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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 ムーラン 戦場の花 』 -中国映画は洗練の途上-

Posted on 2021年5月2日 by cool-jupiter

ムーラン 美しき英雄 40点
2021年4月28日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:フー・シェアール
監督:チェン・チェン

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無能な政府の責任逃れのための緊急事態宣言で兵庫・大阪の映画館は休業に。こういう時には近所のTSUTAYAへ。結局日本では劇場公開されなかったディズニーの『 ムーラン 』の写真を大々的に掲げているコーナーに本作があったので、「お、借りてみるか」とレンタルしてみたら全くの別物。詐欺とは言うまい。一杯食わされるほうが悪いのである。

 

あらすじ

北魏の村で暮らす木蘭(フー・シェアール)は女性でありながら町一番の武芸者。ある日、柔然が国境を侵してきたことから、ムーランの父も軍に招集される。しかし、老身の父を思いやったムーランは男性に扮し、父の代わりに従軍し、前線である北辺の要塞に赴くことになり・・・

 

ポジティブ・サイド

ムーランを演じたフー・シェアールがボーイッシュさを出しつつも、舞いの時には美声と女性的な魅力も醸し出している。アクションもかなり体を張っていて、まるで神韻芸術団の一員のようにすら感じてしまう。また韓国の歴史ドラマあるいは歴史映画かと思うほどに回し蹴りが多用される。現実的な戦闘描写とは思えないが、cinematicであればこれもまたOKである。

 

ムーランとその仲間たちの友情の描写も、戦争ものにありがちながら、胸を打つものがある。特に、獅子身中の虫的な味方キャラの立身出世欲のために伍のメンバーがたびたび危険にさらされるが、ムーランが持ち前の武力で、仲間たちもそれに続く形で勝利を収めていく姿は、非常にハリウッド映画的だ。つまり万人受けするわけだ。

 

中国後漢末の王異だとか、日本で言うところの巴御前のようなキャラであると考えればいいだろう。ディズニーのムーランではなく、文芸史上の華麗な女戦士の物語だと思って楽しむべし。

 

ネガティブ・サイド

るろ剣シリーズを立て続けに観たせいか、ワイヤーアクションの粗が目立つ。粗というよりも、人でも予算も技術もなく、リハーサル段階の映像をそのまま本番にしてしまったという印象。戦闘シーンも、エキストラの人数をそろえられなかったのか、それともエキストラの人数分の鎧や武具を調達あるいは制作できなかったか、またはCGで人数を増やして見せる技術または予算がなかったのか、どこまで行っても戦闘ではあっても戦争という感じは生み出せていなかった。中国のような広大な大地と長大な歴史を誇る国の戦争なのだから、いくら北辺の一辺境とはいえ、もっとダイナミックな戦闘シーンを構想し、実現してほしかった。

 

ネズミの襲来には笑ってしまった。確かに猫いらずなどは存在しない時代だが、それでも火を使う、剣や槍ではなくホウキや、もしくは鍬や鋤といった面の大きな道具で撃退するなど、知恵を使えばそれほど怖い相手ではないだろう。そのネズミも大群ではなく、何匹かを細かなショットに分けて映すという、これまた予算のなさを思わせる苦肉の策的な撮影。もっと何かほかに工夫があるだろう。

 

一番呆気に取られたのは、ムーランのバックグラウンド。平原の戦闘のど真ん中でヤギか何かの動物を抱擁しているシーンからは何も伝わってこなかった。長じては町で男相手に喧嘩して、叩きのめす。ここからは特別な力の持ち主というよりは、単なる暴れん坊という印象を強く受ける。さらに、老身の父親に代わって従軍するにあたっての悲壮感などは何もなく、朝になったら消えていたというあっけない旅立ち。ディズニーアニメを全肯定するわけでは決してないが、女性の身であることを隠して戦地に赴くことへの決意が一切ないままに、あれよあれよと前線に向かっていくのだから、ムーランに感情移入することも、ムーランを応援したいという気持ちになることが難しい。中国ではムーランは有名キャラで、そうした背景を描くのは逆にノイズになるのだろうか。

 

最後(厳密にはその一つ手前)の「この映画を中国人民解放軍に捧ぐ」とは何ぞや。中国様よ、世界市場に向けて映画を作りたいなら、共産党よりも外の世界を見ようぜ。

 

総評

昨年に引き続き我慢のGWである。ステイホームのお供に日本中で多くの人が間違えて借りてしまっているものと思う。ムーランの物語だと思わず、中国の戦争映画、ヒーロー映画だと思って鑑賞するべし。『 ラスト・サンライズ 』でも感じたが、今の中国映画はおそらく進化の途に就いたばかりだろう。粗ばかりの映画だが、伸びしろだらけという見方もできる。暇つぶしにはちょうどよいと思うので、このGWにディズニー映画と見比べてみるのも一興だろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

match

本作の英語タイトルが Matchless Mulan である。matchには「合う」以外に、名詞として釣り合う相手のような意味がある。ボクシングで試合を組む役割を担う人、縁談を取り持つ人が英語でmatchmakerと呼ばれるのは、matchを作っているからである。matchlessというのはmeet one’s match = 自分と互角かそれ以上の相手に出会う、という表現もぜひ知っておきたい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, アクション, フー・シェアール, 中国, 監督:チェン・チェン

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