真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク 60点
2024年8月14日 読了
著者:喜多喜久
発行元:集英社文庫
滋賀のメタセコイア並木道までの日帰り旅行の電車内で読了。
あらすじ
超常現象研究会のフィールドワークのために故郷の冥加村に帰ってきた星原は、ある夜、UFOを目撃してしまう。UFOを追った先の山で不思議な「棺」を見つけた星原は、その中に謎の美少女を見つけて・・・
ポジティブ・サイド
前の勤め先には製薬会社の社員が多く、その受講生の方々がお勧めしてくれたのが著者の『 ラブ・ケミストリー 』で、以来、同著者の作品は結構読んできた。今作は部屋の掃除をしていたら積ん読になっていた文庫が出てきた。買ったはいいが、表紙で読むのをためらっていたのだと思う。
ジェームズ・ホーガンの『 星を継ぐもの 』よろしく、最初のエピローグでSF、それも宇宙人者であることを高らかに宣言している。まあ、ラブケミで死神を出してしまうような著者なので、宇宙人くらいで目くじらを立ててはいけない。
超常現象研究会がネットの謎の書き込みを基にキャトルミューティレーションを調査しに赴いた片田舎で殺人事件が発生、そしてそこには新興宗教の創設をもくろむ怪しい男が・・・と、かなりとっちらかった内容。それを300ページ程度できれいにまとめる筆力、構想力は大したもの。化学の実験や概念の一部は時間と共に風化していく恐れがあるが、その心配の少ないオカルト分野に目を付けたのも慧眼か。
夏、美少女、オカルト、SF、ミステリを一冊で気軽に楽しめる。高校生、大学生あたりに好適なストーリー。
ネガティブ・サイド
正直なところ、ミステリ部分はダメダメ。真相にはたどりつけなくても、犯人はすぐに分かってしまう。大きなヒントは序盤、中盤、終盤に一つずつ。どの段階で気付けるかでミステリ読書歴を測れるかもしれない。
また主人公の星原やサークル会長の天川のキャラクター造形はステレオタイプそのもの。綾辻行人や法月綸太郎の先行作品を読めば、似たようなキャラはわんさか出てくる。やはりこの著者は大学で化学に黙々と勤しむキャラクターにリアリティを与える方向で行くべきだと思われる。
物語と直接の関係はないが、本作のカバー絵は一種のミステリになっている。何故この構図であって「あの場所のあの表情」ではないのか。うーむ・・・
総評
3時間弱でスイスイ読めた。特別な知識は不要。求められるのは主人公の星原のモタモタした思考にシンクロできるかどうか。あるいはそのモタモタした思考を青春だと捉えてニヤニヤできるかどうか。そういう意味では青少年だけではなく案外中年読者にも向いているのかもしれない。
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casket
棺の意。今や主流の直方体の棺を指す。coffinという語もあるが、これは上半身側が大きく、下半身側が小さくなっているもの。WWEのファンなら棺桶マッチ= Casket Match だと知っているだろう。またゲームの『 エースコンバット 』ファンなら、coffin=飛行機のように四面四角でない物体だと分かるはず。まあ、これは一種のマニアの覚え方なので参考にしてはいけない。そもそも casket も coffin も英検1級以上を目指すのでなければ知っておく必要性はゼロだ。
次に劇場鑑賞したい映画
『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』
『 風が吹くとき 』
『 #スージー・サーチ 』