キラー・メイズ 50点
2019年6月11日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ニック・スーン ミーラ・ロフィット・カンブハニ
監督:ビル・ワッターソン
近所のTSUTAYAで準新作を108円で借りられるクーポンが定期的に使える。いつもなら劇場で見逃して、しかし新作料金を払うほどでないと思える作品を借りる時に使うのだが、『 パズル 』を借りてきた時のように、Sometimes, I like watching garbage. だが本作はゴミと呼ぶほどの駄作ではなかった。
あらすじ
30歳近くになろうというのに定職もないデイブ(ニック・スーン)は、ある時段ボール箱で迷宮を作った。しかし、それは本物の迷宮になってしまい、デイブは迷子になる。そんなデイブを救出する為、ガールフレンドのアニー(ミーラ・ロフィット・カンブハニ)はデイブの悪友たちと共に段ボール箱の迷宮に足を踏み入れるが・・・
ポジティブ・サイド
とてもオーガニックな作りである。誰しも小さな頃、段ボールで出来た迷路や迷宮で遊んだことがあるだろう。それを題材に映画を作ったと思えば良い。しかし、そこには監督や脚本家の識閾下に眠っていた、あるいは彼ら彼女らが常日頃から愛してやまない数々のガジェットが詰め込まれている。迷宮といえばミノタウロスというのはPSゲームの『 ファイナルファンタジーⅧ 』や、漫画『 ミキストリ -太陽の死神- 』でもお馴染みだろう。また、『 スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 』のワンシーンのパロディ的なものや『 ナイト ミュージアム 』へのオマージュ、『 キューブ 』を思わせるトラップの数々に、『 スーパーマンⅢ 電子の要塞 』的なキャラクター変化もある。そして全体的なスラップスティック・コメディ的なノリとミノタウロスからの逃走劇は、『 グランド・ブダペスト・ホテル 』の同工異曲。こういう作品の作り手に作家性やメッセージを求めてはいけないのである。自分の心の赴くままに作ってみたら、こんな風になりました、というものを、受け手側としては素直に評価するのみである。
それにしてもヒロイン(それともヒーロー?)を演じたミーラ・ロフィット・カンブハニは、その名前と容貌からインド系であることが推察されるが、彼女は美女である。『 PK 』のアヌシュカ・シャルマは西欧的な美女であるが、カンブハニは『 パドマーワト 女神の誕生 』のディーピカー・パードゥコーンのようなインド系、アジア系、オリエント系の美女である。テレビへの出演経験が豊富なようだが、もっと銀幕に出てきてほしいもの。
デイブの悪友キャラもそれなりに立っている。特に撮影の男はほとんどしゃべらない代わりに、否、それゆえか、しゃべる時に残すインパクトは絶大である。また、その他の眼鏡キャラ二人にも、”Don’t wear glasses, or you’ll look like effin’ nerds.”という言葉を送ってやりたい。素晴らしく陳腐なキャラである。これは褒め言葉である。
そうそう、序盤のとあるキャラの怪我が、終盤に残された素朴な疑問への答えになる。なかなかに良く練られた構想、そして脚本である。
ネガティブ・サイド
映画そのものの罪ではないのだが、原題の“Dave made a maze”に『 キラー・メイズ 』なる珍妙な邦題を奉ってしまうのは何故なのだ。毎年夏頃になるとわんさか出てくる低級お馬鹿ホラー映画と見せかけて、シチュエーション・スリラーチックなコメディだったではないか。Dave made a maze. というのは、I like Ike for President.のような言葉遊びなのだ。「メイズ メイズ メイズ」のような悪ふざけタイトルか、「デイブが作った迷宮」、「メイズ・ランナー 段ボールの迷宮」のような、さらに悪乗りしたタイトルでも良かったのでは?
ストーリーもかなり単調である。スティーブン・キング原作のテレビ映画『 ランゴリアーズ 』並みに象徴的な lady parts が現れる。これがデイブの深層心理であるというなら、アニーともっとお互いをさらけ出すよう口喧嘩シーンがあってもよかった。デイブとアニーの恋人感がどうにも弱いのだ。デイブと悪友たちとの狎れ合いは上手い具合に描けている。こういう不器用な男、自己効力感の低そうな男が、愛する人からの叱咤激励を受けて一皮むけるシーンがないのが実に悔やまれるところである。
総評
雨の日の暇つぶしに最適な一本である。それ以上でもそれ以下でもない。梅雨のこの時期に何もすることが無いと言う時に、近くのレンタルビデオ店、またはストリーミングでどうぞ。