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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 リバーズ・エッジ 』 -生の実感を得ようともがく青春群像劇-

Posted on 2020年1月3日 by cool-jupiter

リバーズ・エッジ 65点
2019年1月3日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:吉沢亮 二階堂ふみ 森川葵
監督:行定勲

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200103202714j:plain

 

2018年に劇場で見逃してしまった作品。決して二階堂ふみのヌード目当てではない。『 チワワちゃん 』原作者の岡崎京子の作品であるということに惹かれたのである。

 

あらすじ

若草ハルナ(二階堂ふみ)は、いじめられっ子の山田一郎(吉沢亮)をひょんなことから助ける。そのお礼に山田の宝物である、川原の死体を見せてもらうことになる。そこから、闇を抱える高校生たちの物語は徐々に暗転し・・・

 

ポジティブ・サイド

『 ママレード・ボーイ 』、『 BLEACH  』、『 あのコの、トリコ。 』という、2018年の邦画20点トリオの全てに出演してしまった吉沢の、これはベスト(当時)である。吉沢のキャリアハイは『 キングダム 』だと思うが、本作はそれに次ぐパフォーマンスである。無表情で、ぶっきらぼうな口調で話す。そして基本的に他者と目を合わさない。そのことが終盤のあるカットで大きな効果をもたらす。

 

時折映し出される工場廃水や煙、オゾン層破壊のニュース、そして携帯電話が普及している気配がないところから、舞台は1990年代の半ばだろうか。当時の空気では、同性愛は個性ではなく疾患、障害(敢えてこの字を使う)、異常と考えられていたように思う。そして、いじめによって中学生がどんどんと自殺をしていた時代でもあった。TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン 』もこの頃だったか。本作に登場する若者達は皆、リビドーとデストルドーの狭間にたゆたう、とても儚い存在だ。そのことは随所に挿入されるドキュメンタリー風のインタビューで問われる、「生きていることの実感はあるか?」との問いに対する応答に、ぼんやりと表れている。「生きる」という行為もしくは状態は、心臓が動いているだとか呼吸をしているという生理現象とイコールではない。仕事で疲れ切っている時、ひとっ風呂した後のビールで「生き返ったような気分」になる、そういった体験が「生きる」ということである(高校生に飲酒を推奨しているわけではない、念のため)。その意味では、死体=宝物と認識する若者3人の奇妙な絆には、妙な説得力がある。

 

全編これ、キラキラとまばゆい青春映画とは全く違う、ドロドロのドラマの連続である。だが、それもまた青春の一つの形だろう。アスペクト比4:3の映像が、古さを思い起こさせる。ちょうどDVDレコーダーの出始めの頃、VHSをDVDに移したりしていたことを思い出した。エンディングのポエムのシーンはフルサイズである。つまり、生きづらさは過去だけではなく現在にもある、普遍的なサムシングなのですよというのが行定監督と岡崎京子のメッセージなのだろう。Jovianはその見解に賛成である。

 

ネガティブ・サイド

残念ながら主要な登場人物のほとんどが高校生に見えない。『 THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法 』ではメイ・ホイットマンがアラサーにして女子高生を演じたが、彼女はかなりの幼児体型なのでそれなりに説得力があった。だが小山ルミを演じた土居志央梨に高校生を演じさせるのは無理がある。彼女は悪い役者ではないが、制服を着て学校にいるだけで、とてつもない異物感を放っている。もちろん、多様なセックスシーンやフェラチオシーンなどを未成年に演じさせるのは難しいだろうが、『 惡の華 』における秋田汐梨のような素材は探せば見つかったのではないだろうか。本作のテーマの一部は、セックスでしか陳腐な承認欲求を満たせない若者の存在である。だからといって、セックス描写に力を入れる必要はない。いかに薄っぺらいセックスをしているのかを伝えるだけで充分で、必ずしもそれを見せる必要はなかった。極端な話、脱ぐのは二階堂ふみだけで良かった。

 

また、その二階堂ふみは煙草を吸い過ぎである。いや、それは構わない。Jovianもかつては喫煙者だった。だが、一度高校生の時に自室のゴミ箱をかなり焦がしてしまい、父親にしこたま怒られた。当たり前である。それ以来、止めはしなかったものの、煙草が怖くなったものだ。そのため、煙草の火の不始末をしでかしたハルナが、煙草をポイ捨てしまくるのには、かなりの嫌悪感を抱いた。

 

総評

暗い青春を送った人にお勧めである。というのは冗談で、若者よりも、むしろ青年や壮年が我が身の青春を振り返ってあれこれ考えるのに適している気がする。雨の日の室内デートにはあまり向いていないので、高校生や大学生カップルは注意されたし。逆に1990年代に高校生だったという層には刺さるだろう。Jovianには一部チクリと刺さった。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You’re annoying.

一郎がガールフレンドの田島に「うるさいなあ!」と切れる時の言葉である。うるさい=noisyなどと短絡的に結び付けてはいけない。ここでは、うるさい=ウザい、である。そして、ウザい=annoyingである。Annoyingはかなり強い不快感を表明する言葉なので、使用する際には注意が必要である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 二階堂ふみ, 吉沢亮, 日本, 森川葵, 監督:行定勲, 配給会社:キノフィルムズ

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