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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』 -壮大なリセット&リビルド作品-

Posted on 2021年5月3日 by cool-jupiter

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 70点
2021年4月27日 Amazon Prime VideoおよびDVDにて鑑賞
出演:緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂本真綾
監督:摩砂雪 鶴巻和哉 前田真宏
総監督:庵野秀明

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『 シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 』の再鑑賞前にテレビアニメ版をレンタルしてみたり、旧劇を観直したり、ちょっと別の本を読んだりしているうちに緊急事態宣言。間の悪さを嘆くべきか、政府の無能さを恨むべきか。

 

あらすじ

碇シンジ(緒方恵美)は今やヴィレに属すミサトらやアスカ(宮村優子)によって衛星軌道上からサルベージされる。そして、ヴィレが戦艦ヴンダーを拠点に碇ゲンドウ率いるNERVと戦っていることを知る。その原因が、自身が14年前に引き起こしたニア・サード・インパクトにあると知らされて・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭のスタジオ・ジブリ presents な感じ満々の、いわゆる「火の七日間」のエピソードが怖い。というか心憎い。これまでのいかなる作品でも直接的に描かれることのなかったファースト・インパクトやセカンド・インパクトだったが、このニアサーを間接的かつ変則的に描くのは前世紀と新世紀をつなぐ意味でも効果的だったと思う。『 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 』でも述べた通り、エヴァは前世紀末の破滅思想、終末思想の色濃い世界の産物だった。『 風の谷ナウシカ 』の巨神兵が、現実世界に突如到来するスキットは最高のイントロダクションであると感じた。

 

その後のアスカとマリによる宇宙空間での初号機回収作戦も一大スペクタクル。目の前で繰り広げられる作戦行動が何であるのかを考える暇もなく、進化したアニメーション技術がふんだんに盛り込まれたシークエンスが展開される。そしてアスカによって言及されるシンジの名前。物語作成の文法通りだが、このあたりの盛り上げ方は非常に巧みである。

 

その後に明かされる14年間の真実。カヲル君によるテレビアニメ版と同じ、語りながらも説明はせず、相手に悟らせるスタイルは、通常ならイライラさせられるのかもしれないが、エヴァの世界観とキャラ設定においてはうまく機能している。畢竟、エヴァを観るということは、謎や神秘に触れたいという自分の内なる欲求に応えることなのだろう。劇場鑑賞したとき、そして今回DVDで再鑑賞しても、正直に言って物語そのものの意味は100%は理解できていない。しかし、何か世界の奥深いところに触れているという感覚(錯覚)だけは、1995年から今まで継続している。これは凄いことだと素直に思う。

 

シンジとアスカによるエヴァ同士のバトルは、使徒相手のそれとは違い、どちらに感情移入するのかが難しい。というよりも、どちらにも感情移入したくなる。最後は人間同士の、しかも実は志を同じくする者同士が已むに已まれず戦うというのは、それこそ漫画『 聖闘士星矢 』などでおなじみの展開。それでも手に汗握ってしまうのだから、この手法が強力なのか、庵野の作劇術が巧みなのか、それとも自分が単純だからなのか。おそらく全部だろう。謎解き考察に興味のある向きにはどう映るのかわからないが、エヴァの世界観は忠実に継承されていると言える。

 

ところで、副題の「急」がQである意味は何なのだろうか?最初は急=QuickまたはQuickeningかなと思ったが、あまりにもひねりがなさすぎると感じた。QuestionやQuestの意味も込められているのだろうか。これについてご教授いただける方がいれば、ありがたいです。

 

ネガティブ・サイド

本作を単体で観ると「力を入れるのはそこじゃないだろう」と指摘したくなる。一番そう思わせるのはヴンダーのコクピット内の描写。そこは凝らなくていい、ヱヴァンゲリヲンそのものやキャラクター描写を充実させてくれ。物語を長く続けていくと、どんなクリエイターにもこの傾向が出てくる。漫画『 ベルセルク 』の三浦建太郎しかり。

 

ヴィレ側のキャラの言動に腑に落ちない点が多い。頑なにシンジに「エヴァにだけは乗るな」と言うが、だったら優しく真実を教えてやってもよいのではないか。それに『 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 』ではミサトさんはシンジに「あなた自身のために行きなさい」と言って、背中を押したではないか。その結果としてのニア・サード・インパクトをすべてシンジに押し付けるのはいかがなものか。

 

完全に野暮な突っ込みだとわかっていて言うが、冬月がシンジに「将棋を打てるか?」と尋ねるのは本当に勘弁してほしい。囲碁=打つ、将棋=指す。将棋で打つのは持ち駒だけだ。駒落ちにしても飛車角桂香ならまだしも、飛車角金を落とすとはこれいかに。また、シンジが指した直後に「31手後に詰みだ」と宣告するが、これが本当なら藤井聡太以上の終盤力の持ち主と言うしかない。当時は藤井はまだプロではないから、前世紀の・・・ではなく全盛期の谷川浩司以上か。将棋ファンとしては突っ込みどころ満載の謎シーンだった。スタッフに将棋ファンはゼロだったのだろうか。

 

総評

ものすごい勢いで観るものを物語世界に取り込んでくる作品である。一方で、おそろしいまでに初見殺しでもある。まあ、本作がエヴァ初体験という人はまずいないだろうが、それでもエヴァを長年追い続けた人でも、本作でかなりの数がふるいにかけられたと観て間違いない。それでも『 シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 』公開時の観客の入りを観ていると「逃げちゃダメだ」と食らいついてくるファン、そして若い世代も多いことに気づいた。そうした意味では、本作は最もエヴァらしいエヴァと評しても良いのではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

think ~ moves ahead

将棋、チェスなどをたしなむ人ぐらいしか使わない表現だろうが、そうした愛棋家のためにも紹介しておきたい。「〇手先を読む」の意味である。将棋界には3手の読みという言葉があるが、3手先を読む=think three moves aheadと言う。5手先を読むなら think five moves ahead である。また3手詰めの詰将棋は、a 3-move checkmate prolemと言う。将棋好きなら知っておきたい。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, SF, アニメ, 坂本真綾, 宮村優子, 日本, 林原めぐみ, 監督:前田真宏, 監督:摩砂雪, 監督:鶴巻和哉, 総監督:庵野秀明, 緒方恵美, 配給会社:カラー, 配給会社:ティ・ジョイ

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