け気付け」のように感じられ、それが更なるサスペンスになっただろう。

 

リトル・ジョーの香りをかいだ人間たちのインタビューを、もう少しじっくり見たかった。This is not the woman I used to know. = これは私が知る女性ではない、というセリフは認知症のパートナーを持つ人間の定番のセリフであるが、具体的に相手のどんなところからそう感じるようになってしまったのかを見せてくれていれば、リトル・ジョーの魔力にもっと説得力が生まれただろうと思う。

 

総評

昨今のホラー、なかんずくアメリカで夏に大量に公開されるものは、観客を怖がらせるのではなく、驚かせている。本作は、迫力こそないものの、神経にじわじわ来る『 ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談 』のような感じである。本作を面白いと感じて、なおかつ活字にアレルギーのない人は、鯨統一郎の『 ヒミコの夏 』も詠まれたし。または恐怖を快楽に変えて人間を操る生物のストーリーならば貴志祐介の『 天使の囀り 』も傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

talk back

「返事をする」、「言い返す」の意。劇中では前者の意味で使われているが、実際のコミュニケーションでは後者の意味、特に「口答えする」という意味合いで使うことが多い。一時期のアップルやIBMには、If you talk back, you’re fired. = 口答えするならクビだ、みたいなスーパーバイザーがたくさんいたことだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, イギリス, エミリー・ビーチャム, オーストリア, スリラー, ドイツ, ベン・ウィショー, ホラー, 監督:ジェシカ・ハウスナー, 配給会社:ツインLeave a Comment on 『 リトル・ジョー 』 -静謐&ノイズ系ホラー-

『 アンテベラム 』 -ややマンネリか-

Posted on 2021年11月14日 by cool-jupiter

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アンテベラム 60点
2021年11月7日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジャネール・モネイ
監督:ジェラルド・ブッシュ クリストファー・レンツ

 

私生活が多忙なためレビューが遅くなってしまった。『 殺人鬼から逃げる夜 』の上映時にトレイラーを観て、面白そうだと感じた。実際に面白かったが、テーマ的にも手法的にも先行する作品はいくつかある。

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あらすじ

気鋭の論客ヴェロニカ(ジャネール・モネイ)は、友人たちと楽しいディナーを過ごしていた。一方で、エデン(ジャネール・モネイ)は南軍の支配する南部で過酷な奴隷生活を送っていた。二人の人生が交差する時、恐るべき真実が明らかになり・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭からロングのワンカットで南北戦争時代の南部プランテーションの光景をこれでもかと見せつける。まるで『 ハリエット 』の世界に放り込まれたかのようである。BGMがまた不安を煽る。非人間的な扱いを受ける奴隷たちの姿と相まって、これから展開される物語が非常にダークなものになることを示唆する establishing shot になっていた。この作りこみは見事である。

 

事実、綿花の収穫に駆り出される黒人奴隷たちの置かれた境遇は過酷の一語に尽きる。観ていて気分が悪くなるが、これが歴史的な事実だったのだからしょうがない。 現代パートでも、さりげなく、しかし確実に黒人差別が存在することを印象付けるシーンがかしこに配置されている。Deep South という言葉があるが、本当に恐ろしい地域であると思う。

 

物語はヴェロニカ視点とエデン視点で進むが、その切り替わりが夢と目覚めというのは巧みである。どうしたって『 シャイニング 』を彷彿させる不気味な少女を使うことで、スーパーナチュラル・スリラーの要素も効果的に増強されている。トランプ政権爆誕以来、The Divided States of Americaになってしまった彼の国であるが、そんな状況の中でも本作ような作品を作り上げてしまうのだから、大したものである。

 

ぶっちゃけJovianは開始15分程度で話の全貌が見えてしまった。職業柄、TOEFL iBTを教えることが多く、畢竟アメリカ史には詳しくなる。あるキャラクターがある場面でポロっと漏らす一言は実にフェアな第一の伏線であった。『 グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 』で、マット・デイモンが親友ベン・アフレックをバーでかばうシーン並みにアメリカ史に通暁していれば、ひょっとしたらもっと早い段階で見破ってしまうのかもしれない。

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ネガティブ・サイド

今というタイミングだからこそセンセーショナルに感じるが、先行作品はいくらでも思い浮かぶ。以下、白字。

『 ザ・ハント 』

『 アス 』

『 ヴィレッジ 』

他にも今年(2021年)亡くなった劇画家の第3巻にも非常によく似たエピソードがある。種明かしされれば気付く類の伏線の数々が周到に張られてはいるものの、これらが少し大げさすぎた。もっと控え目でよかったのだが。

 

ジョーダン・ピールが関わっているわけではないが、ヴェロニカの親友の太っちょは『 ゲット・アウト 』のリル・レル・ハウリーの女性バージョン。『 ゲット・アウト 』は潜在的に白人が黒人を恐れ、なおかつ憧れているからこそ成り立つストーリーで、奇妙なユーモアがあった。だからこそ面白キャラの居場所があったの。しかし、本作のような黒人差別バリバリの話の中では、彼女の存在はひたすら浮いていたように感じた。

 

総評

ネタバレ厳禁というのは確かにその通りであろう。ただ、トレイラー自体が結構なネタバレになっている。また、ストーリー進行が前半は特に重く感じられ、そこでヴェロニカとエデンの切り替わりさながらに眠りの世界に旅立ってしまう人も多そうだ。ミステリ映画好きなら、あっさりと見破ってしまうだろう。逆にそうでなければ気持ちよく big twist に酔うことができるだろう。実際に、Jovian妻は感心することしきりであった。

 

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

bellum

戦争を意味するラテン語。『 竜とそばかすの姫 』で、bellum omnium contra omnes = war of all against all = 「万人の万人に対する闘争」という格言に触れたが、bellという語は英語にも大きな影響を及ぼしている。英検2~準1級なら rebel, rebellion あたりを、英検1級なら bellicose, belligerence あたりを知っておきたい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ジャネール・モネイ, スリラー, 監督:クリストファー・レンツ, 監督:ジェラルド・ブッシュ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 アンテベラム 』 -ややマンネリか-

『 殺人鬼から逃げる夜 』 -韓流スリラーの秀作-

Posted on 2021年10月16日 by cool-jupiter

殺人鬼から逃げる夜 75点
2021年10月14日 TOHOシネマズなんばにて鑑賞
出演:チン・ギジュ ウィ・ハジュン パク・フン キル・ヘヨン
監督:クォン・オスン

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TOHOシネマズ梅田では都合がつかないので、難波まで足を伸ばす。その甲斐があった。これまた韓流スリラーの秀作である。

 

あらすじ

聴覚障がい者のギョンミ(チン・ギジュ)は、ある夜、路地裏からハイヒールを投げて、か細い声で助けを求める女性に遭遇する。その女性を助けようとしたギョンミは殺人鬼(ウィ・ハジュン)に追われることになる。果たしてギョンミは逃げ切ることができるのか・・・

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ポジティブ・サイド

冒頭からただならぬ雰囲気が漂っている。暗い路地。一人で歩く女性。親切そうに声をかけてくる男。テンプレ通りであるが、男がサイコな殺人鬼に変貌する様がとにかく恐ろしい。まるで『 羊たちの沈黙 』と『 悪魔を見た 』のオープニング・シークエンスを足したかのうようである。そして実際そうなのだろう。全編にわたって「面白い」という評価が定まった映画のパッチワークであるように見える。見えるのだが、それがパクリではなくオマージュでもなく、一つの様式美にまで高まっている感すらある。

 

殺人鬼役のウィ・ハジュンはJovian嫁をして「こらイケメンやわ」と言わしめる handsome guy だが、普通に頭のおかしいサイコパス殺人狂。表情の変わりっぷりが常人のそれではない。チェ・ミンシクの弟子だとしか思えない。単なるイケメンで役を得ているのではない。確かな演技力があってこその配役だと実感できる。私見では『 孤狼の血 LEVEL2 』の鈴木亮平の恐ろしさの方が上であるが、ウィ・ハジュンは役者としてのキャリアはまだまだ短いし浅い。それでこれだけのパフォーマンスを見せるのだから、よほど監督の演出が凄かったのか、あるいは鈴木のように役に向き合う時間があったのだろう。

 

ただし主役はギョンミ。こちらも凄い。聴覚障がい者という点で『 ただ君だけ 』のジョンファと重なるが、障がい者=清く正しく弱く、だからこそ美しいなどという描き方は真っ向から拒否している。悪態をつきまくる手話の顧客相手に折れることなく、勤め先の会社の大口取引先の接待で、ギョンミの耳が聞こえないのをいいことに好き勝手言いまくる野郎ども相手にも次々に手話でののしり言葉を浴びせていく。簡単に諦めたり、屈服したりするキャラではないことを、言葉を使わずして雄弁に語っている。ところどころで無音となるシーンを挿入するのは『 クワイエット・プレイス 破られた沈黙 』でもあった演出だが、これによりすぐそこにいるはずの殺人鬼に観る側は気付いているのに、ギョンミが気付いてくれないというもどかしさが、最高級のサスペンスを生み出している。特にギョンミの家に侵入するシーンの恐怖とサスペンスよ。ここでは『 シャイニング 』の有名なシーンへのオマージュが観られるので期待されたし。

 

頭のおかしさは折り紙付きのこの殺人鬼、なんと善良な一般人のふりをして警察署にまでついてきて、ギョンミとその母を執拗に付け回す。そこにギョンミが目撃した怪我をした女性の兄にして元海兵隊員のジョンタクもやってきて役者がそろう。ここからギョンミが、同じく聴覚障がい者である母と共に恐怖の殺人鬼から逃げまくるのだが、これがまた緊迫感満点。『 チェイサー 』のハ・ジョンウとキム・ユンソク並みに走って走って走りまくる。入り組んだ路地。人気の少ない街はずれ。そこを三者が縦横無尽に走りまくるのだが、冒頭のシーンと同じく、クォン・オスン監督はアクションだけではなく、街のそこかしこに存在する漆黒の闇をねっとりと画面に映し出していく。ポン・ジュノ監督の『 母なる証明 』の事件現場を彷彿させてくれる。この街の闇=人間の心の闇で、これが殺人鬼のものだけではなく、広く現代人が持ってしまっているものだということを終盤の展開で見せつけてくる。人気のない街区でも、光と人にあふれる繁華街でも、ギョンミは社会的には徹底的に弱者であるということを見せつけられてしまう。ここでチン・ギジュが見せる演技は圧倒的である。必死の訴えをワンカットで演じ切るという渾身の演技。テレビドラマ畑出身のようだが、もっと映画にも出てほしいもの。

 

殺人鬼の名前だとか動機だとか、そんなものはどうでもいい。逃げる女性。追う殺人鬼。それを追う被害者の兄。こんな単純なプロットで2時間弱の間、緊張感をまったく途切れさせることなく、それでいて社会的なメッセージまで盛り込んだ作品である。観ない手はない。空いている劇場の空いている時間帯を見計らってチケットを購入されたし。

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ネガティブ・サイド

韓国映画における警察の無能さは全世界の知るところであるが、さすがに事件の目撃者かつ被害者と思しき女性の兄を名乗る者がいれば身分証やら何やら身元確認をするだろう。また別の男と乱闘になって流血沙汰になっているのだから、調書は取るだろう。さすがに現実の韓国警察もそこまで無能ではないはずだ。

 

終盤近くにジョンタクが取る行動もおかしい。いや、取る行動というか、取らなかった行動と言うべきか。携帯を持っているなら、それでしかるべきところに通報せよ。その上で走れ。警察につながって信じてもらえなくても、それはそれで韓国警察の無能さがまた一つ浮き彫りになるだけ。ここだけはもっと常識的な行動をしてほしかった。

 

総評

これが長編デビュー作とは信じられない。が、韓国では『 国家が破産する日 』や『 藁にもすがる獣たち 』のような逸品を長編や商業作品を手がけるのは初めてという監督が作ってしまうので、本作のクオリティにも驚いてはいけないのかもしれない。『 ブラインド 』が『 見えない目撃者 』としてリメイクされたように、本作も日本でリメイクしてほしい。監督は森淳一、脚本は藤井清美で。そう感じさせてくれる、圧巻の出来栄えである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバラマ

『 哭声 コクソン 』でも紹介した表現。韓国語で言うところの”F*** you”である。使ってはいけない韓国語であるが、どういうわけか韓国映画では頻繁に使われている。邦画界も上品な言葉遣いだけではなく、卑罵語をバンバン使った映画を作ってほしい。だからといって、北野武映画のような「てめえ、この野郎、バカヤロー」連発も困りものだが。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, ウィ・ハジュン, キル・ヘヨン, サスペンス, スリラー, チン・ギジュ, パク・フン, 監督:クォン・オスン, 配給会社:ギャガ, 韓国Leave a Comment on 『 殺人鬼から逃げる夜 』 -韓流スリラーの秀作-

『 死体が消えた夜 』 -もう少し演出に工夫を-

Posted on 2021年9月25日2021年9月25日 by cool-jupiter

死体が消えた夜 60点
2021年9月21日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:キム・ガンウ キム・サンギョン キム・ヒエ
監督:イ・チャンヒ

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大学が開講したことの目まぐるしさから一時の逃避を求めてTSUTAYAへ。

あらすじ

大学教授のジンハン(キム・ガンウ)は教え子の学生と不倫、彼女は妊娠した。ジンハンは開発中の新薬で妻を殺害し、彼女は病死とされた。しかし、ジンハンの元に「遺体が消えた」との連絡が入る。誰かが妻の遺体を運び出したのか、それとも妻は死んでいなかったのか・・・

 

ポジティブ・サイド

ミステリなのか、それともオカルトなのか、ということをはっきりさせないことで、これは一体なんなのかと観る側を疑心暗鬼にさせる。なかなかに良い雰囲気。

 

妻を見事に片づけたことに安堵しているジンハンから色々と事情聴取をする刑事ジュンシクが型破りだ。署の駐車場に車を停めるのに、車の後部をぶつける事故を起こしたり、上梓である署長の携帯番号を「クソ署長」で登録していたりと、なかなかに型破り。

 

タイトルが『 死体が消えた夜 』なので、この取調室の一夜をスーパーナチュラル・スリラーっぽい要素を交えてネットリと描き出すのかと思ったら、さにあらず。ストーリーは思わぬ方向へ進み、最後にはすべてのピースがパズルのごとくピタリとはまった。韓国映画らしいエンタメ要素と社会的メッセージの両方が備わった佳作である。

 

ネガティブ・サイド

電話のシーンは不要である。こうした場合、通話先の相手の様子は見せる必要はない。ミスリードしたいのだろうが、それなら声だけでよかったのではないか。

 

色々な工夫が凝らされていはいるものの「そんなもん、どこで手に入れた?」というアイテムや、「その場しのぎにはなっても、長くは通用しないだろう」という手がバンバン使われている。急速展開と役者の演技でギリギリもたせているものの、論理的にはかなり破綻したストーリーと言わざるを得ない。

 

総評

韓国映画らしい社会の上層と下層の対比が映える。弱点も多い作品だが、長所がそれらを上回る。イ・チャンヒ監督はラブコメの『 あなたの彼女 』を2019年に公開しており、この時点では無名の監督。それでも無名監督らしい「俺はこういうストーリーを描きたいんだ」の一点突破で成立している作品である。ホラーは無理、オカルトなら何とか、ミステリやサスペンスなら全然大丈夫、という人は本作をどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンセンニム

「先生」の意。先生=センセイは、確かにソンセンという音に近い。ニムの意味は『 悪人伝 』でも触れたが、韓国はとにかく目上には様をつける。先生様や社長様、会長様など、とにかく相手を敬うときには様=ニムなのである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, キム・ガンウ, キム・サンギョン, キム・ヒエ, スリラー, 監督:イ・チャンヒ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 死体が消えた夜 』 -もう少し演出に工夫を-

『 モンタナの目撃者 』 -山火事と暗殺者から逃れられるか-

Posted on 2021年9月12日 by cool-jupiter

モンタナの目撃者 65点
2021年9月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンジェリーナ・ジョリー フィン・リトル ジョン・バーンサル エイダン・ギレン ニコラス・ホルト
監督:テイラー・シェリダン

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テイラー・シェリダン監督の最新作。アメリカの大自然とアメリカ社会の闇の両面を描くという点で『 ウインド・リバー 』の同工異曲だが、クオリティはそこまで及んではいなかった。だからといってホームランと比べると2塁打は確かに劣るが、凡退やシングルヒットよりも全然良い。

あらすじ

森林局のパラシュート隊員であるハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、過去の消防活動からトラウマを抱えていた。そんな中、小川のほとりでコナー(フィン・リトル)と出くわす。コナーの父が恐るべき陰謀に巻き込まれたことを知ったハンナはコナーを助けると決意する。しかし、そこには追手と彼らが放った火によって起きた森林火災が迫って・・・

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ポジティブ・サイド

アメリカの雄大な自然の森や山々が活写されると共に、それが牙を剥いてきた時の恐ろしさも真正面から捉えられている。山火事の炎は言うに及ばず、雷の恐怖もなかなかのもの。序盤に新人たちの入隊セレモニーが行われているそばで飲んだくれながら、F-words連発で下世話なトークを繰り広げるハンナとその仲間たちに「こいつらが消防隊員で本当に大丈夫か?」と思ったが、実際はこれぐらい図太さと豪胆さがなければ大自然の脅威には立ち向かえないということがよく分かった。

かといってハンナは単に口が悪い、頭のねじが外れた消防士ではない。過去のトラウマに今も苛まれている。そんな彼女がコナーと巡り合うことで、過去のトラウマに決着をつけられる機会を図らずも手に入れる。序盤、いきなり住宅が吹っ飛ばされ、それをニュースで知った男性が息子を連れて逃走するシーンは観る側を置いてけぼりにするが、それを追撃してくる暗殺者ふたりの奇妙なバディっぷりが不気味さを倍増させる。

あるサバイバルスクールで文字通りに役者が揃い、ハンナとコナー、ハンナの元恋人で地元の保安官とその妻、そして山火事の猛威の三つ巴の戦いはまさに手に汗握る展開。「殺される」と感じた瞬間からの逆転や、「勝った」と確信した瞬間からの再逆転など、とことんまでサスペンスを追求した作りに100分という上映時間をもっと短く感じた。

エイダン・ギレンとニコラス・ホルトの暗殺者二人組の容赦のない仕事ぶりと、それゆえの倒され方には納得。ジョン・バーンサルの保安官役も板についていた。子役のフィン・リトルの演技力も堂に入っている。涙を流すのではなく、父の遺志を継いで涙を必死にこらえる姿には脱帽。演出家や演技指導者の腕が良いのか、この子の訳とシーンの解釈が素晴らしいのか。最後にアンジェリーナ・ジョリーを称えないわけにはいかない。豪快さと繊細さ、力強さと優しさの両方を備えている。父子家庭で育ったと思しきコナーが父を失くしたからといって、安易に母親的な存在になろうともしない。相手を子どもではなく一人の人間として、まっすぐに目と目を合わせて話をする。ルックスでデビューして、加齢とともに消えていくどこかの国のアイドル卒の女優たちには、アンジェリーナ・ジョリーの出演作品を10回以上見せてやりたいと思う。

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ネガティブ・サイド

コナーが仔馬と交流するシーンが冒頭近くにあるが、これは何だったのだろう。てっきり終盤に森林の中で馬と出会い、動物と心通わせる力でもって、窮地を脱するのかと思ったらさにあらず。

バーンサルの上官が自身の妻からの電話応答を”Absolutely not.”といって断るシーンは必要だったか。これをやってしまうとそそっかしい人は「保安官は職務中は家族からの電話にも出ないのだな」と思ってしまう。ここは逆に電話に出て、保安官同士で使う隠語で妻に言葉をかけるぐらいが望ましかった。

不満を言わせてもらえば、落雷する平原を駆け抜ける際のハンナの指示にプロフェッショナリズムがもっとあれば良かった。いつ落雷するか分からないような超危険地帯では、雷しゃがみが鉄則。「こんな風にしゃがむのよ」的なことを言っていたが、こここそ「手を地面につかない」とか「かかとを浮かせる」といったことを復唱させる場面であると感じた。

あとは映画そのものの出来とは関係ないが、これまたトレイラーがほとんど全部のプロットを明かしてしまっている。できるだけトレイラーを見ずに臨むのが吉である。

総評

炎の熱がスクリーン越しにこちらに伝わってくるようなヒリヒリ感に満ちた作品である。自然の脅威と人間の追撃者の両方を扱った作品としては『 ローグ 』以上のサスペンスとアクションに満ちている。アンジェリーナ・ジョリーの迫真の演技とテイラー・シェリダンの描く極限的な状況がハイレベルで融合した佳作である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

read 

「読む」の意。通常は文字を読むのに使われる表現だが、日本語動揺に実は守備範囲が非常に広い動詞である。

lipreading = 読唇術
mind reading = 読心術
palm reading = 手相見
card reading = カードの読み取り(クレジットカードからタロットカードまで)

劇中では read the wind wrong =「風を読み違えた」という表現が出てきたが、ここまでくれば wind reading = 風読みも、ゴルフをたしなむ人なら分かるだろう。もっと一般的なところでは、正月に凧を揚げる時にどこに注目するかを思い浮かべればいい。それが風読みである。

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アンジェリーナ・ジョリー, エイダン・ギレン, ジョン・バーンサル, スリラー, ニコラス・ホルト, フィン・リトル, 監督:テイラー・シェリダン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 モンタナの目撃者 』 -山火事と暗殺者から逃れられるか-

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