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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: サスペンス

『ザ・ウォール』 -壁が隔てる自己と非自己-

Posted on 2018年7月14日2020年2月13日 by cool-jupiter

ザ・ウォール 55点

2018年7月10日 レンタルDVD観賞
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン ジョン・シナ
監督:ダグ・リーマン

ストーリーは至ってシンプルである。イラク戦争に従軍するアメリカ兵のアイザック(アーロン・テイラー=ジョンソン)とマシューズ(ジョン・シナ)が、謎の狙撃手に攻撃され、マシューズは被弾し、動けない。アイザックも何とかボロボロの壁の反対側に身を隠すことで狙撃を逃れそうとするも、敵は相当の腕っこき。壁から少しでも身を晒そうものなら、一瞬で撃ち抜かれてしまうだろう。無線で救助を要請するも、相手の英語のアクセントに違和感を覚えたアイザックは、その声こそ自分たちを狙撃してきた伝説のイラク狙撃兵“ジューバ”であることを悟る・・・

物語の大部分はアイザックとジューバの対話に費やされる。ジューバは一方的に有利な位置にいるからなのか、やたらと饒舌で、アイザックの個人情報、プライバシーの情報をやけに知りたがる。それが単なる好奇心からなのか、それともより深い狙いがあるのかをアイザック、そしてアイザックを見守る我々も分かりかねてしまうが、真相を知った時に、我々ははたと膝を打たざるを得なくなってしまう。そうした効果がここにはある。傷、出血、食糧の不足と水の不足、無線の故障から来る情報およびコミュニケーションの欠乏、それら全てがアイザックを蝕んでいく。そこからアイザックとジューバの対話が本格化するのだが、そこからアイザックは何故自分が従軍しているのか、何故自分はイラクにいるのか、その理由と向き合わざるを得なくなってく。こうした手法は『ALONE アローン』にも取り入れられていたし、イラク戦争がアメリカ人の精神に与えた陰影の深さは『告発のとき』や『ゼロ・ダーク・サーティ』などの傑作でも確認することができる。『オレの獲物はビンラディン』のような珍品というか怪作というか、思わぬ掘り出し物もあるのだが。

ジューバとの対話が佳境に差し掛かる頃、壁はもはや単なる防御壁や目くらましではなく、アイザック自身の狭隘な心の壁の象徴として彼自身にも、そして彼を見守る我々にも立ち現われてくる。我々がどれだけ他者を忌避し、なおかつどれだけ他者との交わりを求めているのかを栗本薫は喝破していたが、飢えや渇きよりもコミュニケーションの欠乏の方が人間、なかんずく現代人に与えるダメージは大きい。そのことを回りくどい方法ではあるが、本作は突き付けてくる。

ジューバの存在は実話だが、物語そのものは大幅に脚色されている、というよりもほぼ創作の域に達している。しかし、ダグ・リーマン監督が本作で提示する結末は、「壁」というものが本当はどんな役割を担っているのか、壁がここで象徴するのは内と外、あちら側とこちら側の境目以上のものだ。トランプ大統領がメキシコ国境に打ちたてようとしている壁は、本当は何と何を隔てようとしているものなのか、その壁によっても隔てようがないものとは何なのか。やや冗長もしくは退屈に感じる瞬間もあるが、アーロン・テイラー=ジョンソンの独擅場を堪能したい向きには必見である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アーロン・テイラー・ジョンソン, アメリカ, サスペンス, ジョン・シナ, 監督:ダグ・リーマン, 配給会社:プレシディオLeave a Comment on 『ザ・ウォール』 -壁が隔てる自己と非自己-

女神の見えざる手

Posted on 2018年6月8日2020年2月13日 by cool-jupiter

女神の見えざる手 85点

2017年10月22日 大阪ステーションシネマおよびブルーレイにて観賞
出演:ジェシカ・チャステイン マーク・ストロング クリスティーン・バランスキー
監督:ジョン・マッデン

ロビイスト映画の、これは白眉である。『 シン・ゴジラ 』並みのポリティカル・サスペンスであり、『ア・フュー・グッドメン』のようなスリラーでもある。銃メーカーがロビイング活動を請け負う会社に、女性が銃に対しても抱くイメージを変えてほしいと依頼するところから物語は始まる。銃を持つことで手に入れられる安心、強い母親のイメージ、それらを前面に押し出してほしいという依頼をしかし、ジェシカ・チャステイン演じるエリザベス・スローンは一笑に付す。ここから彼女は所属する大手ロビー会社を退社。マーク・ストロング率いる小さなロビー会社に移籍し、銃規制法案に働きかけていく。

冒頭に、“Lobbying is about foresight. About anticipating your opponent’s moves and devising counter measures. The winner plots one step ahead of the opposition. And plays her trump card just after they play theirs. It’s about making sure you surprise them. And they don’t surprise you.”という独白がある(実際には聴聞会のリハーサルだが)。この台詞の意味をよくよく噛みしめて今後の物語展開を見守って欲しい。予想してほしいではなく、見守って欲しいと願うのは、エリザベスの孤高の強さと弱さをその目に焼き付けてほしいからだ。話の展開を予想して、当たった外れたと一喜一憂することにさほどの意味は無い。少なくともこの映画に関しては。なぜなら、このストーリーの先が読める人は、余程のすれっからしか、さもなければロビイストだからだ。

それにしても、このエリザベス・スローンというキャラクターは異色である。2016~2017年にかけては、特に女性の女性性を大きく覆すような映画が多数公開されてきた(最も分かりやすい例は『ワンダーウーマン』と『ドリーム』か)ように感じるが、その中でも最も輝いているのは、おそらくこの Miss Sloane であろう。敵も味方も欺き、睡眠時間も削り、ストレス解消と言えば男娼を買うことで、勝つためなら法律違反も厭わないその姿勢は、観る者に問いかける。「あなたはここまでやりますか?」と。同時に、「ここまでやって勝った先に、いったい何があるのか?」という問いも必然的に発生する。彼女が求めたのは勝利なのか、それとも自己満足だったのか、それとも安息だったのか。ラストシーンで、彼女の目線の先にある者/物はいったい誰/何であったのか。

それにしてもジェシカ・チャステインという稀代の女優はここに来て、一気に花開いた感がある。『 ゼロ・ダーク・サーティ 』や『 モリーズ・ゲーム 』でも同工異曲のキャラを演じきったが、『 ヘルプ 心がつなぐストーリー 』では少し抜けたようでいて芯に強さのあるキャラも演じた。『 スノーホワイト 氷の王国 』のような微妙な作品に出演したこともあるが、作品のそのものの完成度の低さが、彼女自身の演技力や存在感を棄損したことは一度もない。希有な女優であると言える。何でもかんでもアメリカ様の後追いをする島国の、政治に危機意識を持つ人、キャリアに対して妥協を許したくない人にはぜひ観てほしい逸品である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, サスペンス, ジェシカ・チャステイン, フランス, 監督:ジョン・マッデン, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 女神の見えざる手

ゲティ家の身代金

Posted on 2018年5月27日2020年2月13日 by cool-jupiter

『ゲティ家の身代金』 80点
2018年5月27日 MOVIX尼崎にて観賞
主演:ミシェル・ウィリアムズ クリストファー・プラマー マーク・ウォールバーグ
監督:リドリー・スコット

ケビン・スペイシーのセクハラ騒動からクリストファー・プラマーを起用してのわずか数日間での再撮影と、果たして映画としての完成度はどうなのだ? ぱっと見て継ぎ接ぎパッチワークになっているのではないかとの懸念もあったが、それは杞憂であったようだ。というよりも、クリストファー・プラマーの起用がプラスに作用したとすら言える。もちろんケビン・スペイシーが名優であることには疑問の余地は無いが、プラマーの卓越した存在感と演技力なくして、この映画の真の完成はなかったとすら思えてくれる。

ある程度のフィクション化が加えられているとはいえ、これは実話に基づく物語である。取材は綿密に行っているであろうし、当時の世相の反映や、大道具から小道具に至るまでの再現性の高さも見どころであったが、それらは全てクリアされていた。当り前ではあるが、携帯電話の無かった時代の電話のやりとり、その不便さと緊迫感、またゲティ家邸内の公衆電話に至るまで、電話というものの便利さと恐ろしさは、一定以上の年代の人々にノスタルジーを覚えさせることだろう。

主役のミシェル・ウィリアムズは『 マンチェスター・バイ・ザ・シー 』や『 グレイテスト・ショーマン 』でも揺るぎない演技を見せ、今最も旬な女優であることを印象付けたが、今作ではその地位をさらに確固たるものにしたようだ。母は強しを体現するシーンあり、シェイクスピアばりの「弱き物、汝の名は女なり」を体現するシーンありと役者としての幅広さと奥深さを見せる。

トレイラーからも明らかだったように、ジャン・ポール・ゲティは身代金を払うつもりは一切無かった。その身代金もあの手この手で値切りながら、さらには身代金の受け渡しを使って、節税対策にまで乗り出す始末。金持ちの金持ちたる所以とも言えるが、その一方で美術品の蒐集には並々ならぬ執念を見せ、誘拐騒動の最中にも、その入手経路から表には出せない絵画を150万ドルで購入するなど、金の使い方が異様であることをこれでもかとばかりに観客に見せつける。彼が美術品・芸術品に対しての哲学を語る場面は出色である。ラテン語で“Ars longa, vita brevis”、英語では“Art is long, life is short.”と言うが、芸術作品に現れる永遠性、美の普遍性に異様に執着する様は、観客に容易に彼の過去の人間関係のあれやこれやを容易に想起させる。尋常ではない額の金を稼ぐことで失ってきた人間性がどれほどあるのか、そのことに思いを致す時、我々は慄然とする。また、誘拐事件を通じて孫の親権などにまでくちばしを突っ込んでくるその無神経さに我々は辟易させられるのだが、そのような石油帝国の支配者が崩れ落ちるのは、忠実な僕とも言うべきマーク・ウォルバーグから。人間関係のパズルピースが実は正しくはまっていなかった時、盤石の態勢と思われた帝国が崩壊する時、老人は真の孤独を知る。その時にこそ我々は知る。老ゲティスが求めたのは、真に愛せる対象なのであったのだと。そしてそのことを見事なまでに証明してくれたのが、実は誘拐犯の一人であった。

チンクアンタという男は悪党でありながらも、誘拐したポールに感情移入し、典型的なリマ症候群を発症させる。彼にとってある時点から身代金はどうでもよくなり、ただポールの身の安全を願い、さらにはそれを交渉相手に伝えてしまう、また実際に手助けしてしまうなどの行動にまで出てしまう。これは何も珍しいことではなく、ある程度以上の年齢の人間ならペルーの日本大使館占拠事件を思い起こして、容易に理解できることだろう。

この作品が炙り出すのは、誘拐事件の卑劣さや恐ろしさではなく、まして金の魔力でもない。金そのものはただの道具もしくは手段である。端的に言えば、金は幸せになるために必要なものであって、金そのものに幸せを見出すことはできないのだ。金だけで幸せになることはできないが、金無くして幸せになることも困難だ。ある絵画を抱きしめながら事切れるゲティ老を目の当たりにする時、観る者の胸には悲しみが去来する。なぜなら、幸せになれるのに幸せになれなかった人間の哀れさに心から同情するからだ。幸福の意味を問い直してくる傑作である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, クリストファー・プラマー, サスペンス, ミシェル・ウィリアムズ, 監督:リドリー・スコット, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on ゲティ家の身代金

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