トップガン マーヴェリック 90点
2022年6月25日 TOHOシネマズなんばにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー
『 トップガン マーヴェリック 』の感想で「なぜ4DXやMX4D上映は日本語吹き替えばかりなのか。航空業界の Lingua Franca は英語と決まっているのだが」と書いたところ、6月中旬から字幕版でも4DXやMX4Dが楽しめるようになった。言ってみるものである。
あらすじ
マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・
ポジティブ・サイド
冒頭、”Danger Zone” と共に空母から艦載機がどんどん発艦していくシーンから、浮遊感を存分に味わえたし、KAWASAKIのバイクの疾走感も感じられた。マーヴェリックとひよっこ連中との模擬空戦や、trench run や popping up のトレーニングなどでも Four Dimensional な感覚を与えてくれる4DXは本作との相性が特に良かったと感じる。映画の世界ではカーアクションがお馴染みだが、あれは二次元機動。飛行機、特に戦闘機のように高速で激しく三次元機動するような映画は数少ないが、そうした作品は今後も4DXやMX4Dで公開してほしい。
一部でミュージックビデオを揶揄された前作『 トップガン 』であるが、本作は前作へのオマージュをふんだんに取り込んでいる。前作で二度聞かれた “Take me to bed, or lose me forever.” =「ベッドに連れて行って、そうじゃないとあなたとは永遠にお別れよ」と対を成すかのように、マーヴェリックがアイスマンに “I could lose him forever.” =ルースターを永遠に失ってしまうかもしれない、と吐露するシーンは素晴らしかった。ビーチバレーとビーチアメフトの対比は目立つが、もっとさり気ないところで前作へのオマージュを示している点が非常に好ましい。
他にもハングマンがバーでルースターに突っかかっていくシーンで “I love this song!” =「この曲、最高だな!」と言い放つ時にかかっているのが “Slow Ride” で、これがそのままルースターの慎重な姿勢、さらにトレーニングでもスローペースで飛んでしまうことの伏線になっていた。
劇場はかなりの入りで、20代くらいのカップルが目立った。デートムービーとして重宝されているということだろう。時間とお金に余裕があれば、一度は本作を4Dで鑑賞されたし。
ネガティブ・サイド
戸田奈津子氏の字幕翻訳にはやはりいくつか疑問が残る。
ハングマンの言う “In this mission, a man flies like Maverick or a man doesn’t come back. No offense intended.” =「このミッションでは、マーヴェリックのように飛ぶ男じゃないと生還できない。(フェニックスを見ながら)悪気があって言ったわけじゃない」というのが本当のところ。字幕では No offense intended = 「偉そうかな」になっていた。ハングマンは、ウォーロックがマーヴェリックを紹介する前に “the best men and women …” と言ったところでもフェニックスをちらりと見て「女は一人だけなのに、women だってよ」みたいな目つきをしていた。そういったところを踏まえて、No offense intended はもっと直截的に「おっと、女性もいたっけ」のような皮肉にすべきだった。
ルースターの言う ”Talk to me, dad.” =「助けて、父さん」という訳もいかがなものか。もっとマーヴェリックに合わせて「やるぞ、父さん」とか思いっきり意訳して「父さんの声が聞こえた」とかでも良かったのでは?
総評
アースシネマズ姫路で視野270度の3面マルチプロジェクション上映を行っているが、吹き替えらしい。何故だ?航空業界の Lingua Franca は英語と相場が決まっている。尼崎市民のJovianは姫路に赴くのにやぶさかではない。劇場や配給会社の賢明なる判断を期待したい。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
level the playing field
「競技場を平らにする」というのが直訳だが、実際の意味は「競争の条件が等しくなる」ということ。
YouTube has leveled the playing field for all the video creators.
ユーチューブによって、すべての動画制作者は等しい条件で勝負できるようになった。
のような使い方をする。
現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。
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重箱の隅つつきのようで申し訳ないのですが、女性パイロットはフェニックスだけでなく、もう一人モブキャラにいますね。アジア系っぽい感じの。
貴殿のおっしゃることには同意します。
若造をコテンパンにするシーンにて、「やあ飛行士諸君、こちら大佐」的な訳になってましたが、個人的には、「ごきげんよう、飛行士の皆さん、こちらは機長です」というジョークだと思うのです。いかがでしょうか?
ハングマンの、「こちら救世主~~~着陸に備えてください」もそれにかけたジョークかなと。
通りすがりのチコちゃん様 - はじめまして。確かにバーに続々とトップガン卒業生が現れる中に、どこかの大学の名前みたいなコールサインの女性パイロットがいましたね。
マーヴェリックの “Good morning, aviators. This is your captain speaking.” の後半部分は飛行機の機長が必ずあいさつ冒頭で言うセリフですね。あれは「君たちは飛行機を飛ばしているのではなく、飛行機に乗っているだけだよ」というマーヴェリック流の諧謔なのでしょうね。
最後に颯爽と現れてピンチを救ってくれるハングマンのセリフも、ハングマン流の意趣返しなのでしょう。字幕を付けるというのは非常に難しい仕事です。
返信いただきありがとうございます。
やはり機長をかけたジョークですよね。そのアメリカンジョークのセンスがとても好きです。
字幕を付けることについては、あちらの文化も知っていないとわからないでしょうから、なかなか難しいところです。しかしまあ、ちょっとお粗末でしたね。
映画.COMにて私レビューを投稿してますので、もしよろしければご笑覧ください。
https://eiga.com/movie/91554/review/02841783/
通りすがりのチコちゃん様 - 字幕翻訳というのは、どうしても一回に表示できる文字数の制限があって難しいです。ただ、そこをどうにかするのがプロですね。私は本職が英語教育のなので、どうしても変な字幕が気になってしまいます。
映画.com、観てきました。私もごくごく短いコメントをさせていただきました。
昔、Ace Combatというゲームにはまっていたのですが、私のミリタリー系の知識はゲームに出てくる兵器やその関連情報程度です。この夏にもう一度、本作を(できればIMAXで)鑑賞予定ですので、その時にでもまたお立ち寄りください。