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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: コメディ

『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-

Posted on 2025年5月6日 by cool-jupiter

うぉっしゅ 65点
2025年5月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:中尾有伽 研ナオコ
監督:岡﨑育之介

 

『 異端者の家 』を観るはずが、レイトショーがやっておらず、急遽こちらのチケットを購入。意外にしっかりした作りだった。

あらすじ

ソープで働く加那(中尾有伽)は、母の突然の入院治療のため、遠方の祖母、紀江(研ナオコ)の介護を一週間だけ引き受けることになる。しかし紀江は認知症のため加那のことを覚えておらず、毎回初対面のように振る舞う。そうして昼は介護、夜はソープという加那の奇妙な生活が始まって・・・

ポジティブ・サイド

めちゃくちゃ久しぶりに研ナオコを見た気がする。おそらく10年ぶりぐらいか?ナチュラルに老人になっていて、自分自身が年を取ったと実感する。そして研ナオコ演じる紀江の認知症は母方の祖母の認知症とそっくり。祖母も90過ぎてからは会うたびに「誰?どこから来た?仕事は?」と聞いてきたっけか。最初は少なからずショックを受けたが、おふくろからとある話を聞いて納得した。そしてその話とほとんど同じことを劇中でとある人物が語ってくれた。

 

本作で真に迫っていたのは紀江だけではない。他のキャラクター、特に隣家のおばさんと風俗店のボーイは際立っていると感じた。他にもホストに入れ込むソープ嬢仲間や、ソープ業界から足を洗おうという仲間も印象的だった。ああいう業界の人間関係はドライに見えてウェット、ウェットに見えてドライだと想像するが、現実もきっとそうなのだろう。

 

介護の場面でも、入浴介助のシーンだけ生き生きする加那には説得力があったし、介護のあれこれを動画で学ぶのも『 アマチュア 』と同じく現代っぽさを感じさせた。特に薬を飲むことを拒否する高齢者というのは、看護の現場でもあるあるだった。

 

加那がソープ嬢として客に忘れられること、そして孫として祖母に忘れられることの痛みを受け入れる転機は生々しかったし、それだけに説得力があった。会いに来るのを待つというのと、こちらから会いに行くということの違いをこれだけ鮮明に打ち出した作品は、ロマンスものですら珍しいと思う。

 

認知症は認知機能の衰えであって、感情は残るとされている。徘徊老人という言葉は数十年前からあるが、彼ら彼女らがどこに向かっているのかを追究しようとした作品としても本作はユニーク。昔の研ナオコを知っているオールドファンからすれば、一瞬だけだが非常に気分がアゲなショットも用意されている。

 

職業に貴賎なし。スティーブ・ジョブズの言葉を借りれば、Love what you do となるだろうか。自分を肯定できれば、相手も肯定できるのだ。

 

ネガティブ・サイド

ベッドで上半身を持ち上げてからの端座位への移行が、ぶっちゃけ下手くそだった。腕力を使ってはダメ、きゃしゃな女性なら尚更。最初にうまく行かず、そこでプロの指導動画を観る、のような流れであれば自然だった。ちなみに実践的には、自分から遠い方の相手の肩を抱いて少し自分側に引いてやり、その反動で相手を少し押す。そこで生まれた遠心力を使って、相手の尻を起点にサッと回してやるのがコツである。

 

名取さんのご高説は興味深かったものの、介護業が長かったのなら、家族が一番というのは必ずしも現実ではないと分かるはず。たとえば『 博士と彼女のセオリー 』などからも明らかだし、実際にそうだからこそ直接の家族でなくとも介護の貢献が認められた者にも相続権が認められる特別寄与制度も整備された。家族論には色々あるし、それは大いに語られるべきだが、本作のそれは少し的外れに感じられた。

 

総評

ソープと介護という一見して共通点がなさそうなものを見事に結び付けた珍品。だからといって程度が低い作品ではない。サブキャラのサブプロットも無理のない範囲で掘り下げられているし、それが主人公キャラに深みを与えている。セクシーなシーンはあっても、エロいシーンはないので、高校生、大学生のカップルでも鑑賞に支障なし。親が上手に説明できるならという条件付きで、ファミリーで鑑賞するのもありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nice to meet you.

はじめまして、の意。初対面の相手には、まずはこれを言おう。SlackやZoomで話したことはあっても、直接に合うのは初めてという場合は、Nice to meet you in person. や Nice to meet you face to face. のように言おう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 異端者の家 』
『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』
『 ゴーストキラー 』

 

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, コメディ, ヒューマンドラマ, 中尾有伽, 日本, 監督:岡崎育之介, 研ナオコ, 配給会社:ナカチカピクチャーズLeave a Comment on 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-

『 怪獣ヤロウ! 』 -終わり悪ければ何とやら-

Posted on 2025年2月12日 by cool-jupiter

怪獣ヤロウ! 40点
2025年2月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ぐんぴぃ
監督:八木順一朗

 

好物の怪獣ものと思いきや、何やら一杯食わされたような気分に・・・

あらすじ

岐阜県関市の観光課は市長からご当地映画の製作を命じられる。かつて怪獣映画の監督を志していた山田(ぐんぴぃ)は監督に立候補。関市の魅力をアピールするための映画作りに邁進するが・・・

ポジティブ・サイド

特撮がロストテクノロジーになりつつある、というかなってしまった時代に怪獣映画を作ろうという心意気や善し。(本多猪四郎+円谷英二)÷2というキャラまで出してしまうのには笑った。地場産業の仕事場から映像やら音声やらを頂戴して、それらを映画作りに生かすのはご当地ムービーとしてもお仕事ムービーとしても見応えがあった。

 

また、近年では都道府県あるいは市町村の長のパワハラがニュースになっているが、本作での関市長はそうした自治体の長としての姿を非常にユーモラスに描き出している。また、手塚とおるを久々に見た気がするが、この男はどうしても『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』を思い起こさせる。そういった意味ではナイスなキャスティングだ。『 ハルカの陶 』で偏屈職人を演じた平山浩行が本作では刀鍛冶に。備前長船の物語を作ることがあれば、彼のキャスティングを見てみたい。B級の帝王・田中要次や、個人的に江田島平八のイメージの強い麿赤兒など、B級コメディ的なキャスティングは全体的に成功であったと思う。

 

伊福部ゴジラサウンドのオマージュもなかなか。無理やり感は否めないが、ご当地映画として様々なガジェットを盛り込んだ映画を最終的に作り出した点は賞賛に値する。

 

ネガティブ・サイド

 

実際に出来上がった映画の冒頭のスーパーインポーズで、伝統至上主義を掲げるの「掲げる」が「揚げる」になっていなかったか。同じ「かかげる」でも意味が違う。

 

雨の中、市長が映画製作基地に尋ねてくるが、落ちていたという本部の半紙がまったく濡れていなかったのは何故なのか。

 

誘雷針(避雷針)の働きがおかしい。普通に火薬の分量間違いで良かったのでは?

 

最後の最後、絵的にまったく美しくなかった。『 シン・ウルトラマン 』の長澤まさみですら批判されまくっていたのを、本作の作り手たちはまったく知らなかったのか、それとも意に介さなかったのか。そんなはずはないと思うが。そもそも怪獣のミニチュアで色々と撮影していたのは何だったのか。

 

本作の最大の問題は、劇中作がご当地映画の本質を外してしまっているところ。ご当地映画を契機に観光客を呼び込みたい、外部の人間に関市を知ってほしいというなら、映画の主人公は関市出身者であってはおかしい。Jovianが酷評した『 しあわせのマスカット 』も、佳作だと評した『 ハルカの陶 』も、主人公はご当地(岡山県)の外部からやって来た。それは当地の産物に惹かれたからだ。地方出身の若者が東京に行って帰ってくるのは、

 

1)本当に故郷が良い街だから

2)東京で夢破れたから

 

のどちらか。そして理由は往々にして2)である。商店街がシャッター街になるのは不景気と後継者不足が原因。後継者不足=若者の不在、あるいは若者の事業継承の拒否。それは地元愛、郷土愛の否定とは言わないまでも不足を意味している。そこを打破するような映画ではなかった。

 

もうひとつ、怪獣をある感情の謂いだと某キャラが述べていたが、これにも違和感を覚えた。映画に感情をぶつけ、映画で感情を表現するのは『 息もできない 』などの例があるが、怪獣は違うだろう。いや、子どもが「ぼくのかんがえたさいきょうのかいじゅう」をやるのはいいが、大人はそうあるべきではない。だからこそ本多猪四郎・・・じゃなかった某キャラは業界および世間から干されたのではなかったか。

 

総評

怪獣映画としてもご当地映画としても本筋を外している感は否めない。ただし、コメディとしてはそれなりにまとまっている。妙なロマンス要素などは一切排除されているので、案外『 県庁おもてなし課 』をつまらないと感じた向きは、本作を役所のお仕事ムービーとして楽しめるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Tourism Division

観光課の意。実際の関市のホームページで確認した。観光とだけ辞書で引くと sightseeing と出てくるが、これは読んで字のごとく、光景を見るということ。なので旅行者側のアクションを指す。Tourismは余暇や文化体験などを目的とした旅のこと。「市役所職員として地元の観光を盛り上げたい」というような場合は promote local tourism と言う。promote local sightseeing は文法的に問題はなくても変な英語である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 メイクアガール 』
『 Welcome Back 』
『 大きな玉ねぎの下で 』

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, D Rank, ぐんぴぃ, コメディ, 日本, 監督:八木順一朗, 配給会社:彩プロLeave a Comment on 『 怪獣ヤロウ! 』 -終わり悪ければ何とやら-

『 はたらく細胞 』 -安易なお涙ちょうだい物語-

Posted on 2024年12月24日 by cool-jupiter

はたらく細胞 45点
2024年12月20日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:阿部サダヲ 芦田愛菜 永野芽郁 佐藤健
監督:武内英樹

 

かつて医療従事者を志した者として興味本位でチケット購入。

あらすじ

漆崎日胡(芦田愛菜)は、父の茂(阿部サダヲ)と2人暮らし。日胡の献身的な料理などにも関わらず、茂は不摂生を繰り返す。そんな茂の体内の細胞たちは労働環境の悪さに不平不満を募らせており・・・

ポジティブ・サイド

『 テルマエ・ロマエ 』や『 翔んで埼玉 』で見られた武内監督のコメディとパロディの卓越した感覚は本作でもいかんなく発揮されている。USJやディズニーランド的なキラキラな日胡の体内世界と、大阪の新世界をとことん薄暗くしたような茂の体内世界のコントラストが映える。コレステロールで閉塞した血管が昔の大阪の新世界あたりの薄暗い、チープな飲み屋街に重なって見えたところは笑えた。

 

白血球が繰り広げる各種のバトルや、キラーT細胞やNK細胞との働きの違いの描写もエンタメ作品としては十分に合格。赤血球が道に迷ったり、クッパー細胞に食われるところも笑える。

 

ある意味、一番の見どころは肛門の括約筋と便のせめぎ合い。トレーラーでもガッツリ映っていたのでネタバレでもなんでもないだろう。このシークエンスを下品と思うことなかれ。便意との戦いを経験したことのない人間などいないのだから。ここは大いに笑わせてもらった。

 

終盤のとある治療のシーンの映像表現には唸った。たしかに見方によっては cosmic ray に見えないこともない。着想としては素晴らしいと思う。

 

佐藤健が終始るろうに剣心のセルフ・パロディをしているのも楽しめた。

ネガティブ・サイド

色々と誤解を生みかねない、危うい表現があった。茂が便潜血陽性に対して「ただの痔だ」と返すが、その血が痔のみに由来するのか、それとも消化管からの出血を含むのか、それは詳しく検査しないと分からない。医学部志望の日胡ならそれぐらいの反論はできそうだがそれもなし。中年サラリーマンが便潜血陽性=痔だと勘違いしなければいいのだが。

 

新米赤血球と先輩赤血球のやりとりはユーモラスだったが、痔からの出血(?)と共に大便と運命を共にした赤血球の台詞には???だった。便の色はビリルビンの色で、ビリルビンの材料は分解された赤血球だ。「脾臓送りにされちまう」みたいな台詞も聞こえたが、赤血球は何をどうやっても最後はほとんど便と一緒に流される運命なのだ。

 

白血球が赤血球から酸素を受け取るシーンも、それが実際に体内で起きている反応だと受け取る人間もいるかもしれない。事実を大袈裟にカリカチュアライズするのは構わないが、事実ではないことをカリカチュアライズするのには細心の注意が必要だ。後述するが、本作の製作者はそのあたりを特に意識せず、取材や考証を綿密には行っていない。

 

好中球やキラーT細胞にヘルパーT細胞、NK細胞まで出てくるのに、ある意味で免疫の主役とも言えるB細胞が一切出てこなかったのは何故?B細胞の産生する「抗体」こそ、ワクチン接種を経験した多くの人々に最もなじみ深い生体防御能力ではないか。それとも、抗体=一種のミサイルという比喩を、別の物に使ってしまったために、B細胞の出番をすべてカットしたとでも言うのか。

 

ある治療後に患者が帽子をかぶっている。それはいい。ただ、特徴的な眉毛が全部残っているのには頭を抱えた。剃れとは言わん。メイクで何とかできるし、そうすべき。問題は、監督その他のスタッフがこの病気の患者に取材も何もしていないと感じられるところ。

 

最後にあまり言いたくはないが、邦画のダメなところが出てしまった。病気で死にそうになるとか、そういう安易なプロットはいらない。最初は「お、特発性血小板減少性紫斑病か?」と思ったが、まさか leukimia とは・・・ いや、別にそれならそれでいい、リアリティさえしっかりしていれば。そのリアリティがお粗末だったのは大きな減点材料。

 

総評

コロナ以降、免疫に関する一般の知識は確実に向上している。法改正以降、どこか緩んでいた人々の意識も、最近のインフルやコロナの流行で少し引き締まっているのではないか。そんな時期に封切りとなったのは配給側の周到な読みが当たったと言えるのかもしれない。観終わって自分の体内の細胞たちに思いを馳せるきっかけにするには良い映画。ただし、本作で描かれている内容が科学的・生物学的に概ね正しいとは決して受け取ってはならない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

neutrophil

ニュートロフィル、つまり好中球を指す。cinephile(発音はシネファイル)が映画好きを指すように中性を好むという意味である。白血球には他にも好酸球や好塩基球があるが、一般に感染症に対して働くのは好中球だと思っておいてよい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 レッド・ワン 』
『 ライオン・キング:ムファサ 』
『 I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, コメディ, 佐藤健, 日本, 永野芽郁, 監督:武内英樹, 芦田愛菜, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 阿部サダヲLeave a Comment on 『 はたらく細胞 』 -安易なお涙ちょうだい物語-

『 ザ・フラッシュ 』 -一味違うマルチバース-

Posted on 2023年7月2日 by cool-jupiter

ザ・フラッシュ 65点
2023年6月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:エズラ・ミラー
監督:アンディ・ムスキエティ

 

簡易レビュー。

あらすじ

地上最速ヒーローのフラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)は、幼い頃に殺された母と、無実の罪で囚われの身となっている父を救おうと、時間を超越し、過去に到達する。しかし、その結果として、もう一人の自分がおり、なおかつスーパーマンの存在しない世界が生まれてしまう。そしてゾッド将軍によるテラフォーミングが始まる。ゾッド将軍を止めるために、フラッシュは仲間を集めようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

原作のフラッシュのことはほとんど知らないが、彼も孤児に近いのか。だからこそバットマンと親和性があるのだな、と納得できた。

 

そのバットマン役にまさかのマイケル・キートン。ロバート・パティンソンの『 THE BATMAN ザ・バットマン 』も素晴らしいと感じたが、やっぱり自分にとっての『 バットマン 』の原体験はマイケル・キートンなんだよなあ。

 

フラッシュは超越的な速度だけで、実は戦闘力は高くないので、スーパーガールやバットマンとコラボするのは正解。これも一種のマルチバースものだが、これまでのDCのスーパーヒーローを上手くパロディに昇華させたと思う。

ネガティブ・サイド

『 シャザム! 神々の怒り 』同様に、ワンダーウーマンの出番が少なすぎ。もっとガル・ガドットのワンダーウーマンに出番を!

 

『 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 』にあった、「ロイス・レインが鍵だ!」というシーンは本作には無し。いつになったら伏線が回収されるの?

 

総評

小市民ヒーローにはMCUではスパイダーマンやアントマンがいるが、DCEUではフラッシュぐらいだろう。親しみやすさではMCUのヒーローに全く劣っていない。エズラ・ミラーの代表作となることは間違いない(問題は今後の彼のキャリアだ)。バットマン好きなら、最後の最後に笑うしかないオチがつくので、それを楽しみに鑑賞しても良いだろう。スーパーマン好きにとっても「そのスーパーマンを出しちゃうのかよ?!」というシーンが楽しい。暗いはずだけれど暗くない、『 アクアマン 』の次に楽しいDCヒーローの誕生である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

jabroni

雑魚の意。1990年代後半から2000年代前半のWWEを見ていたなら、今は俳優として名を馳せているドゥウェイン・ジョンソンが相手を小馬鹿にする時に使っていた表現だと知っているかもしれない。日常で使うことはまずないが、プロレスや、たまにボクシングで聞く表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 リバー、流れないでよ 』
『 告白、あるいは完璧な弁護 』
『 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, アメリカ, エズラ・ミラー, コメディ, 監督:アンディ・ムスキエティ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 ザ・フラッシュ 』 -一味違うマルチバース-

『 湯道 』 -もっと銭湯そのものにフォーカスを-

Posted on 2023年3月15日 by cool-jupiter

湯道 55点
2023年3月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:生田斗真 濱田岳 橋本環奈
監督:鈴木雅之

 

温泉や銭湯の愛好家なら要チェックに見える本作。Jovianも風呂は大好きである。したがってチケット購入。

あらすじ

東京で建築家として働く三浦史朗(生田斗真)だが、仕事が来ない。そんな中、父の訃報が入るが、多忙を理由に帰郷もしなかった。しかし、いよいよ実家の銭湯「まるきん温泉」を畳むべきだと考えた史朗は、実家を訪れる。住み込みで働くいづみ(橋本環奈)と弟・悟朗(濱田岳)と出会った史朗は、なりゆきでしばらく銭湯で働くことになり、個性豊かな常連客たちと触れあっていき・・・

ポジティブ・サイド

生田斗真と濱田岳が兄弟に見える。雰囲気が、というよりも見た目が。ヘアドレッサーやメイクアップ・アーティストの方々が素晴らしい仕事をしたのだろう。トレイラーの時点では「この二人が兄弟?」と感じたが、実際に鑑賞して違和感はゼロだった。

 

昭和は昔になりにけりと思うことが多い令和の時代だが、確かに昔の銭湯は男湯と女湯の距離が近かった。Jovianも小さなころはたまに家族で銭湯に行っていたが、そういう時は親父に「もうそろそろ上がるって、お母さんに言うてきて」と言われて、番台前ののれんをくぐって、女湯に入って、伝言していたなあ。育った地域にもよるだろうが、40代以上の世代なら、子供の頃にそうした経験をしたことがある人が多いのではないだろうか。本作はそうしたノスタルジーも呼び起こしてくれる。

 

常連客も多士済済。寺島進や笹野高史はベテラン夫婦の味わい深いやりとりを披露してくれるし、天童よしみは意外な人物とのデュエットを披露、その美声が健在であることを教えてくれる。

 

こうした愉快で人情味あふれる地元の常連たちとの触れ合いと、銭湯をやめさせたい兄と銭湯を続けたい弟の確執のコントラストがドラマのひとつの軸になっている。そこにいづみが絡むことで、深刻なはずの対立が緩和される。いづみは番台に花を活けているが、いづみ自身がしっかりとまるきん温泉の花になっている。

 

本作の表のテーマをそのまま湯道とするなら、裏のテーマは時代に取り残された遺物をどうすべきか、ということになるのだろう。色々な撮影上の制約もあるのだろうが、本作では銭湯に入ろうとする子どもがいない。客はごく一部を除けば、すべて中高年である。つまり、若い世代は昔ながらの銭湯に魅力を感じていないのだ。そして、高齢者ばかりが銭湯で憩う。そうした現状は憂うべきなのか、それとも理の当然と受け入れるべきなのか。

 

ひとつ確かなのは、風呂は入る人間を幸せにするということだ。そして、幸せとは今まで気づくことがなかった小さなことを喜べることがその本質である。トレイラーに出てきた五右衛門風呂には、Jovianも二度ほど入ったことがある。友人の実家の広島の田舎に五右衛門風呂があったのでそこで入った。さらに、大学生時代に寮の裏庭で先輩や同級生たちとドラム缶を調達してきて、そこで入った。広島では貴重な体験をしたぐらいにしか思わなかったが、大学時代に寮の裏庭で五右衛門風呂に浸かった時は確かに気持ち良かった。ただ、次の瞬間に、まさに生田斗真がポツリと呟く台詞と同じことをJovianも感じた。その後の某キャラの教えも印象的。太陽ほど身近な存在はないが、その光に我々は実はどれほど多くを負っているのか。当たり前のことを当たり前と受け取るのではなく、蛇口をひねれば清潔で安全な水が出るということが、どれほど有難いことなのかを思い起こす必要がある。

ネガティブ・サイド

冒頭から刺青入りのヤクザが登場する。尼崎市民のJovian的には杭瀬あたりの銭湯でかつてよく見た光景だが、映画でやることか?ヤクザがかっこいいなどと思う若者が出てこなければいいが・・・

 

映画の根本を否定するように聞こえてしまうかもしれないが、湯道のパートは必要か?日米首脳会談の裏に湯道があったとか言われても、面白くもなんともないし、寒い親父ギャグの連発にも笑えない。風呂に入る時の所作が云々というのも、それを小日向文世が実際に自宅の風呂やまるきん温泉で実践するシーンを見せてくれないと意味がないのでは?撮影しなかった?それとも編集で削った?いずれにせよ『 湯道 』というタイトルながら湯道パートがまったくもって必要であるとは感じられなかった。

 

源泉かけ流し至上主義というのも意味不明。吉田鋼太郎のキャラ自体、必要か?各家庭に風呂がついていることと公衆浴場が存在することは全く矛盾しない。どの家にもキッチンがあるのだから外食産業は無意味だ、と言っているのに等しい。この温泉評論家の先生は完全なる蛇足に感じられたし、この先生抜きでもまるきん温泉の常連客たちと史朗、悟朗、いづみが一致団結できる展開は描けたはず。

 

全体的にもうちょっと銭湯らしさおよび銭湯愛好家の風情を出してほしかったとも思う。役者も忙しいのだろうが、風呂上りで頭をふきふきしているシーンがいくつかあったが、明らかに濡れていない。というか風呂上がりに見えない。もっと入浴後という心も体も温まっているというシーンを視覚的にアピールすべきだった。風呂場のケンカで二人ともずぶ濡れのはずなのに、次の瞬間には完全に乾いているのには苦笑した。

 

総評

鈴木雅之監督の作品としては『 プリンセス・トヨトミ 』に次いで面白い作品。ただし、風呂そのものへのフォーカスという点では『 テルマエ・ロマエ 』の方が優れている。Jovianは「古き良き」という形容があまり好きではないが、銭湯はスーパー銭湯よりも番台のある昭和型の銭湯の方が好きである。我が尼崎は一時期は150以上の銭湯が営業していたが、今では30と少しらしい。近所の昭和温泉には月一程度で通おうと思う。昭和にノスタルジーを感じる中年以上の世代にお勧めしたい映画。もちろん、若い世代の鑑賞も歓迎である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

retirement money

 

読んで字のごとく退職金の意。retireは定年退職するという動詞で、その名詞はretirement。それにmoneyをつければ、そのまま退職金となる。我々の世代は退職金はもらえるのか?もらえても、アホみたいに課税されるのだろうか?

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Winny 』
『 シン・仮面ライダー 』
『 シャザム! 神々の怒り 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, コメディ, ヒューマンドラマ, 日本, 橋本環奈, 濱田岳, 生田斗真, 監督:鈴木雅之, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 湯道 』 -もっと銭湯そのものにフォーカスを-

『 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』 -最後に愛は勝つ-

Posted on 2023年3月8日 by cool-jupiter

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 50点
2023年3月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ミシェル・ヨー キー・ホイ・クァン ステファニー・スー
監督:ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート

繁忙期のため、簡易レビュー。

 

あらすじ

零細コインランドリーを経営するエヴリン(ミシェル・ヨー)は、優しいがあまり働かない夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)、頑固で認知にも問題のある父やガールフレンドとの付き合う娘のジョイ(ステファニー・スー)と共に暮らしていた。税金の控除を申請するために役所に入ったところ、突如、夫のウェイモンドが「自分は別の宇宙から来た」と言い、「多くの宇宙の脅威になっているジョブ・トゥパキを倒してほしい」とエヴリンに頼んできて・・・

 

ポジティブ・サイド

MCUのフィジカルに移動できてしまうマルチバースに比べると、こちらのマルチバースは意識だけが移動する。その移動した先の別の自分から、特技だけを拝借してくるという設定は、どことなく『 マトリックス 』っぽい。

 

アジア人のミシェル・ヨーがカンフーで戦うのも絵面としてはあり。『 グーニーズ 』や『 インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 』をリアルタイムではないが、発売直後のVHSで観ていた世代としては、キー・ホイ・クァンの銀幕への復帰は嬉しい。まるで小学校時代の友人と再会したかのようだ。

 

全編、予想の斜め上を行くコメディ展開で突き進み、最後にホロリとさせてくる。なかなかに味わい深い作品。

 

ネガティブ・サイド

アホなことをするとヴァース・ジャンプするというアイデアは笑えない。『 2001年宇宙の旅 』やら『 スター・ウォーズ 』やらをパクりまくっているが、オマージュに見えない。これらの作品は他世界ではなく、この世界のはるか昔、あるいは未来(といっても今は2023年だが)だからだろう。マルチバースもので描くのはセンスがない。

 

意識が宇宙と宇宙の間をジャンプするのはいい。だが、その意識のジャンプを観測しているアルファ・ヴァースの連中の意識はどこにあるのだろうか?そもそも、ヴァース・ジャンプに必要なイヤホン?ヘッドホン?的なアイテムはどこから来た?意識だけ到来したアルファ・ヴァース人がこっちの世界で大急ぎで作った?そんな馬鹿な。

 

生命が発生できなかった世界にも意識が飛んでいくシーンはシュール。けど、意識が岩に宿るんかな?いや、その世界にあのイヤホン?があるの?わけが分からん。

 

総評

『 スイス・アーミー・マン 』は文句なしに面白かったが、今回のダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビとは波長が合わなかった。昨年からアメリカでの評価が異様に高かったので期待していたが、裏切られた気分である。これがアカデミー賞ノミネートなら『 クレイジー・リッチ! 』もノミネートされていたはず。観賞の際は Don’t get your hopes up. 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

all at once

「一度に」あるいは「突然に」の意味。The students stopped talking all at once. = 生徒たちは一斉に話すのをやめた、のように使う。英検準2級、TOEIC500点レベルぐらいの表現。

 

次に劇症鑑賞したい映画

『 シャイロックの子供たち 』
『 湯道 』
『 少女は卒業しない 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アメリカ, キー・ホイ・クァン, コメディ, ステファニー・スー, ミシェル・ヨー, 監督:ダニエル・クワン, 監督:ダニエル・シャイナート, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』 -最後に愛は勝つ-

『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』 -アイデアの勝利-

Posted on 2022年11月15日 by cool-jupiter

MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 75点
2022年11月15日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:円井わん マキタスポーツ
監督:竹林亮

どこのラノベだと思わせるタイトルだが、これがべらぼうに面白かった。『 カメラを止めるな! 』に迫る低予算のアイデア一発勝負映画の秀作だ。

 

あらすじ

小さな広告代理店に勤める吉川(円井わん)は、大手広告代理店への転職を目指し、職場に泊まり込む毎日を過ごしていた。ある日、二人の後輩から、自分たちが同じ1週間を何度も繰り返していることを知らされる。吉川たちはこのタイムループを原因は永久部長が身に着けているブレスレットにあると睨み、なんとかそれを破壊するための算段を練ろうとするが・・・

ポジティブ・サイド

タイムループものは小説でも映画でも数多くの秀作が生産されてきた。実際に劇中でも『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』や、『 ハッピー・デス・デイ 』、『 恋はデジャ・ブ 』などが言及される。本作も秀作である。

 

まず、タイムループの現場を会社にしたのがユニーク。その会社もかなりハードな様子。ネタなのか事実なのか分からないが、ブラック企業勤務の人が「とうとう iPhone が会社を自宅だと認識し始めた」みたいなことを言うが、まさにそんな会社。これだけで同じサラリーマンとして吉川やその他の面々に大いに感情移入してしまう。

 

本作でもう一つユニークなのが、タイムループに巻き込まれた面々の大半がタイムループに巻き込まれていることに気づいていないこと。そして、気付いた者たちが気付いていない者たちに気付きを促す流れが笑えるのだ。特に本丸である永久部長にタイムループに気付いてもらうために上申制度をそのまま使うところに笑ってしまう。どこまでサラリーマンやねん。異常事態にあっても社畜根性が抜けない。そんな彼ら彼女らの姿を笑いながら、冷や汗をかいている人も多いのではないだろうか。日本人の多くは地震や台風でも出社したがるからなあ・・・

 

閑話休題。本作はコメディでありながら、上質なヒューマンドラマにもなっている。小さな広告代理店で仕事をさばきながら、大きな広告代理店への転職が内定している吉川は、同僚や恋人への接し方に少々問題あり。しかし、そんな彼女がタイムループ脱出のために、部長の抱える問題の解決のために、一致団結して協力していく中で人間として成長していく。

 

毎日が同じ仕事の繰り返しのように感じられる人は多いはず。Jovian自身もそうだった。しかし、そういった閉塞的な状況をどう捉え、どう行動するのか。本作はそこに大きな示唆を与えてくれるという意味で、単なるコメディ以上の作品に仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

開始10分で「ああ、この人が実はキーパーソンやね」とすぐに気づいてしまう。ここをもう少しうまくカバーするような仕組みがあれば、中盤の驚き展開をもっと強烈にできたはず。

 

ずっとほったらかしにしてしまっていた吉川のボーイフレンドは、結局どうなったのだろう。そこも少しで良いのでフォローしてほしかった。

 

総評

サラリーマン的な世界観を提示して、それを笑わせながら、いつの間にやらそのサラリーマン的な世界観に感動させられた。決して万人受けする作品ではないだろうが、刺さる人には刺さること間違いなし。低予算であっても脚本が良ければ勝負できる。有名俳優が出演していなくても、しっかりとした演出ができればキャラにもストーリーにも説得力が生まれる。こうした王道以外の作品が邦画の世界でもっと生み出されてほしい。すまじきものは宮仕えと言うが、サラリーマンは本作を観て、明日への勇気をもらおうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

make it up to someone

誰かに対して埋め合わせをする、の意味。吉川は仕事に忙殺されて、ボーイフレンドを放置してしまい、それに対して電話で「埋め合わせするから」と言う。英語字幕なら、間違いなく I’ll make it up to you. である。この表現を使うということは何らかの穴を開けてしまっているわけで、積極的に使うべきフレーズではないだろう。ただ、人間関係の中でこう言わざるを得ない場面はきっとある。知っておいて損はないはず。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・メニュー 』
『 ザリガニの鳴くところ 』
『 ドント・ウォーリー・ダーリン 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, コメディ, マキタスポーツ, 円井わん, 日本, 監督:竹林亮, 配給会社:パルコLeave a Comment on 『 MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 』 -アイデアの勝利-

『 少林サッカー 』 -突き抜けた馬鹿馬鹿しさ-

Posted on 2022年10月22日 by cool-jupiter

少林サッカー 75点
2022年10月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:チャウ・シンチー
監督:チャウ・シンチー リー・リクチー

大学で教えている教材のユニットの中に The Changing Face of Kung Fu というものがあった。カンフー映画はたくさんあるが、その中でも本作は群を抜いて異彩を放っている。久しぶりに鑑賞せんと、近所のTSUTAYAで借りてきた。

 

あらすじ

かつてはスター選手だったが、八百長を飲んだことから落ちぶれたファン。しかし、少林拳の求道者である青年シン(チャウ・シンチー)と出会い、彼はシンにサッカーを教えることに。シンは少林拳の仲間を集めてチームを結成する。しかし、かつてのファンの因縁の相手であるハンも異能のサッカーチームを率いていて・・・

 

ポジティブ・サイド

拳法それ自体は中国映画、特に香港映画の主要なモチーフ。ブルース・リーにジャッキー・チェン、ドニー・イェンとスターが定期的に生まれてもいる。しかし、本作は拳法とサッカーを混ぜるのだから、言葉の正しい意味でのジャンル・ミックスと言えるだろう。ある意味『 えびボクサー 』や『 ミスターGO! 』に近いのかもしれない。

 

拳法家としてのシンの純朴さが光る。そのため、少林サッカーの馬鹿馬鹿しさが余計に映える。よくこんな大真面目にアホな構図の数々を構想したなと呆れてしまう。これは誉め言葉である。大空翼のドライブシュートか!と思うほどに脚を大きく後ろに反り返した状態から放つスーパーシュート一発でチンピラをのしていくシンに笑わずにはいられようか。

 

シンの仲間の拳法家たちも惜しむことなく笑いを提供してくれる。その一方で、彼らも彼らなりに生活は苦しい。この対比が彼らの快進撃が大きなカタルシスを生む要因になっている。太極拳の達人のムイの変化も見逃せない。醜女から始まって、ジュリアナ系に変身し、最後には坊主に変化する。何をどうやったらこんなプロットを思いつけるのか。

 

チームデビルの面々がアメリカ式のドーピングを使って強化されているのも笑ってしまう。強化されているということにではなく、その強化の見せ方だ。特に長髪ゴールキーパーの守護神ぶりはもはや漫画の領域。ただ、当時はMLBでもど派手なホームラン・ダービーが展開されていて、しかもその多くがステロイド使用者だった。なので、薬を使えば極限までパワーアップできるというアホな設定にも説得力があった時代だった。

 

ブルース・リーのオマージュあり、漫画『 ドラゴンボール 』かと思えるほどの過剰なCG演出ありと、観る者をまったく飽きさせない。22世紀にもカルト映画として鑑賞されていることだろう。

 

ネガティブ・サイド

序盤の展開が少々もたつく。いきなり皆が踊り始めるのは愉快だが、そこは別になくてもいい。皆が心の奥底に封じ込めてしまった夢が、シンたちの活躍によって解き放たれるというのは、別に序盤で示唆しなくてもいい。

 

シンが素でムイの勇気ある告白をスルーするシーンは何度見てもキツイ。ある意味、少林シュートが肉体に与えるダメージ以上に、観る側の精神を削るシーンだ。シンをここまで朴念仁に設定しなくてもよかっただろう。

 

勧善懲悪ものではあるが、悪役であるハンが懲役5年というのは短すぎではないだろうか。

 

総評

コメディの傑作。拳法というのはCGを極力排して、可能な限りレトロな手法で現実的に見せるものだという思い込みを軽々と打ち破ってくれた作品。そう、本作は固定概念をぶち壊してくれるのだ。「拳法を流行させたい」というシンの夢をあっさりと否定するファン。年を取ると夢が見られなくなるが、夢は見ないことには絶対に叶わない。そういう意味で、本作は10年に1回は観た方がいい気がする。本作にインスパイアされて、神韻芸術団の西宮公演のチケットを買ってしまった。単純やね、俺も。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

モウマンタイ

無問題と書いてモウマンタイと読む。ある程度以上の年代なら、ナイナイの岡村の映画『 無問題 』でお馴染みのはず。読んで字のごとく No problem の意味である。タイ語でマイペンライ、韓国語でケンチャナヨーのように、中国旅行をする前に覚えおきたいフレーズ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ドライビング・バニー 』
『 秘密の森の、その向こう 』
『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, コメディ, チャウ・シンチー, 中国, 監督:チャウ・シンチー, 監督:リー・リクチー, 配給会社:ギャガ・コミュニケーションズ, 配給会社:クロックワークス, 香港Leave a Comment on 『 少林サッカー 』 -突き抜けた馬鹿馬鹿しさ-

『 マインド・ゲーム 』 -This Story Has Never Ended-

Posted on 2022年8月24日2022年8月24日 by cool-jupiter

マインド・ゲーム 75点
2022年8月22日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:今田耕司 前田沙耶香 藤井隆
監督:湯浅政明

『 犬王 』以来、ずっと観たいと思っていた本作を、ついに借りることができた。脳が溶けるような映像&物語体験であった。

 

あらすじ

幼なじみにして初恋の相手みょんちゃん(前田沙耶香)に再会した西(今田耕司)は、みょんちゃんの父親の借金の取り立てにきたヤクザに射殺されてしまう。あの世で神に出会った西は、神の言いつけに逆らって、現世に舞い戻るが・・・

 

ポジティブ・サイド

今田耕司の声だけで笑ってしまうが、物語自体も極めてクレイジーとしか言えない。幼馴染にして初恋の相手、中学の時には両想いになれたのに真剣交際に発展せず。あれよあれよという間にみょんは別の男と付き合い始め、cherry pop ・・・ 哀れ、西は漫画家を目指す。

 

20歳にして偶然にみょんと再会する西だが、みょんにはやはり他に男が。しかも婚約者。もうこの時点でヘタレの西に感情移入するしかない。さらにみょんの実家での西の妄想というか、手前勝手な思考回路はまるで『 君が君で君だ 』の尾崎豊(偽物)を思い起こさせる。Jovianはここで西に同化してしまった。自分でも同化している・・・ではなく、どうかしていると思うが、この西の物語を見届けたい、見届けなければならないという気分にさせられた。

 

ビックリするのは、その次の瞬間にあっさりと西が死んでしまうこと。正確には殺されるわけだが、まず殺される直前の緊迫した空気に戦慄させられる一方で、西の殺され方には不謹慎にも笑ってしまう。このテンションのジェットコースター的な上がり下がりが、物語の全編を通じて続いていく。

 

ストーリーは荒唐無稽もいいところだが、これらは全て西の人生観や世界観のメタファーだ。クジラはどう見ても西の胎内回帰願望だろう。母の子宮内で胎児でいることほどストレスフリーな生き方はない。騒音もなく、常にぬるま湯の中。呼吸をする必要もなく、食事を自分で用意する必要もない。しかし、そんな安楽な環境にいつまでもいられるはずはない。人は常に生み出されなければならない。西にもその時が来る。

 

本作のメッセージは、あまりにもストレートだ。死んだ気になれば、いつでも生まれかれるということだ。絵柄も独特、ストーリーも独特、キャラも独特。何もかもが既存のアニメや既存の映画という枠に囚われない、非常に自由な湯浅政明色の演出に染められている。さあ、脳が溶けてしまうようなトリッピーな映像世界を味わおうではないか。

 

ネガティブ・サイド

西とみょんちゃんのセックスシーンは、もっと婉曲的に描けなかったのだろうか。二人の身体が重なり合うところをもっと抽象的に描く方法はあったはず。機関車=ピストン運動のような非常に直接的かつ間接的案、もっと記号的な形で西とみょんのまぐわいを描く方法を湯浅監督には模索してほしかった。

 

ところどころでキャラクターが実写化されるのはノイズに感じた。島木譲二がヤクザの親分とか、笑えるのは笑えるが、それは面白いから笑っているのではなく、「しゃーないな」と思って笑っているのである。

 

総評

なんというか、『 トップガン マーヴェリック 』を鑑賞し続けているせいか、本作を観て “Don’t think. Just do.” という言葉が思い出された。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

kick one’s ass

「しばく」の意。標準語にするなら「ぶん殴る」か。俗説だが、アメリカ人はストリートファイトであっても蹴ることはあまりない。蹴るのは卑怯で、闘うなら拳だろうと思われているらしい。なんにせよ、kick one’s ass を能動態で日常会話で使うことはあまりないはず。実際は I got my ass kicked. = ぼろ負けした、のように受け身で使うことが多いだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2000年代, B Rank, アニメ, コメディ, ファンタジー, 今田耕司, 前田沙耶香, 日本, 監督:湯浅政明, 藤井隆, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 マインド・ゲーム 』 -This Story Has Never Ended-

『 バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー 』 -お下劣な笑いを楽しむべし-

Posted on 2022年7月28日 by cool-jupiter

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー 75点
2022年7月24日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:フィリップ・ラショー ジュリアン・アルッティ エロディ・フォンタン
監督:フィリップ・ラショー

 

大学でコロナ激増で超多忙のため簡易レビュー。

あらすじ

売れない役者セドリック(フィリップ・ラショー)はバッドモービルに乗って宿敵ピエロと戦うという『 バッドマン 』という映画の主役の座を手にする。しかし撮影の最中、父親が入院したと聞いたセドリックはバッドモービルで病院に急行するが、その途中で事故を起こしてしまう。意識を取り戻したセドリックは、自分をスーパーヒーローだと思い込んでしまい・・・

ポジティブ・サイド

原題は Super-héros malgré lui、英語では Superhero in spite of himself = 「知らないうちにスーパーヒーロー」の意味。in spite of oneself で「我知らず」や「気付かぬうちに」という意味である。

 

『 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション 』のフィリップ・ラショーによる主演兼監督作。MCUからDCEUまで、あらゆるヒーローのコスチューム、テーマ音楽、ガジェットをパロってパロってパロりまくっている。Jovianhは『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』以降のMarvel映画は出涸らしのようだと感じているが、ここまであっけらかんとしたパロディを見せつけられると、まだまだヒーロー映画にも鉱脈はあるのだなと感じる。

 

至って真面目にスーパーヒーローであろうとするセドリックと、そのセドリックを救おうとする家族や友人の面々、そして本作のヴィランが織り成すドラマが、フランス流の容赦のないお下劣ユーモアと共にどんどん進行していく。邦画の関係者は是非ともこのテンポの良さを学んでほしい。そして、漫画や小説を忠実に映像化するのではなく、フィクションであるスーパーヒーロー映画をさらにフィクション化するというメタ的な物語の技法についても考察してほしい。

 

そうそう、本作は記憶喪失ものでもある。冒頭から中盤こそ面白いが、終盤で大コケする確率が98%というジャンルでもある。本作は2%に属する作品、つまり主人公の記憶喪失が見事に物語の結末に結びついている。主演・監督のみならず脚本にも名を連ねるフィリップ・ラショーの面目躍如たる一作である。

ネガティブ・サイド

お下劣、お下品なジョークが満載だが、とある子どもが〇〇されるシーンは笑えなかった。セドリックの暴走を無理やり軌道修正した形だが、もっと別の方法や演出があったのではと思う。

 

スマホのテキストメッセージのネタは、いくらなんでもその至近距離では成立しないだろうと思わされた。文字通りの意味で距離感がめちゃくちゃだった。

 

総評

粗製濫造の感のあるヒーロー映画だが、メタ的なパロディという可能性を残していた。アホな映画であることは観る前から分かっている。なので、問題はそのアホさ加減をどれくらい許容できるかによる。高校生や大学生のカップルがデートムービーにするには不適だろう。社会人、それもちょっとマンネリ気味になってきているカップルに向いていると感じる。???と感じる向きはぜひ鑑賞されたし。鑑賞後に、その意味が分かるだろう。

 

Jovian先生のワンポイントフランス語レッスン

égalité

エガリテと読む。意味は平等や対等である。テニスファンなら、全仏オープンの中継でデュースの時にアンパイアが「エガリテ」と言っているのを耳にしたことがあるはず。英語学習上級者なら egalitarianism =平等主義という語彙を知っているかもしれない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, エロディ・フォンタン, コメディ, ジュリアン・アルッティ, フィリップ・ラショー, フランス, ベルギー, 監督:フィリップ・ラショー, 配給会社:アルバトロス・フィルムLeave a Comment on 『 バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー 』 -お下劣な笑いを楽しむべし-

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