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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: C Rank

『 スフィア 』 -海洋SFの佳作-

Posted on 2023年5月5日 by cool-jupiter

スフィア 65点
2023年5月2日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ダスティン・ホフマン サミュエル・L・ジャクソン シャロン・ストーン
監督:バリー・レビンソン

『 アビス 』を鑑賞した時に、そういえば本作も海を舞台にしていたなと思い出して再鑑賞。結構面白かった。

 

あらすじ

心理学者ノーマン(ダスティン・ホフマン)、数学者ハリー(サミュエル・L・ジャクソン)、生物学者ベス(シャロン・ストーン)たちは飛行機墜落事故現場とされる海域に召集される。しかし、実際は飛行機は墜落しておらず、彼らは海底の謎の施設の調査を命じられる。そしてその中で、謎の球体を発見し・・・

 

ポジティブ・サイド

1990年代には地球表面はあらかた探査しつくされて、髑髏島のような一種のロマンはなくなっていた。その一方で深海にはまだまだミステリーがある。『 アビス 』が1989年、本作は1998年だが、2020年代の今でも深海は謎だらけ。ある意味、月よりも遠い世界。そんな深海を舞台に『 ジュラシック・パーク 』のマイケル・クライトンが想像力を大いに羽ばたかせた。

 

深海に謎の船、それがアメリカ製と判明し、なおかつ300年近く前からそこにありながらも、未来の船である可能性が示唆される。これだけでも十分にスリリングだが、そこに謎の球体=スフィアの存在が明らかになり、現実と妄想の境目があいまいになってくる。

 

SFでありながらミステリの面でも上々。様々な怪異の原因がスフィアにあるのは間違いないが、では誰がスフィアに接触したのか。ハリーは当確として、ではベスは?バーンズは?という疑惑がキャラクター達にも観る側にも生じてくる。さらに主人公のノーマンが、自分自身の心理に疑いの目を向けるところでサスペンスも最高に盛り上がる。ゲームの『 Never7 ~the end of infinity~ 』のキュレイシンドロームは本作あたりから着想を得ていたりするのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

明らかに『 2001年宇宙の旅 』を意識した映像を冒頭に持ってきているが、何をどうやってもスターゲートの映像は超えられないのだから、いかに”未知との遭遇”をテーマにしているとはいえ、敢えてそういったオマージュを入れる必要はなかったように思う。

 

なぜスフィアが具現化するのは恐怖だけなのか。あれだけ頭脳聡明な学者たちがそろっていて、なぜ誰もハッピーな思考を試そうとしないのか、それが一番の謎だった。

 

ベスがノーマンを無理やり眠りにつかせようとしたことで、ノーマンが深海数百メートルを泳ぐ羽目になるのだが、そんな馬鹿な・・・

 

総評

海洋SFはよっぽど低予算でない限り、ハズレになることは少ないと思っている。釣りをしたことがある人なら分かるだろうが、魚以外にウミウシやアメフラシ、クラゲ、ヒトデも連れたりする。現代では海の中にどう見ても異星生命としか思えないような地球産の動物も数多く見つかっていて、我々の想像力を刺激し続けている。今度は『 コクーン 』でも借りてきて再鑑賞しようかな。その前にYouTubeで見つけた『 リバイアサン 』かな。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a pain in the ass

a pain in the butt とも言う。直訳すると「尻の痛み」だが、実際は「悩みの種」、「嫌な奴/物」というニュアンス。My supervisor is a real pain in the ass. = うちの上司はマジで嫌な奴なんだよ、のように使う。ただし、日常で使う際には a pain in the neck と言おう。意味は同じだが、こちらの方が ass や butt よりもマイルドに聞こえる。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 』
『 放課後アングラーライフ 』
『 不思議の国の数学者 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1990年代, C Rank, SF, アメリカ, サミュエル・L・ジャクソン, シャロン・ストーン, ダスティン・ホフマン, 監督:バリー・レビンソン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 スフィア 』 -海洋SFの佳作-

『 Doll Woman 』 -ホームレスから目を背けるな-

Posted on 2023年4月17日 by cool-jupiter

Doll Woman 60点
2023年4月15日 シアターセブンにて鑑賞
出演:大原とき緒
監督:大原とき緒

あらすじ

人形と暮らすホームレス女性(大原とき緒)は、ある日、耳が聞こえず話すことができないホームレス男性と出会う。彼もまた、彼女と同じく、人形を愛でる人で・・・

 

ポジティブ・サイド

東京の割と都心で描かれるホームレス女性とホームレス男性の one night stand(one day stand と言うべきか?)というだけで、相当な希少価値がある。

 

ホームレスが捨てられた、しかしまだ食べられる食べ物よりも人形をゲットすることを喜ぶ、という姿はショッキングだ。人間が求めているのは人間関係で、社会から捨てられたホームレスはその関係を人形に求める。日本がダイバーシティだとかインクルーシブネスという言葉を自国後に上手く翻訳できないのも分かる気がする。

 

ネガティブ・サイド

ホームレス男女二人は徹底的に筆談でコミュニケーションした方がリアルだったと思う。画面に映し出される言葉の語彙レベルや筆跡などから、二人の教育や教養の程度が浮き彫りになってくるだろうし、普通の女性で普通の教育的な背景があっても、一度の不運(たとえばコロナ禍)で社会のセーフティネットを軽々と突き破って転落してしまう社会の現実を見る側に突き付けることもできたはずだ。

 

総評

間接的にセックスを描いているので中学、高校などでは教材にしにくいが、大学なら可能だろう。『 覚悟はいいかそこの女子。 』や『 82年生まれ、キム・ジヨン 』を学内で上映していた神戸〇〇大学や、夕方の課外授業で色んな映画を鑑賞している京都△△大学などで本作をぜひ上映してほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

one night stand

一夜限りの関係、の意味。日本語でも「ワンナイト」とか言ったりすることがある?ドラマや漫画だけか? have a one night stand with ~ = ~と一夜限りの関係を持つ、という形で使う。この表現を知っている人は多いだろうが、実際の会話でこれを使える人は少ないはず。こういう話をできる友人がいるということは、その時点で英会話上級者だろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 大原とき緒, 日本, 監督:大原とき緒, 短編, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 Doll Woman 』 -ホームレスから目を背けるな-

『 Bird Woman 』 -異色のスーパーヒーロー- 

Posted on 2023年4月16日2023年4月16日 by cool-jupiter

Bird Woman 65点
2023年4月15日 シアターセブンにて観賞
出演:大原とき緒
監督:大原とき緒

大学時代の友人の勧めで鑑賞。なんと彼女は本作の一つ『 Bird Woman 』にエキストラとして出演している。劇中歌の終わり、車掌室(運転室)を背にしたマスクの女性がそうである。

 

あらすじ

コロナ禍の東京。マスクで顔を隠した男たちの痴漢行為に辟易していたトキ(大原とき緒)は、鳥のマスクを入手する。そしてその仮面を身に着けて電車内で痴漢を撃退していき・・・

 

ポジティブ・サイド

Bird Woman というのは一種のスーパーヒーローへのオマージュなのだろうが、それよりも個人的には中世の黒死病、いわゆるペスト患者の対応にあたった医者たちの防護服の方をより強く想起させる。痴漢は一種の病気やね。

 

この Bird Woman が一種のムーブメントとなっていくところが面白い。『 ワンダー・ウーマン 』の公開当時、世界中が湧きたっていたが、それと同じ熱量が小市民的に展開されるのが日本らしいと感じた。そしてそのムーブメントが公権力によって規制されていくところに日本社会の病根も見て取れた。

 

劇中歌の『 青空でなくてかまわない 』には不覚にも感動してしまった。英語字幕だと Who cares if the sky ain’t blue? だったか。女性かくあるべし、というのは思い込みなのだ。

 

ネガティブ・サイド

女の敵は女という面も映し出されてはいたが、現・東京都知事を悪の女帝として描いてしまえばよかったのに、それをしなかったのは何故なのか。

 

一つひとつのショットの意図があまりにも露骨であるとも感じた。ハイヒールのズームなどは特に。普通に見れば見逃してしまう、しかしよくよく見れば日常生活のあちこちに女性を抑圧するアイテムや構図が潜んでいるというカメラワークを追求できなかったか。

 

総評

映画にはエンタメ、芸術、物語の三領域があると(勝手に)思っているが、本作は物語性が非常に強い。なのである意味で観る人を選ぶ作品と言える。痴漢は犯罪だが、話の本質はそこではなく、個の女性に一度反撃されてしまえば、個の男性は太刀打ちできず、権力の行使に走るという滑稽さだろう。日本の個の男の弱さが見透かされてしまったか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

grope

手でまさぐる、の意。転じて groper = 手でまさぐる人 = 痴漢 という訳語に使われていた。grope はそうした意味で使われることもあるが、実際は grope about in the dark = 暗闇の中で手探りする、という形で使われることも多い。英語中級者以上なら知っておいていいだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ブラック・コメディ, 大原とき緒, 日本, 監督:大原とき緒, 配給会社:movies label willLeave a Comment on 『 Bird Woman 』 -異色のスーパーヒーロー- 

『 ノック 終末の訪問者 』 -コロナ禍を下敷きに鑑賞のこと-

Posted on 2023年4月10日 by cool-jupiter

ノック 終末の訪問者 60点
2023年4月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリステン・ツイ デイブ・バウティスタ
監督:M・ナイト・シャマラン

 

簡易レビュー。

あらすじ

ゲイのカップルに育てられるウェン(クリステン・ツイ)の元に、謎の男レナード(デイブ・バウティスタ)が現れる。彼は仲間たちと共に、ウェンたち家族に世界を終末から救うために、一人を犠牲に差し出すように迫り・・・

以下、ネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

個人的に非常に楽しめた。その代わりJovian妻の鑑賞後の第一声は「訳わからんねんけど・・・」だった。こういう映画は素直に鑑賞してはいけない。Jovianは看護学校中退の語学教育勤務、Jovian母は現役看護師、Jovian父は元ヒューム管運送トラックドライバーと焼肉屋。なのでJovianは終始、ウェンたち家族ではなく、レナードの側にどんどん共感していってしまった。

 

レナードは教師、その他の仲間もガス会社勤務=インフラ系、看護師=医療従事者、コック=外食産業と、ここまで言えばシャマランの言いたいことはJovian妻にも伝わった。海外諸国の事情は詳しくは分からないが、いわゆるエッセンシャル・ワーカーを冷遇してきた日本人は、A part of humanity has been judged. という台詞と共に死んでいく訪問者、およびそれと同時発生する災害と人死にを見て何を感じるのか、それとも何も感じないのか。Jovian妻は後者だった。ということは多くの日本人も・・・?

 

ウェンを演じたクリステン・ツイをはじめ、役者は皆、迫真のパフォーマンス。ほぼ善隆ペンがキャビンという限られた空間=低予算ながら、荒唐無稽な物語にそれなりの説得力を与えていたのは、役者たちの演技力(+コロナ禍)のおかげ。

ネガティブ・サイド

 

やたらとポリコレに配慮した映画に見えた。女の子がアジア系で、その父親二人はゲイ、訪問者も黒人女性とホワイト・トラッシュが混じっていて、いくらアメリカが人種のるつぼとはいえ、ここまで来ると不自然に映った。

 

レッドモンドなのかオバノンなのかもカットしてよかった。

 

世界滅亡のプロセスがよく分からない。『 アビス 』ほどではないが、6mの巨大津波が押し寄せたかと思えば、飛行機が次々に落ちていくというのは、ダイブスケールダウンしたように感じた。それこそありえないほどの落雷や乱気流が発生して、民間だろうと軍用だろうと空を飛ぶものはすべて落ちた、ぐらいの方がよかった。

 

総評

シャマランらしい外連味のある作品。『 シックス・センス 』や『 スプリット 』のようなドンデン返しを期待してはいけないが、『 オールド 』よりは面白い。チケット購入に際しては Don’t get your hopes up. 

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be pressed for time

時間がない、の意。『 アビス 』でも紹介した表現。どちらの作品でも We’re a little pressed for time. という具合に使われていた。Jovianは務めている部署の関係でこの時期は be extremely pressed for time である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 search #サーチ2 』
『 ヴィレッジ 』
『 ザ・ホエール 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, クリステン・ツイ, スリラー, デイブ・バウティスタ, 監督:M・ナイト・シャマラン, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 ノック 終末の訪問者 』 -コロナ禍を下敷きに鑑賞のこと-

『 ロストケア 』 -題材は良かった-

Posted on 2023年4月2日 by cool-jupiter

ロストケア 60点
2023年4月1日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:松山ケンイチ 長澤まさみ
監督:前田哲

 

繁忙期のため簡易レビュー。

 

あらすじ

ある訪問介護詞節のセンター長がサービス利用者の自宅で死体で発見され、住人も死亡が確認された。容疑者として浮上したのは、同僚からも介護家族からも慕われる介護士の斯波(松山ケンイチ)だった。検事の大友(長澤まさみ)は取り調べの中で、斯波の務めるセンターの要介護者の死亡者数が多いことに疑問を抱き・・・

 

ポジティブ・サイド

松山ケンイチが素晴らしい。どこか『 DEATH NOTE デスノート 』のLっぽさを醸し出しつつも、人間性と残虐性を両立させている。感情を抑えた演技をすることで、うちに渦巻く多種多様な感情を逆説的に観る側に想起させる。役者、かくあるべし。

 

介護はきれいごとではない。Jovianも甥っ子たちのお締めを換えたりしたが、それは数年すれば終わること。介護のお締め好感はいつ終わるのか分からない。Jovian祖母が死んだ2年後ぐらいか、親父と二人でNHKの介護番組を観ていたら、親父がいきなり「まあ、おふくろは寝たきりになる前に死んでくれたからなあ」と呟いた。正直、なんちゅう親父やと感じたが、今なら首肯するしかない。

 

ネガティブ・サイド

もっと『 PLAN 75 』のように振り切った社会批判をしてもよいのに。国家を挙げて老人を始末せんとする『 PLAN 75 』とは対照的に、本作は介護は自己責任と切って捨てる日本社会を撃ってはいるものの、結局それが斯波と大友の個人的なやりとりに集約されてしまっている。『 人魚の眠る家 』でもそうだったが、政治批判や社会批判が難しい土壌が邦画の世界にはあるのだろうか。まあ、あるんだろうな・・・

 

長澤まさみは頑張ってはいるものの、acting という感じがする。松山ケンイチが acting と being 中間ぐらいに見えるため、どうしても見劣りしてしまう。

 

あとは八賀センター管轄の要介護者の死亡率か。事故・自殺以外は全員他殺はありえない。あの地区では自然死する老人はゼロだった?確率的、統計学的にそんなことがありうるのか?

 

総評

ある意味で『 グッド・ナース 』を日本流に再解釈したような作品で、これはこれで面白かった。しかし、力のある役者に骨太なストーリーを与えても、日本的な演出を盲目的に盛り込んでしまっては意味がない。映画というよりも役者の演技を観賞するつもりでチケットを購入されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

carer

ケアラーと読む。意味は介護者。近年、ヤングケアラーが急増している。というよりも、高齢者が増えすぎて、介護士が不足し、結果として家族の中で子どもまでもが介護に駆り出されているようになっている、というのが実相だろう。看護師や保健師はエッセンシャル・ワーカーと認知されたが、介護士がそのように認知される日は果たして来るのか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 マッシブ・タレント 』
『 search #サーチ2 』
『 シンデレラ 3つの願い 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, サスペンス, 日本, 松山ケンイチ, 監督:前田哲, 配給会社:日活, 配給会社:東京テアトル, 長澤まさみLeave a Comment on 『 ロストケア 』 -題材は良かった-

『 Winny 』 -日本の警察と司法の闇-

Posted on 2023年3月26日2023年3月26日 by cool-jupiter

Winny 65点
2023年3月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:東出昌大 三浦貴大
監督:松本優作

超絶繁忙期につき簡易レビュー。

 

あらすじ

ファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子(東出昌大)は、違法コンテンツの蔓延を目論んでいたという名目で警察に逮捕されてしまう。弁護士・壇(三浦貴大)は金子の無罪を証明するべく精力的に働くが・・・

 

ポジティブ・サイド

東出は『 聖の青春 』で羽生を演じた時と同じく、自分の色を出すのではなく、他人の真似に徹した時の方が良い芝居をする。役者としてはどうなんだと思うが。三浦貴大は良い感じのオッサンになってきた。人権派の弁護士ではなく、信念派の弁護士とでも言おうか。著作権無視で違法コンテンツを扱う者たちをバッサリと断罪する姿勢は現実の弁護士っぽい(というか現実の弁護士がモデルやね)。法廷闘争が繰り広げられる中で、金子と壇の二人が一種の camaraderie を育んでいく様は時に微笑ましい。

 

『 電車男 』と同様に、名もなき2chの支援者たちの声が感動を呼ぶ。

 

1億パーセント冤罪である袴田事件が再フォーカスされている今、多くの人に観てほしい作品。

 

ネガティブ・サイド

ところどころで説明台詞が入るのが極めて不自然。弁護士仲間がWinnyの製造者責任の有無を論じるのもおかしい、弁護士事務所に勤めている女性が「幇助って何ですか?」と尋ねるのも極めて奇異に映った。

 

Winnyが未来を先取りした技術であるという描写が弱かった。梅田望夫風に言えば、金子勇は「ネットのこちら側」と「ネットのあちら側」を結び付けた人なのだが、そのあたりの描写が欲しかった。そうすれば、日本の警察や司法がいかにテクノロジーに疎く、また日本社会全般がいかに進歩に取り残されてきたかが浮き彫りになり、本作の持つ社会批判のメッセージもさらに際立ったことだろう。

 

総評

本件は大メディアよりも夕刊フジや日刊ゲンダイ、さらにネットで情報をインプットしていたと記憶している。当時の世相が見事に反映されていた。大阪府警を定年退職した義理の父親は最後は巡査長だったらしいが、全然出世しなかったということは汚職警官ではなかったのだろう。警察と司法の闇はなかなかに深い。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

file-sharing

ファイル共有の意味。heart-warmingは日本語にもなっているが、英語は名詞の後に現在分詞(~ing)をくっつけて新たな形容詞を作ることができる。

jaw-dropping = あごが落ちるような = びっくりするような
heart-stopping = 心臓が止まるような = ショッキングな
nail-biting = 爪を噛むような = ハラハラドキドキで不安になるような

などが会話などで使えるようになれば英語中級者である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 シャザム! 神々の怒り 』
『 ロストケア 』
『 search #サーチ2 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, 三浦貴大, 伝記, 日本, 東出昌大, 監督:松本優作, 配給会社:KDDI, 配給会社:ナカチカLeave a Comment on 『 Winny 』 -日本の警察と司法の闇-

『 アビス 』 -海洋SFの佳作-

Posted on 2023年3月21日 by cool-jupiter

アビス 65点
2023年3月19日 レンタルDVDにて観賞
出演:エド・ハリス マイケル・ビーン メアリー・エリザベス・マストラントニオ
監督:ジェームズ・キャメロン

『 タイタニック 』の再上映に世間は湧いていた。代わりと言っては何だが、本作を近所のTSUTAYAでレンタル。

 

あらすじ

アメリカ海軍の原潜が謎の事故により消息を絶った。救助活動の基地として海底油田採掘施設のディープコアが選ばれた。バッド(エド・ハリス)たちクルーに、コフィ大尉(マイケル・ビーン)たちと、ディープコアの設計者リンジー(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)が合流する。しかし、バッドとリンジーは離婚間近の夫婦で・・・

 

ポジティブ・サイド

『 エイリアン2 』の宇宙船と同様に、海底という一種の極限閉鎖環境内で、愉快で、なおかつ緊張感のある人間関係が繰り広げられる。キャメロン監督の好物テーマというか、撮っていて楽しいのだろう。

 

深海は2020年代の今でも、まだまだ未知の世界。100億光年彼方の光すらも捉える現代天文学と比較すれば、海の底の方が遠いとも言える。そこに未知の生命がいて、地上人にメッセージを発するというのは面白い。

 

CGも頑張っている。自在に形を変える水が『 ターミネーター2 』のT-1000につながったことは有名。また、バッドが終盤に通ることになるゲートは、どう見ても『 2001年宇宙の旅 』のスターゲートにインスパイアされている。

 

様々な意味でキャメロンの嗜好が色濃く反映された作品。

 

ネガティブ・サイド

何をどう考えても素潜りは無理だろう。確か原潜が沈んだのが600メートルぐらいで、ディープコアは400メートルぐらいの深さだと言っていたような。こんな深海、普通の人間どころか、素潜りの世界記録保持者でも一発でお陀仏のはず。とある人物も、こんな環境からよく蘇生できたな・・・

 

最後の最後に強烈なカタストロフィを回避するが、普通に考えて世界中で何千という数の船舶が海の藻屑と消えたことだろう。これでめでたしめでたしと考えられてしまうのは、カナダが海洋国家ではないからかな。

 

総評

マイケル・ビーン演じる軍人さんの行動に若い世代は???となるかもしれないが、『 ゴジラ1985 』などを観れば分かる通り、この時代は核戦争の脅威が現実に存在した。同時に『 コクーン 』のような、どこか1950年代のSF小説的な楽天さも併せ持った、どこかアンバランスな作品。深海で何か大発見があれば、また再評価される時も来るだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be pressed for ~

劇中ではバッドが”We’re a little pressed for time.”=ちょっと時間がないんだぞ、的に言っていた。be pressed for ~ = ~が足りない、だが、ほとんどの場合 be pressed for time または be pressed for money である。

X: Do you have a minute?
Y: Sorry. I’m pressed for time right now.

のように返せれば、英会話中級者だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Winny 』
『 シャザム! 神々の怒り 』
『 ロストケア 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, C Rank, SF, アメリカ, エド・ハリス, マイケル・ビーン, メアリー・エリザベス・マストラントニオ, 監督:ジェームズ・キャメロン, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『 アビス 』 -海洋SFの佳作-

『 マジック・マイク ラストダンス 』 -Don’t Think. Just Dance.-

Posted on 2023年3月5日 by cool-jupiter

マジック・マイク ラストダンス 60点
2023年3月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:チャニング・テイタム サルマ・ハエック
監督:スティーブン・ソダーバーグ

あらすじ

家具職人として働いていたマイク(チャニング・テイタム)はパンデミックにより失業。バーテンダーとして働いていたところ、かつて自分が警察官に扮して侵入した学生寮の卒業生キムに出会う。キムの働きかけを通じて資産家マックス(サルマ・ハエック)と知り合ったマイクは、彼女のためにストリップを披露し、一夜を共にする。その後、マックスはマイクに「ロンドンに一緒に来てほしい」と言い・・・

ポジティブ・サイド

コロナ禍を反映した映画が徐々に生まれてきているが、本作もそれにあたる。その中でも、本作が特にユニークなのは、パンデミックによって何もかも奪われてしまった中年男、という全世界で数百万人はいるであろう男性像に着目したこと。そしてその男性が人生を取り戻す様を芸術的に、しかし力強く描いているところである。

冒頭で『 マジック・マイク 』で一瞬だけ出演したキャラの再登場があり、マイクの一瞬の回想のシーンが鮮やかだ。ここでマイクが自分はストリッパーだったということを思い出す。またティトやデカマラ・リッチーからも電話があり、過去2作と本作のつながりも示される。そこからあれよあれよの勢いで、マックスの前で踊ることになるマイク。そのダンスがまた何とも官能的。セックスよりもセクシーという形容がよく合っている。

 

そこからロンドンに一直線。冴えない男がパトロンの力を得て、ステージ・パフォーマンスの演出家になる。そして世界中からタレントを結集して、誰も見たことがない芝居を作り上げる。そのスカウトやオーディションの映像も圧倒的。前二作の役者たちのダンスも素晴らしかったが、本職のダンサーは違いますなあ。役者にダンスをさせるのではなく、ダンサーに演技をさせる。そうしたコンセプトで演者を集め、革新的な舞台を模索していく。その裏で、演出家たるマイクとパトロンであるマックスが様々にぶつかっていく。映画監督と映画プロデューサーのぶつかり合いも、きっとこんな感じなのだろう。

 

最後に出来上がった一連のダンスは圧巻の一語に尽きる。あらゆるジャンルが混淆したダンスの連続で、大トリを飾るのはもちろんマジック・マイク。雨の中でバレリーナを相手に扇情的なダンスを披露する。その動きの一つひとつが、マックスへの敬意であり愛情の表現になっていた。これまでのマジック・マイクは「女性たちを癒やす」というテーマの元に踊っていたが、ここで初めて「一人の女性を癒やす」という目的のために踊る。三作を通じてマイクがたどり着いたのは、愛だったというわけか。

ネガティブ・サイド

タンパのストリッパー仲間とはビデオ・カンファレンスで連絡を取り合っているが、ブルックのことは思い出さないのか。マックスに恋愛関係を質問された時に、回想シーンの一つぐらいは入れて欲しかったと思う。ダラスやキッドについても、ほんの少し思い返すシーンがあっても良かっただろうに。

 

マックスの娘ゼイディにダンスを小説的かつ哲学的にあれこれと語らせるが、これは正直なところノイズだった。まだ小学校高学年か中学生ぐらいなのに耳年増なキャラにしてどうする。過激なダンスシーンで執事に目隠しをされ、超セクシーなシーンでは劇場外に連れ出されてしまうが、そこでじっと待つのではなく、おもむろにノートPCを取り出して、今までに書いてきた小説を一気に手直しする。そうすればゼイディもマイクのダンスにインスパイアされたのだと伝わる。足でフンフン♪とリズムを取っているというのは演出としては少々弱い。

 

シリーズ全体を通じての弱点だが、男性視点から見た女性視点というものを強く感じる。もちろん、ストリップショーに癒される女性が存在することは間違いないし、Jovian妻もムキムキの肉体は大好きらしい。けれど、一方では『 マジック・マイク 』のブルックのような女性も確実に存在する。そうした女性に、では男性として何ができるかを考えた時に、ストリップを文化的に有意なダンスに昇華させようとソダーバーグは目論んだのだろうが、肝心のそうした女性が作品世界に存在しないので、ダンスによる交感がマイクとマックスの関係に集約されてしまい、そこから普遍的な男女の在り方にまでつながっていかない。

 

総評

個人的には、前二作のアホな男たちによるバカ騒ぎ的なノリが好きだったので、本作は少し落ちるかなという印象。ただ、10年後に再鑑賞すれば評価は間違いなく上昇するという予感はある。チャニング・テイタムはこのトリロジーをもって代表的なキャラを得られたと思う。スタローン=ロッキー、シュワルツェネッガー=ターミネーター、T・クルーズ=マーヴェリックのように、チャニング・テイタム=マジック・マイクになったのだ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

theater

劇中で Are you ready to transform theater forever? という台詞があったが、残念ながら字幕が誤っていた。字幕は「この劇場を改革するぞ」みたいな感じだったが、正しくは「演劇というものを永久に変える準備はいいか?」である。theater は a や the などの冠詞がつけば「劇場」、なにもつかなければ「演劇(という概念やジャンル)」である。

次に劇症鑑賞したい映画

『 シャイロックの子供たち 』
『 湯道 』
『 少女は卒業しない 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, サルマ・ハエック, チャニング・テイタム, 監督:スティーブン・ソダーバーグ, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 青春Leave a Comment on 『 マジック・マイク ラストダンス 』 -Don’t Think. Just Dance.-

『 #マンホール 』 -邦画スリラーの佳作-

Posted on 2023年2月16日 by cool-jupiter

#マンホール 60点
2023年2月12日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:中島裕翔 奈緒
監督:熊切和嘉

シチュエーション・スリラー。まさか『 CUBE 一度入ったら、最後 』のような超絶クソ駄作ではあるまいと思い、チケット購入。

 

あらすじ

社長令嬢との結婚も決まり、営業として将来を嘱望されていた川村俊介(中島裕翔)。しかし結婚式前夜の同僚たち主催のパーティーで酔ってしまい、帰り道でマンホールに転落してしまう。足を負傷し、自力での脱出ができない川村は、唯一連絡が取れた元カノの工藤舞(奈緒)に渋谷まで助けに来てほしいと頼むが、渋谷のどこにも蓋の開いたマンホールはないと言う。川村はマンホール女というSNSアカウントを作成し、ネット民たちに救出を依頼するが・・・

 

ポジティブ・サイド

日本中に無数に存在するマンホール。その中に落ちてしまう話。そんなことが起こるわけねーだろと思うが、これがなかなかに面白い。まずマンホールの中がかなり汚く、迫真に迫っている。もちろん、マンホールの中に入ったことなどないが、めちゃくちゃ不衛生な環境であることは分かる。最近の邦画だと『 AI崩壊 』で大沢たかおがやたらときれいな下水道を駆け回るシーンがあったが、本作は悪臭漂うマンホールの底という環境をリアルに追求した。ここは評価していい。

 

物語の大部分もマンホールの中で、中島裕翔の一人芝居で進んでいく。足を怪我して動けないが、『 FALL フォール 』のようにありあわせのもので治療したりと、様々な困難を打開していく。極めつけはSNSの利用だろう。男だとネット民に対しての訴求力がないので、#マンホール女なるアカウントを立ち上げる。『 電車男 』という存在が一世を風靡したが、このマンホール女も瞬く間に一つのムーブメントとなる。そしてネット民の中でも特に恐ろしい特定班が動き出す。このあたり、『 白ゆき姫殺人事件 』よりも更に踏み込んだ内容になっているし、回転ずしをはじめとする外食産業を悩ませるクソ迷惑な客の個人情報がどんどん明かされてしまう現実とが絶妙にマッチしている。

 

本作は序盤から結構フェアに伏線が張られているので、鵜の目鷹の目で見ることをお勧めしたい。実際に上映開始前に「ネタバレはやめてください」的な表示も出た。こういうのを見るとすれっからしのJovianは絶対に見破ってやろうと思ってしまう。ある人物についての考察は当たったが、別の人物については見事に裏切られた。うーむ、悔しい。この作品(ネタバレ注意!)を思い浮かべなかったのは痛恨の極みだ。

 

電話で淡々と対応してくれる元カノの奈緒もいい。電話越しの穏やかな声音と口調に独特の味わいがある。他にもアホなネット民を思いっきりコケにするようなシーンもあり、笑わせてくれる。本作を最大限に楽しむには、謎解きに専念せずに、むしろ中島裕翔に感情移入して観るといい。

 

ネガティブ・サイド

サスペンスのビルドアップが下手だなという印象。マンホールの底であれやこれやと苦闘する川村だが、一番の生命線はスマホ。そのスマホの充電が切れそうになる展開が一つもないのはいただけない。

 

波の花も、あれだけ瓦礫があるのなら、水がたらたら流れてくる箇所を埋めてしまえと思うが、それもしない。脚を大けがした状態で果敢に梯子を登ろうとするのだから、瓦礫を少し運ぶぐらいできるだろう。

 

クライマックスのドンデン返しで思いっきり着地に失敗しているのが最大の欠点か。そこに行くまでは主人公にイライラさせられたり、逆に不可解だった行動の意味が分かってきたりと興味深く観ていられるのだが、最後の最後が火曜サスペンス劇場になってしまう。ここをもっとちゃんと締め括ってくれていれば、もう一段階上の評価もできたはずだと思えてならない。

 

総評

全然知らないジャニーズだと思っていたが、『 ピンクとグレー 』に出てたのね。菅田将暉しか印象に残ってなかった。ただ、アイドルがここまで汚れてボロボロになるというのは邦画では珍しい。その点で希少価値はある。ストーリーも着地に失敗しているとはいえ、序盤と中盤は結構楽しめる。デートムービーにはならないだろうが、週末に予定がなければ本作のチケットを購入するのも全然ありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

peck

劇中では Twitter の代わりに pecker なるSNSが登場していた。これは「つつく」の意味。キツツキは woodpecker と言う。ちなみに tweet は「さえずる」の意(「つぶやく」ではない)。北アメリカを旅行した人なら、鳥が「トゥイトゥイ」という感じで鳴くのを聞いたことがあるかもしれない。あれが tweet という擬音語になり、そのまま動詞になったわけである。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 対峙 』
『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, シチュエーション・スリラー, 中島裕翔, 奈緒, 日本, 監督:熊切和嘉, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 #マンホール 』 -邦画スリラーの佳作-

『 ナイト・ウォッチャー 』 -ドンデン返しが少し弱い-

Posted on 2023年1月3日 by cool-jupiter

ナイト・ウォッチャー 60点
2023年1月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:タイ・シェリダン アナ・デ・アルマス ジョン・レグイザモ ヘレン・ハント
監督:マイケル・クリストファー

新年一発目は近所のTSUTAYAの準新作コーナーから、『 ザ・メニュー 』のジョン・レグイザモ出演作の本作を pick out 。

 

あらすじ

アスペルガー症候群持ちのバート(タイ・シェリダン)は、ホテル受付の夜間シフトで働いている。彼は秘密裡に客室を盗撮し、人間同士のやりとりから普通のコミュニケーションを学んでいた。ある夜、ホテルで殺人事件が発生。バートのカメラに犯人とその犯行が映っていたが、彼はそれを警察に知らせることができず、逆に第一発見者として警察にマークされてしまう。系列の別ホテルに異動となったバートは、懲りずに盗撮を行うが、そこに謎めいた美女のアンドレア(アナ・デ・アルマス)が客として訪れ・・・

 

ポジティブ・サイド

タイ・シェリダンがアスペルガー役を好演。合わない視線、過剰な答え、あるいは質問に対する返答拒否ともいえる応答、相手の気持ちや会話の流れをぶった切る発話など、まさに言葉の正しい意味でのコミュ障である。客室を盗撮・盗聴して、そこでのやりとりから普通の人のコミュニケーションを研究するというのだから、まさに他人の気持ちが理解できていない。この主人公に感情移入するのはなかなか難しいが、母親やホテルの経営者が良き理解者になってくれているので、観ている側は一定の距離でバートを見守ることができる。

 

序盤の終わり、アナ・デ・アルマス演じるアンドレアの登場からシチュエーションが一気に動く。コミュ障であるバートがいかにしてこの美女と距離を縮めていくのか。このプロセスが、アスペルガーだけではなく、広くコミュ障全般、いや、ある程度青臭い男性全般に当てはまるような描き方をされているので、観ている側(特に男性)はここで一気にバートを応援したくなる。この流れの絶妙さは、是非とも鑑賞の上で確認を!

 

殺人事件の第一発見者であるバートを第一容疑者として追う刑事が、厳しさと優しさを併せ持っていて、彼の存在もバートの難しいパーソナリティをオーディエンスが理解することを助けている。観ている我々はバートが犯人ではないことを知っていて、しかしバートはそのことを刑事には伝えられず、なおかつ刑事はバートを追わざるを得ないという、観ている側がキャラに感じるジレンマと、キャラがキャラに対して感じるジレンマが複雑に入り組んだプロットは本当にもどかしい。それが観る側をストーリーに引き付ける。最後に「え?」と思わせる展開も待っており、低予算映画としては満足のいくクオリティのサスペンスに仕上がっている。

 

ネガティブ・サイド

バートがどういうきっかけで盗撮・盗聴からコミュニケーションを勉強しようと思い立ったのかが分からない。『 ベイビー・ドライバー 』のベイビーがテレビをザッピングしながら色々なセリフを吸収していくのと同じようなシーンが少し挿入されていれば、バートなりのアスペルガーのコーピングがどういうものなのか理解しやすくなったのだが。

 

アンドレアが語るアスペルガーの弟の話は必要だっただろうか。アスペルガーが転帰して死に至ることは普通はない。こうした一種の障がいを描く映画は、必ずしもその障がいをユニークかつポジティブなものとして描く必要はないが、だからと言って誤った情報、あるいは誤解を与えかねないような描写は慎むべきではないだろうか。

 

最後のドンデン返しがちょっと弱いと感じる。というよりも、やはりアンドレアの弟の話を抜きにクライマックスを構成すべきだったと思う。相手がアスペルガーであろうと普通人であろうと、態度を変えないのがアンドレアの長所であるべきではなかったか。

 

総評

90分と非常にコンパクトな作品で、サスペンス風味でありながら、最後にミステリの様相も帯びる作品。ドンデン返しに少々不可解さも残るが、バートという青年の一種のビルドゥングスロマンだと思えば、納得いくクオリティだと言える。アナ・デ・アルマスのヌードも拝めるので、スケベ映画ファンはそれを目当てに視聴するのもありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

die from ~

~が原因で死ぬ、の意。

die of 直接的な死因

die from 間接的な死因

と覚えよう。普通は die of cancer =ガンで死亡する、のように of を使うが、劇中では die from love =愛で死ぬ、のように使われていた。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アナ・デ・アルマス, アメリカ, サスペンス, ジョン・レグイザモ, タイ・シェリダン, ヘレン・ハント, 監督:マイケル・クリストファー, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 ナイト・ウォッチャー 』 -ドンデン返しが少し弱い-

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