にほんブログ村
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
inversion
「逆行」や「反転」の意。動詞はinvert、「逆向きにする」、「反対向きにする」の意。『 トップガン 』の冒頭でマーヴェリックがソ連のミグ戦闘機に接近した方法は inverted dive だった。invertの仲間のavert=回避する、convert=転換する、なども併せて覚えておきたい。
総評
二回観ることを前提に作られていると言われているが、この手の構造に慣れている人なら1度の鑑賞で充分かもしれない。ただし、鵜の目鷹の目でそこかしこに挿入されるオブジェやガジェットに目を光らせる癖を持っていなければならないが。9割がた席の埋まったTOHOシネマズなんばでは終映後、劇場に明かりが灯った途端に誰もかれもが「難しかった」、「意味わからん」を連発していた。本作を鑑賞するにあたっての心得は、細部に目を光らせながらも常に全体を考えよ、終盤の展開を思い描きながら必ず序盤を思い出せ、である。楽しんでほしい。
ネガティブ・サイド
エンドクレジットにキップ・ソーンの名前が観られたが、科学的・物理学的に説明がつかない描写もかなり多く観られる。たとえば、序盤に主人公が銃弾を逆行させるシーン。普通に考えれば《撃った》瞬間に手に凍傷を負うはずだ。ガソリンの爆発で低体温症になる世界なのだから、銃弾が的に命中する時の衝撃=変換された熱エネルギーがすべて銃弾に返ってくるのだから。また、逆行世界では光の粒子も逆に進む、つまり常に網膜から光子が離れていっているわけで、何も見えないか、あるいは網膜剥離の時の光視症(目の前にいきなりチカチカした光が現れる。目をつぶっていてもそれが見える)のような状態になるはずだ。また、空飛ぶカモメの声がドップラー現象的に聞こえてくるが、これもおかしい。カモメの声と姿が同時に認識できていたが、実際は音がはるかに先に届いて(正確には鼓膜から音が逆反射されて)、それが音速(毎秒300m以上)で鳥の方に返っていく。なのでカモメの逆回しの鳴き声が聞こえたら、数百メートル以上離れたところに鳥が視認できなければおかしい。
スタルスク12の大規模戦闘シーンで敵の姿がほとんど見えないのも不満である。銃撃戦も良いが、我々が本当に観たかったのは、大人数vs大人数での時間の順行・逆行の入り乱れる近接格闘戦だった。ノーランをしても、それを撮り切れなかったのかと少し残念な気持ちである。
悪役であるセイターの背景にも少々興ざめした。世界が絶賛しJovianが酷評している『 ソウ 』のジグソウか、お前は。もっと魅力ある悪役が設定できていれば、主人公がもっと輝いたはず。その主人公の相棒ニールも、どうしても『 ターミネーター 』のカイル・リースと重なって見えてしまう。RoundなキャラクターとFlatなキャラクターの差が激しい。視覚効果はノーラン作品の中でも随一だが、キャラの造形は今一つであると言わざるを得ない。
ポジティブ・サイド
本人は至って真面目でいながらも傍から見るとコミカルでユーモラスだった『 ブラック・クランズマン 』とは一転して、ジョン・デビッド・ワシントンは非常にシリアスなエージェントを好演した。アクションも緻密にして派手。序盤の時間を逆行する男との目も眩むような格闘戦と、中盤の用心棒たちとの肉弾戦からは黒ヒョウのしなやかさと力強さが感じられた。
ヒロイン的な位置づけのキャットも素晴らしい。『 ブレス あの波の向こうへ 』のつかみどころのない美女が、夫に虐げられながらも、凛とした美貌と母としての本能を失わない女性像をリアルに構築した。彼女の序盤のとあるセリフは終盤の展開への大いなる布石になっている。より正確に言えば、本作は序盤の展開が終盤の展開と不思議なフラクタル構造を成している。細部が全体なのである。Jovianのこの捉え方がノーラン監督の意図したものかどうかは分からないが、少なくとも的外れではないはずだ。時間の逆行・逆転現象が頻発する本作において、キャットはある意味で観客にとっての道しるべである。能動的に動いているキャットは常に順行である。『 インセプション 』ではマイケル・ケインが存在するシーンが現実だと言われているが、それと同じだと思えばよい。
一番の見どころは時間の逆行シーンである。トレイラーでも散々流されているが、高速道路のカーチェイスシーンや、最終盤のスタルスク12の大規模戦闘シーンは、初見殺しである。これを一度で理解できるのは天才か変人だろう。だが、予測不能、理解不能、解釈不能なシークエンスの数々を楽しむことはできる。特に、とある建造物の下部が修復、上部が爆発するシーンには痺れた。ブルース・リーではないが、まさに「考えるな、感じろ」である。そうそう、劇中でも序盤に似たようなセリフが出てくる。深く考えてはいけない。主人公が味わう混乱に素直に没入するのが初回の正しい鑑賞法だ。
とはいえ、鑑賞中にも「ああ、なるほど」と思わせてくれるカメラアングルが特に序盤に多くある。したがって自信のある人やノーランの作風に慣れている人であれば、初回鑑賞でもある程度は驚きと納得の両方をリアルタイムに味わえるようにフェアに作られている。
以下、微妙にネタバレになりかねないが、本作の構成(≠物語)の理解の助けになりそうな先行作品を紹介しておく。
ジェームズ・P・ホーガンの小説『 星を継ぐもの 』
ジェームズ・P・ホーガンの小説『 巨人たちの星 』
ジェームズ・P・ホーガンの小説『 Mission to Minerva 』(2020年9月19日時点で日本語翻訳なし)
高畑京一郎の小説『 タイム・リープ あしたはきのう 』
特に『 星を継ぐもの 』のプロローグとエピローグ、『 巨人たちの星 』の序盤と終盤のつなぎ方は、「ノーラン監督はホーガンのこれらの作品の構成をそのままパクったのでは?」と思えるほどである。興味のある向きは読んでみるべし。
あらすじ
男(ジョン・デビッド・ワシントン)はとあるテロ事件鎮圧後、テロリストに捕らえられ拷問を受けていた。隙を見て服毒自殺した彼は、ある組織の元で目覚める。そして、時間を逆行する弾丸を教えられる。未来で生まれた技術のようだが、いつ、誰がどうやって開発したのかは謎。それを探り、第三次世界大戦を防ぐというミッションに男は乗り出すことになり・・・
TENET テネット 70点
2020年9月19日 TOHOシネマズなんばにてMX4Dで鑑賞
出演:ジョン・デビッド・ワシントン ロバート・パティンソン エリザベス・デビッキ ケネス・ブラナー
監督:クリストファー・ノーラン
間違いなく現代の巨匠のひとりであるクリストファー・ノーラン、その最新作である。自身の初期作品『 メメント 』に、『 ぼくは明日、昨日のきみとデートする 』を混ぜ込んだような時間逆行系の難解映画であった。
序盤の銃弾に関しては弾丸の持つ運動エネルギーは発射時のものなので順行で撃った時も同じエネルギーを発射体は受け止めているので問題ないはずです、極端な話銃を構えた人の銃身目掛けて正確に発射時と同じ初速で向きも逆さまに弾丸を撃ち込んでも平気で受け止めれる感じです。
発射時の低温についても1秒に70発も打てるような銃なら銃身が極低温までいくかもしれませんがグリップまでは熱があまり伝わらない構造になっているのでおそらく少しひんやりする程度だと思います、
視覚に関してですがこれは、説明が難しいのですが多分これ見えます。光子は逆光してますが網膜には通過した痕跡は自分同士の格闘でついた傷が格闘前に現れ始めたように網膜を逆行した光子も同じく直前に傷をつけれます、弾丸(光子)が予め壁(網膜)に埋まっているのと同じですこれを脳が受け取り視覚化するわけですが見えるは見えると思いますがそれだと記憶システムも外傷で痕跡なので逆行の主観では時系列が順行になって、、知恵熱出てきてブラックアウト寸前です
skinjob様 - 今の今までコメントに気が付かず申し訳ありません。Wordpressはとにかくスパムコメントが多いのです・・・
ご教授ありがとうございます。『 TENET テネット 』のBlu rayを購入もしくはレンタルできるようになっているので、機会があれば再鑑賞してみたいと思います。
Jovian
大きな所で、テネットの組織? は主人公が将来作るとして、
映画での時間に組織が存在している。と言う事はニールだけでなく
複数人を10年以上逆行させた?映画物語の時間以前に研究所やら
も準備したわけで。そんな人数を10年以上も逆行させた。
で、時間逆行の装置、は主人公が生きている時間内に開発出来たという事?セイターが作ったやつからコピーした?
主人公が映画の後に組織作り、逆行装置もコピーなりで開発し、
大人数を逆行させたとしても、未来人云々の話は主人公が将来で
説明したとすると、最初は何処からの情報?ここでパラドックスが
起きてる。映画の中だけで思考すれば辻褄合わせ得るが、、、土台が
おかしいので全く面白くなかった
真実マンさん - コメントありがとうございます。レンタルされるようになったので、近々再鑑賞したいと思っているところです。
本作で一番謎なのは、結局のところ逆行でやって来たニールなんですよね。10年後の未来からやって来るにしても、従来のタイムマシンとはまったく異なり、10年かけて過去にやって来たということですからね・・・
ただ私は『 ブレードランナー 』を最初の視聴から30年のスパンで4回観て、自分なりに理解して消化して評価できるようになった経験がありますから、本作も同じように10年20年経ってようやく理解できるのかもしれないと感じています。
Jovian
逆行中でも通信が普通に出来るのもなんか違和感がありました。
普通に考えて電磁波も逆行しているはずなので
匿名さん - そうなんですよね、人間の思考回路である脳も電気信号で動いているので、あの逆行世界での意識って、どうなっているのでしょうね。
物理学のことはよくわかりませんが、反物質の人間が順行世界にいるときでも、量子レベルでは逆にならなくても矛盾していないそうです。
光も電波も重力も量子レベルですから、逆にならなくてもいいみたいです。
この映画で明らかに矛盾しているのは、反物質の人間は、順行の自分に触れていはいけないという設定になっていますが、順行の自分だけでなく空気に触れただけでも対消滅してしまわないといけません。
でもそれを認めると映画にならないので、その点のみは矛盾を承知で映画化しているのだと思います。
goody-takaさん - 私も独学でリサーチをしてみたのですが、これは「量子を擬人化したストーリー」だとする物理学者の解説がありました。キャラクターたち一人ひとりが量子という超微粒子の一つひとつだと見なしうるという説です。
ただ、色々な人が色々な解説をしている中でも、時間の順行=エントロピーの増大、時間の逆行=エントロピーの減少で、本作で逆行しているのは時間ではなくエントロピー云々というのは分かったようで分からない解説です。
この映画の真価が本当に分かるのは、タイムトラベルもしくは量子論がさらに進展したときなのかもしれませんね。
Jovian
そうですね。人間をすべて反物質化するのがあの逆行マシーンなのでしょう。
最初の逆行銃のシーンではエントロピーのことを言っていたのですが、あの逆行マシーンはエントロピーと関係なさそうです。
逆行マシーンは普通の物質を反物質に変える機械のようです。
その説明が、以下の動画にあります。これを見てなるほどーと思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=jhk7N0ZHuU0
goody-takaさん - 返信が上手くできておらず申し訳ありません。
興味深い動画をご紹介いただき、ありがとうございます。
量子のふるまいを擬人化して映画化しているのですね。
関連のインターステラーの解説も面白そうなので、観てみます。
Jovian
エントロピーは時間とセットで考えます。
なのであの機械はエントロピーを減少させる機械です。
量子物理的な説明をするとエントロピーとは状態の複雑さです。
現在より過去の方が、状態も情報も少なく、
エントロピーは小さいのです。
反物質とはこの次元には存在しません。
反 ですから
テネット をみましたが、矛盾はないと思われます。
そもそも過去への行き方(逆行方法)がタイムワープではなく、テープの逆再生方式なので、矛盾の生じようがありません。一つのレールの上を前後しているだけですので。
以下私の考えを回答します。
ブログ文:普通に考えれば《撃った》瞬間に手に凍傷を負うはずだ。
→銃を撃っても火傷しません。それに銃自体は順行の普通の銃です。
おそらく薬莢はキンキンに冷えています。
ブログ文:逆行世界では網膜剥離の時の光視症のような状態になるはずだ。
→量子物理学には光速度不変の定理があります。なので高速は常に高速、
時空とは分離して考えます。重力も同様です。この辺りは物理の基本となる
4つの力で説明できます。
ブログ文:カモメの声がドップラー現象的に聞こえてくるがおかしい。
→順行世界でも同時に確認できます。なぜなら脳が聴覚と視覚のラグを補正するからです。
SICISさん - こんばんは、cool-jupiterことJovianです。コメントをありがとうございます。
本作は再鑑賞しようと思いながら多忙を理由に引き伸ばしてしまっております。日本語でも英語でも様々な矛盾の指摘やそうではないという反論解説なども錯綜しており、本当に難しい作品なのだなと思います。今は本業が繁忙期なので、8月ぐらいに再鑑賞をしてみたいと思います。
TENET非常に面白い映画でした。私が見てきた今までの映画と違って、時間を逆行していくという映像表現は童心に帰らせてくれる物でした。
気になるおかしな事象がありましたが、映画を見ている時はそれを感じさせない展開であり自宅で見たのですが圧倒されました。
監督には、続編を是非とも続きを撮ってもらいたいですね!
個人的には、音楽も特徴的で素晴らしかったので次回見る機会があればそこもレビューしても面白いかもしれませんね。
RRさん - こんにちは、コメントをありがとうございます。今まさにレンタルしてきて再視聴しています。行ったり来たりしながらなので、なかなか時間がかかっていますが、再度レビューをしてみたいと思います。サントラは確かに金属的な感じがストーリーにも映像にもマッチしている感じがします。