Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: 鈴鹿央士

『 夏へのトンネル、さよならの出口 』 -もう少しオリジナリティを-

Posted on 2022年9月11日 by cool-jupiter

夏へのトンネル、さよならの出口 60点
2022年9月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:鈴鹿央士 飯豊まりえ
監督:田口智久

半日出勤の後、昼寝。その後ふらりと近所の映画館に赴き、タイトルだけでチケット購入。素材は良いと感じたが、料理する側のスキルが平々凡々だったという印象。

 

あらすじ

そこに入ると欲しいものが何でも手に入るというウラシマトンネル。しかし、代償として100歳老化してしまうという。過去のある出来事がトラウマになっている塔野カオル(鈴鹿央士)は、自暴自棄になって家を飛び出したある夜に、偶然にもウラシマトンネルを発見する。そこは時間の流れが外界とは全く異なるトンネルだった。カオルは転校生の花城あんず(飯豊まりえ)とトンネルを調査するための共同戦線を結び・・・

ポジティブ・サイド

原作小説は未読だが、ウラシマトンネルという設定は悪くない。時間を一つのテーマにするのはクリストファー・ノーランのような大巨匠も好むところである。本作はタイトルからして『 夏への扉 ーキミのいる未来へー 』のは明らか。原作もラノベらしいので、まず間違いなくボーイ・ミーツ・ガールだろうと予測した(100人いれば97人はそう予測するはず)。

 

アニメーションは美麗である。キャラもゆらゆらと揺れたりしないところは個人的に気に入った。随所に挿入される山や海、そして空の景色の美しさが、鬱屈したカオルとあんずの心象風景とは真逆で、二人がこの世界に馴染めていないことを静かに、しかし確実に印象付けた。

 

ウラシマトンネルを調査するシークエンスは面白かった。通話しながら境界線の位置を測ったり、時間の流れの違いを数値化したり。特に時間の境界線の内側から外側を見た時の視界は、なかなかにSF的だった。ガラケーが重要なアイテムになっていて、懐かしさを感じた。スマホだと、映像を録画したり、それを配信したりできてしまうので、時代設定は適切だった。

 

カオルとあんずのつかず離れずの距離感がもどかしくもありながら、同時に好ましくもあった。水族館でのデートで、ジンベエザメが陰と陽になって混ざり合いそうになり・・・というシーンは、二人の行く末の暗示として上手い演出だったと感じる。『 君の名は 』っぽさがありつつも、『 ナビゲイター 』的な終わり方にも好感が持てた。

ネガティブ・サイド

オリジナリティの無さには感心しない。色々ありすぎて頭が痛いが、「なんじゃこりゃ」とガッカリさせられたのは『 新世紀エヴァンゲリオン 』の綾波レイの「どいてくれる?」のまるパクリ。いや、別に監督の好みでも脚本家の好みでも何でもいい。ただ、このようなオマージュは、やるならやるで徹底的にやるべき。カオルの左手の位置はそこではないだろう。『 インターステラー 』や『 ほしのこえ 』へのオマージュも、やるならもっと徹底的にすべし、だ。

 

あんずの造形および性格が一部の層に媚びすぎている、というのはJovian妻の言。Jovianも同意する。黒髪ロングのクール系美少女がだんだんと打ち解けてくるのは、ステレオタイプでしかない。カオルとあんず、二人とも声に「演技力」がないので、キャラに深みが生まれないのもマイナス要素だ。

 

疑問なのは、単線電車の走る田舎町で、クラスメイトもカオルとあんずがあーだこーだというゴシップに興じるほど情報伝播の速い。にもかかわらず、二人が頻繁に踏切で出会い、線路を歩いていく姿が目撃されなかったのだろうか。

 

総評

時間と漫画を巡る不思議な物語という意味では『 リング・ワンダリング 』のようであり、夏と時間を巡る物語という点では『 永遠の831 』とも共通するところがある。批判すべき点も多いが、90分弱でコンパクトにまとめられていて、非常に観やすい。高校生、大学生のデートムービーにはちょうどいいだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

flip

フィギュアスケートでたまに聞こえる語。意味は「引っくり返す」である。映画では懐かしのガラケーが重要なアイテムになっていたが、これは英語で flip phone と言う。モニター部分がカパッと開いたり閉じたりするところが、flip になっているからである。英検1級受験者なら、二次試験で試験官に “Now, flip over the card and put it down.” と言われたことがあるかもしれない。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, アニメ, ファンタジー, 日本, 監督:田口智久, 配給会社:ポニーキャニオン, 鈴鹿央士, 青春, 飯豊まりえLeave a Comment on 『 夏へのトンネル、さよならの出口 』 -もう少しオリジナリティを-

『 蜜蜂と遠雷 』 -世界と自分の関わり方を考えさせてくれる-

Posted on 2019年10月12日2020年4月11日 by cool-jupiter

蜜蜂と遠雷 70点
2019年10月6日 鑑賞
出演:松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士
監督:石川慶 

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191012221335j:plain

 

恩田陸はJovianのお気に入りの作家のひとりである。最近は若い頃ほど本を読めないし、読む本の種類も変わってきた。だが、それでも恩田陸が原作とあれば観ないという選択肢はない。

 

あらすじ

一躍、若手の登竜門となった芳ヶ江国際ピアノコンクール。そこに集ったトラウマを抱えた少女・栄伝亜夜(松岡茉優)、年齢制限ギリギリの生活者代表・高島明石(松坂桃李)、名門音楽院在籍でマスコミも注目する寵児・マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)、パリのオーディションで彗星の如く現れた天才児・風間塵(鈴鹿央士)らはそれぞれの形でお互いに、そして音楽に向き合っていき・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191012221358j:plain 

ポジティブ・サイド

異なる楽器に異なるストーリーを比べるのは愚の骨頂であるが、『 四月は君の嘘 』よりも遥かに音楽がクリアであった。演奏の先に景色が広がる。それがサウンドスケープというもので、『 羊と鋼の森 』でも少し触れた。音楽というものは不思議なもので、実体が無い芸術である。そこに様々な意味を付与するのは、演奏者と鑑賞者であろう。たとえば高島明石はそこに芸術家ではなく生活者としての音を表現しようとする。もちろん、それは我々の目には見えないし、我々の耳には聞こえない。少なくとも、それを感知するには並はずれた音楽的素養が必要だろう。だが、これは映画であり、それを感じ取るための映像体験を提供してくれる。高島の労働者、夫、父親としての側面を濃厚に描くことで、感情移入させようという作戦だ。シンプルだが、これは分かりやすい。また高島の言うとある台詞は、音楽家と生活者を分ける上で非常に示唆的であった。JovianはREI MUSICの裏谷玲央氏と懇意にさせていただいていたが、彼自身は自らを演奏者ではなく作曲家を以って任じている。彼の言葉に「一日に8時間とか10時間とかギター弾いている人は完全に別物なんですよ」というものがある。これから本作を鑑賞予定の方は、この言葉を頭の片隅に置いて鑑賞されたい。

 

松岡茉優のキャラの背景も複雑であり単純である。トラウマを抱えたキャラクターで、ピアノが大好きだが、そのピアノが弾けないというのが彼女の抱える課題である。トラウマを克服するには、荒療治であるが、そのトラウマの原因に正面から向き合うしかないという説もある。彼女は向き合えたのか。それは、劇場で確認して欲しい。唯一つ言えるのは、松岡の見せ場である演奏シーンは二つとも見逃してはいけないということである。特に中盤で『 月の光 』を連弾で奏でるシーンは幻想的である。音楽家は言葉ではなく音で対話ができるのである。同じ音楽系の邦画では『 覆面系ノイズ 』にギタリスト同士が音で対話するシーンがあった。もしくはプロレベルのそれを堪能したいということであれば、B’zの『 Calling 』のイントロとエンディングのボーカルとギターの対話に耳を傾けてみよう。クライマックスの松岡の演奏は『 グリーンブック 』のマハーシャラ・アリを彷彿させてくれる。最終的には、プロのピアニストの演奏にアリの顔を貼り付けたようだが、松岡はかなり体を張っている。その努力を大いに称えるようではないか。

 

本作は天才とは何かを問うてもいる。ピアノを持たずに、ピアノではないものでピアノの練習をする天才児。名高い指揮者とそのオーケストラにも臆することなく自分の感性をぶつけていく麒麟児。松坂や松岡のキャラクターたち以上に音楽にのめり込んでいる人種の在り様というのは、凡人の我々の理解を超えている。Jovianは大昔にピアノを習っていたことがあるが、今ではもうすっかり忘れてしまっている。ただ、何の因果か今は英語・英会話を教える職に就いている(いつまでもつのか、この商売・・・)。受講生の中には、高校生や大学生もちらほらいるが、明らかに自分以上のポテンシャルを抱えている若者も確かにいた。そうした者たちを指導する時には多大な緊張感があった。教える者、あるいは本作の中で審査する立場の者は、若い才能を前にして何を見出すのか。それは彼ら彼女らを潰さないこと、長所の芽を伸ばすこと、大きく育てることの責務だろう。指導者や教師が、生徒、弟子、受講生に見出すのは、自らの教えの成果、その結実である。あるいは自らの教えでダメにしてしまった若者である。別にこれは音楽や語学に限った話ではない。自分の子どもや親せきであってもよいし、職場の後輩であってもよい。自らを超える存在に向き合った時に、人は自分の使命を知るのかもしれない。本作は、そのように向き合うことができる作品でもある。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191012221420j:plain

 

ネガティブ・サイド

ピアニストは腰痛や肩こり、腱鞘炎に悩まされることが多いと聞く。松坂のキャラあたりに、もう少し腕を振ったり、あるいは無意識のうちにグーパーグーパーをして、腕の疲れを逃がそうとさせる動作や仕草があれば、生活者という面だけではなく年齢制限ギリギリという面を強調できただろう。

 

斉藤由貴が煙草を吸い過ぎである。それは別に構わないが、彼女自身がピアノと向き合うシーンが皆無なのは頂けない。調律師の仕事ぶりに一瞥をくれるとか、ピアノの運搬の様子を厳しく見守るだとか、何か映画的な演出ができたはずだ。それとも編集でカットしてしまったのか。若い才能と対峙するという役割をほぼ一手に引き受ける、つまり観客のかなり多くを占めるであろう年齢層の象徴的なキャラクターなのだから、ささやかな、それでいて印象に残る音楽家的なシーンが欲しかった。

 

総評

音楽好きにも、音楽にはそれほど造詣が深くないという層にも、どちらにも鑑賞して欲しいと思える作品である。演奏の質の高さとストーリーの質の高さが、非常に上手く釣り合った作品に仕上がっている。この世界で自分が果たすべき仕事とは何か、この世界で自分が未来に残すべきものとは何か。そのようなことを考えるきっかけを与えてくれる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I want to play a piano right now.

 

栄伝亜夜の「今すぐピアノを弾きたいんです」という台詞の英訳である。今でも塾や学校では楽器にはtheをつけましょう、と教えているらしいが、実際はtheの有無やthe以外の冠詞を使うかどうかは文脈によって決まる。British Englishならほぼほぼtheをつける。American Englishならtheをつけてもつけなくても良い。どれでもいいから、とにかく何らかの楽器を弾きたいということであれば、a + 楽器である。drumsのように最初から複数形の楽器もあるし、和太鼓のように単数形のdrumもある。何が言いたいかと言うと、英語の冠詞について「こうだ!」とズバリ言い切ってしまう講師がいる塾やスクールはお勧めしませんよ、ということである。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 松坂桃李, 松岡茉優, 森崎ウィン, 監督:石川慶, 配給会社:東宝, 鈴鹿央士Leave a Comment on 『 蜜蜂と遠雷 』 -世界と自分の関わり方を考えさせてくれる-

最近の投稿

  • 『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』 -自分らしさを弱点と思う勿れ-
  • 『 近畿地方のある場所について 』 -やや竜頭蛇尾か-
  • 『 脱走 』 -南へ向かう理由とは-
  • 『 JUNK WORLD 』 -鬼才は死なず-
  • 『 リライト 』 -小説をまあまあ上手く改変-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme